(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、各図におけるx軸方向、y軸方向、及びz軸方向のそれぞれは、マニホールドの高さ方向、短手方向(幅方向)、及び長手方向に対応する。また、各図におけるx軸方向、y軸方向、及びz軸方向のそれぞれは、各燃料電池セル及び支持基板の長手方向、短手方向(幅方向)、及び厚さ方向に対応する。また、本明細書の「上」及び「下」は、マニホールド及びセルスタック装置を水平面に載置したときのマニホールドの高さ方向(x軸方向)を基準とする。
【0032】
図1〜
図10を参照して、本発明の一実施の形態であるセルスタック装置及びマニホールドについて説明する。セルスタック装置及びマニホールドは、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に用いられる。
【0033】
[セルスタック装置]
図1〜
図4に示すように、セルスタック装置1は、マニホールド100と、複数の燃料電池セル200と、第1接合材3とを備えている。各燃料電池セル200は、マニホールド100によって支持されている。第1接合材3は、マニホールド100と、各燃料電池セル200とを接合する。
【0034】
[マニホールド]
図1〜
図4に示すように、マニホールド100は、燃料電池セル200に反応ガスを供給する。マニホールド100は、中空状であり、内部空間を有している。
図1に示すように、マニホールド100の内部空間には、導入配管Pを介して燃料ガスなどの反応ガスが供給される。
図2に示すように、マニホールド100は、この内部空間と外部とを連通する複数の挿入孔121を有している。
【0035】
図1〜
図4に示すように、マニホールド100は、本体部101と、底壁110と、封止材102と、を有している。本体部101は、燃料電池セル200が接合されるとともに、下方に開口を有している。底壁110は、開口した本体部101の下面101aを塞いでいる。本体部101の下面101aと底壁110との間には、空間Sが設けられている。封止材102は、空間Sを維持して、本体部101と底壁110とを接合している。
【0036】
本体部101は、上壁120と、側壁130と、フランジ部140とを有している。上壁120、側壁130及びフランジ部140は、一体成形されている。一体成形された上壁120、側壁130及びフランジ部140と、底壁110とは、互いに別部材である。本体部101及び底壁110は、例えばステンレス鋼などの金属で構成されている。
【0037】
図1〜
図3に示すように、上壁120には、燃料電池セル200が接合される。このため、
図4に示すように、上壁120は、複数の挿入孔121を有している。各挿入孔121には、各燃料電池セル200の下端部201が挿入される。各挿入孔121は、マニホールド100の幅方向に延びている。また、各挿入孔121は、マニホールド100の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。
【0038】
側壁130は、上壁120から下方に延びる。側壁130は、
図1に示すように、一対の第1側壁131と、一対の第2側壁132とを有している。
【0039】
一対の第1側壁131は、上壁120の対向する一対の縁部のそれぞれから下方に延びている。詳細には、各第1側壁131は、上壁120の縁部のうち、長手方向に延びる一対の縁部から下方に延びている。第1側壁131は、マニホールド100の長手方向に延びている。すなわち、複数の燃料電池セル200の並ぶ方向に延びている。一対の第1側壁131は、マニホールド100の幅方向において、互いに対向している。
【0040】
一対の第2側壁132は、上壁120の残りの対向する縁部から下方に延びている。詳細には、各第2側壁132は、上壁120の縁部のうち、幅方向に延びる一対の縁部から下方に延びている。また、各第2側壁132は、マニホールド100の幅方向に延びている。すなわち、各第2側壁132は、燃料電池セル200の幅方向に延びている。各第2側壁132は、マニホールド100の長手方向において、互いに対向している。一対の第2側壁132のうち、一方の第2側壁132に導入配管Pが接続されている。このため、一方の第2側壁132は、導入配管Pが接続されるための貫通孔を有している。
【0041】
フランジ部140は、側壁130の下端部から外方に延びている。具体的には、フランジ部140は、各第1側壁131及び各第2側壁132の下端から外方に延びている。フランジ部140は、環状である。
【0042】
第1側壁131と、第2側壁132との第1境界部104の内側面及び外側面は、R形状である。この第1境界部104の内側面及び外側面の曲率半径は、例えば3〜30mmである。
【0043】
図3に示すように、上壁120と、第1側壁131及び第2側壁132との第2境界部105の内側面及び外側面は、R形状である。この第2境界部105の内側面及び外側面の曲率半径は、例えば2〜20mmである。
【0044】
第1側壁131及び第2側壁132と、フランジ部140との第3境界部106の内側面及び外側面は、R形状である。この第3境界部106の内側面及び外側面の曲率半径は、例えば1〜10mmである。
【0045】
なお、本明細書における「R形状」とは、円弧状に湾曲している形状である。また、第1〜第3境界部104〜106の内側面とは、マニホールド100の内部空間を臨む面である。第1〜第3境界部104〜106の外側面とは、マニホールド100の外側を臨む面である。
【0046】
本体部101の下面101aは、開口をなす面である。下面101aの内郭は、開口の外郭となる。下面101aは、本体部101の外周部下方に位置する。本実施の形態の下面101aは、側壁130の下面及びフランジ部140の下面である。
【0047】
