特許第6480877号(P6480877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6480877乗客コンベア及び乗客コンベアの手摺り案内機構の固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6480877
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】乗客コンベア及び乗客コンベアの手摺り案内機構の固定方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/24 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   B66B23/24 C
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-16910(P2016-16910)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-137138(P2017-137138A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】前田 圭佑
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−292278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され乗降口間を移動する踏板と、前記踏板の進行方向に沿って前記踏板の両側方に立設された欄干パネルと、前記欄干パネルの外縁部に沿って取り付けられた手摺りフレームと、前記手摺りフレームに摺動可能に係合され前記踏板と同じ方向に移動する手摺りと、前記手摺りの移動方向が反転する前記欄干パネルの反転領域に位置する前記手摺りフレーム内に収納され、前記手摺りの裏側面と転がり接触し前記手摺りの移動方向に配置された複数の転動体を備える手摺り案内機構を備えた乗客コンベアにおいて、
前記手摺り案内機構が、
前記手摺りフレーム内に収納され、前記手摺りフレームの前記反転領域の形状に沿って変形する案内基台と、
前記案内基台を支持すると共に、その支持位置の間の間隔が前記手摺りフレームの高さ、或いは前記手摺りフレームの曲率に合わせて調整された複数の支持部材と、
隣り合う前記支持部材の間の直線状に形成された前記案内基台に支持されると共に、前記手摺りの裏側面と転がり接触する前記転動体とから構成され
更に、前記手摺りフレームは、前記手摺りフレームの延びる方向と直交する断面で底面壁及び前記底面壁の両側に形成された側面壁を備え、
前記支持部材の一端は前記底面壁に当接され、他端は前記案内基台を支持すると共に、
前記支持部材の間の前記案内基台に支持された前記転動体は、前記底面壁に当接せずに前記手摺りの裏側面と転がり接触されていると共に、
前記支持部材は、前記案内基台に対して回動可能であり、前記支持部材の前記一端は前記底面壁の面とほぼ垂直に当接していることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記案内基台は、前記手摺りフレームの延びる方向に設けられた貫通溝を備えており、
前記貫通溝に挿通された固定軸の両端に前記案内基台を挟むようにして前記支持部材が取り付けられ、隣り合う前記固定軸の間で前記貫通溝に挿通された回転軸の両端に前記案内基台を挟むようにして前記転動体が取り付けられていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項2に記載の乗客コンベアにおいて、
前記手摺りフレームの前記底面壁には、前記手摺りフレームが延びる方向に沿って前記欄干パネルの前記外縁部に固定される突条領域が形成されており、
前記突条領域の上側に前記案内基台が配置され、前記突条領域と前記側面壁の間に前記支持部材と前記転動体が配置されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
請求項3に記載の乗客コンベアにおいて、
前記案内基台には前記固定軸と前記回転軸の位置を調整、固定する位置調整金具が取り付けられており、
前記位置調整金具は、前記案内基台に沿って形成された複数の位置調整孔と同形状の固定孔と、前記固定軸と前記回転軸に係合する切り欠き溝とを備えており、
前記位置調整金具の前記固定孔と前記案内基台の前記位置調整孔が選択されて位置決めされた状態で、前記切り欠き溝が前記固定軸と前記回転軸に係合され、更に前記固定孔と前記位置調整孔に固定ピンが挿通されて固定されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項5】
