(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明にかかる環境管理システムは、情報収集機器等から情報が入力される複数の通信制御機器により構成されるシステムであって、時系列に変化する外部環境に対して、予め計画された制御情報や情報収集機器等からの取得データの変化に基づき、通信制御機器に接続された制御対象機器を用いて、管理すべき環境を目標値に制御することが可能なシステムである。また、本発明にかかる環境管理システムは、ネットワーク上で得られる通信制御機器のデータを収集、蓄積、解析するための情報収集解析端末を含む。
なお、管理すべき環境の状態は、時系列に変化する外部環境の状態に依存している。
【0025】
図1は、この発明にかかる環境管理システムにおける一実施の形態の構成例を示す図解図であって、(a)は環境管理システムにおける通信制御機器、ネットワークおよび情報収集解析端末の構成を示す図解図であり、(b)は各通信制御機器と情報収集解析端末との接続関係、各通信制御機器と制御対象機器、情報収集機器およびセンサとの接続関係、ならびにデータ制御機器およびデータ処理機器を介した通信制御機器と制御対象機器、情報収集機器およびセンサとの接続関係を示す図解図である。
【0026】
(環境管理システムの構成)
環境管理システム10は、データを送受信する機能を有する複数の通信制御機器12を含む。また、通信制御機器12には、
図1(b)に示すように、通信制御機器12が制御するための制御対象機器14が直接接続されるか、あるいは、データ制御機器20を介して間接的に接続されている。また、通信制御機器12には、外部環境あるいは管理すべき環境における取得データを取得するための情報収集機器16およびセンサ18が直接接続されるか、あるいは、データ処理機器22を介して間接的に接続されている。外部環境あるいは管理すべき環境における取得データとは、例えば、温度データ、湿度データあるいは照度データ、監視カメラ映像等、情報収集機器16やセンサ18が収集するデータである。
また、通信制御機器12は、特に、管理すべき環境におけるセンサ18等から得られる取得データの閾値を監視しており、監視している取得データが閾値を超えた、もしくは、閾値を下回った場合には、制御対象の通信制御機器12に制御情報を送信する機能を有する。
【0027】
(通信制御機器の構成)
通信制御機器12は、他の通信制御機器12と通信するための通信モジュール28、通信ポート30およびアンテナ32を含む。また、通信制御機器12は、通信制御機器12を駆動させるためのバッテリ34と、後述するI/O部からの情報を保存するためのメモリ36を含む。
【0028】
アンテナ32は、ネットワーク26における、例えば、携帯網などに接続するために備えられる。通信ポート30は、携帯網を使用しない場合には、ネットワーク26における、例えば、イーサネット(登録商標)網に接続するために設けられる。そして、通信モジュール28は、携帯網あるいはイーサネット(登録商標)網に接続するために設けられる。
アンテナ32は、
図3(a)に示すように外側に接続せず、内蔵していてもよい。
【0029】
メモリ36は、センサ18や情報収集機器16から得られた取得データを格納し、蓄積する機能を有する。メモリ36において、センサ18や情報収集機器16から得られた取得データには、データ収集時刻、センサ18や情報収集機器16などの固有の機器番号(他の機器と重複しない番号)のデータが含まれる。この通信制御機器12への取得データの蓄積は、一時的な蓄積である。なお、通信制御機器12のメモリ36において蓄積された取得データは、定期的に情報収集解析端末24に送信され、後述する情報収集解析端末24の蓄積データベース部84において蓄積される。
【0030】
また、通信制御機器12は、情報通信処理部38を含む。情報通信処理部38は、I/O部40を含む。I/O部40は、制御対象機器14、情報収集機器16およびセンサ18と接続するため、あるいはデータ制御機器20およびデータ処理機器22と接続するための外部入出力端子42および無線モジュール44により構成される。外部入出力端子は、USB、IEEE1394、ETHERNET(登録商標)、RS−232Cなどで接続されてもよく、無線モジュールは、WiFi、ZigBee、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)等で接続されてもよい。外部入出力として、無線モジュールを経由してセンサや外部入出力端子42を用いることができる。
I/O部40は、情報収集機器16およびセンサ18から、外部入出力端子42あるいは無線モジュール44を介して、アナログ入力46aおよびデジタル入力46b、ならびにアナログ出力48aおよびデジタル出力48bする機能を有する。
【0031】
さらに、通信制御機器12における情報通信処理部38は、通信制御機器12から他の通信制御機器12や情報収集解析端末24に電子メール(制御命令メールや状態変化報告メール等)を送信する機能を構成する、データ処理部50、メール文作成部52、電子メール作成部54、送信用通信部54を含み、さらに、他の通信制御機器12や情報収集解析端末24からの電子メールを受信する機能を構成する、受信用通信部58、電子メール文抽出部60、メール文解析部62、データ解析部62を含む。
【0032】
データ処理部50は、I/O部40が、主に、管理すべき環境における情報収集機器16やセンサ18から取得した取得データに対する処理条件に基づき判断する機能を有し、フィードバック制御を行う。たとえば、データ処理部50は、処理条件が満たされた場合、その内容をメール文作成部52に送る機能を有する。フィードバック制御については後述する。
【0033】
メール文作成部52は、データ処理部50から取得した内容に基づきメールを作成する機能を有する。また、メール文作成部52は、作成されたメールを電子メール作成部54に送る機能を有する。電子メール作成部54は、作成されたメールの内容に基づき、制御すべき通信制御機器12を特定し、電子メールを作成する機能を有する。また、電子メール作成部54は作成された電子メールを送信用通信部56に送る機能を有する。送信用通信部56は、取得した電子メールを所定の通信制御機器12に送信する機能を有する。
【0034】
受信用通信部58は、他の通信制御機器12や情報収集解析端末24からの電子メール(制御命令メール、状態読出しメールあるいは制御計画情報)を受信する機能を有する。受信用通信部58は、受信された電子メールを電子メール文抽出部60に送る機能を有する。電子メール文抽出部60は、電子メールの本文を抽出する機能を有する。また、電子メール文抽出部60は、抽出された電子メールの本文をメール文解析部62に送る機能を有する。メール文解析部62は、取得した電子メールの本文や制御計画情報に記載される制御命令を取り出し、その制御命令から通信制御機器12に接続される所定の制御対象機器14にどのような制御を行うかを解析する機能を有する。
【0035】
このように、通信制御機器12によれば、通信制御機器12間での電子メールのやり取り、および情報収集解析端末24へのお知らせメールに対する応答を実施する機能を有する。
なお、本実施の形態にかかる環境管理システム10において、各通信制御機器12間同士や各通信制御機器12と情報収集解析端末24との間の通信方法については、電子メールを用いた通信方法を中心に説明しているが、それに限られず、FTP、TCP、UDPなど、どの通信方法を利用してもかまわない。
【0036】
また、通信制御機器12は、機器状態表示用LED66、電源用LED68、表示用LCD70、操作ボタン72、電源スイッチ74、電源入力端子76を備える。
【0037】
機器状態表示用LED66あるいは表示用LCD70は、通信制御機器12が正常に起動しているか、あるいはアンテナ受信感度や送信状態等の通信制御機器12の状態や、情報収集機器16あるいはセンサ18の状態を表示するために備えられている。
【0038】
電源用LED68は、通信制御機器12の通電状態を示すために備えられている。操作ボタン72は、通信制御機器12の設定状態を操作することができ、操作結果は、表示用LCD70に表示される。電源スイッチ74は、通信制御機器12をON/OFFするために備えられ、電源入力端子76は、通信制御機器12への電源を確保するために備えられる。バッテリ34は、電源入力端子76から供給される電力に替えて、そのバッテリ34に電力を蓄積して停電時に対応するために設けられる。電源の入切のために電源スイッチ74を設けてもよい。
【0039】
ここで、
図3(a)は、この発明にかかる環境管理システムを構成する通信制御機器の一実施の形態の外観を示す斜視模式図を示す。
図3(a)に示すように、通信制御機器の正面に電源用LED68、表示用LCD70、操作ボタン72を備える。表示用LCD70には、アンテナ受信感度や送受信など通信状態などを含む機器状態を表示することができる。電源用LED68には、LEDが点灯することで通電状態を示している。また、操作ボタン72との組み合わせの動作により、設定状態や接続している情報収集機器16やセンサ18の状態等を表示させることができる。また、手前面と左側面に外部入出力端子42が設けられており、センサ類や情報収集機器などが接続される。外側には、アンテナ32が接続されている。また、左側面には、通信ポート30が設けられている。この携帯網、もしくはイーサネット(登録商標)網に接続するための通信モジュール28が内蔵されている。環境管理システム10を構成する通信制御機器12が、すべてイーサネット(登録商標)等の有線通信でも、すべてが携帯網の無線通信でも、有線通信と無線通信が混在しても構わない。設置場所の条件により選択することができる。
また、
図3(b)は、通信制御機器12の他の実施の形態にかかる外観斜視図を示す。
図3(b)に示すように、表示用LCD70の代替手段として機器状態表示用LED66が設けられており、この機器状態表示用LED66には、アンテナ受信感度や送信状態などを含む機器状態を表示させることができる。
【0040】
なお、
図2には図示していないが、通信制御機器12には、プログラム等の演算処理を行うために制御するためのCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)、各演算処理を実行するときに使用するプログラムである手段やデータを一時的に格納するためのRAM(Random Access Memory)、プログラムを記憶しているROM(Read Only Memory)を含む。
【0041】
制御対象機器14は、通信制御機器12により制御される対象となる機器である。制御対象機器14は、主に、屋内等の管理すべき環境において設置され、例えば、照明、エアコン、加湿器、栽培施設の屋根部を開閉するための駆動部、肥料供給装置等である。制御対象機器14は、
図1(b)に示されるように、直接的に通信制御機器12に接続される場合と、データ制御機器20を介して接続する場合とがある。
【0042】
情報収集機器16およびセンサ18は、通信制御機器12が制御するため、あるいは情報収集解析端末24が制御計画情報を算出するための基となる環境情報(外部環境あるいは管理すべき環境における状態を示す取得データ)等の情報を収集する機器である。情報収集機器16およびセンサ18は、外部環境あるいは管理すべき環境において設置され、例えば、温度センサ、照度センサ、湿度センサ等である。情報収集機器16およびセンサ18は、
図1(b)に示されるように、直接的に通信制御機器12に接続される場合と、データ処理機器22を介して接続する場合とがある。主に、屋外等の外部環境において設置される情報収集機器16およびセンサ18からの取得データは、主としてフィードフォワード制御に用いられ、主に、屋内等の管理すべき環境において設置される情報収集機器16およびセンサ18からの取得データは、主としてフィードバック制御に用いられる。
【0043】
データ制御機器20は、後述する添付ファイル付制御命令メールに添付されている添付ファイルあるいは制御計画情報に記載の制御情報を、制御対象機器14に対応する制御フォーマットに変換し、該制御対象機器14に制御命令を送るための機能を有する。データ制御機器20は、例えば、パソコン等により構成される。
【0044】
データ処理機器22は、情報収集機器16およびセンサ18から収集されるデータを通信制御装置12に対応する制御フォーマットに処理するための機能を有する。例えば、データ処理機器22は、例えば、パソコン等により構成される。
【0045】
(情報収集解析端末の構成)
さらに、環境管理システム10は、複数の通信制御機器12からのデータ収集し、解析し、さらに、各制御対象機器14に対して制御計画情報を提供するための情報収集解析端末24を含む。複数の通信制御機器12および情報収集解析端末24は、ネットワーク26を介して接続されている。また、情報収集解析端末24には、管理者端末24aが接続されている。センサ18や情報収集機器16から得られた外部環境あるいは管理すべき環境における取得データは、それらが接続される通信制御機器12に格納し、蓄積され、蓄積された外部環境あるいは管理すべき環境の状態を示す取得データは、それぞれの通信制御機器12から情報収集解析端末24に定期的に送信される。
これにより、情報収集解析端末24は、新たに中小規模ネットワーク上で取得された外部環境あるいは管理すべき環境における取得データを収集し、蓄積することができる。なお、情報収集解析端末24の設置場所は、ネットワーク26に接続されていれば通信制御機器12の近くでも、遠隔地でもかまわない。
【0046】
情報収集解析端末24は、通信部78、データベースサーバ80および処理部82を含む。データベースサーバ80には、蓄積データベース部84が接続されている。処理部82は、過去データ選択部86、制御計画情報算出部88および電子メール作成部90を含む。
【0047】
上述したように、通信制御機器12は、管理すべき環境において設置されるセンサ18等から得られる取得データの閾値を監視しており、監視しているその取得データが閾値を超えた、もしくは、閾値を下回った場合には、制御対象の通信制御機器12に制御情報が送信されるが、同時に、情報収集解析端末24にも閾値の監視状況、制御情報が情報収集解析端末24に送信される。これは、異常な状態のいわゆる警報になるため、情報収集解析端末24から管理者端末24aに対しても通知される(処理フローについては、後述する)。
【0048】
また、情報収集解析端末24は、センサ18および情報収集機器16等から得られるアナログデータだけではなく、接点、つまり、制御対象機器14のON/OFF状態についても監視している。その監視している制御対象機器14の接点状態に変化が生じた時に、警報として情報収集解析端末24から管理者端末24aに通知される。これらの警報を用いて、制御対象機器14に対する制御を行うことができる。
