特許第6479797号(P6479797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6479797タバコからリグニンを生成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479797
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】タバコからリグニンを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20190225BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20190225BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20190225BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20190225BHJP
   C08H 7/00 20110101ALI20190225BHJP
   A24B 15/26 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08L23/12
   C08L23/06
   C08L67/04
   C08H7/00
   A24B15/26
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-531885(P2016-531885)
(86)(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公表番号】特表2016-530368(P2016-530368A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】US2014049039
(87)【国際公開番号】WO2015017613
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年7月11日
(31)【優先権主張番号】61/861,740
(32)【優先日】2013年8月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/339,094
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594112886
【氏名又は名称】アール・ジエイ・レイノルズ・タバコ・カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】516033097
【氏名又は名称】アメリカン・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュベ,マイケル・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】フェイ・ザ・サード,ジェームズ・イー
(72)【発明者】
【氏名】マネシュ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ゾボロウスキ,エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】マネシュ,モハンマド・アリ
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−201740(JP,A)
【文献】 特表2009−531424(JP,A)
【文献】 特表2011−515082(JP,A)
【文献】 特開2012−102297(JP,A)
【文献】 米国特許第07959765(US,B1)
【文献】 特表2009−528033(JP,A)
【文献】 特開昭58−111672(JP,A)
【文献】 米国特許第02380448(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08H 1/00 − 99/00
C09H 1/00 − 9/04
C07G 1/00 − 99/00
A24B 1/00 − 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコバイオマスから単離されたリグニンを含有する樹脂組成物を製造する方法であって、
(a)タバコバイオマスを酸と混合して、酸性化された消化混合物を製造する工程、
(b)前記消化混合物を、脂肪族アルコール又は芳香族アルコールから選択されるアルコール混合して、アルコール含有混合物を製造する工程、
(c)前記アルコール含有混合物、アルコール可溶性相およびアルコール不溶性相分離する工程
(d)前記アルコール可溶性相からアルコールを除去して、リグニンを単離する工程
(e)前記(d)工程において単離されたリグニン及び希釈剤を混合して着色剤製造する工程、
(f)前記着色剤を樹脂に添加する工程、を含む方法。
【請求項2】
前記酸が鉱酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコールがブタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記(c)工程が、溶媒抽出を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記(d)工程が、昇華、凍結乾燥、溶媒抽出および/または蒸留を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリヒドロキシアルカノエート、又はポリ−L−乳酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、当該樹脂組成物の重量に対して、前記単離されたリグニン5重量%以上含有するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、当該樹脂組成物の重量に対して、前記単離されたリグニン10重量%以上含有するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂組成物は、当該樹脂組成物の重量に対して、前記単離されたリグニン40重量%以上含有するものである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
この国際特許出願は、パリ条約の下、2013年8月2日に提出された現在係属中の米国仮特許出願第61/861,740号に対する優先権および該出願の利益を主張する2014年7月23日に提出された現在係属中の米国特許出願第14/339,094号に対する優先権および該出願の利益を主張する。
【0002】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法は、タバコから作製されるもしくはこれに由来するリグニン、または、より一般的には、ニコチアナ属の任意の1以上の種に由来する任意のバイオマスから作製される、もしくはこれに由来するリグニンを含む、あるいは他の場合にはタバコを組み込んだ製品に関する。特に対象とするのは、ニコチアナ種からの植物または植物の部分から得られる、またはこれに由来するリグニンを含む製品である。
【背景技術】
【0003】
シガレットなどの人気のある喫煙物品は、実質的に円筒形のロッド状の構造を有し、包装紙に包まれた(例えば、カットフィラー形態の)刻みタバコなどの喫煙可能な材料の装入物、ロールまたはカラムを含むことにより、いわゆる「タバコロッド」を形成する。通常、シガレットは、タバコロッドと端と端を繋ぐ関係で配置された円筒形のフィルター要素を有する。典型的には、フィルター要素は、「プラグ包装紙」として知られている紙材料によって取り囲まれた可塑化セルロースアセテート・トウを含む。ある特定のシガレットは、多重セグメントを有するフィルター要素を組み込んでおり、これらのセグメントの1つが、活性炭粒子を含むことができる。典型的には、フィルター要素は、「ティッピング紙」として知られている取り囲み包装材を用いてタバコロッドの一端に取り付けられている。また、吸引された主流煙を周囲の空気によって希釈させるために、ティッピング材およびプラグ包装紙を穿孔することが望ましくなってきている。シガレットは、喫煙者によってその一端に点火され、タバコロッドを燃焼させることにより使用される。喫煙者は、次いで、シガレットの反対端(例えば、フィルター端)を吸引することにより、彼/彼女の口中で主流煙を受け取る。
【0004】
シガレットの製造に用いられるタバコは、典型的にはブレンドされた形態で用いられる。例えば、ある特定の人気のあるタバコブレンドは、一般に「アメリカンブレンド」と称され、黄色種タバコ、バーレー種タバコ、およびオリエンタルタバコの混合物を含み、多くの場合、ある特定の加工タバコ、例えば再構成タバコおよび加工タバコ茎を含む。特定のシガレットブランドの製造のために用いられるタバコブレンド内の各タイプのタバコの正確な量は、ブランドにより変化する。しかし、多くのタバコブレンドに関して、黄色種タバコが、ブレンドの比較的大きな割合を占める一方で、オリエンタルタバコは、ブレンドの比較的小さな割合を占める。例えば、Tobacco Encyclopedia,Voges(Ed.)p.44−45(1984),Browne,The Design of Cigarettes,3rd Ed.,p.43(1990)およびTobacco Production,Chemistry and Technology,Davisら(Eds.)p.346(1999)を参照されたい。
【0005】
タバコ製品に利用されるタバコ材料の全体の特徴または性質を改変するための種々の処理方法および添加剤が何年にもわたって提案されている。例えば、添加剤または処理方法は、タバコ材料の化学的もしくは官能的特性を改変するために利用されており、または、喫煙可能なタバコ材料の場合には、タバコ材料を含む喫煙物品により発生する主流煙の化学的もしくは官能的特性を改変するために利用されている。シガレットの煙の官能的属性は、シガレットの種々の成分中に香味材を組み込むことにより向上され得る。例示的な香味添加剤として、メンソール、ならびに、ピラジン類、アミノ糖類およびアマドリ化合物類などのメイラード反応の生成物などが挙げられる。参照により本明細書に組み込まれる、Leffingwellら、Tobacco Flavoring for Smoking Products,R.J.Reynolds Tobacco Company(1972)も参照されたい。いくつかの場合において、熱の使用を含む処理方法は、加工タバコに、所望の色もしくは視覚的特徴、所望の官能的特性、または所望の物理的性質もしくはテクスチャを付与することができる。タバコ組成物において用いられる香味豊かな芳香族組成物を調製するための種々の方法は、Rookerによる米国特許第3,424,171号、Luttichによる同第3,476,118号、Osborne,Jr.らによる同第4,150,677号、Robertsらによる同第4,986,286号、Whiteらによる同第5,074,319号、Whiteらによる同第5,099,862号、Sensabaugh,Jr.による同第5,235,992号、Raymondらによる同第5,301,694号、Coleman,IIIらによる同第6,298,858号、Coleman,IIIらによる同第6,325,860号、Coleman,IIIらによる同第6,428,624号、Dubeらによる同第6,440,223号、Coleman,IIIらによる同第6,499,489号、Whiteらによる同第6,591,841号、およびDubeらによる同第6,695,924号、ならびにColeman,IIIらによる米国特許出願第2004/0173228号およびColeman,IIIらによる同第2010/0037903号に記載されており、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、タバコ製品においていわゆる天然タール希釈剤として使用され得る代表的な成分の例は、Lipowiczらによる国際公開第WO07/012980号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