無端状に連結され乗降口間を移動する踏板と、前記踏板の進行方向に沿って前記踏板の両側方に立設された欄干パネルと、前記欄干パネルの外縁部に沿って取り付けられた手摺りフレームと、前記手摺りフレームに摺動可能に係合され前記踏板と同じ方向に移動する手摺りと、前記手摺りの移動方向が反転する前記欄干パネルの反転領域に位置する前記手摺りフレーム内に収納され、前記手摺りの裏側面と転がり接触し前記手摺りの移動方向に配置された複数の転動体を備える手摺り案内機構を備えた乗客コンベアの手すり案内機構の固定方法において、
前記手摺り案内機構を、前記手摺りフレームの反転領域の形状に沿って変形する案内基台と、前記案内基台を支持すると共に、その支持位置の間の間隔を前記手摺りフレームの高さ、或いは前記手摺りフレームの曲率に合わせて調整した後に前記案内基台に回動可能に固定した複数の支持部材と、隣り合う前記支持部材の間の前記案内基台に支持されると共に、前記手摺りの裏側面と転がり接触する前記転動体とから構成し、
前記案内基台の一方の端部を前記反転領域に位置する前記手摺りフレームの一方の弧状端部に固定し、
次に、前記手摺り案内機構を前記手摺りフレーム内に収納して、前記支持部材の一方の端部を前記手摺りフレームの底面部にほぼ垂直に当接させ、前記支持部材の当接部分で前記案内基台を前記手摺りフレームの形状に沿って屈曲させ、前記案内基台を前記手摺りフレームの曲率に沿って多角形状に折り曲げ、
次に、前記案内基台の他方の端部を、前記反転領域に位置する前記手摺りフレームの他方の弧状端部に固定することを特徴とする乗客コンベアの手すり案内機構の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗客コンベアに係り、特に手摺りの移動方向が反転される反転領域に配置された手摺り案内機構を備える乗客コンベア及びこの手摺り案内機構の固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗客搬送用の乗客コンベアの代表的な適用例としてエスカレーター装置が良く知られている。このエスカレーター装置は、建屋の上階と下階の間にトラスを掛け渡し、このトラスに乗客搬送用の踏板列が組み込まれ、この踏板列の両側に欄干が設けられている。踏板列は多数の踏板を無端状に連結してなり、この踏板列が建屋の下階から上階、或いは上階から下階に向って順次走行し、この走行する踏板列を介して乗客を下階から上階、或いは上階から下階に搬送するようになっている。尚、この他に乗客コンベアとして電動道路等が知られており、この電動道路も踏板列がほぼ平面状に配置されているだけでおおむね同じ構成である。
【0003】
そして、乗客コンベアの手摺り(ハンドレールともいう)は、欄干パネルの外縁部に固定した手摺りデッキによって案内されており、手摺りはエスカレーター装置の踏板と同期して同じ方向にほぼ同速度で走行するようになっている。手摺りデッキの両側には案内部が張り出すように形成されており、この手摺りデッキの案内部には、手摺りのU字形に湾曲した湾曲部分が摺動可能に係合するようになっている。
【0004】
手摺りデッキの内部中央には、手摺りと手摺りデッキの間に生じる摩擦を低減するために、転動体が所定の間隔で配設されている。手摺りが走行している状態では、手摺りの下面が転動体に転がり接触しながら走行していくので、手摺りの移動を円滑にすることができる。この転動体を備えた手摺り案内機構は、主に手摺りの移動方向が反転される欄干パネルの反転領域(両端領域)に取り付けられている。
【0005】
このような手摺り案内機構は、例えば、特開2003−292278号公報(特許文献1)に記載されている。この特許文献1に記載の手摺り案内機構は、欄干パネル本体の外縁部に沿って取り付けられた手摺りの走行を案内する手摺りデッキに設けられ、走行する手摺りの裏側面に転がり接触するコロと、コロを回転自在に軸支するコロ軸と、コロ軸を支持するリンク部材とからなるコロユニットを一単位として所要数のコロユニットのリンク部材を直列に次々とピン連結してなるコロ列と、コロ列の両端部を手摺りデッキに固定するための固定手段とより構成されている。
【0006】
