(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0012】
図1は実施形態に係る打音検査用打撃装置100を示す図である。
図2は打音検査用打撃装置100の付勢部30の構造の一例を示す断面図である。
図3(a)〜(c)は実施形態に係る打音検査用打撃装置100の一連の動作を示す図である。
図4(a)〜(c)は付勢部30の一連の動作を示す断面図である。
なお、
図1及び
図3各図において、付勢部30以外の部分については、部分的に断面図として内部構造を示しており、付勢部30については、その衝突部材31の一部分を除き、内部構造を示さない正面図となっている。
また、
図2及び
図4各図において、三方弁38及びガス源39についてはブロック構成を示している。
【0013】
本実施形態に係る打音検査用打撃装置100は、検査対象物(図示略)に衝突して打撃を加える打撃部材10と、打撃部材10を直進方向に案内する案内部20と、打撃部材10を直進方向(矢印A方向および矢印B方向)における一方向(矢印A方向)へ付勢し、打撃部材10を検査対象物に衝突させる付勢部30と、を備える。ここで、
図1に示す矢印A方向と矢印B方向とは、互いに反対方向である。
打撃部材10は、付勢部30によって付勢された後、案内部20により案内されて一方向(矢印A方向)に移動して、検査対象物を打撃する。
検査対象物は、特に限定されないが、例えば、橋梁やトンネル壁面といった設置構造物などであることが挙げられる。検査対象物の材料は、特に限定されないが、検査対象物は、例えばコンクリート構造物であることが挙げられる。
なお、以下の説明において、打撃の際に打撃部材10が移動する方向(矢印A方向)を先端側と称し、その反対方向を基端側と称する場合がある。
以下、詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、打撃部材10は、例えば、案内部20により直進方向に案内される棒状の被案内部11と、被案内部11の先端側に設けられていて検査対象物を打撃する打撃チップ12と、打撃部材10に加わる力の大きさを検出する力センサ13と、を有している。
【0015】
より具体的には、被案内部11は、例えば、円柱形状などの棒状の第1部分111と、第1部分111の基端側に設けられている第2部分112と、を有している。
【0016】
第1部分111は、以下に説明する突出部113の形成箇所を除き、当該第1部分111の長手方向に亘ってほぼ一定の外径に形成されている。
【0017】
第1部分111の長手方向における中間部の外周面には、外方に向けて突出している突出部113が設けられている。突出部113は、例えば、フランジ状に形成されている。
【0018】
第2部分112は、第1部分111よりも小径に形成され、且つ、被案内部11の基端部を構成している。
より具体的には、例えば、第2部分112は、その基端側に向けて徐々に縮径する区間を有する棒状の形状をなしている。例えば、第2部分112の先端の外径は、第1部分111の外径と同等に設定されている。そして、第2部分112において第1部分111に対して隣接している所定の長さの区間は、基端側に向けて徐々に縮径している。
第2部分112の基端側の面112aは、被案内部11の長手方向に対して直交する平面状に形成されている。
【0019】
打撃チップ12は、先細形状(先端に向けて縮径する形状)に形成されており、その先端により検査対象物を打撃する。
より具体的には、例えば、打撃チップ12は、円柱状の基端部121と、円錐台状に形成されているとともに基端部121の先端側に設けられている先端部122と、を備えている。打撃チップ12の先端面12aは、被案内部11の長手方向に対して直交する平面状に形成されている。
例えば、基端部121の基端側の部分には雄ねじ(図示略)が形成されており、この雄ねじが力センサ13に螺入されることによって、打撃チップ12が力センサ13の先端側に固定されている。
【0020】
力センサ13は、打撃部材10が検査対象物に衝突した際に打撃部材10に加わる力の大きさを検出するものである。力センサ13の方式は、特に限定されないが、力センサ13は、例えば、圧電素子等を備えて構成された歪みセンサであることが挙げられる。力センサ13は、打撃チップ12と被案内部11との間に設けられている。
