特許第6479901号(P6479901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6479901エレベータ装置およびエレベータ制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479901
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】エレベータ装置およびエレベータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20190225BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20190225BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   B66B11/02 S
   B66B3/00 G
   B66B1/14 F
   B66B11/02 E
   B66B11/02 P
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-133497(P2017-133497)
(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公開番号】特開2019-14577(P2019-14577A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓史
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−265898(JP,A)
【文献】 特開2017−114672(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3125304(JP,U)
【文献】 特開昭61−263589(JP,A)
【文献】 特開昭62−249883(JP,A)
【文献】 特開2010−120735(JP,A)
【文献】 特開2010−247983(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0055828(US,A1)
【文献】 特開2015−037983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
B66B 1/14
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、
前記乗りかごの側面に設けられ、非常時用の物品を収納する筐体部と、
前記乗りかごの壁面として設けられ前記乗りかごと前記筐体部とを隔てるハーフミラーと、
前記筐体部に設けられた第1の磁性体と、前記ハーフミラーの縁部に設けられた第2の磁性体と、前記ハーフミラーの他の縁部を前記乗りかご又は前記筐体部に支持し、前記ハーフミラーの回動を可能とする回転軸部とを有し、前記回転軸部の回動により前記第1の磁性体と第2の磁性体との着固を脱離させ、前記ハーフミラーの縁部を前記乗りかご内へ開扉して前記筐体部を開放する開閉機構と、
前記筐体部に設けられ、エレベータの制御盤から制御信号を受信したときに点灯し、前記非常時用の物品を照明し、前記乗りかご内へ光を透過させる照明装置と、
を具備したエレベータ装置。
【請求項2】
前記筐体部近傍または筐体部内に設けられ、自装置が備える表示用の照明により、前記乗りかご内から前記ハーフミラーを介して表示面を視認できる表示装置を具備した、請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記筐体部には非常時用の物品として自動体外式除細動器が収納されており、
前記表示装置は、前記制御信号を受信したときに、前記自動体外式除細動器の使用方法または前記自動体外式除細動器が呼び出されたことを表示する、
請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記筐体部には非常時用の物品として防災用備品が収納されており、
前記表示装置は、前記制御信号を受信したときに、前記制御信号を受信したことを表示する、
請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記照明装置は、所定の時間間隔で前記非常時用の物品を照明し、前記乗りかご内に前記非常時用の物品の収納場所を通知する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
前記開閉機構は、前記制御信号を受信したときに、前記ハーフミラーの縁部を前記乗りかご内に押出して開扉する、前記第1の磁性体の近傍にアクチュエータを更に設けた、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