この手摺り案内機構によれば、次々とコロユニットをピンで連結していくことで、任意の長さのコロ列にすることができ、多数のコロを有するコロ列として一度に手摺りデッキに簡単に取り付けることができ、また、いかなる長さにも、直線部、曲率部を問わず簡単に対応することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−292278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した手摺り案内機構は、特許文献1に記載されているように、欄干パネルの外縁部に固定された、断面が「U」字状に形成された手摺りフレームの凹部に収納された一対の転動体と、この一対の転動体の間に位置し転動体を保持する保持部材等から構成されている。保持部材は手摺りフレームの凹部の中央付近で手摺りフレームによって支持されており、転動体はこの保持部材の両端側に支持されて手摺りの裏側面と転動可能に接触している。
【0009】
ところで、手摺りを支持する欄干パネルの構造は乗客コンベアの仕様によって異なる場合が往々にして発生する。例えば、手摺りフレームの高さ寸法(欄干パネルから手摺りの裏側面の間の寸法)が、取り付けられる乗客コンベアによって異なる場合がある。したがって、手摺りの裏側面と転動体との転がり接触を良好に保つためには、手摺りフレームの高さに対応して転動体の保持位置も変える必要がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1及びこれに類した構成の手摺り案内機構では、乗客コンベアの仕様により手摺りフレームの高さ寸法が異なる場合、手摺りフレームの高さ寸法に対応して形状の異なるリンク部材を別に作製する必要があり、手摺り案内機構の部品の共通化ができなく、乗客コンベアの生産コストの上昇を招くという課題があった。
【0011】
本発明の目的は、手摺り案内機構の部品を共通化して乗客コンベアの生産コストの上昇を抑制することができる新規な乗客コンベア及び手摺り案内機構の固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴は、手摺り案内機構が、手摺りフレームの反転領域の形状に沿って変形する案内基台と、案内基台を支持すると共に、その支持位置の間の間隔が手摺りフレームの高さ、或いは手摺りフレームの曲率に合わせて調整された複数の支持部材と、隣り合う支持部材の間の直線状に形成された案内基台に支持されると共に、手摺りの裏側面と転がり接触する転動体とから構成されている、ところにある。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、上述した手摺り案内機構の手摺りフレームへの固定に際し、案内基台の端部を、欄干パネルの手摺りの移動方向が反転される反転領域に位置する手摺りフレームの弧状の一方の端部に固定し、この後に手摺り案内機構を手摺りフレーム内に収納し、次に、支持部材の一方の端部を手摺りフレームの底面部に当接させ、支持部材の当接部分で案内基台を手摺りフレームの形状に沿って屈曲させて案内基台を手摺りフレームの曲率に沿って多角形状に折り曲げ、次に、案内基台の他方の端部を、反転領域に位置する手摺りフレームの弧状の他方の端部に固定する、ところにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、案内基台を支持する隣り合う支持部材の間隔を調整することによって、隣り合う支持部材の間に位置する転動体の回転中心の位置を手摺りフレームの高さ、或いは手摺りフレームの曲率に合わせて調整することができるので、手摺り案内機構の部品を共通化して乗客コンベアの生産コストの上昇を抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が適用されるエスカレーター装置の概略の構成図である。
図2】本発明の一実施形態になる、欄干パネルの反転領域の手摺り案内機構付近の断面図である。
図3図2のA−A線に沿った断面を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態になる、手摺り案内機構を斜め上面から見た分解斜視図である。
図5】支持部材の支持位置の間隔が狭い場合の転動体と手摺りフレームの位置関係を説明する説明図である。
図6】支持部材の支持位置の間隔が広い場合の転動体と手摺りフレームの位置関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0017】
図1は乗客コンベアの代表的な例であるエスカレーター装置の構成図であり、エスカレーター装置10は、建屋の上階床11Aと下階床11Bとの間で乗客を運ぶように設けられている。エスカレーター装置10を構成する枠体12はその長手方向の両端側が各建屋床11A、11Bに架け渡されており、上階床11Aと下階床11Bとの間には無端状の複数の踏板13が枠体に組み込まれている。
【0018】
