特許第6479905号(P6479905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6479905放送信号送信装置および放送信号送受信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479905
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】放送信号送信装置および放送信号送受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 9/64 20060101AFI20190225BHJP
【FI】
   H04N9/64
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-142797(P2017-142797)
(22)【出願日】2017年7月24日
(62)【分割の表示】特願2013-270979(P2013-270979)の分割
【原出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2017-216724(P2017-216724A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000214984
【氏名又は名称】東芝映像ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】廣田 敦志
【審査官】 大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−177682(JP,A)
【文献】 特開2008−136025(JP,A)
【文献】 特表2016−530780(JP,A)
【文献】 特開2000−232647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00−1/40
G06T 3/00−5/50
G06T 9/00−9/40
H04N 1/40−1/409
H04N 1/46−1/62
H04N 9/44−9/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮符号化されたビデオデータを含むビデオストリームを出力するビデオエンコーダと、
前記ビデオデータを復号して表示するために参照される伝送制御信号を生成する情報処理装置と、
前記ビデオストリームと前記伝送制御信号を多重化する多重装置と、
前記多重装置の出力を変調して放送信号を出力する変調装置と、
を有した放送信号送信装置において、
前記情報処理装置は、
前記多重装置の多重化に対応したビット数を用いて、前記伝送制御信号に含む色域情報を出力するものであり、
前記ビデオストリーム中にトランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)が含まれており、前記トランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)には、前記伝送制御信号に含まれる前記色域情報に対応するデータが記述されている、ことを特徴とする、
放送信号送信装置。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記多重装置の多重化に対応して、前記伝送制御信号に含む前記色域情報を、4ビットを用いて出力することを特徴とする、
請求項1記載の放送信号送信装置。
【請求項3】
前記多重装置の多重化に対応して、前記情報処理装置が前記4ビットを用いて出力する前記色域情報は、少なくとも第1の色域情報、第2の色域情報、第3の色域情報の3種類の色域情報を示すものであり、
前記第1の色域情報は、前記ビデオデータが第1色域を持つことを示し、
前記第2の色域情報は、前記ビデオデータが第2色域を持つことを示し、
前記第3の色域情報は、前記ビデオデータが第3色域を持つことを示す、
請求項2記載の放送信号送信装置。
【請求項4】
前記4ビットの情報は、前記ビデオデータの色域が、BT.709であることと、BT.2020であることを識別しており、この識別した色域に対応したデータが、前記ビデオストリーム中の前記トランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)に記述されている、
請求項3記載の放送信号送信装置。
【請求項5】
圧縮符号化されたビデオデータを含むビデオストリームと、
