(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態における、筋状態変化判定装置の例である処理装置を含む運動機能判定システムの装置構成を示す概略構成図である。同図において、運動機能判定システム1は、測定装置10と、処理装置20とを備える。また、
図1において、測定装置10が備える測定台11、通電用電極12aおよび測定用電極12bと、処理装置20が備える表示デバイス21の表示画面とが示されている。また、処理装置20にはパソコン(Personal Computer;PC)30が接続されている。なお、通電用電極12aと測定用電極12bとを総称して電極12と称する。
【0017】
運動機能判定システム1は、運動機能判定システム1の使用者(以下、「ユーザ」と称する)の筋状態の変化のタイプが、後述する
図9および
図10に示される13タイプの何れに該当するかを判定する。そして、運動機能判定システム1は、判定結果に基づいて筋状態の変化に対する対策を決定してユーザに提示する。ここでいう筋状態とは、筋肉の状態である。また、筋肉のことを「筋」とも称する。
測定装置10は、ユーザの生体インピーダンスと体重とを測定するための装置である。
測定台11は、測定装置10の上面に設けられており、測定台11に電極12が配置されている。測定装置10は、測定台11に加わる荷重を測定する。また、測定装置10は、電極12を用いてユーザの生体インピーダンスを測定する。
【0018】
処理装置20は、測定装置10の測定値に基づいてユーザの筋状態の変化のタイプが、
図9および
図10に示される13タイプの何れに該当するかを判定する。そして、処理装置20は、判定結果に応じて、ユーザに推奨する運動およびレシピなど、筋状態の変化に対する対策(特に、筋の衰えを低減させるための対策)を決定し、表示デバイス21の表示画面に表示する。
【0019】
処理装置20は、専用の機器として構成されていてもよいし、パソコンなど汎用の情報処理装置がプログラムを実行することで構成されていてもよい。
また、
図1のように、処理装置20が、例えばパソコンなど他の機器と接続可能になっていてもよい。特に、処理装置20が、筋状態の変化のタイプの判定結果、または、決定した対策、あるいはその両方を他の機器に送信するなど、他の機器に情報を送信可能であってもよい。
なお、測定装置10と処理装置20とが一体化されて、1つの装置となっていてもよい。また、測定装置10または処理装置20、あるいはその両方がさらに細分化されて、複数の装置として構成されていてもよい。
【0020】
図2は、運動機能判定システム1のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。同図において、運動機能判定システム1は、測定装置10と、処理装置20とを備える。測定装置10は、通電用電極12aと、測定用電極12bと、生体インピーダンス測定回路13と、荷重センサ14と、インタフェース回路15とを備える。処理装置20は、表示デバイス21と、入力デバイス22と、通信回路23と、インタフェース回路24と、記憶デバイス28と、CPU29とを備える。
また、
図1の場合と同様、処理装置20にはパソコン30が接続されている。
【0021】
測定装置10において、左右の通電用電極12aは、ユーザの体内に微弱電流を流す。左右の測定用電極12bは、その間に生じる電位差(電圧)を検出する。
生体インピーダンス測定回路13は、ユーザが、通電用電極12aと測定用電極12bとの両方に接するように左右それぞれの素足を乗せて立っている状態における生体インピーダンスを測定する。具体的には、生体インピーダンス測定回路13は、左右の通電用電極12aに微弱な交流電流を印加し、左右の測定用電極12bを通じて電圧(電位差)を検出し、これらに基づいて、ユーザの生体インピーダンス(インピーダンスZ、インピーダンスZの抵抗成分Rおよびリアクタンス成分X)を求める。なお、インピーダンスZの抵抗成分R及びリアクタンス成分Xは、この際に印加した電流と検出した電圧とを用いて、DFT(Discrete Fourier Transform)処理等の波形処理を行うことにより求める。
その後、得られた生体インピーダンスに基づいて、処理装置20が、ユーザの体組成指標(例えば、体脂肪率など)を求める。
【0022】
荷重センサ14は、矩形の測定台11(
図1)の四隅付近に配置されており、それぞれの位置における荷重を測定する。荷重センサ14の各々が荷重を測定することで、測定台11に加わる荷重およびバランス(測定台11における重心位置)を測定することができる。
但し、荷重センサ14の数および配置は、測定台11に加わる荷重およびバランスを測定可能なものであればよい。例えば、3つの荷重センサ14が、電極12を囲む位置に配置され、測定台11に加わる荷重を3つの荷重センサで支えるようになっていてもよい。
荷重センサ14の各々が測定した荷重に基づいて、処理装置20が、ユーザの体重および、測定台11における重心位置を算出する。
【0023】
インタフェース回路15は、信号線の接続端子を備え、処理装置20のインタフェース回路24と信号線を介してデータのやり取りを行う。特に、インタフェース回路15は、生体インピーダンス測定回路13が測定した生体インピーダンス、および、荷重センサ14の各々が測定した荷重を、インタフェース回路24へ送信する。
但し、測定装置10と処理装置20とがデータをやり取りする方式は有線の方式に限らない。インタフェース回路15がインタフェース回路24と無線通信を行うようにしてもよい。
【0024】
処理装置20において、表示デバイス21は表示画面を有し、各種画像を表示する。特に、処理装置20は、ユーザの筋状態の変化のタイプの判定結果と、筋状態の変化に対する対策とを表示する。表示デバイス21として、液晶パネル、有機EL(Organic Electro-Luminescence)パネル、またはLEDパネルなど、様々な表示デバイスを用いることができる。
【0025】
入力デバイス22は、ユーザの身長や年齢や性別といったユーザの生体情報の入力操作など、各種ユーザ操作を受け付ける。入力デバイス22として、表示デバイス21の表示画面に設置されてタッチパネルを構成するタッチセンサを用いるようにしてもよい。あるいは、入力デバイス22として、タッチセンサに加えて、あるいは代えて、キーボードまたはマウスまたはこれらの組み合わせなど、他の入力デバイスを用いるようにしてもよい。
【0026】
通信回路23は、信号線の接続端子を備え、信号線を介して接続される他の機器とデータのやり取りを行う。特に、通信回路23は、筋状態の変化のタイプの判定結果、または、筋状態の変化に対する対策、あるいはその両方を他の機器に送信する。
但し、通信回路23が他の機器とデータをやり取りする方式は有線の方式に限らない。通信回路23が他の機器と無線通信を行うようにしてもよい。
【0027】
