特許第6480168号(P6480168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6480168
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】ウォッシャー液の加熱装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/50 20060101AFI20190225BHJP
   B60S 1/48 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   B60S1/50
   B60S1/48 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-244323(P2014-244323)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-107676(P2016-107676A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英法
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−305060(JP,A)
【文献】 米国特許第06321036(US,B1)
【文献】 米国特許第03962560(US,A)
【文献】 特開平02−070557(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/010538(WO,A1)
【文献】 米国特許第01873820(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第02454689(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/46
B60S 1/48
B60S 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を有しウォッシャー液を収容する容器であって、前記容器の下端である前記中心軸線方向の第一端と、前記第一端とは反対側の第二端とを含む前記容器と、
前記容器の前記第一端に取り付けられて、ウォッシャー液の収容空間に対面する蓋部と、
前記蓋部に基端部が取り付けられて、前記収容空間に向けて延在する加熱手段と、
前記収容空間に配置されて、前記収容空間のウォッシャー液を流出させる流出口を有する流出パイプと、を備え、
前記流出口は、前記加熱手段の先端面と前記容器の前記第二端との間に設けられており、
前記流出口を前記容器の中心軸線方向に垂直な仮想平面に投影した領域と、前記加熱手段の先端面を前記仮想平面に投影した領域とが、少なくとも一部重なっていることを特徴とするウォッシャー液の加熱装置。
【請求項2】
前記流出口は、前記加熱手段の軸線上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のウォッシャー液の加熱装置。
【請求項3】
前記流出口は、前記容器の中心軸線上に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のウォッシャー液の加熱装置。
【請求項4】
前記流出パイプは、前記加熱手段の先端部に取り付けられた固定部材に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のウォッシャー液の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォッシャー液の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冬季の霜取り等のために、ウォッシャー液の加熱装置が車両等に搭載されている。たとえば、特許文献1には、保温貯湯室に加熱室を収容し、加熱室の内部に電気式ヒーターを収容した構造を有するウォッシャー液の加熱装置が記載されている。この特許文献1に記載された加熱装置では、ウォッシャー液の流出路が加熱室の上部で開口することにより、保温貯湯室のウォッシャー液を加熱室の内部に流入させることができる。ウォッシャー液は、加熱室の内部で電気式ヒーターによって加熱された後、ウォッシャーポンプの駆動によってウォッシャーノズルに供給され、ウォッシャーノズルから噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5536680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウォッシャー液の加熱装置の加熱室に流出路が開口されている構成では、ウォッシャー液の上方側に空気層が形成されることがある。