【0049】
情報収集解析端末24の蓄積データベース部84には、センサ18や情報収集機器16から得られた外部環境あるいは管理すべき環境における取得データである通信制御機器12のメモリ36に一時的に蓄積される取得データおよび制御対象機器14での制御情報が格納され、蓄積される。
蓄積データベース部84に蓄積される取得データは、データ収集時刻およびセンサ18や情報収集機器16などの固有の機器番号(他の機器と重複しない番号)のうちの少なくとも1つを含み、制御情報は、情報収集時刻、制御対象機器14の固有の機器番号および制御対象機器14における時系列に制御を行った具体的な情報(制御値)のうちの少なくとも1つを含む。
情報収集解析端末24への送信の際には、送信元の通信制御機器12に一時的に蓄積された取得データが、どの機器のもの、つまり、どのセンサ18、あるいは情報収集機器16からの取得データであるか、どの制御対象機器14からの制御情報であるかを特定することができる。従って、それらの取得データあるいは制御情報の時系列、配置などの関係が特定できるため、任意の制御対象機器14に役立てうるフィードフォワード制御のための制御計画情報を算出することができる。また、この制御対象機器14を制御するための制御計画情報は、制御時刻、制御対象機器14の固有の機器番号および制御値を含む。
【0050】
この情報収集解析端末24の蓄積データベース部84に収集され、蓄積された取得データおよび制御情報は、情報収集解析端末24から通信制御機器12に直接、もしくは、間接的に接続された制御対象機器14を制御するために用いられる。すなわち、この情報収集解析端末24に蓄積された取得データおよび制御情報を用いて、フィードフォワード制御のための制御計画情報を算出することができる。制御計画情報は、情報収集解析端末24から直接、制御対象機器14を制御するため、情報収集解析端末24の通信制御機器12を介して制御対象機器14の制御を行うか、または、通信制御機器12に接続されたデータ制御機器20を介して、制御対象機器14を制御するために用いることができる。
環境管理システム10では、このネットワークシステム内で得られた外部環境あるいは管理すべき環境における取得データおよび制御情報を、制御対象機器14を制御するための制御計画情報として算出するために利用することで、人間を介さないで自律的に制御することのできるシステムを構成することができる。
【0051】
一方、この情報収集解析端末24の蓄積データベース部84に収集され、蓄積された取得データは、例えば、グラフ化され、所有者、管理者や顧客等における管理者端末24aにおいて閲覧し、参照することができる。
【0052】
ここで示したように、フィードフォワード制御のための制御計画情報は、情報収集解析端末24で算出される。フィードフォワード制御のための制御計画情報を算出するためには、主に、外部環境において設置される情報収集機器16および各センサ18から取得された取得データと、その取得データに対して時系列に対応し、目標値に制御したときの制御対象機器14が行った制御情報とが必要である。各情報収集機器16および各センサ18からの外部環境あるいは管理すべき環境の状態を示す取得データとしての情報は、外気温度、屋内温度、土壌温度、外気湿度、屋内湿度、人感センサの検知回数などであり、管理すべき環境において設置される制御対象機器14の各制御情報は、エアコンの運転時間、設定温度、設定風量や動作させたヒータの本数、ヒータのワット数、換気扇の運転時間と時刻、照明のON継続時間、スプリンクラーの動作時間などである。
【0053】
情報収集解析端末24の過去データ選択部86は、フィードフォワード制御を行うための制御計画情報を算出するための基準となる予め蓄積された過去の取得データを選択する機能を有する。
また、情報収集解析端末24の制御計画情報算出部は、その選択された過去の主として外部環境における取得データから、その取得データに対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器14が行った制御情報に基づいて、制御対象となる各制御対象機器12を制御するための制御計画情報を算出する機能を有する。
なお、過去の外部環境における取得データは、特に、1日周期の時系列な変化あるいは季節的な変化に依存するデータである。
【0054】
(制御計画情報を算出するための過去の取得データの選択方法)
過去データ選択部86において、制御計画情報を算出するための過去の外部環境における取得データの選択方法は、平均値を使用する方法、あるいは、蓄積された過去の外部環境における取得データから制御当日と同等と考えられる天候条件の過去の外部環境における取得データを選択して使用する方法がある。平均値を利用する方法とは、例えば、過去数年間の同一日の前後1ヶ月の平均値を利用する、もしくは、過去数年間の同一日の前後1週間の平均値など、ある一定期間の外部環境における取得データを平均してその平均値を利用する方法である。以下、制御計画情報として使用される過去の外部環境における取得データの選択方法について、詳細に説明する。
【0055】
制御計画情報を算出するための過去の外部環境における取得データの選択方法として、平均値を使用する方法、あるいは、蓄積された過去の外部環境における取得データから制御当日と同等と考えられる天候条件の過去の外部環境における取得データを選択して使用する方法のいずれの場合も、過去の外部環境における取得データとして1日分の取得データを単位として利用することができる。なお、取得データの取得間隔は、任意に設定することができる。例えば、取得する間隔が1時間である場合は、1時間で1個のデータになるため、1日分で24個のデータで構成することができる。また、取得データの取得間隔が0.5時間の場合は、0.5時間で1個の取得データになり1日分で48個の取得データで構成することができる。
すなわち、1日分の取得データを1セット、例えば、1時間に1個の取得データとした場合は、1日24個の取得データ、1時間に2個の取得データとした場合は、1日48個の取得データを単位にしたデータ構成を考えている。しかし、例えば、3時間を1セットの取得データとした場合は、1時間で2個の取得データの場合、3時間で6個の取得データが1単位になり、3時間ごとにフィードフォワード制御のための制御値を選択し直すこともできる。これは、制御対象によって、都合のよい条件を選定すればよい。
【0056】
まず、制御計画情報を算出するための参考値として設定される過去の外部環境における取得データの選択方法として、平均値を使用する方法について説明する。
前年、もしくは、数年前の制御当日の例えば前後1ヶ月や前後1週間の平均値の使用について説明する。例えば、1日に24個の取得データを用いる場合は、前後1ヶ月、もしくは、前後1週間分の取得データから、それぞれ1日分24個の平均値を算出する。次に、制御開始時間の現在値と制御時間の平均値との差を制御補正値として算出して、その制御補正値を、1日分それぞれの24個の平均値に加算、もしくは、差し引きすることにより参考値を得て、フィードフォワード制御の制御計画情報を算出するために用いられる。
また、過去の取得データの1日分の選択は、過去数年の同一時期の1ヶ月の平均値、同一時期の1週間の平均値や直近1週間の平均の取得データなど、制御当日と同等と考えられる取得データに基づいて、設定される。
【0057】
次に、制御計画情報を算出するための参考値として設定される過去の外部環境における取得データの選択方法として、蓄積された過去の外部環境における取得データから制御当日と同等と考えられる天候条件の過去の外部環境における取得データを選択して使用する方法について説明する。
この選択する方法は、例えば、さらに、2つの手段に分類することができる。
1つめの手段は、1セット分、上記の例では1日分である24個の取得データ毎に選択する方法で、2つめの手段は、1セット分、すなわち、24個の取得データを共通の特徴に基づいていくつかの部分に分割して、共通の特徴のグループ毎に選択する方法である。共通の特徴とは、例えば、取得データの変化勾配が近似している等である。
【0058】
まず、蓄積された過去の外部環境における取得データから制御当日と同等と考えられる天候条件の過去の外部環境における取得データを選択するための1つめの手段は、現在値のみと比較して選択する方法である。しかしながら、この現在値のみと比較して選択された過去の外部環境における取得データを参考値として用いることで制御計画情報を算出することは、正確性が低い。
そのため、現在値と規定時間前の値、例えば、2時間前の変化量の両者を比較して選択することにより、過去の外部環境における取得データを選択することができる。そうすることで、選択された過去の外部環境における取得データが、制御計画情報を算出する基となる取得データとしての正確性を向上させることができる。
さらには、関連のある他の取得データの影響を考慮することによりデータの正確性の向上を図ることができる。例えば、屋内温度を制御する場合、屋外温度、屋外湿度のデータについて多変量解析などを用いて考慮することで、制御当日の環境に近い状態を選択することができる。
【0059】
次に、蓄積された過去の外部環境における取得データから制御当日と同等と考えられる天候条件の過去の取得データを選択するための2つめの手段について、
図5(a),(b)を用いて説明する。
図5は、
図5(a)は、屋外温度の1日の時系列変化を示したグラフであり、
図5(b)は、屋外の土壌温度の時系列変化を示したグラフである。
【0060】
まず、
図5(a)を用いて、ある日の屋外温度と特徴の平滑化による分割について、説明する。
図5(a)の実線で繋がれたのが屋外温度を示している。これらの代表値の変化の勾配を平滑化してまとめると、
図5(a)の破線のように6分割することができる。ここでは、6分割したが、勾配の変化の特徴を現すことができれば、6分割することができる。ここでは、6分割したが、勾配の変化の特徴を現すことができれば、6分割に限定したものではない。この分割化された6つの領域について、1つの領域内での勾配が一定であることが共通しており、この1セット分の代表値は、6つの勾配に集約されることになる。
【0061】
次に、
図5(a)に示した例とは異なる、屋外の土壌温度に関する平滑化による分割について、
図5(b)を用いて説明する。この図では、領域を5つの勾配で5つの時間帯に分割している。屋内の土壌の目標値を16℃とした時、A、B、D、Eの領域では、土壌温度を上げるような制御をする必要がある。屋内の土壌温度に対する制御を考えた場合、それぞれの時間による目標値と現時点での屋内の土壌温度との差および屋外の土壌温度の関係から、どれだけ屋内の土壌温度を上げる必要があるかを算出することもできる。プローブとなる屋外の土壌温度の傾向は、A、Bの時間帯では土壌の温度が上昇、D、Eの時間帯では、土壌温度が下降することが、過去のデータからわかる。0時から5時までは、土壌の温度上昇が小さい、これに比べ5時から10時までの土壌の温度上昇が大きいので土壌の温度上昇が小さい時には、ヒータの効果を強くする必要があり、温度上昇が大きいときは、ヒータの効果を弱くしても目標値に到達することができる。このように、目標値と現在値とを基準に制御を行う方法がある。
【0062】
なお、蓄積された過去の取得データから制御当日と同等と考えられる天候条件の過去の取得データを選択する方法では、1日分とは限らず、2時間分、6時間分、12時間分といった細かい区切りで、取得データを選択することでも、過去の取得データを使用することができる。
なお、この選択する方法の考え方は、平均値を算出して参考値を設定する方法についても適用することができる。
【0063】
(選択された過去の取得データおよび制御情報に基づく制御計画情報の算出)
次に、情報収集解析端末24の制御計画情報算出部88は、選択された過去の外部環境における取得データとその取得データに対して時系列に対応し、目標値に制御したときの制御対象機器14が行った過去の制御対象機器14に対する制御情報とに基づいて、制御計画情報を算出する。
【0064】
過去の分割化された制御情報を用いて制御計画情報を算出する方法について、
図5(c)を用いて説明する。
図5は、屋内の土壌温度とヒータの駆動との関係を示した表である。プローブとなる屋外の土壌温度と共に、ヒータの駆動条件であるヒータによる温度変化、ヒータの使用本数、ヒータのON時間を用いて屋内の土壌温度の変化率を求め、制御対象機器であるヒータを制御するための制御情報として利用する。例1では、土壌温度8℃の時、ヒータを0.5時間、ヒータを4本ONした時、土壌温度が16℃に、変化率が16.0、例2では、土壌温度11℃の時、ヒータを1時間、ヒータを2本ONした時、土壌温度が15℃に、変化率が4.0というように、制御開始時の制御対象機器の初期計測値と最終到達計測値、制御装置の動作時間、動作条件(ヒータの本数、ヒータのワット数等)、および変化率のデータを保持する。例えば、
図5(b)の0時に制御を開始する場合は、
図5(c)の例1の条件を用いて、ヒータを4本、0.5時間ONする制御をする。継続する場合は、その時点の土壌温度に合わせた条件で土壌温度が上昇するか下降するかが蓄積されている制御情報を基に算出された制御計画情報に基づき制御を行う。また、
図5(b)において、6時に制御開始する場合には、たとえば、例2の条件を用いて、ヒータ2本、1.0時間ONする制御をする。これにより、土壌温度の上げすぎに考慮した制御を行うことができる。また、制御情報として変化率を求めていることから、例1や例2のヒータのON時間0.5時間や1.0時間ではあるが、変化率が同じ条件でON時間が異なる場合は、ON時間を比例計算から算出して時間条件が異なる場合にも適用することができる。このように、蓄積されている制御対象機器の制御情報を使用することにより制御計画情報を算出し、その算出された制御計画情報に基づいてフィードフォワード制御を行うことができる。
【0065】
(フィードフォワード制御における処理フロー)
次に、
図6、
図7の処理フローを用いて本実施の形態にかかる環境管理システム10における制御方法を説明する。
図6は、この発明にかかる環境管理システムにおいて、制御計画情報を算出するための参考値を導出するため、平均値を利用する方法による制御方法を示す処理フロー図であり、
図7は、この発明にかかる環境管理システムにおいて、蓄積された過去の取得データから制御当日と同等と考えられる天候条件の過去の取得データを選択して参考値として使用する方法による制御方法を示す処理フロー図である。また、
図8は、この発明にかかる環境管理システムにおけるフィードフォワード制御を行った場合の一例を示した図である。
【0066】