インタフェース回路24は、信号線の接続端子を備え、測定装置10のインタフェース回路15と信号線を介してデータのやり取りを行う。特に、インタフェース回路24は、生体インピーダンス測定回路13が測定した生体インピーダンス、および、荷重センサ14の各々が測定した荷重を、インタフェース回路15から受信する。
【0028】
記憶デバイス28は、各種データを記憶する。特に、記憶デバイス28は、CPU29が算出する、筋力の指標、筋パワーの指標、筋質の指標、筋量の指標それぞれの履歴を記憶する。記憶デバイス28が記憶するこれらの履歴は、CPU29が、筋力の指標の変化率、筋パワーの指標の変化率、筋質の指標の変化率、および、筋量の指標の変化率を算出するために用いられる。
筋力の指標、筋パワーの指標、筋質の指標、筋量の指標は、いずれも、筋指標の例に該当する。ここでいう筋指標とは、筋状態を示す値である。筋力の指標の変化率、筋パワーの指標の変化率、筋質の指標の変化率、および、筋量の指標の変化率は、複数の筋指標の変化を示す変化情報の例に該当する。
【0029】
なお、筋力の指標および筋パワーの指標は、筋の機能的観点から示される指標であり、また、筋質の指標および筋量の指標は、筋の構造的観点から示される指標である。
なお、運動機能判定システム1が筋状態の変化のタイプの判定に用いる筋指標は、筋力の指標、筋パワーの指標、筋質の指標、および、筋量の指標に限らず別の筋指標とすることができる。また、運動機能判定システム1が筋状態の変化のタイプの判定に用いる筋指標の数も、4つに限らず2つ以上であればよい。
【0030】
なお、記憶デバイス28は、測定装置10の内部記憶デバイスであってもよいし、測定装置10に外付けされる外部記憶デバイスであってもよいし、これら両方を含んで構成されていてもよい。
CPU29は、記憶デバイス28からプログラムを読み出して実行することで、各種処理を行う。
【0031】
図3は、処理装置20の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、処理装置20は、表示部210と、操作入力部220と、通信部230と、測定値取得部240と、記憶部280と、制御部290とを備える。制御部290は、荷重算出部291と、体組成指標算出部292と、変化情報取得部293と、推定エネルギー必要量算出部294と、タイプ判定部295と、対策決定部296とを備える。
表示部210は、表示デバイス21を用いて構成され、各種画像を表示する。
操作入力部220は、入力デバイス22を用いて構成され、ユーザ操作を受ける。
通信部230は、通信回路23を用いて構成され、他の機器と通信を行う。
測定値取得部240は、インタフェース回路24を用いて構成され、生体インピーダンス測定回路13が測定した生体インピーダンス、および、荷重センサ14の各々が測定した荷重を、測定装置10から受信する。
記憶部280は、記憶デバイス28を用いて構成され、各種情報を記憶する。
【0032】
制御部290は、処理装置20の各部を制御して各種処理を行う。制御部290は、CPU29が記憶デバイス28からプログラムを読み出して実行することで構成される。
荷重算出部291は、4つの荷重センサ14が測定した荷重の合計から測定台11の重量を減算して、測定台11にかかる荷重を算出する。すなわち、ユーザが測定台に乗っている時の4つの荷重センサの合計とユーザが測定台に乗っていない時の4つの荷重センサの合計との差をユーザの体重として示す。
体組成指標算出部292は、インタフェース回路24が測定装置10から受信した生体インピーダンスに基づいて、ユーザの体組成指標(例えば、体脂肪率など)を求める。
変化情報取得部293は、筋力の指標の変化率、筋パワーの指標の変化率、筋質の指標の変化率、および、筋量の指標の変化率を取得する。上記のように、これらの値は変化情報の例に該当する。
【0033】
変化情報取得部293は、入力デバイス22が入力操作を受け付けたユーザの生体情報を取得して記憶部280に記憶させる。そして、変化情報取得部293は、測定値取得部240が取得した生体インピーダンス、および、荷重算出部291が算出した荷重に基づいて、さらには、必要に応じてユーザの生体情報に基づいて、筋力の指標、筋パワーの指標、筋質の指標、筋量の指標のそれぞれを算出し、算出した値を記憶部280に記憶させる。
また、変化情報取得部293は、筋力の指標の過去値(例えば、前回の値)を記憶部280から読み出して、計算した今回の値からそれぞれ減算し、減算結果を過去値で除算し、100を乗じることで、筋力の指標の変化率を算出する。同様に、変化情報取得部293は、筋パワーの指標、筋質の指標、筋量の指標のそれぞれについて変化率を算出する。
なお、変化情報取得部293が用いる過去値(筋力の指標の過去値、筋パワーの指標の過去値、筋質の指標の過去値、および、筋力の指標の過去値)として、例えば3か月前、6か月前、あるいは、1年前など、様々な時期の過去値を用いることができる。
推定エネルギー必要量算出部294は、推定エネルギー必要量を算出する。ここでいう推定エネルギー必要量とは、エネルギーの出納が0となる確率が最も高くなると推定される習慣的な1日あたりのエネルギー摂取量である。
【0034】
タイプ判定部295は、変化情報取得部293が取得する変化情報に基づいて、筋状態の変化のタイプが、後述する
図9および
図10に示される13タイプの何れに該当するかを判定する。
但し、タイプ判定部295が判定するタイプは、
図9および
図10に示されるものに限らない。例えば、
図11を参照して後述するように、タイプ判定部295が、高齢者用の筋状態の変化のタイプを判定するようにしてもよい。或いは、
図12および13を参照して後述するように、タイプ判定部295が、ユーザの年齢に応じた評価に基づく筋状態の変化のタイプを判定するようにしてもよい。
対策決定部296は、タイプ判定部295が判定した筋状態の変化のタイプに基づいて、筋状態の変化に対する対策を決定する。具体的には、対策決定部296は、推奨される運動、または、推奨される食事、あるいはその両方を決定する。
【0035】
次に、運動機能判定システム1が行う処理について説明する。
図4は、運動機能判定システム1が行う処理手順の例を示す説明図である。
同図の処理において、操作入力部220は、ユーザの身長、年齢、性別、および、ユーザの活動量に関するアンケートの回答など、ユーザに関する生体情報の入力を受ける(ステップS101)。そして、変化情報取得部293が当該生体情報を取得して、記憶部280に記憶させる。なお、記憶部280が既に当該生体情報を記憶している場合、ステップS101で、操作入力部220への生体情報の入力に代えて、変化情報取得部293が記憶部280から生体情報を読み出すようにしてもよい。これにより、ユーザは生体情報の入力操作を行う必要がなく、この点においてユーザの負担を軽減することができる。
【0036】
次に、生体インピーダンス測定回路13が、ユーザの生体インピーダンスを測定し、荷重算出部291が、ユーザの体重等の荷重を算出する(ステップS102)。
図5は、生体インピーダンスの測定および荷重の算出の際のユーザの動きを示す説明図である。