本体部101の下面101aは、上方に湾曲している。換言すると、下面101aは、上壁120に向けて反っている。さらに換言すると、下面101aの中央部と上壁120との距離は、下面101aの端部と上壁120との距離よりも小さい。本実施の形態では、本体部101の下面101aは、上向きの円弧状である。なお、フランジ部140の上面も下面と同様に上方に湾曲している。
【0048】
底壁110は、本体部101の下面101aを塞ぐ。つまり、底壁110は、本体部101の開口を塞いで、本体部101の下面101aを閉じる。本実施の形態では、底壁110の外周部は、フランジ部140下に配置されている。底壁110は、封止材102によって、フランジ部140に接合される。底壁110は、溶接によってフランジ部140に接合されていることが好ましい。
【0049】
底壁110は、平面視(x軸方向視)において矩形状であり、長手方向(z軸方向)と幅方向(y軸方向)とを有している。底壁110は、平板であり、上面111と下面112とを有している。上面111と下面112とは、高さ方向において、互いに対向している。底壁110の上面111及び下面112は、平坦な面、すなわち水平方向に延びる面である。
【0050】
図3、
図5及び
図6に示すように、本体部101の下面101aと底壁110との間には、空間Sが設けられている。つまり、下面101aの一部と底壁110とは当接しているが、下面101aの残部と底壁110とは接触していない。本実施の形態では、空間Sは、フランジ部140の下面と、底壁110の上面111との間に設けられている。つまり、底壁110の上面111とフランジ部140の下面とは、空間Sを介して対向している。空間Sは、本体部101及び底壁110の少なくとも一方が変形したときの変形を受け入れる変形吸収空間である。
【0051】
空間Sは、中央部に設けられている。本体部101の下面101aは外周部に位置しているので、空間Sは、外周部中央に設けられている。具体的には、空間Sは、長手方向(z軸方向)、すなわち燃料電池セル200の並ぶ方向の中央部に設けられている。また、空間Sは、短手方向(y軸方向)、すなわち燃料電池セル200の幅方向の中央部にも設けられている。このため、本実施の形態の本体部101は、底壁110のコーナー部113と当接している。具体的には、
図5に示すように、本体部101は、4箇所のコーナー部113のみで当接しているので、4点支持構造を有している。
【0052】
また、底壁110の上面111は平坦面であり、本体部101の下面101aは上方に湾曲している。このため、空間Sは、端部から中央部に向けて大きくなる。本実施の形態では、一方のコーナー部113から中央部にかけて空間Sは大きくなり、中央部から他方のコーナー部113に向けて空間Sが小さくなる。具体的には、
図6に示すマニホールドの長手方向において、中央部の空間Sの高さD1は、端部近傍の空間Sの高さD2よりも大きい。空間Sにおける最大の高さ、すなわち長手方向の中央部の空間の高さD1は、例えば0.1〜5.0mmである。
【0053】
また、下面101aの面積全体に対する、底壁110と接触する面積の比(接触面積/下面の面積)は、例えば0.1〜50%である。本実施の形態では、下面101aの外周部(
図6では外端)のみが底壁110の上面111と接している。
【0054】
図3に示すように、封止材102は、本体部101の下面101aと底壁110とを封止する。つまり、封止材102は、空間Sを封止する。具体的には、
図4に示すように、封止材102は、底壁110及び本体部101の下端の外周部全体に設けられている。本実施の形態の封止材102は、フランジ部140の外周部と底壁110の外周部とを、全周に渡って取り囲む。また、
図7に示すように、封止材102は、高さ方向において、底壁110の側面からフランジ部140の側面に渡って設けられている。
【0055】
封止材102は、特に限定されないが、例えば、溶接材またはガラス接合材である。溶接材は、本体部101及び底壁110と同じ材料である。ガラス接合材は、結晶化ガラスが好適である。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、またはSiO
2−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、封止材102の材料として、非晶質ガラス、ろう材、またはセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、封止材102は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0056】
封止材102は、マニホールドの内部空間と外部空間とを区画する。このため、マニホールドの内部空間に導入される反応ガスと、マニホールドの外部空間の空気とが混合されることを防止する。
【0057】
なお、空間Sには、可撓性を有する材料で形成された部材が配置されていてもよい。この部材は、本体部101及び底壁110を構成する材料よりも熱伝導率の低いことが好ましい。この場合には、断熱効果をさらに有する。このような部材を構成する材料として、例えばアルミナ−シリカ系の断熱材などが挙げられる。
【0058】
[燃料電池セル]
図1〜
図3に示すように、各燃料電池セル200は、マニホールド100から上方に延びている。詳細には、各燃料電池セル200は、マニホールド100の上壁120から上方に延びている。燃料電池セル200の下端部201は、マニホールド100の挿入孔121内に挿入されている。なお、燃料電池セル200の下端部201が挿入孔121内に挿入された状態において、燃料電池セル200の下端部201の外周面と挿入孔121の内壁面との間には隙間が形成されている。この隙間に第1接合材3が充填されている。
【0059】