本実施の形態にかかる環境管理システム10における制御は、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせて行われる。すなわち、制御の基本的な方法は、過去に蓄積した過去の外部環境における取得データ、およびその取得データに対して時系列に対応し、目標値に制御したときの制御対象機器14が行った制御情報を利用して予測制御であるフィードフォワード制御を行い、所定の条件に基づき、温度や湿度などの実測データと目的値との差からフィードバック制御を行う。最初に、フィードフォワード制御の処理フローを中心に説明する。
【0067】
情報収集解析端末24は、フィードフォワード制御を行うための設定を開始する(S200)。
過去の外部環境における取得データにおける所定期間の平均値が参考値として選択され、設定される(S202)。
現在値と設定された参考値とを比較し、許容値の範囲内か否かの比較がされる(S204)。
現在値と参考値との差の値が許容値の範囲内の場合、参考値から、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報に基づき、制御計画情報が算出され、制御計画情報が、情報収集解析端末24から所定の各通信制御機器12に送信される(S210)。
現在値と参考値との差の値が許容値の範囲外の場合、その差の値から、制御補正値が算出される(S206)。
続いて、算出された制御補正値から参考値が補正され、新たな参考値が設定される(S208)。
そして、設定された参考値から、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報に基づき、制御計画情報が算出され、算出された制御計画情報が、情報収集解析端末24から所定の各通信制御機器12に送信される(S210)。
【0068】
上記の情報収集解析端末24における処理は、具体的には、例えば、次のようにして行われる。
例えば、制御開始時刻が12時の場合、当日の12時の気温が12℃で過去の外部環境における取得データの中から選択された参考値の12時の気温が14℃の場合には、その差が2℃になる。許容値が“2℃未満”と設定されていた場合、この例では差の値が2℃なので補正をする必要がある。そして、S206で行われる制御補正値は、例えば、差の値を用いて、制御補正値の2℃とすることができる。S206で行われる新たな参考値の算出は、過去の外部環境における取得データから選択された参考値におけるすべての時刻のデータから制御補正値である2℃差し引くことによって行うことができ、S208において、その算出された新たな参考値が設定される。
また、例えば、7時の時点での現在値が25℃で昨年のデータの23℃を利用する場合、前年の7時の取得データが23℃であるため、制御補正値を2℃とすることができる。そうすると、新たな参考値は、1日分の前年の取得データから選択された参考値に+2℃加算して、S208において、その算出された新たな参考値が設定される。
【0069】
続いて、各通信制御機器12は、受信した制御計画情報に基づく制御値を、各通信制御機器12に接続される制御対象機器14に対して送信する。そして、制御対象機器14は、送信された制御値に基づき制御が開始される(S212)。
次に、管理すべき環境における現在値と目標値との差が許容値の範囲内か否かの比較がされる(S214)。
管理すべき環境における現在値と目標値との差が許容値の範囲内の場合、規定期間経過後(S216)、制御計画情報に基づく制御値が終了したか否かが判断される(S218)。
制御計画情報に基づく制御値が終了した場合は、制御を終了するか否かが判断される(S220)。
制御を終了する場合は、この環境管理システム10による制御が終了する(S222)。
【0070】
一方、S218において、制御計画情報に基づく制御値が終了していない場合、再度、現在値と目標値との差が許容範囲内か否かの比較がされる(S214)。
また、S220において、制御計画情報に基づく制御値が終了し、さらに、制御を行う場合は、再び、フィードフォワード制御を行うための設定を開始する(S200)。
【0071】
また、S214において、現在値と目標値との差が許容範囲外の場合、現在値と目標値との差がプラス値か否かが判定される(S230)。
その差が、マイナス値の場合、あるいは、プラス値であっても規定の回数にわたって、プラス値が連続した場合、差の値に基づいて、制御値が算出される(S232)。
一方、その差が、プラス値の場合、フィードフォワード制御を考慮しないフィードバック制御だけを実行するためにフィードフォワード制御値を差し引いた補正値を制御補正値として算出する(S250)。
続いて、S232あるいはS250において、算出された制御値が、設定される(S234)。
そして、設定された制御値に基づいて、フィードバック制御が実行される(S236)。なお、フィードバック制御の詳細については、後述する。
【0072】
図8は、この発明にかかる環境管理システムにおけるフィードフォワード制御を行った場合の一例を示した図である。過去の取得データは、1日周期の時系列に変化する外部環境における取得データとして、温度データを示している。
図8は、過去のデータとして、前年の温度平均値、および制御を開始する日の前日の温度を示している。前年の温度平均値は、屋内温度の平均値、および屋外温度の平均値を示す。また、制御を開始する日の前日の温度は、屋内温度、屋外温度を示す。
まず、屋内温度の目標値を25℃とする。昨年の温度平均値において、屋内温度と屋外温度とを比較すると、11時までは、屋内温度の方が屋外温度より高く、11時から23時までは、屋外温度の方が屋内温度より高くなっている。
この結果から、S208において、11時までは屋内で暖房やヒータなどで屋内温度を上げる制御を、11時から23時までは、冷房などで屋内温度を下げる制御を実行するような制御計画情報が算出されることで、目標値に沿った制御を行うことができる。
【0073】
また、制御を開始する前日のデータにおける屋内温度と屋外温度とを比較すると、8時までは、屋内温度と屋外温度とがほぼ同じ許容範囲内に入っており、9時以降は屋外温度が屋内温度より高くなっている。この結果から、S208において、8時までは、外気の影響を受けないことから制御を行わず、9時以降はエアコンなどで屋内温度を下げる制御を実行するような制御計画情報が算出されることで、目標値に沿った制御を行うことができる。
【0074】
制御条件は、その時間の屋内温度と屋外温度との差から制御の強度を決めることになる。また、制御計画情報を算出するためには、例えば、7時の時点での現在値と過去の取得データから選択された参考値との差を算出して、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報からずれ量を補正して制御値を決める。例えば、7時の時点での現在値が25℃で去年のデータ23℃を利用する場合、前年7時のデータが23℃であるため、+2℃の補正値が必要になるので、1日分の昨年データに+2℃加算して選択された参考値との差を算出し、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報からずれ量を補正して制御値を決める。
【0075】
なお、本実施の形態にかかる環境管理システム10における制御では、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせて行われるが、フィードバック制御単独でも制御を行うことができる。これは、例えば、制御計画情報が、天候に左右される場合、
図6において示される処理フローでは、過去の外部環境における取得データとして平均値が用いられるため、晴れの日が多い時期には晴れの日を前提としてデータになっている場合もあり、制御当日が雨の場合には異なった制御条件を採用しなければならない可能性を考慮するためである。すなわち、使用する過去の外部環境における取得データの算出条件によっては、晴れと雨とでは制御条件が大きく異なる可能性がある。そのような場合には、制御計画情報に基づくフィードフォワード制御を行わず、フィードバック制御のみで制御を行うことができる。つまり、制御当日の環境条件が過去のデータの基となる環境条件と異なる場合にはフィードバック制御のみで制御可能とする。
【0076】
次に、
図7の処理フローについて説明する。なお、通信制御機器12における制御ステップ(S308ないしS316)は、
図6に記載の通信制御機器12における制御ステップ(S212ないしS222)と同一であるので、説明を省略する。
【0077】
まず、情報収集解析端末24は、フィードフォワード制御を行うための設定を開始する(S300)。
次に、規定の時刻(例えば午前8時)に外部環境における現在値を取得する(S302)。
続いて、その現在値と同じもしくはほぼ等しい過去の外部環境における取得データを前年既定の範囲(例えば、前年当日の前後1ヶ月)の同一時刻のデータから探し、現在値と同じデータがある場合は、前年当日から近い日を選び、その日の1日分の取得データを参考値として選択され、設定される(S304)。
そして、設定された参考値から、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報に基づき、制御計画情報が算出され、制御計画情報が、情報収集解析端末24から所定の各通信制御機器12に送信される(S306)。
図7において示した処理フローの場合、過去に蓄積された過去の取得データを参考値とし、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報に基づき、制御計画情報を算出して、現時点の制御に反映するというデータ活用ができる。すなわち、この時の制御対象機器14の制御結果の情報を制御計画情報として利用することができる。
なお、ここでは単に、現在の外部環境における温度と過去の外部環境における取得データの比較での制御の方法を示したが、屋外温度に加えて、外気湿度、土壌温度などの相関関係を利用した制御計画情報を算出して、フィードフォワード制御のために使用することもできる。
【0078】
なお、本実施の形態のかかる環境管理システム10において、過去のデータの蓄積量が少なく、環境管理システム10の通常稼働のための過去の取得データが足りないような稼働初期の状態においては、例えば、次のように制御計画情報が算出される。
【0079】
まず、
図6の処理フローにおいて、制御計画情報として使用される過去のデータの選択方法が、平均値を利用する方法である場合について説明する。
運用開始1日目は、過去のデータが存在しないので、フィードバック制御で運用する。運用開始から2日目から7日目については、前日(例えば、1日分24個のデータ)までの平均値を過去の外部環境における情報収集機器やセンサからの取得データとして用いる。運用開始から8日目以降については、直近過去1週間(7日分)の取得データの平均値を参考値として用いる。運用後1年以上を経過した場合には、過去1年分の制御当日の前年同一日の前後1ヶ月、もしくは、前後1週間の平均値を取得データとしての参考値として用い、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報に基づき、フィードフォワード制御を行う。このような方法で初めに選択された過去の取得データとしての参考値の使用条件についての選択方法を満たす過去の1年、もしくは、数年分のデータが蓄積されるまでの運用を行う。なお、過去1週間、1ヶ月など1年に満たない過去の取得データを使用する場合は上記の方法を採用してもよい。
【0080】
次に、
図7の処理フローにおいて、稼働初期状態における運用方法について説明する。環境管理システム10において、運用開始1日目は、過去のデータが存在しないので、フィードバック制御のみで運用される。運用開始から2日目から30日目(1ヶ月)については、前日(例えば、1日分24個のデータ)までの規定時刻の現在値データと過去1日ないし過去30日の過去の外部環境における情報収集機器やセンサからの取得データの中から現在値と同じ、もしくは、最も近い同一時刻のデータを選択された取得データを参考値として用いる。運用開始から30日目以降については、直近過去1か月分のデータから規定時刻の現在値と同じか最も近いデータを持つ日の取得データを選択された取得データを参考値として用い、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報に基づき、フィードフォワード制御のための制御計画情報を算出する。運用日から1年以上が経過した場合には、制御当日の前年同一日の前後1ヶ月、もしくは、前後1週間の間の過去の取得データから当日の規定時刻の現在値と同じか最も近いデータを持つ日のデータを、選択された取得データである参考値として用い、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報に基づき、フィードフォワード制御のための制御計画情報を算出する。このような方法で初めに選択された過去の取得データとしての参考値の使用条件についての選択方法を満たす過去1年、もしくは、過去の数年分のデータが蓄積されるまでの運用を行う。なお、過去1週間、1ヶ月など1年に満たない過去の取得データを使用する場合は上記の方法を採用してもよい。
【0081】
(フィードバック制御における処理フロー)
図6および
図7に示される本実施の形態にかかる環境管理システム10の制御の処理フローにおいて共通するフィードバック制御(S236およびS336)は、当日の当時刻の管理すべき環境における気温、湿度等としての取得データと目標値との比較から、その時点の管理すべき環境における取得データの差を算出することにより行われる。ここで得られた差をフィードバック制御のための補正に利用する。つまり、得られた差がプラスの差であるか、マイナスの差であるか、その差が大きいか、小さいかにより、制御対象機器14に対する制御値を変更することで制御する(すなわち、通常のフィードバック制御である)。ただし、得られた差が小さく許容範囲内の値である場合は、制御を行わないようにしてもよい。こうすることで、フィードフォワード制御を優先させることができる。この場合の許容値は、例えば、管理者端末24aを用いて、各制御対象機器14に対して設定することができる。
【0082】