タバコはまた、いわゆる「無煙」形態で楽しむこともできる。特に人気のある無煙タバコ製品は、ユーザーの口の中に加工タバコまたはタバコ含有配合物をある形態で挿入することによって使用される。種々のタイプの無煙タバコ製品が、Schwartzによる米国特許第1,376,586号、Leviによる同第3,696,917号、Pittmanらによる同第4,513,756号、Sensabaugh,Jr.らによる同第4,528,993号、Storyらによる同第4,624,269号、Townsendによる同第4,987,907号、Sprinkle,IIIらによる同第5,092,352号、Whiteらによる同第5,387,416号、およびKumarらによる同第8,336,557号、Stricklandらによる米国特許出願公開第2005/0244521号およびEngstromらによる同第2008/0196730号、ならびにArnarpらによる国際公開第WO04/095959号、Atchleyらによる国際公開第WO05/063060号、Bjorkholmによる国際公開第WO05/016036号、およびQuinterらによる国際公開第WO05/041699号に記載されており、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる、Atchleyらによる米国特許第6,953,040号およびAtchleyらによる同第7,032,601号に記載されているタイプの無煙タバコ配合物、成分、および加工方法を参照されたい。
【0007】
無煙タバコ製品の1つのタイプは、「スナッフ」と称される。一般的に「スヌース」と称されるモイストスナッフ製品の代表的なタイプは、ヨーロッパ、特にスウェーデンにおいて、例えば、Swedish Match AB,Fiedler & Lundgren AB,Gustavus AB,Skandinavisk Tobakskompagni A/S、およびRocker Production ABなどの企業によってまたは該企業を通して製造されてきた。米国において入手可能なスヌース製品は、商標Camel Snus Frost、Camel Snus OriginalおよびCamel Snus Spiceの下、R.J.Reynolds Tobacco Companyによって販売されてきた。例えば、Bryzgalovら、1N1800 Life Cycle Assessment,Comparative Life Cycle Assessment of General Loose and Portion Snus(2005)も参照されたい。また、スヌース製造に関連するある特定の品質基準は、いわゆるGothiaTek基準として組み立てられている。代表的な無煙タバコ製品はまた、House of Oliver Twist A/Sによる商標Oliver Twist、U.S.Smokeless Tobacco Co.によるCopenhagen、Skoal、SkoalDry、Rooster、Red Seal、HuskyおよびRevel、Philip Morris USAによる「taboka」、Conwood Company,LLCによるLevi Garrett、Peachy、Taylor’s Pride、Kodiak、Hawken Wintergreen、Grizzly、Dental、Kentucky King、およびMammoth Cave、ならびにR.J.Reynolds Tobacco CompanyによるCamel Orbs、Camel Sticks、およびCamel Stripsも販売されている。
【0008】
無煙タバコの官能的属性は、ある特定の香味材の組み込みによっても向上され得る。例えば、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる。Williamsによる米国特許第6,668,839号、Williamsによる同第6,834,654号、Atchleyによる同第7,032,601号、Atchleyによる同第7,694,686号、Holton,Jrによる同第7,861,728号、Stricklandによる同第7,819,124号、Dubeによる同第7,810,507号、およびNielsenらによる同第8,168,855号、ならびにWilliamsによる米国特許出願公開第2004/0020503号、Stricklandらによる同第2006/0191548号、Holton,Jr.らによる同第2007/0062549号、Robinsonらによる同第2008/0029116号、Muaらによる同第2008/0029117号、およびRobinsonらによる同第2008/0173317号を参照されたい。
【0009】
タバコの種々の構成要素の中に、リグニン(CAS9005−53−2)がある。例えば、Tso,Physiology and Biochemistry of Tobacco Plants,pp.173,196,198,259,267,309(1972)を参照されたい。高分子であるリグニンは、幅広い分子量で見出されており、種々の割合のコニフェリル、p−クマルおよびシナピルアルコールから構成され得る。リグニンは、タバコ製品配合物における多くの機能のうちの任意の働きをすることができる一方で、バニリンの調製に有用であることが当該分野において知られている。
【0010】
タバコに由来するリグニンに関する物品および方法は、当該分野において知られている。Lawrenceによる米国特許第2,766,148号は、タバコと、多糖類、共役単糖類およびリグニンからなる群から選択される高分子量の多価化合物の誘導体とを含む製造物品を開示している。Chappleによる米国特許第5,981,837号、同第6,489,538号および同第6,610,908号は、タバコリグニンの組成を調節する方法を開示している。Muaらによる米国特許第6,772,767号は、低減されたレベルのリグニンによってタバコ材料を作製する方法を開示している。上記のそれぞれが、参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,424,171号明細書
【特許文献2】米国特許第3,476,118号明細書
【特許文献3】米国特許第4,150,677号明細書
【特許文献4】米国特許第4,986,286号明細書
【特許文献5】米国特許第5,074,319号明細書
【特許文献6】米国特許第5,099,862号明細書
【特許文献7】米国特許第5,235,992号明細書
【特許文献8】米国特許第5,301,694号明細書
【特許文献9】米国特許第6,298,858号明細書
【特許文献10】米国特許第6,325,860号明細書
【特許文献11】米国特許第6,428,624号明細書
【特許文献12】米国特許第6,440,223号明細書
【特許文献13】米国特許第6,499,489号明細書
【特許文献14】米国特許第6,591,841号明細書
【特許文献15】米国特許第6,695,924号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2004/0173228号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2010/0037903号明細書
【特許文献18】国際公開第2007/012980号
【特許文献19】米国特許第1,376,586号明細書
【特許文献20】米国特許第3,696,917号明細書
【特許文献21】米国特許第4,513,756号明細書
【特許文献22】米国特許第4,528,993号明細書
【特許文献23】米国特許第4,624,269号明細書
【特許文献24】米国特許第4,987,907号明細書
【特許文献25】米国特許第5,092,352号明細書
【特許文献26】米国特許第5,387,416号明細書
【特許文献27】米国特許第8,336,557号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2005/0244521号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2008/0196730号明細書
【特許文献30】国際公開第2004/095959号
【特許文献31】国際公開第2005/063060号
【特許文献32】国際公開第2005/016036号
【特許文献33】国際公開第2005/041699号
【特許文献34】米国特許第6,953,040号明細書
【特許文献35】米国特許第7,032,601号明細書
【特許文献36】米国特許第6,668,839号明細書
【特許文献37】米国特許第6,834,654号明細書
【特許文献38】米国特許第7,694,686号明細書
【特許文献39】米国特許第7,861,728号明細書
【特許文献40】米国特許第7,819,124号明細書
【特許文献41】米国特許第7,810,507号明細書
【特許文献42】米国特許第8,168,855号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2004/0020503号明細書
【特許文献44】米国特許出願公開第2006/0191548号明細書
【特許文献45】米国特許出願公開第2007/0062549号明細書
【特許文献46】米国特許出願公開第2008/0029116号明細書
【特許文献47】米国特許出願公開第2008/0029117号明細書
【特許文献48】米国特許出願公開第2008/0173317号明細書
【特許文献49】米国特許第2,766,148号明細書
【特許文献50】米国特許第5,981,837号明細書
【特許文献51】米国特許第6,489,538号明細書
【特許文献52】米国特許第6,610,908号明細書
【特許文献53】米国特許第6,772,767号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Tobacco Encyclopedia,Voges(Ed.)p.44−45(1984)
【非特許文献2】Browne,The Design of Cigarettes,3rd Ed.,p.43(1990)
【非特許文献3】Tobacco Production,Chemistry and Technology,Davisら(Eds.)p.346(1999).
【非特許文献4】Leffingwellら、Tobacco Flavoring for Smoking Products,R.J.Reynolds Tobacco Company(1972)
【非特許文献5】Bryzgalovら、1N1800 Life Cycle Assessment,Comparative Life Cycle Assessment of General Loose and Portion Snus(2005)
【非特許文献6】Tso,Physiology and Biochemistry of Tobacco Plants,pp.173,196,198,259,267,309(1972)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
タバコに由来するリグニンに関する物品および方法が当該分野において知られているが、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマーと相溶性の染料としてまたは可塑剤もしくは充填剤として用いられるのに好適である、リグニンを含む組成物をタバコから調製する方法は、これまで開示されていない。タバコは世界中で長く栽培されてきたため、タバコバイオマスの完全な利用は未だ達成されていないものの、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマーと相溶性の染料、顔料、可塑剤、充填剤または塗料として有用な組成物をタバコから調製するための方法が、長年にわたって必要とされている。より一般的には、リグニンを含み、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマーと相溶性の染料、顔料、可塑剤、充填剤または塗料として用いられるのに好適な組成物の調製のための簡易な方法が長年にわたって必要とされている。
【0014】
リグニンが、種々のタバコ製品の構成要素としてだけでなく、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマーと相溶性の染料、顔料、可塑剤、充填剤または塗料としても有用であることは上記から明らかであるはずなので、したがって、とりわけ、種々のタバコ製品においてまたはタバコの加工において利用されるタバコ組成物における、より一般的には、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマーと相溶性の染料、顔料、可塑剤、充填剤または塗料を含むことができる組成物における使用のためのタバコ由来のリグニン、すなわち、特に、ニコチアナ種由来のリグニンを生成するための方法を提供することが望ましいことも分かる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法は、種々のタバコ製品、例えば喫煙物品および無煙タバコ製品において利用されるタバコ組成物内への、より一般的には、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマーと相溶性の染料、顔料、可塑剤、充填剤または塗料を含むことができる組成物内への組み込みに有用なニコチアナ種の植物由来の単離成分を含むニコチアナ種由来の材料(例えば、タバコ由来材料)を提供する。本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法は、ニコチアナ種(例えば、タバコ材料)から成分を単離するための方法、およびこれらの成分とこれらの成分を組み込んだタバコ材料とを加工するための方法も提供する。例えば、タバコ由来材料は、タバコ材料の所望の成分を単離するために、多段の逐次的な抽出工程を典型的には含むことができる分離方法にタバコ植物の少なくとも一部(例えば、葉、柄、根、または茎)を供することによって調製され得る。例えば、タバコ由来材料は、タバコ材料の所望の成分を単離するために、典型的には多段の逐次的な抽出工程を含むことができる分離方法にタバコ植物の少なくとも一部(例えば、葉、柄、根、または茎)を供することによって調製され得る。