前記ビデオデータを復号して表示するために参照される伝送制御信号と、
を多重化し変調して、放送信号として出力する際に、前記多重化に対応したビット数を用いて、前記伝送制御信号に含む色域情報を生成し、前記ビデオストリーム中に含まれるトランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)には、前記伝送制御信号に含まれる前記色域情報に対応するデータを記述する、
放送信号送信方法。
【請求項6】
前記多重化に対応して、前記色域情報を、4ビットを用いて出力することを特徴とする、
請求項5記載の放送信号送信方法。
【請求項7】
前記多重化に対応して、前記4ビットを用いて出力する前記色域情報は、少なくとも第1の色域情報、第2の色域情報、第3の色域情報の3種類の色域情報を示すものであり、
前記第1の色域情報は、前記ビデオデータが第1色域を持つことを示し、
前記第2の色域情報は、前記ビデオデータが第2色域を持つことを示し、
前記第3の色域情報は、前記ビデオデータが第3色域を持つことを示す、
請求項6記載の放送信号送信方法。
【請求項8】
前記4ビットの情報は、前記ビデオデータの色域が、BT.709であることと、BT.2020であることを識別しており、この識別した色域に対応したデータが、前記ビデオストリーム中の前記トランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)に記述されている、
請求項7記載の放送信号送信方法。
【請求項9】
ビデオデータを復号して表示するために参照される伝送制御信号と圧縮符号化された前記ビデオデータを含むビデオストリームとが多重化された放送信号を復調する復調装置と、
前記復調装置の出力から前記ビデオストリームと前記伝送制御信号とを分離する多重分離装置と、
前記多重分離装置が出力した圧縮符号化された前記ビデオストリームを復号するビデオデコーダと、
前記多重分離装置が出力した前記伝送制御信号に含まれる色域情報を抽出する情報処理装置と、
前記情報処理装置が抽出した前記色域情報を用いて前記ビデオデコーダが出力した復号された前記ビデオストリームの画像の色域を調整する画像処理装置と、
を有した放送信号受信装置において、
前記情報処理装置は、
前記多重分離装置の多重分離に対応して、4ビットを用いて、
少なくとも第1の色域情報、第2の色域情報、第3の色域情報の3種類の色域情報を示すものであり、
前記第1の色域情報は、前記ビデオデータが第1色域を持つことを示し、
前記第2の色域情報は、前記ビデオデータが第2色域を持つことを示し、
前記第3の色域情報は、前記ビデオデータが第3色域を持つことを示し、
前記ビデオデータの色域が、BT.709であることと、BT.2020であることを識別しており、この識別した色域に対応したデータが、前記ビデオストリーム中のトランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)に記述されている、前記伝送制御信号に含む前記色域情報を抽出することを特徴とする
放送信号受信装置。
【請求項10】
圧縮符号化されたビデオデータを含むビデオストリームを出力するビデオエンコーダと、
前記ビデオデータを復号して表示するために参照される伝送制御信号を生成する情報処理装置と、
前記ビデオストリームと前記伝送制御信号を多重化する多重装置と、
前記多重装置の出力を変調して放送信号を出力する変調装置と、
前記放送信号を受信する受信装置と、
を有した放送信号送信装置において、
前記情報処理装置は、
前記多重装置の多重化に対応したビット数を用いて、前記伝送制御信号に含む色域情報を出力するものであり、
前記ビデオストリーム中にトランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)が含まれており、前記トランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)には、前記伝送制御信号に含まれる前記色域情報に対応するデータが記述されている、ことを特徴とする、
放送信号送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、例えば放送設備から伝送される画像信号の色域を表示パネルの仕様に応じて拡大する放送信号送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ARIB規格による現行のテレビジョン放送にあっては、画像信号の伝送で用いられる色域がBT.709で規定されている。このBT.709で定められている色域は自然界の色域より狭い。そこで、現行設備では、自然界の色域を持つ画像を撮影してBT.709の色域に縮めて伝送している。
