(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンのクランクシャフトおよび動力伝達対象に連結されるプレート部と、前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤに噛合するリングギヤ部とを含み、前記エンジンからの動力を前記動力伝達対象に伝達するドライブプレートにおいて、
前記プレート部には、互いに同一の形状を有する複数の剛性調整穴が周方向に間隔をおいて配設されており、
前記剛性調整穴の輪郭線は、前記プレート部の軸心を通る中心線に関して対称に形成され、前記輪郭線の幅方向における端部と前記中心線に平行な第1接線との第1接点を含む外側に凸の第1曲線部と、前記軸心側に凸の曲線であって前記中心線と交差する第2曲線部と、前記第1曲線部と前記第2曲線部との双方に接して該第2曲線部と共に前記輪郭線の内周部を規定する直線部とを含み、前記中心線と直交する方向における前記直線部の長さをL1とし、前記中心線と前記第1接線との距離をL2としたときに、
0<L1/L2≦0.3
を満たすように構成され、
前記直線部は、前記第1曲線部と前記プレート部の前記軸心を通る第2接線との第2接点よりも前記中心線側かつ前記第1曲線部が前記中心線に直交する第3接線と接する際の第3接点よりも前記第2接点側で前記第1曲線部に接し、
前記第1および第2曲線部は、円弧により構成され、前記第2曲線部の曲率半径は、前記第1曲線部の曲率半径よりも大きく、
前記輪郭線の外周部は、前記プレート部の前記軸心に向けて窪むように形成されており、前記輪郭線の窪んだ外周部の外側に前記動力伝達対象への締結に用いられる締結穴が形成されていることを特徴とするドライブプレート。
エンジンのクランクシャフトおよび動力伝達対象に連結されるプレート部と、前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤに噛合するリングギヤ部とを含み、前記エンジンからの動力を前記動力伝達対象に伝達するドライブプレートにおいて、
前記プレート部には、互いに同一の形状を有する複数の剛性調整穴が周方向に間隔をおいて配設されており、
前記剛性調整穴の輪郭線は、前記プレート部の軸心を通る中心線に関して対称に形成され、前記輪郭線の幅方向における端部と前記中心線に平行な第1接線との第1接点を含む外側に凸の第1曲線部と、前記第1曲線部に接すると共に前記中心線と交差して前記輪郭線の内周部を規定する曲線であって前記軸心側に凸の第2曲線部とを含み、
前記第1および第2曲線部は、円弧により構成され、前記第2曲線部の曲率半径は、前記第1曲線部の曲率半径よりも大きく、
前記第2曲線部は、前記第1曲線部と前記プレート部の前記軸心を通る第2接線との第2接点よりも前記中心線側かつ前記第1曲線部が前記中心線に直交する第3接線と接する際の第3接点よりも前記第2接点側で前記第1曲線部に接し、
前記輪郭線の外周部は、前記プレート部の前記軸心に向けて窪むように形成されており、前記輪郭線の窪んだ外周部の外側に前記動力伝達対象への締結に用いられる締結穴が形成されていることを特徴とするドライブプレート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなドライブプレートは、その軸心がクランクシャフトの軸心に対して極僅かに傾いた状態で当該クランクシャフトに取り付けられることもあり、このような状態で回転するドライブプレートには偏芯荷重が作用する。また、ドライブプレートには、主にトルクコンバータの構成部材(フロントカバー)の膨縮(バルーニング)等に起因して、軸方向のスラスト荷重が作用する。従って、ドライブプレートは、取付誤差やトルクコンバータの構成部材の変形等を吸収できるように、偏芯荷重や軸方向の荷重に対する充分な可撓性を有していなければならず、そのためには、ドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性を高くなり過ぎないように抑える必要がある。その一方で、エンジンからのトルクはドライブプレートを介してトルクコンバータ等の動力伝達対象に伝達されることから、ドライブプレートは、エンジンからのトルクによる捩りモーメントに耐えうる充分な捩り剛性を有していなければならない。
【0006】
