(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シート透明化剤は、前記合計量Pに対するシリコーン油及びエーテル油の合計の含有量が30質量%以下である請求項5〜8のいずれか1項記載の透明又は半透明被膜形成用貼付材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のナノファイバーシートを用いて皮膚表面に被膜を形成する方法は、次の工程(1)及び工程(2)を有する。
(1)1種または2種以上の油剤を2質量%以上含有するシート透明化剤を皮膚に施す工程(1)、
(2)水不溶性ポリマーを主成分とする白色のナノファイバーシートを工程(1)適用後の皮膚に転写する工程(2)。
【0011】
工程(1)に用いられるシート透明化剤は、1種又は2種以上の油剤を2質量%以上100質量%以下含有する。油剤の含有量は、ナノファイバーシートの皮膚への密着性、透明な外観の持続性の観点から、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは8質量%以上であり、油剤の含有量の上限は100質量%が好ましい。なお、シート透明化剤が水、水溶性ポリマー、有効成分等を含む場合は、シート透明化剤中の油剤の含有量は、好ましくは85質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下であり、更に好ましくは65質量%以下である。
【0012】
シート透明化剤に用いられる油剤は、20℃で固体又はペースト状の油剤であっても、20℃で液状の油剤であっても、これらの混合物であってもよい。
【0013】
前記油剤としては、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、エーテル油、シリコーン油等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。皮膚への感触の点から、炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールから選ばれる1種または2種以上の含有量が前記の油剤の含有量であることが好ましい。
シリコーン油、エーテル油を含む場合には、これらの油の合計量Sは、長時間の透明性の維持の観点、ナノファイバーシートの密着性を向上する観点から、炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールの含有量の合計量Pよりも少ないことが好ましく、前記合計量Pに対する合計量Sは、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、含有しないものであってもよい。また、シリコーン油、エーテル油のシート透明化剤中の合計の含有量は、長時間の透明性の維持の観点、密着性を向上する観点から、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
このうち、皮膚とシートの密着性を向上し、シートが皮膚から滑ることを防止する観点から、少なくとも炭化水素油及びエステル油から選ばれる1種又は2種以上を含むことがより好ましい。また、20℃で液状の油剤と、20℃で固体又は半固体の油剤を組み合わせて用いることが好ましい。
【0014】
油剤としては、揮発性の油剤も含有することができるが、シートの皮膚への密着性や透明性の持続の観点から、揮発性の油剤が油剤全体にしめる割合は、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、よりさらに好ましくは5質量%以下であり、含有しないものであってもよい。揮発性の油剤とは、大気圧下、25℃で揮発する性質を有する油剤であり、好ましくは、大気圧における沸点が260℃以下で、25℃における蒸気圧が0.01〜6mmHgの油剤であり、より好ましくは大気圧における沸点が260℃以下であり、25℃における蒸気圧が0.02〜1.5mmHgの油剤である。揮発性の油剤としては、例えば揮発性炭化水素、環状シリコーン油、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。
【0015】
前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、及び流動イソパラフィン等の20℃で液状の炭化水素油、ワセリン、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、水添ポリイソブテン、ポリエチレンワックス、及びポリオレフィンワックス等の20℃で固体あるいは半固体の炭化水素油が挙げられ、使用感の観点から流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、及びワセリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0016】
前記エステル油としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステル、トリグリセリン脂肪酸エステル(トリグリセライド)が挙げられる。具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0017】
これらの中では、被膜を皮膚に密着させる観点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、ミリスチン酸イソプロピルから選ばれる1種又は2種以上を含むことが更に好ましい。
【0018】