ここで、エアコンによる室温制御を例にして、フィードバック制御の仕組みを説明する。管理すべき環境における現在値の温度と目標値の温度との差を算出し、その差が正の場合は、現在の温度が目標値より高くなっているため、エアコンに対して、算出された差に応じて温度を下げるような制御値を送信する。一方、算出された差が負の場合は、現在の温度が目標値よりも低くなっているため、エアコンに対して、算出された差に応じて温度を上げるような制御値を送信する。また、その差の絶対値の大きさによって制御値を多段階(例えば、風量、設定温度)に制御するような制御情報を送信する。例えば、現在の温度と目標値との差の絶対値が10℃を超える場合は強風、10℃から5℃は「中風」、5℃から2℃は「弱風」、2℃未満から0℃は補正なしにする場合や、絶対値が10℃を超える場合は目標値プラスもしくはマイナス5℃で制御、絶対値が10℃から5℃の場合は目標値プラスもしくはマイナス3℃で制御、絶対値が5℃から2℃は目標値プラスもしくはマイナス1℃、2℃未満から0℃は補正なしというように、絶対値が大きいほど、それに対応した多段階で表された制御情報として制御値が制御対象機器14に送信される。多段階で表された制御値の変更は、ここで示した風量、設定温度それぞれ単独ではなく、風量と設定温度等との組み合わせで適用してもよい。補正をするための補正値は、得られた現在値と目標値との差の絶対値から導くことができる。一方、制御計画情報に基づくフィードフォワード制御が適正に行われて、過去の外部環境における取得データと外部環境における現在値との差が少ない場合は、結果として絶対値が小さいことからフィードフォワード制御だけでフィードバック制御が必要でない状況もありうる。しかしながら、目標値のデータと管理すべき環境における現在値との差が生じた場合は、補正値を算出して、フィードバック制御を行う必要がある。
【0083】
具体的なフィードバック制御は、通信制御機器12が、
図1(b)に示した通信制御機器12を中心とした構成ユニット、もしくは、複数の通信制御機器12の間において行われる。つまり、通信制御機器12に接続されるセンサ18、情報収集機器16から得られるデータを用いて、同一の通信制御機器12に接続される制御対象機器14、もしくは、別の通信制御機器12に接続される制御対象機器14の制御を行う。これにより、環境管理システム10は、ネットワーク内で自律分散制御を行うことができる。
【0084】
主体(制御命令メールを発信する側)となる通信制御機器12と連携する(制御命令メールを受信する側の)通信制御機器12との間における動きについて説明する。
図9は、この発明にかかる環境管理システムにおける通信制御機器間のフィードバック制御による電子メールを用いた場合の処理フローを示したブロック図であり、(a)は制御命令メールを発信する側の通信制御機器における処理フローを示し、(b)は制御命令メールを受信する側の通信制御機器における処理フローを示す。
【0085】
まず、主体(制御命令メールを発信する側)となる通信制御機器12における処理フローについて説明する。
主体となる通信制御機器12には、情報収集機器16およびセンサ18が直接、あるいは、データ処理機器22を介して接続されており、その接続は通信制御機器12のI/O部40に接続されている。主体となる通信制御機器12では、その構成のうち、I/O部40、データ処理部50、メール文作成部52、電子メール作成部54および送信用通信部56が、制御命令メールを発信する処理に用いられる。
【0086】
最初に、情報収集機器16やセンサ18から得られる情報はI/O部40を経由してデータ処理部50に取り込まれる。情報収集機器16やセンサ18からデータ処理部50に情報(データ)を取得する方法は、以下のような方法が適用される。
第1の方法は、I/O部40おいて、任意に設定可能なサンプリング時間を設定しておき、そのサンプリング時間にしたがって、情報収集機器16やセンサ18に対してデータを取り込むためのトリガー信号を送信し、情報収集機器16やセンサ18からデータをデータ処理部50に取り込む方法である。
また、第2の方法は、情報収集機器16やセンサ18からの情報(データ)を、I/O部40において予め設定されたサンプリング時間毎に取り込みを行うことにより、I/O部40を経由して、データ処理部50に取り込む方法である。
【0087】
センサ18である温度センサや湿度センサなどから取り込まれるデータがアナログデータの場合、任意に閾値を設定しておき、取り込まれたデータが、その設定された閾値を超えた時、もしくは、その閾値を下回った時に、データ処理部50は、連携する通信制御機器12への制御命令メール、または情報収集解析端末24への状態変化報告メールを送信すべきと判断する。また、制御対象機器14の照明のON/OFFや人感センサの感知/不感知などのディジタルデータの場合、データ処理部50は、ON状態からOFF状態、もしくは、OFF状態からON状態に状態変化が生じた場合、連携する通信制御機器12への制御命令メール、または情報収集解析端末24への状態変化報告メールを送信すべきと判断する。続いて、連携する通信制御機器12へ制御命令メールを送信すべきと判断された場合、メール文作成部52は、データ処理部50から取得した内容に基づき、制御命令メールに記載される所定の制御フォーマットの本文を作成する(なお、制御フォーマットについては、後述する。)。続いて、メール文作成部52は、作成されたメールを電子メール作成部54に送る。次に、電子メール作成部54は、電子メールの本文に記載される制御フォーマットに基づいて、連携する通信制御機器12あるいは情報収集解析端末24を特定し、電子メールの送信先を特定することで、電子メールを作成する。そして、電子メール作成部54は、作成された電子メールを送信用通信部56に送る。続いて、送信用通信部56は、取得した電子メールを連携する通信制御機器12に送信する。
【0088】
次に、連携する(制御命令メールを受信する側の)通信制御機器12における処理フローについて説明する。
連携する通信制御機器12では、その構成のうち、受信用通信部58、電子メール抽出部60、メール文解析部62、データ解析部64およびI/O部40が、制御命令メールを受信する処理に用いられる。
【0089】
まず、主体となる通信制御機器12から送られてきた制御命令メールは、連携する通信制御機器12内の受信用通信部58で受信される。次に、受信用通信部58は、受信した制御命令メールを電子メール文抽出部60に送る。続いて、電子メール文抽出部60は、取得した制御命令メールからメールの本文を抽出する処理が行われ、抽出された本文がメール文解析部62に送られる。メール文解析部64では、抽出された本文から制御命令部分を取り出し、制御命令から通信制御機器12に接続されているどのポート番号に接続されている制御対象機器14にどのような制御を行うかを解析し、その結果をI/O部40を介して制御対象機器14に出力する。
【0090】
また、上述の制御対象機器14への制御によって生じた変化から他の制御命令がある場合は、さらなる連携する通信制御機器12への制御命令メールを送付するため、メール文作成部52においてメール文の作成が行われる。一方、他の連携する通信制御機器12への制御命令の送付が必要でない場合は、情報収集解析端末24への状態変化報告メールを送付するため、メール文作成部52において状態変化報告メールの作成が行われ、続いて、情報収集解析端末24への電子メール作成部54において状態変化報告メールが作成される。
次に、送信用通信部56は、情報収集解析端末24に状態変化報告メール、もしくは連携する通信制御機器12に制御命令メールを送付する。連携する通信制御機器12が複数台存在しても、それぞれ通信制御機器12内の処理動作は、ここに記載した通信制御機器12と同様の処理動作が行われる。また、さらに、情報収集解析端末24は、状態変化報告メールを電子メール作成部80において作成し、管理者端末24aに送信する。
【0091】
以上に示したフィードバック制御の処理フローにより、外部に接続された情報収集機器16またはセンサ18からの主体となる通信制御機器12における処理フロー、主体となる通信制御機器12からの制御命令メールに対応する連携する通信制御機器12における処理フロー、および制御対象機器14の各処理フローを示した。これらフィードバック制御の処理フローにより、複数の通信制御機器12が存在した場合にも同様の処理フローを行うことができる。これにより、
図1で示したような複数の通信制御機器12、ならびに、その通信制御機器12に接続されている、制御対象機器14、制御収集機器16およびセンサ18が存在した状況においても、処理フローとして、通信制御機器12の間におけるフィードバック制御を行うことができる。
【0092】
ここで、
図9におけるフィードバック制御の処理フローは、複数の通信制御機器12間の制御命令のための通信方法として電子メール用いているが、当然、これに限るものではなく、FTP、TCP、UDPなど、どの通信方法を利用してもかまわない。
【0093】
(制御命令メール等の本文に記載の制御フォーマット)
次に、情報収集解析端末24から各通信制御機器12へ指示するための制御計画情報、あるいは主体となる通信制御機器12から連携となる通信制御機器12へ指示するための制御命令メールに記載される制御フォーマットについて説明する。
【0094】
図1において示す環境管理システム10は、複数の通信制御機器12により構成されており、そのため、接続先も複数存在することから、制御命令メール等において、制御すべき通信制御機器12やその通信制御機器12に接続される制御対象機器14、情報収集機器16あるいはセンサ18をそれぞれ区別して特定する必要がある。また、通信制御機器12における外部入出力端子42を構成するポートも複数存在するため、制御命令メールにおいて、各ポートに接続されている制御対象機器14、情報収集機器16あるいはセンサ18をそれぞれ区別する必要がある。したがって、本実施の形態にかかる環境管理システム10に特有の通信制御を可能とする制御フォーマットが準備される。換言すると、このような環境管理システム10では、どの通信制御機器12からでも、制御すべき他の通信制御機器12およびポート番号を特定することが可能な制御フォーマットが必要になる。本実施の形態にかかる環境管理システム10は、この制御フォーマットにより、情報収集機器16やセンサ18を監視しながら、それらの機器から得られる情報が変化した時、制御命令メール等を受信し、それに対する制御命令メールやお知らせメールを送信する機能を持つシステムを構成することができる。そうすることで、ここに示したように、これらの情報収集機器16やセンサ18の監視、あるいは通信制御機器12の制御を行うためのサーバ等を必要とせず、中小規模のシステムにより構築される環境管理システム10を構成することができる。
【0095】
まず、
図10は、この発明にかかる環境管理システムにおいて用いられる通信制御機器を制御するための制御フォーマットの例を示す。
【0096】
この制御命令メールに記載される制御フォーマットでは、制御対象となる通信制御機器12が特定され、通信制御機器12における外部入出力端子42の各ポートに接続される制御対象機器14をONするポート番号あるいはOFFするポート番号が特定される。したがって、制御フォーマットの構成は、「制御対象である通信制御機器12を特定する番号」、「制御対象である通信制御機器12におけるポート番号のうちONするポート番号」、「制御対象である通信制御機器12におけるポート番号のうちOFFするポート番号」により構成される。以下、
図10を用いて、具体的な例を提示しながら説明をする。
【0097】
例えば、主体となる通信制御機器12の3番ポート(入力ポート)に接続される情報収集機器16から収集されるアナログデータが閾値を超えた場合、連携する第2の通信制御機器12の2番ポート(出力ポート)をON、第4の通信制御機器12の3番ポート(出力ポート)をOFFする制御設定条件を仮定する。この制御を制御フォーマットとして表現すると「#2+2−0」,「#4+0−4」により表される。
【0098】
まず、「#」は連携する通信制御機器12を特定する番号を識別するための記号であり、「+」は出力ポートに接続される制御対象機器14をONするポート番号を識別するための記号であり、「−」は出力ポートに接続される制御対象機器14をOFFするポート番号を識別するための記号である。つまり、「#2+2−0」は、「#2」から連携する第2の通信制御機器12が特定され、続いて「+2」から、ONするポートが2番ポートであることが特定され、最後の「−0」から、OFFするポートの存在しないことが特定される。次に、制御フォーマットにおけるポート番号の特定方法について説明する。
【0099】
制御フォーマットにおいて、連携する通信制御機器12を特定するための表現は16進数、10進数、2進数などどの表記でも構わないが、制御対象機器14が接続されるポート番号は16進数表記が好ましい(読出し時は2進数での解析)ので、「#4+0−4」のOFFするポート番号の「4」は16進数、「(4)16=(0100)2」で2進数表示にすると3桁目が「1=ON」であるので3番ポートをOFFさせ、他は何もしない命令になる。制御フォーマットにおいて、ポート番号は、1ケタ目から1番ポート、2番ポートというように昇順に番号を付与する。
【0100】
ポート番号の特定の方法をより詳細に説明する。
ON、OFFするポート番号を示す数字は16進数で表記されており、ポート番号を特定するためには、2進数に変換して読み取られる。4の場合は、「0100」として解読し、3番ポートが特定されていることを示し、「7」は、「0111」として解読されるので、1番,2番,3番ポートの3つのポート番号が特定される。また、「f」は、「1111」として解読されるので、1番,2番,3番,4番ポートのすべてが特定される。このように16進数を2進数表記として解釈することにより、短い制御コードで複数の出力ポートを特定することができる。
【0101】
また、通信制御機器12の外部入出力端子42のポート数が多い場合は、「4a7」のように3文字で記載され、これを2進数に変換すると、「0100 1010 0111」で示すように12の出力ポートを取り扱うことができる。このように桁数を増やすことにより扱えるポート数を増やすことができる。これは、通信制御機器を特定する場合にも適用することができ、3桁の場合には4096種類の通信制御機器を特定することができる(なお、機器番号は読みやすさのため10進数を用いてもよい)。比較的、環境管理システム10を構成する通信制御機器12の数が多いシステムの場合、この制御フォーマットにより、
図10に示している「#5691+38−C7」といった桁数を増やすことにより、大多数の通信制御機器12を特定することができる。
【0102】
なお、制御フォーマットにおいて使用している記号の「#」,「+」,「−」は、特に、これらの記号に限定されるものではなくポート番号の表示に用いない文字列、記号であれば他の記号を使用しても構わない。また、頭文字として何等らかの識別文字、記号を使用しても構わない。この通信制御機器12に対する指定を記載する場合、「#2+0−4」,「#3+1−0」,「#2+0−4」,「#3+1−0」のように、各制御フォーマットの間に「(コンマ)」や「(スペース)や「*(アスタリスク)」などの文字列記号を用いても、他の規定で使用していない限り構わない。
【0103】