【0003】
ところで、テレビの表示パネルの進歩により、BT.709より広い色域の表示が可能になってきた。この場合、BT.709の規格に従って表示すれば、広い色域を持つ表示パネルであってもBT.709の色域で表示されることになる。この点を考慮して、BT.709の色域に縮められた信号のうち、色域限界に近い信号はBT.709の範囲外の信号が縮められたものだと推定することなどで、BT.709の信号をBT.709に縮められる前のBT.709より広い色域状態の信号を推定して復元(色域拡大)することも可能である。BT.709で伝送された画像信号でも、表示パネルの表示可能な範囲でBT.709より広い色域で表示することができ、色鮮やかな画像を楽しむことができる。
【0004】
一方、4K放送を考えた次世代放送規格では、BT.709より広い色域を表現できるBT.2020を採用する可能性がある。広い色域で撮影できる機材で制作された映像コンテンツの場合は、BT.2020規格を使用して画像信号を伝送すれば、BT.709より広い色域の画像表示が可能な表示パネルで前述のような色域拡大処理をせずとも広い色域による色鮮やかな画像を楽しむことができる。
【0005】
BT.709の色域で伝送するか、BT.2020の色域で伝送するかは、ビデオストリーム中のVUI」の中のtransfer_characteristicsというパラメータで示すことができるように、ARIB規格B32で規定されている(「ARIB規格書 STD-B32_2.8版 5.1.2.3 (2)VUI 中段」参照)。
【0006】
但し、BT.2020のような広い色域で撮影、記録できる機材がない過去の時代に撮影され、BT.709で表現された映像コンテンツは多数存在している。BT.2020の規格はBT.709の色域をカバーしているので、BT.2020規格で伝送することができる。この場合BT.2020の規格で表現できる色域の中の一部だけが使われた伝送となる。もし、このようなケースであるなら、前述の色域拡大技術を使用して表示することで、色鮮やかな画像を楽しむことができる。
【0007】
しかしながら、BT.2020で伝送される画像信号が、BT.2020の規格で表現できる色域の中の一部だけが使われた伝送なのか、あるいはBT.709の範囲を超えた色域まで使用している信号なのかを判断する手段がないので、色域拡大処理をするべきか否かを判断することができない。その結果、現行のBT.709での伝送が定められているハイビジョン放送では色域拡大処理が実施でき、色鮮やかな画像を楽しむことができるのに対し、BT.2020規格が採用された4K放送の場合に、BT.709撮影されたコンテンツは色域の復元をすることができず、より広い色域の規格を採用しているはずの4K放送よりハイビジョン放送の方が、色が鮮やかに見える、などということになってしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−180477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、従来のハイビジョン放送システムにおける画像処理装置にあっては、現行のBT.709での伝送が定められているハイビジョン放送では色域拡大処理が実施でき、色鮮やかな画像を楽しむことができるのに対し、BT.2020規格が採用された4K放送の場合に、BT.709撮影されたコンテンツは色域の復元をすることができず、より広い色域の規格を採用しているはずの4K放送よりハイビジョン放送の方が、色が鮮やかに見える、などということになってしまう可能性がある。
【0010】
本実施形態は上記課題に鑑みなされたもので、BT.2020で伝送される画像信号が、BT.2020の規格で表現できる色域の中の一部だけが使われた伝送なのか、あるいはBT.709の範囲を超えた色域まで使用している信号なのかを判断することができ、色域拡大処理をするべきか否かを判断して、BT.2020規格が採用された4K放送の場合に、BT.709撮影されたコンテンツの色域を復元することのできる放送信号送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、圧縮符号化されたビデオデータを含むビデオストリームを出力するビデオエンコーダと、前記ビデオデータを復号して表示するために参照される伝送制御信号を生成する情報処理装置と、前記ビデオストリームと前記伝送制御信号を多重化する多重装置と、前記多重装置の出力を変調して放送信号を出力する変調装置と、を有した放送信号送信装置において、
