特許第6480260号(P6480260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6480260
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】生体情報センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20190225BHJP
【FI】
   A61B5/02 310B
   A61B5/02 310H
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-103685(P2015-103685)
(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公開番号】特開2016-214614(P2016-214614A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】上平 祥嗣
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−2930(JP,A)
【文献】 特開2004−261366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に装着されて当該生体に関連する情報を生成する生体情報センサであって、
第1の光と第2の光とを含む光を出射する発光部と、
第1の光センサと第2の光センサとを含み、入射した光の強度に応じたレベルの信号を出力する受光部と、
前記受光部から出力される信号を受けて前記生体に関連する情報を生成する制御装置とを備え、
前記生体情報センサが生体に装着された場合、前記発光部から出射された光は、当該生体で反射して前記受光部へ入射し、
前記第1の光センサは、入射した前記第1の光の強度に応じたレベルの第1の信号を出力し、
前記第2の光センサは、入射した前記第2の光の強度に応じたレベルの第2の信号を出力し、
前記制御装置は、
前記第2の信号に基づいて前記生体情報センサと前記生体の表面とが密着しているか否かを判定し、
前記生体情報センサと前記生体の表面とが密着している場合の前記第1の信号に基づいて前記生体に関連する情報を生成する、生体情報センサ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第2の信号のレベルが所定の閾値より小さい場合に前記生体情報センサと前記生体の表面とが密着していると判定する、請求項1に記載の生体情報センサ。
【請求項3】
前記発光部が出射する光は、第3の光をさらに含み、
前記受光部は、入射した前記第3の光の強度に応じたレベルの第3の信号を出力する第3の光センサをさらに含み、
前記制御装置は、前記生体情報センサと前記生体の表面とが密着している場合の、前記第1の信号および前記第3の信号に基づいて前記生体に関連する情報を生成する、請求項1または請求項2に記載の生体情報センサ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1の信号のレベルと前記第3の信号のレベルとの差に基づいて前記生体に関する情報を生成する、請求項3に記載の生体情報センサ。
【請求項5】
前記第1の光は、緑色光であり、
前記第2の光は、青色光であり、
前記第3の光は、赤色光である、請求項3に記載の生体情報センサ。
【請求項6】
前記発光部、前記受光部、および前記制御装置が形成された基板と、
前記基板の外周に沿って、前記発光部および前記受光部を囲むように形成された第1の遮光壁と、
前記基板と前記第1の遮光壁とによって形成された空間を、前記発光部がある側の空間と前記受光部がある側の空間とに仕切る第2の遮光壁とをさらに備える、請求項1に記載の生体情報センサ。
【請求項7】
前記生体に関する情報は、心拍数である、請求項1に記載の生体情報センサ。
【請求項8】