なお、本発明における油は、HLB値が10以下のものであり、好ましくは8以下のものである。HLB値は、親水性−親油性のバランス(Hydrophile ipophile Balance)を示す指標であり、本発明においては、小田及び寺村らによる次式により算出した値を用いている。
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
【0019】
エーテル油としてはジオクチルエーテルが挙げられる。本発明のシート透明化剤はエーテル油を含有してもよいが、シート透明化剤におけるエーテル油の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、含有しないものであってもよい。
【0020】
また、上記エステル油、炭化水素油を含む動植物油を用いることができる。動植物油としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などが挙げられる。
【0021】
高級アルコールとしては、炭素数12〜20の高級アルコールが挙げられ、具体的にはセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。シート透明化剤におけるシリコーン油の含有量は、シートの密着性向上の観点から、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、含有しないものであってもよい。
【0023】
このシート透明化剤には、上記の油剤以外に、界面活性剤、防腐剤、20℃で液体のポリオール、水溶性ポリマー、アミノ酸等を含めることができる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、セチルジメチコンコポリオール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンセスキオレエート、モノオレイン酸ジグリセリル等が挙げられる。皮膚にシート透明化剤を長時間貼付する観点から、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、非イオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
界面活性剤は、HLB値が10より大きなものが好ましく、より好ましくは12以上である。
【0024】
防腐剤としてはフェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
【0025】
20℃で液体のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、重量平均分子量が2000以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。これらのうち、塗布時の滑らかさなどの使用感の点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、重量平均分子量が2000以下のポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが好ましく、更にプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリンがより好ましく、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールが一層好ましい。
20℃で液体のポリオールを含有する場合には、シート透明化剤と20℃で液体のポリオールの含有量との合計量は、透明性を維持し、密着性を向上する観点から、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0026】
なお、シート透明化剤中には水溶性ポリマーを含有してもよいが、その含有量はナノファイバーシートの皮膚との密着性の向上、透明性の向上の点から、好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。かかる水溶性ポリマーとしては、粘性を付与するものが好ましく、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸Na・アクリロイルジメチルタウリンNa共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0027】
シート透明化剤の皮膚への適用手段は、電界紡糸法以外の手段であれば特に制限されず、例えば指やアプリケータ等の道具を用いて塗布する方法、スプレー等が挙げられる。
【0028】
シート透明化剤を皮膚に塗布する量は、皮膚と被膜との密着性が向上するのに必要十分な量とすればよい。皮膚と被膜との密着性を確実にする観点から、シート透明化剤を皮膚に施す量は、シート透明化剤の坪量が好ましくは0.1mg/cm
2以上であり、より好ましくは0.2mg/cm
2以上であり、さらに好ましくは0.4mg/cm
2となるような量とし、好ましくは15mg/cm
2以下であり、より好ましくは10mg/cm
2以下であり、さらにナノファイバーシートの転写時に皮膚上のシート透明化剤とナノファイバーシートを皮膚表面にとどめる観点や使用感の観点から、好ましくは7mg/cm
2以下であり、よりさらに好ましくは5mg/cm
2以下となるような量とする。例えば、シート透明化剤を皮膚に施す量は、坪量が好ましくは0.1mg/cm
2以上15mg/cm
2以下、より好ましくは0.2mg/cm
2以上10mg/cm
2以下、さらに好ましくは0.4mg/cm
2以上7mg/cm
