(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、チルト機能のみを有する構成で、テレスコ機能だけでなく、待避機能も備えていないため、待避機能を有しながら、姿勢及び高さを維持したままハンドルを押し倒すことのできる構成が導き出せない。そこで、作業車両、特にハンドルの待避が要求されるフォークリフト
用ステアリングコラム装置において、チルト機能、テレスコ機能及び待避機能を備えつつ、調整を終えたハンドルの傾き姿勢及び高さを維持したまま前記ハンドルを押し倒し、ハンドルを元の位置に復帰させた際に傾き姿勢及び高さの再調整が不要な構成を検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
検討の結果開発したものが、装置フレームに支持されたステアリングコラムのチルト機能、テレスコ機能及び待避機能を備えた
フォークリフト用ステアリングコラム装置であって、
装置フレームと、前記装置フレームに対して揺動自在なチルトブラケットと、前記チルトブラケットに対して昇降自在なコラムブラケットと、装置フレームとコラムブラケットとの間に介装されたチルト支持板と、チルト支持板に係脱自在な掛止レバーとからなり、装置フレームは、チルトブラケットを軸着するチルト軸と前記チルト軸を中心とする円弧状のナット用長孔とが設けられた左側のフレーム側面と、前記チルト軸のみを設けた右側のフレーム側面とを有し、チルトブラケットは、左右一対のチルトブラケット側面を有し、貫通孔が前記チルトブラケット側面それぞれに設けられるように構成され、コラムブラケットは、左右一対のコラムブラケット側面を有し、直線状のテレスコ用長孔がコラムブラケット側面それぞれに設けられ、ステアリングコラムがコラムブラケット側面に固着されるように構成され、チルト支持板は、ナット用長孔を貫通する掛止ピンを有し、ナット用長孔と同じ半径である円弧状のボルト用長孔が設けられるように構成され、掛止レバーは、一端で装置フレームに軸着され、他端に設けられた掛止フックが、前記ナット用長孔を貫通する掛止ピンの先端に掛合されるように構成され、チルトブラケットの右のブラケットフレーム側面の貫通孔から、コラムブラケットの右のコラムブラケット側面に設けたテレスコ用長孔、チルトブラケットの左右のチルトブラケット側面にそれぞれ設けた各貫通孔、コラムブラケットの左のコラムブラケット側面に設けたテレスコ用長孔、チルト支持板に設けたボルト用長孔、チルトブラケットの左のブラケットフレーム側面の貫通孔まで差し込んだ締付ボルトに、締付ナットを締緩自在に螺着させると共に、前記締付ナットをナット用長孔に遊嵌し、回動操作した掛止レバーの掛止フックをチルト支持板の掛止ピンに掛合した状態で締付ナットが締付ボルトから緩められると、チルト支持板、チルトブラケット、コラムブラケット相互の圧接が解消され、チルト支持板に対してコラムブラケット及びチルトブラケットが一体に揺動自在に、かつチルトブラケットに対してコラムブラケットが昇降自在になることで、ステアリングコラムに取り付けられたハンドルの傾き姿勢及び高さが調整自在になり、回動操作した掛止レバーの掛止フックからチルト支持板の掛止ピンが解放されると、ステアリングコラムに取り付けられたハンドルの傾き姿勢及び高さが維持されたまま、装置フレームに対してチルト支持板と、コラムブラケットと、チルトブラケットとを一体として前方へ倒したり元の位置へ戻したりすることができることを特徴とする
フォークリフト用ステアリングコラム装置である。
【0007】
本発明の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、締付ボルトに締め付ける締付ナットを、装置フレームではなく、掛止レバーを掛合させて前記装置フレームに対して位置固定されるチルト支持板に締め付けるようにし、チルト支持板に対する掛止レバーの掛合を解除することにより、締付ボルトに締付ナットを締め付けたまま、すなわち調整したハンドルの傾き姿勢及び高さを維持したまま、ステアリングコラムを前方へ押し倒せる。ハンドルを待避させればよいため、ステアリングコラムは後方に引き倒してもよい。
【0008】
