(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6480914
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】アルカリ金属反応炭化水素からアルカリ金属塩を分離する方法
(51)【国際特許分類】
C10G 19/073 20060101AFI20190304BHJP
C10G 19/067 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
C10G19/073
C10G19/067
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-507907(P2016-507907)
(86)(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公表番号】特表2016-521303(P2016-521303A)
(43)【公表日】2016年7月21日
(86)【国際出願番号】US2014034183
(87)【国際公開番号】WO2014172361
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年4月11日
(31)【優先権主張番号】61/812,057
(32)【優先日】2013年4月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516026376
【氏名又は名称】フィールド アップグレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アルバレ ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン デニス リーロイ
(72)【発明者】
【氏名】キルパック ジェフ
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−042703(JP,A)
【文献】
特開昭49−042702(JP,A)
【文献】
特表2013−509490(JP,A)
【文献】
特表2008−525587(JP,A)
【文献】
特開昭63−295406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属反応炭化水素からのアルカリ金属塩の分離を促進する方法であって、
融解したアルカリ金属、水素、および少なくとも1種の重質留分を有する多量の炭化水素原料を反応器内で接触させ、アルカリ金属塩とアルカリ金属反応炭化水素とを含む混合物を提供するステップと;
前記混合物を約350℃〜400℃の範囲の温度まで、前記反応器ではない保持容器内で加熱するステップ、
前記加熱ステップの間、前記混合物を機械的に混合するステップであって、該混合物が、15分以上の間、加熱され、機械的に混合される、ステップ、および
アルカリ金属塩をアルカリ金属反応炭化水素から重量測定法で分離するステップ
により、該混合物からアルカリ金属塩を分離するステップと、
からなる、方法。
【請求項2】
ナトリウム反応炭化水素からの硫化ナトリウムおよび/または多硫化ナトリウムの分離を促進する方法であって、
融解したナトリウムと、水素ガスもしくはその中に溶解した水素を含む液体、および少なくとも1種の重質留分を有する多量の炭化水素原料を反応器内で接触させて、硫化ナトリウムおよび/または多硫化ナトリウムとナトリウム反応炭化水素とを含む混合物を提供するステップと;
前記混合物を約350℃〜400℃の範囲内の温度まで加熱するステップと;
前記加熱ステップの間、前記混合物を別個の容器内で機械的に混合するステップであって、該混合物が、15分〜2時間の間、加熱され、機械的に混合される、ステップと;
前記ナトリウム反応炭化水素から前記硫化ナトリウムおよび/または多硫化ナトリウムを重量測定法で分離するステップと
からなる、方法。
【請求項3】
前記混合物が約375℃±10℃の温度まで加熱される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物が30分以上の間、加熱され、機械的に混合される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が少なくとも1時間の間、加熱され、機械的に混合される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が約1時間〜2時間の間、加熱され、機械的に混合される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記多量の炭化水素原料がビチューメン、重油、または重質留分を含む製油所流を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
加熱する前に、前記分離したアルカリ金属塩の一部を、前記アルカリ金属塩とアルカリ金属反応炭化水素との混合物に添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ金属と反応させる前に、前記分離したアルカリ金属塩の一部を前記炭化水素原料に添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