しかしながら、上記従来のドライブプレートのように、互いに異なる形状をもった第1および第2の剛性調整用付加穴を交互に設けた場合、第1の剛性調整用付加穴の縁部における応力を低減させることができたとしても、ドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性が低下し過ぎてしまうおそれがある。更に、上記従来のドライブプレートでは、偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性(可撓性)を適正範囲に保った場合、第1の剛性調整用付加穴の縁部における応力を低減させ得なくなってしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、ドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する可撓性を適正に保ちつつ当該ドライブプレートの捩り剛性を良好に確保することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるドライブプレートは、
エンジンのクランクシャフトおよび動力伝達対象に連結されるプレート部と、前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤに噛合するリングギヤ部とを含み、前記エンジンからの動力を前記動力伝達対象に伝達するドライブプレートにおいて、
前記プレート部には、互いに同一の形状を有する複数の剛性調整穴が周方向に間隔をおいて配設されており、
前記剛性調整穴の輪郭線は、前記プレート部の軸心を通る中心線に関して対称に形成され、前記輪郭線の幅方向における端部と前記中心線に平行な第1接線との第1接点を含む外側に凸の第1曲線部と、前記軸心側に凸の曲線であって前記中心線と交差する凸の第2曲線部と、前記第1曲線部と前記第2曲線部との双方に接して該第2曲線部と共に前記輪郭線の内周部を規定する直線部とを含み、前記中心線と直交する方向における前記直線部の長さをL1とし、前記中心線と前記第1接線との距離をL2としたときに、
0<L1/L2≦0.3
を満たすように構成されることを特徴とする。
【0009】
このドライブプレートのように、剛性調整穴の輪郭線を構成する第1曲線部と第2曲線部との間の直線部の長さL1を中心線と第1接線との距離L2の30%以下にすることで、ドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性を高くなり過ぎないように抑えつつ、ドライブプレートに捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴の第1曲線部付近における応力を良好に低下させることができる。従って、このドライブプレートでは、偏芯荷重や軸方向の荷重に対する可撓性を適正に保ちつつ捩り剛性を良好に確保することが可能となる。
【0010】
本発明による他のドライブプレートは、
エンジンのクランクシャフトおよび動力伝達対象に連結されるプレート部と、前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤに噛合するリングギヤ部とを含み、前記エンジンからの動力を前記動力伝達対象に伝達するドライブプレートにおいて、
前記プレート部には、互いに同一の形状を有する複数の剛性調整穴が周方向に間隔をおいて配設されており、
前記剛性調整穴の輪郭線は、前記プレート部の軸心を通る中心線に関して対称に形成され、前記輪郭線の幅方向における端部と前記中心線に平行な第1接線との第1接点を含む外側に凸の第1曲線部と、前記第1曲線部に接すると共に前記中心線と交差して前記輪郭線の内周部を規定する曲線であって前記軸心側に凸の第2曲線部とを含むことを特徴とする。
【0011】
このドライブプレートのように、剛性調整穴の輪郭線を構成する第1曲線部と第2曲線部との間に直線部を設けないことにより、ドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性を高くなり過ぎないように抑えつつ、ドライブプレートに捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴の第1曲線部付近における応力をより極めて良好に低下させることができる。従って、このドライブプレートでは、偏芯荷重や軸方向の荷重に対する可撓性を適正に保ちつつ捩り剛性を極めて良好に確保することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るドライブプレート1を示す平面図であり、
図2は、