【0016】
用語「バイオマス」は、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法に関連して用いられているとき、植物の1以上の部分を表し、特に、植物の地下部分のいくらかまたは全てを場合により含む、植物の地上部分の実質的に全体を表す。したがって、用語「バイオマス」は、植物の地下部分のいくらかまたは全てを場合により含む、植物の葉、種子、もしくは任意の他の地上部分、またはこれらの任意の組み合わせを称することができる。したがって、用語「バイオマス」ならびに関連用語、例えば「生体物質」および「植物源」は、対象とする成分を抽出、分離または単離するように加工され得る収穫植物の任意の1以上の部分を称することが適切に理解され得る。
【0017】
用語「ニコチアナ属の1種以上の植物」は、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法に関連して用いられているとき、例えば、以下の任意の1種以上、ニコチアナ・アラタ(N.alata)、ニコチアナ・アレントシ(N.arentsii)、ニコチアナ・エクセルシオル(N.excelsior)、ニコチアナ・フォルゲティアナ(N.forgetiana)、ニコチアナ・グラウカ(N.glauca)、ニコチアナ・グルチノサ(N.glutinosa)、ニコチアナ・ゴセイ(N.gossei)、ニコチアナ・カワカミ(N.kawakamii)、ニコチアナ・ナイチアナ(N.knightiana)、ニコチアナ・ラングスドルフィ(N.langsdorffi)、ニコチアナ・オトフォラ(N.otophora)、ニコチアナ・セトチェリ(N.setchelli)、ニコチアナ・シルベストリス(N.sylvestris)、ニコチアナ・トメントサ(N.tomentosa)、ニコチアナ・トメントシホルミス(N.tomentosiformis)、ニコチアナ・アンドゥラタ(N.undulata)、およびニコチアナ・サンデラエ(N.xsanderae)、ニコチアナ・アフリカナ(N.africana)、ニコチアナ・アムプレキシカウリス(N.amplexicaulis)、ニコチアナ・ベナビデシ(N.benavidesii)、ニコチアナ・ボナリエンシス(N.bonariensis)、ニコチアナ・デブネイ(N.debneyi)、ニコチアナ・ロンギフロラ(N.longiflora)、ニコチアナ・マリチナ(N.maritina)、ニコチアナ・メガロシホン(N.megalosiphon)、ニコチアナ・オシデンタリス(N.occidentalis)、ニコチアナ・パニクラタ(N.paniculata)、ニコチアナ・プルムバギニフォリア(N.plumbaginifolia)、ニコチアナ・ライモンジ(N.raimondii)、ニコチアナ・ロスラタ(N.rosulata)、ニコチアナ・ルスティカ(N.rustica)、ニコチアナ・シムランス(N.simulans)、ニコチアナ・ストクトニ(N.stocktonii)、ニコチアナ・スアベオレンス(N.stocktonii)、ニコチアナ・タバカム(N.tabacum)、ニコチアナ・アンブラチカ(N.umbratica)、ニコチアナ・ベルチナ(N.velutina)、およびニコチアナ・ウィガンジオイデス(N.wigandioides)、ニコチアナ・アカウリス(N.acaulis)、ニコチアナ・アクミナタ(N.acuminata)、ニコチアナ・アテヌアタ(N.attenuata)、ニコチアナ・ベンサミアナ(N.benthamiana)、ニコチアナ・カビコラ(N.cavicola)、ニコチアナ・クレベランジ(N.clevelandii)、ニコチアナ・コルジフォリア(N.cordifolia)、ニコチアナ・コリンボサ(N.corymbosa)、ニコチアナ・フラグランス(N.fragrans)、ニコチアナ・グッドスピーディ(N.goodspeedii)、ニコチアナ・リネアリス(N.linearis)、ニコチアナ・ミエルシ(N.miersii)、ニコチアナ・ヌジカウリス(N.nudicaulis)、ニコチアナ・オブツシフォリア(N.obtusifolia)、ニコチアナ・オシデンタリス亜種ヘスペリス(N.occidentalis subsp.Hersperis)、ニコチアナ・パウシフロラ(N.pauciflora)、ニコチアナ・ペツニオイデス(N.petunioides)、ニコチアナ・クアドリバルビス(N.quadrivalvis)、ニコチアナ・レパンダ(N.repanda)、ニコチアナ・ロツンジホリア(N.rotundifolia)、ニコチアナ・ソラニフォリア(N.solanifolia)ならびにニコチアナ・スペガジニ(N.spegazzinii)を含めたナス科のニコチアナ属の任意の1種以上の植物を称する。
【0018】
「アルカリ金属水酸化物」は、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法に関連して用いられているとき、式MOH(式中、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、またはFrである)を有する化合物の任意の1種以上を表す。
【0019】
「鉱酸」は、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法に関連して用いられているとき、無機酸を表し、したがって、例えば、以下の任意の1種以上、硫酸、リン酸、硝酸、塩素酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、クロム酸、亜硫酸、亜リン酸、亜硝酸、ハロゲンスルホン酸HSOX(式中、Xはハロゲンである)、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸、硫化水素、次亜リン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸を称することができる。
【0020】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって製造されるニコチアナ属由来(例えば、タバコ由来)材料の使用は、ニコチアナ材料に実質的または全体的にさえも由来する喫煙物品用タバコ組成物または無煙タバコ組成物の調製を可能にする。例えば、タバコ組成物は、ニコチアナ種からの単離成分を含めた、何らかの形態のタバコまたはタバコ由来材料を組み込むことができ、その結果、タバコ組成物の少なくとも約80重量%、より典型的には少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%(乾燥重量基準)さえもが、タバコ由来材料からなることとなる。
【0021】
タバコ由来、特に、ニコチアナ種由来の植物または植物の部分に由来する材料または物質の使用をより充実させる必要があることが、長く認識されている。ニコチアナ種由来の植物または植物の部分から容易に入手可能な出発物質またはインプットは、タバコ由来の材料または物質がより充実した利用をされ得る方法において、特に出発物質またはインプットとしての包含に有用であって、とりわけ、タバコバイオマスを含む。タバコバイオマスは、例えば、全体が収穫されたタバコ植物の物質全体を含むことができる。タバコバイオマスは、例えば、タバコ植物の地上部分の本質的に全てを含むことができ、タバコ植物の地下部分のいくらかまたは全てを場合により含むことができる。タバコバイオマスは、全体が収穫されたタバコ植物の固体部分、またはタバコ植物の地上部分の本質的に全ての固体部分を含むことができ、該固体部分から、いわゆる「青汁」が、例えば、スクリュープレスの作用を通して放出されている。タバコバイオマスは、水の少なくとも一部が乾燥により除去されたかかる固体部分を例えば含むことができる。
【0022】
タバコ由来、特に、ニコチアナ種由来の植物または植物の部分に由来する材料または物質のより完全な使用がなされ得る手段の中に、ニコチアナ種からの植物または植物の部分が供され得る種々の物理的および/または化学変換がある。かかる物理的および/または化学変換は、1つ以上の所望のまたは好ましい特性を有する産物または製品を結果として生ずることができる。かかる産物または製品は、これら自身が、さらに有用な方法の出発物質またはインプットとして有用であり得る。ニコチアナ種由来の植物または植物の部分が供され得る物理変換の中に、タバコバイオマスの物理的完全性の崩壊、例えば、ある量のタバコバイオマスに対するスクリュープレスの作用から結果として生じる崩壊がある。ニコチアナ種由来の植物または植物の部分が供され得る物理変換の中に、例えば、粒径、相対密度、沈降速度、または固定マトリクスへの親和性に従った分画がある。
【0023】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法は、ある量のタバコ植物材料からリグニンを単離するための方法を提供する。タバコ植物材料は、タバコバイオマスを含むことができる。
【0024】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、ある量のタバコバイオマスは、例えば、浸軟および/または複数のタバコバイオマス粒子が形成される1以上の他の力の適用などによってバイオマスの物理的完全性を崩壊させる物理変換に供されたある量のタバコバイオマスは、ある量の酸と接触して、酸性化された消化混合物を形成することができる。ある量の、得られた酸性化された消化混合物は、ブタノールと接触して、ブタノール含有混合物を形成することができる。得られたブタノール含有混合物は、ブタノール可溶性相とブタノール不溶性相とに分離され得る。ブタノールは、ブタノール可溶性相から除去されて、単離リグニンを生じさせることができる。かかるリグニンは、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマーと相溶性の染料、顔料、可塑剤、充填剤または塗料として有用である。例えば、かかるリグニンは、他の構成要素を場合により含むことができるポリ−L−乳酸(PLA)を含むプラスチックを作製するのに有用である。かかるリグニンは、他の構成要素を場合により含むことができる着色剤を作製するのに有用である。
【0025】
したがって、実施形態において、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法は、タバコからリグニンを生成する方法を提供する。かかるリグニンは、タバコ材料と、ニコチアナ種に由来する成分とを含む喫煙物品または無煙タバコ組成物内で、上で、または付近での使用に好適であり、該成分は、ニコチアナ種に由来する。かかるリグニンは、より一般的には、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマーと相溶性の染料、顔料、可塑剤、充填剤または塗料を含むことができる組成物における使用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法を以下により完全に記載する。しかし、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法は、多くの種々の形態で具現化され得、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が綿密かつ完全であるように、また、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法の範囲を当業者に完全に伝達するように提供される。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「該(the)」は、本明細書および特許請求の範囲において用いられているとき、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。「乾燥重量%」または「乾燥重量基準」への言及は、乾燥成分(すなわち、水を除く全成分)基準の重量を称する。