ユーザは、同図の(1)に示すように、測定装置10の測定台11に足を乗せた状態で、測定装置10の近くに置かれた椅子に座る。その際、ユーザは素足になり、左足、右足のいずれも、通電用電極12aと測定用電極12bとの両方に接するように足を置く。
【0037】
次に、ユーザは、同図の(2)に示すように、椅子に座った状態から立ち上がる。その際、ユーザは、左足、右足のいずれも、通電用電極12aと測定用電極12bとの両方に接したままになるようにする。
さらに、ユーザは、同図の(3)に示すように、測定台11の上に立ち、体のふらつきがなくなり安定するまで待つ。その際、ユーザは、左足、右足のいずれも、通電用電極12aと測定用電極12bとの両方に接したままになるようにする。
【0038】
このように、ユーザが立ち上がり動作を行う間、荷重算出部291は、荷重センサ14が測定した荷重に基づいて、測定台11にかかる荷重、および、測定台11における重心位置を求める。また、生体インピーダンス測定回路13は、左右の通電用電極12aの間の電流と左右の測定電極12bの間の電位差(電圧)とに基づいて生体インピーダンス(インピーダンスZ、インピーダンスZの抵抗成分Rおよびリアクタンス成分X)を求める。
【0039】
図6は、荷重算出部291が算出する荷重の例を示すグラフである。同図の横軸は時刻を示し、縦軸は荷重を示している。また、同図のFは、一連の動作において、荷重算出部291が算出する荷重の最大値を示し、wは、ユーザの体重を示し、0は、測定台に何も乗っていないときの値を示している。
時刻T11の区間では、
図5の(1)のように、ユーザが椅子に座っている状態から立ち上がろうとすると、まず、臀部に荷重が移行し、椅子が当該荷重を支えるため、荷重算出部291が算出する荷重が一旦減少する。その後、臀部にて椅子にかかる荷重が減少し、荷重算出部291が算出する荷重が増加する。荷重算出部291が算出する荷重は、臀部が椅子から離れる時刻の付近で最大になる。
【0040】
時刻T12の区間では、
図5の(2)のように、ユーザが椅子から立ち上がる途中の状態を示し、時刻T11における荷重の増加後、荷重算出部291が算出する荷重が減少する。
時刻T13の区間では、
図5の(3)のように、ユーザが立ち上がった状態となると、荷重算出部291が算出する荷重は、ユーザの体重wに収束していく。
【0041】
図4のステップS102の後、変化情報取得部293は、ステップS102で得られた荷重および生体インピーダンスに基づいて、筋力の指標、筋パワーの指標、筋質の指標、および、筋量の指標を取得する(ステップS103)。
ここで、
図7を参照して、筋力、筋パワー、筋質、筋量の変化について説明する。
【0042】
図7は、筋が衰える過程の例を示す説明図である。
筋が衰える際の第1ステージとして、神経的要因により筋力が低下する。具体的には、筋に対する収縮等の指令が筋へ伝わり辛くなって筋力が低下する。
【0043】
次の第2ステージとして、筋萎縮が生じて筋質が低下する。その際、加齢と不活動とで萎縮する筋が異なる。ここでいう不活動は、運動をしないことまたは運動不足であることを示す。
加齢の場合、速筋線維が萎縮する。この場合、筋の収縮速度が低下する。一方、不活動の場合、遅筋線維が萎縮する。この場合、筋の収縮速度は低下しない。
【0044】
次の第3ステージとして、筋量が減少する。
そして、第4ステージとして、最大筋力(筋パワー)が低下する。
このように、筋力、筋パワー、筋質、筋量の変化をみれば、
図7に示される筋状態の変化の過程におけるどのステージにあるかが分かり、ステージに応じた対策を行い得る。そこで、変化情報取得部293は、上記のように、筋力の指標、筋パワーの指標、筋質の指標、および、筋量の指標それぞれの変化率を算出している。
【0045】
(筋力の指標の取得)
変化情報取得部293は、
図4のステップS102で荷重算出部291が算出した荷重の最大値Fを、ユーザの体重wで除算した最大値体重比F/wを、筋力の指標として算出する。但し、変化情報取得部293が取得する筋力の指標は、最大値体重比F/wに限らない。例えば、変化情報取得部293が、荷重の最大値と荷重の最小値との差をユーザの体重で除算した値を、筋力の指標として算出するようにしてもよい。あるいは、変化情報取得部293が、握力計を用いての握力の測定値を、筋力の指標として取得するようにしてもよいし、ハンドヘルドダイナモメーターでの筋力の測定値を、筋力の指標として取得するようにしてもよい。
【0046】
なお、変化情報取得部293が、筋力の指標として最大値体重比F/wを用いる場合、荷重の最大値と荷重の最小値との差をユーザの体重で除算した値を用いる場合よりも精度が高いと考えられる。荷重が最小となるタイミングを正確に特定できない可能性があるからである。
なお、荷重の最大値の特定が困難な場合、変化情報取得部293が、荷重が所定の荷重小閾値(例えば体重の20%)以下に減少した後、最初に所定の荷重大閾値(例えば体重の105%)以上に増加した領域の中での荷重の最大値を検出するようにしてもよい。
【0047】
(筋パワーの指標の取得)
変化情報取得部293は、
図4のステップS102で荷重算出部291が算出した荷重の変化率の最大値RFDを、ユーザの体重wで除算した最大変化率体重比RFD/wを、筋パワーの指標として算出する。
図8は、荷重の変化率の例を示すグラフである。同図の横軸は時刻を示し、縦軸は荷重の変化率を示している。変化率が0より大きい場合、荷重が増加している。一方、変化率が0より小さい場合、荷重が減少している。また、同図のRFDは、荷重の変化率の最大値を示している。
但し、変化情報取得部293が取得する筋パワーの指標は、最大変化率体重比RFD/wに限らない。例えば、変化情報取得部293が、等速性筋力測定を運動速度を変えて行って得られた測定値を、筋パワーの指標として取得するようにしてもよい。あるいは、変化情報取得部293が、垂直跳びの結果の測定値または立ち幅跳びの結果の測定値を、筋パワーの指標として取得するようにしてもよい。
【0048】
(筋質の指標の取得)
変化情報取得部293は、
図4のステップS102で生体インピーダンス測定回路13が測定した生体インピーダンスに基づいて、筋質の指標を算出する。例えば、変化情報取得部293は、筋質の指標として、生体インピーダンスにおける抵抗成分Rをリアクタンス成分Xで除算したR/Xを算出する。
但し、変化情報取得部293が取得する筋質の指標は、R/Xに限らない。例えば、変化情報取得部293が、高周波でのインピーダンスZhighと低周波でのインピーダンスZlowとの比率を、筋質の指標として算出するようにしてもよい。さらに例えば、変化情報取得部293が、5キロヘルツでのインピーダンスZlowを250キロヘルツでのインピーダンスZhighで除算した値を、筋質の指標として算出するようにしてもよい。
【0049】
(筋量の指標の取得)
変化情報取得部293は、