各燃料電池セル200は、マニホールド100の長手方向に沿って、互いに間隔をあけて配置されている。
図2に示すように、各燃料電池セル200は、第1集電部材4を介して互いに電気的に接続されている。第1集電部材4は、各燃料電池セル200の間に配置されており、隣り合う各燃料電池セル200を接続している。なお、第1集電部材4は、第2接合材5によって各燃料電池セル200に接合されている。第1集電部材4は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、第1集電部材4は、酸化物セラミックスの焼成体または金属などによって形成されている。
【0060】
図8に示すように、燃料電池セル200は、支持基板210と、複数の発電素子部220とを備えている。各発電素子部220は、支持基板210の両面に支持されている。なお、各発電素子部220は、支持基板210の片面のみに支持されていてもよい。各発電素子部220は、燃料電池セル200の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施の形態に係る燃料電池セル200は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。
【0061】
各発電素子部220は、電気的接続部260(
図9参照)によって互いに電気的に接続されている。また、燃料電池セル200の上端部202側において、支持基板210の一方面に形成された発電素子部220と他方面に形成された発電素子部220とが第2集電部材6(
図2参照)によって電気的に接続されている。なお、各発電素子部220は、直列に接続されている。
【0062】
支持基板210は、燃料電池セル200の長手方向に延びる複数のガス流路211を内部に有している。ガス流路211は、マニホールド100の挿入孔121を介して、マニホールド100の内部空間と連通している。
【0063】
支持基板210の長手方向は、燃料電池セル200の長手方向と同じ方向である。各ガス流路211は、互いに実質的に平行に延びている。各ガス流路211は、燃料電池セル200の長手方向の両端部において開口している。
【0064】
図9に示すように、支持基板210は、複数の第1凹部212を有している。各第1凹部212は、支持基板210の両面に形成されている。各第1凹部212は、支持基板210の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0065】
支持基板210は、絶縁性であり、例えば、セラミックスで形成される。具体的には、支持基板210は、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiOとY
2O
3(酸化イットリウム)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板210は、多孔質である。支持基板210の気孔率は、例えば、20〜60%である。
【0066】
各発電素子部220は、燃料極230、電解質240、及び空気極250を有している。また、各発電素子部220は、反応防止膜221をさらに有している。
【0067】
燃料極230は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極230は、燃料極集電部231と、燃料極活性部232とを有する。燃料極集電部231は、第1凹部212内に配置されている。各燃料極集電部231は、第2凹部231a及び第3凹部231bを有している。燃料極活性部232は、第2凹部231a内に配置されている。
【0068】
燃料極集電部231は、例えば、NiOとYSZとから構成されてもよいし、NiOとY
2O
3とから構成されてもよいし、NiOとCSZとから構成されてもよい。燃料極集電部231の厚さ、すなわち第1凹部212の深さは、例えば、50〜500μmである。
【0069】
燃料極活性部232は、例えば、NiOとYSZとから構成されてもよいし、NiOとGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部232の厚さは、例えば、5〜30μmである。
【0070】
電解質240は、燃料極230上を覆うように配置されている。詳細には、電解質240は、あるインターコネクタ261から他のインターコネクタ261まで燃料電池セル200の長手方向に延びている。すなわち、燃料電池セル200の長手方向において、電解質240とインターコネクタ261とが交互に配置されている。
【0071】
電解質240は、イオン伝導性を有し、かつ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質240は、例えば、YSZから構成されてもよいし、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質240の厚さは、例えば、3〜50μmである。
【0072】
反応防止膜221は、緻密な材料から構成される焼成体であり、平面視において、燃料極活性部232と略同一の形状であり、燃料極活性部232と略同じ位置に配置されている。反応防止膜221は、電解質240内のYSZと空気極250内のSrとが反応して電解質240と空気極250との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜221は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2から構成される。反応防止膜221の厚さは、例えば、3〜50μmである。
【0073】