チルト機能及びテレスコ機能は、締付ボルトから締付ナットを緩めたり、締め付けたりして実現される。掛止レバーをチルト支持板に掛合した状態で締付ナットが締付ボルトから緩められると、チルト支持板、チルトブラケット、コラムブラケット相互の圧接が解消され、許容された範囲でチルトブラケットに対してコラムブラケットが昇降自在となり、また前記締付ボルトが許容される範囲で装置フレームに対してコラムブラケット及びチルトブラケットが一体に揺動自在となることで、ステアリングコラムに取り付けられたハンドルの傾き姿勢及び高さが調整自在になる(チルト機能及びテレスコ機能の実現)。
【0009】
掛止レバーをチルト支持板に掛合した状態で締付ナットを締付ボルトに締め付けると、チルト支持板、チルトブラケット、コラムブラケット相互が圧接し、チルトブラケットに対するコラムブラケットの昇降や、装置フレームに対するコラムブラケット及びチルトブラケットの一体的な揺動が禁止され、ステアリングコラムに取り付けられたハンドルの傾き姿勢及び高さが維持される。
【0010】
待避機能は、締付ボルト及び締付ナットの締付状態に関係なく、チルト支持板の掛止ピンから掛止レバーが外れれば、実現される。具体的には、締付ボルト及び締付ナットの締付状態に関係なく、掛止ピンが掛止レバーから解放されると、ステアリングコラムに取り付けられたハンドルの傾き姿勢及び高さが維持されたまま、装置フレームに対してコラムブラケット及びチルトブラケットを一体に倒すことができる。
【0011】
掛止レバーは、一端を装置フレームに軸着し、他端に設けた掛止フックを、チルト支持板から突出させた掛止ピンに接近させる回動方向に付勢すると、回動した掛止レバーは掛止ピンに掛止フックを押し当てるように掛合させて、外力や振動によるがたつきを抑制又は防止して、掛止ピンに対する掛合を安定して保持できるようにする。掛止レバーの付勢は、従来公知の各種手段を用いることができるが、一端を装置フレームに掛合し、他端を掛止レバーに掛合するコイルバネを例示できる。
【0012】
また、掛止レバーは、操作ノブを設けると、装置フレームに対する軸着位置がどこにあっても、掛止フックの位置をどこに設けようとも、前記操作ノブを持って回動操作ができる。更に、掛止レバーは、装置フレームに設けたレバーガイド溝に掛合するレバー用ガイドピンを設けると、がたつきのない安定した回動が担保される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、締付ボルトから締付ナットを緩めることにより、ステアリングコラムに取り付けられたハンドルの傾き姿勢及び高さを調整できるチルト機能及びテレスコ機能を発揮しながら、前記締付ボルトに締付ナットを締め付けて調整したハンドルの傾き姿勢及び高さを維持したまま、チルト支持板から掛止レバーの掛合を解除するだけで、ハンドルを前方又は後方へ倒して待避させる待避機能を実現する。これにより、待避させたハンドルを元の位置に復帰させた際、ハンドルの傾き姿勢及び高さの再調整を不要にする。
【0014】
掛止レバーは、一端を装置フレームに軸着し、他端に設けた掛止フックを掛止ピンに接近させる回動方向に付勢することで、
チルト支持板の掛止ピンを安定に位置拘束し
、ステアリングコラムを安定して揺動(チルト機能)又は平行
昇降(テレスコ機能)させる。また、操作ノブは、軸着位置や掛止フックの位置と無関係に掛止レバーを回動操作できるようにし、前記掛止レバーの設計自由度を高める。装置フレームに設けたレバーガイド溝に掛合するレバー用ガイドピンは、がたつきのない安定した掛止レバーの回動を実現し、掛止ピンに対して掛止フックを確実かつ安定に掛合及び解除させる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、
図1〜
図8に見られるように、操作ペダル151,151を一体に設けたフォークリフト用である。
フォークリフト用ステアリングコラム装置の前後、左右及び上下は、作業車両の前後、左右及び上下に準じ、フレーム側面11,12が対向する面の側を内側(例えば左のフレーム側面11では右側)、逆を外側(例えば左のフレーム側面11では左側)とする。また、図示では、装置構成を理解しやすい後方から見た図面を正面図(