【0027】
ニコチアナ種由来の植物の選択は変動してよい。特に、タバコのタイプは変動してよい。使用され得るタバコとして、黄色種またはバージニア種(例えば、K326)タバコ、バーレー種タバコ、日干乾燥タバコ(例えば、Katerini、Prelip、Komotini、XanthiおよびYambolタバコを含めたインド・クルヌールおよびオリエンタル種タバコ)、メリーランド種タバコ、暗色タバコ、暗色火力乾燥タバコ、暗色空気乾燥タバコ(例えば、Passanda、Cubano、JatinおよびBezukiタバコ)、明色空気乾燥タバコ(例えば、North WisconsinおよびGalpaoタバコ)、インド空気乾燥タバコ、赤色ロシアタバコおよびルスティカ種タバコ、ならびに種々の珍しいまたは特殊なタバコが挙げられる。種々のタイプのタバコ、栽培慣習、および収穫慣習は、参照により本明細書に組み込まれる、Tobacco Production,Chemistry and Technology,Davisら(Eds.)(1999)に記載されている。種々の代表的なタイプのニコチアナ種由来植物は、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる、Goodspeed,The Genus Nicotiana(Chronica Botanica,1954)、Sensabaugh,Jr.らによる米国特許第4,660,577号、Whiteらによる同第5,387,416号、Lawsonらによる同第7,025,066号、Lawrence,Jr.らによる同第7,798,153号、およびMarshallらによる同第8,186,360号に記載されている。特に対象となるのは、ニコチアナ・アラタ(N.alata)、ニコチアナ・アレントシ(N.arentsii)、ニコチアナ・エクセルシオル(N.excelsior)、ニコチアナ・フォルゲティアナ(N.forgetiana)、ニコチアナ・グラウカ(N.glauca)、ニコチアナ・グルチノサ(N.glutinosa)、ニコチアナ・ゴセイ(N.gossei)、ニコチアナ・カワカミ(N.kawakamii)、ニコチアナ・ナイチアナ(N.knightiana)、ニコチアナ・ラングスドルフィ(N.langsdorffi)、ニコチアナ・オトフォラ(N.otophora)、ニコチアナ・セトチェリ(N.setchelli)、ニコチアナ・シルベストリス(N.sylvestris)、ニコチアナ・トメントサ(N.tomentosa)、ニコチアナ・トメントシホルミス(N.tomentosiformis)、ニコチアナ・アンドゥラタ(N.undulata)、およびニコチアナ・サンデラエ(N.xsanderae)である。また、対象となるのは、ニコチアナ・アフリカナ(N.africana)、ニコチアナ・アムプレキシカウリス(N.amplexicaulis)、ニコチアナ・ベナビデシ(N.benavidesii)、ニコチアナ・ボナリエンシス(N.bonariensis)、ニコチアナ・デブネイ(N.debneyi)、ニコチアナ・ロンギフロラ(N.longiflora)、ニコチアナ・マリチナ(N.maritina)、ニコチアナ・メガロシホン(N.megalosiphon)、ニコチアナ・オシデンタリス(N.occidentalis)、ニコチアナ・パニクラタ(N.paniculata)、ニコチアナ・プルムバギニフォリア(N.plumbaginifolia)、ニコチアナ・ライモンジ(N.raimondii)、ニコチアナ・ロスラタ(N.rosulata)、ニコチアナ・ルスティカ(N.rustica)、ニコチアナ・シムランス(N.simulans)、ニコチアナ・ストクトニ(N.stocktonii)、ニコチアナ・スアベオレンス(N.stocktonii)、ニコチアナ・タバカム(N.tabacum)、ニコチアナ・アンブラチカ(N.umbratica)、ニコチアナ・ベルチナ(N.velutina)、およびニコチアナ・ウィガンジオイデス(N.wigandioides)である。ニコチアナ種由来の他の植物として、ニコチアナ・アカウリス(N.acaulis)、ニコチアナ・アクミナタ(N.acuminata)、ニコチアナ・アテヌアタ(N.attenuata)、ニコチアナ・ベンサミアナ(N.benthamiana)、ニコチアナ・カビコラ(N.cavicola)、ニコチアナ・クレベランジ(N.clevelandii)、ニコチアナ・コルジフォリア(N.cordifolia)、ニコチアナ・コリンボサ(N.corymbosa)、ニコチアナ・フラグランス(N.fragrans)、ニコチアナ・グッドスピーディ(N.goodspeedii)、ニコチアナ・リネアリス(N.linearis)、ニコチアナ・ミエルシ(N.miersii)、ニコチアナ・ヌジカウリス(N.nudicaulis)、ニコチアナ・オブツシフォリア(N.obtusifolia)、ニコチアナ・オシデンタリス亜種ヘスペリス(N.occidentalis subsp.Hersperis)、ニコチアナ・パウシフロラ(N.pauciflora)、ニコチアナ・ペツニオイデス(N.petunioides)、ニコチアナ・クアドリバルビス(N.quadrivalvis)、ニコチアナ・レパンダ(N.repanda)、ニコチアナ・ロツンジホリア(N.rotundifolia)、ニコチアナ・ソラニフォリア(N.solanifolia)ならびにニコチアナ・スペガジニ(N.spegazzinii)が挙げられる。
【0028】
ニコチアナ種は、遺伝子組換えまたは交雑育種技術を用いて誘導され得る(例えば、タバコ植物は、遺伝子組換えまたは異種交配されて、ある特定の成分の産生を増加もしくは減少させ得、またはある特定の特徴もしくは属性を変化させ得る)。例えば、Fitzmauriceらによる米国特許第5,539,093号、Wahabらによる同第5,668,295号、Fitzmauriceらによる同第5,705,624号、Weiglによる同第5,844,119号、Dominguezらによる同第6,730,832号、Liuらによる同第7,173,170号、Colliverらによる同第7,208,659号、およびBenningらによる同第7,230,160号、Conklingらによる米国特許出願公開第2006/0236434号、ならびにNielsenらによる国際公開第WO08/103935号に記載されているタイプの植物の遺伝子組換えを参照されたい。
【0029】
無煙および喫煙可能なタバコ製品の作製に関して、乾燥方法に供されることは、ニコチアナ種の収穫植物にとって典型的なことである。種々のタイプのタバコの種々のタイプの硬化方法は、Tobacco Production,Chemistry and Technology,Davisら(編)(1999)に記載されている。黄色種タバコを乾燥する例示的な技術および条件は、Nestorら、Beitrage Tabakforsch.Int.,20,467−475(2003)およびPeeleによる米国特許第6,895,974号に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。また、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Grovesらによる米国特許第7,650,892号も参照されたい。タバコを空気乾燥するための代表的な技術および条件は、Rotonら、Beitrage Tabakforsch.Int.,21,305−320(2005)およびStaafら、Beitrage Tabakforsch.Int.,21,321−330(2005)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。ある特定のタイプのタバコは、代替のタイプの乾燥方法、例えば火力乾燥または日干乾燥に供され得る。好ましくは、乾燥された収穫タバコは、次いで熟成される。
【0030】
ニコチアナ種の植物の少なくとも一部(例えば、タバコ部分の少なくとも一部)は、未成熟形態で使用されてよい。すなわち、植物、またはかかる植物の少なくとも一部は、熟したまたは成熟したと通常みなされる段階に達する前に収穫されてよい。そのため、例えば、タバコは、タバコ植物が出芽する時点、葉形成を開始しているとき、播種を開始しているとき、開花を開始しているときなどに収穫され得る。
【0031】
ニコチアナ種の植物の少なくとも一部(例えば、タバコ部分の少なくとも一部)は、成熟形態で使用されてよい。すなわち、植物、またはかかる植物の少なくとも一部は、該植物(または植物の一部)が熟した、熟しすぎたまたは成熟したと常套的にみなされる点に達したとき、収穫されてよい。そのため、例えば、農家により従来的に使用されているタバコ収穫技術の使用を通して、オリエンタルタバコ植物が収穫されてよく、バーレー種タバコ植物が収穫されてよく、またはバージニア種タバコ葉が収穫されても、柄の位置でプライミングされてもよい。収穫後、ニコチアナ種の植物またはその一部は、緑色形態で用いられてよい(例えば、タバコは、いずれの乾燥方法にも供されることなく用いられてよい)。例えば、緑色形態のタバコは、凍結、凍結乾燥、放射線照射、黄色化、乾燥、加熱(例えば、ロースト、フライ、またはボイル)されてよく、または、他の場合には、後の使用のための保存または処理に供されてよい。かかるタバコは、熟成環境に供されてもよい。
【0032】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、タバコ製品は、少なくとも1つのニコチアナ種の植物から得られるまたはこれに由来するある形態のバイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分と組み合わされたタバコを組み込んでいてよい。すなわち、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によるタバコ製品の一部は、ニコチアナ種のある形態のバイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分、例えばニコチアナ種のバイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分の部もしくは片、またはニコチアナ種の加工バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分もしくは成分を組み込んだ加工材料から構成されていてよい。タバコ製品の少なくとも一部は、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分の成分、例えばバイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分から(例えば、抽出、蒸留、または他のタイプの加工技術によって)除去された成分から構成されていてよい。タバコ製品の少なくとも一部は、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分に由来する成分、例えばバイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分を化学反応に供した後、またはバイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分から収集された成分を化学反応(例えば、酸/塩基反応条件もしくは酵素処理)に供した後に収集された成分から構成されていてよい。
【0033】
ニコチアナ種は、これが生成するバイオマスまたは解剖学的部分のタイプに関して選択されてよい。例えば、植物は、該植物が比較的豊富なバイオマスまたは種子を生成する、比較的高いレベルの特定の所望の成分を組み込んだバイオマスまたは種子を生成するなどの基準に基づいて選択されてよい。
【0034】
ニコチアナ種の植物は、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分の開発を促進するような農業条件下に栽培され得る。タバコ植物は、温室、栽培箱、または戸外で栽培されても、水耕により栽培されてもよい。
【0035】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分は、ニコチアナ種の植物から収穫される。バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分が収穫される方法は変動してよい。典型的には、本質的に全てのバイオマスまたは解剖学的部分が収穫されて、それ自体として使用されてよい。
【0036】
植物の生活環の間の収穫期は変動してよい。例えば、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分は、未成熟であるときに収穫され得る。代替的には、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分は、植物が成熟に達したときの後に収穫され得る。