上述したように上階床11Aと下階床11Bを上下に跨ぐ枠体12の上にはチェーン等によって無端状に連結された複数の踏板13が上階床11Aと下階床11Bとに亘って斜め上方、或いは斜め下方に循環移動する構成となっている。無端状に連結された複数の踏板13の進行方向に沿って左右両側には一対の欄干パネル14が立設されている。また、これら一対の欄干パネル14の上部には踏板と同期して走行する手摺り15がそれぞれ配設されている。
【0019】
手摺り15は、欄干パネル14の外縁部に沿って設けられた手摺りデッキ16に案内されて移動するものであり、手摺りデッキ16は、欄干パネル14の外縁部に沿って環状に形成されている。本実施形態では、手摺り案内機構は、手摺り15の移動方向が反転する往路と復路の折返し部にあたり、所定の曲率を有する欄干パネル端部の反転領域17に取り付けられ、手摺り15の弧状の移動経路を案内するものである。
【0020】
欄干パネル端部の反転領域17にあっては、手摺りデッキ16は同じ曲率で湾曲し、この手摺りデッキ16の湾曲した部分に沿って、後述する手摺り案内機構が取り付けられている。尚、手摺り15の直線領域には手摺り案内機構は設けられていないが、必要であれば設けることもできるものである。
【0021】
次に、本実施形態なる手摺り案内機構の構成について図2乃至図4に基づき説明する。図2は反転領域17に設けられた手摺り案内機構付近を示し、図3は手摺り案内機構付近の短手方向(手摺りフレームが延びる方向に直交する方向)の要部断面を示している。
【0022】
図2図3において、欄干パネル14の外縁部には手摺りフレーム18が嵌入されている。手摺りフレーム18はステンレス鋼板等によって作られており、図3に示す通り断面が「U」字状に形成されている。また、「U」字状の手摺りフレーム18を形成する側面壁18Sの上端には外側に向けて張り出した手摺り案内部19が形成されている。この手摺り案内部19と手摺り15の湾曲部15Cは相互に摺動可能に係合し、手摺り15は手摺り案内部19に案内されて移動する。
【0023】
手摺りフレーム18の側面壁18Sに挟まれた底面壁18Bの中央には突条領域18Pが形成されており、この突条領域18P内に欄干パネル14が下側から嵌入されており、これによって手摺りフレーム18は欄干パネル14に支持されることになる。
【0024】
上述の通り、手摺りフレーム18の底面壁18Bは突条領域18Pによって2分割されており、突条領域18Pの上側に案内基台20の収納空間が形成され、突条領域18Pの両側に、支持部材21と転動体22の収納空間が形成されるようになっている。案内基台20、支持部材21、転動体22は手摺り案内機構TGを構成する主要部品である。
【0025】
支持部材21は案内基台20を支持する脚部として機能しており、一端は手摺りフレーム18の底面壁18Bに当接し、他端は案内基台20を支持している。支持部材21は所定の長さをもって等間隔に配置されているが、この支持部材21の間の長さは調整可能である。これについては図4を用いて説明する。尚、本実施形態では支持部材21の間の間隔は等間隔であるが、手摺りフレーム18の形状によっては必ずしも等間隔である必要はない。
【0026】
隣り合う支持部材21の間の長さを調整することによって、以下に説明する転動体22の手摺りフレーム18の底面壁18Bからの距離(高さ)を調整することができる。案内基台20は支持部材21によって支持されているため、突条領域18Pの上面から所定距離だけ離間しており、この離間されている空間は転動体22の高さを調整するために利用される。
【0027】
案内基台20には転動体22が回転自在に支持されており、この転動体22は、隣り合う支持部材21のほぼ中間付近に配置されている。転動体22は手摺り15の裏側面と転がり接触し、手摺り15は転動体22によって円滑に移動することが可能となる。案内基台20を手摺りフレーム18に取り付けた状態において、手摺りフレーム18の底面壁18Bに当接するのは支持部材21の端面であり、転動体22は手摺りフレーム18の底面壁18Bに当接しないで浮いた状態となる。この時、転動体22は手摺り15の裏側面と転がり接触する。
【0028】
案内基台20は、支持部材21と転動体22を保持するものであり、手摺りフレーム18の曲率形状におおよそ沿う形状に変形可能である。ただし、支持部材21の一端は手摺りフレーム18の底面壁18Bと当接するが、転動体22は手摺りフレーム18の底面壁18Bと当接しないので、隣り合う支持部材21の間の案内基台20の形状は、ほぼ直線状となって、全体からみると案内基台20は手摺りフレーム18の形状に沿った多角形状になる。
【0029】
ここで、支持部材21、転動体22を取り付けた状態の案内基台20を手摺りフレーム18内に収納した場合、隣り合う支持部材21の間の案内基台20はほぼ直線状の状態を確実に維持できる構成を採用するのが望ましい。