図4のステップS102で生体インピーダンス測定回路13が測定した生体インピーダンスに基づいて、筋量の指標を算出する。例えば、変化情報取得部293は、生体インピーダンス、体重、身長、年齢および性別などを用いて筋量を算出し、この算出した筋量を、ユーザの身長の二乗(Ht
2)で除算する。なお、筋量の指標として筋量をユーザの身長の二乗で除算するのは、身長と筋量とには相関関係があるため、身長の影響を除外または低減するために行うものである。筋量をユーザの身長の二乗で除算して得られる筋量の指標を「筋量/Ht
2」と表記する。
但し、変化情報取得部293が取得する筋量の指標は、筋量/Ht
2に限らない。例えば、変化情報取得部293が、四肢筋量をユーザの身長の二乗で除算した値(四肢筋量/Ht
2)を、筋量の指標として算出するようにしてもよい。あるいは、変化情報取得部293が、下肢筋量をユーザの身長の二乗で除算した値(下肢筋量/Ht
2)を、筋量の指標として算出するようにしてもよいし、下肢筋量をユーザの体重wで除算した値(下肢筋量/w)を、筋量の指標として算出するようにしてもよい。
【0050】
また、
図4のステップS102の後、推定エネルギー必要量算出部294は、推定エネルギー必要量を算出する(ステップS104)。
具体的には、推定エネルギー必要量算出部294は、基礎代謝量に身体活動レベルの係数を乗算した値を、推定エネルギー必要量として算出する。例えば、推定エネルギー必要量算出部294は、年齢、性別および体重と基礎代謝量とを対応付けて予め記憶しておき、ユーザの年齢、性別および体重に対応付けられた基礎代謝量を読み出す。また、推定エネルギー必要量算出部294は、ユーザへのアンケートの回答から、身体活動レベルを高、中、低の3段階で分類し、年齢に応じてレベル毎に予め記憶している係数を読み出す。そして、推定エネルギー必要量算出部294は、得られた基礎代謝量に係数を乗算して、推定エネルギー必要量を算出する。
【0051】
ステップS103およびS104の後、タイプ判定部295が、ユーザの筋状態の変化のタイプ判定を行う(ステップS105)。
図9は、タイプ判定部295が行うユーザの筋状態の変化のタイプ判定の処理手順の例を示す説明図である。同図は、一般標準者用の、筋状態の変化のタイプ判定の処理手順の例を示している。
同図において、タイプ判定部295は、筋力の指標の変化率Δ%F/wが0より小さいか否か、すなわち、筋力が減少しているか否かを判定する(ステップS201)。なお、F/wは筋力Fを体重wで除算した値であり、筋力の指標の例に該当する。また、「Δ%」は、変化率を示す。例えば、Δ%F/wは、F/wの変化率を示す。
【0052】
ステップS201において、Δ%F/wが0より小さいと判定した場合(ステップS201:Yes)、タイプ判定部295は、筋パワーの指標の変化率Δ%RFD/wが0より小さいか否か、すなわち、筋パワーが低下しているか否かを判定する(ステップS202)。
ステップS202において、Δ%RFD/wが0より小さいと判定した場合(ステップS202:Yes)、タイプ判定部295は、筋質の指標R/Xの変化率Δ%R/Xが0より小さいか否か、すなわち、筋萎縮が起きているか否かを判定する(ステップS203)。
【0053】
ステップS203において、Δ%R/Xが0より小さいと判定した場合(ステップS203:Yes)、タイプ判定部295は、筋量の指標の変化率Δ%筋量/Ht
2が0より小さいか否か、すなわち、筋量が減少しているか否かを判定する(ステップS204)。
ステップS204において、Δ%筋量/Ht
2が0より小さいと判定した場合(ステップS204:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをA:俊敏動作低下タイプと判定する(ステップS205)。すなわち、タイプA(俊敏動作低下タイプ)では、速筋線維が萎縮している可能性が大きいと考えられる分類を表す。
【0054】
一方、ステップS204において、Δ%筋量/Ht
2の変化率が0以上であると判定した場合(ステップS204:No)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをB:俊敏動作低下注意タイプと判定する(ステップS206)。すなわち、タイプB(俊敏動作低下注意タイプ)ではタイプAと同様、速筋線維が萎縮している可能性があるが、タイプAの場合よりも、萎縮の可能性が小さい、または、萎縮の程度が軽いと考えられる分類を表す。
【0055】
一方、ステップS203において、Δ%R/Xが0以上であると判定した場合(ステップS203:No)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをC:神経的要因による筋力・筋パワー低下タイプと判定する(ステップS207)。すなわち、タイプC(神経的要因による筋力・筋パワー低下タイプ)では、今後、筋線維の萎縮が起こる可能性が大きいと考えられる分類を表す。
【0056】
一方、ステップS202において、Δ%RFD/wが0以上であると判定した場合(ステップS202:No)、タイプ判定部295は、筋質の指標の変化率Δ%R/Xが0より小さいか否か、すなわち、筋萎縮が起きているか否かを判定する(ステップS208)。
ステップS208において、Δ%R/Xが0より小さいと判定した場合(ステップS208:Yes)、タイプ判定部295は、筋量の指標の変化率が0より小さいか否か、すなわち、筋量が減少しているか否かを判定する(ステップS209)。
【0057】
ステップS209において、Δ%筋量/Ht
2が0より小さいと判定した場合(ステップS209:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをD:動作持続性低下タイプと判定する(ステップS210)。すなわち、タイプD(動作持続性低下タイプ)では、遅筋線維が萎縮している可能性が大きいと考えられる分類を表す。
【0058】
一方、ステップS209において、Δ%筋量/Ht
2が0以上であると判定した場合(ステップS209:No)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをE:動作持続性低下注意タイプと判定する(ステップS211)。すなわち、タイプE(動作持続性低下注意タイプ)ではタイプDと同様、遅筋線維が萎縮している可能性があるが、タイプDの場合よりも、萎縮の可能性が小さい、または、萎縮の程度が軽いと考えられる分類を表す。
【0059】
一方、ステップS208において、Δ%R/Xが0以上であると判定した場合(ステップS208:No)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをF:筋力低下タイプと判定する(ステップS212)。すなわち、タイプFでは、筋力が低下していると考えられる分類を表す。
一方、ステップS201において、Δ%F/wが0以上であると判定した場合(ステップS201:No)、
図10のステップS221へ遷移する。
【0060】