前記発光部は、白色光を出射する発光ダイオードである、請求項1に記載の生体情報センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報センサに関し、特にウェアラブルな生体情報センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からウェアラブルな生体情報センサが知られている。例えば、特開2012−143316(特許文献1)には、ウェアラブルな生体情報センサが開示されている。当該生体情報センサは、第1および第2の光センサと演算回路とを備える。第1の光センサは、第1の発強度の光を生体に出射する第1の発光部と、第1の発光部の出射光が生体内で反射した光を受けて第1の受光信号を生成する第1の受光部とを含む。第2の光センサは、第1の発強度よりも弱い第2の発強度の光を生体に出射する第2の発光部と、第2の発光部の出射光が生体内で反射した光を受けて第2の受光信号を生成する第2の受光部とを含む。演算回路は、第1の受光信号から第2の受光信号を差し引いて脈波データを取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−143316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用者が生体情報センサを身体に装着して運動しながら心拍数のような生体情報を測定する場合、或いは使用者が生体情報センサを身体に誤装着した場合、生体情報センサと身体の表面との間に隙間が生じるときがある。このような隙間が生じると、生体の内部で反射した光だけではなく生体の表面で反射した光も生体情報センサの受光部へ入射してしまう。例えば、心拍数を測定する場合、必要なのは生体の内部からの反射光であるため、生体の表面からの反射光は心拍数を算出するにあたってノイズとなり、測定精度の悪化を招くおそれがある。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる目的は、測定精度を上げることができる生体情報センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る生体情報センサは、生体に装着されて当該生体に関連する情報を生成する。生体情報センサは、発光部と、受光部と、制御装置とを備える。発光部は、第1の光と第2の光とを含む光を出射する。受光部は、第1の光センサと第2の光センサとを含み、入射した光の強度に応じたレベルの信号を出力する。制御装置は、受光部から出力される信号を受けて生体に関連する情報を生成する。生体情報センサが生体に装着された場合、発光部から出射された光は、当該生体で反射して受光部へ入射する。第1の光センサは、入射した第1の光の強度に応じたレベルの第1の信号を出力する。第2の光センサは、入射した第2の光の強度に応じたレベルの第2の信号を出力する。制御装置は、第2の信号に基づいて生体情報センサと生体の表面とが密着しているか否かを判定する。制御装置は、生体情報センサと生体の表面とが密着している場合の第1の信号に基づいて生体に関連する情報を生成する。
【0007】
このような構成により、生体情報センサが生体に密着している場合のノイズの少ない信号に基づいて生体に関連する情報を算出できる。その結果、生体情報センサは測定精度を上げることができる。
【0008】
好ましくは、制御装置は、第2の信号のレベルが所定の閾値より小さい場合に生体情報センサと生体の表面とが密着していると判定する。
【0009】
好ましくは、発光部が出射する光は、第3の光をさらに含む。受光部は、第3の光センサをさらに含む。第3の光センサは、入射した第3の光の強度に応じたレベルの第3の信号を出力する。制御装置は、生体情報センサと生体の表面とが密着している場合の、第1の信号および第3の信号に基づいて生体に関連する情報を生成する。
【0010】
好ましくは、制御装置は、第1の信号のレベルと第3の信号のレベルとの差に基づいて生体に関する情報を生成する。
【0011】
好ましくは、第1の光は、緑色光である。第2の光は、青色光である。第3の光は、赤色光である。
【0012】
好ましくは、基板と、第1の遮光壁と、第2の遮光壁とをさらに備える。基板は、発光部、受光部、および制御装置が形成されている。第1の遮光壁は、基板の外周に沿って、発光部および受光部を囲むように形成されている。第2の遮光壁は、基板と第1の遮光壁とによって形成された空間を、発光部がある側の空間と受光部がある側の空間とに仕切っている。
【0013】
好ましくは、生体に関する情報は、心拍数である。
好ましくは、発光部は、白色光を出射する発光ダイオードである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る生体情報センサは、生体情報センサが生体の表面に密着しているか否かを生体からの反射光に含まれる第2の光に基づいて判定する。本発明に係る生体情報センサは、当該判定に基づいて生体情報センサが生体の表面に密着している場合のノイズの少ない信号に基づいて生体に関する情報を生成することができ、その結果、測定精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に従う生体情報センサの構成を示す断面図である。
