(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記負極はチタン含有酸化物を含み、前記チタン含有酸化物は、スピネル型のチタン含有酸化物、アナターゼ型のチタン含有酸化物、ルチル型のチタン含有酸化物、ブロンズ型又は単斜晶型のチタン含有酸化物、ラムスデライト型のチタン含有酸化物、並びに、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Nb及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素とを含有する金属複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む請求項1,3または4の何れか1項に記載の非水電解質電池。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態によれば、電極群と、非水電解質とを含む非水電解質電池が提供される。電極群は、正極、負極、及び、正極と負極の間に配置されたセパレータが扁平又は円筒状に捲回されたものである。セパレータは、捲回方向の引張弾性率が200(N/mm
2)以上、2000(N/mm
2)以下であり、また多孔質である。ここで、捲回方向(以下、MD(machine direction)方向とする)には、セパレータの長辺方向か、電極群の捲回軸に垂直な方向が使用可能である。上記セパレータは、その厚さが薄い場合にも柔軟性に優れており、バネのように孔の形状が変化することで充放電サイクル時の膨張収縮に伴う電極群または正負極の変形に追従して変形することができる。その結果、電極にかかる力が分散されるため、電流分布に大きな差が出ることを防ぐことが可能になる。また、充放電サイクルの途中でセパレータが破断して正極と負極が接して内部短絡を生じるのを回避することができる。さらに、セパレータが変形した結果、セパレータが伸びるため、セパレータの孔が大きくなってリチウムイオン透過性又は電解液の浸透性の改善を期待することができる。以上の結果、非水電解質電池の充放電サイクル性能を向上することができる。引張弾性率のより好ましい範囲は、500〜1300(N/mm
2)である。
【0010】
引張弾性率を200(N/mm
2)未満にすると、セパレータの変形量が大きくなるため、電極にかかる力にムラが発生する。そのことによって電流分布差が発生することで活物質が一様に充放電されなくなる。その結果、急激に劣化する部分としない部分ができてしまい、充放電サイクル時の容量劣化が促進する。一方、引張弾性率が2000(N/mm
2)を超えると、充放電サイクル時の電極群または電極の変形にセパレータが追従できずに破断して充放電サイクル中に内部短絡に至る確率が高くなる。
【0011】
セパレータのMD方向の引張弾性率は、次の方法で測定される。まず、JIS C2300−2に準じて、幅15mm×長さ約250mmのセパレータを準備する。また、セパレータの厚さもJIS C2300−2に準じて、セパレータを10枚重ねてその厚さを測定し、その値からセパレータ1枚当たりの平均値を算出する。これらの幅、長さ及び厚さの値から断面積を求めることができる。その後、セパレータのMD方向の引張り強度及び変位量を引張強度JIS−P8113に基づいて測定する。測定時の張力をF(N)、測定に供したサンプルの断面積をS(mm
2)、測定に供したサンプルの長さをL(mm)、サンプルの変位量ΔL(mm)として下記(2)式からMD方向の引張弾性率X(N/mm
2)を得る。
【0012】
X=(F/S)/(ΔL/L) (2)
セパレータは下記(1)式を満たすことが望ましい。
【0013】
1.5≦F
MD/F
TD≦10 (1)
F
MDはセパレータのMD方向の引張強度である。F
TDはMD方向と垂直な方向の引張強度である。F
MD及びF
TDは引張強度JIS−P8113に基づいて測定される。
【0014】
F
MD/F
TDの値を上記範囲にすることにより、セパレータが充放電サイクル時の膨張収縮を十分に吸収することができるため、充放電による電極の変形量を低減することができる。これにより充放電サイクル性能をより向上することができる。
【0015】
F
MD/F
TDの値を1.5未満にすると、セパレータを構成する不織布の繊維のMD方向への配向が十分でなく、満足のいくMD方向引張強度を得難い。また、F
MD/F
TDの値が10を超えると、MD方向に長い繊維が並んだだけのような状態になり、TD方向に裂けやすい状態になる可能性がある。
【0016】
セパレータは、水銀圧入法による細孔径分布におけるモード径が1μm以上10μm以下であることが望ましい。モード径を1μm以上にすることにより、セパレータの柔軟性が増すが、モード径が大きすぎると内部短絡を誘発するため、モード径は1μm以上10μm以下にすることが望ましい。
【0017】
負極はチタン酸リチウムを含むことが望ましい。チタン酸リチウムはLiが挿入されていない状態で絶縁体であるため、チタン酸リチウムを負極活物質とすると、セパレータの変形(伸び)により孔が大きくなって正負極が僅かに接触した場合にも内部短絡が発生し難くなる。チタン酸リチウムを負極活物質とし、かつセパレータの水銀圧入法による細孔径分布におけるモード径を1μm以上10μm以下にすることにより、充放電サイクル中の内部短絡発生率を低くすることができる。
【0018】
水銀圧入法による細孔径分布におけるモード径の測定方法を以下に記載する。
【0019】
測定装置には、島津オートポア9520(Autopore 9520 model manufactured by Shimadzu Corporation)またはこれと同等の機能を有する装置を用いる。試料は、電極を約25×25mm
2サイズに切断し、これを折りたたんで測定セルに採り、初期圧20kPa(初期圧20kPaは約3psiaに相当し、また、細孔直径が約60μmの試料に加わる圧力に相当する)及び最高圧414Mpa(最高圧414Mpaは約59986psiaに相当し、また、細孔直径が約0.003μmの試料に加わる圧力に相当する)の条件で測定する。3試料の平均値を測定結果として用いる。データ整理に当り、細孔比表面積は、細孔の形状を円筒形として計算する。