力センサ13は、本体部131と、本体部131における基端側の部分に形成された端子部132と、を備えている。
本体部131は、例えば、円柱形状に形成されており、その先端側の面は打撃チップ12からの圧力を受ける受圧面133となっている。受圧面133は、平面状に形成されており、打撃チップ12における基端側の面123は、受圧面133に対して面接触している。
【0021】
打撃部材10を構成する被案内部11、力センサ13および打撃チップ12は、互いに同軸上に配置されており、一体の棒状部材を構成している。
【0022】
力センサ13の端子部132には、力センサ13による検出信号を送信する信号配線50の一端が電気的に接続されている。
被案内部11の第1部分111には、信号配線50を当該第1部分111の先端から基端側へ通すための通し孔11aと、通し孔11aと第1部分111の周囲の空間とを相互に連通させる導出孔11bとが形成されている。
また、案内部20の後述する筒状部21において、導出孔11bと対応する箇所には、筒状部21の内部空間と外部空間とを相互に連通させる導出孔21bが形成されている。
信号配線50は、通し孔11a、導出孔11bおよび導出孔21bをこの順に介して、打音検査用打撃装置100の外部空間へと導出されている。
【0023】
案内部20は、打撃部材10の被案内部11を直進方向(矢印A方向及び矢印B方向)に案内する円筒形状などの筒状部21を有する。
【0024】
筒状部21は、被案内部11の第1部分111を直進方向に摺動案内する摺動案内部211を有する。
【0025】
更に、筒状部21は、打撃部材10が所定の待機位置(
図1に示す打撃部材10の位置)よりも一方向に対する反対方向(矢印B方向)へと移動することを規制する移動規制部21aを有している。すなわち、案内部20は、移動規制部21aを有している。
【0026】
移動規制部21aは、筒状部21の内面に形成された括れ状の部分である。すなわち、筒状部21の内空断面は、移動規制部21aにおいて部分的に小さくなっている。
例えば、移動規制部21aの内径は、先端側から基端側に向けて、徐々に縮小した後、徐々に拡大している。より具体的には、例えば、筒状部21の軸心に沿った断面において、移動規制部21aの内面は、筒状部21の中心に向けてアーチ状に膨出している。すなわち、移動規制部21aは、その内面が内方に向けて凸の曲面状に形成された括れ形状となっている。
移動規制部21aは、被案内部11の第1部分111よりも小径に形成されていて、移動規制部21aには第1部分111が侵入不能となっている。ただし、被案内部11の第2部分112の少なくとも一部分が移動規制部21aに挿入可能となるように、移動規制部21aの内径が設定されている。
具体的には、例えば、打撃部材10は、移動規制部21aの内面に対して第2部分112の先端部(基端側に向けて徐々に縮径している部分)が接する位置で、移動規制されるようになっている。つまり、この位置が打撃部材10の待機位置となっている。
【0027】
付勢部30は、移動規制部21aにより移動規制されて待機位置に位置する打撃部材10を付勢するようになっている。より具体的には、付勢部30は、打撃部材10に衝突することによって打撃部材10を一方向(矢印A方向)へ付勢する衝突部材31を有している。
【0028】
衝突部材31は、円柱形状などの棒状の第1ピストン部311を有している。
一方、筒状部21における移動規制部21aよりも基端側の部分は、第1ピストン部311を直進方向に摺動案内するピストンシリンダ部213を構成している。
第1ピストン部311の先端面311aは、被案内部11の長手方向に対して直交する平面状に形成されている。
【0029】
また、打音検査用打撃装置100は、付勢部30によって付勢された後の打撃部材10を矢印B方向へ付勢して待機位置に復帰させる第2付勢部40を有している。
第2付勢部40は、例えば、打撃部材10を矢印B方向に付勢する弾性体からなる。付勢部30は、第2付勢部40の付勢に抗して打撃部材10を矢印A方向へ付勢する。
より具体的には、第2付勢部40は、例えば、圧縮型のコイルバネにより構成されており、被案内部11の第1部分111における突出部113よりも先端側の部分に外挿されている。
【0030】
