(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水産物などの鮮度保持に用いるシャーベット氷を製氷する技術として、冷却器内に供給された塩水を冷却材によって冷却し、冷却器の内壁面に生成された製氷層をスクレーバで剥離することにより氷を生成するアイスジェネレータがある(例えば、特許文献1)。この従来のアイスジェネレータでは、貯蔵タンク内の攪拌機でシャーベット氷を撹拌することで、シャーベット氷を取り出す際の流動性を維持している。しかしながら、このような貯蔵タンクを過冷却式の製氷方式に適用することを考えると、貯蔵タンクから製氷のための水を取り出そうとすると、貯蔵タンク内を浮遊している氷粒子が製氷システムに流入することが懸念される。氷粒子が製氷システムに流入すると、熱交換器での凍結や配管内での閉塞を生じさせ、安定的な製氷が行えないことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑み、氷粒子が製氷システムに流入することを抑制し、安定的な製氷を行うことができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するため、貯氷タンク内に、貯氷タンク内のシャーベット氷を所定の領域に収容するとともに水が通過自在な仕切り部を設けることとした。
【0007】
詳細には、本発明は、塩水と真水とのうち少なくとも何れか一方を含む水から製氷されたシャーベット氷を貯氷する貯氷タンクであって、前記シャーベット氷を撹拌する撹拌部と、前記シャーベット氷を前記撹拌部側の領域に収容するとともに水が通過自在な仕切り部と、前記仕切り部を境にして、前記撹拌部とは反対側の領域に設けられ、前記水を送り出す水送出口と、を備える貯氷タンクである。
【0008】
本発明に係る貯氷タンクによれば、仕切り部によってシャーベット氷を撹拌部側の領域に収容することで、氷粒子も撹拌部側の領域に収容することができる。その結果、氷粒子が製氷システムに流入することを抑制することができ、熱交換器での凍結や配管内での閉塞の発生を抑えることができる。そのため、安定的な製氷を行うことができる。また、従
来技術では、氷粒子が製氷システムに流入することを防ぐため、製氷中に撹拌することができなかった。これに対し、本発明に係る貯氷タンクによれば、氷粒子が製氷システムに流入することを抑制することができるため、製氷中も撹拌することができる。その結果、製氷の効率を向上することができる。また、製氷中に撹拌を中止し、シャーベット氷を供給する際に撹拌を開始する場合、撹拌開始の際の負荷が大きいことが懸念された。一方、本発明によれば、撹拌開始の際に負荷が大きくなることもない。また、従来技術では、撹拌開始の際の負荷が大きくなることを回避するため、貯氷の際の氷充填率(IPF:Ice Packing Factor)の値を30%程度に抑える必要があった。一方、本発明では、IPFを50〜60%にすることができる。そのため、従来よりも貯氷タンクを小型化することができる。若しくは、従来よりも多くのシャーベット氷を貯氷することができる。
【0009】
また、前記水送出口は、前記貯氷タンクの底部近傍に設けられ、前記仕切り部は、前記貯氷タンクの上下方向における中心よりも下方、かつ、前記貯氷タンクの底部近傍に設けられた水送出口の上側近傍に設けられていてもよい。仕切り部の位置は、上記に限定されないが、IPF50〜60%を確保するためには、貯氷タンクの上下方向における中心よりも下方であることが好ましく、また、底部近傍に設けられた水送出口よりも上側であることが好ましい。
【0010】
また、前記撹拌部は、少なくともその一部が前記仕切り部の近傍に位置するようにしてもよい。仕切り部の近傍にはシャーベット氷が堆積しやすく、撹拌部と仕切り部との間隔が大きいと、十分に撹拌できないことが懸念される。本発明では、撹拌部の少なくとも一部を仕切り部の近傍に設けることで、シャーベット氷を十分に撹拌することができる。
【0011】
ここで、前記仕切り部は、複数の孔が形成されたパンチング板と、網状構造体とのうち少なくとも何れか一方を含むものとすることができる。これにより、氷粒子が製氷システムに流入することを抑制することができる。例えば、孔の径は、0.3〜2.0mm、開口率は20〜30%とすることができる。
【0012】
ここで、本発明は、シャーベット氷の製氷システムとして特定することもできる。例えば、本発明は、塩水と真水とのうち少なくとも何れか一方を含む水を過冷却状態にし、過冷却状態の水を解除し、シャーベット氷を製氷する製氷装置と、前記製氷装置で製氷されたシャーベット氷を貯氷し、供給する供給装置と、を備え、前記供給装置は、前記シャーベット氷を貯氷する貯氷タンクを有し、前記貯氷タンクは、前記シャーベット氷を撹拌する撹拌部と、前記シャーベット氷を前記撹拌部側の領域に収容するとともに水が通過自在な仕切り部と、前記仕切り部を境にして、前記撹拌部とは反対側の領域に設けられ、前記水を送り出す水送出口と、を含むシャーベット氷の製氷システムである。
【0013】
また、前記製氷装置は、水が流れる往き配管と、前記往き配管と接続され、水を過冷却状態にする熱交換器と、前記過冷却状態の水が流れる還り配管と、前記還り配管と接続され、前記過冷却状態の水を解除する解除器と、を有し、前記供給装置は、前記製氷装置で製氷されたシャーベット氷を貯氷する貯氷タンクと、貯氷されたシャーベット氷を圧送するポンプと、前記貯氷タンク及び前記ポンプと接続され、前記シャーベット氷が流れる供給配管と、を有する構成とすることができる。
【0014】
往き配管は、一端を貯氷タンクに接続し、他端を熱交換器に接続することができる。往き配管には、貯氷タンクからの水を流すことができる。貯氷タンクからの水は、原水が貯氷タンクによって温度低下したものである。往き配管には、貯氷タンク内の水を汲み上げ、熱交換器へ圧送する製氷装置のポンプ、貯氷タンクからの水に含まれる微細な氷を融解する予熱器、各種弁、温度計、流量計等のうち少なくとも何れか一つを更に設けるように