空気極250は、反応防止膜221上に配置されている。空気極250は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極250は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極250は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極250の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0074】
電気的接続部260は、隣り合う発電素子部220を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部260は、インターコネクタ261及び空気極集電膜262を有する。インターコネクタ261は、第3凹部231b内に配置されている。インターコネクタ261は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ261は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成されてもよいし、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ261の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0075】
空気極集電膜262は、隣り合う発電素子部220のインターコネクタ261と空気極250との間を延びるように配置される。空気極集電膜262は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電膜262は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3から構成されてもよいし、LSC=(La,Sr)CoO
3から構成されてもよいし、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜262の厚さは、例えば、50〜500μmである。
【0076】
図10に示すように、燃料電池セル200の下端部201は、緻密膜222によって覆われている。詳細には、緻密膜222は、支持基板210を覆っている。緻密膜222は、下端部側に形成された発電素子部220と電気的に接続されている。詳細には、緻密膜222は、電気的接続部260と電気的に接続されている。緻密膜222は、空気極集電膜262と支持基板210との間から近位側に向かって延びている。
【0077】
緻密膜222は、緻密膜222の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密膜222の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。このガスシール機能を発揮するため、この緻密膜222の気孔率は、例えば、10%以下である。また、緻密膜222は、絶縁性セラミックスで構成されている。
【0078】
具体的には、緻密膜222は、上述した電解質240と反応防止膜221とによって構成することができる。緻密膜222を構成する電解質240は、支持基板210を覆っており、インターコネクタ261から支持基板210の下端近傍まで延びている。また、緻密膜222を構成する反応防止膜221は、電解質240と空気極集電膜262との間に配置されている。なお、緻密膜222は、電解質240のみで構成されていてもよいし、電解質240及び反応防止膜221以外の材料によって構成されていてもよい。
【0079】
[第1接合材]
第1接合材3は、燃料電池セル200をマニホールド100に固定する。詳細には、第1接合材3は、燃料電池セル200の下端部201とマニホールド100の上壁120とを接合している。また、第1接合材3は、緻密膜222と接触している。なお、燃料電池セル200がマニホールド100に固定された状態において、挿入孔121とガス流路211とが連通している。
【0080】
第1接合材3は、例えば、結晶化ガラスである。なお、第1接合材3の材料として、非晶質ガラス、ろう材、またはセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第1接合材3は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0081】
[製造方法]
続いて、本実施の形態のセルスタック装置1及びマニホールド100の製造方法について
図1〜
図12を参照して説明する。
【0082】
まず、燃料電池セル200が接合され、下方に開口を有する本体部101を準備する。この工程では、例えば、本体部101となる板状部材に対して、深絞り加工を行って、上壁120と側壁130とフランジ部140とを含む本体部101を形成する。この工程では、本体部101の下面101aが上壁120に向けて湾曲するように本体部101を形成する。
【0083】
また、底壁110を準備する。底壁110は、例えばプレス成形によって、板状に形成する。そして、底壁110とフランジ部140とを対向するように配置すると、本体部101の下面101aと底壁110との間には、空間Sが形成される。空間Sを維持した状態で、本体部101の下面101aと底壁110とを封止材102で封止する。封止する方法は、特に限定されないが、溶接してもよく、結晶化ガラスによって接合してもよい。
【0084】
以上の工程を実施することにより、本実施の形態のマニホールド100を製造できる。また、複数の燃料電池セル200を準備する。
【0085】
そして、
図11に示すように、第1集電部材4及び第2接合材5によって、各燃料電池セル200を互いに接続し、セル集合体300を作製する。なお、この段階では第2接合材5は焼成されておらず、各燃料電池セル200は互いに仮止めの状態である。
【0086】
次に、
図12に示すように、セル集合体300の各燃料電池セル200の下端部201をマニホールド100の各挿入孔121に挿入する。なお、各燃料電池セル200が厚さ方向に沿って所定の間隔を保持するための治具を用いてもよい。
