【文献】
改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』,[online](URL: http://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf),国立健康・栄養研究所,2012年 4月11日
【文献】
N. Minh-Dung et al.,"BAROMETRIC PRESSURE CHANGE MEASUREMENT",2011 16th International Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems Conference,2011年 6月 9日,pp. 898-901
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上下動検出部は、前記圧力センサの出力信号の値により前記大気圧が所定値以上に上昇したと判断された場合、前記測定対象者は下方向に移動したと判定し、前記圧力センサの出力信号の値により前記大気圧が所定値以上に低下したと判断された場合、前記測定対象者は上方向に移動したと判定することを特徴とする請求項2に記載の活動量検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記技術に係る活動量検出装置では、一般的に気圧センサとして半導体絶対圧センサが用いられる。このため、上記技術に係る活動量検出装置では、絶対圧の変化に基づいて高さ変化を検出するため、例えば台風等の接近等の気象変化による気圧低下が生じた場合には、ビル数階分の高さ変化が生じたとの判断を行ってしまうので、結果として運動による消費エネルギーを誤って大きく算出してしまうという課題があった。
そこで、本発明は、測定対象者の正確な活動量を検出できる活動量検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の活動量検出装置の第一の特徴は、測定対象者に装着され、該測定対象者の活動状態に基づく活動量を検出する活動量検出装置であって、前記測定対象者の活動状態の区分を特定する活動状態特定部と、前記測定対象者の上下方向移動に関する上下移動情報を検出する上下動検出部と、前記活動状態特定部により特定される区分と、前記上下動検出部により検出される上下移動情報と、に基づいて、前記測定対象者の活動状態に応じた活動量を算出する演算処理部と、を備え、前記上下動検出部は、測定対象者の活動に応じた圧力変化を、大気圧変動に応じて可変する基準圧からの差分量として検出可能な圧力センサを有することを要旨とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、圧力センサが測定対象者の活動に応じた圧力変化を、大気圧変動に応じて可変する基準圧からの差分量として検出できるので、台風の接近等の気象状態による気圧変化が生じた場合でも、運動による消費エネルギーを誤認して算出してしまうようなことは無く、測定対象者の活動に基づく正確な活動量のみを検出することができる。
【0008】
また、本発明の活動量検出装置の第二の特徴は、前記圧力センサは、所定容積からなるキャビティと、前記測定対象者周囲の圧力である測定対象圧力を伝達する圧力伝達媒体を前記キャビティ内外に流通させる連通孔と、前記基準圧に相当し前記キャビティの内部圧力を表す内圧と、前記測定対象圧力と、の差圧に関する出力信号を出力する出力部と、を備えることを要旨とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、上下移動に伴う大気圧の変化を、キャビティ内外の差圧を検出することで特定できる。そして、キャビティの内部圧力(内圧)は、連通孔を介した圧力伝達媒体の流通によって大気圧変動に遅れて変化するため、このキャビティ内外の差圧を検出することで、気象状態による気圧変化が生じた場合でも、運動による消費エネルギーを誤認して算出することはない。このため、活動量検出装置は、測定対象者の活動に基づく正確な活動量のみを検出することができる。
【0009】
また、本発明の活動量検出装置の第三の特徴は、前記上下移動情報は、前記上下動検出部が前記圧力センサの出力信号に基づいて判定する前記測定対象者の上下の移動方向に関する情報を含むことを要旨とする。
かかる特徴によれば、圧力センサの出力信号は大気圧の微小な変動を示すため、出力信号の変化に基づいて大気圧がわずかに上昇もしくは低下することを検知することができる。このため、活動量検出装置は、測定対象者がごくわずかな上下動を行っても、大気圧の変化としてとらえることができ、測定対象者の正確な活動量を検出することができる。
【0010】
また、本発明の活動量検出装置の第四の特徴は、前記上下動検出部は、前記圧力センサの出力信号の値と予め定めた所定値との比較に基づいて、前記測定対象者の上下の移動方向を判定することを要旨とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、圧力センサの出力信号と所定値との比較に基づいて測定対象者が一定量以上に上下方向に移動したかどうかを判定できる。そのため、活動量検出装置は、所定の運動強度を設定し、その運動強度に基づく上下動を行ったか否かを判定することができる。
【0011】
また、本発明の活動量検出装置の第五の特徴は、前記上下移動情報には、前記出力部の出力する出力信号が含まれ、前記演算処理部は、当該出力信号に基づいて、前記測定対象者の上下移動量を算出することを要旨とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、圧力センサの出力信号に基づいて、大気圧の変化量を演算処理部で検出することができるため、測定対象者の上下方向の移動距離を検出することができる。このため、活動量検出装置は、圧力センサの検出結果に基づいて、測定対象者の上下移動距離から上下動に基づく活動量を正確に検出することができる。