2以下、よりさらに好ましくは0.4mg/cm
2以上5g/cm
2以下となるような量とする。
また、シート透明化剤を皮膚に、又は被膜に施す場合の油剤の量は、皮膚と被膜の密着性を向上させる観点、透明性を向上させる観点から、好ましくは0.2mg/cm
2以上であり、より好ましくは0.3mg/cm
2以上であり、更に好ましくは0.4mg/cm
2以上であり、好ましくは10mg/cm
2以下であり、より好ましくは7mg/cm
2以下であり、よりさらに好ましくは5mg/cm
2以下であり、ナノファイバーシートの転写時に皮膚上のシート透明化剤とナノファイバーシートを皮膚表面にとどめる観点や使用感の観点からさらに好ましくは4mg/cm
2以下である。具体的には、好ましくは0.2mg/cm
2以上10mg/cm
2以下、より好ましくは0.3mg/cm
2以上7mg/cm
2以下、さらに好ましくは0.4mg/cm
2以上5mg/cm
2以下、よりさらに好ましくは0.4cm/cm
2以上4mg/cm
2以下である。
【0029】
次に工程(2)について説明する。
工程(2)に用いられるナノファイバーシートは、水不溶性ポリマーを主成分とする白色のナノファイバーシートである。当該ナノファイバーシートは、水不溶性ポリマー及び揮発性物質を含有する溶液(噴霧用組成物ともいう)を基材に電界紡糸することにより製造できる。
【0030】
電界紡糸法は、電界紡糸装置を用い、基材に噴霧用組成物を電界紡糸する工程を含む。電界紡糸装置は、基本的に、噴霧用組成物を収容する容器と、噴霧用組成物を吐出するノズルと、前記容器中に収容されている噴霧用組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを有する。
【0031】
図1には、前記の電界紡糸法を実施するための装置10が示されている。電界紡糸法を実施するためには、シリンジ11、高電圧源12、導電性コレクタ13を備えた装置10が用いられる。シリンジ11は、シリンダ11a、ピストン11b及びキャピラリ11cを備えている。キャピラリ11cの内径は10〜1000μm程度である。シリンダ11a内には、ナノファイバーの原料となる水不溶性ポリマー及び揮発性物質を含有する溶液が充填されている。高電圧源12は、例えば10〜30kVの直流電圧源である。高電圧源12の正極はシリンジ11における水溶性ポリマー溶液と導通している。高電圧源12の負極は接地されている。導電性コレクタ13は、例えば金属製の板であり、接地されている。シリンジ11におけるキャピラリ11cの先端と導電性コレクタ13との間の距離は、例えば30〜300mm程度に設定されている。
図1に示す装置10は、大気中で運転することができる。運転環境に特に制限はなく、温度20〜40℃、湿度10〜50%RHとすることができる。
【0032】
シリンジ11と導電性コレクタ13との間に電圧を印加した状態下に、シリンジ11のピストン11bを徐々に押し込み、キャピラリ11cの先端から水不溶性ポリマーの溶液を押し出す。押し出された溶液においては、溶媒が揮発し、溶質である水不溶性ポリマーが固化しつつ、電位差によって伸長変形しながらナノファイバーを形成し、導電性コレクタ13に引き寄せられる。このとき、導電性コレクタ13の表面に基材層(図示せず)となるべきシートを配置しておくことで、該基材層の表面にナノファイバーを堆積させることができる。このようにして形成されたナノファイバーは、その製造の原理上は、無限長の連続繊維となる。
【0033】
次に水不溶性ポリマーと揮発性物質を含有する溶液(噴霧用組成物)について説明する。
【0034】
前記噴霧用組成物に用いられる揮発性物質は、液体の状態において揮発性を有する物質である。噴霧用組成物において揮発性物質は、電界内に置かれた該噴霧用組成物を十分に帯電させた後、ノズル先端から導電性コレクタに向かって吐出され、揮発性物質が蒸発していくと、噴霧用組成物の電荷密度が過剰となり、クーロン反発によって更に微細化しながら揮発性物質が更に蒸発していき、最終的に乾いた被膜を形成させる目的で配合される。この目的のために、揮発性物質はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい。揮発性物質としては、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アルコール、ケトン等が用いられる。
【0035】
揮発性物質のうち、アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはC
1−C
6アルコール、一価の環式アルコールとしてはC
4−C
6環式アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n−プロパノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
揮発性物質のうち、ケトンとしてはジC
1−C
4アルキルケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのケトンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
揮発性物質は、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくはエタノールである。
【0038】