【0087】
次に、
図2及び
図3に示すように、挿入孔121に挿入された燃料電池セル200とマニホールドの上壁120とを接合するように第1接合材3を塗布する。なお、第1接合材3は、燃料電池セル200の付け根に沿って塗布されている。また、第1接合材3は、燃料電池セル200の下端部201の外周面と挿入孔121の内壁面との隙間に充填されていてもよい。
【0088】
次に、第1接合材3及び第2接合材5を熱処理する。この熱処理によって、第1接合材3及び第2接合材5が固化され、セルスタック装置1が完成する。詳細には、第2接合材5が焼成されることによって、各燃料電池セル200と第1集電部材4とが固定される。また、第1接合材3が焼成されることによって、非晶質材料の温度が結晶化温度まで到達する。そして、結晶化温度下にて材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される第1接合材3が機能を発揮し、各燃料電池セル200の下端部201がマニホールド100の上壁120に固定される。
【0089】
以上の工程を実施することにより、本実施の形態のセルスタック装置1を製造できる。なお、封止材102がガラス材料である場合、底壁110と本体部101とを封止材102で仮止めの状態とし、封止材102の熱処理と、第1接合材3及び第2接合材5の熱処理とを同時に行ってもよい。
【0090】
[動作]
本実施の形態のセルスタック装置1の動作について、
図1〜
図10を参照して説明する。セルスタック装置1は、例えば以下のように動作する。
【0091】
マニホールド100を介して各燃料電池セル200のガス流路211内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板210の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝すことにより、電解質240の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。このセルスタック装置1を外部の負荷に接続すると、空気極250において下記の式1に示す電気化学反応が起こり、燃料極230において下記の式2に示す電気化学反応が起こる。
(1/2)O
2+2e
−→O
2− ・・・(式1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− ・・・(式2)
さらに、支持基板210のガス流路211を流れる燃料ガスのうち発電に使用されなかった余剰燃料ガスは、ガス流路211の他端側に位置する排出口から外部に排出される。そして、排出口から排出される余剰燃料ガスと、酸素を含むガスとを混合して、燃焼する。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態におけるマニホールド100において、本体部101の下面101aと底壁110との間に、空間Sが設けられている。また、本実施の形態におけるセルスタック装置1は、空間Sが設けられたマニホールド100と、このマニホールド100から反応ガスが供給される燃料電池セル200と、マニホールド100と燃料電池セル200とを接合する第1接合材3とを備えている。
【0093】
本実施の形態のマニホールド100の本体部101に燃料電池セル200が接合されたセルスタック装置1の使用時には、発電によってセルスタック装置1が高温になる。また、余剰の反応ガスを燃焼させる場合には、燃焼時によってセルスタック装置1が高温になる。このように、使用時にセルスタック装置1が高温になると、マニホールド全体が変形する。本体部101の下面101aと底壁110との間の空間Sは、マニホールドの変形が許容される変形吸収空間である。このため、マニホールドが変形しても、空間Sによって、本体部101と底壁110との押圧を防止できるので、押圧に伴う応力集中を防止できる。これにより、マニホールド100の本体部101に取り付けられる燃料電池セル200と、マニホールド100とを接合する第1接合材3に加えられる応力を抑制できる。したがって、第1接合材3におけるクラックを抑制できる。
【0094】
さらに、燃料電池セル200に加えられる応力を低減することもできる。したがって、燃料電池セル200におけるクラックを抑制できる。
【0095】
それに加えて、セルスタック装置1の使用時に、燃料電池セル200がマニホールド100よりも高温になる場合がある。この場合、上方が高温で下方が低温になる温度分布が形成される。本体部101と底壁110との間に設けられた空間Sは、断熱効果を有するので、下方への熱損失を低減できる。このため、セルスタック装置1の効率を向上することができる。この観点から、封止材102がガラス接合材である場合は、更に断熱効果を得ることができるので、セルスタック装置1の効率を更に向上することができる。
【0096】
変形例1
ここで、実施の形態のセルスタック装置1は、支持基板210の1つの主面上に複数の発電素子部220が配置された横縞型を例に挙げて説明したが、本発明のセルスタック装置は、支持基板の1つの主面上に1つの発電素子が配置される縦縞型であってもよい。また、本実施の形態のセルスタック装置1は、円筒平板型の支持基板210を備えているが、本発明のセルスタック装置は、円筒型の支持基板を備えていてもよい。
【0097】
変形例2
上述した実施の形態のマニホールド100は、フランジ部140を有する本体部101を備える構造を例に挙げて説明したが、本発明の本体部はフランジ部を有していなくてもよい。この場合、例えば、側壁の下面と底壁の上面との間に空間が設けられる。
【0098】
変形例3