【0012】
また、本発明の活動量検出装置の第六の特徴は、前記演算処理部は、前記出力信号に基づいて、前記内圧と前記測定対象圧力との差圧を求める差圧算出部と、設定された前記内圧と前記差圧算出部により算出された前記差圧とに基づいて、前記測定対象圧力を算出する測定対象圧力算出部と、前記差圧算出部により算出された前記差圧に基づいて、前記キャビティ内外を流通する前記圧力伝達媒体の所定時間単位の流通量を算出する流量算出部と、前記流量算出部により算出された前記流量と前記キャビティの容積とに基づいて、所定時間後の前記内圧を算出し、当該算出した内圧で前記測定対象圧力算出部にて用いる前記内圧の設定値を更新する内圧更新部と、を有することを要旨とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、圧力センサの出力信号に基づいて、測定対象圧力の時間変化量を算出することができる。このため、測定対象者の活動前後の上下移動距離を検出でき、活動量を正確に検出することができる。
【0013】
また、本発明の活動量検出装置の第七の特徴は、前記圧力センサは、前記連通孔を除く前記キャビティの開口面を塞ぐように設けられ、前記差圧に応じて撓み変形するカンチレバーを有し、前記出力部は、前記カンチレバーの撓み変形量に応じた出力信号を出力することを要旨とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、上下移動に伴う大気圧の変化を、キャビティ内部との差圧を検出することで測定できると同時に、気圧計測用カンチレバーの厚みを適宜に調整することで、所望の感度での圧力変動の検出ができる。このため、わずかな上下動でも検知でき、その時の消費エネルギーを正確に算出することが可能となる。
【0014】
また、本発明の活動量検出装置の第八の特徴は、前記活動状態は、歩行状態と、軽作業状態と、走行状態と、安静状態と、を含むことを要旨とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、活動状態を、歩行状態、軽作業状態、走行状態、安静状態、といった細やかな状態に区分して活動量を算出するので、一層正確な活動量を検出することができる。
【0015】
また、本発明の活動量検出装置の第九の特徴は、前記活動状態と相関性を有する前記測定対象者の生体情報を検出する生体情報取得部を有し、前記演算処理部は、前記区分及び前記上下移動情報に加えて、前記生体情報に基づいて、前記活動量を算出することを要旨とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、例えば、空調管理されたビルの出入り等、上下動を伴わない気圧変化が加わっても、活動状態に相関性のある生体情報を用いた活動量の算出を行うことで、上下動と誤認することを回避できる。このため、測定対象者の消費エネルギーを正確に算出することが可能となる。
【0016】
また、本発明の活動量検出装置の第十の特徴は、前記生体情報取得部は、前記生体情報として、心拍、体温、発汗量、呼吸数の少なくとも何れか1つを検出することを特徴とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、上述の心拍、体温、発汗量、呼吸数といった多様な生体情報を用いて活動量の検出を行うことができる。
【0017】
また、本発明の活動量検出装置の第十一の特徴は、前記演算処理部により算出される活動量を、前記活動量検出装置の外部へ送信する通信部を有することを要旨とする。
かかる特徴によれば、活動量検出装置は、活動量検出装置自体に表示装置を設けなくとも、外部の電子機器(パソコンや携帯電子機器等)で詳細に活動量を確認できる。このため、活動量検出装置自体を小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る活動量検出装置によれば、測定対象者の正確な活動量を検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る活動量検出装置の実施形態について図面を参照して説明する。
(第一の実施形態)
(全体構成)
図1は本発明の活動量検出装置1の構成を示す図である。ここで、活動量検出装置1は、例えば、測定対象者の活動(例えば、歩行、走行、軽作業など)に基づく消費カロリー(消費エネルギー)、運動強度、階段昇降段数などの活動量を検出して、測定対象者に検出結果を報知する装置である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の活動量検出装置1は、測定対象者の運動状況を取得するための運動状況取得部20と、測定対象者の上下移動を検出するための上下移動取得部30と、運動状況取得部20及び上下移動取得部30と接続され、当該運動状況取得部20及び上下移動取得部30により取得された情報に基づく各種の演算処理を行う演算処理回路40と、演算処理回路40と接続され当該演算処理回路40の処理結果を表示させる表示装置50と、を備えている。
【0022】
運動状況取得部20は、加速度センサ21と、運動判定手段22とを備える。上下移動取得部30は、圧力センサ31と上下移動判定手段32とを備える。演算処理回路40は、運動判定手段20と上下移動判定手段30、表示装置50に接続されている。
【0023】
加速度センサ21は、例えば、小型化に有利なMEMS型の静電容量検出方式やピエゾ抵抗方式等の検出方式からなるセンサである。当該加速度センサ21は、測定対象者の動きを表す加速度を検出し、検出した加速度の情報(加速度情報)を運動判定手段22に入力する。
【0024】