階床に設けられた釦を押して信号を制御盤に送信し、前記制御盤が前記信号に基づいてエレベータの乗りかごの昇降制御を行うエレベータ制御システムであって、
前記エレベータは、前記乗りかごの側面に設けられ自動体外式除細動器を収納する筐体部と、前記乗りかごの壁面として設けられ前記乗りかごと前記筐体部とを隔てるハーフミラーと、前記ハーフミラーの縁部を前記乗りかご内へ開扉して前記筐体部を開放する開閉機構と、前記筐体部に設けられた照明装置と、を具備し、
前記階床は前記乗りかごを当該階床に呼び出すAED呼出釦を具備し、
前記AED呼出釦が押されると、前記乗りかごを呼び出す、呼出信号を前記制御盤に送信し、
前記制御盤が前記呼出信号を受信すると、非常時用制御信号を前記乗りかごに送信し、
前記乗りかごを前記AED呼出釦が押された階床に移動させ、
前記乗りかごが前記非常時用制御信号を受信すると、前記照明装置が点灯して前記自動体外式除細動器を照明し、前記乗りかご内へ光を透過させることで前記乗りかご内から前記筐体部内を視認することを可能とする、
エレベータ制御システム。
【請求項8】
前記筐体部近傍または筐体部内に設けられ、自装置が備える表示用の照明により、前記乗りかご内から前記ハーフミラーを介して表示面を視認できる表示装置を更に具備し、
前記乗りかごが前記非常時用制御信号を受信すると、前記表示装置に前記自動体外式除細動器の使用方法または前記自動体外式除細動器が呼び出されたことを表示する、
請求項7に記載のエレベータ制御システム。
【請求項9】
前記AED呼出釦を備える階床は階床用表示装置を具備し、
前記AED呼出釦が押され、前記呼出信号が前記制御盤に送信されると、前記階床用表示装置に前記自動体外式除細動器の使用方法または前記自動体外式除細動器が呼び出されたことを表示する、
請求項7または請求項8に記載のエレベータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ装置およびエレベータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの乗りかご側板に筐体を設け、筐体内部に自動体外式除細動器(AED)を設けたエレベータが知られている。(例えば特許文献1)このエレベータは、AEDを必要とする患者がどの階床で発生しても、エレベータにより患者のいる階床にAEDを提供することができる。
【0003】
しかし、筐体はエレベータの出入口に対向する、奥の側板に設けられることが多く、当該側板は利用者の目に留まる機会が多いことから、筐体の蓋などが側板に現れていると、エレベータの意匠性を損ねるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−265898号公報
【特許文献2】特表2015−526358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、エレベータの意匠性を損なわずに非常時用の物品の収納を利用者に知らせるエレベータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、実施形態のエレベータ装置は、乗りかごと、前記乗りかごの側面に設けられ、非常時用の物品を収納する筐体部と、前記乗りかごの壁面として設けられ前記乗りかごと前記筐体部とを隔てるハーフミラーと、前記筐体部に設けられた第1の磁性体と、前記ハーフミラーの縁部に設けられた第2の磁性体と、前記ハーフミラーの他の縁部を前記乗りかご又は前記筐体部に支持し、前記ハーフミラーの回動を可能とする回転軸部とを有し、前記回転軸部の回動により前記第1の磁性体と第2の磁性体との着固を脱離させ、前記ハーフミラーの縁部を前記乗りかご内へ開扉して前記筐体部を開放する開閉機構と、前記筐体部に設けられ、エレベータが制御信号を受信したときに点灯し、前記非常時用の物品を照明し、前記乗りかご内へ光を透過させる照明装置と、を具備する。
【0007】
上記課題を解決するため、実施形態のエレベータ制御システムは、階床に設けられた釦を押して信号を制御盤に送信し、前記制御盤が前記信号に基づいてエレベータの乗りかごの昇降制御を行うエレベータ制御システムであって、前記エレベータは、前記乗りかごの側面に設けられ自動体外式除細動器を収納する筐体部と、前記乗りかごの壁面として設けられ前記乗りかごと前記筐体部とを隔てるハーフミラーと、前記ハーフミラーの縁部を前記乗りかご内へ開扉して前記筐体部を開放する開閉機構と、前記筐体部に設けられた照明装置と、を具備し、前記階床は前記乗りかごを当該階床に呼び出すAED呼出釦を具備し、前記AED呼出釦が押されると、前記乗りかごを呼び出す呼出信号を前記制御盤に送信し、前記制御盤が前記呼出信号を受信すると、非常時用制御信号を前記乗りかごに送信し、前記乗りかごを前記AED呼出釦が押された階床に移動させ、前記乗りかごが前記非常時用制御信号を受信すると、前記照明装置が点灯して前記自動体外式除細動器を照明し、前記乗りかご内へ光を透過させることで前記乗りかご内から前記筐体部内を視認することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るエレベータ装置の構造の斜視図。