【0030】
このような特性を備える案内基台20としては、種々考えられるが、例えば、ゴム系の樹脂に金属線や金属板を埋設して用いることができる。このようにすると、支持部材21の部分で、案内基台20が手摺りフレーム18の形状に倣うように変形し、隣り合う支持部材18の間はほぼ直線状に維持され、この直線状の部分の案内基台20に転動体22を浮かせた状態で保持することができる。
【0031】
次に、手摺り案内機構TGを構成する、案内基台20と、この案内基台20に取り付けられる支持部材21、転動体22の構成、及び支持部材21、転動体22の取り付け位置の調整方法について図4を用いて説明する。
【0032】
図4において、案内基台20は、細長い直方体の形状をしており、内部には手摺りフレーム18が延びる方向に連続した貫通溝23が形成されている。この案内基台20は、図3にある通り手摺りフレーム18の突条領域18Pの上に配置されるので、貫通溝23は手摺りフレーム18の側面壁18Sに直交するように設けられている。また、貫通溝23には、所定距離を置いて補強リブ24が形成されており、貫通溝23が潰れないように補強している。またこの補強リブ24の間の区間が支持部材21と転動体22を配置する領域となる。
【0033】
補強リブ24の間の区間は、2個の支持部材21と1個の転動体22が配置されている。支持部材21は所定の調整可能な距離をおいて離間して配置されており、隣り合う支持部材21の間の中央付近に転動体22が配置されている。
【0034】
案内基台20の貫通溝23には、支持部材21の固定軸25が挿通され、この固定軸25の両端に案内基台20を挟むようにして支持部材21が固定されている。また、固定軸25は、後述する位置調整金具を係合させるため、支持部材21から外側に向けて突出している。尚、支持部材21の手摺りフレーム18の底面壁18Bに当接する部分の反対側は、案内基台20の上面壁20Uから上に突出しない寸法に決められている。
【0035】
同様に、隣り合う支持部材21の固定軸25の間には、転動体22の回転軸26が挿通され、この回転軸26の両端に案内基台20を挟むようにして転動体22が固定されている。尚、転動体22の手摺りフレーム18の底面壁18Bに対向する側の反対側は、案内基台20の上面壁20Uから上に突出する寸法に決められており、この突出部分で手摺り15の裏側面と転がり接触できるようになっている。
【0036】
この状態で、支持部材21と転動体22は案内基台20に一体化される構成となっている。そして、支持部材21と転動体22は、補強リブ24の間で貫通溝23を自由に動くことができる。案内基台20に形成した貫通溝23の上面壁20Uには、所定間隔を置いて複数の位置調整孔27が、直線状に点在するように形成されている。この位置調整孔27は、支持部材21と転動体22の位置を調整するものであり、案内基台20の長手方向に沿って設けられ、貫通溝23に直交する方向に穿孔されている。
【0037】
そして、案内基台20の上面壁20U側からは、断面形状が「コ」状の位置調整金具28が差し込まれている。位置調整金具28は上面部28Uと、上面部28Uの両端から案内基台20側に延びる側面部28Sとから形成されている。位置調整金具28の上面部28Uには、案内基台20の上面壁20Uに形成された位置調整孔27と同形状の固定孔29が形成され、また、側面部28Sには貫通溝23側に延び、固定軸25が収納される切り欠き溝30が形成されている。
【0038】
そして、所定の位置で支持部材21を位置決めして固定する場合は、位置調整金具28の側面部28Sに設けた切欠き溝30を、支持部材21から突出した固定軸25に係合(遊嵌状態)させ、この状態で固定ピン31を位置調整金具28の固定孔29を挿通して位置調整孔27に圧入、或いはねじ止めする。ねじ止めする場合は、固定ピン31、位置調整孔27はねじが切られていることが必要である。
【0039】
したがって、図4において支持部材21の固定軸25は、上下方向においては貫通溝23を構成する案内基台20の壁面よって移動が制限され、貫通溝23の方向においては位置調整金具28の側面部28Sに形成した切り欠き溝30の壁面によって移動が制限される。これによって、支持部材21を案内基台20に固定することができる。
【0040】
尚、支持部材21は、位置調整金具28の切り欠き溝30に挿通された固定軸25を中心として案内基台20に対して回転できる構成となっており、支持部材21の一方の端部は手摺りフレーム18の底面壁18Bの面とほぼ垂直に当接できる構成となっている。これによって、支持部材21は案内基台20を確実に支持することができる。
