(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鋼管杭の軸心方向に沿って上下に連結された上側鋼管と下側鋼管のうち、前記上側鋼管の下端に備えられた第一継手部の外周縁に形成された上側切欠部と、前記下側鋼管の上端に備えられた第二継手部の外周縁、かつ、前記上側切欠部に対応する位置に形成された下側切欠部とによって構成されるキー配設部に回転抑止キーを配設することで、前記上側鋼管と前記下側鋼管とが前記軸心周りに相対回転することを抑止する回転抑止機構を備えた鋼管連結構造であって、
前記キー配設部及び前記回転抑止キーのそれぞれに前記鋼管杭の径方向に沿って連通するように形成された貫通孔と、
前記第二継手部の内面であって前記貫通孔の周囲に形成された座繰り部と、
前記座繰り部に収容可能かつ前記貫通孔に挿通不可能な頭部と、前記貫通孔に挿通可能な軸部とを有する棒状部材と、
前記貫通孔を通り抜けた前記軸部の先端部に、前記貫通孔に挿通不可能な状態で備えられる脱落防止機構を備え、
前記棒状部材はボルトであり、
前記脱落防止機構は、前記ボルトに螺合する二つのナットで構成され、両ナットのうち、一方のナットは、前記ボルトの軸心方向に、前記ボルトの軸心に対して偏心した先細り形状をなす凸状テーパ部を備え、他方のナットは、前記凸状テーパ部に対向し、かつ、前記ボルトの軸心に同心の奥細り凹状テーパ部を備えることを特徴とする鋼管連結構造。
鋼管杭の軸心方向に沿って上下に連結された上側鋼管と下側鋼管のうち、前記上側鋼管の下端に備えられた第一継手部の外周縁に形成された上側切欠部と、前記下側鋼管の上端に備えられた第二継手部の外周縁、かつ、前記上側切欠部に対応する位置に形成された下側切欠部とによって構成されるキー配設部に回転抑止キーを配設することで、前記上側鋼管と前記下側鋼管とが前記軸心周りに相対回転することを抑止する回転抑止機構を備えた鋼管連結構造であって、
前記キー配設部及び前記回転抑止キーのそれぞれに前記鋼管杭の径方向に沿って連通するように形成された貫通孔と、
前記第二継手部の内面であって前記貫通孔の周囲に形成された座繰り部と、
前記座繰り部に収容可能かつ前記貫通孔に挿通不可能な頭部と、前記貫通孔に挿通可能な軸部とを有する棒状部材と、
前記貫通孔を通り抜けた前記軸部の先端部に、前記貫通孔に挿通不可能な状態で備えられる脱落防止機構を備え、
前記棒状部材は、前記頭部から前記先端部に至る途中で前記軸部が縮径し、かつ、前記軸部のうち大径の部分に備えられた雄ネジ部と小径の部分に備えられた雄ネジ部のうちいずれか一方が右ネジで構成され、他方が左ネジで構成された異径ボルトであり、
前記脱落防止機構は、前記キー配設部に形成された前記貫通孔に備えられ、前記異径ボルトの前記軸部うち前記大径の部分に備えられた雄ネジ部に螺合する雌ネジ部と、前記異径ボルトの前記軸部のうち前記小径の部分に備えられた雄ネジ部に螺合するナットとで構成されることを特徴とする鋼管連結構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鋼管杭は、油圧ハンマ等による打撃によって地中に設置する打撃工法、バイブロハンマによって振動を付与しつつ地中に設置する振動工法、杭体の中空部を掘削しながら地中に設置する中堀工法、先端部に羽根を取り付け回転させながら地盤に圧入する回転圧入工法などにより地中に建て込み施工される。したがって、鋼管杭の建て込み施工時には、鋼管杭の継ぎ目には施工する際に打撃や振動等が作用する。
【0006】