また、別の制御条件で主体となる通信制御機器12の3番ポート(入力ポート)に接続される情報収集機器16から収集されるアナログデータが閾値を下回った場合、連携する第2の通信制御機器12の3番ポート(出力ポート)をOFF、連携する第3の通信制御機器12の1番ポート(出力ポート)をONする制御設定条件を仮定する。この制御を制御フォーマットとして表現すると、「#2+0−4」,「#3+1−0」により表される。
【0104】
上述した制御を行うための2つの制御設定条件に基づいて、制御命令メールには、下記のような制御フォーマットが記載される。すなわち、
制御設定条件1:
主体となる通信制御機器12の3番ポートが閾値上限越え:#2+2−0、#4+0−4
制御設定条件2:
主体となる通信制御機器12の3番ポートが閾値下限超え:#2+0−4、#3+1−0
となり、この条件の制御フォーマットを主体となる通信制御機器12の3番ポートに関連付した形式で記憶させ、条件成立時に上記の制御フォーマットを用いてそれぞれの制御フォーマットにおいて特定される連携する通信制御機器12に制御命令メールとして送信される。
【0105】
次に、制御対象機器14に対して、複数の段階の制御(多段階レベルの制御)を行うための制御フォーマットについて説明する。多段階レベルの制御とは、例えば、扇風機の「微弱」、「弱」、「中」、「強」やエアコンの25℃,25.5℃,26℃,26.5℃,27℃,27.5℃,28℃,28.5℃のような設定対象が多段階のレベルのことをいい、このような制御を可能とする制御フォーマットを多段階制御フォーマットという。
【0106】
図11は、この発明にかかる環境管理システムにおいて用いられる通信制御機器に対して多段階レベルの制御をするための多段階制御フォーマットの例を示す。
【0107】
多段階制御フォーマットの構成は、「制御対象である通信制御機器12を特定する番号」、「制御対象となる通信制御機器12におけるポート番号」、「多段階設定値」により構成される。以下、
図11を用いて、具体的な例を提示しながら説明する。
【0108】
例えば、主体となる通信制御機器12の3番ポート(入力ポート)に接続される情報収集機器16から収集されるアナログデータが閾値を超えた場合、連携する第2の通信制御機器12の2番ポート(出力ポート)をレベル8に制御する制御設定条件を仮定する。この制御を多段階制御フォーマットとして表現すると「$2¥2&8」になる。
【0109】
この多段階制御フォーマットは、「$」に続いて通信制御機器を特定する番号、「¥」に続いてポート番号、「&」に続いて多段階設定値で構成される。ここで示している通信制御機器を特定する番号およびポート番号が10進数、多段階設定値が16進数で示される。なお、通信制御機器を特定する番号、ポート番号および多段階設定値は、いずれも10進数で表現されても、16進数でもかまわない。また、ここで使用している記号は任意であり、制御フォーマットと明確に区別するため、制御フォーマットと多段階制御フォーマットとの間では異なる記号を用いることが望ましい。頭記号は異なる表現の方法として、例えば、制御フォーマットの頭記号が「#」で、多段階制御フォーマットの頭記号が「##」のように区別してもよい。
【0110】
また、多段階設定値の表現において、多段階設定値のレベル数が多くなった場合、
図11に示すように「$2¥2&E8」のようにレベル値を示すケタ数を1ケタ2ケタへ増やすことにより多段階の段階数が増えた場合でも対応することができる。
【0111】
ここで、ポート番号の特定の方法が10進数でも構わない理由について説明する。先に示した多段階に対応していない制御フォーマットの条件では、複数の制御対象機器12をON/OFFをすることがあると考えられる。そのため、制御フォーマットのコード数を減少させた上で、複数の制御対象機器12のON/OFFを制御可能にするために、16進数により表現されていたが、多段階制御フォーマットによる通信制御機器12を制御設定条件では、同じレベルに複数の制御対象機器14を設定することが少ないため、1つの通信制御機器12を制御する形式を使用する。しかしながら、多段階制御フォーマットの制御コードが長くなるが、「$2¥2&8 $2¥4&8」のように並べて記載することにより複数の多段階レベルの制御を行うことは、当然できる。
【0112】
次に多段階制御フォーマットを用いた具体的な例を挙げて説明する。
【0113】
まず、エアコンの運転を例にあげて説明する。エアコン風量の設定は、「弱」,「中」,「強」,「最強」などのON/OFFでなく多段階設定値により表現される。ここに示される多段階設定値は、この多段階の設定を可能とするものである。例えば、「弱」,「中」,「強」,「最強」を数値に置き換えると「弱」は「1」、「中」は「2」、「強」は「3」、「最強」は「4」、「切る」は「0」というように設定することができる。この「0」〜「4」が多段階設定値である。なお、「0」〜「4」以外はデータ解析部64の処理で制御対象外とみなされる。具体例を挙げると、多段階制御フォーマット「$3¥7&2」により記載される多段階制御フォーマットによる命令は、連携する第3の通信制御機器12の7番ポートでエアコンの風量を設定することが示されており、エアコン風量を示す多段階設定値が「2」であるため、エアコン風量は、「中」の設定を示している。また、多段階制御フォーマット「$3¥7&4」により記載される多段階制御フォーマットによる命令は、同じ通信制御機器12の同じ7番ポートでエアコン風量が「最強」の設定を示している。
【0114】
また、別の例として、エアコンの温度設定を行う場合を例に説明する。エアコンの温度設定を18℃から28℃まで0.5℃毎に多段階設定することについて示す。18℃を「1」とし、0.5℃ごとに多段階設定を1ずつ増やすと28℃が「21」になる。例えば、多段階制御フォーマット「$4¥3&1」により記載される多段階制御フォーマットによる命令が、連携する第4の通信制御機器12の3番ポートのエアコンを18℃(命令文中の「1」(16進数、10進数でもかまわない))に設定することを示し、別の多段階制御フォーマット「$4¥3&15」により記載される多段階制御フォーマットによる命令が連携する第4の通信制御機器12の3番ポートを28℃(命令文中の「15」(16進数)は10進数では21)に設定することができる。このような多段階制御フォーマットを用いることにより、制御対象機器14に対して、ON/OFF制御以外の多段階の制御が可能になる。
【0115】
また、上記の多段階レベルの制御とは別の方法で多段階レベルの制御を行う方法について説明する。例えば、上記方法では、温度設定値を数値に対応させて制御する方法であったが、エアコンなどでは初期設定値を決めた上で、温度設定値を上げる、もしくは、下げる方法がある。例えば、初期設定値を24℃とした場合、温度を上げる制御に対応するプラス制御、もしくは、温度を下げる制御に対応するマイナス制御を行うことによって、エアコンの多段階レベルの制御を実現することができる。この多段階制御フォーマットの例として、次に示すような多段階制御フォーマットを示す。
【0116】
多段階制御フォーマット「$2¥2&+」,「$2¥2&−」あるいは「$2¥2&1」,「$2¥2&0」により表現する方法がある。この多段階制御フォーマットによる制御命令は、前述している多段階設定方法と同じく、「$」に続いて通信制御機器を特定する番号、「¥」に続いてポート番号、「&」に続いて上昇、もしくは、下降することを示し、記号、または数値で構成されている。「$2¥2&+」は、連携する第2の通信制御機器12の2番ポートのレベルを上昇させる設定をするという制御命令に対応する。一方、多段階制御フォーマット「$2¥2&−」は、連携する第2の通信制御機器12の2番ポートのレベルを下降させる設定をするという制御命令に対応する。ここで示した、上昇、もしくは、下降させる温度値は、任意に設定することができる。例えば、0.5℃上昇、もしくは、0.5℃下降させる設定を予め行っておくことにより、0.5℃のステップ毎の温度変化を実行させうる制御を行うことができる。
これと同じ形として、「$2¥2&1」,「$2¥2&0」といった、「&」の後に続いて数値を与えることにより、制御することもできる。ここでは、「1」を上昇する制御に対応させ、「0」を下降する制御に対応させることにより、「+」,「−」を用いた制御命令と同様な制御を行うことができる。
【0117】
なお、これらの多段階レベルの制御が行われた後に発信元への状態のフィードバックについては、先に記載した多段階レベルの制御である「$2¥2&8」の「&」の後に続く「8」が多段階設定値を示す形式を用いる。これにより現在値を得ることができる。
【0118】
また、この実施の形態にかかる環境管理システム10では、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせた方法で制御を行うが、センサ18や情報収集機器16から得られるデータによっては、フィードバック制御のみによる制御に切り替えることが可能である。
【0119】
本実施の形態にかかる環境管理システム10によれば、中小規模ネットワークシステム上に蓄積された外部環境あるいは管理すべき環境における取得データを管理者が閲覧するだけでなく、中小規模ネットワークシステムに蓄積された外部環境あるいは管理すべき環境における取得データをネットワーク内で活用することのできる制御情報として構成することにより、これらの制御情報から中小規模ネットワーク上の機器へのフィードフォワード制御信号を出力することができる。ここで得られた制御計画情報を使用したフィードフォワード制御と管理すべき環境における現在値を利用したフィードバック制御とを組み合わせることにより、外乱に対応した制御を行うことができる。これらの結果として、所有者、もしくは顧客への情報提供はもちろん、この制御情報を中小規模ネットワークシステムの制御対象機器の制御情報としてフィードフォワード制御に利用することにより、フィードフォワード制御のために別のモデルや装置を設けることなく外乱に対応した環境管理システム10を構成することができる。
すなわち、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせることで、単純に現在値を計測して、目標値との差を少なくするフィードバック制御だけを行うより、現在値から目標値に到達するまでの時間的遅延を少なくする、つまり外乱による影響を最小限にとどめることができる。
【0120】
また、本実施の形態にかかる環境管理システム10によれば、大規模なサーバ等の設備機器を導入することなく、複数の通信制御機器12により構成される環境管理システム10を構成し、通信制御機器に接続されたセンサ18や情報収集機器16等から得られる情報に基づき、他の通信制御機器12に接続された制御対象機器14を自律的に制御しうる環境管理システム10が得られる。
【0121】
次に、本発明にかかる環境管理システム10を用いて構成された栽培システム110について説明する。
図12は、この発明にかかる環境管理システムを用いて構成された栽培システムを示した構成図である。
【0122】
野菜やくだもの類を栽培するに際しては、温度、湿度あるいは照度等の条件の管理が重要である。たとえば、通常、それぞれの野菜やくだもの類に対する栽培環境(管理すべき環境)の最適な管理条件は異なる。さらに、トマトやレタス等のような土壌栽培をする場合と水耕栽培をする場合との違いにより栽培環境の最適な管理条件も異なる。そのため、よりよい環境で栽培するためには、野菜やくだもの類別、栽培方法別で温度、湿度、照度、土壌や水の養分等の栽培環境の条件を把握し、各栽培環境の条件を管理する必要がある。本栽培システム110を用いることで、上記の管理を実施することができる。以下、詳細に説明する。
【0123】
栽培システム110は、管理すべき環境として、多種の野菜やくだもの類を栽培するための複数の栽培施設180a〜180hにより構成される。本栽培システム110では、例として、栽培施設180aではトマトを、栽培施設180bではレタスを、栽培施設180cではにんじんを、栽培施設180dではイチゴを、栽培施設180eではピーマンを、栽培施設180fではかぼちゃを、栽培施設180gではジャガイモを、そして栽培施設180hではネギを栽培している。なお、当然、これらの野菜やくだもの類は例示であり、これらの各栽培施設で栽培される野菜やくだもの類はこれらの記載に限定されるものではない。
【0124】
図12に示した8つの栽培施設180a〜180hにおけるそれぞれの管理すべき環境である屋内には、通信制御機器112a〜112hが配置される。また、各栽培施設180a〜180hには、センサ18として温度センサ118a
1〜118a
8、湿度センサ118b
1〜118b
8、肥料供給装置118c
1〜118c
8がそれぞれ配置される。さらに、各栽培施設180a〜180hには、監視カメラ118d
1〜118d
8、土壌や水の養分解析センサ(図示せず)がそれぞれ配置される。なお、栽培施設の規模によって必要な温度センサ、湿度センサ、肥料供給装置、監視カメラの数が異なるところ、本実施例では代表として1組のセンサとして表している。温度センサ118a
1〜118a
8、湿度センサ118b
1〜118b
8、肥料供給装置118c
1〜118c
8、および監視カメラ118d
1〜118d
8により取得される取得データは、各栽培施設180a〜180hにおいて栽培される野菜やくだもの類を栽培するための制御情報を調整するために使用される。
【0125】
また、この栽培施設180a〜180hにおけるそれぞれの屋内には、制御対象機器114として照明114a
1〜114a
8が配置される。
【0126】
そして、温度センサ118a
1〜118a
8、湿度センサ118b
1〜118b
8、肥料供給装置118c
1〜118c
8、および監視カメラ118d
1〜118d
8は、各栽培施設180a〜180hに配置された通信制御機器112a〜112hに接続される。
【0127】
なお、各栽培施設180a〜180hには、制御対象機器14として栽培対象の日射量を調整するための照明114a
1〜114a
8その他屋内の温度条件を調整するためのエアコン、ヒータなどの設備(図示せず)、土壌栽培の土壌や水耕栽培の水を温度調整するための設備(図示せず)であるヒータ、温水器、冷却装置などの設備、湿度を調整するための水管やスプリンクラーなど(図示せず)が用いられる。
【0128】
さらに、時系列に変化する外部環境である、栽培施設180a〜180hの屋外の環境の情報を取得するために、栽培施設180c,180d,180e,180fに囲まれた中央部分に、通信制御機器112iが配置されており、通信制御機器112iには、データ処理機器122を介して温度センサ118a
0および湿度センサ118b
0、土壌や水の養分を解析するセンサ(図示せず)が接続されている。また、通信制御機器112iはネットワークに接続されており、情報収集解析端末124に制御情報や各センサからの取得データを送信している。
【0129】