図2】筐体部とハーフミラーの開閉機構の構造図。
図3】ハーフミラーを開扉した場合のエレベータ装置の構造の斜視図。
図4】筐体部の構造図。
図5】階床におけるAED呼出釦の図。
図6】第1の実施形態に係るエレベータ制御システムの構成図。
図7】AED呼出釦が押されたときの乗りかごの内部の図。
図8】第2の実施形態おける表示装置、ハーフミラー、筐体部の斜視図。
図9】AED呼出釦が押されたときの乗りかごの表示装置の表示の図。
図10】アクチュエータを用いた開閉機構の構造図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、エレベータ装置およびエレベータ制御システムの実施形態を図面に基づき説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るエレベータ装置について詳述する。図1は本実施形態に係るエレベータ装置100の構造についての斜視図である。エレベータ装置100は乗りかご10と筐体部20とハーフミラー30と照明装置40とを具備している。
【0011】
乗りかご10は、人の出入りを行う出入口11と、出入口11に対向する側面である壁面12と、出入口11から向って左右に位置する左側面13L、右側面13R(図1では図示を省略)、かご床14、かご天井15(図1では図示を省略)を具備している。乗客は出入口11から乗車して、左右側面13L、13Rとかご床14とかご天井15とに囲まれた空間にて、エレベータの操作を行うことができる。当該空間を乗りかご10内と称する。
【0012】
壁面12において、乗りかご10内を構成する面とは他の面に筐体部20が設けられている。即ち、筐体部20は乗りかご10の外側に設けられている。
【0013】
筐体部20は、AEDなど非常時用の物品を収納されている。本実施形態では非常時用の物品としてAED60を用いて説明する。
【0014】
壁面12はハーフミラー30とその両側に側面31とを有している。ハーフミラー30は乗りかご10の壁面として設けられており、筐体部20とを隔てている。以下、ハーフミラー30の乗りかご10内にある面を表面とし、筐体部20が設けられた面を裏面とする。
【0015】
ハーフミラー30は鏡の機能として車いすの乗客の乗降を手助けする役割を有するほか、側面31と合わせて乗りかご10の内装における意匠性を有している。
【0016】
照明装置40は筐体部20に設けられている。エレベータが通常運行をしている場合は、照明装置40は消灯をしており、乗りかご10内は筐体部20よりも明るい状態となる。このため、ハーフミラー30は鏡としての機能を有する。
【0017】
AED60を搬送する非常時の運行をする場合において、エレベータが非常時用の制御信号(以下、非常時用制御信号161とする)を受信すると照明装置40が点灯し、AED60に光を照射する。照明装置40が点灯すると、ハーフミラー30は照明装置40の光を乗りかご10内へ透過する。これにより、乗客はAED60が筐体部20に収納されていることを視認することができる。即ち、非常時の場合、ハーフミラー30は透過機能を有する。
【0018】
図2は筐体部20とハーフミラー30との開閉機構の構造図であり、図1のAB間における断面の図である。図3はハーフミラー30を開扉した場合のエレベータ装置の構造の斜視図である。ハーフミラー30は縁部を乗りかご10内へ引きこみ開扉することで筐体部20を開放し、乗りかご10と筐体部20とを連接することが可能となる。即ち、ハーフミラー30は筐体部20の蓋部の役割を有する。乗客はハーフミラー30を開扉することで、乗りかご10内から筐体部20に収納されているAED60(図2では図示を省略)を取り出すことが可能である。
【0019】
乗りかご10とハーフミラー30とは開閉機構50を有しており、開閉機構50によりハーフミラー30を乗りかご10内に引き込み開扉することが可能である。開閉機構50は第1の磁性体51と第2の磁性体52と回転軸部53とを有している。
【0020】
図2(a)のように筐体部20には第1の磁性体51が設けられており、ハーフミラー30には第1の磁性体51に対応する第2の磁性体52が設けられている。更に乗りかご10または筐体部20と、ハーフミラー30とは回転軸部53にて支持されている。回転軸部53はハーフミラー30の第2の磁性体52が設けられた縁部とは他の縁部に設けられている。回転軸部53を軸としてハーフミラー30を回動させると、第1の磁性体51と第2の磁性体52とが脱離し、ハーフミラー30の第2の磁性体52が設けられた縁部を乗りかご10内へ引き込むことができる。
【0021】
図2(b)はハーフミラー30を閉じたときの状態である。回転軸部53を回動し、ハーフミラー30を筐体部20側へ押し込むことで第1の磁性体51と第2の磁性体52とを磁力により着固し、ハーフミラー30を閉扉することができる。