図10は、Δ%F/wが0以上であると判定した場合、すなわち、筋力が減少していないと判定した場合に、タイプ判定部295が行うユーザの筋状態の変化のタイプ判定の処理手順の例を示す説明図である。同図において、タイプ判定部295は、筋パワーの指標の変化率Δ%RFD/wが0より小さいか、すなわち、筋パワーが低下しているか否かを判定する(ステップS221)。
ステップS221において、Δ%RFD/wが0より小さいと判定した場合(ステップS221:Yes)、タイプ判定部295は、筋質の指標の変化率Δ%R/Xが0より小さいか否か、すなわち、筋萎縮が起きているか否かを判定する(ステップS222)。
【0061】
ステップS222において、Δ%R/Xが0より小さいと判定した場合(ステップS222:Yes)、タイプ判定部295は、筋量の指標の変化率が0より小さいか否か、すなわち、筋量が減少しているか否かを判定する(ステップS223)。
ステップS223において、Δ%筋量/Ht
2が0より小さいと判定した場合(ステップS223:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをG:俊敏動作低下タイプと判定する(ステップS224)。すなわち、タイプGでは、速筋線維が萎縮している可能性が大きい点でタイプAと同様であるが、食事の行動提案において異なると考えられる分類を表す。
【0062】
一方、ステップS223において、Δ%筋量/Ht
2が0以上であると判定した場合(ステップS223:No)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをH:俊敏動作低下注意タイプと判定する(ステップS225)。すなわち、タイプHでは、速筋線維が萎縮している可能性がある点でタイプBと同様であるが、食事の行動提案において異なると考えられる分類を表す。
【0063】
一方、ステップS222において、Δ%R/Xが0以上であると判定した場合(ステップS222:No)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをI:神経的要因による筋力・筋パワー低下タイプと判定する(ステップS226)。すなわち、タイプIでは、神経的要因と考えられる点や、今後、筋線維の萎縮が起こる可能性が大きい点で、タイプCと同様であるが、食事の行動提案において異なると考えられる分類を表す。
【0064】
一方、ステップS221において、Δ%RFD/wが0以上であると判定した場合(ステップS221:No)、タイプ判定部295は、筋質の指標の変化率Δ%R/Xが0より小さいか否か、すなわち、筋萎縮が起きているか否かを判定する(ステップS227)。
ステップS227において、Δ%R/Xが0より小さいと判定した場合(ステップS227:Yes)、タイプ判定部295は、筋量の指標の変化率が0より小さいか否か、すなわち、筋量が減少しているか否かを判定する(ステップS228)。
【0065】
ステップS228において、Δ%筋量/Ht
2が0より小さいと判定した場合(ステップS228:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをJ:筋萎縮タイプと判定する(ステップS229)。すなわち、タイプJでは、筋萎縮が起きていると考えられる分類を表す。
一方、ステップS228において、Δ%筋量/Ht
2が0以上であると判定した場合(ステップS228:No)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをK:脂肪浸潤タイプと判定する(ステップS230)。すなわちタイプK(脂肪浸潤タイプ)では、脂肪が筋肉に浸潤していると考えられる分類を表す。
【0066】
一方、ステップS227において、Δ%R/Xが0以上であると判定した場合(ステップS227:No)、タイプ判定部295は、筋量の指標の変化率が0より小さいか否か、すなわち、筋量が減少しているか否かを判定する(ステップS231)。
ステップS231において、Δ%筋量/Ht
2が0より小さいと判定した場合(ステップS231:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをL:筋量減少タイプと判定する(ステップS232)。すなわち、タイプLでは、筋量が低下していると考えられる分類を表す。
一方、ステップS231において、Δ%筋量/Ht
2が0以上であると判定した場合(ステップS231:No)、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをM:問題なしと判定する(ステップS233)。すなわち、タイプMでは、筋状態には問題が生じていないと考えられる分類を表す。
このように、タイプ判定部295は、筋状態の変化をタイプAからタイプMまでの13タイプのいずれかに分類する。
【0067】
なお、タイプの名前は
図9および
図10に示すものに限らない。
図11は、別のタイプ名を付す場合にタイプ判定部295が行う、ユーザの筋状態の変化のタイプ判定の処理手順の例を示す説明図である。
図9が、一般標準者用の、筋状態の変化のタイプ判定の処理手順の例を示しているのに対し、
図11は、高齢者用の、筋状態の変化のタイプ判定の処理手順の例を示している。なお、
図11は、
図9に対応している。図示および説明を省略するが、タイプ判定部295は、
図9に対応する
図11の処理と同様に、
図10に対応する、高齢者用の、筋状態の変化のタイプ判定の処理も行う。
図11のステップS201からS209までの処理は、
図9のステップS201からS209までと同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
一方、
図11では、タイプの名前が
図9の場合と異なっている。
【0068】
図9のステップS205に対応する
図11のステップS305では、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプを老化進行タイプと判定する。老化進行タイプでは、筋状態の老化が進行して速筋線維が萎縮している可能性が大きいと考えられる分類を表す。
図9のステップS206に対応する
図11のステップS306では、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプを老化注意タイプと判定する。すなわち、老化注意タイプでは、老化進行タイプの場合よりも速筋線維の萎縮の可能性が小さい、または、萎縮の程度が軽いが、筋状態の老化に注意する必要があると考えられる分類を表す。
図9のステップS207に対応する
図11のステップS307では、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプを筋力・筋パワー低下タイプと判定する。すなわち、筋力・インパワー低下タイプでは、筋力および筋パワーが低下していると考えられる分類を表す。
【0069】
図9のステップS210に対応する