前記情報処理装置は、
前記多重装置の多重化に対応したビット数を用いて、前記伝送制御信号に含む色域情報を出力するものであり、前記ビデオストリーム中にトランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)が含まれており、前記トランスファー・キャラクタリィスティクス(transfer_characteristics)には、前記伝送制御信号に含まれる前記色域情報に対応するデータが記述されている、ことを特徴とする、放送信号送信装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態が適用されるデジタルテレビジョン(以下、TV)放送システムの概略構成を示すブロック図。
図2図1に示す放送設備の概略構成を示すブロック図。
図3図1に示す放送受信装置の概略構成を示すブロック図。
図4図1に示す放送受信装置に用いられる表示パネルの色域分布について、T.709の規格及びBT.2020の規格と比較して示す色域チャート。
図5図1に示すシステムにおいて、撮像カメラがBT.709の色域で撮影する例を示す図。
図6図1に示すシステムにおいて、撮像カメラがBT.709の色域で撮影する例として、表示パネルがBT.709より広い色域の表示できる場合に、受信装置の画像処理回路で表示パネルの色域に合わせて色域拡大を行う例を示す図。
図7図1に示すシステムにおいて、伝送路がBT.2020という広い色域で伝送することができ、カメラがBT.2020ほどの広い色域で撮影することができる場合の色域調整で、表示パネルの色域の範囲がカメラで撮影した色域を正しく再現できる例を示す図。
図8図1に示すシステムにおいて、ハイビジョン時代のカメラで撮影したBT.709の色域しかないコンテンツをBT.2020の伝送路で送られた場合に、そのまま表示して正しく色表示が行われる例を示す図。
図9図1に示すシステムにおいて、伝送路がBT.2020の色域で、そこにBT.709の色域しか使用されない信号が通されても、受信装置が色域拡大処理を行って表示パネルの表現できる色域全てを使用して表示する例を示す図。
図10図1に示すシステムにおいて、PMTのデータ構造を示す図。
図11図1に示すシステムにおいて、ビデオデコードコントロール記述子の構造を示す図。
図12図1に示すシステムにおいて、オリジナル色域記述子の構造を示す図。
図13図1に示すシステムにおいて、ビデオストリーム中にフラグを入れる場合の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、実施形態が適用されるデジタルテレビジョン(以下、TV)放送システムの概略構成を示すブロック図である。このシステムは、図2に示す構成の放送設備100と図3に示す放送受信装置200で構成され、両者は伝送路で接続される。伝送路は、放送波による無線伝送路に限らず、ケーブルによる有線伝送路も含む。
【0015】
図2に示す放送設備100は、撮像カメラ101を備える。この撮像カメラ101で撮影された映像コンテンツは映像記録再生装置102に記録される。この映像記録再生装置102に記録された映像コンテンツは、編集装置103によってオーディオ信号の付加等の編集加工が施されて、番組コンテンツとして本装置102に再記録される。番組編成に沿って上記映像記録再生装置102から読み出される番組コンテンツは、オーディオエンコーダ104、ビデオエンコーダ105、字幕情報処理装置106、番組情報処理装置107、ディスクリプタ挿入装置108に送られる。オーディオエンコーダ104及びビデオエンコーダ105はそれぞれ番組コンテンツのオーディオデータ(音声)、ビデオデータ(映像)をそれぞれ圧縮符号化する。字幕情報処理装置106は番組コンテンツの映像にリアルタイムに挿入する字幕情報を生成する。番組情報処理装置107は、番組コンテンツの演出や番組内容を紹介するための各種情報をSI/PSI(Service Information/Program Specific Information)にて生成する。ディスクリプタ挿入装置108は、番組コンテンツの再生時に色域に関するディスリプタを番組情報処理装置107に送り、番組情報の一つとしてSI/PSIに組み込ませる。上記オーディオエンコーダ104、ビデオエンコーダ105、字幕情報処理装置106、番組情報処理装置107で得られたオーディオデータ、ビデオデータ、字幕情報、番組情報(ディスクリプタを含む)は多重装置109で多重されて放送番組データとなる。この放送番組データは、変調装置110で伝送用に変調処理されて放送信号として伝送路へ出力される。尚、上記撮像カメラ101の出力は、リアルタイムに放送する場合、直接ビデオエンコーダ105に送るようにしてもよい。