噴霧用組成物における揮発性物質の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、65質量%以上であることが一層好ましい。また95質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましく、93質量%以下であることが更に好ましく、92質量%以下であることが一層好ましい。噴霧用組成物における揮発性物質の含有量は、50質量%以上95質量%以下が好ましく、55質量%以上94質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上93質量%以下であることが更に好ましく、65質量%以上92質量%以下であることが一層好ましい。
【0039】
水不溶性ポリマーとしては、揮発性物質の性質に応じて適切なものが用いられる。具体的には、水不溶性ポリマーは、揮発性物質に可溶で、水に対して不溶なポリマーである。本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g超が溶解しない性質を有するものをいう。
【0040】
水不溶性ポリマーとしては、例えば被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水不溶性ポリマーのうち、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエインから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。このうち、強度、使用感、密着性等の観点から、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸、及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0041】
噴霧用組成物中の水不溶性ポリマーの含有量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることが一層好ましい。また30質量%以下であることが好ましく、28質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましく、23質量%以下であることが一層好ましい。噴霧用組成物中の水不溶性ポリマーの含有量は、1質量%以上30質量%以下が好ましく、2質量%以上28質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上25質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以上23質量%以下が一層好ましい。この割合で噴霧用組成物中に水不溶性ポリマーを含有させることで、繊維状の被膜を安定して効率的に形成することができる。
【0042】
噴霧用組成物中には、前記の2成分以外に他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば水不溶性ポリマーの可塑剤、前記2成分以外の香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン等が挙げられる。
【0043】
電界紡糸法によって得られるナノファイバーシートの繊維の太さは、円相当直径で表した場合、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることが、100nm以上であることがより更に好ましい。また3000nm以下であることが好ましく、1500nm以下であることが更に1200nm以下であることが好ましい。繊維の太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(繊維の塊、繊維の交差部分、液滴)を除き、繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き、繊維径を直接読み取ることで測定することができる。
【0044】
ナノファイバーシートの繊維は、製造の原理上は無限長の連続繊維となるが、少なくとも繊維の太さの100倍以上の長さを有することが好ましい。本明細書においては、繊維の太さの100倍以上の長さを有する繊維のことを「連続繊維」と定義する。そして、電界紡糸法によって製造されるナノファイバーシートは、連続繊維の堆積物からなる多孔性の不連続シートであることが好ましい。このような形態のシートは、集合体として1枚のシートとして扱えるだけでなく、非常に柔らかい特徴を持っており、それに剪断力が加わってもばらばらになりにくく、身体の動きへの追従性に優れるという利点がある。また、シートの完全除去が容易であるという利点もある。これに対して、細孔を有さない連続シートは剥離が容易でなく、また汗の放散性が低いので、皮膚に蒸れが生じる虞がある。また、粒子の集合体からなる多孔性の不連続シートは、シートを完全に除去するために、シート全体に摩擦をかける等の動作が必要となるなど、皮膚へのダメージなく完全除去することは困難である。
【0045】
また、ナノファイバーシートの厚みは、貼付性の観点、目立たない外観を得る観点から、好ましくは100nm〜500μm、より好ましくは500nm〜300μm、さらに好ましくは1μm〜100μm、よりさらに好ましくは10μm〜50μmに設定するのが、貼付性の点で好ましい。
【0046】
ナノファイバーシートの転写前の色は白色である。そのL値は、好ましくは80以上であり、より好ましくは90以上である。また、透明化の観点から、a値、b値は好ましくは―20〜30であり、より好ましくは−10〜20であり、さらに好ましくは0〜10である。なおL値はCIE 1976(L*,a*,b*)色空間(CIELAB)に定められた値であり、100が白色、0が黒色である。
【0047】