回転抑止キーを固定するボルトは、鋼管側に穿設した雌ネジ部に螺合するだけの構成であるため、建て込み施工時の振動等によって緩んで抜けて回転抑止キーが脱落する虞があった。例えば、回転圧入工法では、回転抑止キーが脱落すると、前記上側鋼管の回転が前記下側鋼管に適切に伝達されないため、その後の施工が不能となる虞があった。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、鋼管杭の建て込み施工時に、前記鋼管杭を構成する上下に配置された鋼管の軸心周りの相対回転を防止するための回転抑止キーが脱落することのない信頼性の高い鋼管連結構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る鋼管連結構造の第一の特徴構成は、鋼管杭の軸心方向に沿って上下に連結された上側鋼管と下側鋼管のうち、前記上側鋼管の下端に備えられた第一継手部の外周縁に形成された上側切欠部と、前記下側鋼管の上端に備えられた第二継手部の外周縁、かつ、前記上側切欠部に対応する位置に形成された下側切欠部とによって構成されるキー配設部に回転抑止キーを配設することで、前記上側鋼管と前記下側鋼管とが前記軸心周りに相対回転することを抑止する回転抑止機構を備えた鋼管連結構造であって、前記キー配設部及び前記回転抑止キーのそれぞれに前記鋼管杭の径方向に沿って連通するように形成された貫通孔と、
前記第二継手部の内面であって前記貫通孔の周囲に形成された座繰り部と、前記座繰り部に収容可能かつ前記貫通孔に挿通不可能な頭部と
、前記貫通孔に挿通可能な軸部
とを有する棒状部材と、前記貫通孔を通り抜けた前記軸部の先端部に、前記貫通孔に挿通不可能な状態で備えられる脱落防止機構を備え、前記棒状部材はボルトであり、前記脱落防止機構は、前記ボルトに螺合する二つのナットで構成され、両ナットのうち、一方のナットは、前記ボルトの軸心方向に、前記ボルトの軸心に対して偏心した先細り形状をなす凸状テーパ部を備え、他方のナットは、前記凸状テーパ部に対向し、かつ、前記ボルトの軸心に同心の奥細り凹状テーパ部を備える点にある。
【0009】
上述の構成によると、貫通孔を通り抜けた前記軸部の先端部に、前記貫通孔に挿通不可能な状態で備えられる脱落防止機構により、回転抑止キーはキー配設部に固定される。棒状部材の軸部を、予め貫通孔に対して例えば鋼管杭の径方向内側から径方向外側に向けて挿通して備えておくことで、鋼管杭の建て込み施工時に、回転抑止キーを配設した後に鋼管杭の外側から脱落防止機構を操作することができるため作業性が良い。回転抑止キーをキー配設部に配設するにあたり、互いに接するように両ナットを締め付けると、両ナット間にはボルトの軸心方向に沿った方向に引張力が発生する。この引張力によって両ナットは建て込み施工時の振動等によって緩むことなくボルトに固定される。その際、凸状テーパ部と凹状テーパ部とが接するように両ナットを締め付けた際に両ナットの対向面間の距離に応じて両ナットには、ボルトの径方向を向いた力が発生する。この力によってボルトに螺合された両ナットは建て込み施工時の振動等によって緩むことなくボルトに固定される。ボルトの頭部及びナットが貫通孔の周囲に当接し続けるため回転抑止キーはキー配設部から脱落することが防止される。
【0010】
同第二の特徴構成は、前記キー配設部に形成された前記貫通孔は、前記ボルトと螺合する雌ネジ部を備える点にある。
【0011】
上述の構成によると、ボルトは、キー配設部に形成された貫通孔において雌ネジ部に螺合するので、上側鋼管と下側鋼管の連結前において当該貫通孔に予め挿通させた状態を維持できるため、その後の作業性が向上する。
【0012】
同第三の特徴構成は、鋼管杭の軸心方向に沿って上下に連結された上側鋼管と下側鋼管のうち、前記上側鋼管の下端に備えられた第一継手部の外周縁に形成された上側切欠部と、前記下側鋼管の上端に備えられた第二継手部の外周縁、かつ、前記上側切欠部に対応する位置に形成された下側切欠部とによって構成されるキー配設部に回転抑止キーを配設することで、前記上側鋼管と前記下側鋼管とが前記軸心周りに相対回転することを抑止する回転抑止機構を備えた鋼管連結構造であって、前記キー配設部及び前記回転抑止キーのそれぞれに前記鋼管杭の径方向に沿って連通するように形成された貫通孔と、