図1のII−II線に沿った断面図である。これらの図面に示すドライブプレート1は、車両に搭載された原動機としての図示しないエンジン(内燃機関)から出力される動力を動力伝達対象であるトルクコンバータや流体継手といった図示しない流体伝動装置に伝達するのに用いられるものである。ドライブプレート1は、図示するように、エンジンのクランクシャフトおよび流体伝動装置に連結されるプレート部2と、エンジンをクランキングする図示しないセルモータのピニオンギヤ(駆動ギヤ)PG(
図2参照)に噛合可能な環状のリングギヤ部3とを含む。
【0015】
ドライブプレート1のプレート部2は、例えば冷間圧延鋼板といった可撓性を有する板材(金属板)をプレス加工することにより形成される。図示するように、プレート部2は、中心部に形成された平坦な環状の第1連結部20と、第1曲げ部23aを介して第1連結部20に連なる環状の傾斜部24と、第2曲げ部23bを介して傾斜部24に連なる平坦な環状の第2連結部25と、第2連結部25の外周からドライブプレート1(プレート部2)の軸方向に延びる短尺の筒状部26とを有する。
【0016】
第1連結部20には、その中心に位置するように中心穴21が形成されており、当該中心穴21の周囲には、複数(本実施形態では、8個)の第1連結穴(締結穴)22が等間隔に配設されている。傾斜部24は、
図2に示すように内側の第1曲げ部23aから外側の第2曲げ部23b側(径方向外側)に向かうにつれて流体伝動装置に近接するように傾斜する。これにより、第2連結部25は、第1連結部20よりも流体伝動装置に近接する(エンジンから離間する)ように形成される。筒状部26は、第2連結部25(プレート部2)の外周から片持ち状に延びるようにプレス加工により形成される。
【0017】
図1に示すように、第2連結部25には、それぞれ複数(本実施形態では、それぞれ6個)の第2連結穴(締結穴)27および剛性調整穴10が周方向に一定の間隔(本実施形態では60°)をおいて(等間隔に)形成されている。複数の剛性調整穴10は、流体伝動装置のフロントカバーの変形等を吸収できるように、ドライブプレート1すなわちプレート部2の偏芯荷重(曲げ荷重)や軸方向の荷重に対する剛性が高くなり過ぎるのを抑制するために設けられるものであり、互いに同一の形状(輪郭線)を有する。
【0018】
リングギヤ部3は、それぞれ例えばインボリュート曲線により構成された歯面および概ね平坦な歯先面を含むと共にセルモータのピニオンギヤPGの歯と噛合可能な複数の外歯30を有する。リングギヤ部3は、例えば既存のリングギヤ製造設備を利用してプレート部2とは別に製造され、プレート部2の筒状部26の外周面に溶接により接合される。これにより、リングギヤ部3は、プレート部2の外周側でドライブプレート1の軸方向に延在する。なお、本実施形態において、ピニオンギヤPGの各歯は、軸心と平行に延びる歯筋を有し、ピニオンギヤPGは、図示しないセルモータのロータに連結されると共にエンジンの始動に際し、例えば
図2に示すようにエンジン側からドライブプレート1(流体伝動装置側)に向けて移動させられる。なお、リングギヤ部3は、プレート部2と別体のものに限られず、例えばプレス加工等によりプレート部2と一体に成形されるものであってもよい。
【0019】
そして、エンジンのクランクシャフトとプレート部2の第1連結部20とは、第2連結部25が流体伝動装置側に位置するように各第1連結穴22に挿通されたボルトにより互いに締結される。また、プレート部2の第2連結部25の流体伝動装置側の面には、当該流体伝動装置に固定されたセットブロック5の端面が第2連結穴27を覆うように当接させられ、第2連結部25とセットブロック5とは、各第2連結穴27に挿通されたボルトにより互いに締結される。これにより、ドライブプレート1を介してエンジンと流体伝動装置とが連結され、エンジンから出力される動力を動力伝達対象である流体伝動装置に伝達することが可能となる。また、ピニオンギヤPGとリングギヤ部3とが噛合した状態でセルモータを作動させることにより、エンジンをクランキングすることができる。
【0020】
続いて、
図3を参照しながら、ドライブプレート1のプレート部2に形成された剛性調整穴10について説明する。
【0021】
図3に示すように、剛性調整穴10の輪郭線100は、プレート部2(ドライブプレート1)の軸心Oを通る中心線CLに関して左右対称に形成され、当該輪郭線100の幅方向における端部と中心線CLと平行に延びる第1接線T1aまたはT1bとの第1接点c1aまたはc1bを含む外側(剛性調整穴10の重心位置に対して外側)に凸の第1曲線部101a,101bと、第1曲線部101aおよび101bに接すると共に中心線CLと交差して輪郭線100の内周部を規定する曲線であって軸心O側に凸の第2曲線部102とを含む。また、輪郭線100は、第2曲線部102の径方向外側に位置する第3曲線部103と、第1曲線部101aまたは101bと第3曲線部103との双方に接して第1曲線部101aおよび101bの一部並びに第3曲線部103と共に輪郭線100の外周部を規定する第4曲線部104a,104bとを含む。