運動判定手段22は、加速度センサ21と接続され、CPUやRAM、ROM等を含んで構成され、CPUがROMに格納された各種の制御プログラムをRAM上に展開して実行することで加速度センサ21の出力信号に対する各種の制御処理を実現する。当該運動判定手段22は、入力された加速度情報に基づいて、測定対象者の運動状況を、例えば、歩行、走行、軽作業、安静といった段階に区分し当該区分した運動状況に関する情報(具体的には、各運動状況の区分に即して割り振られた数値データなど)を運動状況情報として出力する。具体的には、運動判定手段22は、入力された加速度情報に係る加速度値が、予め上記区分ごとに定めた数値範囲の何れに該当するかを判断することで、一の運動状況の区分を特定する。
【0025】
圧力センサ31は、加速度センサ21が加速度情報を検出すると同時に、測定対象者周囲の圧力変化を検出する。ここで圧力センサ31の検出する圧力変化は、測定対象者周囲の気圧変化(空調の始動・停止、建物の出入り、気象変化等が齎す気圧変化)と、測定対象者の上下方向(重力加速度の方向)の動きと、による圧力変化である。そして、圧力センサ31の検出した圧力変化を表す圧力変化情報は、上下移動判定手段32に入力される。ここで、圧力センサ31の具体的な構成や機能については後段で詳述するが、測定対象者の活動に応じた圧力変化を、大気圧変動に応じて可変する基準圧からの差分量として検出できる。
【0026】
上下移動判定手段32は、圧力センサ31と接続され、CPUやRAM、ROM等を含んで構成され、CPUがROMに格納された各種の制御プログラムをRAM上に展開して実行することで圧力センサ31の出力信号に対する各種の制御処理を実現する。当該上下移動判定手段32は、圧力センサ31より入力された圧力変化情報がすべて測定対象者の上下移動によるものとして、測定対象者の上下の移動方向を判定し、上下移動情報として出力する。具体的には、上下移動判定手段32は、例えば、圧力センサ31から出力された圧力変化情報が、周囲の気圧変化(圧力センサ31の出力信号値)が予め定めた所定値以上の上昇を表す情報であった場合、測定対象者の高度が低下したと判断する。同様に、上下移動判定手段32は、周囲の気圧変化が所定値以上の低下を表す情報であった場合、測定対象者の高度が上昇したと判断し、また、周囲の気圧変化が所定値の範囲内(所定値未満の上昇/低下)を表す情報であった場合、測定対象者の高度は変化していないと判断する。
【0027】
つまり、上下移動判定手段32によると、CPUが、圧力センサ31から出力される圧力変化情報を基に判定した上下移動情報として出力し、必要に応じてRAMやROMに記録する。
【0028】
演算処理回路40は、CPUやRAM、ROM等を含んで構成される回路であり、CPUがROMに格納された各種の制御プログラムをRAM上に展開して実行し、活動量検出装置1の各種制御処理を実現することで、活動量検出装置1を統括制御する。当該演算処理回路40は、運動判定手段22の出力信号(運動状況情報)と、上下移動判定手段32の出力信号(上下移動情報)と、を入力すると、当該出力信号に基づいて、測定対象者の運動状況に応じた消費カロリーの算出処理を実行する。具体的には、演算処理回路40は、運動判定手段22の出力信号に基づいて、測定対象者の運動状況が歩行や走行の区分であると判断した場合、上下移動判定手段32から出力される上下移動情報により、測定対象者の歩行や走行に基づく上下移動方向を特定する。そして、演算処理回路40は、運動状況情報から算出される平地での歩行や走行等の消費カロリーに、当該上下方向移動に基づくカロリーを加算する演算処理を実行する。具体的には、演算処理回路40は、上方向の移動且つ歩行と判断した場合、平地歩行の消費エネルギーに当該消費エネルギーの約2倍の量を加算する。また、演算処理回路40は、下方向の移動且つ歩行と判断した場合、平地歩行の消費エネルギーに当該消費エネルギーの約0.1倍を加算する。なお、平地歩行もしくは平地走行の消費カロリーと、階段上り、階段駆け上がりなどの各場合の消費エネルギーと、の関係は、測定対象者個々人によって厳密には異なるが、一般的にMETs(Metabolic equivalents)や「日常生活動作によるエネルギー消費量」(日本体育協会スポーツ科学委員会)等から容易に求めることができる。一方で、演算処理回路40は、運動判定手段22の出力信号に基づいて、測定対象者の運動状況が軽作業や安静時の区分であると判断した場合、上下移動判定手段32の出力信号に基づく消費カロリーは、運動状況情報から算出される消費カロリーに加算せずに出力する。つまり、演算処理回路40は、運動判定手段22が出力した運動状況情報から算出される軽作業や安静時の消費カロリーのまま出力することとなる。
【0029】
表示装置50は、例えば、液晶表示ディスプレイ等で構成されるディスプレイ装置である。当該表示装置50は、演算処理回路40の出力信号を入力し、演算処理回路40の算出した消費カロリーや各種の運動情報等を表示する。
【0030】
このため、演算処理回路40は、測定対象者が上下動を含む運動をしている場合、よりカロリーを消費する上下方向への運動か否かを、圧力センサ31の気圧変化から算出する上下移動情報と運動状況情報とから判別でき、判別結果に基づく正確な消費カロリーを算出することができる。
【0031】
また、演算処理回路40は、圧力変動が生じても、測定対象者の運動状況を同時に特定できることから、エレベーターによる昇降や空調の始動・停止等による運動と関連しない圧力変化を消費カロリーに含めて演算することがなく、消費カロリーの誤差を小さくすることができる。
【0032】
(圧力センサの構成)
次に、上下移動取得部30を構成する圧力センサ31の詳細な構成について説明する。
ここで、
図2は、圧力センサ31の構成を示す平面図である。また、
図3は、
図2中に示すA−A線に沿った圧力センサ31の断面図である。