【0020】
なお、水銀圧入法の解析原理はWashburnの式(B)に基づく。
D=−4γcosθ/P (B)式
ここで、Pは加える圧力、Dは細孔直径、γは水銀の表面張力(480dyne・cm
-1)、θは水銀と細孔壁面の接触角で140°である。γ、θは定数であるからWashburnの式より、加えた圧力Pと細孔直径Dの関係が求められ、そのときの水銀侵入体積を測定することにより、細孔直径とその体積分布を導くことができる。得られた細孔直径の体積分布のピーク値を与える細孔直径をモード径とする。測定法・原理等の詳細は、神保元ニら:「微粒子ハンドブック」朝倉書店(1991年)、早川宗八郎編:「粉体物性測定法」朝倉書店(1973年)などを参照されたい。
【0021】
なお、電池からセパレータを取り出し、エチルメチルカーボネートに浸漬してLi塩などの電解質を除去した後に乾燥したものを測定サンプルとする。
【0022】
実施形態に係る非水電解質電池について、詳細に説明する。
【0023】
実施形態に係る非水電解質電池は、正極と、負極と、正極及び負極の間に配置されるセパレータと、非水電解質とを具備する。
【0024】
正極は、正極集電体と、正極集電体の片面又は両面に担持された正極材料層(正極活物質含有層)とを含むことができる。
【0025】
正極材料層は、正極活物質を含むことができる。正極材料層は、必要に応じて、導電剤及び結着剤を更に含むこともできる。
【0026】
正極集電体は、表面に正極材料層を担持していない部分を含むこともできる。正極集電体のうち正極材料層無担持部分は、正極タブとして働くことができる。或いは、正極は、正極集電体とは別体の正極タブを含むこともできる。
【0027】
負極は、負極集電体と、負極集電体の片面又は両面に担持された負極材料層(負極活物質含有層)とを含むことができる。
【0028】
負極材料層は、負極活物質を含むことができる。負極材料層は、必要に応じて、導電剤及び結着剤を更に含むこともできる。
【0029】
負極集電体は、表面に負極材料層を担持していない部分を含むことができる。この部分は、負極タブとして働くことができる。或いは、負極は、負極集電体とは別体の負極タブを含むこともできる。
【0030】
セパレータは、正極と負極との間に配置される。それにより、正極材料層と負極材料層とは、セパレータを介して対向することができる。
【0031】
正極、負極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電極群は、様々な構造を有することができる。例えば、電極群は、巻回型の構造を有することができる。巻回型の構造には、扁平形状、円筒形状が含まれる。巻回型の電極群は、例えば、セパレータと、正極と、セパレータと、負極とをこの順で積層させて積層体を作り、この積層体を例えば負極が外側に位置するように巻回することによって得ることができる。
【0032】
非水電解質は、このような電極群に含浸され得る。
【0033】
実施形態に係る非水電解質電池は、正極端子及び負極端子を更に具備することができる。
【0034】
正極端子は、その一部が正極の一部に電気的に接続されることによって、正極と外部回路との間で電子が移動するための導体として働くことができる。正極端子は、例えば、正極集電体、特に正極タブに接続することができる。同様に、負極端子は、その一部が負極の一部に電気的に接続されることによって、負極と外部端子との間で電子が移動するための導体として働くことができる。負極端子は、例えば、負極集電体、特に負極タブに接続することができる。
【0035】
実施形態に係る非水電解質電池は、外装部材を更に具備することができる。外装部材は、電極群及び非水電解質を収容することができる。正極端子及び負極端子のそれぞれの一部は、外装部材から延出させることができる。
【0036】
以下、実施形態に係る非水電解質電池に含まれる各部材を説明する。
【0037】
1)負極
負極集電体には、例えば金属箔または合金箔が用いられる。集電体の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下であることが望ましい。金属箔としては銅箔、アルミニウム箔といったものが挙げられる。アルミニウム箔の場合、99重量%以上の純度を有することが好ましい。合金箔としてはステンレス箔、アルミニウム合金箔といったものが挙げられる。アルミニウム合金箔中のアルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛及びケイ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。合金成分中の鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1重量%以下にすることが好ましい。
【0038】
負極活物質としては、リチウムを吸蔵放出可能な炭素質物(例えば、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラフェン)、チタン含有酸化物、硫化物、リチウム窒化物、例えばSnB
0.4P
0.6O
3.1などのアモルファススズ酸化物、例えばSnSiO
3などのスズ珪素酸化物、例えばSiOなどの酸化珪素、例えばWO
3などのタングステン酸化物といったものが挙げられる。負極活物質の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
【0039】
チタン含有酸化物、アモルファススズ酸化物、スズ珪素酸化物、酸化珪素、タングステン酸化物は、酸化物合成時にリチウムを含まないが、充電によりリチウムを含むことができる。
【0040】