してもよい。過冷却水のポンプは、熱交換器へ供給する流量を一定化するため、インバータ制御するようにしてもよい。
【0015】
熱交換器は、冷凍機から供給される過冷却媒体(水やブラインなど)と水とを熱交換し、水を過冷却状態とする。熱交換器には、プレート式、シェル・アンド・チューブ式を含む各種熱交換器を用いることができる。解除器は、例えば、超音波により過冷却状態を解除する。解除器は、過冷却状態を解除できるものであれば、上記に限定されない。還り配管は、一端を熱交換器に接続し、他端を解除器に接続することができる。還り配管には、各種弁、温度計、流量計等のうち少なくとも何れか一つを更に設けるようにしてもよい。
【0016】
貯氷タンクは、製氷されたシャーベット氷を貯氷するもので、撹拌部を有する構成とすることができる。撹拌部を有することで、貯氷タンクは、シャーベット氷に含まれる氷の凝結を抑制して、シャーベット氷の流動性を維持することができる。本発明に係るシャーベット氷の製氷システムでは、貯氷タンクのIPFは50〜60%とすることができる。撹拌部は、軸と、軸に接続された羽と、軸を回転させるモータとを含む構成とすることができる。貯氷タンクは、水(原水)を受け入れる原水受入口、原水を送り出す原水送出口、シャーベット氷を受け入れる氷受入口、シャーベット氷を送り出す氷送出口、残ったシャーベット氷を排出する氷排出口を含む構成とすることができる。
【0017】
ポンプは、貯氷されたシャーベット氷を圧送する。本発明に係るシャーベット氷の製氷システムで製氷されたシャーベット氷は流動性に優れているため、本発明に係るポンプは、従来よりも小さい動力でシャーベット氷を供給することができる。また、本発明に係るポンプは、スラリー状の液体を圧送する専用のポンプである必要は無く、水を圧送する汎用のポンプを用いることができる。供給配管は、一端を解除器に接続し、他端を供給先に接続し、配管途中に貯氷タンクやポンプを設けることができる。供給配管は、一端を解除器に接続し、他端を貯氷タンクに接続する第一供給配管と、一端を貯水タンクに接続し、他端を供給先に接続する第二供給配管とを含む構成でもよい。供給配管には、各種弁、温度計、流量計等のうち少なくとも何れか一つを更に設けるようにしてもよい。
【0018】
なお、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムは、製氷装置、供給装置、製氷装置を構成する熱交換器や解除器、供給装置を構成する貯氷タンクやポンプ、各種弁等を制御する制御部を更に備える構成としてもよい。
【0019】
また、前記製氷装置は、塩水を過冷却状態にし、過冷却状態の塩水を解除し、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷を製氷し、前記供給装置は、前記製氷装置で製氷されたシャーベット氷を貯氷し、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷を供給するようにしてもよい。
【0020】
本発明に係るシャーベット氷の製氷システムによれば、上述した貯氷タンクの特徴に加えて、製氷されるシャーベット氷の氷結晶粒の直径が、0.01〜0.1mmであり、氷結晶粒の直径を従来よりも小さくすることができる。氷結晶粒の直径とは、氷結晶粒が球形以外の場合は、最大径を意味する。また、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムで製氷されたシャーベット氷は、氷結晶粒の表面が曲面状で、粒が揃っており、氷結晶粒同士が凝結し難いため、肥大化しにくい。その結果、シャーベット氷の流動性が従来よりも優れている。そのため、配管等の詰まりも更に発生しにくく、また、従来よりも小さい動力でシャーベット氷を供給することができる。また、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムによれば、貯氷の際の氷充填率(IPF)の値を従来よりも大きくすることができる。具体的には、従来の冷却器の内壁面に生成された製氷層をスクレーバで剥離する技術では、IPF25〜30%であるが、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムでは、IPF50〜60%とすることができる。そのため、従来よりも貯氷タンクを小型化
することができる。また、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムによれば、従来よりも低い塩分濃度のシャーベット氷を製氷することができる。具体的には、従来の冷却器の内壁面に生成された製氷層をスクレーバで剥離する技術では、対応塩分濃度1.0〜3.5%(3.5%は海水塩分濃度に対応)であった。これに対し、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムでは、塩分濃度1%未満のシャーベット氷の製氷も可能であり、任意の塩分濃度のシャーベット氷を製氷することができる。また、従来の冷却器の内壁面に生成された製氷層をスクレーバで剥離する技術では、スクレーバの刃が破損するなど、剥離する際の負荷が原因と考えられる、アイスジェネレータの故障が発生しやすいことが懸念されていた。また、メンテナンスの手間も負担となっていた。これに対し、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムでは、剥離する際の負荷も無いことから、システムの故障も少なく、また、メンテナンスも容易である。更に、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムで製氷されたシャーベット氷を水産物などの鮮度保持に用いることで、水産物などの品質を従来よりも長く維持することができる。