筒状部21は、摺動案内部211よりも先端側に配置された収容部212を有する。収容部212は、その内空領域が摺動案内部211の内空領域よりも大径に形成されている。収容部212の内空領域において、被案内部11の第1部分111の周囲に位置する部分は、第2付勢部40と、被案内部11の突出部113と、を収容する収容室212aを構成している。
【0031】
案内部20は、筒状部21の先端に設けられたキャップ部22を有する。キャップ部22は、リング状に形成されており、キャップ部22には、被案内部11の第1部分111が挿通されている。
キャップ部22によって、第2付勢部40を構成するコイルバネの先端が基端側に押さえ付けられている。このコイルバネの基端は、被案内部11の突出部113に接しているとともに、突出部113を基端側に付勢している。すなわち、第2付勢部40を構成するコイルバネは、突出部113とキャップ部22との間に圧縮状態で挟まれた状態で、収容室212aに収容されており、被案内部11を基端側に付勢している。
なお、キャップ部22は、被案内部11の第1部分111を摺動案内するガイドとしても機能する。
【0032】
被案内部11の先端部、すなわち第1部分111の先端部は、案内部20の先端部すなわちキャップ部22よりも先端側に突出している。したがって、力センサ13および打撃チップ12も案内部20の先端部よりも先端側に突出している。
【0033】
なお、筒状部21のピストンシリンダ部213、移動規制部21a、摺動案内部211および収容部212は、基端側から先端側に向けてこの順に配置され、且つ、互いに同軸上に配置されている。
また、打撃部材10の被案内部11と、衝突部材31とは、直進方向(矢印A方向およびB方向)に沿って互いに同軸に配置されている。
【0034】
図2に示すように、衝突部材31は、第1ピストン部311の他に、保持部312と第2ピストン部313とを備えている。
保持部312は、第1ピストン部311よりも大径の円柱状に形成されている。
第2ピストン部313は、保持部312よりも更に大径の円柱状に形成されている。
第2ピストン部313、保持部312および第1ピストン部311は、基端側から先端側に向けてこの順に配置され、互いに同軸上に配置され、且つ、相互に一体的に形成されている。
【0035】
付勢部30は、衝突部材31の他に、例えば、衝突部材31を直進方向(矢印A方向及び矢印B方向)に案内する案内部32と、圧縮ガスを用いて衝突部材31を加圧することにより衝突部材31を矢印A方向に付勢する加圧部35と、を備えている。
【0036】
案内部32は、例えば、円筒形状などの筒状の第1部材321と、第1部材321の先端側の端部に設けられた盤状の第2部材322と、を備えている。
【0037】
第1部材321の内空領域は、衝突部材31の第2ピストン部313を矢印A方向およびB方向に摺動案内する案内領域32aを構成している。
【0038】
第2部材322が案内部20の基端部に対して固定されることにより、案内部20と案内部32とが相互に同軸となる状態で相互に固定されている。
第2部材322には、第1ピストン部311を挿通させるとともに該第1ピストン部311を摺動案内する挿通孔322aが形成されている。すなわち、第1ピストン部311は、挿通孔322aおよびピストンシリンダ部213により摺動案内される。
【0039】
加圧部35は、例えば、筐体部材351、蓋部材352およびバルブ部材353を備えて構成されている。
【0040】
筐体部材351は、例えば外周形状が円柱形状となっており、その先端側の面に、案内部32の基端部が固定されている。
【0041】
筐体部材351の内部には、バルブ部材353を直線移動(例えば矢印A方向およびB方向に直線移動)可能に収容しているバルブ室351aと、圧縮ガスを貯留する蓄圧室351bと、蓄圧室351bの圧縮ガスが案内部32の案内領域32aに設けて放出される際の流路となる放出路351cと、が形成されている。
【0042】
放出路351cは、案内領域32aに対して連通している。放出路351cは、衝突部材31の第2ピストン部313よりも小径に形成されており、筐体部材351の先端側の面は、矢印B方向への衝突部材31の移動を規制するようになっている。
放出路351cを介して案内領域32aに放出される圧縮ガスによって、衝突部材31の第2ピストン部313の基端側の面が矢印A方向に付勢されて、衝突部材31が矢印A方向に勢いよく移動するようになっている。