【0037】
バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分の収穫後の加工は、変動してよい。収穫後、バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分、またはその一部は、収穫形態で用いられ得る(例えば、バイオマスは、任意の乾燥および/または熟成方法工程に供されることなく用いられ得る)。例えば、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分は、有意な保存、取り扱い、または加工条件に供されることなく用いられ得る。ある特定の状況において、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分が、収穫の事実上直後に用いられ得ることが好ましい。代替的には、例えば、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分は、後の使用のために冷蔵もしくは凍結されても、凍結乾燥されても、照射に供されても、黄色化されても、乾燥されても、養生されてもよく、または他の場合には後の使用のために保存もしくは処理に供されてもよい。
【0038】
収穫バイオマスは、物理的に加工されてよい。バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分、またはその1つ以上の部は、部または片にさらに分割されてよい(例えば、バイオマスは、粒状物、粒子状物または微粉末として特徴付けられ得る片または部に細分され、破砕され、ミリングされまたは粉砕されてよい)。バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分、またはその1つ以上の部は(例えば、プレスされまたは圧延処理に供されることによって)外力または圧力に供されてよい。バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分は、かかる加工条件を実施するとき、天然の水分含量(例えば、収穫直後の水分含量)を概算した水分含量、バイオマスに水分を添加することによって得られる水分含量、またはバイオマスの乾燥から得られる水分含量を有することができる。例えば、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分の粉末化された、破砕された、粉砕されたまたはミリングされた片は、約25重量%未満、多くの場合、約20重量%未満、頻繁には約15重量%未満の水分含量を有することができる。バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分の部または片は、さらに加工することなくタバコ製品の成分として用いられてよく、代替的には、粒子状のバイオマスまたは解剖学的部分材料は、タバコ製品に組み込まれる前にさらに加工されてよい。
【0039】
収穫バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分、またはその成分は、他のタイプの加工条件に供されてよい。例えば、バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分の成分は、互いに分離されていてよく、または他の場合には、個々の化合物の化学的分類もしくは混合物に分画されてよい。「単離バイオマス構成要素」、「1つ以上の解剖学的部分の単離構成要素」、「バイオマス単離物」、または「1つ以上の解剖学的部分の単離物」は、本明細書において用いられているとき、ニコチアナ種の植物のバイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分から分離される化合物または化合物の複合混合物である。単離バイオマス構成要素または1つ以上の解剖学的部分の単離構成要素は、単一の化合物、類似化合物の均一混合物(例えば、香味豊かなもしくは芳香族化合物の異性体)、または非類似化合物の不均一混合物(例えば、望ましい官能的属性を好ましくは有する異なるタイプの種々の化合物の複合混合物)であってよい。
【0040】
典型的な分離方法は、1つ以上の方法工程、例えば、(例えば、極性溶媒、非極性有機溶媒、もしくは超臨界流体を用いた)溶媒抽出、クロマトグラフィ、蒸留、濾過、冷却圧縮もしくは他の圧力ベースの技術、再結晶、および/または溶媒−溶媒分配を含むことができる。例示的な抽出および分離溶媒または担体として、水、アルコール類(例えば、メタノールまたはエタノール)、炭化水素類(例えば、ヘプタンおよびヘキサン)、ジエチルエーテル、塩化メチレンならびに超臨界二酸化炭素が挙げられる。ニコチアナ種から成分を抽出するのに有用な例示的な技術は、Fioreによる米国特許第4,144,895号、Osborne,Jr.らによる同第4,150,677号、Reidによる同第4,267,847号、Wildmanらによる同第4,289,147号、Brummerらによる同第4,351,346号、Brummerらによる同第4,359,059号、Mullerによる同第4,506,682号、Keritsisによる同第4,589,428号、Sogaらによる同第4,605,016号、Pouloseらによる同第4,716,911号、Niven,Jr.らによる同第4,727,889号、Bernasekらによる同第4,887,618号、Clappらによる同第4,941,484号、Faggらによる同第4,967,771号、Robertsらによる同第4,986,286号、Faggらによる同第5,005,593号、Grubbsらによる同第5,018,540号、Whiteらによる同第5,060,669号、Faggによる同第5,065,775号、Whiteらによる同第5,074,319号、Whiteらによる同第5,099,862号、Whiteらによる同第5,121,757号、Faggによる同第5,131,414号、Munozらによる同第5,131,415号、Faggによる同第5,148,819号、Kramerによる同第5,197,494号、Smithらによる同第5,230,354号、Faggによる同第5,234,008号、Smithによる同第5,243,999号、Raymondらによる同第5,301,694号、Gonzalez−Parraらによる同第5,318,050号、Teagueによる同第5,343,879号、Newtonによる同第5,360,022号、Clappらによる同第5,435,325号、Brinkleyらによる同第5,445,169号、Lauterbachによる同第6,131,584号、Kierulffらによる同第6,298,859号、Muaらによる同第6,772,767号、Thompsonによる同第7,337,782号に記載されており、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる。また、Brandtら、LC−GC Europe,p.2−5(2002年3月)およびWellings、A Practical Handbook of Preparative HPLC(2006)に記載されているタイプの分離技術も参照されたい、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、バイオマスまたはその成分は、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる、Ishikawaら、Chem.Pharm.Bull.,50,501−507(2002)、Tienpontら、Anal.Bioanal.Chem.,373,46−55(2002)、Ochiai、Gerstel Solutions Worldwide,6,17−19(2006)、Coleman,III,ら、J.Sci.Food and Agric.,84,1223−1228(2004)、Coleman,IIIら、J.Sci.Food and Agric.,85,2645−2654(2005)、Pawliszyn著、Applications of Solid Phase Microextraction,RSC Chromatography Monographs,(Royal Society of Chemistry,UK)(1999)、Sahraouiら、J.Chrom.,1210,229−233(2008)、およびRaymondらによる米国特許第5,301,694号に記載されているタイプの処理に供されてよい。また、例えば、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる、Fregaら、JAOCS,68,29−33(1991)、Patelら、Tob.Res.,24,44−49(1998)、Giannelosら、Ind.Crops Prod.,16,1−9(2002)、Mukhtarら、Chinese J.Chem.,25,705−708(2007)、およびStanisavljevicら、Eur.J.Lipid Sci.Technol.,111,513−518(2009)に記載されているタイプの処理技術を参照されたい。
【0041】
バイオマスのまたは1つ以上の解剖学的部分の成分は、これらの成分が(バイオマスのもしくは1つ以上の解剖学的部分の部として、または単離構成要素の形態でのいずれかで)化学変換を経るような条件に供されてよい。例えば、バイオマス単離物、またはバイオマスから分離された1つ以上の解剖学的部分もしくは1つ以上の解剖学的部分の単離物は、化学変換を引き起こすように処理されても、他の成分と混ぜ合わされてもよい。かかる化学変換または修飾は、かかるバイオマス単離物または1つ以上の解剖学的部分の単離物のある特定の化学的および物理的特性(例えば、かかる単離物の官能的属性)の変化を結果として生じ得る。例示的な化学修飾方法は、酸/塩基反応、加水分解、加熱、および酵素処理(例えば、ヒドロリアーゼ、グリコシダーゼ、またはグルコシダーゼを用いた)によって実施されてよく、そのため、単離物の成分は、エステル化、エステル交換、異性体変換、アセタール形成、アセタール分解などを経てよい。加えて、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分の種々の単離脂質成分は、これらの成分の飽和度を変更するために、ゆえに、これらの成分の物理的形態または挙動を変更するために、水素化に供されてよい。
【0042】
実施形態において、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分は、溶媒(例えば、極性溶媒または非極性有機溶媒)を用いた溶媒抽出に供されてよく、得られた抽出物は収集されて、抽出成分は単離される。次いで、種々のバイオマス成分または1つ以上の解剖学的部分の成分のいずれかが、酵素処理に供されて、酵素処理された材料を形成することができる。酵素処理された材料は、次いで、溶媒抽出に供されて、バイオマス単離物または1つ以上の解剖学的部分の単離物を形成する。
【0043】
実施形態において、分離または単離方法は、収穫バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分またはその一部を凍結させて、凍結されたバイオマスまたは解剖学的部分材料を形成することと、凍結されたバイオマスまたは解剖学的部分材料を粒子状の形態に加工することと、粒子状のバイオマスまたは解剖学的部分材料を酵素処理に供して粒子状のバイオマスまたは解剖学的部分材料を化学的に変更することと、粒子状のバイオマスまたは解剖学的部分材料を溶媒によって抽出してバイオマス単離物または1つ以上の解剖学的部分の単離物を生成することとを含む。例示的な酵素処理として、グリコシダーゼまたはグルコシダーゼによる処理が挙げられる。
【0044】
バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分およびその成分または単離物は、タバコ組成物、特に喫煙物品または無煙タバコ製品に組み込まれるタバコ組成物の成分として有用である。本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって、かかる成分をタバコ組成物に添加することで、バイオマスの性質およびタバコ組成物のタイプに応じて種々の手段でタバコ組成物を向上させることができる。例示的なかかる成分は、タバコ製品に香味および/または香気(例えば、タバコ組成物またはそれに由来する煤煙の官能的特徴を変更する組成物)を付与する働きをすることができる。バイオマス由来のリグニンは、より一般的には、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマーと相溶性の染料、顔料、可塑剤、充填剤または塗料を含むことができる組成物における使用に好適である。