【0041】
同様に、所定の位置で転動体22を位置決めして固定する場合は、位置調整金具28の側面部28Sに設けた切欠き溝30を、転動体22と案内基台20の間の回転軸26に係合(遊嵌状態)させ、この状態で固定ピン31を位置調整金具28の固定孔29を挿通して位置調整孔27に圧入、或いはねじ止めする。
【0042】
このように、転動体22の回転軸26は、上下方向においては上述の通り貫通溝23を構成する案内基台20の壁面よって制限され、貫通溝23の方向においては位置調整金具28の側面部28Sに形成した切り欠き溝30の壁面によって制限される。これによって、転動体22を案内基台20に固定することができる。
【0043】
尚、位置調整金具28が転動体22を超えるような形状にしない理由は、転動体22まで位置調整金具28が延びていると、転動体22が手摺り15の裏側面を転がり接触できなくなるからである。尚、位置調整金具28は、支持部材21と転動体22とも同じ形状であり、両者で共用できる構成となっている。
【0044】
このように、案内基台20上で支持部材21の間隔が調整されて位置決めされ、更に転動体22を隣り合う支持部材21の中央付近に調整して位置決めされた後に、手摺り案内機構TGは、図2に示すように反転領域17に固定されるものである。
【0045】
案内基台20に取り付けられる支持部材21は、位置調整孔27の調整間隔を選択することで任意に取り付け位置を決めることができる。これによって、手摺りフレーム18の高さ寸法に対応して、転動体22を所定の高さ寸法に調整することができる。手摺り案内機構TGは、案内基台20の両端を手すりフレーム18に固定することによって、手摺りフレーム18に強固に固定することができる。尚、この固定方法は任意であり、案内基台20の両端をねじによって固定しても良いし、フックを用いて固定しても良いものである。
【0046】
次に、転動体22の高さ位置を調整する調整方法について説明する。手摺りフレーム18の曲率を一定として、手摺りフレーム18の高さが異なる場合における、転動体22の回転中心の高さを調整する場合を説明する。そして、図5は手摺りフレーム18の高さが高い場合を示し、図6は手摺りフレーム18の高さが低い場合を示している。
【0047】
図5は、手摺りフレーム支持部材21の固定点P1と固定点P2の間隔を「A」とし、転動体22の回転中心Sを、固定点P1と固定点P2を結ぶ線分の中点とした例である。支持部材21の固定点P1と固定点P2を結ぶ案内基台20は、上述した通り直線状に維持されているので、転動体22の回転中心も、この直線状の案内基台20の貫通溝23上に位置することになる。
【0048】
この状態で、手摺りフレーム18の底面壁18Bから転動体22の回転中心Sまでの高さは長さ「C」である。したがって、転動体22の回転中心は高くなって、転動体22の外周面が手摺りフレーム18の端面から手摺り15の裏側面に向けて突出するので、手摺り15と転動体22の間で良好な転がり接触を行うことができる。


これに対して、図6は、支持部材21の固定点P1と固定点P2の間隔を「B」とし、転動体22の回転中心Sを、固定点P1と固定点P2を結ぶ線分の中点とした例である。ここで、間隔B>間隔Aの関係を有している。この場合も、支持部材21の固定点P1と固定点P2を結ぶ案内基台20は、上述した通り直線状に維持されているので、転動体22の回転中心も、この直線状の案内基台20の貫通溝23上に位置することになる。
【0049】
この状態で、手摺りフレーム18の底面壁18Bから転動体22の回転中心Sまでの高さは長さ「D」であり、高さC>高さDの関係が成立する。したがって、転動体22の回転中心は低くなって、転動体22の外周面が手摺りフレーム18の端面から手摺り15の裏側面に必要以上に突出することがなくなり、手摺り15と転動体22の間で良好な転がり接触を行うことができる。
【0050】
このように、手摺りフレーム18の底面壁18Bの曲率が同じであれば、支持部材21の間隔を短くした方が、支持部材21の間隔を長くした方より、手摺りフレーム18の底面壁18Bに対して、転動体2の回転中心Sを高くすることができ、また、支持部材21の間隔を長くした方が、支持部材21の間隔を短くした方より、手摺りフレーム18の底面壁18Bに対して、転動体2の回転中心Sを低くすることができる。このため、手摺りフレーム18の高さに合わせて転動体2の回転中心Sの高さ位置を調整でき、転動体22と手摺り15の裏側面との転がり接触を円滑に行うことができるようになる。
【0051】
次に、上述した手摺り案内機構TGの固定方法について簡単に説明する。
【0052】