【0022】
本実施形態において、第1曲線部101a,101bは、中心に対して外側に凸となる円弧により構成され、互いに同一の曲率半径を有する。また、第2曲線部102は、第1曲線部101a,101bよりも大きい曲率半径を有する円弧により構成される。第2曲線部102は、第1曲線部101aとプレート部2の軸心Oを通る第2接線T2aとの第2接点c2aよりも中心線CL側かつ第1曲線部101a(図中二点鎖線で示す延長線)が中心線CLに直交する軸心O側の第3接線T3と接する際の第3接点c3aよりも第2接点c2a側に位置する接点cpaで第1曲線部101aに接する。更に、第2曲線部102は、第1曲線部101bとプレート部2の軸心Oを通る第2接線T2bとの第2接点c2bよりも中心線CL側かつ第1曲線部101b(図中二点鎖線で示す延長線)が中心線CLに直交する軸心O側の第3接線T3と接する際の第3接点c3bよりも第2接点c2b側に位置する接点cpbで第1曲線部101bに接する。
【0023】
また、本実施形態において、第3曲線部103は、例えば第2曲線部102よりも大きい曲率半径を有する軸心Oとは反対側すなわち径方向外側に凸の円弧により構成され、中心線CLに直交すると共に上記第3接線T3よりも径方向外側で第1曲線部101a,101bに接する第4接線T4よりも径方向内側に位置する。更に、本実施形態において、第4曲線部104a,104bは、第1曲線部101a,101bよりも小さい曲率半径を有する軸心O側に凸の円弧により構成される。第4曲線部104aは、第1曲線部101aと第4接線T4との第4接点c4aよりも中心線CL側で当該第1曲線部101aに接し、第4曲線部104bは、第1曲線部101bと第4接線T4との第4接点c4bよりも中心線CL側で当該第1曲線部101bに接する。これにより、輪郭線100(剛性調整穴10)の外周部は、プレート部2の軸心Oに向けて窪むことになる。そして、
図1に示すように、流体伝動装置への締結に用いられる第2連結穴27は、その中心が中心線CL上に位置するように輪郭線100の窪んだ外周部すなわち第3曲線部103の径方向外側(剛性調整穴10の重心や軸心Oに対して外側)に形成される。
【0024】
図4に、上述のドライブプレート1を含む複数のドライブプレートに偏芯荷重を作用させた際、スラスト荷重を作用させた際、および捩りモーメントを作用させた際に発生する応力の解析結果を示す。本発明者らによる応力解析は、有限要素法に基づく数値解析法を用いたものである。かかる解析に際して、本発明者らは、上記ドライブプレート1のモデルを用意すると共に、上記輪郭線100とは異なる輪郭線100Bを有する剛性調整穴10Bを複数含む
図5に示すようなドライブプレート1Bについて複数のモデルを用意した。
図5に示すドライブプレート1Bは、剛性調整穴10Bの構成を除いて、上記ドライブプレート1と同一の諸元を有するものである。
【0025】
ここで、
図6を参照しながら、ドライブプレート1Bに設けられた剛性調整穴10Bの輪郭線100Bについて説明する。剛性調整穴10Bの輪郭線100Bは、プレート部2(ドライブプレート1)の軸心Oを通る中心線CLに関して左右対称に形成され、当該輪郭線100Bの幅方向における端部と中心線CLと平行に延びる第1接線T1aまたはT1bとの第1接点c1aまたはc1bを含む外側(剛性調整穴10Bの重心位置に対して外側)に凸の第1曲線部101a,101bと、軸心O側に凸の曲線であって中心線CLと交差する第2曲線部102Bと、第1曲線部101aまたは101bと第2曲線部102Bとの双方に接して当該第2曲線部102Bと共に輪郭線100の内周部を規定する直線部110a,110bとを含む。また、輪郭線100Bは、第2曲線部102Bの径方向外側に位置する第3曲線部103と、第1曲線部101aまたは101bと第3曲線部103との双方に接して第1曲線部101aおよび101bの一部並びに第3曲線部103と共に輪郭線100の外周部を規定する第4曲線部104a,104bとを含む。
【0026】