【0045】
バイオマス単離物または1つ以上の解剖学的部分の単離物の形態は、変動してよい。典型的には、かかる単離物は、固体、液体または半固体もしくはゲル形態である。バイオマスは、凝固形態、完全な形態、または純形態で用いられてよい。かかる単離物は、乾燥した粒子状形態、ろう状形態、または濃いペースト形態を有することができる。液体形態として、水性または有機溶媒担体内に含有される単離物が挙げられる。
【0046】
バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分、加工バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分、およびもう1つの解剖学的部分からのバイオマス単離物または単離物は、種々の形態で使用されてよい。バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分、またはバイオマスのもしくはもう1つの解剖学的部分の単離物は、加工タバコの構成要素として使用されてよい。1つの点において、バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分、またはその成分は、(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Shelarによる米国特許第4,819,668号に記載されているタイプの方式および方法を用いて)タバコストリップへの適用のためのトップドレッシング配合物内またはケーシング配合物内で使用されてよい。代替的には、バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分、またはその成分は、(例えば、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる、Sohnによる米国特許第5,143,097号、Brinkleyらによる同第5,159,942号、Jakobによる同第5,598,868号、Youngによる同第5,715,844号、Gellatlyによる同第5,724,998号、およびKumarによる同第6,216,706号に概して記載されているタイプのタバコ再構成方法を用いて)再構成タバコ材料の成分として使用されてよい。バイオマスもしくは1つ以上の解剖学的部分、またはその成分は、また、シガレット製造方法の際、シガレットフィルタ内に(例えば、フィルタプラグ、プラグ包装紙、もしくはティッピング紙に)組み込まれても、シガレット包装紙内に、好ましくは内面上に組み込まれてもよい。バイオマスからまたは1つ以上の解剖学的部分からの単離物は、かかる単離物がろう状または平滑なテクスチャを有していて、形成される無煙タバコ製品の表面のためのコーティングとして用いられ得る。粘着性を有する単離物は、タバコ製品内の接着剤(もしくは接着剤の構成要素)または結着剤として用いられ得る。油性または液体の特徴を有する単離物は、溶媒として用いられてよい(例えば、トリグリセリドタイプの溶媒に置き換わる、もしくはこれと同等の作用をするように、またはケーシング成分のための保湿剤としてもしくは担体としてグリコールタイプの溶媒に置き換わるように用いられる)。
【0047】
バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分、加工バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分、およびバイオマス単離物またはもう1つの解剖学的部分からの単離物は、喫煙物品内に組み込まれていてよい。バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分、加工バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分、およびバイオマス単離物またはもう1つの解剖学的部分からの単離物は、タバコ製品の製造において使用される他の成分と混ぜ合わされてよい。バイオマスまたは解剖学的部分材料と混ぜ合わされてよい例示的なタイプのさらなる成分として、香味料、充填剤、結合剤、pH調整剤、緩衝剤、着色剤、崩壊助剤、抗酸化剤、保湿剤および保存剤が挙げられる。代表的なタバコブレンド、非タバコ成分、およびこれらから製造される代表的なシガレットは、Lawsonらによる米国特許第4,836,224号、Perfettiらによる同第4,924,888号、Brownらによる同第5,056,537号、Gentryによる同第5,220,930号、Blakleyらによる同第5,360,023号、およびShaferらによる同第6,701,936号、ならびにBeremanによる国際公開第WO02/037990号に記載されている。これらのタバコ材料は、Sensabaughによる米国特許第4,793,365号、Clearmanらによる同第4,917,128号、Brooksらによる同第4,947,974号、Korteによる同第4,961,438号、Lawrenceらによる同第4,920,990号、Clearmanらによる同第5,033,483号、Gentryらによる同第5,074,321号、Drewettらによる同第5,105,835号、Riggsらによる同第5,178,167号、Clearmanらによる同第5,183,062号、Shannonらによる同第5,211,684号、Deeviらによる同第5,247,949号、Riggsらによる同第5,551,451号、Banerjeeらによる同第5,285,798号、Farrierらによる同第5,593,792号、Bensalemらによる同第5,595,577号、Countsらによる同第5,816,263号、Barnesらによる同第5,819,751号、Bevenらによる同第6,095,153号、Nicholsらによる同第6,311,694号、Nicholsらによる同第6,367,481号、Robinsonらによる同第7,726,320号、ならびにMatsuuraらによる国際公開第WO97/048294号およびSnaiderらによる国際公開第WO98/016125号に記載されているこれらのタイプのシガレットの製造にも使用され得る。また、Chemical and Biological Studies on New Cigarette Prototypes that Heat Instead of Fired Tobacco,R.J.Reynolds Tobacco Company Monograph(1988)and Inhalation Toxicology,12:5,p.1−58(2000)に記載のこれらのタイプの市販のシガレットも参照されたい。
【0048】
ニコチアナバイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分、加工バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分、およびバイオマス単離物またはもう1つの解剖学的部分からの単離物は、無煙タバコ製品、例えばルースモイストスナッフ、ルースドライスナッフ、噛みタバコ、ペレット状タバコ片(例えば、ピル、錠剤、球形物、コイン、ビーズ、オブロイロもしくはビーンの形状を有する)、押出もしくは形成されたタバコストリップ、片、ロッド、シリンダもしくはスティック、微細に分割された粉砕粉末、微細に分割もしくはミリングされた、粉末状片および成分の凝集体、フレーク様片、成形された加工タバコ片、タバコ含有ガム片、テープ様フィルムのロール、易水溶解性もしくは水分散性フィルムもしくはストリップ(例えば、Chanらによる米国特許出願公開第2006/0198873号)、または外側シェル(例えば、本来、透明、無色、半透明もしくは高度に着色していてよい軟質もしくは硬質外側シェル)とタバコもしくはタバコ香味を有する内側領域(例えば、ある形態のタバコを組み込んだニュートン流体もしくはチクソトロピー流体)とを有するカプセル様材料内に組み込まれていてよい。種々のタイプの無煙タバコ製品は、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる、Schwartzによる米国特許第1,376,586号、Leviによる同第3,696,917号、Pittmanらによる同第4,513,756号、Sensabaugh,Jr.らによる同第4,528,993号、Storyらによる同第4,624,269号、Townsendによる同第4,987,907号、Sprinkle,IIIらによる同第5,092,352号、およびWhiteらによる同第5,387,416号、Stricklandらによる米国特許出願公開第2005/0244521号およびEngstromらによる同第2008/0196730号、Arnarpらによる国際公開第WO04/095959号、Atchleyらによる国際公開第WO05/063060号、Bjorkholmによる国際公開第WO05/016036号、およびQuinterらによる国際公開第WO05/041699号に記載されている。また、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる、Williamsによる米国特許第6,668,839号、Williamsによる同第6,834,654号、Atchleyらによる同第6,953,040号、Atchleyによる同第7,032,601号、Atchleyによる同第7,694,686号、Holton,Jrによる同第7,861,728号、Stricklandによる同第7,819,124号、Dubeによる同第7,810,507号、およびNielsenらによる同第8,168,855号、ならびにWilliamsによる米国特許出願公開第2004/0020503号、Stricklandらによる同第2006/0191548号、Holton,Jr.らによる同第2007/0062549号、Robinsonらによる同第2008/0029116号、Muaらによる同第2008/0029117号、およびRobinsonらによる同第2008/0173317号に記載されているタイプの無煙タバコ配合物、成分、および加工方法も参照されたい。
【0049】
バイオマスまたは解剖学的部分材料を分離方法(例えば、冷却圧縮または溶媒抽出)に供し、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分のいくらかの部分を除去した後に残存するバイオマスまたは解剖学的部分材料の残部は、バイオマスまたは1つ以上の解剖学的部分、またはこれらからの単離物に関して本明細書に言及している任意のタバコ製品を含めたタバコ製品に組み込まれていてもよい。例えば、バイオマスまたは解剖学的部分材料の溶媒可溶性部分の溶媒抽出後に残存する不溶性パルプ残部が、同様に、タバコ組成物の構成要素として用いられてよい。
【0050】
本明細書における種々の例に記載されているような方法の実施形態は、以下に続き得るようにより完全に示されており、記載されているような方法を示すように記載されており、限定的であるとして解釈されてはならない。
【0051】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法に関連して、リグニンが、物理的および/または化学的に変換されていない、または変換されたバイオマスをニコチアナ種から加工することを通して容易に誘導されることが見出される。
【0052】
実施形態において、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法は、ある量のタバコバイオマスからリグニンを単離するための方法であって、例えば周囲温度で実施され、ある量のタバコバイオマスをある量の酸と接触させて酸性化された消化混合物を形成することと、ある量の酸性化された消化混合物をブタノールと接触させてブタノール含有混合物を形成することと、ブタノール含有混合物の、ブタノール可溶性相およびブタノール不溶性相への分離を行うことと、ブタノール可溶性相から単離リグニンを生じさせるのに十分なブタノール可溶性相からのブタノールの除去を行うことと、これにより、タバコバイオマス由来の単離リグニンを生じさせることとを含む方法を提供する。
【0053】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、ある量のタバコバイオマスは、フェムトグラム以下からメートルトン以上の範囲内のいずれかにある質量のタバコバイオマスを含むことができる。