チタン含有酸化物の例には、スピネル型のチタン含有酸化物、アナターゼ型のチタン含有酸化物、ルチル型のチタン含有酸化物、ブロンズ型又は単斜晶型のチタン含有酸化物、ラムスデライト型のチタン含有酸化物、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Nb及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素とを含有する金属複合酸化物が含まれる。TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Nb及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素とを含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO
2-P
2O
5、TiO
2-V
2O
5、TiO
2-P
2O
5-SnO
2、TiO
2-P
2O
5-MeO(Meは、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素である)、Nb
2TiO
7などを挙げることができる。この金属複合酸化物は、結晶性が低く、結晶相とアモルファス相とが共存もしくは、アモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることによりサイクル性能を大幅に向上させることができる。
【0041】
アナターゼ型、ルチル型、ブロンズ型又は単斜晶型のチタン含有酸化物の組成は、TiO
2で表すことができる。
【0042】
スピネル型のチタン含有酸化物の例に、スピネル型リチウムチタン複合酸化物が挙げられる。スピネル型リチウムチタン複合酸化物としては、Li
4+xTi
5O
12(xは充放電反応により0≦x≦3の範囲で変化する)などのチタン酸リチウムを挙げることができる。スピネル型リチウムチタン複合酸化物を単独で用いてもいいし、他の活物質を複数種混合しても良い。混合される他の負極活物質としては、リチウムを吸蔵・放出することができるリチウム化合物が挙げられる。このようなリチウム化合物としては、リチウム酸化物、リチウム硫化物、リチウム窒化物などが挙げられる。これらの中には、未充電状態ではリチウムを含まない金属化合物であるが、充電によりリチウムを含むようになる化合物も含まれる。
【0043】
ラムスデライト型のチタン含有酸化物の例として、Li
2+yTi
3O
7(yは充放電反応により−1≦y≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。
【0044】
硫化物としては、例えば、例えばTiS
2などの硫化チタン、例えばMoS
2などの硫化モリブデン、例えば、FeS、FeS
2、Li
xFeS
2(0≦x≦2)などの硫化鉄などが挙げられる。
【0045】
リチウム窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物(例えば、Li
xCo
yN、ここで、0<x<4であり、0<y<0.5である)などが挙げられる。
【0046】
好ましい負極活物質は、チタン酸リチウムを含むものである。
【0047】
導電剤としては、例えば炭素含有材料(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等)、金属粉末を挙げることができる。
【0048】
結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0049】
負極材料層の目付量は、10g/m
2以上300g/m
2以下の範囲にすることが望ましい。さらに好ましい範囲は、20g/m
2以上200g/m
2以下である。
【0050】
負極材料層の密度は、1.5g/cm
3以上3.2g/cm
3以下の範囲にすることが望ましい。さらに好ましい範囲は、1.8g/cm
3以上2.5g/cm
3以下である。
【0051】
負極は、例えば、粉末状の負極活物質に導電剤及び結着剤を添加し、これらを適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁物(スラリー)を集電体に塗布、乾燥、プレスして帯状電極にすることにより作製することができる。
【0052】
負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質73〜98重量%、導電剤0〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0053】
2)正極
正極活物質の例に種々の酸化物、硫化物などが挙げられる。例えば、二酸化マンガン(MnO
2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、Li
xMn
2O
4またはLi
xMnO
2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLi
xNiO
2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLi
xCoO
2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLi
xNi
1-y-zCo
yM
zO
2(MはAl,CrおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素であり、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1である))、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLi
xMn
1-y-zCo
yM
zO
2(MはAl、CrおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素であり、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1である))、リチウムマンガンニッケル複合化合物(例えばLi
xMn
1/2Ni
1/2O
2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLi
xMn
2-yNi
yO
4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えば、Li