上述した実施の形態のマニホールド100は、平面視において矩形状の底壁110を備えているが、本発明のマニホールドの底壁の形状は、これに限定されない。また、本発明の底壁は、上方に湾曲していてもよい。この場合、本体部の下面及び底壁が異なる曲率で上方に湾曲していてもよい。
【0099】
変形例4
図13に示すように、本体部101の下面101aは平坦面であり、底壁110の上面111が下方に湾曲していてもよい。この場合も、空間Sは、端部から中央部に向けて大きくなる。なお、本変形例では、底壁110の下面112も下方に湾曲しているが、平坦面であってもよい。
【0100】
変形例5
図14に示すように、本体部101の下面101aは下方に湾曲しており、底壁110の上面111が平坦面であってもよい。この場合は、空間Sは、端部に設けられる。具体的には、空間Sは、中央部から端部に向けて大きくなる。このように、本発明の空間Sが設けられる位置は、中央部に限定されない。なお、本変形例では、フランジ部140が下方に湾曲している。
【0101】
変形例6
図15に示すように、本体部101において、角部が他の部分よりも薄くなるように構成されていてもよい。詳細には、本体部101は、複数の平板部と、この平板部を連結する角部とを有している。平板部は、平坦な板状の部分である。角部は、角を形成する部分、すなわち、角近傍である。本変形例では、複数の平板部は、上壁120の大部分を占める環状の平板部と、第1側壁131及び第2側壁132の大部分を占める4つの矩形状の平板部と、フランジ部140の大部分を占める環状の平板部とを有している。角部は、第1〜第3境界部104〜106であるので、環状の隅角部を含む。このように、本変形例の本体部は、複数の平板部と、複数の角部とからなる。
【0102】
なお、角部はR形状であるが、角部の形状は特に限定されない。角部は、複数の平面部が直交してなる直角であってもよく、複数の平面部の交差部分を平面状に湾曲している形状(C面取りされた形状)であってもよい。
【0103】
角部の厚さT2は、平板部の厚さT1よりも小さい。このため、角部は、平面部よりも優先して変形する部位であり、変形可能部である。複数の平板部の厚さが異なる場合には、最小の厚さを厚さT1とする。本体部は複数の角部を有し、複数の角部の厚さが異なる場合には、最小の厚さをT2とする。本実施の形態では、すべての角部の厚さT2が平板部の厚さT1よりも小さい。なお、厚さT1、T2は、板厚である。
【0104】
角部の厚さT2は、平板部の厚さT1の70.0%以上99.5%以下であることが好ましく、75.0%以上98.0%以下であることがより好ましい。70.0%以上の場合、マニホールドの強度を向上でき、75.0%以上の場合、マニホールドの強度をより向上できる。99.5%以下の場合、変形しやすいので、第1接合材3の変形を抑制することで、第1接合材3におけるクラックを抑制でき、98.0%以下の場合、第1接合材3におけるクラックを効果的に抑制できる。また、70.0%以上の場合、加工時にマニホールドの角部が破断することを防止できる。
【0105】
平板部の厚さT1は、例えば、0.5mm以上4.0mm以下である。角部の厚さT2は、例えば、0.35mm以上3.9mm以下である。
【0106】
なお、
図15の本体部101は複数の角部を有しており、すべての角部の厚さT2が平板部の厚さT1よりも小さいが、本発明のマニホールドはこれに限定されない。マニホールドが複数の角部を有する場合には、複数の角部の少なくとも1つの角部が平板部の厚さよりも小さい。この場合であっても、厚さの小さい角部が優先的に変形するので、同様の効果を有する。
【0107】
また、マニホールド100が複数の角部を有する場合には、複数の角部の少なくとも1つの角部が平板部の厚さよりも小さければ、他の角部が平板部の厚さと同じであっても、大きくてもよい。マニホールド100において、上壁120と側壁130との第2境界部105の厚さT2は、平板部の厚さT1よりも小さいことが好ましい。この場合、側壁130とフランジ部140との第3境界部106は、R形状であるが、平板部の厚さよりも小さくてもよく、大きくてもよい。
【0108】
本変形例の製造方法において、下方が開口する箱状の本体部101を準備する工程では、例えば、角部となる部分が平板部となる部分よりも薄い板状の材料を準備して、箱状にプレス成形する。具体的には、例えば以下のように実施する。本体部101となる平板状の材料を準備する。この材料において、角部となる部分の厚さを他の部分よりも薄くなるように加工する。加工された材料に対して、深絞り加工を行って、上壁120と側壁130とフランジ部140とからなる本体部101を形成する。なお、下方が開口する箱状の本体部を準備する工程において、プレス加工により箱状に成型した後に、切削加工により、角部となる部分の厚さを他の部分よりも薄くしてもよい。
【0109】
変形例7
上述した実施の形態では、第1側壁131及び第2側壁132は底壁110から略垂直に上方に延びているが、本発明のマニホールドは、これに限定されない。例えば、第1側壁131及び第2側壁132の少なくとも一方は、上方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよい。また、例えば、第1側壁131及び第2側壁132の少なくとも一方は、下方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよい。なお、変形例6の本体部の側壁130は、上壁120から下方に向かって広がるように傾斜していることが好ましい。
【0110】
変形例8
上述した実施の形態では、導入配管Pは、マニホールド100の側壁130に取り付けられているが、導入配管Pの取り付け位置はこれに限定されない。例えば、導入配管Pは、マニホールド100の上壁120に取り付けられていてもよい。
【0111】
変形例9