前記第二継手部の内面であって前記貫通孔の周囲に形成された座繰り部と、前記座繰り部に収容可能かつ前記貫通孔に挿通不可能な頭部と
、前記貫通孔に挿通可能な軸部
とを有する棒状部材と、前記貫通孔を通り抜けた前記軸部の先端部に、前記貫通孔に挿通不可能な状態で備えられる脱落防止機構を備え、前記棒状部材は、前記頭部から前記先端部に至る途中で前記軸部が縮径し、かつ、前記軸部のうち大径の部分に備えられた雄ネジ部と小径の部分に備えられた雄ネジ部のうちいずれか一方が右ネジで構成され、他方が左ネジで構成された異径ボルトであり、前記脱落防止機構は、前記キー配設部に形成された前記貫通孔に備えられ、前記異径ボルトの前記軸部うち前記大径の部分に備えられた雄ネジ部に螺合する雌ネジ部と、前記異径ボルトの前記軸部のうち前記小径の部分に備えられた雄ネジ部に螺合するナットとで構成される点にある。
【0013】
上述の構成によると、貫通孔を通り抜けた前記軸部の先端部に、前記貫通孔に挿通不可能な状態で備えられる脱落防止機構により、回転抑止キーはキー配設部に固定される。棒状部材の軸部を、予め貫通孔に対して例えば鋼管杭の径方向内側から径方向外側に向けて挿通して備えておくことで、鋼管杭の建て込み施工時に、回転抑止キーを配設した後に鋼管杭の外側から脱落防止機構を操作することができるため作業性が良い。その際、異径ボルトの軸部うち大径の部分に備えられた雄ネジ部と、キー配設部に形成された貫通孔に備えられた雌ネジ部とが螺合し、異径ボルトの軸部うち小径の部分に備えられた雄ネジ部とナットとが螺合する。その際、異径ボルトの軸部うち大径の部分に備えられた雄ネジ部と小径の部分に備えられた雄ネジ部とは互いに異なる方向に螺合するため、ナットは建て込み施工時の振動等によって緩むことなく異径ボルトに固定される。異径ボルトの頭部及びナットが貫通孔の周囲に当接し続けるため回転抑止キーはキー配設部から脱落することが防止される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分又は対応する部分には、同一符号を付してある。
【0016】
図1には、複数の鋼管10が本発明による鋼管連結構造2を介して連結された鋼管杭1が示されている。
なお、上側に位置する鋼管10を上側鋼管10A、相対的に下側に位置する鋼管10を下側鋼管10Bと呼び分けて説明するが同一の構成である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、下側鋼管10Bの上端には雄型のピン継手20が、工場において溶接部12で溶接されて取り付けられている。上側鋼管10Aの下端には雌型のボックス継手30が、工場において溶接部13で溶接されて取り付けられている。なお、本実施形態では、ピン継手20が本発明の第二継手部であり、ボックス継手30が本発明の第一継手部である。
【0018】
ピン継手20は、下側鋼管10Bの外径とほぼ同径の筒部22Bに連続して、筒部22Bよりも小径の嵌挿部22Aが延設された筒状部材である。
嵌挿部22Aの基端部の外周には、ボックス継手30の下端部に全周にわたって設けられた係合凸部33が挿入される係合凹部23が全周にわたって設けられている。
嵌挿部22Aの上端部には、ボックス継手30の基端部の内周に全周にわたって設けられた係合凹部34に挿入するための係合凸部24が全周にわたって設けられている。
さらに、ピン継手20の嵌挿部22Aの外周には、ボックス継手30に配設された荷重伝達キー31を嵌め込むためのキー溝21が、全周にわたって設けられている。なお、荷重伝達キー31の厚さのほうがキー溝21の深さよりも大きく設定されている。