この場合、ウォッシャー液の加熱装置がオンされた状態で車両が傾斜される、又はウォッシャー液の加熱装置自体が傾斜して取り付けられている等によってヒーターの先端部がウォッシャー液から露出してしまうことがある。この露出した先端部はいわゆる空焚き状態になり、その状態の先端部にウォッシャー液が触れるとウォッシャー液の蒸気が発生してしまう。このウォッシャー液の蒸気がウォッシャーノズルから噴射されて冷やされるとき、白い湯気となり、車両の故障等と認識されるおそれがある。また、加熱手段の一部が部分的に高温になってしまうので加熱装置自体も損傷しやすくなる。
【0005】
本発明は、ウォッシャー液の上方側に空気層が形成された場合であっても、湯気等の現象が発生することを防止するとともに加熱装置の損傷を防止できるウォッシャー液の加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるウォッシャー液の加熱装置は、中心軸線を有しウォッシャー液を収容する容器であって、容器の下端である中心軸線方向の第一端と、第一端とは反対側の第二端とを含む容器と、容器の第一端に取り付けられて、ウォッシャー液の収容空間に対面する蓋部と、蓋部に基端部が取り付けられて、収容空間に向けて延在する加熱手段と、収容空間に配置されて、収容空間のウォッシャー液を流出させる流出口を有する流出パイプと、を備え、流出口は、加熱手段の先端面と容の第二端との間に設けられており、流出口を容器の中心軸線方向に垂直な仮想平面に投影した領域と、加熱手段の先端面を仮想平面に投影した領域とが、少なくとも一部重なっている。
【0007】
このウォッシャー液の加熱装置によれば、容器の第一端に蓋部が取り付けられ、蓋部に基端部が取り付けられた加熱手段は、容器の収容空間で延在している。容器の収容空間には、収容空間のウォッシャー液を流出させる流出口を有する流出パイプが配置されている。流出口は、加熱手段の先端面と、容器の第一端とは反対側の第二端との間に設けられている。すなわち、ウォッシャー液の加熱装置が使用される時、加熱手段の先端部は、ウォッシャー液中に位置し、ウォッシャー液から露出しにくい。そして、流出口と加熱手段の先端面とが、それぞれ容器の中心軸線方向に垂直な仮想平面に対し投影した投影領域は少なくとも一部重なっている。この場合、ウォッシャー液の加熱装置がどの方向に傾斜しても、加熱手段の先端部は、流出口を通る水平面より容器の第一端側に位置する。よって、ウォッシャー液の加熱装置が傾斜された場合であっても、加熱手段の先端部は、ウォッシャー液の上方側に露出しにくく、湯気等の現象が発生することを防止できる。
【0008】
また、流出口は、加熱手段の軸線上に設けられてもよい。この場合、流出口は、加熱手段の直上に位置するため、ウォッシャー液の加熱装置が大きく傾斜した場合であっても、湯気等の現象が抑制される。
【0009】
また、流出口は、容器の中心軸線上に設けられてもよい。この場合、ウォッシャー液の加熱装置がどの方向に傾斜されても、容器に収容されるウォッシャー液の量が大幅に減ることなく、ウォッシャー液の加熱装置を効率よく使用できる。
【0010】
また、流出パイプは、加熱手段の先端部に取り付けられた固定部材に固定されてもよい。この場合、流出パイプの先端部が固定されているため、流出口の位置が安定している。よって、より安定的にウォッシャー液の液面が維持される。また、加熱手段の先端部と流出口の相対位置が一定に保たれるため、加熱手段の先端が空気層に突出してしまい空焚き状態になる可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウォッシャー液の上方側に空気層が形成された場合であっても、湯気等の現象を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を用いたウォッシャー液の供給システムを概略的に示す図である。
図2図1中のウォッシャー液の加熱装置を示す分解斜視図である。
図3図1中のウォッシャー液の加熱装置を示す平面断面図である。
図4図3のIV−IV断面図である。
図5図1中のウォッシャー液の加熱装置が傾斜した場合を示す側面断面図である。
図6】(a)及び(b)は、図1中のウォッシャー液の加熱装置が傾斜し、ウォッシャー液の液面が流出口を通る場合を示す側面断面図である。