なお、例えば、放出路351cは筐体部材351の中心に配置されており、放出路351cを介して放出される圧縮ガスは、衝突部材31の第2ピストン部313の基端側の面の中央部を矢印A方向に付勢するようになっている。
【0043】
蓄圧室351bは、例えば、放出路351cの周囲に配置されており、内空断面がドーナツ状に形成されている。
蓄圧室351bと放出路351cとは、円筒形状などの筒状の仕切壁351eによって相互に仕切られている。ただし、バルブ部材353が基端側に位置する状態では、放出路351cの下端部と蓄圧室351bとが相互に連通するようになっている。
【0044】
バルブ室351aは、放出路351cの基端側に配置されている。バルブ室351aは、内空断面が円柱形状などの筒状に形成されている。
【0045】
バルブ部材353は、傘形バルブであり、直線移動(例えば矢印A方向およびB方向に直線移動)可能にバルブ室351a内に保持されている。
【0046】
蓋部材352は、筐体部材351の基端側の面に固定されている。蓋部材352の中央部には、バルブ室351aの内空領域よりも小径の導入口352aが形成されている。
蓋部材352における導入口352aの周囲の部分は、矢印B方向へのバルブ部材353の移動を規制する。
【0047】
付勢部30は、更に、一端が加圧部35の導入口352aに接続されたガス導入管36と、ガス導入管36の他端に接続されたガス源39と、ガス導入管36の両端間の部位に設けられた三方弁38と、を備えている。
【0048】
ガス源39は、加圧部35に供給される圧縮ガス(高圧ガス)を貯留している。
【0049】
三方弁38は、ガス導入管36を介してガス源39から加圧部35の導入口352aに圧縮ガスが供給される状態と、その供給が遮断されるとともに導入口352aと三方弁38における放出側(矢印C方向側)とが相互に連通する状態と、の何れかの状態に切り替えが可能に構成されている。
【0050】
更に、付勢部30は、加圧部35により付勢された後の衝突部材31を待機位置(
図2に示す位置)に復帰させるために衝突部材31を矢印B方向に付勢する付勢部材33を備えている。
付勢部材33は、例えば、圧縮型のコイルバネにより構成されており、衝突部材31の保持部312に外挿されている。
付勢部材33は、衝突部材31の第2ピストン部313における先端側の面と、第2部材322における基端側の面と、の間に圧縮状態で挟まれており、衝突部材31を矢印B方向に付勢している。
【0052】
検査対象物(図示略)を打撃するためには、先ず、打撃部材10により検査対象物を打撃できるように、打音検査用打撃装置100の近傍に配置する。好ましくは、検査対象物において打撃を受ける面に対して、打撃部材10の移動方向(矢印A方向)が直交するように、打音検査用打撃装置100の配置を微調整する。
【0053】
なお、初期状態として、打撃部材10および衝突部材31は、それぞれ待機位置(
図1、
図3(a)、
図2、
図4(a)に示される位置)に位置している。
【0054】
次に、打撃動作の準備として、蓄圧室351bに圧縮空気を蓄える。このためには、ガス導入管36を介してガス源39から加圧部35に圧縮ガスが供給される状態となるように三方弁38を切り替える(
図4(a))。
これにより、圧縮ガスは、ガス源39から、ガス導入管36、導入口352a、バルブ室351aをこの順に介して、蓄圧室351bに導入される。
なお、バルブ室351aに導入された圧縮ガスは、バルブ室351aの内周面とバルブ部材353の外周部との間隙を介して、蓄圧室351bに流入する。その際には、バルブ部材353は、仕切壁351eの基端側の面に突き当たった状態となり、バルブ部材353によって蓄圧室351bと放出路351cとが相互に遮断される。よって、蓄圧室351bから放出路351cへの圧縮ガスの流入が規制される。
【0055】
次に、蓄圧室351bに圧縮ガスが蓄えられた後、導入口352aと三方弁38における放出側(矢印C方向側)とが相互に連通する状態となるように、三方弁38を切り替える。
すると、バルブ室351a内の圧縮ガスが放出側(矢印C方向側)へ排気されるため、バルブ室351aの圧力が低下する。このため、バルブ部材353は蓄圧室351b内の圧縮ガスに押されて矢印B方向へ移動する。その結果、蓄圧室351bと放出路351cとが相互に連通するので、蓄圧室351b内の圧縮ガスが放出路351cを介して勢いよく案内領域32aに流入する。