図2図1の生体情報センサが人体に密着していない状態の図である。
図3図1の生体情報センサの機能を説明するための機能ブロック図である。
図4図3における制御装置の機能を説明するための機能ブロック図である。
図5図4における演算部の詳細を説明するための機能ブロック図である。
図6】体動が小さい場合の心拍抽出処理部の動作を示す周波数スペクトラム図である。
図7】体動が無視できない程度に生じる場合の心拍抽出処理部の動作を示す周波数スペクトラム図である。
図8】第1の実施の形態の確認実験に使用した生体情報センサの構成を示す断面図である。
図9】かさ上げ距離と、受光部へ入射する緑色光の強度、赤色光の強度および青色光の強度との各々の関係を示す図である。
図10図4のFFT部によって生成される周波数スペクトルを示す図である。
図11】第2の実施の形態に従う生体情報センサの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に従う生体情報センサ1の構成を示す断面図である。以下では、生体情報センサ1が生体に関する情報として心拍数を測定する場合について説明する。
【0018】
図1を参照して、生体情報センサは、白色LEDである発光部10と、受光部11と、遮光壁13,14と、レンズ15,16と、透明板17と、基板18と、制御装置200とを備える。
【0019】
基板18の表面には発光部10と受光部11と制御装置200とが形成されている。受光部11は、シリコン基板12と、シリコン基板12に形成されたGセンサ111、Bセンサ112およびRセンサ113とを含む。制御装置200は、シリコン基板12に形成されていても構わない。
【0020】
基板18の表面の縁には、発光部10および受光部11を囲むようにして、外部光が受光部11に入射するのを防止するための遮光壁14が形成されている。基板18の表面の中央には、発光部10から出射された白色光が受光部11に直接入射するのを防止するための遮光壁13が形成されている。つまり、遮光壁14によって形成された空間が、発光部10がある側の空間と受光部11がある側の空間とに遮光壁13によって仕切られている。
【0021】
発光部10の出射方向にレンズ15が設けられ、受光部11の受光方向にレンズ16が設けられている。遮光壁13,14の下端の開口部は透明板17によって閉じられている。心拍数を測定する場合は、透明板17の表面が人体50の表面に密着される。
【0022】
発光部10から出射された白色光は、レンズ15および透明板17を介して人体50に照射される。当該白色光のうち体内で反射した光αは、透明板17およびレンズ16を介して受光部11に入射する。Gセンサ111は、光αのうちの緑色光の強度に応じたレベルの信号を出力する。Bセンサ112は、光αのうちの青色光の強度に応じたレベルの信号を出力する。Rセンサ113は、光αのうちの赤色光の強度に応じたレベルの信号を出力する。制御装置200は、Bセンサ112からの信号に基づいて生体情報センサ1が人体50の皮膚表面に密着しているか否かを判定するとともに、生体情報センサ1が人体50の皮膚表面に密着している場合の、Gセンサ111からの信号およびRセンサ113からの信号に基づいて心拍数を示す信号を生成する。
【0023】
図1に示すように生体情報センサ1が人体50に密着している場合、人体50の皮膚表面で反射した光βは遮光壁13に遮られ、受光部11に入射することがほとんどない。
【0024】
一方、図2に示すように生体情報センサ1が人体50に密着しておらず、生体情報センサ1と人体50の皮膚表面との間に隙間が生じている場合、光βは受光部11に入射し、心拍数を測定するにあたってのノイズとなり得る。
【0025】
そこで、第1の実施の形態においては、受光部に入射する青色光の強度が所定の閾値よりも小さいか否かによって生体情報センサ1が人体50に密着しているか否かを判定し、生体情報センサ1が人体50に密着している場合の、Gセンサ111からの信号およびRセンサ113からの信号を用いて心拍数を算出する。
【0026】
人体に向けて出射された青色光は、人体の内部では吸収されるため人体に内部で反射されることがほとんどないため、光αにはほとんど含まれない。当該青色光は、主に皮膚表面で反射されるため、光βに含まれる。したがって、図1のように生体情報センサ1が人体50に密着している場合には、光βに含まれる青色光は遮光壁13に遮られて受光部11にほとんど入射しない。一方、図2のように生体情報センサ1が人体50に密着しておらず、生体情報センサ1と人体50との間に隙間が生じている場合には、人体50の皮膚表面で反射した青色光は当該隙間を通って受光部11に入射する。したがって、受光部11に入射した青色光の強度を測定することによって生体情報センサ1が人体50と密着しているか否かを判定する。