【0019】
ボックス継手30は、上側鋼管10Aの外径とほぼ同径の外径を有する筒状部材である。ボックス継手30の内周は、ピン継手20の嵌挿部22Aの非嵌挿部であり、ボックス継手30の基端部の内周に設けられた係合凹部34にピン継手20の係合凸部24が挿入される。また、係合凸部33はピン継手20の係合凹部23に挿入される。
ボックス継手30の内周には、周方向にキー溝35が形成されている。キー溝35には、全周にわたって適宜分割された円弧状の荷重伝達キー31が配設されている。
【0020】
ボックス継手30の外周には、キー溝35に連通するボルト穴32が、周方向に沿って間隔をおいて複数穿孔されている。そして、ボルト穴32には、六角孔付き植え込みボルト等で構成されたセットボルト36が螺合させてあり、セットボルト36はボックス継手30の外側からの締め込み操作によって径方向内側に螺進可能である。
【0021】
上側鋼管10Aのボックス継手30に下側鋼管10Bのピン継手20を挿入した後、セットボルト36を締め込み操作することによって、セットボルト36の先端部に配設された荷重伝達キー31がキー溝35から径方向内側に突出し、ピン継手20の嵌挿部22Aに設けられたキー溝21に嵌め込まれる。これにより、荷重伝達キー31はキー溝35とキー溝21の両方に跨って配置され、ピン継手20とボックス継手30は、鋼管杭1の軸心方向に沿った方向への相対移動が不可能に連結される。
【0022】
なお、荷重伝達キー31は、一段に限らず、二段以上の複数であってもよく、その段数、個数、さらにはその厚みや幅も、上側鋼管10Aと下側鋼管10Bの連結に要求される垂直方向の結合の強さに応じて適宜設計される。
【0023】
一方、上側鋼管10Aと下側鋼管10Bとの軸心周りの相対回転は、ピン継手20とボックス継手30の外周面の継ぎ目14に跨るように配設された回転抑止キー50によって抑止される。回転抑止キー50は、継ぎ目14の周方向に沿って等間隔で複数箇所に備えられたキー配設部40に配設される。このキー配設部40と回転抑止キー50とが本発明の回転抑止機構を構成する。なお、回転抑止キー50及びキー配設部40の大きさ、数、配置箇所等は、鋼管杭1の直径や、建て込み工法等に基づいて設計によって適正に定めることができる。
【0024】
回転抑止キー50について詳述する。
図1から
図3に示すように、回転抑止キー50は、正面視矩形状の平板状部材であり、キー配設部40に配設された際に、ピン継手20とボックス継手30の相対回転を防止するために用いられる。
回転抑止キー50には、ピン継手20側に備えられた、回転抑止キー50をキー配設部40に固定するためのボルト15を挿通するための貫通孔52が鋼管杭1の径方向に沿って穿設されている。なお、貫通孔52は、ボルト15の直径より僅かに大径に形成されている。回転抑止キー50の外面には、貫通孔52の周囲にボルト15と螺合するナット60,61を収容可能な座繰り部53が形成されている。貫通孔52及び座繰り部53は、ピン継手20側に備えられたボルト15を挿通できるように、回転抑止キー50の上下方向中央よりも、ピン継手20側に寄った位置に設けられている。
【0025】
キー配設部40について詳述する。
ボックス継手30には、係合凸部33の外方で、継ぎ目14を構成する上側接合面37の外周縁に上側切欠部40Aが形成されている。
ピン継手20には、係合凹部23の外方で、継ぎ目14を構成する下側接合面27の外周縁、かつ、ピン継手20をボックス継手30に挿入した状態のときに、上側切欠部40Aに対応する位置に下側切欠部40Bが形成されている。