【0021】
シャーベット氷は、塩水での鮮度保持が必要とされる水産物に好適に用いることができる。水産物には、魚(サンマ、マグロ、アジ、サバなど)、甲殻類(カニ、エビなど)が例示される。これらは、一例であり、水産物は、これらに限定されない。
【0022】
ここで、前記製氷装置は、海水を過冷却状態にし、過冷却状態の海水を解除するようにしてもよい。本発明によれば、海水を活用して、海水のシャーベット氷を製氷することができる。海水は、殺菌された海水であることが好ましい。また、海水は、塩分調整された殺菌海水であることがより好ましい。塩分調整は、海水に真水を混合することで調整することができる。塩分調整された殺菌海水の濃度は、水産物に応じて調整することができる。塩分調整された殺菌海水の濃度は、海水濃度(例えば、3.5%)よりも低い、例えば3%以下とすることができる。
【0023】
ここで、本発明は、シャーベット氷の製氷方法として特定することもできる。例えば、本発明は、塩水を過冷却状態にし、過冷却状態の塩水を解除し、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷を製氷する製氷工程と、前記製氷工程で製氷されたシャーベット氷を貯氷し、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷を供給する供給工程と、を備える、シャーベット氷の製氷方法である。
【0024】
本発明に係るシャーベット氷の製氷方法によれば、氷結晶粒の直径を従来よりも小さくすることができる。また、本発明に係るシャーベット氷の製氷方法で製氷されたシャーベット氷は、氷結晶粒の形や大きさが揃っており、氷結晶粒同士が凝結し難いため、肥大化しにくい。その結果、シャーベット氷の流動性が従来よりも優れており、配管等の詰まりも発生しにくく、また、従来よりも小さい動力でシャーベット氷を供給することができる。また、貯氷の際の氷充填率(IPF)の値を従来よりも大きくすることができる。また、従来よりも低い塩分濃度のシャーベット氷を製氷することができる。更に、本発明に係るシャーベット氷の製氷方法で製氷されたシャーベット氷を水産物などの鮮度保持に用いることで、水産物などの品質を従来よりも長く維持することができる。なお、本発明に係るシャーベット氷の製氷方法は、単に、上述した製氷工程を備えるものでもよい。また、本発明に係るシャーベット氷の製氷方法は、単に、上述した供給工程を備えるものでもよい。
【0025】
前記製氷工程では、海水を過冷却状態にし、過冷却状態の海水が解除されるようにしてもよい。本発明によれば、海水を活用して、海水のシャーベット氷を製氷することができる。海水は、殺菌された海水であることが好ましい。また、海水は、塩分調整された殺菌海水であることがより好ましい。塩分調整は、海水に真水を混合することで調整することができる。塩分調整された殺菌海水の濃度は、水産物に応じて調整することができる。塩分調整された殺菌海水の濃度は、海水濃度(例えば、3.5%)よりも低い、例えば3%以内とすることができる
。
また、本発明は、製氷方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、塩水と真水とのうち少なくとも何れか一方を含む水を過冷却状態にし、過冷却状態の水を解除し、シャーベット氷を製氷する製氷工程と、前記製氷工程で製氷されたシャーベット氷を貯氷し、供給する供給工程と、を備え、前記供給工程では、前記シャーベット氷を撹拌する撹拌部と、前記シャーベット氷を前記撹拌部側の領域に収容するとともに水が通過自在な仕切り部と、前記仕切り部を境にして、前記撹拌部とは反対側の領域に設けられ、前記水を送り出す水送出口と、を含む貯氷タンクに、シャーベット氷を貯氷する、シャーベット
氷の製氷方法であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、氷粒子が製氷システムに流入することを抑制し、安定的な製氷を行うことができる技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。以下の説明では、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1で製氷されたシャーベット氷を水産物などの鮮度保持に用いる場合を例に説明する。水産物には、魚(サンマ、マグロ、アジ、サバなど)、甲殻類(カニ、エビなど)が例示される。これらは、一例であり、水産物は、これらに限定されない。また、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0029】
<シャーベット氷の製氷システム>
実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1は、海水を過冷却状態にし、過冷却状態の海水を解除し、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mm(本実施形態では、0.05mm程の氷結晶粒が多く含まれている)のシャーベット氷を製氷する製氷装置2と、製氷装置2で製氷されたシャーベット氷を貯氷し、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mm(本実施形態では、0.05mm程の氷結晶粒が多く含まれている)のシャーベット氷を供給する供給装置3と、製氷装置2及び供給装置3を制御する制御装置5と、を備える。なお、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1は、冷凍機4を更に備える構成としてもよい。なお、氷結晶粒の直径とは、氷結晶粒が球形以外の場合(例えば、楕円体)は、最大径を意味する。