加熱する前に、前記分離した硫化ナトリウムの一部を、ナトリウム塩とナトリウム反応炭化水素との混合物に添加するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
ナトリウムと反応させる前に、前記分離した硫化ナトリウムの一部を前記炭化水素原料に添加するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
炭化水素原料をアップグレードする方法であって、
少なくとも1種の重質留分を有する多量の炭化水素原料を得るステップであって、炭化水素原料が、少なくとも1炭素原子と、硫黄ヘテロ原子および/または1種もしくは複数種の重金属とを含む、ステップと;
前記多量の炭化水素原料を、融解したアルカリ金属および水素ガスと反応器内で反応させて、アップグレードされた炭化水素原料を提供するステップであって、前記アルカリ金属が前記硫黄ヘテロ原子および/または1種もしくは複数種の重金属と反応して、アルカリ金属硫化物またはアルカリ金属多硫化物を含む1種または複数種の無機生成物を形成する、ステップと;
前記無機生成物と前記アップグレードされた炭化水素原料の混合物を約350℃〜400℃の範囲内の温度まで、前記反応器ではない保持容器内で加熱するステップと;
前記加熱ステップの間、前記混合物を機械的に混合するステップと;
前記アップグレードされた炭化水素原料から前記無機生成物を重量測定法で分離するステップと;
任意に、加熱する前に、前記分離した無機生成物の一部を、前記無機生成物と前記アップグレードする炭化水素との混合物に添加するステップ、または前記アルカリ金属と反応させる前に、前記分離した無機生成物の一部を前記炭化水素原料に添加するステップと
からなる、方法。
【請求項13】
前記多量の炭化水素原料がビチューメン、重油、または重質留分を含む製油所流を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
加熱する前に、前記分離した無機生成物の一部を、前記無機生成物と前記アップグレードされた炭化水素との混合物に添加するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アルカリ金属と反応させる前に、前記分離した無機生成物の一部を前記炭化水素原料に添加するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年4月15日出願の米国特許仮出願第61/812,057号に優先権を主張する。本出願は、2012年2月3日出願の米国特許仮出願第61/594,846号の利益を主張する、2013年1月30日出願の米国特許出願第13/753,918号、表題「PROCESS FOR DESULFURIZING PETROLEUM FEEDSTOCKS(石油原料を脱硫化する方法)」の一部継続出願である。また、本出願は、2009年11月2日出願の米国特許仮出願第61/257,369号、表題「UPGRADING OF PETROLEUM OIL FEEDSTOCKS USING ALKALI METALS AND HYDROCARBONS(アルカリ金属と炭化水素を用いる石油原料のアップグレーディング)」の利益を主張する、2010年11月1日出願の米国特許出願第12/916,984号、表題「UPGRADING OF PETROLEUM OIL FEEDSTOCKS USING ALKALI METALS AND HYDROCARBONS(アルカリ金属と炭化水素を用いる石油原料のアップグレーディング)」の一部継続出願である。これらの先行特許出願のすべては、参照により明示的に本明細書に組み込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、アルカリ金属を用いて、硫黄含有、窒素含有および金属含有シェールオイル、ビチューメン、重油または製油所流から窒素、硫黄および重金属を除去する方法に関する。より詳しくは、本発明は、アルカリ金属反応炭化水素からアルカリ金属化合物および還元重金属の分離を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
米国特許出願第13/753,918号(参照により本明細書に組み込んでいる)は、米国特許出願公開第2013/0140217号(特許文献1)として公開されている。読者は、この公開された出願の開示に精通していると推定される。この公開された出願は、本明細書では「'918出願」と呼ぶことにする。
【0004】
米国特許出願第12/916,984号(参照により本明細書に組み込んでいる)は、米国特許出願公開第2011/0100874号(特許文献2)として公開されている。読者は、この公開された出願の開示に精通していると推定される。この公開された出願は、本明細書では「'984出願」と呼ぶことにする。
【0005】
参照により本明細書に明示的に組み込まれている米国特許第8,088,270号(特許文献3)は、「Process For Recovering Alkali Metals And Sulfur From Alkali Metal Sulfides And PolySulfides(アルカリ金属硫化物および多硫化物からアルカリ金属と硫黄を回収する方法)」に関する。読者は、この公開された出願の開示に精通していると推定される。この公開された出願は、本明細書では「'270出願」と呼ぶことにする。