上側切欠部40Aの周方向の長さと下側切欠部40Bの周方向の長さは互いに一致させてある。また、上側切欠部40Aの垂直方向長さと下側切欠部40Bの垂直方向長さも互いに一致させてある。
ピン継手20をボックス継手30に挿入した状態のときに、上側切欠部40Aと下側切欠部40Bとが協働して正面視及び断面視矩形状の一つのキー配設部40を構成する。なお、キー配設部40の内寸は、内部に配設される回転抑止キー50の外寸より僅かに大きい形状となっている。
【0026】
また、
図3に示すように、下側切欠部40Bには、回転抑止キー50をキー配設部40に固定するためのボルト15を挿通するための貫通孔25が鋼管杭1の径方向に沿って穿設されている。また、ピン継手20の内面には、貫通孔25の周囲にボルト15の頭部16を収容可能な座繰り部28が形成されている。
貫通孔25には、ボルト15と螺合する雌ネジ部26が備えられている。ボルト15は、貫通孔25において雌ネジ部26に螺合するので、上側鋼管10Aと下側鋼管10Bの連結前において当該貫通孔25に予め挿通させた状態を維持できるため、その後の作業性が向上する。
【0027】
以上の構成により、ピン継手20とボックス継手30との継ぎ目14に構成されたキー配設部40に回転抑止キー50を配設し、ボルト15とナット60,61で固定することで、ピン継手20とボックス継手30とが、即ち上側鋼管10A及び下側鋼管10B同士が相対的に回転することが抑止される。
【0028】
なお、
図3に示すように、ナット60,61のうち、ナット60は、ボルト15の軸心方向に、ボルト15の軸心に対して偏心した先細り形状をなす凸状テーパ部62を備え、ナット61は、凸状テーパ部62に対向し、かつ、ボルト15の軸心に同心の奥細り凹状テーパ部63を備えている。
したがって、回転抑止キー50をキー配設部40に配設するにあたり、凸状テーパ部62と凹状テーパ部63とが接するように両ナットを締め付けた際に両ナット60,61の対向面間の距離に応じて両ナット60,61には、ボルト15の径方向を向いた力が発生する。この力によってボルト15に螺合された両ナット60,61は建て込み施工時の振動等によって緩むことなくボルト15に固定される。両ナット60,61が貫通孔52の周囲に当接し続けるため回転抑止キー50はキー配設部40から脱落することが防止される。
ボルト15が、本発明の、貫通孔25に挿通不可能な頭部16と、貫通孔25,52に挿通可能な軸部を有する棒状部材を構成し、ナット60,61が、本発明の、貫通孔25,52を通り抜けたボルト15の先端部に備えられる脱落防止機構を構成する。
【0029】
本実施形態では、ボルト15は、ピン継手20に、貫通孔25に対して鋼管杭1の径方向内側から径方向外側に向けて挿通されて備えられ、ナット60,61は、回転抑止キー50側に備えられているため、鋼管杭の建て込み施工時に、回転抑止キー50を配設した後に鋼管杭1の外側からナット60,61を操作することができるため、作業性が良い。
【0030】
また、ボルト15の頭部16は座繰り部28に収容され鋼管杭1の内面から内方に突出することがないため、鋼管杭1の建て込み施工時に中堀工法を使用することができる。また、ボルト15の先端部やナット60,61は、座繰り部53に収容される。回転抑止キー50の外面から外方に突出することがないため、鋼管杭1の建て込み施工時に、鋼管杭1の進行に対する地盤からの抵抗の増加を防ぐことができる。
【0031】
図2、
図4、
図5及び6を参照しながら、鋼管杭1の軸心方向に沿って上側鋼管10Aと下側鋼管10Bとを連結する鋼管連結方法について説明する。
【0032】
図4に示すように、まず、下側切欠部40Bに形成された貫通孔25に対し、上側鋼管10Aと下側鋼管10Bとを連結する前に、予めボルト15を、鋼管杭1の径方向内側から径方向外側に向けて挿通する(挿通ステップ)。挿通されたボルト15の先端部には、ボルト15の先端部を破損や劣化から保護するためにゴムキャップを取り付けておくことが好ましい。なお、該ゴムキャップは、回転抑止キー50を配設する直前に取り外される。