図7図3のVII−VII断面図であり、ウォッシャー液の加熱装置の流入口及び整流板を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るウォッシャー液の加熱装置3を自動車のウォッシャー液の供給システムに適用した例について説明する。図1に示されるように、ウォッシャー液の供給システム10は、ウォッシャー液を貯留するウォッシャー液タンク1と、ウォッシャー液タンク1の出口側に設けられたウォッシャー液ポンプ2と、自動車のフロントウィンドウガラスに対向して設けられたウォッシャー液ノズル8と、を備えている。供給システム10は、さらに、ウォッシャー液ポンプ2とウォッシャー液ノズル8との間に設けられたウォッシャー液の加熱装置3を備えている。ウォッシャー液ポンプ2およびウォッシャー液の加熱装置3には、操作部6が接続されている。操作部6が自動車のドライバ等によって操作されることにより、ウォッシャー液ポンプ2は作動され得る。上記の各装置は、管路7によって接続されている。ウォッシャー液タンク1は、管路7を介してウォッシャー液の注入口に連結されている。
【0015】
図2ないし図4に示されるように、ウォッシャー液の加熱装置3は、円筒状の容器60と、容器60の中心軸線O方向の第一端に取り付けられて容器60の開口部61を閉鎖する蓋部40と、蓋部40に取り付けられた加熱手段50と、を備えている。容器60は、ウォッシャー液を収容する収容空間62を有している。加熱手段50は、その基端部51が蓋部40に取り付けられており、容器60の収容空間62に向けて延在している。ここで、加熱手段50の基端部51とは、加熱手段50における中心軸線O方向の第一端側の部分である。
【0016】
容器60は、板状の支持部材92と固定バンド91とによって、自動車の内部に固定される。容器60は、魔法瓶と同様の2重構造を有し、収容空間62内のウォッシャー液を保温するための断熱構造を有する。容器60の内壁63は、例えばステンレス等の金属または金属メッキを施したガラス等で構成される。容器60の外壁64は、ステンレス等の金属で構成される。内壁63と外壁64との間には真空層68が形成されている。
【0017】
開口部61が形成された容器60の第一端において、その外周面にはねじ部65が形成されており、内周面にはねじ部66が形成されている。本実施形態において、「下」は、容器60を基準として第一端側、すなわち蓋部40側を意味する。
【0018】
蓋部40は、ウォッシャー液の収容空間62に対面しており、この収容空間62を密閉している。蓋部40は、収容空間62に対面する中栓43と、開口部61の外周面に設けられたねじ部65に装着されるカバー42と、中栓43の下面を覆うようにカバー42に取り付けられる外蓋41とを有する。外蓋41は、カバー42の外周面の下側に形成されたねじ部44にねじ込まれることにより、カバー42に取り付けられる。外蓋41と容器60の開口部61側の端面との間には、円環状のパッキン45(図4及び図5参照)が設けられている。蓋部40を構成する各部材は、たとえば、ポリフェニレンスルファイド (PPS)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂によって構成されている。
【0019】
中栓43の外周面には、ねじ部46が形成されている。中栓43は、ねじ部46と、容器60の開口部61のねじ部66とを螺合させることによって、容器60に取り付けられる。中栓43の上面には、その外周部に沿ってパッキン47を装着するための溝部が形成されている。収容空間62の開口部61は、中栓43とパッキン47とによって密閉される。中栓43には、収容空間62側に凹んで下方に開口する凹部48が形成されている。凹部48にはウレタン等樹脂が充填されており、その内部に制御基板49が埋設されている。
【0020】
加熱手段50は、その基端部51が中栓43を貫通して取り付けられている。加熱手段50は、蓋部40とは反対側の第二端側へ向かって延在している。加熱手段50の軸線は、容器60の中心軸線O上に位置する。加熱手段50の軸線方向の先端側には、先端面52が形成されている。ここで、加熱手段50の先端部とは、収容空間62で延在する部分の中央部より先端側の部分をいう。加熱手段50の先端面52は、平面状をなしているが、山形、凹部、又は凸部等の平面状以外の曲面状をなしてもよい。
【0021】