【0033】
圧力センサ31は、所定の周波数帯域(例えば、0.05Hz〜10kHz)の圧力変動を検出するセンサであって、センサ本体33と、気圧計測用カンチレバー34と、蓋部312と、変位測定部35とを有する。
【0034】
センサ本体33は、その内部にキャビティ310を有する。センサ本体33は、例えば、キャビティ310を区画し、かつ樹脂よりなる第一の部分33−1と、第一の部分33−1上に配置され、かつシリコン支持層32a、及びシリコン酸化膜等の酸化層32bよりなる第二の部分33−2と、を有する。
【0035】
気圧計測用カンチレバー34は、例えば、シリコン支持層32a、シリコン酸化膜等の酸化層32b、及びシリコン活性層32cを熱的に張り合わせたSOI基板32を加工することで形成することができる。
【0036】
気圧計測用カンチレバー34は、SOI基板2におけるシリコン活性層32cよりなり、平板上のシリコン活性層32cより、平面視コ字状に形成されたギャップ313を切り出すことで形成される。ここで、ギャップ313(連通孔)は、気圧計測用カンチレバー34とセンサ本体33の内壁との間に形成される間隙であり、キャビティ310内外の空気を流通させる。
【0037】
これにより、気圧計測用カンチレバー34は、基端部34aを固定端とし、先端部34bを自由端とした片持ち梁構造とされている。
また、気圧計測用カンチレバー34は、センサ本体33に形成されたキャビティ310の上面を囲うよう配置される。つまり、気圧計測用カンチレバー34は、キャビティ310の開口を略閉塞している。
【0038】
気圧計測用カンチレバー34は、センサ本体33における第二の部分33−2上において基端部34aを介して一体的に固定されることで、キャビティ310を塞ぐように片持ち支持される。
【0039】
これにより、気圧計測用カンチレバー34は、基端部34aを中心としてキャビティ310の内部と外部との圧力差に応じた撓み変形が可能となる。ここで、気圧計測用カンチレバー34の基端部34aには、平面視コ字状の貫通孔315が形成されているので、気圧計測用カンチレバー34が撓み変形しやすい。ただし、この貫通孔315の形状は、気圧計測用カンチレバー34の撓み変形を容易にする形状ならば、上記コ字状に限定されるものではない。
【0040】
蓋部312は、平面視で、ギャップ313を介して気圧計測用カンチレバー34の周囲を取り囲むように配置されている。蓋部312は、シリコン活性層32cで構成される。蓋部312は、キャビティ310の上方に配置される。
【0041】
変位測定部35(出力部)は、気圧計測用カンチレバー34の撓み量(変位量)に応じて電気抵抗値が変化するピエゾ抵抗320と、この電気抵抗値変化を取り出す検出回路322から構成される。
図2に示すように、ピエゾ抵抗320は、気圧計測用カンチレバー34の短手方向において、貫通孔315を挟んだ両側に対となって配置される。
これら一対のピエゾ抵抗320は、導電性材料からなる配線部321を介して相互に電気的に接続されている。
【0042】
なお、この配線部321及びピエゾ抵抗320を含む全体的な形状は、例えば平面視U字状とすることもできる。また、ピエゾ抵抗320には、ピエゾ抵抗320の電気抵抗値変化に基づいて気圧計測用カンチレバー34の変位を測定する検出回路322が電気的に接続されている。
【0043】
上記構成とされた変位測定部35において、検出回路322を通じてピエゾ抵抗320に所定電圧が印加された際に発生する電流は、貫通孔315を回り込むようにして、一方のピエゾ抵抗320から配線部321を経由して他方のピエゾ抵抗320に流れる。
【0044】
このため、気圧計測用カンチレバー34の変位(撓み変形)に応じて変化するピエゾ抵抗320の電気抵抗値変化を、検出回路322は電気的な出力信号として取り出すことが可能となる。
【0045】
したがって、変位測定部35は、検出回路322の出力信号(センサ出力)に基づいて、気圧計測用カンチレバー34の変位を測定することが可能である。キャビティ310の内部と外部との差圧に基づいて気圧計測用カンチレバー34が変形するため、キャビティ310外部の気圧変化を出力信号として取り出すことが可能となる。
【0046】
なお、上記ピエゾ抵抗320は、例えば、イオン注入法や拡散法等の各種方法により、リン等のドープ剤(不純物)をシリコン活性層32cにドーピングすることで形成される。
【0047】
また、一対のピエゾ抵抗320は、配線部321のみで電気的導通するよう構成されている。このため、図示していないが、気圧計測用カンチレバー34の周囲に位置するシリコン活性層32cは、配線部321以外でピエゾ抵抗320双方が導通しないようにエッチングされている。
また、上記ピエゾ抵抗320に替えて、圧電薄膜を用いてもよい。
【0048】
この場合、気圧計測用カンチレバー34の基端部34bに加わる応力に応じて起電力が発生し、この起電力を検出することで、気圧計測用カンチレバー34の変位を検出することが可能となる。
【0049】
(圧力センサの動作)
次に、
図4及び
図5を参照して、上述した圧力センサ31が、微小な圧力変動を検出する場合の動作について説明する。
図4は、圧力センサ31の出力の一例を模式的に示す図である。
図4(A)はキャビティ内外の圧力の経時変化を示す図であり、
図4(B)は圧力センサ31の出力の経時変化を示す図である。
【0050】
また、
図5は、圧力センサ31の動作の一例を模式的に示す断面図である。
図5(A)は初期状態の圧力センサの断面図を示しており、
図5(B)はキャビティ外部の圧力が内部の圧力より高い場合の圧力センサの断面図を示しており、
図5(C)はキャビティ内外の圧力が同じ圧力に戻ったときの圧力センサの断面図を示している。なお、
図5において、圧力センサ1を構成する検出回路322の図示を省略する。
【0051】
はじめに、