【0033】
次に、下側鋼管10Bをある程度地中に建て込み、上側鋼管10Aをクレーンで吊り上げて、下側鋼管10Bの直上に運んで、上側鋼管10Aの下端のボックス継手30の上側切欠部40Aが、下側鋼管10Bの上端のピン継手20の下側切欠部40Bに合うように、上側鋼管10Aを回転調整しつつ吊り下ろし、下側鋼管10Bのピン継手20を上側鋼管10Aのボックス継手30に挿入する(挿入ステップ)。
【0034】
挿入ステップが完了すると、上側鋼管10Aのボックス継手30に備えられているセットボルト36の締め込み操作によって、セットボルト36の先端部に配設された荷重伝達キー31をキー溝35から径方向内側に突出させ、下側鋼管10Bのピン継手20のキー溝21に嵌め込むことで、荷重伝達キー31はピン継手20とボックス継手30の両方に跨って配置され、上側鋼管10Aと下側鋼管10Bとが垂直方向へ相対移動を不可能に連結される(連結ステップ)。
【0035】
連結ステップが完了すると、
図5及び
図6に示すように、回転抑止キー50に形成された貫通孔52にボルト15を挿通しながら、回転抑止キー50をキー配設部40に配設する(配設ステップ)。
配設ステップが完了すると、ボルト15に、ナット60,61を螺合し、回転抑止キー50をキー配設部40に固定する(脱落防止ステップ)。
脱落防止ステップによって、ナット60,61は、凸状テーパ部62と凹状テーパ部63とが接するように締め付けられ、両ナット60,61の対向面間の距離に応じて両ナット60,61にはボルト15の径方向を向いた力が発生する。この力によって両ナット60,61は建て込み施工時の振動等によって緩むことなくボルト15に固定される。ボルト15の頭部16及びナット60が貫通孔25,52の周囲に当接し続けるため回転抑止キー50はキー配設部40から脱落することが防止される。
【0036】
ボルト15を予め下側鋼管10B側に備えておき、鋼管杭1の建て込み施工時に、回転抑止キー50を配設した後に鋼管杭1の外側からナット60,61を螺合することができるため作業性が良い。
【0037】
本発明の鋼管連結構造の別実施形態について説明する。
なお、以下の説明では、上述した実施形態と対応する構成については同じ符号を付して説明する。
上述の実施形態では、脱落防止機構を構成するナット60,61が凸状テーパ部62と凹状テーパ部63を備える構成について説明したがこれに限らない。脱落防止部材は、凸状テーパ部62や凹状テーパ部63を備えない二つの六角ナットで構成してもよい。この場合、二つの六角ナットを互いに接するように両ナットを締め付けると、両六角ナット間にはボルト15の軸心方向に沿った方向に引張力が発生する。この引張力によって両六角ナットは建て込み施工時の振動等によって緩むことなくボルト15に固定される。ボルト15の頭部16及び六角ナットが貫通孔25,52の周囲に当接し続けるため回転抑止キー50はキー配設部40から脱落することが防止される。
【0038】
また、脱落防止機構は、
図7に示すように、ボルト15に螺合するナット64と、ナット64をボルト15に接着する接着剤65とで構成してもよい。
接着剤65は、予めボルト15に塗布しておいてもよいし、ナット64を螺合する直前又は螺合した後に塗布してもよい。
接着剤65の接着力によりナット64は建て込み施工時の振動等によって緩むことなくボルト15に固定される。このような構成であっても、ナット64が貫通孔52の周囲に当接し続けるため回転抑止キー50はキー配設部40から脱落することが防止される。
【0039】
また、脱落防止機構は、