ナノファイバーシートは、剥離可能な基材上に電界紡糸して作製するか、又は電界紡糸法で他の基材上に形成した後、剥離可能な基材上に積層しておくのが好ましい。ここで基材としては、ポリオレフィン系の樹脂やポリエステル系の樹脂を始めとする合成樹脂製のフィルムを用いることができる。
【0048】
ナノファイバーシートは、剥離可能な基材から剥離して工程(1)でシート透明化剤を施した皮膚上に転写すればよい。好ましくは、剥離可能な基材に積層したナノファイバーシートの表面を、皮膚に当接させた後、ナノファイバーシートから基材を剥離して、ナノファイバー層を皮膚に転写する。
皮膚上に転写されたナノファイバーシートには、予め皮膚に施されたシート透明化剤が毛細管現象により均一に分布することにより、被膜と皮膚との密着性が顕著に高くなるとともに、被膜が透明化する。また、被膜は、柔軟になり、皮膚に追従しやすくなるため、密着性がさらに向上する。
【0049】
ここで皮膚上にはナノファイバーシート中に油剤が均一に分布した被膜が形成されるが、当該被膜において、油剤が占める体積をV
1、ナノファイバーシートの空隙部体積をV
2としたとき、V
1/V
2が0.1以上であるのが、被膜の皮膚との密着性、透明性の点から好ましく、V
1/V
2は0.15以上であるのがより好ましく、0.3以上であるのがさらに好ましく、0.4以上であるのが一層好ましく、0.5以上であるのがより一層好ましく、0.7以上であるのがさらに一層好ましく、また、好ましくは12以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは8以下であり、使用感の観点からよりさらに好ましくは5以下である。また、V
1/V
2が0.1以上12以下であるのが好ましく、0.15以上12以下であるのがより好ましく、0.3以上10以下であるのがさらに好ましく、0.4以上8以下であるのが一層好ましく、0.5以上5以下であるのがより一層好ましく、0.7以上5以下であるのがよりさらに一層好ましい。
なお、V
1およびV
2はそれぞれ下式で定義される。
V
1=(透明化剤およびナノファイバーシート適用面積[cm
2]×透明化剤適用量[mg/cm
2]×油剤含有量[質量%])/透明化剤密度[g/cm
3]
V
2=透明化剤およびナノファイバーシート適用面積[cm
2]×シート膜厚[μm]×シート空隙率[%]
ここで、油剤含有量は使用したシート化透明剤に含まれる油剤の含有量であり、透明化剤密度は透明化剤を容積一定の容器に入れて重量を量ることで求めている。
また、本発明において、シート膜厚は、接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチック VL−50Aで求めており、空隙率は水銀圧入法(島津製作所製AutoPoreIV)で求めている。
【0050】
シートの空隙率は、シートの透明化の観点、密着性を向上する観点から、好ましくは60%〜90%であり、より好ましくは70%〜90%であり、より好ましくは75%〜85%である。
【0051】
本発明の透明又は半透明被膜形成用貼付材は、透明又は半透明の被膜を皮膚表面に形成するための、
繊維で構成されたシートとシート透明化剤とを組み合わせ用いる貼付材であって、
前記シートは、水不溶性ポリマーを主成分とし、シートを構成する繊維の太さは、円相当直径で10nm以上1500nm以下であり、シートの厚みが100nm〜500μmであり、L値が80以上100以下であって、
前記シート透明化剤は、炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上を含む油剤を5質量%以上100質量%以下含有し、かつ、前記油剤における炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールの含有量の合計量Pが50質量%以上である。
ここで、シートは、ナノファイバーシートであるのが好ましい。
【0052】
本発明の貼付材におけるシートは、前記の理由により、厚みが500nm〜300μmであるのが好ましい。また、シートのa値及びb値が―20〜30であるのが好ましい。シートは、空隙率が60%〜90%であるのが好ましい。シートを構成する繊維は、連続繊維であるのが好ましい。
貼付材中のシート透明化剤は、シリコーン油及びエーテル油の合計の含有量が15質量%以下であるのが好ましく、前記合計量Pに対するシリコーン油及びエーテル油の合計の含有量が30質量%以下であるのが好ましい。
【0053】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の方法を開示する。
【0054】
<1>(1)1種または2種以上の油剤を2質量%以上含有するシート透明化剤を皮膚に施す工程(1)、及び
(2)水不溶性ポリマーを主成分とする白色のナノファイバーシートを工程(1)適用後の皮膚に転写する工程(2)
を有するナノファイバーシートを用いて皮膚表面に被膜を形成する方法。
<2>前記被膜が、油剤が占める体積をV
1、前記ナノファイバーシートの空隙部体積をV
2としたとき、V
1/V
2=0.1以上であるのが好ましく、0.15以上であるのがより好ましく、0.3以上であるのがさらに好ましく、0.4以上であるのがよりさらに好ましく、0.5以上であるのがよりいっそう好ましく、0.7以上であるのがさらにいっそう好ましく、好ましくはV
1/V
2=12以下、より好ましくはV
1/V
2=10以下、さらに好ましくはV
1/V
2=8以下、よりさらに好ましくはV
1/V
2=5以下であり、また、V
1/V