図4(A)に示す期間Aのように、キャビティ310外部の圧力(以下、「外圧Pout」)と、キャビティ310内部の圧力(以下、「内圧Pin」)との差がゼロである場合には、
図5(A)に示すように、気圧計測用カンチレバー34は撓み変形しない。
【0052】
ここで、
図4(A)に示す時刻t1以降の期間Bのように、例えば、外圧Poutがステップ状に上昇すると、キャビティ310外部と内部との間に差圧が生じるため、
図5(B)に示すように、気圧計測用カンチレバー34はキャビティ310内部に向けて撓み変形する。
【0053】
そして、気圧計測用カンチレバー34の撓み変形に応じてピエゾ抵抗320に歪が生じて、電気抵抗値が変化するので、
図4(B)に示すように、圧力センサ31の出力信号が増大する。
【0054】
また、外圧Poutの上昇以降の時間において、ギャップ313を介してキャビティ310の外部から内部へと圧力伝達媒体が流動する。このため、
図4(A)に示すように、内圧Pinは時間の経過とともに、外圧Poutに遅れながらかつ外圧Poutの変動よりも緩やかな応答で上昇する。
【0055】
その結果、内圧Pinが外圧Poutに徐々に近づくので、キャビティ310の外部と内部との圧力が均衡状態になり、気圧計測用カンチレバー34の撓みが徐々に小さくなり、
図4(B)に示すように上記出力信号が徐々に低下する。
【0056】
そして、
図4(A)に示す時刻t2以降の期間Cのように、内圧Pinが外圧Poutと同じになると、
図4(C)に示すように、気圧計測用カンチレバー34の撓み変形が解消されて元の状態に復帰する。さらに、
図4(B)に示すように、圧力センサ31の出力信号もゼロに回帰する。
このように、気圧計測用カンチレバー34の変位に基づいた出力信号の変動をモニタすることで、キャビティ310外部の圧力変動を検出することができる。
【0057】
特に、SOI基板32のシリコン活性層32cを利用して半導体プロセス技術により気圧計測用カンチレバー34を形成できるので、従来の圧電素子に比べて薄型化(例えば数十から数百nm厚)しやすい。したがって、微小な圧力変動の検出を精度よく行うことができる。
【0058】
ただし、上述の出力信号は、外気の圧力の上昇もしくは低下を示しているが、外気の圧力の時間変動(時間軸に対する圧力勾配)を単純に示すものではない。具体的に示すと、
図4の期間B1における出力信号上昇傾向は、実際の測定対象の圧力(外圧Pout)が上昇することを示しているが、期間B2における出力信号減少傾向は、上述の通りキャビティ310の外部から内部への圧力伝達媒体の流動による内圧Pinの上昇に起因するものであり、実際の測定対象の圧力が時間変化していないにも関わらず、下降することを示唆してしまう。このため、当該出力信号に対して単純な積分処理等を行っても、測定対象となる圧力の時間変化(外圧の時間変化)は把握することができない。また、
図4に示す出力信号の、期間B1と期間B2の境界における極大値は、時間軸に対する圧力勾配をおおよそ示しているが、必ずしも圧力勾配値ではない。圧力の変動が生じている時間によっても出力信号の極大値が変化するためである。その一方で、外気の圧力がわずかでも上昇もしくは低下した場合、その圧力の変化した方向(上昇もしくは低下)に応じた出力信号を得ることができる。
【0059】
上記に示したように、圧力センサ31は、外気の圧力が変動した時のみ出力信号が得られ、さらに、カンチレバーが薄いため、微小な圧力変化であっても出力することができる。このため、前述のとおり、上下移動判定手段32は、当該圧力センサ31の出力信号(圧力変化情報)が所定値以上の上昇/低下を示す場合に、測定対象者の高度が低下/上昇したと判断するので、測定対象者が数十cmの段差一段を上り下りしても、その上下動を気圧変化から検出することができる。
【0060】
(演算処理回路の制御フロー)
次に、本実施形態に係る演算処理回路40が実行する制御処理の流れについて、
図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、測定対象者が各種の運動状況に応じた活動を行うと、運動状況取得部20より運動状況情報が、上下移動取得部30より上下移動情報が、それぞれ出力される。すると、演算処理回路40は、運動状況取得部20から出力される運動状況情報を取得する(ステップS101)。
次いで、演算処理回路40は、ステップS101にて取得した運動状況情報を基に、測定対象者の運動状況が歩行もしくは走行であるか否かを判断する(ステップS102)。
【0061】
そして、演算処理回路40は、ステップS102にて運動状況が歩行もしくは走行でないと判断した場合、つまり運動状況が例えば軽作業時や安静時、エスカレーターやエレベーター搭乗時の上下動等の場合(ステップS102;N)、入力部(図示省略)を介してあらかじめ入力された測定対象者の体重や身長等の情報から算出される基礎代謝分の消費エネルギーを、これまでに算出した消費エネルギーに加算する(ステップS103)。基礎代謝分の消費エネルギーは、身体の動作に関係なく、身体が生命活動を維持するために身体が消費するエネルギーである。
【0062】
一方で、演算処理回路40は、ステップS102にて運動状況が歩行もしくは走行であると判断した場合(ステップS102;Y)、上下移動取得部30から出力信号(上下移動情報)を取得する(ステップS104)。
【0063】
次いで、演算処理回路40は、測定対象者の上下方向の移動があるか否かを、上下移動取得部30から出力される上下移動情報から判断する。具体的には、演算処理回路40は、圧力変化情報に係る周囲の気圧変化(圧力センサ31の検出値)が、所定値以上の気圧低下を表す場合に上方向への移動と判断し、所定値以上の気圧上昇を表す場合に下方向への移動と判断する(ステップS105)。そして、演算処理回路40は、ステップS105にて上下方向の移動がない、すなわち周囲の気圧変化が所定値の範囲内と判断した場合(ステップS105;N)、歩行もしくは走行分の消費エネルギーのみを算出し、これまでに算出した消費エネルギーに加算する(ステップS106)。なお、演算処理回路40は、歩行もしくは走行分の消費エネルギーを、予め活動量検出装置1に入力された体重、身長等の情報に加えて歩幅の情報と、測定した一歩にかかった時間とによって算出する。