【0006】
それからエネルギーが引き出されるエネルギーおよび炭化水素への需要は、上昇し続けている。しかし、このエネルギーを提供するのに用いられる炭化水素原料は、その使用を妨げている硫黄と金属を除去する難しさを含み得る。硫黄は、大気汚染を引き起こすことがあり得、自動車排気ガスから炭化水素と窒素酸化物を除去するように作られている触媒を害することがあり得る。同様に、炭化水素流に含まれる重金属は、一般的に硫黄の除去のために使用されている触媒を害することがあり得る。
【0007】
米国のエネルギーのニーズに応える役割を果たすことが高まっている大量のシェールオイルの埋蔵物が米国には存在する。1兆バレル以上の埋蔵物が、コロラド、ユタおよびワイオミングに位置する、グリーンリバー層として知られている比較的狭い領域に横たわっている。原油の価格が上がるにつれて、これらのシェールオイル資源はさらに魅力的になる。しかし、このシェールオイルを囲んでいる技術的な問題は、解決されないままである。例えば、このシェールオイルは、(高レベルの重金属と硫黄に加えて)それに含有される比較的高い量の窒素を有する。シェールオイルは、その後の水素処理を難しくする、窒素、硫黄および重金属の含量が高いことを特徴とする。シェールオイルのほとんどのサンプル中、窒素は一般的に約2%および硫黄は約1%であることが知られている。重金属が存在することもある。シェールオイルに含まれる重金属は、このシェールオイルの商業用へのアップグレードを試みるアップグレーダーにとって大きな問題を提起する。例えば、硫黄および窒素は、一般的に、Co−Mo/Al
2O
3またはNi−Mo/Al
2O
3などの触媒を使用して、高温高圧下での水素処理によってシェールオイルから除去される。しかし、重金属は触媒を遮蔽するように作用するので、そのような触媒は重金属の存在によって不活性化される(損なわれる)。
【0008】
硫黄の除去が問題を提起する炭化水素燃料の供給源の別の例は、カナダ・アルバータにおける豊富な量およびベネズエラなどにおける重油に存在するビチューメンにある。それがエネルギー資源として有用であるために、ビチューメンから十分な硫黄を除去するために、極限条件下で過剰な水素を導入しなければならない。これは、非効率的で、かつ経済的にも好ましくない工程を作り出している。
【0009】
この数年の間、ナトリウムは、高硫黄石油蒸留物、原油、重油、ビチューメンおよびシェールオイルの処理に有効であると認識されている。ナトリウムは、石油およびその混入物と反応して、硫化ナトリウム化合物(硫化物、多硫化物および水硫化物)の形成を通して、硫黄、窒素および金属量を激変させることができる。その方法の例としては、米国特許第3,785,965号;同第3,787,315号;同第3,788,978号;同第4,076,613号;同第5,695,632号:同第5,935,421号;および同第6,210,564号(特許文献4〜10)に見ることができる。
【0010】
シェールオイル、重油、ビチューメンまたは他の原料油がアルカリ金属と反応するとき、この反応は通常、150〜450℃の間の温度で起こる。この反応は、大気圧と2000psiの間にあるいずれの圧力でも行われる。例えば、1モル硫黄当たり、2モルのアルカリ金属と1モルの水素(H
2)が、以下の初期反応に従うと必要であり得る:
R−S−R'+2M+H
2→R−H+R'−H+M
2S
式中、Mは、ナトリウムまたはリチウムなどのアルカリ金属である。
【0011】
さらなる例によって、1モル窒素当たり、3モルのアルカリ金属と1.5モルの水素(H
2)が、以下の初期反応に従うと必要であり得る:
R,R',R''−N+3M+1.5H
2→R−H+R'−H+R''−H+M
3N
式中、R、R'、R''は有機分子または有機環の部分を表す。
【0012】
あるいは、原料油(重油、シェールオイル、ビチューメンなど)のアップグレーディングの方法は、'984出願に開示されるように、原料油と、アルカリ金属およびアップグレードする炭化水素物質とを組み合わせて用いてもよい。この反応は、原料油中に含まれる硫黄、窒素および/または重金属を除去するように作用する。
【0013】
また、注目すべきは、原料油に含まれる重金属も、ナトリウムなどのアルカリ金属を用いることで除去し得ることである。複合体ポルフィリンなどの有機金属分子中に含まれる重金属は、アルカリ金属で金属状態に還元される。重金属が一旦還元されると、もはや有機構造に化学結合されていないので、原料油から分離することができる。さらに、一旦、金属がポルフィリン構造から除去されると、構造中の窒素へテロ原子はさらなる脱窒素化にさらされる。
【0014】