2が0.1以上12以下であるのが好ましく、0.15以上12以下であるのがより好ましく、0.3以上10以下であるのがさらに好ましく、0.4以上8以下であるのが一層好ましく、0.5以上5以下であるのがより好ましく、0.7以上5以下である<1>記載の被膜の形成方法。
なお、V
1およびV
2はそれぞれ下式で定義される。
V
1=(透明化剤およびナノファイバーシート適用面積[cm
2]×透明化剤適用量[mg/cm
2]×油剤含有量[質量%])/透明化剤密度[g/cm
3]
V
2=透明化剤およびナノファイバーシート適用面積[cm
2]×シート膜厚[μm]×シート空隙率[%]
ここで、油剤含有量は使用したシート化透明剤に含まれる油剤の含有量であり、透明化剤密度は透明化剤を容積一定の容器に入れて重量を量ることで求めている。
また、本発明において、シート膜厚は、接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチック VL−50Aで求めており、空隙率は水銀圧入法(島津製作所製AutoPoreIV)で求めている。
<3>前記透明化剤が、さらに水溶性ポリマーを2質量%以下含有する<1>または<2>記載の被膜の形成方法。
<4>前記被膜が、皮膚を視認可能な透明被膜である<1>〜<3>のいずれかに記載の被膜の形成方法。
<5>シート透明化剤中の油剤の含有量が、2質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは8質量%以上であり、また100質量%以下が好ましい<1>〜<4>のいずれかに記載の方法。
<6>シート透明化剤が、水を含有する場合の油剤の含有量は、好ましくは3質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上75質量%以下であり、更に好ましくは8質量%以上65質量%以下である<1>〜<5>のいずれかに記載の方法。
<7>油剤が、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、エーテル油、及びシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくは炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上である<1>〜<6>のいずれかに記載の方法。
<8>油剤が、炭化水素油及びエステル油から選ばれる1種又は2種以上である<1>〜<7>のいずれかに記載の方法。
<9>シート透明化剤中のシリコーン油及びエーテル油の含有量は、好ましくは15質量%以下である<1>〜<8>のいずれかに記載の方法。
<10>シート透明化剤中のシリコーン油及びエーテル油の含有量は、好ましくは10質量%以下である<1>〜<8>のいずれかに記載の方法。
<11>シート透明化剤中の油剤が、炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上を含有し、炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールの含有量の合計量Pが油剤の含有量に対して50質量%以上100質量%以下である<1>〜<10>のいずれかに記載の方法。
<12>シート透明化剤中の油剤が炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上を含有し、炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールの含有量の合計量Pに対するシリコーン油及びエーテル油の含有量の合計量Sは、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である<1>〜<10>のいずれかに記載の方法。
<13>シート透明化剤が、非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び20℃で液体のポリオールから選ばれる1種又は2種以上を含む<1>〜<12>のいずれかに記載の方法。
<14>ナノファイバーシートが、水不溶性ポリマー及び揮発性物質を含有する水溶液を電界紡糸して形成されたものである<1>〜<13>のいずれかに記載の方法。
<15>ナノファイバーシートの繊維の太さが、10nm以上3000nm以下、好ましくは50nm以上1500nm以下、より好ましくは100nm以上1200nm以下である<1>〜<14>のいずれかに記載の方法。
<16>ナノファイバーシートの厚みが、100nm〜500μm、より好ましくは500nm〜300μmである<1>〜<15>のいずれかに記載の方法。
<17>シート透明化剤を皮膚に施す量は、シート透明化剤の坪量が好ましくは0.1mg/cm
2以上であり、より好ましくは0.2mg/cm
2以上であり、さらに好ましくは0.4mg/cm
2となるような量とし、好ましくは15mg/cm
2以下であり、より好ましくは10mg/cm
2以下であり、好ましくは7mg/cm
2以下であり、よりさらに好ましくは5mg/cm
2以下であり、また、好ましくは0.1mg/cm
2以上15mg/cm
2以下、より好ましくは0.2mg/cm
2以上10mg/cm
2以下、さらに好ましくは0.4mg/cm
2以上7mg/cm
2以下、よりさらに好ましくは0.4mg/cm
2以上5g/cm
2以下である<1>〜<16>のいずれかに記載の方法。
<18>シート透明化剤を皮膚に、又は被膜に施す場合の油剤の量は、好ましくは0.2mg/cm
2以上であり、より好ましくは0.3mg/cm
2以上であり、更に好ましくは0.4mg/cm
2以上であり、好ましくは10mg/cm
2以下であり、より好ましくは7mg/cm
2以下であり、よりさらに好ましくは5mg/cm