これにより、衝突部材31が圧縮ガスに付勢されて勢いよく矢印A方向に移動する。このとき、衝突部材31は付勢部材33による付勢に抗して矢印A方向に移動するが、付勢部材33の付勢力は、圧縮ガスにより衝突部材31を付勢する力に比べて充分に弱いため、衝突部材31は充分な勢い(速度)で移動する。
その結果、衝突部材31の第1ピストン部311の先端面311aが、打撃部材10の基端側の面112aに対して勢いよく衝突する。これにより、打撃部材10は衝突部材31によって弾かれて矢印A方向に勢いよく移動する(
図4(b)、
図3(b))。
【0056】
このとき、打撃部材10は第2付勢部40による付勢に抗して矢印A方向に移動するが、第2付勢部40の付勢力は、衝突部材31の衝突による付勢力と比べて充分に弱いため、打撃部材10は充分な勢い(速度)で移動する。
その結果、打撃部材10の先端に設けられた打撃チップ12の先端面12aが検査対象物に対して勢いよく衝突する。すなわち、打撃部材10によって検査対象物に打撃が加えられる(例えば、
図3(c)、
図4(c)の状態)。
【0057】
その後、打撃部材10は、第2付勢部40による付勢に従って矢印B方向に移動し、その待機位置に復帰する。また、衝突部材31は、打撃部材10に対して衝突した後、付勢部材33による付勢に従って矢印B方向に移動し、その待機位置に復帰する(
図1、
図3(a)、
図2、
図4(a))。
【0058】
なお、矢印A方向は、特に限定されない。例えば、水平方向であっても良いし、水平方向に対して傾斜した方向であっても良いし、鉛直上方又は鉛直下方であっても良い。矢印A方向が何れの方向であっても、打撃部材10および衝突部材31がそれぞれの待機位置に復帰できるように、第2付勢部40および付勢部材33の付勢力が設定されている。
【0059】
力センサ13は、打撃部材10が検査対象物に衝突した際に当該打撃部材10に加わる力の大きさを検出する。その検出結果は、図示しない制御回路に入力され、当該制御回路において、力の大きさ等が正常な範囲内にあるか否かなどの判定を行うようになっている。
なお、打撃部材10が検査対象物に衝突した際に当該打撃部材10に加わる力の大きさは、打撃により検査対象物に加えられた力と実質的に等しい。
【0060】
より具体的には、例えば、力センサ13による検出値に基づいて、打撃により検査対象物に力を与えた時間の長さと、打撃により検査対象物に与えた力の最大値とを求めることができる。そして、打撃により検査対象物に力を与えた時間の長さと、打撃により検査対象物に与えた力の最大値とについて、それぞれが許容範囲内であるか否かの判定を行う。
【0061】
打撃により検査対象物に力を与えた時間の長さが許容範囲内である場合、打撃によって検査対象物に入力された弾性波の周波数が許容範囲内であることが分かる。適正な周波数(具体的には、充分に高い周波数(充分に短い波長))の弾性波を検査対象物に入力することにより、検査対象物に存在するクラック等の欠陥が微小なものであったとしても、弾性波が欠陥において反射するようにできるため、その欠陥を容易に検出することができる。すなわち、例えば、クラック等から反射した弾性波が、音波として検査対象物の外部に放射されるので、その音波を検査対象物の外部に設置されたマイクにより検出し、その音波を解析することによって、クラック等の存在を判別することができる。
なお、検査対象物に入力された弾性波の周波数が低すぎる(波長が長すぎる)場合は、その弾性波が微小な欠陥を通り過ぎてしまうため、その欠陥を検出することができない。
【0062】
また、打撃により検査対象物に与えた力の最大値が許容範囲内である場合、打撃によって検査対象物に入力された弾性波の振幅が許容範囲内であることが分かる。適正な振幅(具体的には、充分に大きい振幅)の弾性波を検査対象物に入力することにより、弾性波を検査対象物の深部にまで到達させることができるため、検査対象物の深部における欠陥の有無を判別することができる。
【0063】