【0054】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、周囲温度は、室内において、実験室において、収穫と同時もしくは後の畑において、または別の環境において慣習的に得られる温度であってよい。限定されないが、周囲温度は、約5℃と約40℃との間の温度であってよい。周囲温度は、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法による方法において、1つの部および/または工程から別の部および/または工程まで変動してよい。本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法は、例えば、周囲温度で実施されてよい。
【0055】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、ある量のタバコバイオマスの物理的完全性の崩壊は、タバコバイオマスの少なくとも一部への物理力の適用および/もしくは電磁放射の方向付けを介して、ならびに/または、より一般的には、限定されないが、刻み、粉砕、浸軟、細分、ミリング、分裂、すりつぶし、スライス、剪断、破砕、マイクロ波、凍結乾燥および/もしくは凍結融解を含めた、タバコバイオマスの量に影響をおよぼす任意の手段を通して行われ得る。
【0056】
実施形態において、方法は、タバコバイオマスからリグニンを単離するための方法であって、ある量のタバコバイオマスをある量の酸と接触させて、酸性化された消化混合物を形成することと、ある量の酸性化された消化混合物をある量のブタノールと接触させて、ブタノール含有混合物を形成することと、ある量のブタノール含有混合物の、ブタノール可溶性相およびブタノール不溶性相への分離を行うことと、ブタノール可溶性相からある量の単離リグニンを生じさせるのに十分なある量のブタノール可溶性相からのブタノールの除去を行うこととを含む方法において具現化される。
【0057】
別の実施形態において、酸が鉱酸であるような方法が記載される。
【0058】
さらに別の実施形態において、記載のように、分離が、溶媒抽出、クロマトグラフィ、蒸留、濾過、押圧、再結晶、および/または溶媒−溶媒分配を含む方法が具現化される。
【0059】
なお別の実施形態において、除去が、蒸発、昇華、凍結乾燥、溶媒抽出、クロマトグラフィ、蒸留、濾過、押圧、再結晶、および/または溶媒−溶媒分配によって行われるような方法が記載される。
【0060】
別の実施形態において、方法は、本質的にポリ−L−乳酸と、例として、限定されないが、ある量のタバコバイオマスをある量の酸と接触させて、酸性化された消化混合物を形成することを含む工程と、ある量の酸性化された消化混合物をある量のブタノールと接触させて、ブタノール含有混合物を形成することを含む工程と、ある量のブタノール含有混合物の、ブタノール可溶性相およびブタノール不溶性相への分離を行うことを含む工程と、ブタノール可溶性相からある量の単離リグニンを生じさせるのに十分なある量のブタノール可溶性相からのブタノールの除去を行うことを含むような工程とによって生成される単離タバコリグニンとからなる、プラスチックの製造において具現化される。
【0061】
さらに別の実施形態において、記載されているような方法は、例えば、単離タバコリグニンならびに好適な担体および/または希釈剤から本質的になる着色剤の製造であって、例として、限定されないが、単離タバコリグニンが、ある量のタバコバイオマスをある量の酸と接触させて、酸性化された消化混合物を形成することを含む工程と、ある量の酸性化された消化混合物をある量のブタノールと接触させて、ブタノール含有混合物を形成することを含む工程と、ある量のブタノール含有混合物の、ブタノール可溶性相およびブタノール不溶性相への分離を行うことを含む工程と、ブタノール可溶性相からある量の単離リグニンを生じさせるのに十分なある量のブタノール可溶性相からのブタノールの除去を行うことを含む工程とによって生成される製造において具現化される。
【0062】
なお別の実施形態において、タバコ製品を消費することを望む消費者による消費のためのタバコ製品の製造方法であって、該製品が、ある量のタバコバイオマスをある量の酸と接触させて、酸性化された消化混合物を形成することを含む工程と、ある量の酸性化された消化混合物をある量のブタノールと接触させて、ブタノール含有混合物を形成することを含む工程と、ある量のブタノール含有混合物の、ブタノール可溶性相およびブタノール不溶性相への分離を行うことを含む工程と、ブタノール可溶性相からある量の単離リグニンを生じさせるのに十分なある量のブタノール可溶性相からのブタノールの除去を行うことを含む工程とによって生成される単離タバコリグニンを含んでいる、方法が本明細書に記載される。
【0063】
特定の実施形態において、方法は、記載されているような製品の製造であって、該製品が、プラスチックおよび/または着色剤を含み、プラスチックおよび/または着色剤が、本明細書に記載されているような単離タバコリグニンを含む製造において具現化される。
【0064】
タバコ由来のリグニンは、いわゆる「黒液」方法の産物の構成要素であることが知られている。この方法の産物は、利益のために売却できるものとして、または商品としては当該分野において知られていなかったが、むしろ、燃やされる、または他の場合にはいくらかの無視できないコストで廃棄される、または他の場合には最小の価値の何か他の物の代替物として用いられることが当該分野において知られていた。
【0065】
リグニンは、純粋な形態ではほとんど単離されず、他の汚染材料を概して含まないことはないということが当該分野において知られていた。リグニンを生じさせることができるパルプ化方法には、タバコバイオマスの酸消化、続いての酸消化物の溶媒抽出があり得る。エタノールが抽出溶媒として当該分野において用いられてきた。驚くべきことに、種々の実施形態において本明細書に記載されているような方法において、酸消化物のブタノール抽出により、高純度かつ独特の特性のリグニンが生じることが見出された。こうして得られるリグニンは、色および表面テクスチャにおいて黒曜石に似た黒色固体であった。
【0066】
上記のタバコバイオマスの酸消化物のブタノール抽出から誘導されるリグニンを、種々の濃度(例えば、5%、10%、40%)でポリ−L−乳酸(PLA)と混合し、得られるポリマーの色を記述した。5%または10%の濃度のリグニンにより、褐色の生成物が生じたが、40%の濃度のリグニンにより、黒色の生成物が生じた。かかる生成物は、成形性または可鍛性プラスチックであった。実施形態において、リグニンは、部分的または完全に熱分解されても、熱分解されないままであってもよい。未熱分解リグニンが例えばPLAと混合される実施形態において、得られるポリマーは、褐色を有していてよい。熱分解リグニンが例えばPLAと混合される実施形態において、得られるポリマーは、灰色または黒色を有していてよい。
【0067】
したがって、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるようなタバコ由来のリグニンは、包装または印刷目的の染料として有用である。加えて、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるようなタバコ由来のリグニンは、プラスチック物品を作製するのに用いられる任意の種々のポリマー、限定されないが、PLA、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンを含めたポリマーに相溶性の可塑剤または充填剤として有用である。ある配合物において、褐色フィルムまたは金色フィルムを作製し得る、得られるプラスチックの熱成形が可能である。
【0068】
したがって、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるようなタバコ由来のリグニンは、着色剤として有用である。本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるようなタバコ由来のリグニンは、所望の特性をポリマーに与えるのに有用である。例えば、PLAは、望ましくない高い割合での酸素の横断を可能にするため、準最適なバリア材料として当該分野においてみなされていた。さらに、PLAは、成形されるときに、脆性になることが当該分野において知られている。本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるようなタバコ由来のリグニンは、PLAと組み合わされるとき、純粋なPLAポリマーよりも軟性でありかつ脆性であるポリマーを作製するのに有用である。かかるリグニン−PLA製品は、したがって、種々の用途で、純粋なPLAポリマーよりも有用である。
【0069】
同様に、「BPA不含」または「フタレート不含」であるプラスチック製品の消費者の需要を考えると、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるようなタバコ由来のリグニンは、BPA不含および/またはフタレート不含プラスチック製品を作製するのに有用である。
【0070】
本明細書に記載されているような方法によって調製される代表的なサンプルは、1.81%の水分含量(真空オーブンにおいて約72時間一定重量)を有すると決定された。灰分含量もまた、代表的なサンプルで決定した。この試験では、きれいな、乾燥した、蓋付きの磁器製るつぼをマッフル炉において525℃で約30〜40分間強熱した。るつぼをオーブンから取り出した後、デシケータに入れ、室温に冷却し秤量した。次いで、オーブン乾燥したサンプル(OD)をるつぼに入れ、温度で強熱した。全てのサンプルの合計灰分含量を表1に示す。燃焼が525℃において不完全であったため、サンプルを次いで900℃のマッフル炉に入れた。第1サンプルは、525℃における灰分が1.78%、900℃における灰分が1.38%であると決定された。第2サンプルは、525℃における灰分が1.03%、900℃における灰分が0.93%であると決定された。第3サンプルは、525℃における灰分が1.76%、900℃における灰分が1.43%であると決定された。
【0071】
本明細書に記載されているような方法によって調製される代表的なサンプルにおける合計リグニン含量は、TAPPIの標準法T222原法(om)11およびTAPPIの有効法(um)250を用いて決定された。3つのODサンプルを秤量し、72%硫酸を添加した3つの三角フラスコにそれぞれ入れた。サンプルを断続的に振とうおよび混合しながら2時間静置させ、その後、酸を3%に希釈して、サンプルを4時間(体積を維持)沸騰させた。沸騰後、サンプルを一晩冷却させ、沈殿したリグニン(酸不溶性/Klason)を予め秤量したグーチェるつぼを通して濾過し、次いで105℃において一定重量までオーブン乾燥した。濾液を収集し、UV−Visによって酸可溶性リグニンに用いた。合計リグニン含量を、酸不溶性/Klasonリグニンおよび酸可溶性リグニンの総計として算出した。第1サンプルは、75.27%の酸不溶性リグニン、1.60%の酸可溶性リグニン、したがって76.87%の合計リグニンを有すると決定された。第2サンプルは、76.64%の酸不溶性リグニン、1.52%の酸可溶性リグニン、したがって78.16%の合計リグニンを有すると決定された。第3サンプルは、76.25%の酸不溶性リグニン、1.47%の酸可溶性リグニン、したがって77.72%の合計リグニンを有すると決定された。
【0072】
ニトロベンゼンの酸化を、Boseら(Bose,S.K.、Francis,R.C.、Govender,M.、Bush,T.、Spark,A.Lignin Content Versus Syringyl to Guaiacyl Ratio Amongst Poplars.Bioresour.Technol.2009,100,1628−1633)の手順を用いて実施した。典型的な実験において、50mgのODリグニンサンプルを小さなスチール製オートクレーブに入れた。リグニンに、40mLの2M NaOHおよび2.5mLのニトロベンゼンを添加した。オートクレーブを窒素でフラッシングした後、Teflonガスケットで固定したねじ口で密封し、断続的に振とうしながら、予め加熱した油浴に170℃で2.5時間置いた。反応終了後、オートクレーブを室温に冷却し、反応混合物をCHC13によって3×回抽出した。水相のpHを濃HC1で約pH3に調整し、次いでジエチルエーテルで3×回抽出した。エーテル抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、真空中で蒸発乾固した。内部標準の2,6−ジメトキシフェノールを反応生成物に添加し、続いて、混合物全体をBSTFAでシリル化し、GC−MSによって分析した。初めに実験を行ったところ(サンプルS1およびS2)、反応性が非常に乏しかった。サンプルの大部分が未反応であり、これは、サンプルの性質に起因するものである場合があった。反応性の欠失を確認するために、最初のサンプルを、乳棒および乳鉢を用いて粉砕し、実験を繰り返した(サンプルS3、S4、S5)。反応収率は、表1および2に見られるように、サンプルの粉砕後に顕著な増加を示した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