収容空間62の延在方向の中央部付近には、温度センサー55が設けられている。温度センサー55は、リード線によって、中栓43の凹部48に収納された制御基板49に接続されている。温度センサー55のリード線は、収容空間62の延在方向の中央部付近において、加熱手段50に取り付けられている第1ホルダー93によって保持されている。
【0022】
温度センサー55は、収容空間62の中央部付近の温度を測定する。温度センサー55としては、温度を測定するものであればよく、例えばサーミスタや熱電対等が挙げられる。温度センサー55は、収容空間62内のウォッシャー液の温度を測定し、測定した温度を制御基板49に出力する。加熱調整手段20(図1参照)は、温度センサー55によって測定された温度に基づいて、加熱手段50をオンオフ制御する。これによって、収容空間62内のウォッシャー液の温度が所望の温度(たとえば、40℃程度)に保たれる。
【0023】
容器60には、ウォッシャー液を流出させる流出パイプ70およびウォッシャー液を流入させる流入パイプ80が設けられている。流出パイプ70は、管路7によってウォッシャー液ノズル8に接続されている。流入パイプ80および流出パイプ70は、蓋部40を貫通して収容空間62内で延在している。流入パイプ80は、管路7によってウォッシャー液ポンプ2に接続されている。
【0024】
流出パイプ70は、加熱手段50の上側へ折れ曲がる折れ曲がり部71と、折れ曲がり部71の先端に形成された流出口72とを有する。収容空間62の延在方向の中央部付近において、ウォッシャー液の流出パイプ70は、加熱手段50に取り付けられた第1ホルダー93によって固定されている。流出パイプ70の折れ曲がり部71は、加熱手段50の先端部に取り付けられた第2ホルダー94(固定部材)によって固定されている。第2ホルダー94の一端は、加熱手段50の上側へ延びて円環状部材を形成している。この円環状部材は、折れ曲がり部71を通過させて固定する。第2ホルダー94は、耐熱性を有する金属又は樹脂等からなる。
【0025】
次に、図3ないし図6を参照して、ウォッシャー液を流出させる流出口72と、加熱手段50の先端面52と、ウォッシャー液の液面Hとについて説明する。図3は、図1中のウォッシャー液の加熱装置を示す平面断面図である。図4は、図3のIV−IV断面図である。図5は、図1中のウォッシャー液の加熱装置3が傾斜した場合を示す側面断面図である。図6の(a)及び(b)は、図1中のウォッシャー液の加熱装置が傾斜し、ウォッシャー液の液面が流出口を通る場合を示す側面断面図である。
【0026】
流出パイプ70の流出口72は、収容空間62の上方側に位置している。流出口72は、容器60の中心軸線Oに垂直な面に沿って延びる環状をなしている。また、流出口72は、容器60の上下方向において、ウォッシャー液が収容空間62の容積の90%以下になる箇所に位置している。すなわち、流出口72を通る水平面と、収容空間62の第二端側の内壁面63aとによって形成された扁平な円柱状のスペース76は、収容空間62の容積の10%以上となっている。このスペース76は、ウォッシャー液の上方側の空気層に相当する。
【0027】
ここで、流出口72と加熱手段50の先端面52との位置関係について説明する。流出口72は、収容空間62において、加熱手段50の先端面52と容器60の第二端との間に設けられている。言い換えれば、流出口72は、加熱手段50の先端面52より蓋部40から離れている。流出口72を容器60の中心軸線Oに垂直な仮想平面に投影した領域は、加熱手段50の先端面52を容器60の中心軸線Oに垂直な仮想平面に投影した領域内に含まれている(図3参照)。すなわち、流出口72を容器60の中心軸線Oに垂直な仮想平面に投影した領域は、加熱手段50の先端面52を容器60の中心軸線Oに垂直な仮想平面に投影した領域の一部と重なっている。また、流出口72は、加熱手段50の軸線上に位置するように配置されている。すなわち、流出口72は、容器60の中心軸線O方向において、加熱手段50の先端面52の直上に位置するように配置されている。
【0028】
容器60の収容空間62に貯留されるウォッシャー液の液面Hは、図4に示されるように、流出口72を通る水平面と略一致する。なお、容器60の収容空間62に貯留されるウォッシャー液の液面Hとは、ウォッシャー液ポンプ2がオフ状態であるときのウォッシャー液の通常の水位である。なお、ウォッシャー液ポンプ2を使用するときには、縮性流体である空気が圧縮されてウォッシャー液がこのウォッシャー液の液面H以上に維持されることがある。また、ウォッシャー液ポンプ2がオフ状態のまま、車両が傾斜する場合には、容器60の収容空間62に貯留されるウォッシャー液の液面は、たとえば、図5に示されるように、液面H1となる。この場合、液面H1と収容空間の第二端側の内壁面63aとの間に、収容空間62の容積の10%以上となるスペース76が形成される。スペース76の形状は、円柱の稜部の一部を斜めに切り取った形状をなしている。