【0027】
図3を用いて生体情報センサ1の機能構成について説明する。図3を参照して、制御装置200は、使用者からの測定開始指示に応じて発光部10に制御信号S0を出力する。発光部10は、制御信号S0が所定のレベルとなったことに応答して発光して白色光を人体に出射する。発光部10から出射された白色光は人体で反射されてその反射光がGセンサ111、Bセンサ112およびRセンサ113に入射する。このとき白色光のうちの一部は皮膚、血液などに吸収されるため、反射光の強度は人体の脈波および体動に応じて変動する。具体的には、反射光に含まれる緑色光の強度は、人体の脈波および体動に応じて変動する。反射光に含まれる赤色光の強度は、人体の体動に応じて変動するが人体の脈動に応じてはほとんど変動しない。反射光に含まれる青色光は、上述したようにそのほとんどが皮膚表面で反射された光であり、生体情報センサ1が人体50に密着しているか否かの判定に使用される。
【0028】
Gセンサ111は、発光部10から出射された光のうち、入射した緑色光の強度に応じたレベルの信号S1を生成する。信号S1のレベル(たとえば電圧)は、入射した緑色光の強度が強くなるにつれて増大する。上述したように、信号S1のレベルは、人体の脈動および体動に応じて変化する。
【0029】
Bセンサ112は、発光部10から出射された光のうち、入射した青色光の強度に応じたレベルの信号S2を生成する。信号S2のレベル(たとえば電圧)は、入射した青色光の強度が強くなるにつれて増大する。
【0030】
Rセンサ113は、発光部10から出射された光のうち、主に人体内で反射した光を受け、そのうちの赤色光の強度に応じたレベルの信号S3を生成する。信号S3のレベル(たとえば電圧)は、入射した赤色光の強度が強くなるにつれて増大する。上述したように、信号S3は、人体の体動に応じて変化するが、人体の脈動に応じてほとんど変化しない。
【0031】
制御装置200は、信号S1,S3のうちの同じ周期で変動する体動成分の振幅が略同じになるように信号S1,S3のうちの少なくともいずれか一方の信号を適宜増幅し、信号S1と信号S3とのレベル差を示す信号を算出する。制御装置200は、当該レベル差を示す信号に基づいて人体の脈波を示す信号S4を生成する。制御装置200は、信号S2のレベルが所定の閾値未満である場合(生体情報センサ1が人体50に密着している場合)に信号S4を表示部400に出力する。表示部400は、制御装置200からの信号S4に従って心拍数を示す文字、画像などを表示する。制御装置200と表示部400との通信は有線で行なってもよいし、無線で行なってもよい。
【0032】
図4を用いて制御装置200の機能構成について説明する。図4を参照して、制御装置200は、アンプ211,221,231、AD(Analog-to-Digital)コンバータ212,222,232、高域通過フィルタ(HPF:High-pass filter)213,223,233、演算部30、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部214,234、心拍抽出処理部22、および制御部210を含む。
【0033】
制御部210は、脈波の周波数よりも十分に高い周波数で制御信号S0を交互に「H」レベルおよび「L」レベルに変化させて発光部10を所定の周期で点灯および消灯させるとともに、制御信号S0に同期して制御装置200全体を制御する。
【0034】
Gセンサ111は、発光部10から出射されて主に人体内で反射した光と、体動に応じて外部から漏れ込んだ光とを受け、受けた光のうちの緑色光の強度に応じたレベルの信号S1を出力する。
【0035】
Bセンサ112は、発光部10から出射されて皮膚表面で反射した光と、体動に応じて外部から漏れ込んだ光とを受け、受けた光のうちの青色光の強度に応じたレベルの信号S2を出力する。
【0036】
Rセンサ113は、発光部10から出射されて人体内で反射した光と、体動に応じて外部から漏れ込んだ光とを受け、受けた光のうちの赤色光の強度に応じたレベルの信号S3を出力する。
【0037】
アンプ211は、Gセンサ111から出力された信号S1を増幅する。ADコンバータ212は、アンプ211の出力信号をデジタル信号に変換する。高域通過フィルタ213は、ADコンバータ212の出力信号のうちの直流成分を除去する。高域通過フィルタ213を通過した信号は、デジタル信号D1として演算部30に出力される。