輪郭線100Bの第1曲線部101a,101bは、中心に対して外側に凸となる円弧により構成され、上記剛性調整穴10の輪郭線100に含まれるものと同一かつ互いに同一の曲率半径を有する。そして、第2曲線部102Bは、第1曲線部101a,101bよりも大きい曲率半径を有する円弧により構成される。また、直線部110aは、第1曲線部101aとプレート部2の軸心Oを通る第2接線T2aとの第2接点c2aよりも中心線CL側かつ第1曲線部101a(図中二点鎖線で示す延長線)が中心線CLに直交する軸心O側の第3接線T3と接する際の第3接点c3aよりも第2接点c2a側に位置する接点cxaで第1曲線部101aに接し、当該接点cxaよりも中心線CL側に位置する接点cyaで第2曲線部102Bに接する。更に、直線部110bは、第1曲線部101bとプレート部2の軸心Oを通る第2接線T2bとの第2接点c2bよりも中心線CL側かつ第1曲線部101b(図中二点鎖線で示す延長線)が中心線CLに直交する軸心O側の第3接線T3と接する際の第3接点c3bよりも第2接点c2b側に位置する接点cxbで第1曲線部101bに接し、当該接点cxbよりも中心線CL側に位置する接点cybで第2曲線部102Bに接する。
【0027】
また、輪郭線100Bの第3曲線部103は、上記剛性調整穴10の輪郭線100に含まれるものと同一かつ例えば第2曲線部102Bよりも大きい曲率半径を有する軸心Oとは反対側すなわち径方向外側に凸の円弧により構成され、中心線CLに直交すると共に上記第3接線T3よりも径方向外側で第1曲線部101a,101bに接する第4接線T4よりも径方向内側に位置する。更に、輪郭線100Bの第4曲線部104a,104bは、上記剛性調整穴10の輪郭線100に含まれるものと同一かつ第1曲線部101a,101bよりも小さい曲率半径を有する軸心O側に凸の円弧により構成される。第4曲線部104aは、第1曲線部101aと第4接線T4との第4接点c4aよりも中心線CL側で当該第1曲線部101aに接し、第4曲線部104bは、第1曲線部101bと第4接線T4との第4接点c4bよりも中心線CL側で当該第1曲線部101bに接する。
【0028】
上述のようなドライブプレート1Bについて、本発明者らは、中心線CLと直交する方向(
図6における左右方向)における直線部110a,110bの長さ(中心線CLと直交する方向における接点cxaまたはcxbと接点cyaまたはcybとの距離)を“L1”とし、中心線CLと第1接線T1a,T1bとの距離を“L2”としたときに、長さL1およびL2の比率γ=L1/L2を9%、13%、15%、17%、22%、26%、29%、34%、37%、40%、50%、および75%とした合計12個のモデルを用意した。なお、上記ドライブプレート1は、比率γ=0%となるモデルに対応する。
【0029】
そして、本発明者らは、クランクシャフトの軸心に対して極僅か(例えば0.5°程度)に軸心が傾いた状態で当該クランクシャフトに取り付けられたドライブプレートに対して予め定められた回転トルクが伝達された際に偏芯荷重によって当該ドライブプレートで発生する最大応力を数値解析によりモデルごとに求めた(
図4における□印参照)。また、本発明者らは、エンジンおよび流体伝動装置に締結されたドライブプレートの各第2締結穴の周辺(セットブロックとの当接面)に予め定められた軸方向のスラスト荷重が加えられた際に当該ドライブプレートで発生する最大応力を数値解析によりモデルごとに求めた(
図4における△印参照)。更に、エンジンおよび流体伝動装置に締結されたドライブプレートに予め定められた非常に大きい回転トルク(例えば1000〜1500N・m)が伝達された際に捩りモーメントによって当該ドライブプレートで発生する最大応力を数値解析によりモデルごとに求めた(
図4における○印参照)。
【0030】
図4に示すように、偏芯荷重によってドライブプレートで発生する最大応力は、上述の複数(合計13個)のモデル間で概ね同一の値となった。同様に、スラスト荷重によってドライブプレートで発生する最大応力も、上述の複数(合計13個)のモデル間で概ね同一の値となった。これに対して、捩りモーメントによってドライブプレートで発生する最大応力は、
図4および
図7に示すように、上記比率γが小さいほど小さくなり、第1曲線部101a,101bと第2曲線部102との間に直線部が設けられていない輪郭線100を有する剛性調整穴10を含むドライブプレート1のモデルで最小となった。なお、ドライブプレートの回転方向が
図3および
図6における矢印方向である場合、捩りモーメントによってドライブプレートで発生する応力は、プレート部2の流体伝動装置側の面では第1曲線部101aの内周側領域(
図3および
図6におけるA部)で最大となり、プレート部2のエンジン側の面では第1曲線部101bの外周側領域(
図3および
図6におけるB部)で最大となった。
【0031】
図4および