xFePO
4、Li
xFe
1-yMn
yPO
4、Li
xCoPO
4など)、硫酸鉄(例えばFe
2(SO
4)
3)、バナジウム酸化物(例えばV
2O
5)、Li
xNi
1-a-bCo
aMn
bM
cO
2(0.9<x≦1.25、0<a≦0.4、0≦b≦0.45、0≦c≦0.1、MはMg,Al,Si,Ti,Zn,Zr,Ca及びSnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をあらわす)などが挙げられる。また、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、イオウ(S)、フッ化カーボンなどの有機材料および無機材料も挙げられる。なお、上記に好ましい範囲の記載がないx、y及びzについては、0以上1以下の範囲であることが好ましい。
【0054】
正極活物質の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。
【0055】
導電剤としては、例えばカーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、グラフェン、フラーレン類、コークス等を挙げることができる。中でもカーボンブラック、黒鉛が好ましい。カーボンブラックとしてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。
【0056】
結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0057】
正極集電体は、アルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔から形成されることが望ましい。アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔の平均結晶粒径は50μm以下であることが好ましい。より好ましくは、30μm以下である。更に好ましくは5μm以下である。平均結晶粒径が50μm以下であることにより、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の強度を飛躍的に増大させることができ、正極を高いプレス圧で高密度化することが可能になり、電池容量を増大させることができる。
【0058】
集電体の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99重量%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛及びケイ素よりなる群から選択される1種類以上の元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1重量%以下にすることが好ましい。
【0059】
正極材料層の目付量は、10g/m
2以上300g/m
2以下の範囲にすることが望ましい。さらに好ましい範囲は、20g/m
2以上220g/m
2以下である。
【0060】
正極材料層の密度は、2.0g/cm
3以上4.5g/cm
3以下の範囲にすることが望ましい。さらに好ましい範囲は、2.8g/cm
3以上4.0g/cm
3以下である。
【0061】
この正極は、例えば、正極活物質に導電剤及び結着剤を添加し、これらを適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁物をアルミニウム箔などの集電体に塗布、乾燥、プレスして帯状電極にすることにより作製される。
【0062】
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0063】
3)非水電解質
この非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解される電解質塩とを含むことができる。また、非水溶媒中にはポリマーを含んでもよい。
【0064】
電解質塩の例としては、LiPF
6、LiBF
4、Li(CF
3SO
2)
2N(ビストリフルオロメタンスルホニルアミドリチウム;通称LiTFSI)、LiCF
3SO
3(通称LiTFS)、Li(C
2F
5SO
2)
2N(ビスペンタフルオロエタンスルホニルアミドリチウム;通称LiBETI)、LiClO
4、LiAsF
6、LiSbF
6、ビスオキサラトホウ酸リチウム(LiB(C
2O
4)
2(通称LiBOB))、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiF
2BC
2O
4)、ジフルオロ(トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロ−メチルプロピオナト(2−)−0,0)ホウ酸リチウム(LiBF
2(OCOOC(CF
3)
2)(通称LiBF
2(HHIB)))、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO
2F
2)等のリチウム塩が挙げられる。これらの電解質塩は一種類で使用してもよいし又は二種類以上を混合して用いてもよい。特に、LiPF
6、LiBF
4、ビスオキサラトホウ酸リチウム(LiB(C
2O
4)
2(通称LiBOB))、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiF
2BC
2O
4)、ジフルオロ(トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロ−メチルプロピオナト(2−)−0,0)ホウ酸リチウム(LiBF
2(OCOOC(CF
3)
2)(通称LiBF
2(HHIB)))、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO
2F
2)が好ましい。
【0065】
電解質塩濃度は、0.5M以上、3M以下の範囲内とすることが好ましい。これにより、高負荷電流を流した場合の性能を向上することができる。
【0066】