【0038】
アンプ221は、Bセンサ112から出力された信号S2を増幅する。ADコンバータ222は、アンプ221の出力信号をデジタル信号に変換する。高域通過フィルタ223は、ADコンバータ222の出力信号のうちの直流成分を除去する。高域通過フィルタ223を通過した信号は、デジタル信号D2として演算部30に出力される。
【0039】
アンプ231は、Rセンサ113から出力された信号S3を増幅する。ADコンバータ232は、アンプ231の出力信号をデジタル信号に変換する。高域通過フィルタ233は、ADコンバータ232の出力信号のうちの直流成分を除去する。高域通過フィルタ233を通過した信号は、デジタル信号D3として演算部30に出力される。
【0040】
演算部30は、図5に示すように、メモリ310,320,330、減算器311,321,331,333、およびアンプ332を含む。
【0041】
メモリ310は、制御信号S0が「L」レベルである時間帯(すなわち発光部10が消灯している時間帯)におけるデジタル信号D1をデジタル信号D1Dとして一旦記憶し、制御信号S0が「H」レベルである時間帯(すなわち発光部10が点灯している時間帯)におけるデジタル信号D1をデジタル信号D1Lとして一旦記憶した後、デジタル信号D1D,D1Lを減算器311に出力する。
【0042】
デジタル信号D1Dは、発光部10が消灯している時間帯に外部からGセンサ111に漏れ込んだ光などに起因するノイズ成分を含む。このノイズ成分はデジタル信号D1Lにも含まれている。減算器311は、デジタル信号D1Lからデジタル信号D1Dを減算してデジタル信号DGを出力する。したがって、デジタル信号DGは、デジタル信号D1Lからノイズ成分が除去された信号となる。
【0043】
メモリ320は、制御信号S0が「L」レベルである時間帯(すなわち発光部10が消灯している時間帯)におけるデジタル信号D2をデジタル信号D2Dとして一旦記憶し、制御信号S0が「H」レベルである時間帯(すなわち発光部10が点灯している時間帯)におけるデジタル信号D2をデジタル信号D2Lとして一旦記憶した後、デジタル信号D2D,D2Lを減算器321に出力する。
【0044】
デジタル信号D2Dは、発光部10が消灯している時間帯に外部からBセンサ112に漏れ込んだ光などに起因するノイズ成分を含む。このノイズ成分はデジタル信号D2Lにも含まれている。減算器321は、デジタル信号D2Lからデジタル信号D2Dを減算してデジタル信号DB1を比較器322に出力する。したがって、デジタル信号DB1は、デジタル信号D2Lからノイズ成分が除去された信号となる。
【0045】
メモリ320は、生体情報センサ1が人体50に接触しているか否かの判定に用いる所定の閾値を記憶しており、レベルが当該閾値であるデジタル信号DB0を比較器322に出力する。
【0046】
比較器322は、デジタル信号DB0のレベルとデジタル信号DB1のレベルとを比較する。比較器322は、デジタル信号DB1のレベルがデジタル信号DB0のレベル未満であった場合(生体情報センサ1が人体50に密着している場合)にはデジタル信号DBのレベルを「H」として出力する。比較器322は、デジタル信号DB1のレベルがデジタル信号DB0のレベル以上であった場合(生体情報センサ1が人体50に密着してない場合)にはデジタル信号DBのレベルを「L」として出力する。
【0047】
メモリ330は、制御信号S0が「L」レベルである時間帯(すなわち発光部10が消灯している時間帯)におけるデジタル信号D3をデジタル信号D3Dとして一旦記憶し、制御信号S0が「H」レベルである時間帯(すなわち発光部10が点灯している時間帯)におけるデジタル信号D3をデジタル信号D3Lとして一旦記憶した後、デジタル信号D3D,D3Lを減算器331に出力する。
【0048】
デジタル信号D3Dは、発光部10が消灯している時間帯に外部からRセンサ113に漏れ込んだ光などに起因するノイズ成分を含む。このノイズ成分はデジタル信号D3Lにも含まれている。減算器331は、デジタル信号D3Lからデジタル信号D3Dを減算してデジタル信号DRを出力する。したがって、デジタル信号DRは、デジタル信号D3Lからノイズ成分が除去された信号となる。
【0049】