図11のステップS310では、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプを不活動タイプと判定する。すなわち、不活動タイプでは、運動不足により遅筋線維が萎縮している可能性が大きいと考えられる分類を表す。
図9のステップS211に対応する
図11のステップS311では、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプをやや不活動タイプと判定する。すなわち、やや不活動タイプでは、不活動タイプの場合よりも遅筋線維の萎縮の可能性が小さい、または、萎縮の程度が軽いが、運動不足に注意する必要があると考えられる分類を表す。
【0070】
図9のステップS212に対応する
図11のステップS312では、タイプ判定部295は、筋状態の変化のタイプを筋力低下タイプと判定する。すなわち、筋力低下タイプでは、筋力が低下していると考えられる分類を表す。
このように、筋状態の変化のタイプの名前は、
図9および
図10に示すものに限らない。
【0071】
図4のステップS105の後、タイプ判定部295は、筋の老化度の判定を行う(ステップS106)。
図12は、タイプ判定部295が行う、ユーザの筋状態に対する年齢に応じた評価の処理手順の例を示す説明図である。タイプ判定部295は、
図4のステップS106において、
図12の処理を行う。
図12において、タイプ判定部295は、ユーザの年齢が50歳未満か否かを判定する(ステップS401)。
ステップS401において、ユーザの年齢が50歳未満であると判定した場合(ステップS401:YES)、タイプ判定部295は、
図4のステップS105で判定したタイプが俊敏動作低下タイプ(タイプA)または俊敏動作低下注意タイプ(タイプB)か否かを判定する(ステップS402)。
【0072】
ステップS402において、俊敏動作低下タイプまたは俊敏動作低下注意タイプであると判定した場合(ステップS402:Yes)、タイプ判定部295は、筋力の1日当りの変動率(すなわち、筋力の変動率を日数で除算した値)が基準値(例えば、0.0022パーセント減)よりも筋力低下を示し、または、筋パワーの1日当りの変動率(すなわち、筋パワーの変動率を日数で除算した値)が基準値よりも筋パワー低下を示しているか否かを判定する(ステップS403)。
なお、1日当りの変動率は、式(1)のように示される。
【0073】
1日当りの変動率 = {(今回の測定値 − 過去値)/過去値×100(%)}/過去値を測定した日から今回の測定値を測定した日までの日数 ・・・ (1)
【0074】
ステップS403において、いずれの変動率も基準値よりも低下を示していると判定した場合(ステップS403:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋老化度が高いとの警告と判定する(ステップS404)。この場合、ステップS402での判定結果が筋の老化を示しており、かつ、ステップS403での判定結果が、筋の状態の急激な変化を示している。そこで、タイプ判定部295は、筋の老化に対する注意が特に必要であると判定する。
【0075】
一方、ステップS403において、少なくともいずれかの変動率が基準値よりも低下を示していないと判定した場合(ステップS403:No)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋老化度が高めとの注意と判定する(ステップS405)。この場合、ステップS402での判定結果が筋の老化を示しており、一方、ステップS403での判定結果が、筋の状態の変化が急激ではないことを示している。そこで、タイプ判定部295は、筋の老化に対する注意が必要であると判定する。
【0076】
一方、ステップS402において、俊敏動作低下タイプおよび俊敏動作低下注意タイプのいずれでもないと判定した場合(ステップS402:No)、タイプ判定部295は、
図4のステップS105で判定したタイプが動作持続性低下タイプ(タイプD)または動作持続性低下注意タイプ(タイプE)か否かを判定する(ステップS406)。
ステップS406において、動作持続性低下タイプまたは動作持続性低下注意タイプであると判定した場合(ステップS406:Yes)、タイプ判定部295は、
筋量の1日当たりの変動率が基準値よりも小さいか否かを判定する(ステップS407)。
【0077】
ステップS407において、
筋量の1日当たりの変動率が基準値よりも小さいと判定した場合(ステップS407:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋廃用度が高いとの警告と判定する(ステップS408)。この場合、ステップS406での判定結果が筋の不活用を示しており、かつ、ステップS407での判定結果が、筋の状態の急激な変化を示している。そこで、タイプ判定部295は、筋の廃用に対する注意が特に必要であると判定する。
【0078】
一方、ステップS407において、
筋量の1日当りの変動率が基準値よりも小さくないと判定した場合(ステップS407:No)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋廃用度が高めとの注意と判定する(ステップS409)。この場合、ステップS406での判定結果が筋の不活用を示しており、一方、ステップS403
7での判定結果が、筋の状態の変化が急激ではないことを示している。そこで、タイプ判定部295は、筋の廃用に対する注意が必要であると判定する。
【0079】
一方、ステップS406において、動作持続性低下タイプおよび動作持続性低下注意タイプのいずれでもないと判定した場合(ステップS406:No)、タイプ判定部295は、
図4のステップS105で判定したタイプが筋萎縮タイプまたは脂肪浸潤タイプか否かを判定する(ステップS410)。
ステップS410において、筋萎縮タイプまたは脂肪浸潤タイプであると判定した場合(ステップS410:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋構造低下への注意と判定する(ステップS411)。
【0080】
一方、ステップS410において、筋萎縮タイプおよび脂肪浸潤タイプのいずれでもないと判定した場合(ステップS410:No)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、問題なしと判定する(ステップS412)。
一方、ステップS401において、ユーザの年齢が50歳以上であると判定した場合(ステップS401:NO)、
図13のステップS421へ遷移する。
【0081】
図13は、ユーザの年齢が50歳以上であると判定した場合にタイプ判定部295が行う、ユーザの筋状態に対する年齢に応じた評価の処理手順の例を示す説明図である。同図において、タイプ判定部295は、
図4のステップS105で判定したタイプが俊敏動作低下タイプ(タイプA)または俊敏動作低下注意タイプ(タイプB)か否かを判定する(ステップS421)。
【0082】