非水溶媒としては、特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、γ−ブチロラクトン(GBL)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeHF)、1,3−ジオキソラン、スルホラン、アセトニトリル(AN)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等が挙げられる。これらの溶媒は1種類で使用してもよいし又は2種類以上を混合して用いてもよい。また、溶媒を二種類以上組み合わせる場合、全ての溶媒に誘電率が20以上のものの中から選ぶことが好ましい。
【0067】
この非水電解質に、添加剤を添加してもよい。添加剤としては、特に限定されるものではないが、ビニレンカーボネイト(VC)、フルオロビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、フルオロメチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ジプロピルビニレンカーボネート、ビニレンアセテート(VA)、ビニレンブチレート、ビニレンヘキサネート、ビニレンクロトネート、カテコールカーボネート、プロパンスルトン、ブタンスルトン等が挙げられる。添加剤の種類は、1種類又は2種類以上にすることができる。
【0068】
4)セパレータ
セパレータは、MD方向の引張弾性率が200(N/mm
2)以上、2000(N/mm
2)以下である。セパレータには、このような条件を満たす多孔質フィルム、不織布を使用することができる。この多孔質フィルム、不織布中に無機粒子が含まれてもよい。セパレータを構成する材料は1種類であってもよくあるいは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。材料としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、セルロース、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン及びビニロンよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のポリマーを挙げることができる。
【0069】
セパレータの厚さは、4μm以上30μm以下にすることが望ましい。より好ましい範囲は8μm以上25μm以下である。
【0070】
セパレータの引張弾性率は、例えば、セパレータの厚さ及び坪量(g/mm
2)により調整可能である。セパレータの厚さを厚くしたり、坪量(g/mm
2)を大きくすると、セパレータの強度が増加するため、引張弾性率を大きくすることができる。一方、セパレータの厚さを薄くしたり、坪量(g/mm
2)を小さくすると、引張弾性率を小さくすることができる。F
MDとF
TDは、繊維長と繊維の配向性を変更することで調製できる。
【0071】
5)外装部材
外装部材は、厚さ0.5mm以下のラミネートフィルム又は厚さ3mm以下の金属製容器が用いられる。金属製容器は、厚さ0.5mm以下であることがより好ましい。また、樹脂製容器を用いてもよい。樹脂製容器を形成する材料の例に、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン系樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレン系樹脂、フッ素系樹脂等が含まれる。
【0072】
外装部材の形状、すなわち電池形状としては、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、ボタン型等が挙げられる。また、電池は、例えば携帯用電子機器等に積載される小型用途、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型用途のいずれにも適用することができる。
【0073】
ラミネートフィルムは、樹脂層間に金属層を介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材の形状に成形することができる。
【0074】
金属製容器は、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛及びケイ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素等を含むことが好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属が含まれる場合、その量は100ppm以下にすることが好ましい。
【0075】
6)負極端子
負極端子は、アルミニウム、又は、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有するアルミニウム合金から形成することができる。負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極端子は負極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0076】
7)正極端子
正極端子は、アルミニウム、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有するアルミニウム合金から形成されることが好ましい。正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極端子は正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0077】
実施形態の非水電解質電池の一例を
図1に示す。
図1に示す電池は、密閉型の角型非水電解質電池である。非水電解質電池は、外装缶1と、蓋2と、正極外部端子3と、負極外部端子4と、電極群5とを備える。外装缶1と蓋2とから外装部材が構成されている。
【0078】
外装缶1は、有底角筒形状をなし、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。
【0079】