【0016】
図3に示す放送受信装置200は、選局操作により、放送設備100から伝送路を通じて伝送される放送信号を受信するチューナ201を備える。この放送信号は復調装置202で復調処理された後、多重分離装置203で放送信号に多重されているオーディオデータ、ビデオデータ、字幕情報、SI/PSIに分離され、それぞれオーディオデコーダ204、ビデオデコーダ205、字幕情報デコーダ206、SI/PSI処理装置207に送られる。オーディオデコーダ204、ビデオデコーダ205、字幕情報デコーダ206、SI/PSI処理装置207は、それぞれ入力データからオーディオ信号、ビデオ信号、字幕情報、SI/PSI情報を取り出して元の形式に戻すもので、それぞれの出力は画面合成装置209に送られて画面合成された後、画像処理装置210で適宜画像処理され、表示パネル211に映し出される。
【0017】
ここで、上記SI/PSI処理装置207で得られたSI/PSI情報はディスクリプタ分離装置208に送られる。このディスクリプタ分離装置208は、入力されたSI/PSI情報から、記載されるオリジナル色域情報を含むディスクリプタを分離し、その色域情報を判別して画像処理装置210に送る。これにより、画像処理装置210は、色域情報に基づいて入力画像の色域を調整する。
【0018】
上記構成によるシステムにおいて、図4乃至図13を参照して、色域制御処理について説明する。
【0019】
図4は色度図で、aは表示パネル211の色域、bはBT.2020で規定されている色域、cはBT.709で規定されている色域を示している。ここで、発売初期の液晶表示パネルの性能ではあまり広い色域の表示ができず、BT.709と同等程度の色域しか表示することができなかった。ところが、最近はそれより広く、例えばcより広いaで示すような色域での表示が可能になってきた。
【0020】
上記システムにおいて、生放送などの場合には、撮像カメラ101で撮影した画像は、オーディオエンコーダ104やビデオエンコーダ105にて圧縮符号化される。録画番組の場合には、撮像カメラ101で得られた映像信号、音声信号は、信号の色域情報(例えばBT.709やBT.2020など)と共に映像記録再生装置102に一旦記録され、場合によっては編集装置103で編集されて再記録され、放送時間になると映像記録再生装置102で再生され、オーディオエンコーダ104やビデオエンコーダ105にて圧縮符号化される。
【0021】
ここで、ビデオエンコーダ105では、映像信号の持つ色信号の示す色域をBT.2020としてエンコードする。エンコードされたストリーム中のtransfer_characteristicsというパラメータはBT.2020を示す。色域の規格としては、BT.601、BT.709、sRGB、BT.2020、AdobeRGB、DCI(Digital Cinema Initiatives)で定められたもの、などがある。
【0022】
上記撮像カメラ101の色域がBT.2020ではない場合、ディスクリプタ挿入装置108でオリジナルの色域を示すディスクリプタを設定し、SI/PSI情報のPMT(Program Map Table)に入れる。PMTのデータ構造を図10に示す。このデータ構造において、Descriptorの記述がある場所に、ディスクリプタが記述される。
【0023】
すなわち、本実施形態では「送信側においては、画像符号化送出装置に、伝送色域情報と別に、コンテンツのオリジナルの色域情報を多重する多重化手段を備えさせる。受信側においては、コンテンツのオリジナルの色域情報を受信信号から分離し、オリジナルコンテンツの色域が表示パネルの色域より狭い場合には色域拡大処理を実施する。」との工夫をした。
【0024】
ここで、「コンテンツのオリジナルの色域情報を多重して伝送する。オリジナルの色域情報に従って、色域復元処理を実行するかしないかを切り替える。」は、今までになく、新しい考え方である。
そこで、オリジナルの色域情報を多重する場所は、PMTのビデオデコードコントロール記述子の中で記述する(具体的には、「ARIB規格書TR-B14 5.3版(第二分冊)第3部テーブル運用詳細、30.3.3.6ビデオデコードコントロール記述子」参照)。