図16に示すように、マニホールド100は、突起部150をさらに備えていてもよい。突起部150は、底壁110に複数取り付けられている。詳細には、複数の突起部150は、底壁110の下面112に取り付けられている。このため、台座にマニホールド100を配置すると、複数の突起部150が台座に接する。複数の突起部150は、底壁110の下面112に、偏析せずに、分散している。このため、マニホールド100は、安定して台座に配置される。
【0112】
突起部150を構成する材料は、底壁110を構成する材料と異なる材料で構成されていれば特に限定されないが、金属を除く材料で構成されていることが好ましく、無機材料で構成されていることがより好ましい。無機材料としては、セラミックスであることが好ましい。SOFCは高温で作動するが、金属材料は高温環境下で一定応力を連続的に与えられると高温クリープ変形が発生し、形状が変わってしまう恐れがある。マニホールド100の底壁110に取り付けられて台座に接する突起部150には、セルスタック装置全体の荷重がかかるため、高温クリープ変形が懸念される。一方、無機材料では金属材料と比較して高温クリープ現象に対する耐性が高いため、台座と接する突起部150として無機材料を用いることが好ましい。
【0113】
また、突起部150は、底壁110を構成する材料の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する材料で構成されていることが好ましい。このような材料として、例えば、鉱物、セラミックス、ガラス、または繊維が挙げられる。鉱物としては、例えば、マイカ(雲母)、バーミキュライト、石英などが挙げられる。セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、酸化鉄、酸化クロムなどが挙げられる。ガラスとしては、例えば、結晶化ガラスなどが挙げられる。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、またはSiO
2−MgO系が採用され得る。繊維としては、例えば、石英ウール、アルミナ、シリカアルミナなどが挙げられる。
【0114】
突起部150を構成する材料の熱伝導率は、40W/m・K以下であることが好ましく、20W/m・K以下であることがより好ましい。底壁110から台座への熱伝導を低減できるので、熱伝導率は低いほど好ましいが、容易に実現できる観点から、下限値は、例えば0.01W/m・Kである。上記熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により750℃で測定される値である。
【0115】
台座と対向する面の表面粗さRzは、0.01z以上であることが好ましく、0.05z以上であることがより好ましい。底壁110と台座との接触面積を低減できるので、表面粗さRzは高いほど好ましいが、セルスタック装置1の高さを考慮すると、上限値は、例えば10zである。
【0116】
上記「台座と対向する面」とは、本変形例では、底壁110の下面112と突起部150とで構成される面である。上記表面粗さRzは、JIS B0601に準拠して測定される値である。
【0117】
底壁110の下面112の面積に対する、突起部150と台座とが接触する面積の比(接触する面積/下面112の面積)は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0118】
突起部150は、下方に突出する凸形状である。突起部150は、例えば、下方(下面112から台座に)に向けて幅が小さい。突起部150は、部材として設けられる突起部と、粒子からなる突起部とを含む。突起部150と台座との接触は、点接触であってもよい。また、突起部150が部材である場合には、例えば、平面視において矩形の片状であってもよく、繊維の切片であってもよい。
【0119】
本変形例の製造方法において、突起部150を底壁110の下面112に取り付ける工程では、例えば以下のように実施する。結晶化ガラスなどの突起部150となる材料を準備する。この材料を、底壁110の下面112に接するように配置して、焼き付ける。
【0120】
変形例10
変形例9のように、突起部150を底壁110に取り付ける態様において、マニホールド100は、コーティング膜160をさらに備えていてもよい。
図17に示すように、コーティング膜160は、底壁110の下面112に形成されている。突起部150は、コーティング膜160を介して底壁110に取り付けられている。突起部150の少なくとも一部は、コーティング膜160から下方に突出している。なお、突起部150と同じ部材がコーティング膜160に埋設されていてもよい。
【0121】
また、コーティング膜160は、露出する表面全体に形成されている。つまり、コーティング膜160が、外部に露出する。具体的には、コーティング膜160は、底壁110、第1側壁131、第2側壁132、上壁120、及びフランジ部140の表面全体に形成されている。なお、マニホールド100の各部材を被覆するコーティング膜は、同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0122】
マニホールド100の部材(例えば上壁120)を構成する材料がクロムを含んでいる場合、その部材の表面全体にコーティング膜160が形成されることにより、クロムが揮発することを防止できる。
【0123】
コーティング膜160は、例えばガラス、セラミックスなどで構成されており、ガラスで構成されていることがより好ましい。ガラスとしては、例えば結晶化ガラスを用いることができる。この結晶化ガラスは、第1接合材3と同様の材料であってもよい。セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、ペロブスカイト系材料、スピネル系材料などを用いることができる。コーティング膜160は、複数の層で構成されてもよい。また、コーティング膜160は、突起部150と同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0124】