デジタル信号DGは体動成分と脈波成分とを主に含み、デジタル信号DRは体動成分を主に含む。アンプ332は、デジタル信号DGに含まれる体動成分のレベルとデジタル信号DRに含まれる体動成分のレベルとが同程度になるようにデジタル信号DRを増幅する。減算器333は、デジタル信号DGからデジタル信号DRを減算してデジタル信号DGRを出力する。デジタル信号DGRは、体動成分と脈波成分とを含むデジタル信号DGから体動成分を含むデジタル信号DRを差し引いた信号であるから、脈波成分を主に含む信号といえる。
【0050】
なお、図5に示した演算部30では、アンプ332によってデジタル信号DRを増幅したが、これに限るものではなく、デジタル信号DG,DRに含まれる体動成分のレベルが同程度になるようにデジタル信号DG,DRのうちの少なくともいずれか一方を増幅または減衰させてもよい。
【0051】
再び図4を参照して、FFT部214は、デジタル信号DBのレベルが「H」である場合(生体情報センサ1が人体50に密着している場合)に、デジタル信号DGに高速フーリエ変換を施し、デジタル信号DGの周波数スペクトルを生成して心拍抽出処理部22に出力する。FFT部214は、デジタル信号DBのレベルが「L」である場合(生体情報センサ1が人体50に密着していない場合)には出力をしない。
【0052】
FFT部234は、デジタル信号DBのレベルが「H」である場合、デジタル信号DGRに高速フーリエ変換を施し、デジタル信号DGRの周波数スペクトルを生成して心拍抽出処理部22に出力する。FFT部234は、デジタル信号DBのレベルが「L」である場合には出力をしない。
【0053】
心拍抽出処理部22は、FFT部214,234から出力された周波数スペクトルに基づいて人体の心拍数を算出し、得られた心拍数を示す信号S4を表示部400に出力する。
【0054】
図6および図7を用いて心拍抽出処理部22の動作について説明する。図6(a)および図7(a)はFFT部214(図4参照)で生成されたデジタル信号DGの周波数スペクトルであり、図6(b)および図7(b)はFFT部234(図4参照)で生成されたデジタル信号DGRの周波数スペクトルである。スペクトル強度が予め定められた閾値STH以上の範囲に存在するピークの周波数が脈波の周波数の候補となる。
【0055】
体動が小さい場合(たとえば使用者が静止している場合)は、デジタル信号DGは体動成分をほとんど含まない。すなわち、デジタル信号DGとデジタル信号DGRはほとんど同じ信号となるため、図6(a),(b)に示すようにデジタル信号DG,DGRの周波数スペクトルはともに同形となって、1つのピークP1を持つ山型の曲線となる。この場合、心拍抽出処理部22は、ピークP1の周波数f1が脈波の周波数であると判定する。心拍抽出処理部22は、周波数f1に基づいて心拍数[回/分]を算出し、その心拍数[回/分]を示す信号S4を表示部400へ出力する。
【0056】
体動が無視できない程度に生じる場合(たとえば使用者がジョギングしている場合)は、図7(a),(b)に示すように、デジタル信号DG,DGRの周波数スペクトルはともに2つのピークP1,P2を持つ山型の曲線となることが多い。先に説明したように、デジタル信号DGは体動成分と脈波成分とを主に含み、デジタル信号DGRは脈波成分を主に含んだ信号である。すなわち、デジタル信号DGRはデジタル信号DGに比べて体動成分が減少しているといえる。そこで、心拍抽出処理部22は、デジタル信号DGの周波数スペクトルのピークP1,P2の高さと比較してデジタル信号のDGRの周波数スペクトルのピークP1,P2の高さが減少した割合(減少率)を算出する。心拍抽出処理部22は、減少率が大きい方のピーク(この場合はP2)の周波数f2を体動の周波数と判定し、減少率が小さい方のピーク(この場合はP1)の周波数f1を脈波の周波数と判定する。心拍抽出処理部22は、周波数f1に基づいて心拍数[回/分]を算出し、その心拍数[回/分]を示す信号S4を表示部400へ出力する。
【0057】
以上のように、生体情報センサ1によれば、生体情報センサ1が人体50の表面に密着しているか否かを人体50の皮膚表面から反射してくる青色光の強度に基づいて判定することによって生体情報センサ1が人体50に密着している場合のノイズの少ない信号に基づいて心拍数を算出することができ、その結果、測定精度を上げることができる。
【0058】
[第1の実施の形態の確認実験]
第1の実施の形態においては、受光部11に入射する青色光に基づいて生体情報センサ1が人体50に密着しているか否かを判定した。本願発明者らは、受光部11へ入射する青色光を意図的に調整して、生体情報センサ1が人体50と密着していない場合を擬似的に再現することにより、受光部11へ入射する青色光に基づいて生体情報センサ1が人体50と密着しているか否かの判定が可能であることを確認する実験を行なった。以下では当該確認実験について説明する。