図3参照)とし、装置フレーム1を固定する車両本体や、ステアリングコラム32の上端に取り付けるハンドルを省略している。このため、ハンドルの傾き姿勢及び高さは、ステアリングコラム32の傾き姿勢及び高さとして説明する。
【0017】
本発明の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、車両本体(図示略)に固定される装置フレーム1と、前記装置フレーム1に対して揺動自在に軸着されるチルトブラケット2と、ステアリングコラム32に取り付けられて前記チルトブラケット2と
昇降自在に連結されるコラムブラケット3と、装置フレーム1とコラムブラケット3との間に介装されるチルト支持板4,4とから構成される(
図2参照)。本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、締付ボルト5から締付ナット6を緩めると、ステアリングコラム32を傾倒又は昇降させるチルト機能及びテレスコ機能を発揮し、掛止ピン42から掛止レバー7を外すと、ステアリングコラムを前方(
図4中左方向)へ倒す待避機能を発揮する。
【0018】
装置フレーム1は、締付ナット6を嵌合させて移動自在に支持するナット用長孔112やチルト軸14を設けた左側のフレーム側面11と、チルト軸14のみを設けた右側のフレーム側面12とを、側面視略S字状に折り曲げた連結板13で連結して構成される。本例の装置フレーム1は、操作ペダル151,151を回動自在に支持するペダル回動軸15を、前記連結板13下方でフレーム側面11,12間に架け渡している。これにより、連結板13及びペダル回動軸5は、左右のフレーム側面11,12を連結させて両者の間隔を保持させる構造要素として働いている。
【0019】
左のフレーム側面11は、上下方向に長尺な金属製の板部材で、上端近傍に前後方向に延びるナット用長孔112を、中段付近にチルト軸14をそれぞれ設け、そして下端付近にペダル回動軸5を連結している。チルト軸14は、左右方向に延在し、左のフレーム側面11と直交している。ナット用長孔112は、前記チルト軸14を中心とする円弧状に延びており、締付ナット6を前後方向へ移動自在に嵌合させている。本例のナット用長孔112は、締付ナット6の後方からチルト支持板4の掛止ピン42を突出させ、前端(
図4中左端)を締付ナット6が倣う大きな円弧に形成し、後端(
図4中右端)を掛止ピン42に倣う小さな円弧に形成し、前記後端に向けて絞った前後非対称な円弧状の長孔である。
【0020】
本例の左のフレーム側面11は、ナット用長孔112の前端より少し上にレバー回動軸113を設けて掛止レバー7を外面に軸着し、前記レバー回動軸113を中心とする円弧状のレバーガイド溝114を中段付近の前縁に設けている。レバーガイド溝114は、貫通させた掛止レバー7の掛止用ガイドピン72を案内して前記掛止レバー7を安定に揺動させ、また移動させた掛止用ガイドピン72を前端及び後端で掛合させることにより、掛止レバー7の揺動範囲を制限する。このほか、左のフレーム側面11は、車両本体に対して装置フレーム1を固定する取付ブラケット111を外面に設けている。
【0021】
また、本例の左のフレーム側面11は、切欠を設けたL字ブラケットからなるコイルバネ掛止部115を内側の前方に設け(
図2参照)、チルトブラケット2を立設したブラケットフレーム22の左のブラケットフレーム側面224の内側に設けたコイルバネ掛止部222との間に、コイルバネ23を架け渡している。コイルバネ23は、装置フレーム1のフレーム側面11,12に設けたチルト軸14より上方に位置し、常態として伸長しているため、ブラケットフレーム22、すなわちチルトブラケット2、前記チルトブラケット2に被せたコラムブラケット3、そしてコラムブラケット3を取り付けたステアリングコラム32を前方に傾倒させるように付勢する。
【0022】