【0025】
ここに、2bitのreserved_future_useがある。ここは現状’11’で運用されている。これを、例えば以下のように定義する。
11:オリジナルコンテンツはビデオストリーム中transfer_characteristicsに定義される色域と同一色域をもつ。
10:オリジナルコンテンツはBT.709による色域と同一色域をもつ。
01:オリジナルコンテンツはDCI(デジタル・シネマ・イニシアチブ)に定義される色域と同一色域をもつ。
【0026】
また、オリジナルの色域情報を多重する場所は、PMTの記述子に新しい記述子を追加して記述するようにしてもよい。
【0027】
また、ビデオストリーム中の符号化パラメータとして、「オリジナルコンテンツ色域」のパラメータを追加する。
11:オリジナルコンテンツはビデオストリーム中transfer_characteristicsに定義される色域と同一色域をもつ。
10:オリジナルコンテンツはBT.709による色域と同一色域をもつ。
01:オリジナルコンテンツはDCI(デジタル・シネマ・イニシアチブ)に定義される色域と同一色域をもつ。
【0028】
また、オリジナルの色域を示すひとつの方法にビデオデコードコントロール記述子に記述する方法がある。図11にビデオデコードコントロール記述子のデータ構造を示す。このデータ構造において、reserved_future_useが2bitある。ここに以下のように定義される2bitの符号を記述する。
11:オリジナルコンテンツはビデオストリーム中transfer_characteristicsに定義される色域と同一色域をもつ。
10:オリジナルコンテンツはBT.709による色域と同一色域をもつ。
01:オリジナルコンテンツはDCI(デジタル・シネマ・イニシアチブ)に定義される色域と同一色域をもつ。
【0029】
ここで、番組に関連する情報はMPEGあるいはARIB規格ではSI/PSIと呼ばれ、圧縮符号化されたビデオオーディオ信号とともに多重装置109で多重化され送出される。
【0030】
図5乃至図9は、それぞれ自然界の色域 → カメラの色域 → 編集装置の色域 → 伝送路の色域 → 受信装置の色域 → 表示パネルの色域の各処理の流れ(横軸)において、色域(縦軸:例えば、図3の色域のベクトルに沿った値)がどう変化するかの実施例を示している。
【0031】
図5の実施例)
通常のハイビジョン放送では、自然界の広い色域の信号をBT.709の色域に縮めて伝送する。この図では、カメラ101がBT.709の色域で撮影する例を示している。カメラ101の色域が広く、編集装置103で色域を狭くする場合は点線のようになる。そして、表示パネル211がBT.709の色域の表示しかできないのであれば、視聴者はBT.709の色域で楽しむことになる。
【0032】
図6の実施例)
自然界の広い色域の信号をBT.709の色域に縮めて伝送する。この図では、カメラ101がBT.709の色域で撮影する例を示している。そして、表示パネル211がBT.709より広い色域の表示できるのであれば、受信装置200の画像処理装置210で表示パネル211の色域に合わせて色域拡大を行う。これにより、視聴者は表示パネル211の持つ色域で楽しむことができる。
【0033】
図7の実施例)
伝送路がBT.2020という広い色域で伝送できる場合、カメラ101がBT.2020ほどの広い色域で撮影することができれば、そのまま信号を伝送し、受信装置200の画像処理装置210では表示パネル211の色域に合わせて色域を調整し、もし表示パネル211の色域がBT.2020より狭ければ色域を縮める処理を行って表示する。これにより、表示パネル211の色域の範囲では、カメラ101で撮影した色域が正しく再現することができる。
【0034】
図8の実施例)
ハイビジョン時代のカメラで撮影したコンテンツなどをBT.2020の色域の編集装置103で編集したり、BT.2020の色域の伝送路で伝送したりしようとすると、広い色域が扱える機器ではあっても、その一部しか使われない。受信装置200では、BT.2020の伝送路で送られてくる以上、その色域の信号が来ることを想定していなければならない。このため、色域拡大処理をしてしまうとBT.709を超える色域信号が伝送されてきた場合に、信号があふれてしまう不具合があるだろうから、たとえBT.709の色域しかない信号ではあっても、そのまま表示する。BT.709の範囲では、正しく色表示が行われる。
【0035】
図9の実施例)