アルカリ酸化は、Wuら(Wu,G.、Heitz,M.、Chornet,E.Improved Alkaline Oxidation Process for the Production of Aldehydes(Vanillin and Syringaldehyde)from Steam−Explosion Hardwood Lignin.Ind Eng Chem Res 1994,33,718−723)の技法を用いて、若干修飾して実施した。典型的な実験において、およそ5gのODリグニンを、50mLのアルカリ溶液(50mLのDI水中6.75gのNaOH)、0.25gのCuSO4および0.025gのFeC13を添加したパール反応器に入れた。反応器を一定撹拌しながらシールし、冷圧で200psiの酸素を導入した。次いで、反応器の温度を170℃に設定し、該温度で反応を10分間継続させた。反応器を室温まで冷却し、残存酸素をベントした後、反応混合物を濾過して触媒および未反応リグニンを除去した。次いで、濾液(およびパール反応器からの洗浄液)を約pH2に酸性化し、沈殿したリグニンを除去した。第1実験において(サンプルS1)、濾過を実施して、効果的に作用しなかった沈殿リグニンを分離した。こうして、サンプルS2およびS3に関して、遠心分離を使用してリグニンを沈殿させ、上澄みを収集し、次いで酢酸エチルによって抽出した(4×)。有機抽出物を乾燥し、濾過し、溶媒を真空中で蒸発させた。内部標準を残存油に添加し、混合物をシリル化し、GC−MSによって分析した。リグニン重量およびサンプル重量換算のパーセント収率を表3および4に報告した。ガスクロマトグラフィ−質量分析によって検出されたある特定の化合物を表5に列挙する。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
3種のフェニルプロパン単位の重合および酸化からのリグニン茎の構造が広く受け入れられている。これらの単位は、コニフェリル(グアヤシル、G)、シナピル(シリンギル、S)およびp−クマル(H)である。酸化性リグニン分解の下、これらG、SおよびH単位は、それぞれ、バニリン、シリンガアルデヒドおよび置換フェノールの誘導体を優先的に生ずる。タバコ茎由来の、本明細書に記載されているような方法によって調製されるリグニンサンプルの代表的なS/G比は、0.72である(平均、n=5)。
【0080】
例において、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法では、タバコバイオマスの1kgサンプルから約0.2kgのリグニンが誘導された。
【0081】
例において、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製される任意の多くの濃度のリグニンを、任意の多くの濃度のポリマー、例えばポリプロピレンと混合した。Borealis製の高密度ポリプロピレンRE420MO−B2−3636を、ある特定の混合物の作製において原料として用いた。ある特定のリグニンサンプルは、1種以上の揮発性成分を付加的に含み、ある特定の他のサンプルは、かかる1種以上の揮発性成分を付加的に含まなかった。0%の揮発分、3.7%の揮発分、6.5%の揮発分、7%の揮発分、10.5%の揮発分または17%の揮発分を含むリグニンを、混合物の作製において原料として用いた。
【0082】
別の例において、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製される任意の多くの濃度のリグニンを、任意の多くの濃度のポリマー、例えばポリプロピレンと混合した。Borealis製の高密度ポリプロピレンRE420MO−B2−3636を、ある特定の混合物の作製において原料として用いた。ある特定のリグニンサンプルは、1種以上の揮発性成分を付加的に含み、ある特定の他のサンプルは、かかる1種以上の揮発性成分を付加的に含まなかった。例えば、二元リグニン−ポリプロピレン混合物におけるリグニンの割合は、1%、2%、4%、5%、10%、20%または50%であった。
【0083】
付加的な例において、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製される任意の多くの濃度のリグニンを、任意の多くの濃度のポリマー、例えばポリプロピレンと混合して、二元混合物を作製した。二元混合物を、当該分野において知られている1種以上の方法によって混ぜ合わせ、当該分野において知られている1種以上の方法によって押出し、押出混合物を作製した。次いで、押出混合物を当該分野において知られている1種以上の方法によってミリングして、粒状物を形成した。
【0084】
予測例において、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製される任意の多くの濃度のリグニンを、任意の多くの濃度のポリマー、例えばポリ−L−乳酸(PLA)、ポリエチレン(PET)またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、例えばポリ(3−ヒドロキシブチレート)(PHB)またはポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)と混合する。ある特定のリグニンサンプルは、1種以上の揮発性成分を付加的に含んでいてよく、ある特定の他のサンプルは、かかる1種以上の揮発性成分を付加的に含まなくてよい。0%の揮発分、3.7%の揮発分、6.5%の揮発分、7%の揮発分、10.5%の揮発分または17%の揮発分を含むリグニンを、混合物の作製において原料として用いることができる。例えば、リグニンとPLA、PETまたはPHAのいずれかとの二元混合物におけるリグニンの割合は、1%、2%、4%、5%、10%、20%、50%、75%または90%であってよい。かかる二元混合物を、当該分野において知られている1種以上の方法によって混ぜ合わせ、当該分野において知られている1種以上の方法によって押出して、押出混合物を作製することができる。かかる押出混合物を当該分野において知られている1種以上の方法によってミリングして、粒状物を形成することができる。
【0085】
例において、より小さなリグニン粒子は、より大きなリグニン粒子よりも、ポリプロピレンとより効率的に混合した。ポリプロピレンとの二元混合物におけるリグニンの割合が増加するに従い、より大きなリグニン粒子が、ポリプロピレンと、より効率的に混合した。
【0086】
別の例において、二元混合物において比較的小さな百分率で非常に微細なリグニン粒子をポリプロピレンと直接混合し、1つ以上の形成プラスチック物品にさらに加工するのに有用な混合物を作製した。別の例において、二元混合物において比較的高い百分率でより大きなリグニン粒子をポリプロピレンと混ぜ合わせて混合物を作製し、次いで該混合物を押出し、その後ミリングして、1つ以上の形成プラスチック物品にさらに加工するのに有用な粒状物を形成した。
【0087】
例において、表6に示す以下の試験方法のそれぞれを使用して、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるリグニンとびポリプロピレンとの1種以上の混合物、および/または本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるリグニンとポリプロピレンとから作製される二元混合物から作製される1つ以上の形成プラスチック物品の特性を評価した。
【0088】
【表6】
【0089】
各例において、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるリグニンとポリプロピレンとの混合物、および/または本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によって作製されるリグニンとポリプロピレンとの二元混合物から作製された形成プラスチック物品に関して試験結果を得、この結果は、ポリプロピレン単独、またはポリプロピレン単独から作製された形成プラスチック物品で得られた試験結果と同等であった。典型的には、同等の結果は、対応するポリプロピレンのみの結果の±50%以内であり、多くの場合、±25%、または±10%以内であった。
【0090】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、顔料および充填剤は機械的に同じであってよいが、製品に与えられる特性に関して基本的に異なる目的を果たすことができる。顔料の目的は、材料の光学特性を変化させることであり得る。充填剤の目的は、材料の機械的、物理的またはコスト的特徴を変化させることであり得る。
【0091】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、コーティングが別の材料の表面に適用されてよい。コーティングは、かかる材料に接着していてよく、またはコーティングは、かかる材料に接着していなくてよい。コーティングは、材料内の表面に適用されてよい。例えば、紙またはプラスチックフィルムの外面にコーティングを適用し、紙またはプラスチックフィルムの別の層を、当該紙またはプラスチックフィルムの別の法律家がこうして適用されたコーティングに接触するように、適用することができる。かかる適用は、かかるコーティングを紙またはプラスチックの2つの層間に設けることができる。かかるコーティングは、かかる2つの層間で、剥離可能なシールとして機能することができる。リグニンに1種以上の金属イオンがドープされて、プラスチック層におけるコーティングとして設けられるとき、積層体が形成され、該積層体は、1種以上の金属イオンがドープされたコーティングに沿って電気を実質的に伝導させ得るが、隣接するプラスチック層には電気を実質的に伝導させ得ない。リグニンは、当該分野において知られている1種以上の方法によって印刷されて、回路基板の構成要素を形成することができる。1種以上の金属イオンがドープされたリグニンは、印刷されて、回路基板の導電性構成要素を形成することができる。1種以上の金属イオンがドープされていないリグニンは、印刷されて、回路基板の非導電性構成要素を形成することができる。1種以上の金属イオンがドープされたリグニンおよび/または1種以上の金属イオンがドープされていないリグニンが印刷されたかかる回路基板は、とりわけ、タバコ製品、例えば電子シガレットの強熱の制御に有用であり得る。
【0092】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、タバコ以外の植物が、リグノセルロース系バイオマス源として有用であり得る。したがって、タバコバイオマス以外のリグノセルロース系バイオマスは、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によるタバコバイオマスに置き換えられ得る。本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、リグノセルロース系バイオマスとして、例えば、リグノセルロース系農業残渣、リグノセルロース系林業残渣、わら、スイッチグラス、トウモロコシ茎葉、木、または、より一般的には、1種以上の植物由来のリグノセルロース系バイオマスを挙げることができる。本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、リグノセルロース系バイオマスは、セルロース、1種以上のヘミセルロースおよびリグニン、ならびに場合により1種以上の構造タンパク質、脂質および灰分を含むことができる。
【0093】
本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法によると、ブタノール以外の溶媒が、リグニンの溶解に有用であり得、したがって、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法におけるブタノールに置き換えられ得る。ブタノール以外の脂肪族アルコールが、ブタノールの全体または一部に置き換えられ得る。芳香族アルコールが、ブタノールの全体または一部に置き換えられ得る。
【0094】
本発明が関連する当業者は、上記の説明に提示されている教示の利益を有する本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法の多くの変更および他の実施形態を思い付くであろう。そのため、本明細書における種々の実施形態に記載されているような方法が、開示されている特定の実施形態に限定されないこと、ならびに変更および他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図されることを理解されたい。特定の用語が本明細書において使用されているが、かかる用語は、一般的かつ説明的な意味で用いられており、限定を目的とするものではない。