右のフレーム側面12は、左のフレーム側面11のおよそ下半分の金属製の板部材で、上端近傍にチルト軸14を設け、下端付近にペダル回動軸5を連結している。これから理解されるように、チルト軸14に平行なブラケットフレーム平面223にチルトブラケット2を立設したブラケットフレーム22は、左右のフレーム側面11,12それぞれのチルト軸14に支持されるが、チルトブラケット2、コラムブラケット3及びチルト支持板4は左のフレーム側面11に対してのみ締付ボルト5及び締付ナット6により締め付けられ、位置固定される。このほか、右のフレーム側面12は、車両本体に対して装置フレーム1を固定する取付ブラケット121を外面に設けている。
【0023】
チルトブラケット2は、延在直交方向が断面コ字状である金属製のチャンネル材で、左右一対のチルトブラケット側面21,21を有し、チルト軸14の延在方向に連通する左右一対の貫通孔211,211を前記チルトブラケット側面21それぞれに設けている。本例のチルトブラケット2は、正面視コ字状のブラケットフレーム22の左右のブラケットフレーム側面224,224を結ぶブラケットフレーム平面223中央の前側に立設し、前記フレーム平面223から下方に折り曲げて形成した連結フランジ225,225をそれぞれチルト軸14に軸着することにより、装置フレーム1に対して揺動自在にしている。ブラケットフレーム側面224は、チルトブラケット2の貫通孔211と同様に締付ボルト5を通す貫通孔221を設けている(
図7参照)。
【0024】
本例のチルトブラケット2は、断面相似なコラムブラケット3に下方から差し込み、チルト軸14に直交して装置フレーム1のフレーム側面11,12と平行に延びるチルトブラケット側面21及びコラムブラケット側面31同士を摺接させている。チルトブラケット側面21に設けられる貫通孔211とブラケットフレーム側面224に設けた貫通孔221は、いずれも左のフレーム側面11に設けたナット用長孔112と同じ円周上にあり、装置フレーム1に対して相対的にチルトブラケット2が前後方向に揺動しても、貫通孔211がナット用長孔112に必ず連通させる。
【0025】
本例のブラケットフレーム22は、切欠を設けたL字ブラケットからなるコイルバネ掛止部222を左のブラケットフレーム側面224の内側の後方に設け、装置フレーム1の左のフレーム側面11に設けたコイルバネ掛止部115との間に、コイルバネ23を架け渡している。既述したように、常時伸長状態にあるコイルバネ23は、縮退しようとして、ステアリングコラム32を前方に傾倒する方向へ付勢している。本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、ナット用長孔112を設ける左のフレーム側面11にコイルバネ23を設けているが、チルトブラケット2及びコラムブラケット3に付勢を与えることができれば、右のフレーム側面12に設けてもよいし、付勢手段がコイルバネ23以外のものでも構わない。
【0026】
コラムブラケット3は、延在直交方向が断面コ字状で、上記チルトブラケット2に断面相似な金属製のチャンネル材で、左右一対のコラムブラケット側面31,31を有し、コラムブラケット側面31の延在方向に延びる直線状のテレスコ用長孔311をコラムブラケット側面31それぞれに設けている。ステアリングコラム32は、コラムブラケット3のコラムブラケット側面31の延在方向に延びる側縁を外筒に当接させ、溶接することにより前記コラムブラケット3を固着しており、コラムブラケット3に従って傾倒したり、昇降したりする。ステアリングコラム32は、上端にハンドル(図示略)を取り付け、チルトブラケット2を立設したブラケットフレーム平面223の後側に下端を貫通させる。
【0027】
チルト支持板4は、チルト軸14を中心とし、かつナット用長孔112と同じ円周上に延びる円弧状のボルト用長孔41を設けた側面視円弧状の金属製の板材である。本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、ワッシャ43を介して2枚一組のチルト支持板4,4を用いており、掛止ピン42は、内側(
図3中右側)のチルト支持板4の後端から外側(
図3中左側)のチルト支持板4の後端を貫通させ、装置フレーム1の左のフレーム側面11に設けたナット用長孔112から左方に突出させている。これにより、掛止ピン42は、チルト軸14を中心とする円周上に突出することになる。