【0059】
図8は、第1の実施の形態の確認実験に使用した生体情報センサ1Aの構成を示す断面図である。生体情報センサ1Aが生体情報センサ1と異なる点は、生体情報センサ1Aは透明板を備えていないということと、生体情報センサ1Aを人体に装着した場合の遮光壁の端部と人体の皮膚表面との距離が可変であるということである。生体情報センサ1Aの他の構成については生体情報センサ1と同様のため、同様の構成については説明を繰り返さない。
【0060】
図8を参照して、生体情報センサ1Aは、遮光壁13Aを備える。生体情報センサ1Aが人体50に装着された場合の遮光壁13Aの人体50側の端部と人体50の皮膚表面との距離(以下では、「かさ上げ距離d」ともいう。)は可変である。
【0061】
生体情報センサ1Aが人体50に装着された場合、発光部10から出射された光のうち、人体50の皮膚表面で反射した光は、かさ上げ距離dが小さい程、受光部11へ入射し難くなる。逆に、かさ上げ距離dが大きい程、受光部11へ入射し易くなる。すなわち、生体情報センサ1Aにおいてかさ上げ距離dが小さい場合は、第1の実施の形態に従う生体情報センサ1が人体に密着している場合に対応する。一方、生体情報センサ1Aにおいてかさ上げ距離dが大きい場合は、生体情報センサ1が人体に密着していない場合に対応する。
【0062】
図9は、かさ上げ距離dと、受光部11へ入射する緑色光の強度、赤色光の強度および青色光の強度との各々の関係を示す図である。受光部11へ入射する各光の強度が大きくなる程、受光部11から出力された信号をデジタル信号に変換するADコンバータ(図4参照)の出力(ADCカウント)は大きくなる。そのため、図9においては、かさ上げ距離dと各光の強度の関係を、かさ上げ距離dと各光に対応するADCカウントの関係として示している。図9においては、かさ上げ距離が1mm、2mm、3mmおよび4mmの場合の各光に対応するADCカウントをプロットし、各点を直線で結んでいる。プロット点Gはかさ上げ距離dと受光部11へ入射する緑色光に対応するADCカウントとの関係を表す。プロット点Bはかさ上げ距離dと青色光に対応するADCカウントとの関係を表す。プロット点Rはかさ上げ距離dと赤色光に対応するADCカウントとの関係を表す。
【0063】
図9を参照して、かさ上げ距離dが0〜2mmである場合は、受光部11に入射する緑色光の強度、青色光の強度および赤色光の強度はほとんど変化しない。一方、かさ上げ距離dが3mmとなると、受光部11に入射する青色光の強度は、緑色光の強度および赤色光の強度と比較して顕著に増加している。かさ上げ距離dが4mmの場合は、各光の強度は、かさ上げ距離dが3mmの場合とほとんど変わらない。
【0064】
第1の実施の形態に従う生体情報センサ1と人体50とが密着しなくなり、生体情報センサ1と人体50との間に隙間が生じた場合、密着していた間は遮光壁に遮られていた青色光が当該隙間を通って受光部11に入射するようになるため、受光部11へ入射する青色光は急激に増加するはずである。図9において、受光部11へ入射する青色光の強度は、かさ上げ距離dが2mmから3mmとなる間に急激に増加している。そこで、かさ上げ距離d0(2<d0<3)に対応するADCカウントであるCTHを閾値として、青色光のADCカウントが閾値CTH以上となる場合を、生体情報センサ1が人体50と密着していない場合に対応する場合として扱う。
【0065】
図10はFFT部214またはFFT部234(図4参照)によって生成される周波数スペクトルを示す図である。図10(a),(b),(c),(d)のそれぞれはかさ上げ距離が0mm,1mm,2mm,3mmの場合を示す。図10においても、図7と同様にスペクトル強度が予め定められた閾値STH以上の範囲に存在するピークの周波数が脈波の周波数の候補となる。
【0066】
図10(a),(b),(c),(d)は、静止している人体50に生体情報センサ1Aを装着した場合のデータである。したがって、これらのデータは体動成分をほとんど含まず、主に脈波成分を含む。そのため、FFT部214およびFFT部234がそれぞれ生成する周波数スペクトルはほとんど同形になるともに、閾値STH以上の範囲に存在するピークは脈波成分のみとなるはずである。
【0067】
図10(a),(b),(c)を参照して、いずれも閾値STH以上の範囲に存在するピークはピークP1のみである。したがって、周波数f1が脈波の周波数ということになる。一方、図10(d)を参照して、閾値STH以上の範囲に存在するピークはピークP1,P2,P3,P4である。したがって、そのそれぞれに対応する周波数f1,f2,f3,f4のいずれが脈波の周波数であるかを特定できず、図10(d)からは心拍数を抽出できない。