【0030】
製氷装置2は、往き配管21、還り配管22、製氷装置のポンプ23、予熱器24、製氷装置のフィルタ25、熱交換器26、解除器27を主な構成とする。供給装置3は、給水配管31、供給配管32(第一供給配管321、第二供給配管322)、貯氷タンク33、供給装置のポンプ34を主な構成とする。以下、海水の給水、過冷却、解除、シャーベット氷の供給の流れに沿って、上記各構成について説明する。
【0031】
<<給水配管>>
給水配管31は、一端が海水処理装置6に接続され、他端が貯氷タンク33の上部に接続され、海水が流れる。海水処理装置6は、殺菌された海水と真水を混合し、0〜3%の塩分濃度の殺菌海水を生成する。海水処理装置6は、漁港等に設置されている既存の設備を用いることができる。海水処理装置6は、一例として、塩分濃度調整タンク、塩分濃度
設定器、真水量調整バルブ、海水供給用のポンプ、固液分離フィルタを含む構成とすることができる。塩分濃度調整タンクに殺菌された海水が充填され、塩分濃度設定器によって設定された塩分濃度(0〜3%)に基づいて真水調整バルブが開放され、所定量の真水が導入される。これにより、海水濃度(例えば、3.5%)よりも低い、塩分濃度3%以下の殺菌海水が生成される。
【0032】
また、給水配管31には、海水の流れにおいて、上流側から順に、海水供給装置の自動弁35、海水供給装置のフィルタ36が設けられている。海水供給装置の自動弁35は、制御装置5によって制御され、貯氷タンク33に海水を充填する際、貯氷タンク33の水位が低下すると、開状態となり、水位が上昇すると閉状態となる。貯氷タンク33の水位は、後述する貯氷タンク33に設けられた水位計によって取得することができる。海水供給装置のフィルタ36は、例えば、濾過径20μmのフィルタによって構成され、海水に含まれる不純物を捕捉する。不純物とは、製氷において有害となり得る固形物で、換言すると、過冷却状態にある海水を解除するトリガとなり得るものである。不純物には、海藻の小片、砂が例示される。
【0033】
<<貯氷タンク>>
貯氷タンク33は、海水を受け入れるとともに、製氷されたシャーベット氷を貯氷する。ここで、
図2は、実施形態に係る貯氷タンクの拡大断面図を示す。貯氷タンク33は、筐体331、軸332、羽333、モータ334、パンチング板335、海水受入口336、海水送出口337、氷受入口338、氷送出口339、排出口340、水位計341を含む。軸332、羽333、モータ334は、本発明の撹拌部を構成する。筐体331は、円筒形の側壁342、円形の蓋部343及び底部344を有し、内部に海水とともにシャーベット氷を貯氷する。軸332は、蓋部343から鉛直下向きにパンチング板335に接触しない高さまで延びている。軸332は、撹拌性能を向上するため、筐体331の中心から偏芯した位置に設けられている。羽333は、シャーベット氷を撹拌する。羽333は、軸332を中心に左右一対の羽からなり、上下に2か所設けられている。下段の羽333は、パンチング板335の近傍に設けられている。ここで、貯氷タンク33内の海水は、製氷装置のポンプ23によって汲み上げられ、パンチング板335付近では、鉛直下向きの吸引力が作用している。そのため、パンチング板335の近傍にはシャーベット氷が堆積しやすく、下段の羽333の下端とパンチング板335との間隔が大きいと、十分に撹拌できないことが懸念される。本実施形態では、下段の羽333をパンチング板335の近傍に設けることで、シャーベット氷を十分に撹拌することができる。上段の羽333は、下段の羽333と蓋部343の中間付近に設けられている。なお、羽333の形状、大きさ、設置個数等は、上記に限定されるものではない。モータ334は、蓋部343に設けられ、軸332を回転させる。モータ334は、制御装置5によって、ON/OFF、回転数が制御される。
【0034】
パンチング板335は、本発明の仕切り部に相当し、貯氷タンク33のシャーベット氷を氷送出口339側の領域に収容するとともに、パンチング板335に形成された複数の孔により海水が通過自在である。パンチング板335は、筐体331の内径とほぼ同じ大きさの円形であり、孔の径が0.8mm、開口率が24%である。なお、上記孔の径や開口率は、一例であり、例えば、孔の径は、0.3〜2.0mm、開口率は20〜30%とすることができる。パンチング板335は、底部344近傍に設けられた海水送出口337の上側近傍に設けられている。パンチング板335の位置は、上記に限定されないが、貯氷タンク33内で、IPF50〜60%を確保するためには、貯氷タンク33の上下方向における中心よりも下方であることが好ましく、また、底部344近傍に設けられた海水送出口337よりも上側であることが好ましい。パンチング板335に代えて、網状構造体(例えば、メッシュ)を用いてもよい。網状構造体は、平面状のもの、立体的なもの、何れでもよい。立体的なものには、三次元網目構造体(例えば、焼結金属フィルターな
ど)が例示される。また、パンチング板335、網状構造体を適宜組み合わせて配置するようにしてもよい。
【0035】