【0028】
2枚のチルト支持板4は、連通する互いのボルト用長孔41,41を通じて締付ボルト5を貫通させ、前記締付ボルト5の雄ネジ端52に螺合させた締付ナット6をナット用長孔112に嵌合させて、互いを連結する掛止ピン42を前記ナット用長孔112に突出させている。これにより、締付ボルト5及び掛止ピン42は、ナット用長孔112の円弧状中心線に沿った位置関係に拘束され、前記締付ボルト5及び掛止ピン42の位置関係に従うチルト支持板4は、装置フレーム1に対する姿勢が一義的に特定される。これは、締付ボルト5に締付ナット6を締め付けてカラー54を介してチルトブラケット2及びコラムブラケット3をチルト支持板4に圧接すれば、チルト支持板4を介して間接的に装置フレーム1に対してチルトブラケット2及びコラムブラケット3が位置固定されることを意味する。
【0029】
締付ボルト5は、
ブラケットフレーム22の右のブラケットフレーム側面224の外側(右側)から貫通孔221を通じて差し込んで右端の掛止端51を前記ブラケットフレーム側面224の外側に掛合させ、コラムブラケット3の右のコラムブラケット側面31に設けたテレスコ用長孔311、チルトブラケット2の左右のチルトブラケット側面21,21それぞれに設けた貫通孔211,211、コラムブラケット3の左のコラムブラケット側面31に設けたテレスコ用長孔311、右のチルト支持板4に設けたボルト用長孔41、ワッシャ43、そして左のチルト支持板4に設けたボルト用長孔41を通じて装置フレーム1の左のフレーム側面11に設けたナット用長孔112に突出させた左端の雄ネジ端52に、前記ナット用長孔112に嵌合させる締付ナット6を螺着する(
図2参照)。
【0030】
本例の締付ボルト5は、右のブラケットフレーム側面224と右のコラムブラケット側面31との間や、左のコラムブラケット側面31と右のチルト支持板4との間で、外嵌した金属製の円筒であるカラー54を介装している。カラー54の両端面は、締付ナット6を螺合することにより、右のブラケットフレーム側面224、右のコラムブラケット側面31、左のコラムブラケット側面31、そして右のチルト支持板4それぞれに圧接される。締付ナット6は、スプライン嵌合してボルト止めされた締付ナット操作レバー61により回動操作される。
【0031】
締付ボルト5は、チルトブラケット2及びコラムブラケット3を連結して一体に揺動させ、チルトブラケット2に対してコラムブラケット3を昇降させる。本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、間隔の広い右のブラケットフレーム側面224の外側から装置フレーム1の左のフレーム側面11にわたって締付ボルト5を架け渡して安定した支持を確保し、右のブラケットフレーム側面224に掛合する締付ボルト5の掛止端51がカラー54を介してコラムブラケット3の右のコラムブラケット側面31を締め付ける。本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、締付ボルト5の係止端51がコラムブラケット3の右のコラムブラケット側面31に掛合するではなく、カラー54を介して、実質的に前記掛止端51がコラムブラケット3の右のコラムブラケット側面31に掛合する。
【0032】
このほか、本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、昇降するコラムブラケット3がチルトブラケット2に対してがたついたり、傾いたりしないように、締付ボルト5の上方で、チルトブラケット2及びコラムブラケット3のみを一体に連結するテレスコ用ガイドピン53を貫通させ、前記テレスコ用ガイドピン53の左右両端をそれぞれコラムブラケット3の左右のテレスコ用長孔に掛合させている。これにより、チルトブラケット2に対するコラムブラケット3の昇降は、締付ボルト5及びテレスコ用ガイドピン53が並ぶ方向に規制されると共に、がたつきが抑制又は防止される。
【0033】