【0022】
なお、図2では回転軸部53を筐体部20と乗りかご10とハーフミラー30とに設けたが、乗りかご10とハーフミラー30とに設けてもよく、筐体部20とハーフミラー30とに設けてもよい。
【0023】
ハーフミラー30を開扉した場合、図3のように乗りかご10と筐体部20とが連接され、AED60を乗りかご10内から取り出すことが可能となる。
【0024】
図4は筐体部20の内部の構造図である。筐体部20は開口部の片側に第1の磁性体51が設けられている。さらに照明装置40が光を照射し、AED60の表面を照明するよう設けられている。ただし、筐体部20の大きさ、第1の磁性体51の配置、照明装置40の配置は図4に限定はされない。
【0025】
以下、第1の実施形態に係るエレベータ制御システムについて詳述する。本実施形態に係るエレベータ制御システム200は、階床の乗り場に設けられたAEDを呼び出す専用の釦、AED呼出釦を有している。図5は階床の乗り場に設けられたAED呼出釦一例である。階床の乗り場には階床扉70と乗り場案内装置71とを備えている。乗り場案内装置71にはエレベータの上昇、降下の呼出釦のほかにAED呼出釦72が設けられている。また、乗り場にはエレベータの運行状況などを表示する、階床用表示装置73が設けられていてもよい。
【0026】
図6は第1の実施形態であるエレベータ制御システム200の構成図である。本実施形態に係るエレベータ制御システムでは昇降路内に乗りかご10とカウンタウエイト(釣り合い錘)110とがメインロープ120にて接続されている。昇降路の上部にはエレベータ全体の制御を行う制御盤130が昇降路の上部に備えられており、さらに巻上機140が設けられている。巻上機140には、メインロープ120が巻き架けられている。制御盤130の制御に基づいて巻上機140が駆動されることによって、メインロープ120の両端に接続された乗りかご10及びカウンタウエイト110が互いに反対方向に昇降動作する。制御盤130と乗りかご10とはテールコード150にて接続されている。テールコード150は制御盤130が乗りかご10を制御するための信号を伝送するコードである。
【0027】
各階床(a〜c)にはAED呼出釦72(72a、72b、72c)が設けられており、各AED呼出釦72は階床の乗り場の壁面内部に設けられた伝送路(図6の点線)を介して制御盤130へと接続されている。
【0028】
図6の階床bに患者がおり、階床bに設けられたAED呼出釦72bが押された場合、エレベータ呼出信号160が階床の情報とともに制御盤130に送信される。制御盤130はエレベータ呼出信号160を受信すると、非常時用制御信号161をテールコード150にて乗りかご10に送信し、かつ、巻上機140を制御して乗りかご10を階床bに着床させる。非常時用制御信号161は筐体部20に設けられた照明装置40を点灯させ、乗りかご10のかご扉を戸開し待機させる信号である。制御盤130は乗りかご10のかご扉を戸開したタイミングで階床bの階床扉70を戸開する。
【0029】
図7はAED呼出釦72bが押されたときの乗りかご10の内部の図である。ハーフミラー30の裏面に位置する筐体部20内の照明装置40が点灯し、AED60を照明することで、照明装置40の光がハーフミラー30を透過し、AED呼出釦72bを押した者や乗客は筐体部20のAED60の位置を視認することが可能となる。
【0030】
AED呼出釦72bを押した者や乗客は開閉機構50によりハーフミラー30を開扉することで、AED60を取り出し、使用することができる。
【0031】
以上より、本実施形態はエレベータの意匠性を損なわずに非常時用の物品(AED)の収納を利用者に知らせることが可能としている。
【0032】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るエレベータ装置101およびエレベータ制御システム201は第1の実施形態のハーフミラー30の近傍に表示装置80を設けたものである。
【0033】
図8は第2の実施形態における表示装置80、ハーフミラー30、筐体部20の斜視図である。表示装置80は筐体部20が設けられたハーフミラー30の面と同一面側(裏面側)に、筐体部20の近傍に設けられている。表示装置80の表示面81は乗りかご10内に向かって設けられている。
【0034】
表示装置80はバックライト等、表示用の照明(図示せず)を備えており、表示面81の表示を、自装置の照明を用いてハーフミラー30を介して乗りかご10内の乗客に対して表示することができる。
【0035】
エレベータが通常運行をしている場合は、ハーフミラー30は鏡としての機能を有しつつ、表示装置80に対応する部分は表示面81の表示をするため、高い意匠性を有する。
【0036】
AED呼出釦72が押されて、AED60を搬送する非常時の運行をする場合、エレベータが非常時用制御信号161を受信すると照明装置40が点灯し、AED60を照明する。それとほぼ同時に表示装置80の表示面81は、通常運行用の表示から非常時用の表示に切り替える。