【0068】
以上から、図10(a),(b),(c)に示されている周波数スペクトルは、生体情報センサ1が人体50に密着している場合のノイズの少ないデータに基づいて生成された周波数スペクトルに相当するといえ、心拍数を抽出するときに使用すべきデータといえる。一方、図10(d)の周波数スペクトルは、生体情報センサ1が人体50に密着しておらず、人体の皮膚表面からの反射光をノイズとして含むデータに基づいて生成された周波数スペクトルに相当するといえ、心拍数を抽出するときに使用すべきではないデータといえる。
【0069】
図9および図10を参照して、青色光のADCカウントが閾値CTH未満となるのは、かさ上げ距離が0mm,1mm,2mmの場合であり、これらは図10(a),(b),(c)にそれぞれ相当する。青色光のADCカウントが閾値CTH以上となるのは、かさ上げ距離がd0以上となる場合であり、これは図10(d)に相当する。したがって、青色光のADCカウントが閾値CTH以上となった場合を生体情報センサ1が人体50と密着していない場合として扱うことにより、生体情報センサ1が人体50に密着している場合のノイズの少ないデータに基づいて心拍数を算出することができる。その結果、生体情報センサ1の測定精度を上げることができる。
【0070】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態においては、Gセンサ、BセンサおよびRセンサを用いて心拍数を測定していた。Rセンサがなくても、Gセンサ、Bセンサで心拍数の測定は可能である。実施の形態に従う生体情報センサは、図11に示す生体情報センサ2のように、受光部21がRセンサを含まず、Gセンサ111およびBセンサ112によって心拍数の測定を行なうものであっても構わない。
【0071】
生体情報センサ2によっても、生体情報センサ2が人体50の表面に密着しているか否かを人体の皮膚表面から反射して受光部21に入射する青色光の強度によって判定することにより、生体情報センサ2が人体50に密着している場合のノイズの少ない信号に基づいて心拍数を算出することができ、その結果、測定精度を上げることができる。
【0072】
生体情報センサ2は、受光部21がRセンサを含まないため、生体情報センサ1と比べて心拍数の測定精度はやや劣る。しかし、生体情報センサ2の製造コストは、Rセンサが不要な分だけ生体情報センサ1よりも低くすることができる。したがって、生体情報センサ2は、要求される測定精度と製造コストとのバランスの観点から適宜選択され得る。
【0073】
上記した実施の形態においては、生体に関する情報として心拍数を測定したが、生体に関する情報は心拍数に限られず、例えば血中酸素飽和濃度であってもよい。
【0074】
上記した実施の形態では、白色光を出射する発光部10を使用したが、発光部10に替えて緑色光を出射する緑色LEDおよび青色光を出射する青色LEDを設けてもよく、必要に応じて赤色光を出射する赤色LEDを設けてもよい。
【0075】
上記した実施の形態に従う生体情報センサによれば、人体に限らず、人間および動物を含む生体の心拍数を検出可能であることはいうまでもない。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,2 生体情報センサ、10 発光部、11,21 受光部、12 シリコン基板、13,13A,14 遮光壁、15,16 レンズ、17 透明板、18 基板、22 心拍抽出処理部、30 演算部、50 人体、111,112,113 センサ、200 制御装置、210 制御部、211,221,231,332 アンプ、212,222,232 ADコンバータ、213,223,233 高域通過フィルタ、214,234 部、310,320,330 メモリ、311,321,331,333 減算器、322 比較器、400 表示部、B,G,R プロット点、CTH,STH 閾値、D1L,D1,D1D,D2D,D2L,D2,D3L,D3,D3D,DB,DB0,DB1,DG,DGR,DR デジタル信号、P1,P2,P3,P4 ピーク、S0 制御信号、S1,S2,S3,S4 信号、T1 周期、d,d0 かさ上げ距離、f1,f2,f3,f4 周波数。
図1
図2
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図11