掛止レバー7は、交差する四方向に腕を延ばした側面視略十字状の金属製の板材で、後方に延びる腕端に二股になった掛止フック71を、前方に延びる腕端にチルト軸14と平行に右方向へ突出する掛止用ガイドピン72を、下方に延びる腕端に操作ノブ73をそれぞれ設け、残る上方に延びる腕端を装置フレーム1の左のフレーム側面11の上端のレバー回動軸113に軸着している。掛止用ガイドピン72は、レバーガイド溝114を通じて左のフレーム側面11の内側に突出させ、前記フレーム側面11に設けたコイルバネ掛止部(図示略)との間にコイルバネ721を架け渡している。これにより、掛止レバー7は、掛止フック71がチルト支持板4の掛止ピン42に下方から掛合する方向(
図4中左回り)に付勢される。
【0034】
本発明の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、次のようにチルト機能、テレスコ機能及び待避機能を実現する。まず、掛止レバー7の掛止フック71がナット用長孔112から突出するチルト支持板4の掛止ピン42に掛合した状態で、締付ナット操作レバー61を回動操作して締付ナット6を締付ボルト5から緩めると、右のブラケットフレーム側面224、コラムブラケット3の右のコラムブラケット側面31、チルトブラケット2の左右のチルトブラケット側面21,21、コラムブラケット3の左のコラムブラケット側面31、右のチルト支持板4、ワッシャ43、そして左のチルト支持板4相互の直接又はカラー54を介した圧接が解消される。
【0035】
これにより、締付ボルト5がチルト支持板4のボルト用長孔41の範囲で移動自在となり、
図9(前方へ傾倒)及び
図10(後方へ傾倒)に見られるように、装置フレーム1に対してチルトブラケット2及びコラムブラケット3が一体に揺動自在となる。ここで、本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、装置フレーム1とブラケットフレーム22との間に架け渡されたコイルバネ23により、ステアリングコラム32が前方へ傾くように付勢されている。このため、締付ボルト5及び締付ナット6による締付がなくなると、チルトブラケット2及びコラムブラケット3は、前記コイルバネ23の付勢を受けて前方へ傾く。
【0036】
チルトブラケット2及びコラムブラケット3の揺動範囲は、締付ボルト5がボルト用長孔41の前端(
図9参照)及び後端(
図10参照)に当接する範囲である。本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、締付ナット6が前記締付ボルト5に連動してナット用長孔112を移動する。このため、締付ボルト5がボルト用長孔41の前端に当接するとき、締付ナット6がナット用長孔112の前端に当接させ、締付ボルト5がボルト用長孔41の後端に当接するとき、締付ナット6がナット用長孔112から突出する掛止ピン42に当接させない。
【0037】
また、締付ボルト5から締付ナット6が緩められると、前記締付ボルト5が相対的にテレスコ用長孔311を移動する範囲で
昇降自在となり、
図4(下方へ下降)及び
図11(上方へ上昇)に見られるように、チルトブラケット2に対してコラムブラケット3が昇降自在となる。コラムブラケット3の昇降範囲は、締付ボルト5の上方にテレスコ用ガイドピン53を設けていることから、テレスコ用長孔311の上端に前記テレスコ用ガイドピン53が当接する下限位置(
図4参照)から、前記テレスコ用長孔311の下端に締付ボルト5が当接する上限位置(
図11参照)までである。こうして、締付ボルト5から締付ナット6を緩めることにより、ステアリングコラム32に取り付けられたハンドル(図示略)の傾き姿勢及び高さが調整できる。
【0038】
ハンドルの傾き姿勢及び高さの調整を終えた後、掛止レバー7の掛止フック71がナット用長孔112から突出するチルト支持板4の掛止ピン42に掛合した状態で、締付ナット操作レバー61を回動操作して締付ナット6を締付ボルト5に締め付けると、右のブラケットフレーム側面224、コラムブラケット3の右のコラムブラケット側面31、チルトブラケット2の左右のチルトブラケット側面21,21、コラムブラケット3の左のコラムブラケット側面31、右のチルト支持板4、ワッシャ43、そして左のチルト支持板4相互が直接又はカラー54を介して圧接し、装置フレーム1に対するチルトブラケット2及びコラムブラケット3の一体的な揺動や、前記チルトブラケット2に対するコラムブラケット3の昇降が禁止され、ステアリングコラム32に取り付けられたハンドルの傾き姿勢及び高さが維持される。