【0037】
図9はAED呼出釦72が押されたときの乗りかご10の表示装置80の表示の例示の図である。図9(a)はAED60の使い方について説明をした動画や静止画などが表示される。一般的にAEDは小型化されており、AEDに備えつけられたディスプレイは小さい場合がある。図9(a)はAED60に備え付けられたディスプレイに表示されるものと同様の表示を行うことで、AED60の使用者の補助を行うことができる。
【0038】
図9(b)はAED呼出釦72が押されて、エレベータがAED60を搬送する運行となった旨を伝える、救命呼び発生の表示をする。乗客に当該エレベータが通常運行から非常時の運行となったことを知らせ、他のエレベータを利用することを促すことが可能となる。
【0039】
表示装置80は乗りかご10の外壁もしくは筐体部20に支持されており、ハーフミラー30を開扉した場合、AED60の使用者は表示面81を直接に視認することができる。
【0040】
本実施形態に係るエレベータ制御システム201の構成図は図6と同様である。ただし、本実施形態に係るエレベータ制御システム201と第1の実施形態に係るエレベータ制御システム200の差異は、非常時用制御信号161に表示面81の切り替えを行う信号を付加したことである。即ち、非常時用制御信号161は筐体部20に設けられた照明装置40を点灯させ、表示装置80に非常時用の表示を行わせ、乗りかご10のかご扉を戸開し待機させる信号である。
【0041】
本実施形態では表示装置80を筐体部20の近傍に設置した場合について説明をしたが、筐体部20が乗りかご10の昇降方向に長い辺を有しており、表示装置80が筐体部20の内部に設けられていてもよい。
【0042】
以上より、本実施形態はエレベータの意匠性を損なわずに非常時用の物品(AED)の収納を利用者に知らせ、更に表示装置によりAEDの使用方法や救命呼び発生の告知を知らせることが可能としている。
【0043】
(実施形態の変形例)
第1の実施形態に係るエレベータ装置100および第2の実施形態に係るエレベータ装置101は非常時用制御信号161を受信した場合、照明装置40を点灯した。変形例として、非常時用制御信号161を受信していないとき、即ち通常運行時において、所定の時間間隔にて照明装置40を点灯させてAED60が筐体部20に格納されていることを通知してもよい。
【0044】
通常運行時における照明装置40の点灯は一例として、非常時用制御信号161とは別に制御盤130から制御信号を送信し、乗りかご10が受信するとしてもよい。また、筐体部20内にタイマーをセットし、タイマーに連動して照明装置40を点灯しても良い。
【0045】
通常運行時において、AED60の収納場所を定期的に知らせることで、乗客にエレベータがAED60を備えていることを記憶させることが可能である。
【0046】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るエレベータ装置102およびエレベータ制御システム202は第1の実施形態および第2の実施形態の筐体部20にアクチュエータ90を更に設けた開閉機構50を有する。
【0047】
図10はアクチュエータ90を用いた筐体部20と開閉機構50の構造図であり、図1のABにおける断面図である。図10(a)において、アクチュエータ90は第1の磁性体51の近傍に設けられており、筐体部20に支持されている。アクチュエータ90は本体部91とスライド部92とを有しており、AED呼出釦72が押されて制御盤130から非常時用制御信号161を受信すると、スライド部92が本体部91より乗りかご10内の方向に向かって押出され、第1の磁性体51と第2の磁性体52とを脱離させて、ハーフミラー30を開扉する。即ち、本実施形態に係るエレベータ装置102およびエレベータ制御システム202はAED呼出釦72が押されると、自動で開閉機構50が作動し、ハーフミラー30を開扉する。
【0048】
図10(b)はハーフミラー30が閉じているときの状態である。ハーフミラー30が閉じているときはスライド部92の一部が本体部91に格納されている。エレベータが通常運行をしている場合は、ハーフミラー30が閉じている状態であり、ハーフミラー30は鏡としての機能を有し、側面31と合わせて乗りかご10の内装における意匠性を有している。
【0049】
本実施形態に係るエレベータ装置102は、AED60を搬送する非常時の運行をする場合、AED呼出釦72が押されてエレベータが非常時用制御信号161を受信すると照明装置40が点灯し、AED60を照明する。それとほぼ同時にアクチュエータ90は本体部91からスライド部92を乗りかご10内の方向へスライドし、ハーフミラー30の裏面を押出して開扉する。乗りかご10の外側に表示装置80を設けていた場合、照明装置40の点灯やハーフミラー30の開扉とほぼ同時に表示装置80の表示面81を、通常運行用の表示から非常時用の表示に切り替える。