海水受入口336は、蓋部343に設けられ、給水配管31と接続されて、海水を受け入れる。海水受入口336は、貯氷タンク33の側壁342に設けてもよい。海水受入口336は、貯水タンク33が満水時の水面よりも上側に設けられていればよく、設置位置は上記に限定されない。海水送出口337は、側壁342における底部344近傍に設けられ、往き配管21と接続されて、海水を送り出す。氷受入口338は、側壁342における蓋部343近傍に設けられ、還り配管22と接続されて、シャーベット氷を受け入れる。氷受入口338は、例えば、蓋部343に設けることもできる。氷送出口339は、パンチング板335の近傍上側に設けられ、供給配管32(第二供給管322)と接続されて、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷を送り出す。氷送出口339は、少なくともパンチング板335の近傍上側に設けられていればよく、複数設けられていてもよい。排出口340は、底部344に設けられ、排出配管37と接続されて、貯氷タンク33内の水やシャーベット氷を排出する。排出配管37には、排出用の自動弁38が設けられている。排出用の自動弁38は、制御装置5によって制御され、海水受入前において開状態となり、貯氷タンク33内の水やシャーベット氷を排出し、貯氷タンク33内の水やシャーベット氷が全て排出されると閉状態となる。水位計341は、貯氷タンク33内に設けられ、貯氷タンク33内の海水の水位を計測する。水位計341には、水位センサなど、既存のセンサを適宜用いることができる。
【0036】
<<往き配管>>
往き配管21は、一端が貯氷タンク33の海水送出口337に接続され、他端が熱交換器26に接続され、貯氷タンク33で冷却された海水が流れる。往き配管21には、海水の流れにおいて、上流側から順に、製氷装置のポンプ23、予熱器24、製氷装置のフィルタ25が設けられている。製氷装置のポンプ23は、貯氷タンク33から海水を汲み上げ熱交換器26へ圧送する。製氷装置のポンプ23は、ゲート弁を含み、熱交換器26へ供給する海水の流量を一定化するため、制御装置5によるインバータ制御が可能である。制御装置5は、熱交換器26と製氷装置のポンプ23との間に設けられた流量計M1から取得される海水の流量情報に基づいて、熱交換器26へ供給する海水の流量を一定化するよう、ゲート弁の開度やポンプの圧力を調整する。
【0037】
予熱器24は、貯氷タンク33からの海水に含まれる微細な氷を融解する。予熱器24は、ヒータで構成することができ、ON/OFF及び加熱温度が制御装置5によって制御される。制御装置5は、熱交換器26と予熱器24との間に設けられた温度センサT3から取得される海水の温度情報に基づいて、熱交換器26へ供給する海水の温度が既定温度(例えば、0℃)に維持されるよう予熱器24を制御する。例えば、制御装置5は、海水の温度が既定温度より低い場合、予熱器24の加熱温度を上げる。また、例えば、制御装置5は、海水の温度が既定温度より高い場合、予熱器24の加熱温度を下げる。既定温度は、海水の濃度等に応じて、実験などにより予め定めることができる。製氷装置のフィルタ25は、凝結した氷や海水に含まれる不純物を補足する。不純物には、海藻の小片、砂、微細な氷粒子が例示される。
【0038】
熱交換器26は、貯氷タンク33と接続される往き配管21及び解除器27と接続される還り配管22、更に、冷凍機4と接続されるブライン往き配管42及びブライン還り配管43と接続され、冷凍機4から供給される過冷却媒体としてのブラインと海水とを熱交換し、海水を過冷却状態とする。熱交換器26は、プレート式の熱交換器によって構成されている。熱交換器26は、シェル・アンド・チューブ式の熱交換器など、既存の各種熱交換器を用いることができる。
【0039】
<<冷凍機>>
冷凍機4は、ブラインを冷却する。ブラインの温度は、例えば、熱交換前が−6℃、熱交換後が−3℃である。冷凍機4は、制御装置5によって制御される。制御装置5は、後述する流量計M2で検知されるブラインの流量情報、後述する温度センサT1,T2で検知されるブラインの温度などに基づいて、ON/OFF、冷却温度を調整する。ブラインの往き配管42は、一端が冷凍機4に接続され、他端が熱交換器26に接続され、冷凍機4で冷却され、かつ、熱交換前のブラインが流れる。ブラインの往き配管42には、ブラインの流れにおいて上流側から順に、ブラインのポンプ41、流量計M2、温度センサT1が設けられている。ブラインのポンプ41は、冷凍機4で冷却されたブラインを熱交換器26へ圧送する。ブラインのポンプ41は、ゲート弁を含み、ブラインの流量を制御装置5によって制御することができる。流量計M2は、ブラインの往き配管42を流れるブラインの流量を検知する。温度センサT1は、ブラインの往き配管42を流れるブラインの温度を検知する。
【0040】
ブラインの還り配管43は、一端が熱交換器26に接続され、他端が冷凍機4に接続され、熱交換後のブラインが流れる。ブラインの還り配管43には、温度センサT2が設けられている。温度センサT2は、ブラインの還り配管43を流れるブラインの温度を検知する。なお、上記流量計M1、温度センサT1,T2で検知されたブラインの流量、ブラインの温度に基づいて、IPFが算出される。
【0041】
<<解除器>>
還り配管22は、一端が熱交換器26に接続され、他端が解除器27に接続され、過冷却状態の海水が流れる。解除器27は、超音波により過冷却状態を解除する。解除器27は、過冷却状態を解除できるものであれば、上記に限定されない。
【0042】
<<供給配管>>
供給配管32は、第一供給配管321、及び第二供給配管322によって構成されている。第一供給配管321は、一端が解除器27に接続され、他端が貯氷タンク33に接続され、解除器27で解除されたシャーベット氷が流れる。第二供給配管322は、一端が貯氷タンク33に接続され、他端が供給先に接続され、貯氷タンク33に貯氷されたIPF50〜60%のシャーベット氷が流れる。本実施形態の供給先は、水産物を鮮度保持するための船舶に設けられた水槽である。供給先は、水産物を鮮度保持するのに必要とされる箇所であればよく、上記に限定されない。第二供給配管322は、シャーベット氷の流れにおいて、上流側から順に、氷供給装置のポンプ34、氷供給装置の自動弁39が設けられている。
【0043】