【0029】
図5は、ウォッシャー液の加熱装置3が水平面に対し角度α、例えば40°傾斜する状態を示している。図5に示されるように、ウォッシャー液の液面H1は、流出口72の上方側に形成されている。流出口72は、加熱手段50の先端面52より上方側に位置する。すなわち、加熱手段50の先端面52は、ウォッシャー液の液面H1の下方に位置し、ウォッシャー液の液面から露出していない。また、ウォッシャー液の液面H1は、そのまま維持される場合があるが、流入口81または流出口72から容器60内に空気が入り込んで、図6(a)に示されるように、ウォッシャー液の液面H2が流出口72を通るように形成される場合もある。この場合であっても、加熱手段50の先端面52は、ウォッシャー液の液面H2の下方に位置し、ウォッシャー液の液面から露出しない。なお、流出口72を通る水平面に沿って形成されるウォッシャー液の液面は、容器60内の収容空間62において形成され得る液面のうち、もっとも低い液面である。
【0030】
また、図6(b)に示されるように、ウォッシャー液の加熱装置3が、上記の例とは逆方向に、水平面に対し角度β、たとえば40°傾斜することがある。この場合においても、加熱手段50の先端面52は、流出口72を通るウォッシャー液の液面H2の下方に位置する。すなわち、ウォッシャー液の加熱装置3がどの方向に傾斜しても、加熱手段50の先端面52は、流出口72を通る水平面に沿って形成される液面(形成され得る液面のうち最も低い液面)の下方に位置する。
【0031】
図4に示されるウォッシャー液の加熱装置3が傾斜した場合であっても、流出口72を通る水平面以上に形成されるスペース76は、収容空間62の容積の10%以上となる。なお、ウォッシャー液の加熱装置3が傾斜するとは、車両が水平面に対し傾斜すること及びウォッシャー液の加熱装置3が車両に傾いて取り付けられたことのうちのいずれかの場合を含む。たとえば、ウォッシャー液の加熱装置3が車両の水平面に対し25°傾斜して取り付けられ、車両自体が同じ方向で更に水平面に対し25°傾斜する場合、ウォッシャー液の加熱装置3は、水平面に対し合わせて50°傾斜することになる。
【0032】
ここで、従来のウォッシャー液の加熱装置において生じ得る湯気現象について説明する。ウォッシャー液の加熱装置の使用の過程において、収容空間に流入したウォッシャー液は、加熱手段によって加熱された後、流出口に流れ込んで容器の外側に送られる。すなわち、収容空間に流出口が形成されていると、収容空間の上方に空気層が形成されることがある。この場合、ウォッシャー液の加熱装置がオンされた状態で車両が傾斜する、又はウォッシャー液の加熱装置自体が傾斜して取り付けられている等によって加熱手段の先端部がウォッシャー液の液面から露出した状態で加熱手段が過熱されると、ウォッシャー液の蒸気が発生してしまう。このウォッシャー液の蒸気が、流出口を経由してウォッシャー液ノズルから噴射されるとき、ウォッシャー液ノズルの付近で冷やされ、白い湯気となる。
【0033】
この湯気は、車両の故障によって生じる現象ではないが、車両の使用者等は誤って車両に故障が発生したと認識する可能性がある。ウォッシャー液の加熱装置3では、容器60がどの方向に傾斜したとしても、加熱手段50の先端面52をもっとも低いレベルのウォッシャー液の液面以下に位置させるようにすることで、上記の湯気現象を防止し得る。すなわち、流出口72を、加熱手段50の先端面52と、容器60の第一端とは反対側の第二端との間に設ける。そして、流出口72が容器60の中心軸線O方向に垂直な仮想平面に対し投影した投影領域と、加熱手段50の先端面52が容器60の中心軸線O方向に垂直な仮想平面に対し投影した投影領域とが一部重なるように、流出口72と加熱手段50の先端面52を配置する。この構成により、ウォッシャー液の加熱装置3がどの方向に傾斜しても、加熱手段50の先端部は、ウォッシャー液の液面以下に位置し、上記の湯気等が発生することを防止できる。
【0034】
以下、図3及び図7を参照して、ウォッシャー液の流入パイプ及び整流板について、説明する。図3は、図1中のウォッシャー液の加熱装置を示す平面断面図である。図7は、図3のVII−VII断面図であり、ウォッシャー液の加熱装置の流入口及び整流板を示す模式図である。