情報収集解析端末124は、通信制御機器112a〜112iから送信されてきた取得データや制御情報が、情報収集解析端末124の蓄積データベース部に蓄積される。そして、蓄積された取得データや制御情報は、フィードフォワード制御のための制御計画情報の算出に用いられる。また、算出された制御計画情報は、情報収集解析端末124から、通信制御機器112a〜112iに送信され、その制御計画情報に基づき、制御対象機器であるエアコン、ヒータ、水管、スプリンクラー等が制御される。
【0130】
続いて、栽培システム110において実施される各栽培施設180a〜180hに対する制御について説明する。各栽培施設180a〜180hにおいては、センサ18として温度センサ118a
1〜118a
8、湿度センサ118b
1〜118b
8、肥料供給装置118c
1〜118c
8がそれぞれ配置されるが、本栽培システム110の制御について、温度センサ118a
1〜118a
8および湿度センサ118b
1〜118b
8からの取得データに基づく制御が中心となる。
【0131】
例えば、栽培システム110における温度制御は、栽培施設180a〜180hの屋内における温度センサ118a
1〜118a
8により管理すべき環境である屋内の温度や土壌の温度、水温などが計測され、その計測されたデータが通信制御機器112a〜112iに送られる。さらに、通信制御機器112a〜112iに送られた温度データは、情報収集解析端末124に送信され、情報収集解析端末124の蓄積データベース部に取得データとして取得され、蓄積される。本栽培システム110では、この蓄積データベース部に蓄積された取得データは、フィードフォワード制御のための制御計画情報の算出に用いられる。
【0132】
一方、通信制御機器112a〜112iに送られ、管理すべき環境である各栽培施設180a〜180hの屋内に設置される温度センサ118a
1〜118a
8からの取得データである温度データは、フィードバック制御にも用いることができる。
【0133】
また、栽培システム110における湿度制御は、栽培施設180a〜180hの屋内における湿度センサ118b
1〜118b
8により屋内の湿度、土壌内の湿度などが計測され、その計測されたデータが通信制御機器112a〜112iに送られる。さらに、通信制御機器112a〜112iに送られた湿度データは、情報収集解析端末124に送信され、情報収集解析端末124の蓄積データベース部に格納される。本栽培システム110では、この蓄積データベース部に蓄積されたデータをフィードフォワード制御のための制御計画情報の算出に用いられる。
【0134】
一方、通信制御機器112a〜112iに送られた湿度センサ118a
1〜118a
8からの計測データである湿度データは、フィードバック制御にも用いることができる。
【0135】
同様に、各栽培施設180a〜180hにおける肥料の投入量は、肥料供給装置118c
1〜118c
8が計測しており、肥料の投入時間と肥料の投入量とが、通信制御機器112a〜112iを介して、情報収集解析端末124に送信され、情報収集解析端末124の蓄積データベース部に蓄積される。本栽培システム110では、この蓄積データベース部に蓄積されたデータをフィードフォワード制御のための制御計画情報の算出に用いられる。
【0136】
また、栽培システム110では、各栽培施設180a〜180hの屋内における監視カメラ118d
1〜118d
8により作物の発育状態が記録され、その記録された画像データを閲覧可能に提示されることにより、栽培されている野菜くだものの発育状況を提供することができる。なお、栽培システム110における制御は、各栽培施設180a〜180h内に配置されるデータ制御機器120a〜120hによって制御されている。
【0137】
管理すべき環境である栽培施設180a〜180hの屋内における温度や湿度は、目標値に調整されているため屋外温度、湿度とは異なっている。外部環境である屋外における温度は、太陽の影響を受け易いため、朝から昼にかけて上昇したり、昼から夜にかけて下降したりする変化が、屋内と比較して大きいことから、屋内と屋外との温度差が大きくなったりする一方、雨が降るなどをした場合は、屋内と屋外との間では大きな湿度差が生じる。したがって、栽培施設180a〜180hの屋内の温度、湿度等は、屋外との気温や湿度の差による影響を受ける。
また、春、夏、秋、冬などの季節により温度、湿度、およびそれらの変化量が異なることから、屋内と屋外との温度、あるいは湿度差が大きい季節は、より屋外の影響を受ける。ただし、作物の種類によって設定する屋内の温度、湿度が異なるため、どの時期に屋外の影響を受けやすいかは作物の種類により異なる。
【0138】
栽培システム110では、外部環境である屋外の温度および湿度のデータを、栽培施設180a〜180hの中央に設置された温度センサ118a
0、湿度センサ118b
0から得ることができる。この温度センサ118a
0、湿度センサ118b
0から得られたデータもトマト栽培施設180a内の情報収集解析端末124に取得データとして蓄積される。この蓄積された過去の取得データを、外部環境である屋外からの影響(外乱)に対応するためのフィードフォワード制御のための情報として利用することができる。
【0139】
この栽培システム110では、管理すべき環境である栽培施設180a〜180h内で行っているフィードバック制御と外部環境である屋外における時系列変化(外乱)に対応するためのフィードフォワード制御とを組み合わせる。情報収集解析端末124の蓄積データベース部に蓄積された過去の取得データを基に算出された制御計画情報に基づいてフィードフォワード制御をすることで、外乱に対応した制御を行うことができる。また、この栽培システム110では、外乱に対して、リアルタイムデータとしての通信制御機器112a〜112iの情報を利用して、フィードバック制御を行うこともできる。
【0140】
なお、ここに示した制御内容は、管理者などが情報収集解析端末124において設定した設定条件である目標値に追従して誤差が少ない制御をすることが目的である。そのため、トマト、ニンジンなどの作物別の条件設定、生育状況を反映しての目標値の変更、肥料が足りているか、また、どの栄養素が不足しているかどうかなどについては、最適な栽培条件を見出すことができるまでは、ある程度人間が判断することになる。
従って、本栽培システム110は、人間が栽培条件、栽培状況を見て栽培条件を改善するための情報提供を行うことができる。
【0141】
例えば、情報収集解析端末124の蓄積データベース部には、年毎に収集した取得データ、および、監視カメラ118d
1〜118d
8により取得された画像が蓄積されていることから、それらの取得データを図示し、管理者が容易に解釈することができる情報の提供や記録画像から、茎や葉の発育状況、花の咲いた日数、葉の大きさ、色、土壌栽培の土の成分(養分)、水耕栽培の水の成分(養分)の比較等を各発育過程で行うことにより、どの時期の条件が良くなかった等の改善点を把握しうる。ここでは図示していないが、土壌や水耕栽培の栄養分の窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の濃度を計測するセンサの情報によりどの栄養素が不足しているかという改善点も把握しうる。花が咲いた日が例年より遅れた場合は、花が咲くまでの条件で前年以前との違いを比較し、次年の条件変更に役立てることができる。したがって、この栽培システム110では、栽培条件面での見直しを行った結果を栽培時の発育環境にフィードバックすることが可能である。例えば、管理者が、7月10日から10日間の設定温度を3℃上げた方が良いと判断した場合、その間の目標値に+3℃にする指示をシステムに入力することにより目的とした条件での栽培が可能になる。
【0142】
また、別の視点でのデータ活用も可能である。すなわち、例えば、作物の栽培は、通常、何月何日、もしくは、温度や湿度等の環境条件が整った時に種をまき、おおよそ何日後に発芽し、それから何日後に葉ができ、その後何日あるいは何十日後に花が咲き、その後何日あるいは何十日後に実が成り、その後何日あるいは何十日後に収穫をすることになる。多くの場合は、作物を収穫するまでの基準となる日程に基づいて栽培している。そのため、例えば、ここで挙げた発芽など成長面で区切りとなる日の過去の蓄積データとの比較からその年の発育状況が過去とどうであったかという情報提供をすることができる。
【0143】
例えば、監視カメラによる撮影画像の比較などの見て分かりやすい情報提供の例について、
図13を用いて説明する。
図13は、この発明にかかる環境管理システムを用いて構成された栽培システムの今年と去年の監視カメラの記録画像を比較した図である。ここでは、5日目、20日目、100日目の今年とその去年の画像を比較している。5日目の発芽状態では、今年の方が大きくなっており、20日目における葉の状態では、今年の方が葉を多くつけて育っているが、100日目では、去年の方が多くの花をつけている。この結果から、去年と今年の20日目から100日目の条件を比較して改善をすることにより、来年の栽培条件に反映することができる。また、この時期の肥料供給装置118c
1〜118c
8の履歴として通信制御機器112に蓄積された肥料の投入量を比較して、肥料の投入量の影響を検討することで、より良い収穫物を得るために、その後の栽培にどのような制御を加えるべきか、ということに対する情報を提供することができる。
【0144】
ここで用いている監視カメラ118d
1〜118d
8を赤外線カメラに変更する、もしくは、監視カメラ118d
9等をさらに増設することにより、例えば、
図13のような5日目、20日目、100日目という発育段階で茎、葉、花や土壌の表面温度のある年とその前年とを比較することによっても、より良い収穫物を得るために、その後の栽培にどのような制御を加えるかということに対して情報を提供することができる。
【0145】
以上のように、本発明にかかる環境管理システム10を用いた栽培システム110の情報収集解析端末124が、各栽培施設180a〜180h内の温度センサ118a、湿度センサ118b、肥料供給装置118c、監視カメラ118dおよび照明114a
1〜114a
8などの情報収集機器のデータの取得データ、ならびに、エアコン、ヒータ、水管およびスプリンクラー等の制御対象機器の制御情報を収集し、蓄積し、解析している。この情報収集解析端末124の取得データおよび制御情報の収集、蓄積、解析を行うことが、管理すべき環境である、それぞれの栽培施設180a〜180hの屋内における温度、湿度センサからの取得データによるフィードバック制御との組み合わせにより、外乱の影響を少なくした、目標値に対し精度の高い制御を可能とした栽培施設180a〜180hを用いた栽培システム110を構成することが可能になる。
【0146】
また、その年の栽培対象の生育状態が良くないなどの栽培途中の状況から目標値を変更する場合においても、過去の取得データから参考値を算出し、その参考値に対して時系列に対応し、管理すべき環境を目標値に制御したときの制御対象機器が行った制御情報を用いてエアコン、ヒータ、照明などの制御対象機器14のフィードフォワード制御を行う。加えて、その時点の管理すべき環境における情報収集機器からの各取得データに基づきフィードバック制御を行うことにより修正した目標値に対して誤差の少ない制御が可能になる。これにより、温度、湿度、照度等の栽培条件の最適化を進めることができる。その結果、より良い作物を栽培するための情報を栽培者に提供することができる。
【0147】
次に、本発明にかかる環境管理システム10を用いて構成されたビル用省エネルギー管理システムについて説明する。
図14は、この発明にかかる環境管理システムを用いて構成されたビル用省エネルギー管理システムを示した構成図である。このビル用省エネルギー管理システムでは、部屋が使用されているとき(在室の状態)と使用されていないとき(空室の状態)とが切り替わる場合における各部屋内のエアコン等の作動について、省エネルギーと部屋の使用者の快適さとのバランスを効率よく制御することを目的としている。
【0148】
図14に示すビル用省エネルギー管理システム210は、ある製造メーカの6階建て本社ビルを仮定しており、1Fに営業部、2Fに総務部,資材部、3Fに技術部、4Fに品質部、5Fに評価室,工作室、6Fに会議室あるものと仮定する。それぞれの階層には、通信制御機器212a〜212fが配置される。また、それぞれの階層の管理すべき環境である各部屋内には、センサ18として、エアコン214b
1〜214b
13、温度センサ218a
1〜218a
9、人感センサ218e
1〜218e
24がそれぞれ配置される。3Fの技術部の屋内に、情報収集解析端末224が配置される。なお、
図14には図示されていないが、このビルの受配電機器は1Fに配置されているものとする。
【0149】
そして、温度センサ218a
1〜218a
9、人感センサ218e
1〜218e
24、エアコン214b
1〜214b
13は、それぞれの階層に配置される通信制御機器212a〜212hにそれぞれ接続される。通信制御機器212a〜212hは、接続されている制御対象機器14であるエアコン214b
1〜214b
13をフィードバック制御することができる。各階に設けられている通信制御機器212a〜212hは、情報収集解析端末224に接続されており、情報収集解析端末224は、情報収集機器16である温度センサ218a
1〜218a
9、外部環境の状態を示す人感センサ218e
1〜218e
24からの取得データや制御対象機器のエアコン214b
1〜214b
13の制御情報を収集、蓄積、解析を行っている。
【0150】
これらの温度センサ218a
1〜218a
9、および人感センサ218e
1〜218e
24からの取得データが情報収集解析端末224に収集され、解析された結果として制御計画情報が算出され、これに基づいた制御がフィードフォワード制御であり、温度センサ218a
1〜218a
9、人感センサ218e
1〜218e
24などの取得データに基づいて、リアルタイムに温度制御を行うのがフィードバック制御である。
このように、ビル用省エネルギー管理システム210は、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせて制御を行う。
【0151】
続いて、ビル用省エネルギー管理システム210において実施されるそれぞれの階層で行われる制御について説明する。
ビルの電力使用量は、1Fの受配電機器に取り付けられた電力使用量を検知するセンサにより計測され、それぞれの階層に配置される通信制御機器212a〜212hに送られることにより電力使用量が監視される。そして、3Fの技術部の屋内に配置される情報収集解析端末224に、1F〜6Fのすべての通信制御機器212a〜212hからのデータ情報と制御対象機器14とセンサ等18の情報収集機器16からの制御情報および取得データを得ることができ、かつ、制御対象機器14の制御を行うことができる。例として、このビル用省エネルギー管理システム210により、夏場と冬場にエアコン(冷房、暖房)を使用して温度制御を行う条件での制御方法について説明する。ここでは、温度制御だけを例に説明するが、湿度、照度その他別の制御対象機器の制御を同時に行うことができる。