【0064】
一方、演算処理回路40は、上下方向の移動があると判断した場合(ステップS105;Y)、歩行もしくは走行分の消費エネルギーと、上方向もしくは下方向への移動分の消費エネルギーと、を算出し、これまでに算出した消費エネルギーに加算する(ステップS107)。具体的には、演算処理回路40は、上方向の移動且つ歩行と判断した場合、平地歩行の消費エネルギーに当該消費エネルギーの約2倍の量を加算する。また、演算処理回路40は、下方向の移動且つ歩行と判断した場合、平地歩行の消費エネルギーに当該消費エネルギーの約0.1倍を加算する。 したがって、演算処理回路40は、
図6に示したフローを繰り返し実行することで、測定対象者が段差一段を上り降りした場合でも、正確な消費エネルギーを算出することができる。また、演算処理回路40は、運動状況を判定した後、これに同期もしくはわずかに遅れて得られた上下移動情報から上下移動の方向を判定するため、測定対象者自身の活動状況に起因しない気圧変化を測定対象者の上下動と誤認することを回避することができる。
【0065】
一例として、活動量検出装置1を測定対象者の上半身、例えば腰部に装着した場合について説明する。運動状況取得部20は、測定対象者の右足が階段などの段差を一段上って、ステップに着地した衝撃を、検出した加速度変化に基づいて歩行と判断する。この際、測定対象者の身体全体が上方向へ移動するため、腰部に装着した活動量検出装置1周囲の気圧が低下し、演算処理回路40は、上下移動取得部30からの上下移動情報より上方向への移動と判断する。
【0066】
次に、測定対象者の左足が一段上って、着地衝撃が生じた場合、同様に、運動状況取得部20が検出した加速度変化から歩行と判断し、上下移動取得部30が腰部の気圧低下の上下移動情報から上方向の移動と判断する。したがって、活動量検出装置1は、この処理を繰り返すことで、1歩ごとの上下方向の移動を判断できる。また、例えば活動量検出装置1を測定対象者の右足首に装着した場合は、右足が階段を一段上るとき、上方向の移動と判断できるが、左足が階段を上る時は次の右足の着地で上方向の判断となるため、2歩毎の判断となる。このように、少なくとも数歩単位という短い時間サイクルで上下移動の方向判断を繰り返すため、演算処理回路の制御処理においても、気象変動等の時間サイクルの長い気圧変化の影響を除外することができる。
【0067】
以上、本発明の活動量検出装置1によると、段差一段のような上下方向を伴う活動も正確に検知でき、また、その時の消費エネルギーを正確に算出することが可能となる。同時に、活動量検出装置1は、測定対象者自身の活動状況に起因しない気圧変化を測定対象者の上下動と誤認せず、測定対象者の消費エネルギーを正確に算出することができる。
【0068】
(第二の実施形態)
以下、本発明に係る第二の実施形態に係る活動量検出装置1について説明する。ここで、本実施形態に係る活動量検出装置1のうち、第一の実施形態と同一箇所については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施形態に係る活動量検出装置1は、第一の実施形態に係る活動量検出装置と同一構成である。本実施形態に係る活動量検出装置1が第一の実施形態と異なる点は、圧力センサ31の出力信号から、上下移動の方向のみを特定するのではなく、上下移動量も検出して消費エネルギーを算出する点である。すなわち、本実施形態に係る活動量検出装置1では、上下移動判定手段32が演算処理回路40に出力する上下移動情報に圧力センサ31から出力された圧力変化情報(圧力センサの出力信号)が含まれ、演算処理回路40が当該圧力変化情報に基づいて上下移動量を算出するように構成される。
【0070】
そして、本実施形態に係る活動量検出装置1によると、この上下移動量から、坂道の斜度等の情報が得られるため、例えば急坂を上る等の消費カロリーの大きい活動を正確に検知することができ、その場合の消費カロリーをより正確に算出することができる。
【0071】
(演算処理回路の制御フロー)
次に、第二の実施形態に係る演算処理回路40が実行する制御処理の流れについて、
図7のフローチャートを用いて説明する。ここで、本フローチャートのうち、
図6に示したフローチャートと同一処理については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0072】
演算処理回路40は、
図7に示すように、ステップS104において上下運動取得部30から得られた上下移動情報に基づいて、ステップS301において、演算処理回路40は上下移動量を算出する。
【0073】
次いで、歩行もしくは走行分の消費エネルギーを算出し、さらに、算出した上下移動量分の消費エネルギーを加算する(ステップS302)。ここで、上下移動量がゼロつまり、平地を歩行もしくは走行している場合は、加算分がゼロになり、消費エネルギーは歩行もしくは走行分のみとなる。
【0074】
したがって、演算処理回路40は、
図7に示したフローを繰り返し実行することで、坂道の勾配によって、急坂を上った場合には消費エネルギーを高く、緩やかな坂を上った場合には消費エネルギーを小さくというように、正確な消費エネルギーを算出することができる。
【0075】
(上下移動量・算出方法)
次に、上記
図7中のステップS301における上下移動情報から上下移動量を算出する手順について、
図8のフローチャートを用いて説明する。