図7に示す解析結果より、ドライブプレート1の剛性調整穴10のように、第1曲線部101a,101bと第2曲線部102との間に直線部を設けないことで、ドライブプレート1の偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性を高くなり過ぎないように抑えつつ、ドライブプレート1に捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴10の第1曲線部101a,101b付近における応力を極めて良好に低下させ得ることが理解されよう。すなわち、ドライブプレート1では、偏芯荷重や軸方向の荷重に対する可撓性を適正に保ちつつ捩り剛性を極めて良好に確保することが可能となる。
【0032】
また、ドライブプレート1の剛性調整穴10(輪郭線100)において、第2曲線部102は、第1曲線部101aまたは101bと第2接線T2aまたはT2bとの第2接点c2a,c2bよりも中心線CL側かつ第1曲線部101a,101bが第3接線T3と接する際の第3接点c3a、c3bよりも第2接点c2a,c2b側に位置する接点cpa,cpbで第1曲線部101a,101bに接する。これにより、剛性調整穴10の開口面積を適正化して(開口面積が大きくなりすぎないようにして)ドライブプレート1の偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性が低くなり過ぎないようにしつつ、ドライブプレート1に捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴10の第1曲線部101a、101b付近における応力を極めて良好に低下させることが可能となる。ただし、剛性調整穴10(輪郭線100)は、第2曲線部102が第1曲線部101a,101bとプレート部2の軸心Oを通る第2接線T2a,T2bとの第2接点c2a,c2bで第1曲線部101a,101bに接するように構成されてもよい。
【0033】
ところで、本発明者らの研究によれば、上述のような剛性調整穴10を含むドライブプレート1の捩り剛性は、充分に高く(最大応力が充分に小さく)、最大応力がドライブプレート1におけるものより10%程度大きくなっても実用上支障はなく、ドライブプレートの捩り剛性が実用上充分に確保されることが判明している。そして、
図6に示すような剛性調整穴10Bを含むドライブプレート1Bにおいて、上記比率γが30%以下になるように剛性調整穴10Bの輪郭線100Bを構成すれば、
図7に示すように、当該ドライブプレート1Bにおける最大応力を上記ドライブプレート1における最大応力の10%増し(1.1倍)の値である許容値よりも小さくすることができる。更に、
図7からわかるように、上記比率γが15%以下になるように剛性調整穴10Bの輪郭線100Bを構成すれば、ドライブプレート1Bにおける最大応力を上記ドライブプレート1における最大応力の5%増し(1.05倍)程度の値にすることができる。
【0034】
従って、ドライブプレート1Bでは、輪郭線100B(剛性調整穴10B)の第1曲線部101a,101bと第2曲線部102Bとの間の直線部110a,110bの中心線CLと直交する方向における長さL1を中心線CLと第1接線T1a,T1bとの距離L2の30%以下、より好ましくは15%以下にすることで、偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性が低くなり過ぎないようにしつつ、捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴10Bの第1曲線部101a,101b付近における応力を良好に低下させることが可能となる。すなわち、ドライブプレート1Bでは、剛性調整穴10Bの輪郭線100Bを、0<γ=L1/L2≦0.3、より好ましくは、0<γ=L1/L2≦0.15を満たすように構成することで、偏芯荷重や軸方向の荷重に対する可撓性を適正に保ちつつ捩り剛性を良好に確保することができる。
【0035】