エスカレーター装置(乗客コンベア)10の手摺りフレーム18の形状や高さは予め決められているので、手摺り案内機構TGの案内基台20に取り付けられる隣り合う支持部材21の間隔も予め求めておくことができる。
【0053】
まず、貫通溝23に支持部材21と転動体22が取り付けられた状態の案内基台20の支持部材21と転動体22の位置調整を行う。この調整に際しては、手摺りフレーム18の形状や高さに合わせて、予め決められている隣り合う支持部材21の間隔に合わせ、また転動体22の位置に合わせて位置調整金具28を案内基台20に固定する。
【0054】
この固定方法は図4で説明した通り、固定ピン31を位置調整金具28の固定孔29に挿通して位置調整孔27に固定することで行うことができる。尚、これらの手すり案内機構は前もって製造工場で作っておかれるものである。ただ、据付現場でこれらの作業を行うことも可能であるが、本実施形態では製造工場で予め組み立てたものを使用している。
【0055】
そして、エスカレーター装置の据え付けにおいて、欄干パネル14の外縁部に手摺りフレーム18の突条領域18Pを固定して、欄干パネル14の外縁部と手摺りフレーム18を一体化する。
【0056】
次に案内基台20の一方の端部を手摺りフレーム18に固定し、案内基台20を手摺りフレーム18の内部に収納する。尚、手摺り案内機構TGは欄干パネル14の反転領域17側に固定されるので、案内基台20は、まず手摺りフレーム18の反転領域17の一方の弧状端部の壁面に固定される。
【0057】
この後、支持部材21の一方の端部を手摺りフレーム18の底面部18Bに当接させ、この支持部材21の当接部分で案内基台20を手摺りフレーム18の形状に沿って屈曲させる。これによって、案内基台20は、手摺りフレーム18の曲率に沿って多角形状に折り曲げられ、手摺りフレーム18に取り付けられていくようになる。
【0058】
この状態で、隣り合う支持部材21の間の案内基台20の形状は直線状であるため、図5、6にあるように、隣り合う支持部材21の間にある転動体22の回転中心の高さ位置は、隣り合う支持部材21の間隔によって、手摺りフレーム18の底面壁18Bからの高さが調整されることになる。
【0059】
次に、案内基台20を折り曲げて手摺りフレーム18に収納するのが完了すると、案内基台20の他方の端部を、手摺りフレーム18の反転領域17の他方の弧状端部の壁面にボルト等を使用して固定する。この後、手摺り15を手摺りフレーム18の外側から取り付けて作業が完了するものである。
【0060】
このように本実施形態によれば、上述した構造の手摺り案内機構を手摺りフレームの反転領域に設けることによって、異なる高さ寸法を有する手摺りフレームに対応することができ、結果的に手摺り案内機構の部品を共通化できるようになるものである。
【0061】
尚、上述した実施形態に示すものでは、手摺りフレームの曲率が同一で、手摺りフレームの高さが異なる場合について説明したが、手摺りフレームの高さが同一で、手摺りフレームの曲率が異なる場合でも、支持部材の間隔を調整することで転動体の回転中心を調整することが可能である。
【0062】
以上述べた通り本発明は、手摺り案内機構が、手摺りフレームの反転領域の形状に沿って変形する案内基台と、案内基台を支持すると共に、その支持位置の間の間隔が手摺りフレームの高さ、或いは手摺りフレームの曲率に合わせて調整された複数の支持部材と、隣り合う支持部材の間の直線状に形成された案内基台に支持されると共に、手摺りの裏側面と転がり接触する転動体とから構成されている、ものである。
【0063】
これによれば、案内基台を支持する隣り合う支持部材の間隔を調整することによって、隣り合う支持部材の間に位置する転動体の回転中心を手摺りフレームの高さ、或いは手摺りフレームの曲率に合わせて調整することができるので、手摺り案内機構の部品を共通化して乗客コンベアの生産コストの上昇を抑制することができるようになる。
【0064】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である
【符号の説明】
【0065】
10…エスカレーター装置、11A…上階床、11B…下階床、12…フレーム、13…踏板、14…欄干パネル、15…移動手摺り、16…手摺りデッキ、17…反転領域、18…手摺りフレーム、19…手摺り案内部、20…案内基台、21…支持部材、22…転動体、23…貫通溝、24…補強リブ、25…固定軸、26…回転軸、27…位置調整孔、28…位置調整金具、29…固定孔、30…切り欠き溝、31…固定ピン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6