【0050】
本実施形態に係るエレベータ制御システム202の構成図は図6と同様である。ただし、本実施形態に係るエレベータ制御システム202と第1の実施形態に係るエレベータ制御システム200の差異は、非常時用制御信号161にアクチュエータ90のスライド部92をスライドさせる信号を付加したことである。即ち、非常時用制御信号161は筐体部20に設けられた照明装置40を点灯させ、アクチュエータ90によりハーフミラー30を開扉させ、乗りかご10のかご扉を戸開し待機させる信号である。また、エレベータ制御システム201と同様に表示装置80に非常時用の表示を行わせる信号を更に付与してもよい。
【0051】
以上より、本実施形態はエレベータの意匠性を損なわずに非常時用の物品(AED)の収納を利用者に知らせ、更にハーフミラー30を自動で開扉することでAED60を取り出すことが可能としている。
【0052】
(第4の実施形態)
本実施形態に係るエレベータ制御システム203は、第1乃至第3の実施形態に係るエレベータ制御システム(200〜202)において、AED呼出釦72が押されて、AED60を搬送する非常時の運行をする場合に、図5の階床用表示装置73に非常時用の表示を行うものである。
【0053】
図6の階床bにてAED呼出釦72bが押された場合、制御盤130はエレベータ呼出信号160を受信すると、乗りかご10を制御しつつ、階床bの階床用表示装置73にAED60の使い方について説明した表示、もしくはAED60を搬送する運行となった旨を伝える、救命呼び発生の表示を行う。
【0054】
これにより、階床bの乗り場にいる者はAED60を使用する際に、階床用表示装置73の表示を参照することが可能となる。また、他の乗客がAED60を搬送する運行となったことを知ることができる。
【0055】
本実施形態において、例えば、AED呼出釦72bが押された階床bの階床用表示装置73にはAED60の使い方について説明した表示をし、他の階床(階床a、階床c)の階床用表示装置73にはAED60を搬送する運行となった旨を伝える、救命呼び発生の表示をしても良い。
【0056】
以上より、本実施形態はエレベータの意匠性を損なわずに非常時用の物品(AED)の収納を利用者に知らせつつ、階床にいるものにAEDの使用方法または救命呼び発生を知ることが可能となる。
【0057】
(第5の実施形態)
本実施形態は第1乃至第4の実施形態に係るエレベータ装置およびエレベータ制御システムについて、非常時用の物品をAED60から防災用備品に置き換えたものである。
【0058】
本実施形態ではAED呼出釦72の代わりに、防災用品備品を呼び出す釦が、階床または乗りかご10内の行き先操作盤にいずれかに設けられている。本実施形態ではエレベータ呼出信号160の代わりに災害用信号が壁面内部、またはテールコード150により制御盤130に送信されることとなる。
【0059】
防災用品備品を呼び出す釦が押され、災害用信号が発せられると、照明装置40が点灯し、防災用品備品の所在を乗客に知らせることができる。
【0060】
また、表示装置80を設けている場合は、表示装置80に災害用の制御信号が制御盤より発せられた旨を表示することができる。
【0061】
また、所定の時間間隔にて照明装置40を点灯させて防災用備品が筐体部20に格納されていることを通知してもよい。
【0062】
また、防災用品備品を呼び出す釦が押され、災害用信号が発せられると、アクチュエータ90によるハーフミラー30の開扉を行ってもよい。
【0063】
また、防災用品備品を呼び出す釦が押され、災害用信号が発せられると、階床用表示装置73に災害用信号が発せられた旨を表示してもよい。
【0064】
本実施形態に係るエレベータ装置およびエレベータ制御システムはエレベータの意匠性を損なわずに防災用品備品の収納を利用者に知らせることが可能となる。
【0065】
以上の実施形態に係るエレベータ制御システムは、AED呼出釦72または防災用品備品を呼び出す釦を誤操作などにより非常時ではないときに押してしまった場合、解除する機能を有していてもよい。たとえば、当該釦を長押しする、2回以上連続して押すなどした場合に、非常時用の運行から通常運行に戻すことが可能である。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10…乗りかご
11…出入口
12…壁面
13L…左側面
13R…右側面
14…かご床
15…かご天井
20…筐体部
30…ハーフミラー
40…照明装置
50…開閉機構
51…第1の磁性体
52…第2の磁性体
53…回転軸部
60…AED(自動体外式除細動器)
70…階床扉
71…乗り場案内装置
72…AED呼出釦
73…階床用表示装置
80…表示装置
90…アクチュエータ
100、101、102…エレベータ制御装置
200、201、202…エレベータ制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10