また、ドライブプレート1Bの剛性調整穴10B(輪郭線100B)において、直線部110a,110bは、第1曲線部101aまたは101bと第2接線T2aまたはT2bとの第2接点c2a,c2bよりも中心線CL側かつ第1曲線部101a,101bが第3接線T3と接する際の第3接点c3a、c3bよりも第2接点c2a,c2b側に位置する接点cxa,cxbで第1曲線部101a,101bに接する。これにより、剛性調整穴10Bの開口面積を適正化して(開口面積が大きくなりすぎないようにして)ドライブプレート1Bの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性が低くなり過ぎないようにしつつ、ドライブプレート1Bに捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴10Bの第1曲線部101a、101b付近における応力を良好に低下させることが可能となる。ただし、剛性調整穴10B(輪郭線100B)は、直線部110a,110bが第1曲線部101a,101bとプレート部2の軸心Oを通る第2接線T2a,T2bとの第2接点c2a,c2bで第1曲線部101a,101bに接するように構成されてもよい。
【0036】
なお、上述のドライブプレート1,1Bにおいて、剛性調整穴10,10Bの輪郭線100,100Bに含まれる第1曲線部101a,101bは円弧により構成され、第2曲線部102,102Bは第1曲線部101a,101bよりも大きい曲率半径を有する円弧により構成されるが、これに限られるものではない。すなわち、剛性調整穴10,10Bの輪郭線100,100Bに含まれる第1曲線部101a,101bや第2曲線部102,102Bは、インボリュート曲線や、エピサイクロイド、エピトロコイドあるいはサイクロイドといったトロコイド曲線、n次曲線等により構成されてもよい。
【0037】
また、ドライブプレート1,1Bにおいて、剛性調整穴10,10Bの輪郭線100,100Bの外周部は、プレート部2の軸心Oに向けて窪むように形成され、プレート部2には、輪郭線100,100Bの窪んだ外周部の径方向外側(剛性調整穴10の重心や軸心Oに対して外側)に流体伝動装置への締結に用いられる第2連結穴27が形成されるが、これに限られるものではない。すなわち、剛性調整穴10,10Bの輪郭線100,100Bの外周部は、例えば、プレート部2の軸心Oとは反対側に凸となるように形成されたり、第4接線T4により規定されたりしてもよく、第2連結穴27は、剛性調整穴10,10Bの外周部の径方向外側以外の箇所に形成されてもよい。
【0038】
以上説明したように、本発明によるドライブプレートは、エンジンのクランクシャフトおよび動力伝達対象に連結されるプレート部と、前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤに噛合するリングギヤ部とを含み、前記エンジンからの動力を前記動力伝達対象に伝達するドライブプレートにおいて、前記プレート部には、互いに同一の形状を有する複数の剛性調整穴が周方向に間隔をおいて配設されており、前記剛性調整穴の輪郭線は、前記プレート部の軸心を通る中心線に関して対称に形成され、前記輪郭線の幅方向における端部と前記中心線に平行な第1接線との第1接点を含む外側に凸の第1曲線部と、前記軸心側に凸の曲線であって前記中心線と交差する第2曲線部と、前記第1曲線部と前記第2曲線部との双方に接して該第2曲線部と共に前記輪郭線の内周部を規定する直線部とを含み、前記中心線と直交する方向における前記直線部の長さをL1とし、前記中心線と前記第1接線との距離をL2としたときに、
0<L1/L2≦0.3
を満たすように構成されることを特徴とする。
【0039】
このドライブプレートのプレート部には、互いに同一の形状を有する複数の剛性調整穴が周方向に間隔をおいて配設される。各剛性調整穴の輪郭線は、プレート部の軸心を通る中心線に関して対称に形成され、輪郭線の幅方向における端部と中心線に平行な第1接線との第1接点を含む外側に凸の第1曲線部と、軸心側に凸の曲線であって中心線と交差する第2曲線部と、第1曲線部と第2曲線部との双方に接して当該第2曲線部と共に輪郭線の内周部を規定する直線部とを含む。そして、各剛性調整穴の輪郭線は、中心線と直交する方向における直線部の長さをL1とし、中心線と第1接線との距離をL2としたときに、0<L1/L2≦0.3を満たすように構成される。すなわち、本発明者らの研究によれば、剛性調整穴の輪郭線を構成する第1曲線部と第2曲線部との間の直線部の長さL1を中心線と第1接線との距離L2の30%以下にすることで、ドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性を高くなり過ぎないように抑えつつ、ドライブプレートに捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴の第1曲線部付近における応力を良好に低下させ得ることが判明している。従って、このドライブプレートでは、偏芯荷重や軸方向の荷重に対する可撓性を適正に保ちつつ捩り剛性を良好に確保することが可能となる。