上下移動情報は、上下移動取得部30の圧力センサ31からの出力信号であり、上述のように、この出力信号は測定対象者周囲の圧力、つまり圧力センサ31の外圧Poutの変動を示している。
【0076】
まず、演算処理回路40は、上下移動取得部30の圧力センサ31から出力信号が入力されると(ステップS701)、当該圧力センサ31の出力信号の値を一定時間Δt毎にN個、記憶装置(図示省略)に格納する(ステップS702)。
【0077】
次いで、演算処理回路40(差圧算出部)は、上記出力信号に対応した気圧計測用カンチレバーに加わる差圧ΔP、N個(ΔP(1〜N))を差圧データベースから求める(ステップS703)。ここで、差圧データベースとは、圧力センサ31の出力信号値と、当該出力信号値に応じた気圧計測用カンチレバー34に加わる差圧ΔPの値とを出力信号値ごとに予め計測しておき、計測結果から特定される関係性をデータベースとして格納したものである。
【0078】
次いで、演算処理回路40は、内圧Pin(i)のうち(i=1〜N、N:2以上の自然数)、最も時刻の早い1個目の内圧Pin(1)に初期値を設定する(ステップS704)。ここで、本実施形態にかかる内圧Pin(1)は、空気中で用いることを前提として、大気圧とする。次いで、演算処理回路40(測定対象圧力算出部)は、Pin(i)と差圧ΔP(i)とを加算して、外圧Pout(i)を算出する(ステップS705;差圧算出ステップ)。
【0079】
次いで、演算処理回路40(流量算出部)は、差圧ΔP(i)を用いて、キャビティ10に流入する圧力伝達媒体の流量Q(i)を記憶装置に格納された流量データベースから読みだす(ステップS706)。ここで流量データベースは、差圧ΔPと当該差圧ΔPの大きさに応じた流量Qとを差圧ΔPごとに予め計測しておき、計測結果から特定される関係性を、データベースとして格納したものとする。
【0080】
次に、演算処理回路40は、流量Q(i)とキャビティの容積Vから、Δt時間後の内圧Pin(i+1)を算出する(ステップS707;測定対象圧力算出ステップ)。ここで、一定時間Δtは非常に小さく、また、Δt毎の外圧Poutの変化量が非常に小さいと仮定し、熱移動や圧力損失を無視できるほど小さいとする。このため、圧力伝達媒体がキャビティ10に流入した分だけ内圧Pinが上昇する。したがって、流量Q(i)、容積V、内圧Pin(i+1)内圧Pin(i)の関係は以下の式(1)であらわすことができる。
【0081】
Pin(i)×V=Pin(i+1)×(V+Q(i)×Δt)・・・(1)
このため、演算処理回路40(内圧更新部)は、Δt時間後のPin(i+1)を、次の式(2)で得ることができる。
【0082】
Pin(i+1)=V/(V+Q(i)×Δt)×Pin(i)・・・(2)
次いで、演算処理回路40は、ステップS707にて得られたPin(i+1)と、ステップS705にて算出したPout(i)とを演算処理回路40を構成する記憶装置に格納する(ステップS708;流量算出ステップ)。
【0083】
次いで、演算処理回路40は、iにi+1を代入し(ステップS709)、iがNを上回ったか否かを判断して(ステップS710)、iがN以下と判断した場合(ステップS710;N)、ステップS705〜S709の処理を繰り返す(繰返し処理ステップ)。この際、演算処理回路40は、ステップS705にて使用する内圧Pinを、ステップS708にて算出したPin(i+1)に更新する(内圧更新ステップ)。
【0084】
そして、演算処理回路40は、iがNより大きいと判断した場合(ステップS710;Y)、演算処理回路40は、得られたN個のPoutから上下移動量を換算する(ステップS711)。大気圧変化量から高度変化量を求める関係式はいくつか知られているが、一般的なものとして以下の関係式(3)が知られている。
【0085】
H=18410.0×log10(Pout(i+1)/Pout(i))・・・(3)
ここで、Hは上下移動量[m]、Poutは気圧(絶対圧)[Pa]である。
【0086】
これにより、演算処理回路40は、外圧Pout(i)からPout(i+1)へ変化した場合の上下移動量を求めることができる。
以上により、演算処理回路40は、Δt時間毎にN個の上下移動量を記憶装置内部に蓄積することができる。この情報は、N×Δt期間中に、測定対象者が上下方向にどの程度の距離を移動したかを示している。
【0087】
なお、上記Δt(所定時間)は、圧力変化測定装置1に備わる図示しないユーザインターフェース部を介してユーザが適宜設定できるように構成してもよい。
上記により、演算処理回路40は、圧力センサ31の出力信号から外圧Poutの時間経緯、そして上下方向の移動量を計測することができる。
【0088】
以上により、演算処理回路40は、圧力センサ31の出力信号から上下方向の移動量を算出可能であるので、加速度センサ21による加速度情報(に基づく平面方向の移動量)と組み合わせることで、坂道の斜度等の情報が得られる。そのため、演算処理回路40は、例えば急坂を上る等の消費カロリーの大きい活動を正確に検知することができ、消費カロリーをより正確に算出することが可能となる。同時に、演算処理回路40は、運動状況を判定した後、これに同期もしくはわずかに遅れて得られた上下移動情報から上下移動を判定するため、測定対象者自身の活動状況に起因しない気圧変化を測定対象者の上下動と誤認することなく、測定対象者の消費エネルギーを正確に算出することができる。
【0089】
(第三の実施形態)
以下、本発明に係る第三の実施形態に係る活動量検出装置1について、
図9を用いて説明する。ここで、本実施形態に係る活動量検出装置1のうち、第一の実施形態と同一箇所については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0090】