図2に示すように、偏平型の電極群5は、正極6と負極7がその間にセパレータ8を介して偏平形状に捲回されたものである。正極6は、例えば金属箔からなる帯状の正極集電体と、正極集電体の長辺に平行な一端部からなる正極集電タブ6aと、少なくとも正極集電タブ6aの部分を除いて正極集電体に形成された正極材料層(正極活物質含有層)6bとを含む。一方、負極7は、例えば金属箔からなる帯状の負極集電体と、負極集電体の長辺に平行な一端部からなる負極集電タブ7aと、少なくとも負極集電タブ7aの部分を除いて負極集電体に形成された負極材料層(負極活物質含有層)7bとを含む。
図2において、セパレータのMD方向をMD、MD方向と垂直な方向をTD(transverse direction)と表示した。
【0080】
このような正極6、セパレータ8及び負極7は、正極集電タブ6aが電極群の捲回軸方向にセパレータ8から突出し、かつ負極集電タブ7aがこれとは反対方向にセパレータ8から突出するよう、正極6及び負極7の位置をずらして捲回されている。このような捲回により、電極群5は、
図2に示すように、一方の端面から渦巻状に捲回された正極集電タブ6aが突出し、かつ他方の端面から渦巻状に捲回された負極集電タブ7aが突出している。電解液(図示しない)は、電極群5に含浸されている。
【0081】
図1に示すように、正極集電タブ6a及び負極集電タブ7aは、それぞれ、電極群の捲回中心付近を境にして二つの束に分けられている。導電性の挟持部材9は、略コの字状をした第1,第2の挟持部9a,9bと、第1の挟持部9aと第2の挟持部9bとを電気的に接続する連結部9cとを有する。正負極集電タブ6a,7aは、それぞれ、一方の束が第1の挟持部9aによって挟持され、かつ他方の束が第2の挟持部9bによって挟持される。
【0082】
正極リード10は、略長方形状の支持板10aと、支持板10aに開口された貫通孔10bと、支持板10aから二股に分岐し、下方に延出した短冊状の集電部10c、10dとを有する。一方、負極リード11は、略長方形状の支持板11aと、支持板11aに開口された貫通孔11bと、支持板11aから二股に分岐し、下方に延出した短冊状の集電部11c、11dとを有する。
【0083】
正極リード10は、集電部10c、10dの間に挟持部材9を挟む。集電部10cは、挟持部材9の第1の挟持部9aに配置されている。集電部10dは、第2の挟持部9bに配置されている。集電部10c、10dと、第1,第2の挟持部9a,9bと、正極集電タブ6aとは、例えば超音波溶接によって接合される。これにより、電極群5の正極6と正極リード10が正極集電タブ6aを介して電気的に接続される。
【0084】
負極リード11は、集電部11c、11dの間に挟持部材9を挟んでいる。集電部11cは、挟持部材9の第1の挟持部9aに配置されている。一方、集電部11dは、第2の挟持部9bに配置される。集電部11c、11dと、第1,第2の挟持部9a,9bと、負極集電タブ7aとは、例えば超音波溶接によって接合される。これにより、電極群5の負極7と負極リード11が負極集電タブ7aを介して電気的に接続される。
【0085】
正負極リード10,11および挟持部材9の材質は、特に指定しないが、正負極外部端子3,4と同じ材質にすることが望ましい。正極外部端子3には、例えば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が使用され、負極外部端子4には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、ニッケル、ニッケルメッキされた鉄などが使用される。例えば、外部端子の材質がアルミニウム又はアルミニウム合金の場合は、リードの材質をアルミニウム、アルミニウム合金にすることが好ましい。また、外部端子が銅の場合は、リードの材質を銅などにすることが望ましい。
【0086】
矩形板状の蓋2は、外装缶1の開口部に例えばレーザでシーム溶接される。蓋2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。蓋2と外装缶1は、同じ種類の金属から形成されることが望ましい。正極外部端子3は、正極リード10の支持板10aと電気的に接続され、負極外部端子4は、負極リード11の支持板11aと電気的に接続されている。絶縁ガスケット12は、正負極外部端子3,4と蓋2との間に配置され、正負極外部端子3,4と蓋2とを電気的に絶縁している。絶縁ガスケット12は、樹脂成形品であることが望ましい。
【0087】
以上説明した第1の実施形態の非水電解質電池によれば、捲回方向の引張弾性率が200(N/mm
2)以上、2000(N/mm
2)以下のセパレータを備えるため、充放電サイクル性能を向上することができる。
【0088】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、非水電解質電池を含む電池パックが提供される。非水電解質電池には、第1の実施形態に係る非水電解質電池が使用される。電池パックに含まれる非水電解質電池(単電池)の数は、1個または複数にすることができる。
【0089】
複数の非水電解質電池は、電気的に直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて接続されて組電池を構成することができる。電池パックは、複数の組電池を含んでいてもよい。
【0090】
電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、非水電解質電池の充放電を制御する機能を有する。また、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することができる。
【0091】
また、電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、非水電解質電池からの電流を外部に出力するため、及び非水電解質電池に電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車の動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0092】