【0152】
1Fの営業部、2Fの総務部,資材部、3Fの技術部、4Fの品質部については、居室であるため常に人が在室していると仮定して、常には在室でない(空室と在室とが切り替わる場合)考えられる5Fの評価室,工作室、6Fの会議室のエアコンによる温度制御について説明する。通常の温度センサ218a
1〜218a
9のデータを基にリアルタイムに温度制御をすることがフィードバック制御である。
【0153】
次に、フィードフォワード制御を行うためのデータを得るための方法について説明する。情報収集解析端末224の蓄積データベース部には、外部環境の状態を示す人感センサ218e
17〜218e
24の検知時間、検知回数、エアコンの稼働状況等の過去の取得データが蓄積されている。人感センサの検知時間、検知継続時間を含む取得データから各部屋に人が在室している時間を算出することができる。これにより、部屋の1日の使用時間の合計を算出することができ、過去の取得データを集計することで、それらを統計データとして平均の使用状況を割り出し、就業時間(初めの人が出社して、最後の人が退社するまでの時間)に対するそれぞれの部屋使用時間を算出し、そのデータを部屋の使用頻度として得ることができる(稼働率)。なお、ここでは、人感センサ218e
17〜218e
24の検知状態に基づき部屋の稼働状況を算出したが、エアコンの稼働状況や照明のON/OFFで同等の稼働状況を算出することもできる。しかしながら、エアコンや照明の消し忘れを考慮すると、人感センサ218e
17〜218e
24の検知状態を基準として稼働状況を算出するのが好ましい。
【0154】
また、各部屋の使用頻度によって、部屋に人が不在時のエアコンの温度設定、エアコンOFFなどの省エネルギーで使用者が快適に使用できる条件を割り出す。つまり、使用頻度が高い条件での人が不在の時のエアコン運転は、エアコン(冷房)の温度設定を低く(エアコンON時の設定温度より高い温度)、使用頻度の低い部屋については、エアコンの設定温度を高く、更に使用頻度が低い条件では、エアコンの動作をOFFにするように設定される。
【0155】
夏場のエアコンの使用と停止状態での部屋の温度状況について説明する。
部屋の使用が終了し、エアコンをOFFにすると、外部環境である屋外の温度の影響を受けるため、部屋の温度が上がってしまうことから、次にその部屋を使用する場合には、エアコンをONする必要が生じる。部屋の使用頻度が高い場合は、このエアコンの再作動に伴いONする回数が多くなるため、部屋のエアコンの運転を部屋使用後に使用時の設定温度より高めの設定温度で維持したときより、電力使用量が高くなる場合がある。そのため、部屋使用後に温度を維持する、もしくは、目的値とする温度より少し高めの温度で維持することにより、次に部屋の使用開始時に、エアコンの再作動に伴う電力使用量を抑えることができる。加えて、部屋を使用している人にとって、暑い部屋に入り仕事をするよりは、エアコン設定温度(目標値)に近い温度の部屋に入り仕事をする方がすぐに仕事に取り掛かれるなど仕事の効率も上がる。
また、部屋の使用頻度が低い場合は、エアコンで室温を維持する電力量について、新たにエアコンをONした時の電力使用量が少なくなる場合は、部屋のエアコンをOFFし、そうでない場合は、高い設定温度で維持することにより電力使用量を抑える。
【0156】
一方、暖房の場合は、使用頻度が高い部屋は、部屋の使用後は通常部屋の使用時の設定温度より低いが、その差が少ない設定温度で部屋の温度を維持し、使用頻度が低い部屋は、より低い設定温度(目標値)で部屋の温度を維持するか、エアコンをOFFにする。つまり、暖房時には、冷房時と逆の温度制御が行われる。
【0157】
この建物内の部屋の稼働状況に対するエアコンの制御について、
図15を用いて説明する。
図15は、この発明にかかる環境管理システムを用いて構成されたビル用省エネルギー管理システムにおけるある1日のエアコンの稼働状況を示した構成図である。ある1日のエアコンの稼働状況、つまり、エアコンがON状態か、OFF状態かを示したものであり、横軸は、エアコンの稼働時間を示し、縦列は各部屋を示す。また、各部屋における稼働率は、その日における各階のうち、最初に部屋の使用を開始した時間(h
1)から、その日における各階のうち、最後に部屋の使用を終了した時間(h
2)を使用時間とし、その使用時間に対する、各階のエアコンの稼働時間の割合として示す。
【0158】
また、
図15において、1行目は1Fの営業部の部屋、2行目は総務部,資材部の部屋、3行目は技術部の部屋、4行目は品質部の部屋、に相当する。5行目の5F−1は評価室であり、6行目の5F−2は工作室である。7行目ないし9行目の6F−1、6F−2、6F−3は、それぞれ3つの会議室である。
【0159】
図15によると、1F〜4Fは、エアコンが常時使用されていることがわかる。また、5F−1や6F−3の部屋のエアコンの稼働率が比較的低いことが確認でき、5F−2、6F−1、6F−2については、エアコンの稼働率が比較的高いことが確認できる。また、5F−2は使用時間が長く、使用回数は1回であり、一方、6F−2は、5F−2と同様に使用時間は長いが、使用回数が7回と頻度が高い。このように、それぞれ、部屋の使用時間が長い場合や部屋によって使用頻度が異なるといった、それぞれの部屋の使用方法に違いがある。なお、1Fないし4Fの各部屋におけるエアコンは、常時使用されているため、本ビル用省エネルギー管理システム210に基づく制御対象から除かれる。
【0160】
5F−1については、稼働率が低く、使用回数が1回と少ないため、使用時だけエアコンをONし、それ以外は、エアコンをOFFする制御をする。5F−2については、稼働率は比較的高いが、使用回数は1回であるため、使用時だけエアコンをONし、それ以外はエアコンをOFFする制御をするが、別日における人感センサ218e
18による取得データにより使用回数が多いことが明らかな場合には、冷房の場合は高めの温度設定で運転する。6F−1、6F−2については、稼働率が高く、使用回数が多い使用状況である。そのため、使用されていない時間帯でも、設定温度(目標値)より少し高めの温度設定で運転する。6F−3については、稼働率が低く、使用回数も2回と少ないため、使用時だけエアコンをONし、それ以外はエアコンをOFFする制御をする。これにより、省エネルギーと部屋の使用者の快適さとのバランスを考慮した制御を行うことができる。
【0161】
なお、
図15はある1日のエアコンの稼働状況を用いた例でエアコンの制御について説明したが、日々の取得データ、およびその取得データに対して時系列に対応し、目標値に制御したときのエアコンが行った制御情報の蓄積により、その制御精度を向上させることができる。この制御の考え方は、稼働率(平均使用時間を含む)、および使用回数であるため、1日にエアコンがON/OFFされた時間をすべて記録することから、それぞれ1回当りの使用継続時間、使用回数および総使用時間を得ることができ、1日当りの稼働率、平均使用時間および使用回数を算出することができる。これらのパラメータでエアコン制御条件を決め、状況に当てはめることにより、過去の取得データを基にしたエアコンの制御が可能になる。また、エアコンの使用状況の制御情報は、季節によって異なるので、参考値として選択される過去の取得データも、エアコンを稼働する時期の取得データを用いると精度良い制御が可能になる。
【0162】
別の例として、百貨店、量販店などの店舗の出入口における温度制御について説明する。
百貨店や量販店には複数の出入口がある。その出入口は、自動ドア、もしくは、手動ドアであり、一般家庭の玄関よりドアを開閉する回数が多く、かつ、開放時間も長い。そのため、ドアの開放、あるいは開閉操作により、外気が屋内に入ってくる量が多くなり、エアコンによる冷房や暖房の効果が低下する。そのため、百貨店や量販店における複数の出入口のドアの開放、あるいは開閉操作によっても、略一定の温度状態を維持するための制御が必要となる。
【0163】
図16A(a)は、出入口のドアの開放時間と温度との関係を示した図である。
図16A(a)において、左側が冷房時のドアの開放時間と温度変化との関係を示し、右側が暖房時のドアの開放時間と温度変化との関係を示している。そして、縦軸が温度、横軸が経過時間をそれぞれ示す。ここで示している温度制御の例において、温度の計測場所は、百貨店、量販店などの店舗の出入口のドアの屋内側近傍である。
【0164】
図16Aの(a)に示すように、冷房時、及び、暖房時における自動ドアの開閉時間が長くなると、ドア近辺の温度が屋外の温度に近くなり、その結果、冷房、暖房の効果が低下してしまう。温度制御、つまり、出入口での温度を一定に保つためには、ドアの開放時間が長い状況が生じた時ほど冷房、もしくは、暖房の効きを強くしなければならない。ドアの開閉の検知手段としては、センサ18として人感センサを利用することができる。つまり、自動ドアの開閉は、自動ドアに人間が近づいた時に人を検知してドアが開くため、自動ドアの開閉時間は、人感センサが人を検知している継続時間や検知回数に依存する。一方、手動ドアの開閉では、手動ドアの開放状態が維持されることも考えられるため、人感センサと温度センサとを含めたセンサ情報を収集しながら制御することが必要になる。この例において、出入口におけるエアコンによる温度制御は、照明や電力等の建物全体の電力関係の制御の一部である。
【0165】
外部環境の状態を示すドアの開閉状況のための出入口に設置された人感センサによる検知情報、およびその場所の温度の計測データ等が取得データとして情報収集解析端末(図示せず)に収集、蓄積される。この蓄積された取得データを利用することにより、管理すべき環境である自動ドア近傍のエアコンについてフィードフォワード制御をする。この情報収集解析端末から通信制御機器にフィードフォワード制御をするための制御計画情報を送信し、通信制御機器からそれぞれに接続されているすべての制御対象機器の制御をすることができる。なお、管理すべき環境である出入口に設置された温度センサでエアコンを制御することをフィードバック制御と、ここで示した過去の取得データを利用した制御のフィードフォワード制御を組み合わせることにより、エアコンでの温度制御を行う。
【0166】
ここで、このシステムでのフィードフォワード制御の方法について説明する。
図16A(b)は、過去のある1日の営業時間内のそれぞれの時間当たりの人感センサによる検知回数を集計した結果と外気温、目標値との関係を示した図である。ここでは、過去のある1日の取得データを用いるが、過去1週間の取得データの平均値や前年の同一時期の取得データ等を用いても良い。
また、
図16B(a)は、昼の時間帯の詳細な人感センサによる検知回数の詳細と制御条件の関係を示した図であり、
図16B(b)は、エアコンの制御条件を示した図である。
【0167】
図16A(b)より、開店前の9時は、開店していないため人感センサによる検知回数が0回であるが、開店後、人感センサによる検知回数が増加していることがわかる。すなわち、このことは、人感センサによる検知回数だけ自動ドアが開閉され、来客があったことを示す。また、昼の時間帯にかけて、外気の温度が高くなり、目標値との差が大きくなっていることを示している。また、
図16B(a)では、例えば、単位時間20分で11時00分から13時40分(14時00分)までの人感センサによる検知回数を示している。ここでは、人感センサによる検知回数で制御条件を決定し、その制御条件に基づいて制御する。
図16Bの(b)に示しているエアコンの制御条件に基づいて制御する。人感センサによる検知回数が10回以下を条件0、人感センサによる検知回数が11回〜50回までを条件1、51回〜100回までを条件2、101回〜150回までを条件3、151回〜200回までを条件4、201回以上を条件5とする。条件1では、エアコン設定温度−1℃で風量が「弱風」、条件2ではエアコン設定温度−2℃で風量が「弱風」、条件3では、エアコン設定温度−3で風量が「中風」、条件4では、エアコン設定温度−4℃で風量が「強風」、条件5では、エアコン設定温度−5℃で風量が「最強風」とする。
【0168】
図16Bの(a)より、11時00分から11時20分まで、11時20分から11時40分まで、11時40分から12時00分まで、12時00分から12時20分までの時間帯は、条件3に相当し、エアコン標準設定温度に対し−3℃、風量が「中」でエアコンを運転する。12時20分から12時40分までの時間帯は、条件4に相当し、エアコン標準設定温度に対し−4℃、風量が「強」でエアコンを運転する。12時40分から13時00分まで、13時00分から13時20分まで、13時20分から13時40分までの時間帯は、条件3に相当し、エアコン標準設定温度に対し−3℃、風量が「中風」でエアコンを運転する。13時40分から14時00分までの時間帯は、条件2に相当し、エアコン標準設定温度に対し−2℃、風量が「弱」でエアコンを運転する。
【0169】
ここで示したように、人感センサによる検知回数に閾値を設け、エアコンの運転条件を決めることにより、対象の時間帯でのエアコンを運転するための制御条件のエアコンの設定温度、風量を決定することができる。
このとき、制御量を示す制御情報は、制御フォーマットとして多段階制御フォーマットが用いられる。
【0170】
上記においては、人感センサによる検知回数で制御条件を算出したが、さらに条件を加えて、人感センサによる検知回数と時間帯との2つの条件に基づく制御条件の決定方法を示す。なお、以下においては、検知回数と時間帯との2つの条件に基づく制御条件の決定方法を示すが、これに限られず、さらに、条件を加えることも可能である。
【0171】
図17は、この発明にかかる環境管理システムを用いて構成されたビル用省エネルギー管理システムの制御を行うための人感センサによる検知回数と時間帯のポイント表とエアコン制御設定表を示した表である。そして、そのクラス毎にポイントを付与し、2つの条件での合計ポイントで制御条件が決定される。人感センサによる検知回数でのポイントの付与方法は、人感センサによる検知回数を0回から、20回毎にクラス分けし、最大141回以上で8ランクに区分される。そして、クラス1には、0ポイント、クラス2には1ポイントという形で、それぞれ条件が設定されており、クラス8の141回以上では7ポイント付与される。時間帯でのポイントの付与方法は、温度を基準に、最も気温が高い時間帯の1時、2時台の時間帯には7ポイントを付与し、最も気温が低い9時台には、0ポイントを付与する。例えば、