氷供給装置のポンプ34は、貯氷タンク33からシャーベット氷を汲み上げ供給先へ圧送する。氷供給装置のポンプ34は、ゲート弁を含み、制御装置5による制御が可能である。制御装置5は、ゲート弁の開度やポンプの圧力を調整する。氷供給装置の自動弁39は、制御装置5によって制御され、貯氷タンク33にシャーベット氷が充填された状態で供給開始の指示(スイッチON)になると、開状態となり、シャーベット氷が無くなるか、供給停止の指示(スイッチOFF)になると閉状態となる。
【0044】
制御装置5は、シャーベット氷の製氷システムの各種装置、機器類を制御する。制御装置5は、CPU(中央処理演算装置)、メモリ、操作部、表示部等を備え、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することで、各種装置、機器類を制御する。制御装置5は、一例として、PLC(programmable logic controller)によって構成することができる。
【0045】
<動作>
次に、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1の動作について、制御装置5による制御処理も交えて説明する。
図3は、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システムの動作フローを示す。
【0046】
<<海水の充填>>
ステップS01では、貯氷タンク33に海水が充填される。制御装置5は、排出用の自動弁38を開状態とし、貯氷タンク33の残海水を排出させる。これにより、繰り返し製氷を行うことで懸念される、海水の塩分濃度上昇を抑制することができる。制御装置5は、貯氷タンク33の水位計341から水位情報を取得し、貯氷タンク33内の海水の水位が所定水位以下(空状態)まで低下すると、排出用の自動弁38を閉状態とする。次に、制御装置5は、海水供給装置の自動弁35を開状態とする。貯氷タンク33への海水は、海水処理装置6側に設けられた海水処理装置のポンプによって圧送することができる。これにより、0〜3%の塩分濃度の殺菌海水(例えば、20℃)が圧送される。上記海水は、海水供給装置のフィルタ36を通過することで、海水に含まれる不純物(例えば、海藻の小片や砂)が捕捉される。制御装置5は、貯氷タンク33の水位計341から水位情報を取得し、貯氷タンク33内の海水の水位が所定水位以上まで上昇すると、排出用の自動弁38を閉状態とする。なお、貯氷タンク33内の塩分濃度を取得してもよく、この場合には、制御装置5は、モータ334をONにして羽333を回転させ、海水を撹拌するようにしてもよい。
【0047】
<<製氷>>
ステップS02では、シャーベット氷が製氷される。制御装置5は、製氷装置のポンプ23をONにし、貯氷タンク33内の海水を汲み上げ、熱交換器26へ圧送する。制御装置5は、熱交換器26へ供給する海水の流量を一定化するため、流量計M1から取得される海水の流量情報に基づいて、熱交換器26へ供給する海水の流量を一定化するよう、製氷装置のポンプ23をインバータ制御する。また、制御装置5は、温度センサT3から取得される海水の温度情報に基づいて、熱交換器26へ供給する海水の温度が既定温度(例えば、0度)に維持されるよう予熱器24を制御する。制御装置5は、海水の温度が既定温度より低い場合、予熱器24の加熱温度を上げる。また、例えば、制御装置5は、海水の温度が既定温度より高い場合、予熱器24の加熱温度を下げる。海水は、製氷装置のフィルタ25を通過することで、凝結した氷や海水に含まれる不純物が補足される。不純物には、海藻の小片、砂、微細な氷粒子が例示される。
【0048】
製氷装置のフィルタ25を通過した海水は、熱交換器26によって、冷凍機4から供給されるブラインと熱交換され、過冷度約2degの過冷却状態まで冷却される。例えば、海水は、熱交換器26によって、−2.5℃から−5℃に冷却される。過冷却状態の海水は、解除器27の超音波により過冷却状態が解除される。なお、制御装置5は、冷凍機4及び解除器27のON/OFFも行うことができる。
【0049】
過冷却状態が解除されることで製氷されたシャーベット氷は、第一供給配管321を流れ、貯氷タンク33に圧送される。制御装置5は、冷凍機4の生産熱量から貯氷タンク33内のIPFを演算し、IPFに応じてモータ334をONにして羽333を回転させる。IPFは、以下の式1、式2、式3によって算出することができる。IPFの算出は、例えば、貯氷タンク33から送り出される海水の温度が所定温度(0℃)になると開始される。まず、式1で積算生成熱量が算出される。式1において、流量は、ブラインの往き配管42に設けられた流量計M1によって取得される。Tbr−outは、ブラインの還り配管43に設けられた温度センサT2によって取得される。Tbr−inは、ブラインの往き配管42に設けられた温度センサT1によって取得される。Cpはブラインの定圧比熱、ρはブラインの密度であり、これらはブラインの物性値として取得される。SCP発生動力は、製氷装置のポンプ23の仕事率であり、tは、時間である。
積算生成熱量=流量×(Tbr−out−Tbr−in)×Cp×ρ×t−予熱量−SCP発生動力×t+前回積算生成熱量・・・・式1
【0050】
式1における予熱量は、式2によって算出される。式2において、TSC−inは、往き配管21の下流側(熱交換器26側)に設けられた温度センサT3によって取得され、Ttank−outは、往き配管21の上流側(貯氷タンク33側)に設けられた温度センサT4によって取得される。Cpwは、水の定圧比熱、ρwは、水の密度であり、これらは水の物性値として取得される。
予熱量=過冷却水流量×(TSC−in−Ttank−out)×Cpw×ρw×t・・・式2
【0051】