このような電池パックを
図3を参照して詳細に説明する。複数の単電池21は、互いに電気的に直列に接続され、組電池22を構成している。正極側リード23は、組電池22の正極端子に接続され、その先端は正極側コネクタ24に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード25は、組電池22の負極端子に接続され、その先端は負極側コネクタ26に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ24,26は、配線27,28を通して保護回路29に接続されている。
【0093】
サーミスタ30は、単電池21の温度を検出し、その検出信号は保護回路29に送信される。保護回路29は、所定の条件で保護回路29と外部機器への通電用端子31との間のプラス側配線32aおよびマイナス側配線32bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ30の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは単電池21全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。
図3の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線33を接続し、これら配線33を通して検出信号が保護回路29に送信される。
【0094】
図3では単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。組み上がった電池パックを直列、並列又は直列と並列とを組み合わせて接続することもできる。
【0095】
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途としては、大電流特性でのサイクル特性が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、車載用が好適である。
【0096】
本実施形態に係る電池パックを搭載した自動車において、電池パックは、例えば、自動車の動力の回生エネルギーを回収するものである。
【0097】
以上詳述した第2の実施形態の電池パックによれば、第1の実施形態の非水電解質電池を含むため、充放電サイクル性能に優れた電池パックを提供することができる。
【0098】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質として、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2を準備した。また、導電剤として、グラファイト及びアセチレンブラックを準備した。そして、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。次に、正極活物質、グラファイト、アセチレンブラック及びPVdFを混合して混合物を得た。この際、グラファイトは、作製する正極全体に対して2.5重量%の割合になるように添加した。アセチレンブラックは、作製する正極全体に対して2.5重量%の割合になるように添加した。PVdFは、作製する正極全体に対して5重量%となるように添加した。次に、得られた混合物をn−メチルピロリドン(NMP)溶媒中に分散して、スラリーを調製した。得られたスラリーを、厚さ15μmのアルミニウム箔に単位面積当たりの塗布量が80g/m
2になるように塗布し、乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスした。かくして、正極材料層の目付量が80g/m
2で、密度が3g/cm
3である正極を作製した。
【0100】
<負極の作製>
負極活物質として、スピネル型リチウムチタン複合酸化物Li
4Ti
5O
12を準備した。また、導電剤としてグラファイトを準備した。そして、結着剤としてPVdFを準備した。次に、負極活物質、グラファイト、及びPVdFを混合して混合物を得た。この際、グラファイトは、作製する負極全体に対して3重量%になるように添加した。PVdFは、作製する負極全体に対して2重量%となるように添加した。次に、得られた混合物を、N−メチルピロリドン(NMP)溶液中で混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを、厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体に単位面積当たりの塗布量が120g/m
2になるように塗布し、乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体上に負極材料層を形成した。かくして、負極材料層の目付量が120g/m
2で、密度が2.1g/cm
3である帯状の負極を作製した。
【0101】
<非水電解質の調製>
33体積%のエチレンカーボネート(EC)及び67体積%のジエチルカーボネート(DEC)からなる非水溶媒中に、1MのLiPF
6を混合して溶解させて、非水電解質として非水電解液を調製した。
【0102】
<電池の組み立て>
厚さが20μmのポリエステルの不織布からなるセパレータを用意した。このセパレータの引張弾性率、F
MD/F
TD及び水銀圧入法による細孔径分布におけるモード径を下記表1に示す。また、セパレータの厚さ及び秤量(g/mm
2)を表3に示す。
【0103】
このセパレータに、先に調製した非水電解質を含浸させた。次いで、このセパレータで先に作製した正極を覆い、次に、先に作製した負極をセパレータを介して正極と対向するように重ねて積層体を得た。この積層体を、渦巻状に捲回し、渦巻状の電極群を作製した。この電極群をプレスに供して、扁平状に成形した。
【0104】
この扁平状電極群を、厚さ0.3mmのアルミニウムからなる有底矩形筒形状の缶に挿入して、蓋体で封止した。このようにして、厚さ5mm、幅30mm、高さ25mm、重量100gの扁平型非水電解質二次電池を作製した。
【0105】
(実施例2〜7、比較例1〜3)