コーティング膜160の厚みは、例えば3〜200μmである。コーティング膜160の気孔率は、例えば0〜30%である。
【0125】
本変形例の製造方法では、例えば、コーティング膜160を形成し、その後に突起部150を形成する。具体的には、まず、本体部の表面全体、つまり露出する面全体に、コーティング膜160となるペーストを形成する。ペーストは、例えばガラス粉末を含み、クロムは含まない。ペーストは、例えば、塗布、ディッピング法などによって形成される。
【0126】
次に、底壁110の下面112に形成されたペーストに、突起部150となる材料を付着して、この状態で焼成する。この工程では、焼成容器(セッター)に突起部となる材料を配置し、次いで、この材料上に底壁110の下面112を配置し、この状態で焼成してもよい。
【実施例】
【0127】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0128】
(サンプルNo.2〜8)
サンプルNo.2〜8のマニホールドは、
図1〜
図6に示すように、本体部101の下面101aと底壁110との間に空間が設けられていた。各サンプルの本体部101の下面101aの面積に対する、本体部101の下面101aにおいて底壁110と接触する面積の比(接触面積/下面の面積)を、下記の表1に記載する。なお、本体部101の下面101aとは、本体部101において最も下方(x軸方向における底壁110側)に位置する部材の下面である。このため、サンプルNo.2〜8においては、下面101aの面積とは、フランジ部140の下面全体の面積である。
【0129】
(サンプルNo.1)
サンプルNo.1のマニホールドは、本体部の下面と底壁との間に空間が設けられていない点において、サンプルNo.2〜8のマニホールドと異なっていた。
【0130】
(評価方法)
サンプルNo.1〜8のマニホールドに、接合材を用いて10個の燃料電池セルを接合したセルスタック装置において、熱サイクル試験により、クラックの発生頻度及びガスリークの有無を調べた。
【0131】
具体的には、各セルスタック装置を電気炉内に設置し、室温から750℃まで4時間昇温、及び6時間降温の条件で、10回の熱サイクル試験を実施した。それぞれの熱サイクル試験後に、電気炉からセルスタック装置を取り出して、クラック発生の有無及びガスリーク量を調べた。
【0132】
クラックの有無は、底壁と本体部との接合部、及び第1接合材に浸透探傷剤を塗布し、マイクロスコープで観察することにより確認した。また、ガスリークについては、燃料電池セル200のガス流路211出口端部を封止した上で、各マニホールドの導入配管Pよりアルゴンガスを供給し、マニホールド内部を印加圧20kPaまで高めて保持し、その時のガスリーク量を測定した。これらの結果を下記の表1に示す。
なお、下記の表1において、接地性について、非常に良好であったものを「◎」、良好であったものを「○」、悪かったものを「×」として示す。
【0133】
【表1】
【0134】
(測定結果)
表1に示すように、本体部101の下面101aと底壁110との間に空間が設けられていなかったサンプルNo.1のマニホールドは、10回の熱サイクル試験うち1回において、マニホールドの内部空間とマニホールドの外部空間とを繋ぐクラックが生じた。
【0135】
一方、本体部101の下面101aと底壁110との間に空間が設けられているサンプルNo.2〜8は、マニホールドの内部空間とマニホールドの外部空間とを繋ぐ通路となるクラックを抑制できた。
【0136】
特に、本体部101の下面101aの面積に対する、底壁110と接触する面積の比(接触面積/下面の面積)が0.1%以上のサンプルNo.3〜8のマニホールドは、10回の熱サイクル試験において、クラックそのものを抑制できた。また、(接触面積/下面の面積)が50%のサンプルNo.1〜7は、接地性が非常に良好であった。このため、(接触面積/下面の面積)が0.1%以上50%以下であると、クラックを効果的に抑制できるとともに、良好な接地性のマニホールドを実現できることがわかった。
【0137】
さらに、上述した熱サイクル試験において、4時間昇温の代わりに、1時間昇温の条件で、同様の試験を実施した。この急速昇温の条件においても、サンプルNo.2〜8は、ガスリークに繋がるクラックの発生はなかった。さらには、サンプルNo.3〜8は、クラックそのものの発生がなかった。このため、(接触面積/下面の面積)が15%以上50%以下であると、クラックをさらに効果的に抑制できるとともに、良好な接地性のマニホールドを実現できることがわかった。
【0138】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【課題】セルスタック装置に用いたときに、燃料電池セルとマニホールドとを接合する接合材におけるクラックを抑制できるマニホールドを提供する。燃料電池セルとマニホールドとを接合する接合材におけるクラックを抑制できるセルスタック装置を提供する。
【解決手段】本発明のマニホールド(100)は、燃料電池セル(200)に反応ガスを供給するためのマニホールドであって、燃料電池セル(200)が接合されるとともに、下方に開口を有する本体部(101)と、この本体部(101)の下面(101a)を塞ぐ底壁(110)と、を備え、本体部(101)の下面(101a)と底壁(110)との間に、空間(S)が設けられている。本発明のセルスタック装置(1)は、マニホールド(100)と、マニホールド(100)から反応ガスが供給される燃料電池セル(200)と、マニホールド(100)と燃料電池セル(200)とを接合する接合材(3)とを備えている。