式1、式2から算出された積算生成熱量に基づいて、IPFが算出される。式3において、タンク水量は、貯氷タンク33の水量、ρwは、水の定圧比熱、Lは、水の凝固潜熱(貯氷タンク33の水が全て氷になる上で必要となる熱量)である。
IPF=積算生成熱量/(タンク水量×ρw×L)・・・式3
【0052】
制御装置5は、算出したIPFが所定値(例えば、50%)になると、製氷を終了する。具体的には、制御装置5は、製氷装置のポンプ23、冷凍機4、解除器27をOFFとし、製氷を終了する。
【0053】
<<供給>>
ステップS03では、シャーベット氷が供給される。制御装置5は、貯氷タンク33にシャーベット氷が充填された状態で供給開始の指示(例えば、制御装置5の操作部に設けられたスイッチON)を受けると、氷供給装置の自動弁39を開状態とする。その結果、IPF50〜60%であり、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷が第二供給配管322を流れて、供給先に圧送される。また、制御装置5は、水位計341から水位情報を取得し、貯氷タンク33内の海水の水位が所定水位以下(空状態)になるか、供給停止の指示(例えば、制御装置の操作部に設けられたスイッチOFF)を受けると、氷供給装置の自動弁39を閉状態とする。これにより、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷の供給が完了する。ステップS03の工程が完了すると、再度ステップS01の工程が開始される。
【0054】
<効果>
以上説明した実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1によれば、海水を過冷却し、解除することで、製氷されるシャーベット氷の氷結晶粒の直径が、0.01〜0.1mmとなり、氷結晶粒の直径を従来よりも小さくすることができる。また、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1で製氷されたシャーベット氷は、氷結晶粒の表面が曲面状で、粒が揃っており、氷結晶粒同士が凝結し難いため、肥大化しにくい。その結果、シャーベット氷の流動性が従来よりも優れている。そのため、配管等の詰まりも発生しにくく、また、従来よりも小さい動力でシャーベット氷を供給することができる。また、供給装置のポンプ34は、スラリー状の液体を圧送する専用のポンプである必要は無く、水を圧送する汎用のポンプを用いることができる。また、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1によれば、IPFの値を従来よりも大きくすることができる。具体的には、従来の冷却器の内壁面に生成された製氷層をスクレーバで剥離する技術では、IPF25〜30%であるが、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1では、IPF50〜60%とすることができる。そのため、従来よりも貯氷タンク33を小型化することができる。若しくは、従来よりも多くのシャーベット氷を貯氷することができる。
【0055】
また、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1によれば、従来よりも低い塩分濃度のシャーベット氷を製氷することができる。具体的には、従来の冷却器の内壁面に生
成された製氷層をスクレーバで剥離する技術では、対応塩分濃度1.0〜3.5%(3.5%は海水塩分濃度に対応)であった。これに対し、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1では、塩分濃度1%未満のシャーベット氷の製氷も可能であり、任意の塩分濃度のシャーベット氷を製氷することができる。また、従来の冷却器の内壁面に生成された製氷層をスクレーバで剥離する技術では、スクレーバの刃が破損するなど、剥離する際の負荷が原因と考えられる、アイスジェネレータの故障が発生しやすいことが懸念されていた。また、メンテナンスの手間も負担となっていた。これに対し、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1では、剥離する際の負荷も無いことから、システムの故障も少なく、また、メンテナンスも容易である。更に、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1で製氷されたシャーベット氷を水産物などの鮮度保持に用いることで、水産物などの品質を従来よりも長く維持することができる。
【0056】
また、実施形態に係る貯氷タンク33によれば、パンチング板335によってシャーベット氷を撹拌部(軸332、羽333、モータ334)側の領域に収容することで、氷粒子も撹拌部(軸332、羽333、モータ334)側の領域に収容することができる。その結果、氷粒子が製氷システム1に流入することを抑制することができ、熱交換器26での凍結や配管(例えば、往き配管21)内での閉塞の発生を抑えることができる。そのため、安定的な製氷を行うことができる。また、実施形態に係る貯氷タンク33によれば、氷粒子が製氷システム1に流入することを抑制することができるため、製氷中も撹拌することができ、かつ、上記のように安定的な製氷を行うことができる。その結果、製氷の効率を向上することができる。また、製氷中に撹拌を中止し、シャーベット氷を供給する際に撹拌を開始する場合、撹拌開始の際の負荷が大きいことが懸念された。一方、実施形態に係る貯氷タンク33によれば、撹拌開始の際に負荷が大きくなることもない。また、従来技術では、撹拌開始の際の負荷が大きくなることを回避するため、貯氷の際のIPFの値を30%程度に抑える必要があった。一方、本実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1では、IPFを50〜60%にすることができる。そのため、従来よりも貯氷タンクを小型化することができる。若しくは、従来よりも多くのシャーベット氷を貯氷することができる。