図8のように構成してもよい。
この実施形態では、棒状部材は、頭部16から先端部に至る途中で軸部が縮径し、かつ、軸部のうち大径の部分に備えられた雄ネジ部と小径の部分に備えられた雄ネジ部のうちいずれか一方が右ネジで構成され、他方が左ネジで構成された異径ボルト17で構成されている。
そして、脱落防止機構は、貫通孔25に備えられた、異径ボルト17の軸部うち大径の部分に備えられた雄ネジ部に螺合する雌ネジ部26と、異径ボルト17の軸部のうち小径の部分に備えられた雄ネジ部に螺合するナット66とで構成する。
この構成によると、異径ボルト17の軸部うち大径の部分に備えられた雄ネジ部と貫通孔25に備えられた雌ネジ部26とが螺合し、異径ボルト17の軸部うち小径の部分に備えられた雄ネジ部とナット66とが螺合する。
その際、異径ボルト17の軸部うち大径の部分に備えられた雄ネジ部と小径の部分に備えられた雄ネジ部とは、雌ネジ部26及びナット66に対して異なる方向に螺合するため、ナット66は建て込み施工時の振動等によって緩むことなく異径ボルト17に固定される。ナット66が貫通孔52の周囲に当接し続けるため回転抑止キー50はキー配設部40から脱落することが防止される。
【0040】
また、脱落防止機構は、
図9のように構成してもよい。
この実施形態では、ボルト15の先端部に、ボルト15をその径方向に貫通するようにピン孔18を形成する。
そして、脱落防止機構は、ボルト15に備えたピン孔18と、ピン孔18に挿通される割ピン67とで構成する。
この構成によると、ボルト15のピン孔18に挿通した割ピン67が建て込み施工時の振動等によって緩むことなく貫通孔52の周囲に当接し続けるため回転抑止キー50はキー配設部40から脱落することが防止される。
【0041】
また、脱落防止機構は、
図10のように構成してもよい。
この実施形態では、ボルト15の先端部に、ボルト15を貫通する第一挿通孔19を備え、回転抑止キー50を貫通する第二挿通孔54を備える。
そして、脱落防止機構は、ボルト15を貫通する第一挿通孔19と、回転抑止キー50の第二挿通孔54と、第一挿通孔19及び第二挿通孔54に挿通された針金68とで構成する。
この構成によると、第一挿通孔19及び第二挿通孔54に挿通された針金68でボルト15と回転抑止キー50とを結ぶことができる。針金68が建て込み施工時の振動等によって緩むことなく貫通孔52の周囲に当接し続けるため回転抑止キー50はキー配設部40から脱落することが防止される。
【0042】
なお、
図9及び
図10に示した実施形態では、棒状部材をボルト15で構成したがこれに限らない。棒状部材は、貫通孔25,52に挿通可能な軸部に雄ネジ部を備えていない構成であってもよい。この場合、貫通孔25に雌ネジ部を備える必要はない。
【0043】
また、上述したいずれの実施形態でも、棒状部材は、鋼管杭1側に、貫通孔25,52に対して鋼管杭1の径方向内側から径方向外側に向けて挿通されて備えられ、脱落防止機構は、回転抑止キー50側に備えられる場合について説明した。これは、棒状部材を予め鋼管杭1側に備えておき、鋼管杭1の建て込み施工時に、回転抑止キー50を配設した後に鋼管杭1の外側から脱落防止機構を操作することができるため作業性が良いためである。しかし、棒状部材を回転抑止キー50側に、鋼管杭1の径方向外側から径方向内側に向けて挿通して備え、鋼管杭1の内側に脱落防止機構を備えることも可能である。
【0044】
また、上述したいずれの実施形態でも、脱落防止機構をピン継手20のみに備える場合について説明したが、脱落防止機構は、ボックス継手30のみに備えてもよいし、両方に備えてもよい。
【0045】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。