セパレータの厚さ及び坪量(g/mm
2)を表3に示すように調節することで引張弾性率を下記表1に示す通りに変更すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0106】
(実施例8〜12,比較例5)
セパレータの厚さ及び坪量(g/mm
2)を表3に示すように調節することでF
MD/F
TDを下記表2に示す通りに変更すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0107】
(実施例13及び14)
セパレータの厚さ及び坪量(g/mm
2)を表3に示すように調節したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これらの結果を表4に示す。
【0108】
得られた二次電池を25℃の環境で10Cで充電状態(SOC)が100%になるまで充電した後、10CでSOCが20%になるまで放電する充放電サイクルを1万回繰り返した。1サイクル目の放電容量を100%とした際の1万サイクル目の放電容量を容量維持率として下記表1及び表2に示す。また、実施例5,6及び比較例1〜3の容量維持率の変化を
図4に示す。
図4の横軸は充放電サイクル数、縦軸は容量維持率を示す。
【0113】
表1及び
図4から明らかなように、セパレータのMD方向の引張弾性率が200(N/mm
2)以上、2000(N/mm
2)以下である実施例1〜7の非水電解質電池は、容量維持率が、セパレータのMD方向の引張弾性率が前述の範囲から外れている比較例1〜3の非水電解質電池に比べて高い。引張弾性率が200(N/mm
2)未満の比較例1では、数百サイクルで短絡してしまい、1万サイクル後の容量維持率は0%であった。
【0114】
また、実施例1〜7を比較すると、引張弾性率が1500(N/mm
2)以下の実施例1〜6の容量維持率が、引張弾性率が1500(N/mm
2)を超える実施例7に比して高いことがわかる。
【0115】
表2から明らかなように、セパレータのMD方向の引張弾性率が200(N/mm
2)以上2000(N/mm
2)以下である実施例8〜12の非水電解質電池は、容量維持率が、セパレータのMD方向の引張弾性率が前述の範囲から外れている比較例5の非水電解質電池に比べて高い。また、セパレータのF
MD/F
TDが1.5以上10以下である実施例8〜11の非水電解質電池は、容量維持率が、セパレータのF
MD/F
TDが前述の範囲から外れている実施例12の非水電解質電池に比べて高い。
【0116】
また、セパレータのF
MD/F
TDが1.5以上10以下である実施例8〜11の非水電解質電池は、容量維持率が、セパレータのF
MD/F
TDが10より大きい実施例13の非水電解質電池に比べて高い。また、水銀圧入法による細孔径分布におけるモード径が1μm以上10μm以下であるセパレータを含んだ実施例1〜11に係る非水電解質電池の容量維持率は、このモード径が1μm未満である実施例14の非水電解質電池の容量維持率と比較して高い。
【0117】
以上説明した少なくとも一つの実施形態及び実施例の非水電解質電池によれば、捲回方向の引張弾性率が200(N/mm
2)以上、2000(N/mm
2)以下のセパレータを備えるため、充放電サイクル性能を向上することができる。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 正極、負極、及び、前記正極と前記負極の間に配置されたセパレータが捲回された電極群と、非水電解質とを含む非水電解質電池であって、
前記セパレータは、捲回方向の引張弾性率が200(N/mm2)以上、2000(N/mm2)以下である、非水電解質電池。
[2] 前記セパレータは下記(1)式を満たす、[1]に記載の非水電解質電池。
1.5≦FMD/FTD≦10 (1)
前記FMDは前記セパレータの前記捲回方向の引張強度で、前記FTDは前記捲回方向と垂直な方向の引張強度である。
[3] 前記セパレータは、水銀圧入法による細孔径分布におけるモード径が1μm以上10μm以下の不織布であり、前記負極はチタン酸リチウムを含む、[2]に記載の非水電解質電池。
[4] 前記引張弾性率が500(N/mm2)以上、1300(N/mm2)以下である[1]〜[3]の何れかに記載の非水電解質電池。
[5] 前記セパレータの厚さは、4μm以上30μm以下である[1]〜[4]の何れかに記載の非水電解質電池。
[6] 前記セパレータは、多孔質フィルム又は不織布である[1]〜[5]の何れかに記載の非水電解質電池。
[7] 前記負極はチタン含有酸化物を含み、前記チタン含有酸化物は、スピネル型のチタン含有酸化物、アナターゼ型のチタン含有酸化物、ルチル型のチタン含有酸化物、ブロンズ型又は単斜晶型のチタン含有酸化物、ラムスデライト型のチタン含有酸化物、並びに、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Nb及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素とを含有する金属複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む[1]〜[6]の何れかに記載の非水電解質電池。
[8] 前記負極は負極材料層を含み、前記負極材料層の目付量は、10g/m2以上300g/m2以下の範囲内にある[1]〜[7]の何れかに記載の非水電解質電池。
[9] 前記負極は負極材料層を含み、前記負極材料層の密度は1.5g/cm3以上3.2g/cm3以下の範囲内にある[1]〜[8]の何れかに記載の非水電解質電池。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の非水電解質電池を含む電池パック。
[11] 通電用の外部端子と、保護回路とを更に含む[10]に記載の電池パック。
[12] 複数の前記非水電解質電池を具備し、前記複数の非水電解質電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[10]又は[11]に記載の電池パック。