【0039】
こうして、本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、締付ボルト5から締付ナット6を緩めたり、前記締付ボルト5に締付ナット6を締め付けることにより、ステアリングコラム32に取り付けられたハンドル(図示略)の傾き姿勢を調整して維持するチルト機能と、前記ハンドルの高さを調整して維持するテレスコ機能とを実現する。ハンドルを前方へ逃がす待避機能は、こうしたチルト機能及びテレスコ機能と別に実現されている。このため、調整を終えたハンドルの傾き姿勢及び高さを維持したまま、前記ハンドルを前方へ倒すことができる。具体的には、次の通りである。
【0040】
掛止用ガイドピン72がレバーガイド溝114の前端に当接するまで操作ノブ73を押して掛止レバー7を下方に向けて回動操作すると、ナット用長孔112から突出するチルト支持板4の掛止ピン42から掛止フック71が外れ、コイルバネ23により前方へ付勢されたブラケットフレーム22に従い、
図12に見られるように、チルトブラケット2及びコラムブラケット3が前方に倒される。締付ナット6は、締付ボルト5に対して締め付けられたままなので、右のブラケットフレーム側面224、コラムブラケット3の右のコラムブラケット側面31、チルトブラケット2の左右のチルトブラケット側面21,21、コラムブラケット3の左のコラムブラケット側面31、右のチルト支持板4、ワッシャ43、そして左のチルト支持板4相互は、直接又はカラー54を介して圧接したままであり、調整を終えたハンドルの傾き姿勢及び高さが崩れることがない。
【0041】
ハンドルを元の位置に戻すには、コイルバネ23の付勢に抗してハンドルを後方に倒す。本例の掛止レバー7は、コイルバネ721により、掛止フック71を持ち上げるように付勢されているため、ハンドルを後方に倒せば、操作ノブ73を特に引き上げる等の操作をしなくても、ナット用長孔112から突出する掛止ピン42が前記掛止フック71の前縁を乗り越えた直後、掛止フック71を掛止ピン42に自動的に掛合する。上述したように、調整を終えたハンドルの傾き姿勢及び高さは、維持されたままであり、掛止レバー7が再び掛止ピン42を掛合させた後に、ハンドルの傾き姿勢及び高さの再調整を要しない。こうして、調整を終えたハンドルの傾き姿勢及び高さを維持したまま、前記ハンドルを前方へ倒し、そのまま復元させる待避機能が実現される。
【0042】
掛止レバー7の回動操作によりチルトブラケット2及びコラムブラケット3を円滑かつ確実に倒せるように、本例の
フォークリフト用ステアリングコラム装置は、ブラケットフレーム22を介して前記チルトブラケット2及びコラムブラケット3をコイルバネ23により前方へ付勢している。前記付勢に対し、ハンドルの傾き姿勢及び高さを維持する締付ボルト5及び締付ナット6の締付を強くするため、チルト支持板4を2枚一組とし、相互に圧接する面を増やして互いを拘束する摩擦力を増加させている。これにより、掛止ピン42から掛止レバー7を外し、コイルバネ23の付勢に従ってチルトブラケット2及びコラムブラケット3を前方に倒しても、ハンドルの傾き姿勢及び高さが解除される虞はない。
【0043】
チルトブラケット2及びコラムブラケット3を前方へ付勢するコイルバネ23は、上述のように、前記チルトブラケット2及びコラムブラケット3を円滑かつ確実に倒すものであるが、チルトブラケット2及びコラムブラケット3が倒れた後も付勢を続けさせることにより、前方へ倒れたチルトブラケット2及びコラムブラケット3ががたつくことを抑制又は防止する働きも有する。同様に、掛止フック71をチルト支持板4の掛止ピン42に下方から掛合する方向(
図4中左回り)に掛止レバー7を付勢するコイルバネ721は、掛止ピン42に掛止フック71を押し当てて両者の掛合が解除されないようにすると共に、掛止レバー7のがたつきを抑制又は防止する働きを有する。