図16Bの(a)から11時00分から20分までの時間帯は、人感センサによる検知回数が108回である。この条件でポイントの計算、制御条件の決定を行う。時間帯11時00分から11時20分までは、11時台に相当し、4ポイントで、人感センサによる検知回数は108回で5ポイントになるため、合計9ポイントで、制御条件がエアコンの設定温度−6℃、風量が「強」でエアコンを運転することになる。また、12時40分から13時00分までの時間帯は、12時台に相当し、6ポイントで、人感センサによる検知回数は150回でポイント7になるため、合計13ポイントで制御条件がエアコン設定温度−8℃、風量が「最強」でエアコンを運転することになる。このように人感センサによる検知回数や温度を集計することにより、得られたデータを統計的に扱うことができ、制御対象であるエアコンの運転条件を設定することができる。
【0172】
なお、ここでは、過去のある1日のデータを例に説明したが、例えば、制御する日の当日と人の出入りの状況が類似しているため、制御条件がほぼ同じと考えられる日や時期の取得データを使用してもよい。週間の平均や過去7日の平均値や去年の同時期の取得データの平均値など過去の取得データを用いることによっても制御することができる。
【0173】
ここで示している温度制御のフィードフォワード制御について、ニューラルネットワークを用いた方法による実施の形態について、
図18を用いて説明する。
図18は、この発明にかかる環境管理システムを用いて構成されたビル用省エネルギー管理システムの出入口のエアコン制御を行うためのニューラルネットワークを構成した図である。
図18に示すように、ニューラルネットワークは、入力層と出力層と中間層とで構成されている。ここでは、中間層が1層で記載されているが、2層以上で構成してもよい。入力層には、エアコンを制御する百貨店や量販店の出入口近傍の温度(屋内温度)と外部の気温(屋外温度)、および目標値を設け、出力層には、エアコンの設定温度とエアコンの風量の2つが設けられる。望ましい出力(エアコン温度、エアコン風量)に対応した、屋内温度、屋外温度、目標温度の組み合わせをいくつか準備し、それぞれのネットワークの重みを小さな乱数を用いて初期化し、用意した入力データの組み合わせを入力し、制御計画情報として出力結果を計算する。
【0174】
ニューロンへの入力(n)は、
図18の(1)式で一般的に示される。注目しているニューロンは、入力を得ているニューロンが持っている値に重みを掛け合わせたものの和にバイアス値(bj)とバイアスの重み(wj)の積を加えたものである。具体的な関係を(2)式を用いて説明する。ここでは、中間層のノード2.1ニューロンに注目した例を示す。左辺は、ノード2.1のニューロンであり、このニューロンには、入力層のノード1.1、1.2、1.3からの入力がある。右辺は、これらの入力層のノード1.1、1.2、1.3のニューロンの値(n11,n12,n13)にそれぞれの重み(w11,21、w12,21、w13,21)を掛けたものとバイアス値とバイアスの重みの積を加えたものになっている。つまり、ノード1.1とノード2.1との結合では、ノード1.1のニューロン値n11にノード1.1とノード2.1との間の重み(w11,21)を掛け合わせた値を足し合わせることになる。同様に、ノード1.2とノード2.1の結合、ノード1.3とノード2.1の結合を加えて、バイアス値とバイアス値との積を加えることで、
図18の(2)式になる。重みを学習することによってニューラルネットを使用することができる。
【0175】
入力層にデータを与え、出力層の出力結果と望ましい出力を比較して、誤差を算出する。誤差を解消させるような重みに修正し、それを前の層との関係にフィードバックする。つまり、ここでは、出力層と中間層との重みを学習し、その結果を、中間層と入力層との重みに反映させる。この操作は、重みを調整しながら、出力誤差を小さくしている。これを複数の例について繰り返すことにより学習が進むことになる。
【0176】
次に、本発明にかかる環境管理システム10を用いて構成されたビル防犯管理システムについて説明する。
図19は、この発明にかかる環境管理システムを用いて構成されたビル防犯管理システムを示した構成図である。
【0177】
図19に示すビル防犯管理システム310は、ビルのような複数階建ての建物でも、平屋の建物についても適用可能である。
図19に示すビルの1Fは、管理すべき環境である部屋R1〜R6を含み、1つの通信制御機器312aが配置される。また、このビルの1Fには、センサ18として人感センサ318e
1〜318e
10が配置される。さらに、このビルの1Fには、制御対象機器14として監視カメラ314d
1〜314d
5が配置される。そして、人感センサ318e
1〜318e
10は、通信制御機器312aに有線あるいは無線により接続される。また、監視カメラ314d
1〜314d
5は、それぞれ通信制御機器312aに有線もしくは無線により接続される。部屋R5には、情報収集解析端末324が配置されている。
【0178】
1Fの部屋R5には情報収集解析端末324が配置されていて、各種センサ、装置情報の取得データおよび制御情報が通信制御機器312aを経由して収集される。この情報収集解析端末324から通信制御機器312aを経由して、各種センサ、監視カメラ314d
1〜314d
5からの取得データや制御情報の収集とともに、各種監視カメラ314d
1〜314d
5、自動ドア、エアコン(図示せず)等装置の直接制御が可能である。なお、
図19に示すビル防犯管理システム310では、1Fの部屋しか記載されていないが、別の階の通信制御機器(図示せず)からの取得データや制御情報も収集することができ、別の階の監視カメラ、自動ドア、エアコンなどの制御対象機器の制御を行うことができる。
【0179】
また、監視カメラ314d
1〜314d
5、人感センサ318e
1〜318e
10、天井に設置される照明の電源ON/OFFスイッチ部(図示せず)、部屋R1〜R6の各部屋の鍵が締められているかどうかの状態等が、通信制御機器412aに対する入力とされる。ここでは、特定の設定した時間に人感センサ318e
1〜318e
10が人を検知した時に、監視カメラ314d
1〜314d
5の記録を開始し、管理者端末に連絡することがフィードバック制御であり、過去の取得データを利用して制御するのがフィードフォワード制御である。
ここでは、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせて制御する。以下に示す方法は、過去の取得データを利用するフィードフォワード制御である。
【0180】
ここで、このシステムにおけるフィードフォワード制御について説明する。人感センサ318e
1〜318e
10が人を検知した時、その時の映像を監視カメラ314d
1〜314d
5により記録する。外部環境の状態を示す人の動きの方向を分析するために、記録された映像を画像解析し、人の動き方向データを算出する。算出された動き方向データを取得データとして、情報収集解析端末324に撮影時刻データと共に、時刻単位毎(例えば、30分、60分等)に分けて蓄積する。人の動き方向データは、時刻帯に依存する。特に、出入口の監視カメラ314d
4では、出社時間帯では、建物内に向かう移動方向がほとんどで、勤務時間帯では、出入りの方向性は、建物から外出する人や建物を訪問する人などがいるため、一様な動き方向が得られない状態になり、帰社時間帯では、人の移動が建物から出る方向になる。このような人の動きの方向性の特徴を利用し、それらの時間帯では起こりにくい移動方向に動く人がいた場合には、不審な動きをする人と判断し、自動的にその映像を監視カメラにより記録され、その記録された映像データを収集することにより、防犯に役立てることができる。
【0181】
図20は、この発明にかかる環境管理システムを用いて構成されたビル防犯管理システムにおける監視カメラの記録画像から算出する人の動き方向とある1日の人の動き方向の解析結果を示した図である。
ここで、監視カメラ314d
4を例に、人の動き方向とその制御内容について説明する。監視カメラ314d
4はどの方向に向かって設置されるかは場所によって異なる。そのため、人の動き方向を
図20(a)に示したように全方位の8方向とするが、状況により4方向、あるいは16方向に変更してもよい。この例における監視カメラ314d
4は、建物の出入り方向に向いており、人の動き、建物に入る方向と出る方向に分けられるため、人の動き方向を2つの移動方向の「A」の方向と「E」の方向に集約して解析する。時間帯毎の人の動き方向と発生頻度の解析結果の例を
図20(b)に示す。結果が記載されているのが出入りの「A」の方向と「E」の方向の2方向で、「A」の方向が建物に入る方向で、「E」の方向が建物から出る方向を示しており、横軸が時間を示しており、0時から23時の24時間制で時刻を示している。例えば、8時台の「A」の方向は、120であり、これは120人が建物に入る動きをしたことを示し、「E」の方向が0人で建物から出る人がいなかったことを示している。この結果から、0時台〜6時台、21時台〜23時台には、建物への人の出入りがないことを示している。また、7,8時台には、建物に入る人だけで建物から出る人がおらず、一方、19時台、20時台には、建物から出る人だけで入る人がいないことを示している。
【0182】
ここで、建物への出入りが無い時間帯において、人感センサが人を検知した時は、監視カメラの映像の記録等の動作をさせる。また、建物から出るか入るかのうち、いずれか一方しかない時間帯において、その逆方向に移動する人がいた場合も、監視カメラの映像の記録等の動作をさせる。これらの動作には、監視カメラ映像を記録し保存するほか、人感センサが人を検知した時に監視カメラを作動させ、動作判断になった時、そのカメラ映像を管理者端末に送信するなどの制御をすることができる。
このように、ビル防犯管理システム310では、過去の取得データを解析し、利用することにより防犯対策ができる。
【0183】
また、上述した方法とは異なるビル防犯管理システム310による管理方法として、外部環境の状態を示す人の動き方向データの記録回数を解析することにより、防犯対策を行うことができる。例えば、管理すべき環境において設置される人感センサにより人を検知する回数が全体の1%以下の時間帯は、人感センサが検知した全ての人の映像を記録し、保存する、という条件である。
図20(b)の図では、人感センサによる検知回数の合計が678回であり、その1%は、約6.8回である。
図20(b)から、人感センサによる検知回数が6.8回以下の時間帯は、0時台〜7時台、20時台〜23時台であり、この時間帯に移動する人を検知した時、監視カメラによる映像を記録し、保存する制御をする。また、ここで示した2つの方法を組み合わせるなどして、防犯対策を行うことができる。なお、すべての監視カメラで、このような制御をする必要は無く、防犯等に必要だと思われる箇所の監視カメラに対してのみ、このような制御をすることで、効率よく防犯対策をすることができる。
【0184】
また、このようなフィードフォワード制御をニューラルネットワークで構成した例を
図21に示す。
図21は、この発明にかかる環境管理システムを用いて構成されたビル防犯管理システムにおける監視カメラで映像を記録し、制御するためにニューラルネットワークを利用した構成図である。
図21の左側の入力層には、自動ドアのON/OFF状態、出入口の監視カメラでの人の動き方向の解析結果、各人感センサのON/OFF状態、現在時刻が入力データとして設けられ、出力層は、各監視カメラの記録ON/OFFを出力結果として得るようなシステム構成である。好ましい出力結果に対する自動ドアや人の動き方向、各人感センサ、現在時刻の入力データの組み合わせを準備し、各ネットワークの重みを小さな乱数で求め、初期化する。準備したデータの組み合わせの入力データを入力し、出力結果を算出する。この好ましい出力結果と算出結果との差を導出し、この差が少なくなるように、各ネットワークの重みを調整する。他の入力データの組み合わせで同様な処理を行うことにより、学習を行う。なお、学習の方法については、
図18に示したニューラルネットワークと同じ方法で学習することができる。
【0185】
また、これと同様なフィードフォワード制御をベイズの定理で行った例を示す。ベイズの定理は、以下の式(1)に示される。
P(H|D)=P(D|H)×P(H)/P(D) (1)
【0186】
ここで、Dはデータを示し、Hは、原因を示す。左辺は、データDが得られたときの原因がHである条件付き確率を示す。
Hの条件例としては、
1.人感センサd1が人を検出、
2.人感センサd2が人を検出、
3.自動ドアが動作、
と設定され、そして、
・人感センサd1が人を検出した時(H1)、監視カメラC1の記録をONにする(D)、
・人感センサd2が人を検出した時(H2)、監視カメラC2の記録をONにする(D)、
・自動ドアが動作した時(H3)、監視カメラC1の記録をONにする(D)、
と設定される。
【0187】
そして、人感センサの検知、自動ドアの動作をベイズの定理に当てはめると、以下の式(2)示すような関係になる。
P(H1|D)=P(D|H1)×P(H1)/P(D)
P(H2|D)=P(D|H2)×P(H2)/P(D) (2)
P(H3|D)=P(D|H3)×P(H3)/P(D)
【0188】
監視カメラが記録するかどうかの判断は、人感センサが人を検知した場合や自動ドアが動作した場合の監視カメラC1が記録をONする確率が閾値より高いか、低いかによって決めることができる。監視カメラC1の記録の判断は、以下の式(3)ないし式(5)に示される条件により行われる。
・人感センサd1が人を検出
P(H1|D)>閾値 (3)
・人感センサd1、d2が人を検出
P(H1|D)+P(H2|D)>閾値 (4)
・人感センサd2が人を検出
P(H2|D)+P(H3|D)>閾値 (5)
【0189】
すなわち、例えば、人感センサd1が人を検知した場合は、式(3)により判断することができる。ここには、P(H1|D)というベイズの定理の左辺しか書かれていないが、実際には、右辺を計算することで、その値が閾値を超えるか否かにより、監視カメラC1の記録をするか否かを決定する。
同様に、人感センサd1,d2が人を検知した場合は、式(4)に示すように、人感センサd1が人を検知した場合に監視カメラC1の記録をする確率と人感センサd2が人を検知した場合に監視カメラC1の記録をする確率の和が閾値を超えるか否かで監視カメラC1の記録をするか否かを判定する。さらに、人感センサd2と自動ドアが動作した場合は、式(5)に示すように、人感センサd2が人を検知した場合に、監視カメラの記録をする確率と自動ドアが動作した時に監視カメラC1の記録をする確率の和が閾値を超えるか否かで監視カメラC1の記録をするか否かを判定する。その他の状態についても同様にそれぞれの確率を計算し、それが閾値を超えるか否かで監視カメラの記録を行うか否かを判定することができる。