2以下であり、さらに一層好ましくは4mg/cm
2以下であり、また、好ましくは0.2mg/cm
2以上10mg/cm
2以下、より好ましくは0.3mg/cm
2以上7mg/cm
2以下、さらに好ましくは0.4mg/cm
2以上5mg/cm
2以下、よりさらに好ましくは0.4cm/cm
2以上4mg/cm
2以下である<1>〜<17>のいずれかに記載の方法。
<19>前記被膜が、油剤が占める体積をV
1、前記ナノファイバーシートの空隙部体積をV
2としたとき、V
1/V
2が0.1以上5以下である<1>〜<18>のいずれかに記載の方法。
<20>透明又は半透明の被膜を皮膚表面に形成するための、
繊維で構成されたシートとシート透明化剤とを組み合わせ用いる貼付材であって、
前記シートは、水不溶性ポリマーを主成分とし、シートを構成する繊維の太さは、円相当直径で10nm以上1500nm以下であり、シートの厚みが100nm〜500μmであり、L値が80以上100以下であって、
前記シート透明化剤は、炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上を含む油剤を5質量%以上100質量%以下含有し、かつ、前記油剤における炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールの含有量の合計量Pが50質量%以上である、透明又は半透明被膜形成用貼付材。
<21>前記シートは、厚みが500nm〜300μmである<20>記載の透明又は半透明被膜形成用貼付材。
<22>前記シートは、a値及びb値が―20〜30である<20>又は<21>記載の透明又は半透明被膜形成用貼付材。
<23>前記シート透明化剤は、シリコーン油及びエーテル油の合計の含有量が15質量%以下である<20>〜<22>のいずれかに記載の透明又は半透明被膜形成用貼付材。
<24>前記シート透明化剤は、前記合計量Pに対するシリコーン油及びエーテル油の合計の含有量が30質量%以下である<20>〜<23>のいずれかに記載の透明又は半透明被膜形成用貼付材。
<25>前記シートは、空隙率が60%〜90%である<20>〜<24>のいずれかに記載の透明又は半透明被膜形成用貼付材。
<26>前記シートを構成する繊維が、連続繊維である<20>〜<25>のいずれかに記載の透明又は半透明被膜形成用貼付材。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0056】
[試験例1]
(1)シート透明化剤の調製
表1記載の透明化剤1〜6を調製した。
【0057】
ポリビニルブチラール(積水化学工業:エスレックB)をエタノールに溶解して、15質量%の溶液を得た。この溶液を用い、
図1に示すエレクトロスピニング法の装置によって、基材層となるべきフィルムの表面にナノファイバー層を形成した。ナノファイバーの製造条件は次のとおりである。
・印加電圧:30kV
・キャピラリ−コレクタ間距離:150mm
・水溶液吐出量:3mL/h
・環境:25℃、30%RH
【0058】
基材層となるべきフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:25μm、テーバーこわさ:0.08mNm)の一面に、シリコーン剥離処理を施したものであった。ナノファイバー層は、剥離処理面に形成した。形成されたナノファイバー層の厚みは実施例1から6及び比較例1及び2が16μm、実施例7から14が4.5μmであった。ナノファイバーの太さは900nmであった。また、表4に示すポリプロピレン樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ウレタン樹脂について実施例1と同程度の厚み、繊維太さと空隙率のナノファイバーシートを用意した。
【0059】
(3)評価
皮膚モデルとして、黒色の人工皮革(プロテインレザー)(サブラーレPBZ13001BK、出光テクノファイン(株)製)を用い、ナノファイバーシート(20mm×40mm)を貼付する領域に各シート透明化剤を表2に示す量を塗布した。塗布後にナノファイバーシートを貼付し、シリコーン手袋をした手指で軽く押さえて、室温(25℃)、湿度40%RHにて保存して、時間経過後の状態を目視により以下の基準で評価した。
【0060】
【表1】
【0061】
(透明性の評価)
専門パネラーが目視で確認し、透明性について以下の基準により評価した(
図2参照)。
4:透明でありナノファイバーシートとの境界が不明瞭(シート貼付範囲が認識困難)。
3:概ね透明であり、見る角度によっては境界が一部見える。
2:白浮は軽微だがシート貼付範囲全体が認識可能。
1:全体的に白浮する。
【0062】
(密着性の評価)
被膜を形成した皮膚モデルの屈曲試験により密着性を評価した。被膜を皮膚モデル(サブラーレPBZ13001BK、出光テクノファイン(株)製)の上に形成し、試験片を被膜を外側にした状態で、試験片を折りたたむように角度をつけて屈曲試験を行っている。屈曲試験は折り目の角度が10度から180度の範囲で、試験片を屈曲させる動作を20回繰り返し行った。その後、被膜と皮膚モデルの付着状態を専門パネラーが目視で確認し、以下の基準で密着性を評価した。
4:皮膚モデルと膜の間に浮き、膜剥がれが全くない。
3:屈曲部から周囲10mm以内でのみ膜の浮きが発生するが、膜剥がれはない。
2:屈曲部から周囲10mm超に渡り膜の浮きが発生するが、膜剥がれはない。
1:膜が完全に剥離する。
【0063】
評価結果を表2、表3及び表4に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】