図9に示す活動量検出装置1が第一の実施形態に係る活動量検出装置と異なる点は、活動量検出装置1に生体情報取得部60が付加された点である。ここで、生体情報取得部60は、測定対象者の生体情報として、例えば、脈拍、体温、発汗、放熱量、呼吸数等を検出する。
【0091】
生体情報取得部60は、生体情報検出センサ61と、生体情報判定手段62とからなり、演算処理回路40と接続される。生体情報検出センサ61は、例えば、発光素子及び受光素子を有し、測定対象者の脈拍を検出する脈拍センサとする。生体情報判定手段62は、生体情報検出センサ61から出力される信号(生体情報)に基づいて測定対象者の活動状況に関する生体活動情報を算出し、当該算出した生体活動情報を演算処理回路40に出力する。生体活動情報は、運動強度(METs)や消費カロリー等の情報である。
【0092】
例えば、脈拍センサから出力される脈拍数は、安静時に比べて歩行時のほうが大きくなる。同様に、身体の活動量が激しくなるほど(消費カロリーが大きくなるほど)脈拍数は上昇するという相関がある。つまり、演算処理回路40は、この相関関係を利用して、生体情報検出センサ61から出力される生体情報から、生体活動情報を算出し、算出した生体活動情報と予め設定された基準値との大小関係を比較することで、測定対象者の活動状態が上下動状態であるか歩行や走行状態であるかを一層正確に判断することができる。なお、これは脈拍だけに関わらず、体温や発汗、放熱量、呼吸数についても、脈拍と同様に運動強度や消費カロリー等との相関が得られているため、同様に生体活動情報を算出することができる。
【0093】
(演算処理回路の制御フロー)
次に、第三の実施形態に係る演算処理回路40が実行する制御処理の流れについて、
図10のフローチャートを用いて説明する。ここで、本フローチャートのうち、
図6に示したフローチャートと同一処理については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0094】
演算処理回路40は、
図8に示すように、ステップS105において移動方向が上下方向であると判断した場合(ステップS105;Y)、運動状況取得部20上下移動取得部30、生体情報取得部60から出力信号(生体活動情報)を取得する(ステップS201)。
【0095】
次いで、演算処理回路40は、ステップS201にて取得した生体活動情報に基づいて、生体活動がより活発になったか否かを判断する(ステップS202)。具体的には、演算処理回路40は、あらかじめ記憶している歩行時の生体活動情報(基準値)と、ステップS201にて取得した生体活動情報とを比較することにより、上記活発になったか否かを判断する。そして、演算処理回路40は、ステップS202にて生体活動がより活発になったと判断(つまり、取得した生体活動情報が基準値を上回ると判断)する場合(ステップS202;Y)、歩行もしくは走行分の消費エネルギーと、上下方向の移動分の消費エネルギーと、を算出し、これまでに算出した消費エネルギーに加算する(ステップS107)。一方で、演算処理回路40は、ステップS202にて生体活動がより活発になっていないと判断(つまり、取得した生体活動情報が基準値を下回ると判断)する場合(ステップS202;N)、ステップS105にて上下方向の移動であると判断しても、運動状況情報から歩行もしくは走行等の消費エネルギーのみを算出し、これまでに算出した消費エネルギーに加算する(ステップS106)。
【0096】
したがって、演算処理回路40は、
図8に示したフローを繰り返し実行することで、段差一段を上り降りした場合でも、正確な消費エネルギーを算出することができる。また、演算処理回路40は、測定対象者が空調管理されたビルを出入りするような、上下動を伴わない急激な気圧変化が測定対象者の周囲で生じた場合でも(つまり、
図8のステップS105に示すように、上下移動取得部30から取得される上下移動量情報のみによっては上下方向への移動がなされたと判断する状況であっても)、生体情報取得部60から取得する生体活動情報に基づいて生体活動が活発化されているか否かを判断するので、正確に測定対象者の上下動を見分けることができ、消費エネルギーを精度よく算出することができる。
【0097】
(変形例)
上記第一乃至第三いずれかの実施形態において、活動量検出装置1は、算出した消費エネルギーを表示装置50で表示することとしたが、表示装置50へ表示するとともに、あるいは表示装置50へ表示することなく、外部へと送信するように構成してもよい。
【0098】
具体的には、例えば
図11に示す活動量検出装置1は、通信部70を有する。当該通信部70は、演算処理回路40と接続されてなり、例えば、各種の無線伝送方式にて外部装置との情報の送受信を可能にする無線通信用のインターフェースからなる。そして、通信部70は、演算処理回路40で演算処理した消費エネルギー等の測定対象者の活動状況に関する情報が入力される。すると、通信部70は、入力された消費エネルギー等の活動情報を活動量検出装置1外部へと送信する。つまり、活動量検出装置1外部に配置された外部装置(例えば、PCや携帯電子機器等)は、通信部70を介して、当該活動情報を受信することで、当該活動情報の更なる解析処理を行ったり、より詳細化された活動情報の表示処理を行ったりすることができる。この場合、表示装置50は、消費エネルギー等の活動情報を表示してもよいし、装置自体が動作して情報を取得しているか、動作していないかのON/OFFを示すだけであってもよい。
【0099】
以上、本変形例に係る活動量検出装置1によると、自体を小型化できると同時に、測定対象者の詳細な活動状況についての表示は、外部の機器でより詳細に示すことが可能となる。
【0100】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせて採用することも可能である。