ステップS421において、俊敏動作低下タイプまたは俊敏動作低下注意タイプであると判定した場合(ステップS421:Yes)、タイプ判定部295は、筋力の1日当りの変動率が第1基準値(例えば、0.0022パーセント減)よりも筋力低下を示し、かつ、筋パワーの1日当りの変動率が第1基準値よりも筋パワー低下を示しているか否かを判定する(ステップS422)。
【0083】
ステップS422において、いずれの変動率も第1基準値よりも低下を示していると判定した場合(ステップS422:Yes)、タイプ判定部295は、筋力の1日当りの変動率が第2基準値(例えば、0.0036パーセント減)よりも筋力低下を示し、かつ、筋パワーの1日当りの変動率が第2基準値よりも筋パワー低下を示しているか否かを判定する(ステップS423)。
なお、第1基準値または第2基準値のいずれか、または両方を管理者が設定および変更できるようにしてもよい。他の基準値についても、管理者が設定および変更できるようにしてもよい。
【0084】
ステップS423において、いずれの変動率も第2基準値よりも低下を示していると判定した場合(ステップS423:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋老化度が高く点灯に注意との警告と判定する(ステップS424)。この場合、ステップS421での判定結果が筋の老化を示しており、かつ、ステップS422およびS423での判定結果が、筋の状態の急激な変化を示している。そこで、タイプ判定部295は、筋の老化に対する注意が特に必要であると判定する。
【0085】
一方、ステップS423において、少なくともいずれかの変動率が第2基準値よりも低下を示していないと判定した場合(ステップS423:No)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋老化度が高めとの注意と判定する(ステップS425)。この場合、ステップS421での判定結果が筋の老化を示しており、かつ、ステップS422での判定結果が、筋の状態の急激な変化を示している。一方、ステップS423での判定結果が、ステップS424の場合と比較すると筋の状態の変化が急激ではないことを示している。そこで、タイプ判定部295は、筋の老化に対する注意が必要であると判定する。
【0086】
一方、ステップS422において、少なくともいずれかの変動率が第1基準値よりも低下を示していないと判定した場合(ステップS422:No)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、年齢相当の筋の減少であり現状維持に努めると判定する(ステップS426)。
【0087】
一方、ステップS421において、俊敏動作低下タイプおよび俊敏動作低下注意タイプのいずれでもないと判定した場合(ステップS421:No)、タイプ判定部295は、
図4のステップS105で判定したタイプが動作持続性低下タイプ(タイプD)または動作持続性低下注意タイプ(タイプE)か否かを判定する(ステップS427)。
ステップS427において、動作持続性低下タイプまたは動作持続性低下注意タイプであると判定した場合(ステップS427:Yes)、タイプ判定部295は、
筋量の1日当たりの変動率が基準値よりも小さいか否かを判定する(ステップS428)。
【0088】
ステップS428において、
筋量の1日当りの変動率が基準値よりも小さいと判定した場合(ステップS428:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋廃用度が高く活動を促進する必要があるとの警告と判定する(ステップS429)。この場合、ステップS427での判定結果が筋の不活用を示しており、かつ、ステップS428での判定結果が、筋の状態の急激な変化を示している。そこで、タイプ判定部295は、筋の廃用に対する注意が特に必要であると判定する。
【0089】
一方、ステップS428において、
筋量の1日当りの変動率が基準値よりも小さくないと判定した場合(ステップS428:No)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋廃用度が高めとの注意と判定する(ステップS430)。この場合、ステップS27での判定結果が筋の不活用を示しており、一方、ステップS428での判定結果が、筋の状態の変化が急激ではないことを示している。そこで、タイプ判定部295は、筋の廃用に対する注意が必要であると判定する。
【0090】
一方、ステップS427において、動作持続性低下タイプおよび動作持続性低下注意タイプのいずれでもないと判定した場合(ステップS427:No)、タイプ判定部295は、
図4のステップS105で判定したタイプが筋萎縮タイプまたは脂肪浸潤タイプか否かを判定する(ステップS431)。
ステップS431において、筋萎縮タイプまたは脂肪浸潤タイプであると判定した場合(ステップS431:Yes)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、筋構造低下への注意と判定する(ステップS432)。
【0091】
一方、ステップS431において、筋萎縮タイプおよび脂肪浸潤タイプのいずれでもないと判定した場合(ステップS431:No)、タイプ判定部295は、筋状態の評価を、問題なしと判定する(ステップS433)。
このように、タイプ判定部295は、ユーザの年齢が50歳未満か50歳以上かに応じて、筋状態の評価を行う。
【0092】
また、
図4のステップS105の後、対策決定部296は、運動の行動提案を行う(ステップS107)。例えば、対策決定部296は、ステップS105の13タイプと、ウォーキング等の運動とを対応付けて予め記憶しておく。そして、対策決定部296は、ステップS105でタイプ判定部295が判定したタイプに応じた運動を読み出し、ユーザに提示する。運動のユーザへの提示は、例えば、表示部210が表示することで行う。
【0093】
また、
図4のステップS105の後、対策決定部296は、食事の行動提案を行う(ステップS108)。例えば、対策決定部296は、ステップS105の13タイプと、食材およびレシピ案とを対応付けて予め記憶しておく。そして、対策決定部296は、ステップS105でタイプ判定部295が判定したタイプに応じた食材およびレシピ案を読み出し、ユーザに提示する。この栄養の行動提案について、
図14〜
図17を参照して説明する。
【0094】
図14は、筋状態と必要な栄養のカテゴリーとの関係を示す説明図である。同図の各行は、筋状態と、当該筋状態の判定基準と、当該筋状態の原因および現象と、当該筋状態の場合に必要な栄養のカテゴリーとを対応付けて示している。
例えば、筋力低下の場合、判定基準は、
図9のステップS201に示されるように「Δ% F/w<0」となっている。また、筋力低下の原因および現象として、「情報伝達量低下」、「神経劣化」、「筋線維組成比劣化」および「細胞が多い」が示されている。また、筋力低下の場合、脳の栄養が必要であることが示されている。