【0035】
図3に示されるように、ウォッシャー液の流入パイプ80(流入口81)は、ウォッシャー液の流出パイプ70と加熱手段50との中心軸を連結した仮想平面の片側に配置されている。ウォッシャー液の流入パイプ80は、蓋部40を貫通して、収容空間62において延在している。ウォッシャー液の流入パイプ80の先端には流入口81が形成されている。流入口81は、収容空間62の上下方向において、略下半部に配置されている。この流入口81の上方側には、上から見て流入口81を覆うように整流部材84の整流板83(図7)が配置されている。
【0036】
整流部材84は、中栓43に取り付けられた起立板82と、起立板82が折れ曲がって形成された整流板83とを有する。起立板82は、加熱手段50と流入パイプ80との間において、流出パイプ70と加熱手段50との中心軸を連結した仮想平面に平行するように配置されている。起立板82の上端部は、流入口81を覆うように、内壁63側に向かって折れ曲がって整流板83を形成している。
【0037】
図7に示されるように、整流板83は、流入口81の上方かつ流出口72の下方に位置する。すなわち、整流板83は、流入口81と流出口72との間に配置されている。整流板83の傾斜方向は、ウォッシャー液の流出パイプ70の軸線と容器60の中心軸線Oとによって形成される仮想平面に平行であり、中心軸線Oに対し流出パイプ70とは反対側へ傾斜する方向である。ここで、整流板83の傾斜方向とは、整流板83を構成する平面の法線方向をいう。
【0038】
ここで、ウォッシャー液の加熱装置3において、ウォッシャー液が容器60の収容空間62へ流入した後の過程を説明する。ウォッシャー液ポンプ2によって送られたウォッシャー液は、流入パイプ80を経由して流入口81から収容空間62に噴出される。噴出後のウォッシャー液は、勢いで整流部材84の整流板83と衝突する。整流板83は、ウォッシャー液の流動方向を、整流板83の傾き方向に沿って斜め方向に上昇するように変更させる。容器60の側方寄りに導かれて、内壁63まで流動したウォッシャー液は、内壁63に沿って引き続き斜め方向に上昇しながら流動する。その結果、ウォッシャー液は、容器60内の収容空間62において、第一端側から第二端側に向かって螺旋状の方向Fに沿って上昇するように流動する。この螺旋状の方向Fに沿って上昇することにより、流入口81から流入したウォッシャー液は、直線的に流出口72に向かうことなく、温められたウォッシャー液を順次押し上げながら流出口72に向かって移動する。また、流入口81から流入したウォッシャー液が収容空間62に滞留する滞留時間は長く、十分に加熱される。
【0039】
次に、本実施形態のウォッシャー液の加熱装置3を用いたウォッシャー液の供給システム10の運転方法について説明する。
【0040】
ウォッシャー液の加熱装置3は、たとえば、ドライバ等がイグニションキーをオン操作することによって作動する。これにより、収容空間62内のウォッシャー液は、加熱手段50によって所望の温度に加熱される。次に、ドライバ等が操作部6を操作することによってウォッシャー液ポンプ2に操作指令が送られると、ウォッシャー液タンク1に貯留されたウォッシャー液は、ウォッシャー液ポンプ2によりウォッシャー液の加熱装置3に送られ、ウォッシャー液の流入パイプ80を通じて加熱装置30の収容空間62内に流入する。収容空間62内において、流入口81から流入したウォッシャー液は、螺旋状に上昇しながら加熱されつつ、収容空間62の上部にある加熱されたウォッシャー液を順次持ち上げる。これに伴い、加熱されたウォッシャー液は、収容空間62の上方に配置されているウォッシャー液の流出パイプ70の流出口72に流入する。ウォッシャー液ポンプ2の駆動により、流出パイプ70内のウォッシャー液は、管路7を経由してウォッシャー液ノズル8に送られる。この一連の動作により、自動車のフロントウィンドウガラスに、暖められたウォッシャー液が供給される。
【0041】
ここで、ウォッシャー液を収容する収容空間62において、加熱手段50の先端面52は、流出口72を通る水平面以下に位置する。すなわち、加熱手段50の先端面52は、収容空間62において形成され得る液面のうち、もっとも低い液面以下に位置する。よって、ウォッシャー液の加熱装置3が傾斜しても、湯気現象が発生することが防止される。
【0042】