【0040】
また、前記直線部は、前記第1曲線部と前記プレート部の前記軸心を通る第2接線との第2接点、または当該第2接点よりも前記中心線側かつ前記第1曲線部が前記中心線に直交する第3接線と接する際の第3接点よりも前記第2接点側で前記第1曲線部に接してもよい。これにより、剛性調整穴の開口面積を適正化してドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性が低くなり過ぎないようにしつつ、ドライブプレートに捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴の第1曲線部付近における応力を良好に低下させることが可能となる。
【0041】
更に、前記剛性調整穴の輪郭線は、0<L1/L2≦0.15を満たすように構成されてもよい。これにより、ドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性を高くなり過ぎないように抑えつつ、ドライブプレートに捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴の第1曲線部付近における応力をより一層低下させることが可能となる。
【0042】
また、前記第1および第2曲線部は、円弧により構成されてもよく、前記第2曲線部の曲率半径は、前記第1曲線部の曲率半径よりも大きくてもよい。
【0043】
本発明による他のドライブプレートは、エンジンのクランクシャフトおよび動力伝達対象に連結されるプレート部と、前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤに噛合するリングギヤ部とを含み、前記エンジンからの動力を前記動力伝達対象に伝達するドライブプレートにおいて、前記プレート部には、互いに同一の形状を有する複数の剛性調整穴が周方向に間隔をおいて配設されており、前記剛性調整穴の輪郭線は、前記プレート部の軸心を通る中心線に関して対称に形成され、前記輪郭線の幅方向における端部と前記中心線に平行な第1接線との第1接点を含む外側に凸の第1曲線部と、前記第1曲線部に接すると共に前記中心線と交差して前記輪郭線の内周部を規定する曲線であって前記軸心側に凸の第2曲線部とを含むことを特徴とする。
【0044】
このドライブプレートのプレート部には、互いに同一の形状を有する複数の剛性調整穴が周方向に間隔をおいて配設される。そして、各剛性調整穴の輪郭線は、プレート部の軸心を通る中心線に関して対称に形成され、輪郭線の幅方向における端部と中心線に平行な第1接線との第1接点を含む外側に凸の第1曲線部と、第1曲線部に接すると共に中心線と交差して輪郭線の内周部を規定する曲線であって軸心側に凸の第2曲線部とを含む。すなわち、本発明者らの研究によれば、剛性調整穴の輪郭線を構成する第1曲線部と第2曲線部との間に直線部を設けないことにより、ドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性を高くなり過ぎないように抑えつつ、ドライブプレートに捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴の第1曲線部付近における応力をより極めて良好に低下させ得ることが判明している。従って、このドライブプレートでは、偏芯荷重や軸方向の荷重に対する可撓性を適正に保ちつつ捩り剛性を極めて良好に確保することが可能となる。
【0045】
また、前記第2曲線部は、前記第1曲線部と前記プレート部の前記軸心を通る第2接線との第2接点、または当該第2接点よりも前記中心線側かつ前記第1曲線部が前記中心線に直交する第3接線と接する際の第3接点よりも前記第2接点側で前記第1曲線部に接してもよい。これにより、剛性調整穴の開口面積を適正化してドライブプレートの偏芯荷重や軸方向の荷重に対する剛性が低くなり過ぎないようにしつつ、ドライブプレートに捩りモーメントが作用した際の各剛性調整穴の第1曲線部付近における応力を極めて良好に低下させることが可能となる。
【0046】
更に、前記第1および第2曲線部は、円弧により構成されてもよく、前記第2曲線部の曲率半径は、前記第1曲線部の曲率半径よりも大きくてもよい。
【0047】
そして、前記輪郭線の外周部は、前記プレート部の前記軸心に向けて窪むように形成されてもよく、前記輪郭線の窪んだ外周部の外側に前記動力伝達対象への締結に用いられる締結穴が形成されてもよい。
【0048】
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。