【0057】
<変形例>
図4は、変形例に係るシャーベット氷の製氷システムのブロック図を示す。熱交換器26まわりでは、配管の凍結や閉塞が起こり得る。そこで、変形例に係るシャーベット氷の製氷システム1は、熱交換器26の近傍にバイパス配管61が更に設けられ、還り配管22を流れる流量とバイパス配管61を流れる流量を検知し、これらの流量から凍結及び閉塞の検知を行う。そして、凍結が検知された場合、ヒータで加熱し、閉塞が検知された場合には、通水する。なお、実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、説明は割愛する。
【0058】
図4に示すように、バイパス配管61が、熱交換器26の近傍において、往き配管21と還り配管22とを跨ぐように設けられている。また、バイパス配管61に流量計M3が設けられている。更に、ブラインの往き配管42にヒータ45が設けられている。
【0059】
制御装置5は、還り配管22の熱交換器26近傍の流量計M1から過冷却水主流量G1を取得し、バイパス配管61の流量計M3からバイパス流量G2を取得する。制御装置5は、過冷却水主流量G1<定格90%、かつ、G2>定格120%の場合、凍結が発生したと検知する。この場合、制御装置5は、冷凍機4及び製氷装置のポンプ23をOFFにし、ヒータ45をONにし、ヒータ45で加熱されたブラインを熱交換器26に通水させて、凍結部を融解させる。また、制御装置5は、過冷却水主流量G1<定格100%、かつ、G2<定格90%の場合、閉塞が発生したと検知する。この場合、制御装置5は、冷凍機4をOFFにし、過冷却水を通水させて、閉塞部を洗い流す。
【0060】
変形例に係るシャーベット氷の製氷システム1によれば、熱交換器26まわりでの配管の凍結や閉塞を検知することができる。また、仮に、凍結や閉塞が検知された場合でも、凍結や閉塞を解消することができる。
【0061】
<実施例>
実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1で製氷されたシャーベット氷の確認試験について説明する。確認試験では、塩分濃度2.5%の塩水を過冷却度2Kで冷却後、解除して出来たシャーベット氷を、マイクロスコープで観察、撮影し、撮影画像から氷結晶粒の直径を実測した。また、比較例として、従来の掻き取り式の製氷方法を想定して製氷したシャーベット氷を撮影した。具体的には、冷却した金属板に真水をかけて生成された氷を刃物で削り取り、塩水に投入してシャーベット状にしたものを、マイクロスコープで観察、撮影した。なお、本比較例では、冷却した金属板に真水をかけて氷を生成したが、真水をかけて生成された氷と、塩水をかけて生成された氷は、原理的には真水成分だけが氷になることに変わりは無く、同一条件とみて差支えないと考えられる。
【0062】
ここで、
図5は、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1で製氷されたシャーベット氷の撮影画像(倍率500倍)を示す。
図6は、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1で製氷されたシャーベット氷の撮影画像(倍率150倍)を示す。一方、
図7は、従来の掻き取り式の製氷方法を想定して製氷したシャーベット氷の撮影画像(倍率500倍)を示す。
図7の左側は、掻き取り直後、
図7の右側は、掻き取り撹拌後10分経過後を示す。また、
図8は、
図7の右図の拡大図を示す。
【0063】
図5に示すように、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1によれば、何れも表面が曲面状で、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷が製氷されることが確認された。また、
図6に示すように、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1によれば、直径が0.01〜0.1mmの氷結晶粒が均一に分散していることが確認された。一方、比較例では、
図7の左図に示すように、従来の掻き取り式の製氷方法を想定して製氷したシャーベット氷の氷結晶粒は、直径が0.1〜0.2mmであり、結晶粒が不均一に分散していることが確認された。また、
図7の右図、
図8に示すように、従来の掻き取り式の製氷方法を想定して製氷したシャーベット氷の氷結晶粒は、隣接する氷結晶粒同士が結合しやすく、肥大化しやすいことが確認された。以上より、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1で製氷されたシャーベット氷の氷結晶粒は、従来の掻き取り式の製氷方法を想定して製氷したシャーベット氷の氷結晶粒と比較して、直径が小さく、粒が揃っており、表面の曲面も均一で滑らかであることが確認された。直径が小さく、粒が揃っており、表面の曲面も均一で滑らかであることが、氷結晶粒同士が凝結し難く、肥大化しにくい要因と考えられる。
【0064】
なお、上記した種々の内容は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲に於いて可能な限り組合せることができる。例えば、上記実施形態では、製氷工程終了後に供給工程を行う例について説明したが、製氷工程を行いながら供給工程を行うようにしてもよい。運転のバリエーションが増え、利便性が向上する。また、例えば、上記実施形態では、海水からシャーベット氷を製氷し、水産物などの鮮度保持に用いる場合を例に説明したが、真水からシャーベット氷を製氷し、野菜などの鮮度保持に用いるようにしてもよい。