以上のような実施形態によれば、打音検査用打撃装置100は、検査対象物に衝突して打撃を加える打撃部材10と、打撃部材10を直進方向(矢印A方向およびB方向)に案内する案内部20と、打撃部材10を直進方向における一方向(矢印A方向)へ付勢し、打撃部材10を検査対象物に衝突させる付勢部30と、を備える。打撃部材10は、付勢部30によって付勢された後、案内部20により案内されて一方向(矢印A方向に移動して、検査対象物を打撃する。
このように、付勢部30によって打撃部材10が付勢された後、すなわち付勢部30により打撃部材10が付勢される状態の終了後(付勢部30により打撃部材10が付勢されない状態で)、打撃部材10が直進して打撃を行う。このため、打音検査用打撃装置100と検査対象物との距離の変化に関して比較的大きな許容度を確保することができる。すなわち、打音検査用打撃装置100と検査対象物との距離がある程度変化した場合でも、同等の強さの打撃を検査対象物に加えることができる。
また、打撃部材10が直進動作するため、打撃動作のストロークを容易に長くすることができる。
【0064】
また、付勢部30は、打撃部材10に衝突することによって打撃部材10を一方向(矢印A方向)へ付勢する衝突部材31を有しているので、付勢部30によって付勢された後(付勢部30による付勢される状態の終了後)に打撃部材10が直進する動作を好適に実現することができる。
【0065】
また、打撃部材10は、案内部20により直進方向に案内される棒状の被案内部11を有しているので、案内部20によって容易に打撃部材10を直進方向に案内することができ、打撃部材10の良好な直進性が得られる。
【0066】
また、案内部20は、被案内部11を直進方向に案内する筒状部21を有しているので、筒状部21によって精度良く打撃部材10を直進方向に案内することができ、打撃部材10の良好な直進性が得られる。
【0067】
より具体的には、打撃部材10は、案内部20により直進方向に案内される棒状の被案内部11を有し、案内部20は、被案内部11を直進方向に案内する筒状部21を有し、被案内部11と衝突部材31とは、直進方向に沿って互いに同軸に配置されている。そして、衝突部材31は、被案内部11の基端部(面112a)に衝突することによって、打撃部材10を一方向(矢印A方向)へ付勢する。
このような構成により、打撃部材10のより良好な直進性が得られる。
【0068】
また、打撃部材10は、被案内部11の先端側に設けられて検査対象物を打撃する先細形状の打撃チップ12を有しているので、打撃によって検査対象物の単位面積当たりに加えられる力積を極力大きくすることができる。よって、打撃により検査対象物の深部まで弾性波を到達させることができるため、検査対象物の深部の状態を判定することができる。
【0069】
また、打撃部材10は、打撃部材10が検査対象物に衝突した際に当該打撃部材10に加わる力の大きさを検出する力センサ13を有しているので、当該力の大きさを直接的に検出することができるため、当該力の大きさを精度良く検出することができる。
【0070】
より具体的には、力センサ13は、打撃チップ12と被案内部11との間に設けられているので、力センサ13を打撃チップ12により保護しつつも、打撃チップ12に加わる力と同等の力が力センサ13に加わるようにできる。すなわち、力センサ13と打撃チップ12とが離間することにより、力センサ13に伝達される力が減衰することを抑制できる。よって、打撃部材10に加わる力の大きさを適正に検出することができる。
【0071】
また、案内部20は、打撃部材10が所定の待機位置よりも一方向に対する反対方向(矢印B方向)へと移動することを規制する移動規制部21aを有し、付勢部30は、移動規制部21aにより移動規制されて待機位置に位置する打撃部材10を付勢する。
このため、付勢部30により打撃部材10を付勢する力を再現性良く一定の大きさにすることができるので、打音検査用打撃装置100による打撃を繰り返し行う場合に、常に一定の打撃力で検査対象物を打撃することができる。
【0072】
また、被案内部11は、棒状の第1部分111と、第1部分111の基端側に設けられているとともに被案内部11の基端部を構成し且つ第1部分111よりも小径に形成されている第2部分112と、を有している。
また、案内部20は、第1部分111よりも小径で、且つ、第2部分112を挿入可能に形成された移動規制部21aを有している。
そして、移動規制部21aは、打撃部材10が所定の待機位置よりも一方向に対する反対方向(矢印B方向)へと移動することを規制する。