【0095】
図15は、
図4のステップS105の13タイプと、
図14に示される栄養のカテゴリーとの関係を示す説明図である。同図の行は、タイプAからタイプMまでの13のタイプに対応しており、列は、(1)脳の栄養、(2)筋肉収縮(筋肉収縮時に必要な栄養)、(3)筋細胞(筋細胞を整えるために必要な栄養)、(4)筋グリコーゲンの4つの栄養に対応している。
そして、栄養の要否がパターンの有無で示されている。例えば、タイプB(俊敏動作低下注意タイプ)の場合、上記(1)、(2)、(3)の各栄養が必要であることが、パターン有で示されている。一方、栄養(4)は、タイプBへの対策としては必要でないことがパターン無で示されている。
【0096】
図16は、
図14および
図15に示される栄養のカテゴリーと、具体的な栄養素との関係を示す説明図である。同図の各行は、栄養のカテゴリーと具体的な栄養素とを対応付けて示している。
例えば、脳の栄養に関しては、主栄養素としてトリプトファン(セロトニン)、フェニルアラニン、チロシン(ドーパミン)、GABA(γ−アミノ酪酸)およびロイシンが示されている。また、トリプトファン(セロトニン)の摂取を促進する代謝栄養素として、ビタミンB6、ビタミンB2およびマグネシウムが示されている。
【0097】
図17は、栄養素と食材との関係を示す説明図である。同図の各行は、栄養素と当該栄養素を含む食材とを対応付けて示している。例えば、トリプトファンを含む食材として、バナナ、豆乳 、牛乳、ヨーグルトおよびプロセスチーズが示されている。
図14〜
図17に示されるように、筋状態の変化のタイプと、当該タイプに有効な食材とを対応付けることができる。
【0098】
そこで、対策決定部296は、筋状態の13タイプ(タイプA〜タイプM)と、各タイプに有効な食材、および、当該食材を使用するレシピとを対応付けて予め記憶しておく。そして、対策決定部296は、
図4のステップS105でタイプ判定部295が選択したタイプに対応付けられた食材およびレシピを読み出し、ユーザに提示する。
【0099】
あるいは、対策決定部296が、筋状態の13タイプと、各タイプに有効な食材とを予め記憶しておく。そして、対策決定部296が、
図4のステップS105でタイプ判定部295が選択したタイプに対応付けられた食材読み出してユーザに提示し、さらに、当該食材を含むレシピを検索してユーザに提示するようにしてもよい。ここで、対策決定部296は、例えば、インターネットでレシピを検索する。あるいは、対策決定部296が、専用のデータベースでレシピを検索するようなど、インターネット以外でレシピを検索するようにしてもよい。
【0100】
図18は、表示部210が表示する、筋状態の変化のタイプおよび対策の表示画面の第1の例を示す説明図である。同図は、俊敏動作低下タイプ(タイプA)の場合の表示画面の例を示している。
タイプの表示では、タイプの名称「俊敏動作低下タイプ」に加えて、筋力、筋パワー、筋質および筋量の変化が矢印で示されている。下向きの太い矢印は、大きい低下率を示し、下向きの細い矢印は、小さい低下率を示している。
また、運動の提案では、俊敏動作低下タイプに有効なトレーニングが示されている。栄養の提案では、俊敏動作低下タイプに有効な食材およびレシピが、朝食、昼食および夕食について示されている。
【0101】
図19は、表示部210が表示する、筋状態の変化のタイプおよび対策の表示画面の第2の例を示す説明図である。同図は、動作持続性低下タイプ(タイプD)の場合の表示画面の例を示している。
タイプの表示では、タイプの名称「動作持続性低下タイプ」に加えて、筋力、筋パワー、筋質および筋量の変化が矢印で示されている。
図18の場合と同様、下向きの太い矢印は、大きい低下率を示し、下向きの細い矢印は、小さい低下率を示している。一方、横向きの矢印は筋量が減少していないこと、すなわち筋量を維持していることが横向きの矢印で示されている。
また、
図18の場合と同様、運動の提案では、俊敏動作低下タイプに有効なトレーニングが示されている。栄養の提案では、俊敏動作低下タイプに有効な食材およびレシピが、朝食、昼食および夕食について示されている。
【0102】
なお、対策決定部296が、運動や栄養摂取を行うタイミングも決定するようにしてもよい。例えば、グリコーゲンは朝または運動後に摂取することが有効である。そこで、対策決定部296は、朝食時または運動後にグリコーゲンを摂取することを決定する。そして、表示部210は、朝食時またはウォーキング後にグリコーゲンを摂取するといった条件に応じた、運動の提案およびレシピを表示する。
【0103】
以上のように、変化情報取得部293が、複数の筋指標の変化を示す変化情報を取得する。そして、タイプ判定部295は、変化情報に基づいて、筋状態の変化のタイプを判定する。
このように、タイプ判定部295が、筋状態の変化に基づいてタイプを判定することで、生じている問題に応じたタイプ判定を行うことができ、加齢または不運動など原因に応じたタイプ判定を行うことができる。これにより、筋状態に対して有効な対策を提示することが可能になる。
【0104】
また、対策決定部296は、タイプ判定部295が判定した筋状態の変化のタイプに基づいて、筋状態の変化に対する対策を決定する。これにより、対策決定部296は、筋状態に応じた有効な対策を決定することができる。
具体的には、対策決定部296は、筋状態に応じた有効な運動や食事を決定することができる。
【0105】
また、変化情報取得部293は、変化情報として、筋力の変化と、筋パワーの変化と、筋質の変化と、筋量の変化とを示す情報を取得する。
タイプ判定部295は、当該変化情報に基づいて筋状態の変化のタイプを判定することで、加齢や不運動など原因に応じたタイプ分類を行うことができる。そして、対策決定部296は、当該タイプ分類に応じて対策を決定することで、有効な対策を決定することができる。
【0106】
また、タイプ判定部295は、判定対象者であるユーザの年齢に応じて選択した判定基準を用いて、筋状態の変化のタイプを判定する。
これにより、タイプ判定部295は、筋状態に対する年齢の影響をタイプの判定に反映させることができる。
【0107】
なお、以上では、筋の萎縮など筋の機能が低下する場合を例に、運動機能判定システム1が行う処理について説明したが、筋の発達など筋の機能が向上する場合に運動機能判定システム1を適用するようにしてもよい。具体的には、タイプ判定部295が、筋の機能が低下する場合に加えて、或いは代えて、筋の機能が向上する場合に、筋状態の変化のタイプを判定するようにしてもよい。また、対策決定部296が、筋の機能が低下する場合に加えて、或いは代えて、筋の機能が向上する場合に、筋状態の変化に対する対策を決定するようにしてもよい。
【0108】
なお、制御部290の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0109】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。