以上説明した本実施形態のウォッシャー液の加熱装置3によれば、容器60の第一端に蓋部40が取り付けられ、蓋部40に基端部51が取り付けられた加熱手段50は、容器60の収容空間62で延在している。容器60の収容空間62には、収容空間62のウォッシャー液を流出させる流出口72を有する流出パイプ70が配置されている。流出口72は、加熱手段50の先端面52と、容器60の第一端とは反対側の第二端との間に設けられている。そして、流出口72が容器60の中心軸線O方向に垂直な仮想平面に対し投影した投影領域は、加熱手段50の先端面52が容器60の中心軸線O方向に垂直な仮想平面に対し投影した投影領域の一部と重なっている。この場合、ウォッシャー液の加熱装置3がどの方向に傾斜しても、加熱手段50の先端面52は、流出口72を通る水平面より容器60の第一端側に位置する。よって、ウォッシャー液の加熱装置3が傾斜した場合であっても、加熱手段50の先端部は、ウォッシャー液の上方側に露出しにくく、湯気等の現象が発生することが防止され得る。また、加熱手段50の先端部が空気層に突出してしまい空焚き状態になることを防止できる。
【0043】
また、流出口72は、加熱手段50の軸線上に設けられている。すなわち、流出口72は、加熱手段50の直上に位置するため、ウォッシャー液の加熱装置3が大きく傾斜した場合であっても、湯気等の現象が抑制される。
【0044】
また、流出口72は、容器60の中心軸線O上に設けられている。このため、ウォッシャー液の加熱装置3がどの方向に傾斜しても、容器60に収容されるウォッシャー液の量が大幅に減ることなく、ウォッシャー液の加熱装置3を効率よく使用できる。
【0045】
また、流出パイプ70は、加熱手段50の先端部に取り付けられた第2ホルダー94(固定部材)に固定されているため、流出パイプ70の先端部が固定され、流出口72の位置が安定し、より安定的にウォッシャー液の液面が維持される。また、加熱手段50の先端部と流出口72の相対位置が一定に保たれているため、加熱手段50の先端部が空気層に突出してしまい空焚き状態になることをより確実に防止できる。
【0046】
以上、本実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形態様を採ることができる。たとえば、流出口72を容器60の中心軸線Oに垂直に形成することに代えて、流出パイプ70の先端の一部に切欠き等を形成してもよく、あるいは中心軸線Oに対して傾斜するように形成してもよい。この場合であっても、流出口72が中心軸線Oに垂直である場合と同様に、加熱手段50の先端面52が、流出口72を通る水平面以下に位置することにより、湯気現象等が抑制される。
【0047】
また、流出口72が容器60の中心軸線O方向に垂直な仮想平面に対し投影した投影領域の一部と、加熱手段50の先端面52が容器60の中心軸線O方向に垂直な仮想平面に対し投影した投影領域との一部が重なっていればよい。この場合であっても、上記実施形態の場合と同様に、ウォッシャー液の加熱装置3がどの方向に傾斜しても、加熱手段50の先端部は、流出口72を通る水平面以下に位置することにより、湯気現象等が抑制される。
【0048】
また、上記実施形態では、流出パイプ70が加熱手段50に取り付けられた固定部材によって固定されているが、流出パイプ70が硬い材料等により構成されている場合には、固定部材がなくてもよい。
【0049】
上記実施形態では、流出パイプ70の先端部が折れ曲がることによって流出口72を加熱手段50の先端面52の直上に位置させているが、流出パイプ70を加熱手段50に対し傾斜して配置することにより、流出口72を加熱手段50の直上に位置させてもよい。また、流出口72は、加熱手段50の先端面52の直上でなくてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、加熱手段50の軸線が容器60の中心軸線O上に位置するように加熱手段50が配置されているが、その態様に限らない。たとえば、加熱手段50は容器60の中心軸線に対し傾斜して取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
3…ウォッシャー液の加熱装置、40…蓋部、50…加熱手段、51…基端部、52…加熱手段の先端面、60…容器、62…収容空間、63…内壁、70…流出パイプ、72…流出口、80…流入パイプ、81…流入口、83…整流板、94…第2ホルダー、O…容器の中心軸線。
図1
図2
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図5
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図7