よって、簡単な構造により、打撃部材10を一定の待機位置に待機させることができる。
【0073】
また、打音検査用打撃装置100は、付勢部30によって付勢された後の打撃部材10を反対方向(矢印B方向)へ付勢して待機位置に復帰させる第2付勢部40を有している。
よって、付勢部30によって付勢された後の打撃部材10を自動的に待機位置に復帰させることができる。
【0074】
また、第2付勢部40は、打撃部材10を反対方向(矢印B方向)に付勢する弾性体からなるので、第2付勢部40を簡易な構成とすることができる。
【0075】
なお、上記の実施形態における各構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていても良いし、一つの構成要素が複数の部材で形成されていても良いし、ある構成要素が他の構成要素の一部であっても良いし、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していても良い。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 検査対象物に衝突して打撃を加える打撃部材と、
前記打撃部材を直進方向に案内する案内部と、
前記打撃部材を前記直進方向における一方向へ付勢し、前記打撃部材を前記検査対象物に衝突させる付勢部と、
を備え、
前記打撃部材は、前記付勢部によって付勢された後、前記案内部により案内されて前記一方向に移動して、前記検査対象物を打撃する、打音検査用打撃装置。
2. 前記付勢部は、前記打撃部材に衝突することによって前記打撃部材を前記一方向へ付勢する衝突部材を有している1.に記載の打音検査用打撃装置。
3. 前記打撃部材は、前記案内部により前記直進方向に案内される棒状の被案内部を有している1.又は2.に記載の打音検査用打撃装置。
4. 前記案内部は、前記被案内部を前記直進方向に案内する筒状部を有している3.に記載の打音検査用打撃装置。
5. 前記打撃部材は、前記案内部により前記直進方向に案内される棒状の被案内部を有し、
前記案内部は、前記被案内部を前記直進方向に案内する筒状部を有し、
前記被案内部と前記衝突部材とは、前記直進方向に沿って互いに同軸に配置され、
前記衝突部材は、前記被案内部の基端部に衝突することによって、前記打撃部材を前記一方向へ付勢する2.に記載の打音検査用打撃装置。
6. 前記打撃部材は、前記被案内部の先端側に設けられて前記検査対象物を打撃する先細形状の打撃チップを有している3.乃至5.の何れか一つに記載の打音検査用打撃装置。
7. 前記打撃部材は、当該打撃部材が前記検査対象物に衝突した際に当該打撃部材に加わる力の大きさを検出する力センサを有している1.乃至6.の何れか一つに記載の打音検査用打撃装置。
8. 前記打撃部材は、当該打撃部材が前記検査対象物に衝突した際に当該打撃部材に加わる力の大きさを検出する力センサを有し、
前記力センサは、前記打撃チップと前記被案内部との間に設けられている6.に記載の打音検査用打撃装置。
9. 前記案内部は、前記打撃部材が所定の待機位置よりも前記一方向に対する反対方向へと移動することを規制する移動規制部を有し、
前記付勢部は、前記移動規制部により移動規制されて前記待機位置に位置する前記打撃部材を付勢する1.乃至8.の何れか一つに記載の打音検査用打撃装置。
10. 前記被案内部は、
棒状の第1部分と、
前記第1部分の基端側に設けられているとともに当該被案内部の基端部を構成し、且つ、前記第1部分よりも小径に形成されている第2部分と、
を有し、
前記案内部は、前記第1部分よりも小径で、且つ、前記第2部分を挿入可能に形成された移動規制部を有し、
前記移動規制部は、前記打撃部材が所定の待機位置よりも前記一方向に対する反対方向へと移動することを規制する5.に記載の打音検査用打撃装置。
11. 当該打音検査用打撃装置は、前記付勢部によって付勢された後の前記打撃部材を前記反対方向へ付勢して前記待機位置に復帰させる第2付勢部を有している9.又は10.に記載の打音検査用打撃装置。
12. 前記第2付勢部は、前記打撃部材を前記反対方向に付勢する弾性体からなり、
前記付勢部は、前記第2付勢部の付勢に抗して前記打撃部材を前記一方向へ付勢する11.に記載の打音検査用打撃装置。