伝送路がBT.2020の色域で、そこにBT.709の色域しか使用されない信号が通されても、それがSI/PSIなどの付加情報でそれが明確に受信装置200に通知されれば、受信装置200は画像処理装置210で色域拡大処理を行って表示パネル211の表現できる色域全てを使用して表示することができる。
【0036】
オリジナルの色域を示す別の方法に、単独の新しい記述子を増やしてそこに記述する方法がある。図12にオリジナル色域記述子の構造を示す。図12のoriginal_color_gamutの3bitに以下のような定義を持つ符号を記述する。
111:オリジナルコンテンツはビデオストリーム中transfer_characteristicsに定義される色域と同一色域をもつ。
100:オリジナルコンテンツはadobeRGBによる色域と同一色域をもつ。
011:オリジナルコンテンツはBT.601による色域と同一色域をもつ。
010:オリジナルコンテンツはBT.709による色域と同一色域をもつ。
001:オリジナルコンテンツはDCI(デジタル・シネマ・イニシアチブ)に定義される色域と同一色域をもつ。
尚、記述子の配置場所はPMTのようにPSI内に限る必要はなく、EIT(番組表)などのSIのなかに配置してもよい。
【0037】
また、カメラ101の色域がBT.2020ではない場合、エンコードされたストリーム中のtransfer_characteristicsというパラメータとは別に、original_vcolor_gamutという何bitかのパラメータを追加して伝送してもよい。例えば4bitならば、
1111:オリジナルコンテンツはビデオストリーム中transfer_characteristicsに定義される色域と同一色域をもつ。
0100:オリジナルコンテンツはadobeRGBによる色域と同一色域をもつ。
0011:オリジナルコンテンツはBT.601による色域と同一色域をもつ。
0010:オリジナルコンテンツはBT.709による色域と同一色域をもつ。
0001:オリジナルコンテンツはDCI(デジタル・シネマ・イニシアチブ)に定義される色域と同一色域をもつ。
【0038】
また、オリジナルの色域を示す別の方法に、エンコードされたビデオストリーム中に、パラメータではなくフラグを入れる方法もある。図13はオリジナル色域記述子のフラグをtransfer_characteristicsに追加した構造を示している。
【0039】
以上のように、上記実施形態の構成によれば、コンテンツのオリジナルの色域情報を受信信号から分離し、オリジナルコンテンツの色域が表示パネルの色域より狭い場合には、色域拡大処理を実施する。これにより、狭い色域のコンテンツが、広い色域のデータ形式を使用してコンテンツ伝送が行われても、受信装置側で色域拡大処理をすることで色鮮やかな画像を楽しむことができ、広い色域のコンテンツが、広い色域のデータ形式を使用してコンテンツ伝送が行われても、受信装置側で色域拡大処理をしないことで正しい色の表示をすることができる。このように、コンテンツの色域がBT.709であろうがBT.2020であろうが、表示パネルのもつ色域を有効に使っての色鮮やかな表示を楽しむことができる。
すなわち、BT.709の色域を持った画像信号やBT.2020の色域を持った画像信号をBT.2020のような広色域の形式で伝送した場合に、受信装置側でコンテンツのオリジナルの色域情報を多重して伝送するデータを検出判定するようにしているので、オリジナルの色域がBT.709であれば、色域復元処理を付加することができ色鮮やかな画像を楽しむことができ、BT.2020の場合には、色域復元処理はせずオリジナルの正しい色域で表示することができる。
【0040】
尚、本実施形態は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
100…放送設備、101…撮像カメラ、102…映像記録再生装置、103…編集装置、104…オーディオエンコーダ、105…ビデオエンコーダ、106…字幕情報処理装置、107…番組情報処理装置、108…ディスクリプタ挿入装置、200…放送受信装置、201…チューナ、202…復調装置、203…多重分離装置、204…オーディオデコーダ、205…ビデオデコーダ、206…字幕情報デコーダ、207…SI/PSI処理装置、208…ディスクリプタ分離装置、209…画面合成装置、210…画面合成装置、211…表示パネル。
図1
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図13