以下は、シェールオイル、ビチューメンおよび/または他の石油炭化水素を処理するために、アルカリ金属を使用する前述の方法の非限定的な説明である。液相アルカリ金属を、水素、メタンの存在下、また窒素などのガス(またはヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびラドンなどの不活性ガス)の存在下で、ヘテロ原子および金属を含有する有機分子と接触させる。有機硫黄、有機窒素および有機重金属との自由エネルギーの反応は、水素との反応よりも、アルカリ金属との反応の方が強い。したがって、水素による有機物の完全飽和を伴わなくとも、反応はより容易に起こる。(通常は、反応に水素を用いて、以前はヘテロ原子および金属に結合していた壊れた結合を覆って、炭素−炭素結合の形成または粘結を防ぐ。)一旦アルカリ金属化合物が形成され、重金属がその金属状態に還元されると、これらの生成物を炭化水素物質から分離することが必要である。多くの場合、遠心分離または濾過などの重量測定分離は、形成され得る塩相、金属相、および有機性固形物から有機物、アップグレードされた油を分離することができる。
【0015】
一旦アルカリ金属化合物が炭化水素原料から分離されると、硫黄および金属はかなり除去され、窒素は中程度に除去される。また、粘度および密度は、低下する(API重力は増加する)。ビチューメンまたは重油は、合成原油(SCO)と考えられるので、さらなる精製のためにパイプラインを介して出荷することができる。同様に、シェールオイルは、そのような処理の後、かなりアップグレードされる。わずらわしい金属が除去されているので、その後の精製は容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0140217号
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0100874号
【特許文献3】米国特許第8,088,270号
【特許文献4】米国特許第3,785,965号
【特許文献5】米国特許第3,787,315号
【特許文献6】米国特許第3,788,978号
【特許文献7】米国特許第4,076,613号
【特許文献8】米国特許第5,695,632号
【特許文献9】米国特許第5,935,421号
【特許文献10】米国特許第6,210,564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、一部の炭化水素原料の場合、重量測定分離は、さらなる処理なしでは不可能である。例えば、発明者らは、アルカリ金属で処理すると、炭化水素の重質留分を含む特定の炭化水素原料が、アップグレードされた炭化水素物質から従来の重量測定分離によっては分離できなかった、アルカリ金属化合物と還元重金属との混合物を生成することを観察した。
【0018】
アルカリ金属反応炭化水素から、アルカリ金属硫化物および窒化物などのアルカリ金属化合物ならびに還元重金属の分離を促進する方法を提供することは、本発明の一目的である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、アルカリ金属反応炭化水素からの、アルカリ金属化合物および還元重金属の分離を促進する方法を提供する。
【0020】
本明細書全体を通して、特色、利点または類似語の参照は、本発明によって実現され得る特色および利点のすべてが本発明のいずれか1つの実施形態にも存在しなければならない、または実施形態に存在していることを意味しない。むしろ、特色および利点を参照する語は、一実施形態に関連して記述される特定の特色、利点または特徴が、本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味すると理解されたい。このように、本明細書全体を通して、特色と利点、および類似語に関する考察は、同じ実施形態を指し得るが、必ずしも指す必要はなく、すべての実施形態を指し得る。
【0021】
さらに、本発明に記述の特色、利点および特徴は、1または複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。当技術分野の当業者は、本発明が特定の実施形態の1または複数の特定の特色もしくは利点なしで、実施することができることを認識することになる。他の例において、さらなる特色および利点は、本発明のすべての実施形態において存在しないこともあり得る特定の実施形態において認識されることもあり得る。
【0022】
開示された方法は、アルカリ金属反応炭化水素からアルカリ金属塩の重量測定分離を促進する。本方法は、アルカリ金属と、少なくとも1種の重質留分を有する多量の炭化水素原料との反応から生じる混合物を加熱することと、加熱ステップの間、この混合物を機械的に混合することとを含む。混合物は、アルカリ金属塩と、アルカリ金属反応炭化水素原料とを含む。混合物は、約350℃〜400℃の範囲内の温度まで加熱される。混合物は、約375℃±10℃の温度まで加熱され得る。アルカリ金属は、ナトリウムまたはリチウムであり得る。アルカリ金属塩は、硫化ナトリウムおよび/または多硫化ナトリウムを含む。
【0023】
一実施形態において、混合物は、15分以上の間、加熱され、機械的に混合される。別の実施形態において、混合物は、30分以上の間、加熱され、機械的に混合される。さらに別の実施形態において、混合物は、少なくとも1時間の間、加熱され、機械的に混合される。さらなる実施形態において、混合物は、約1時間〜2時間の間、加熱され、機械的に混合される。
【0024】
多量の炭化水素原料は、硫黄含有、窒素含有および金属含有シェールオイル、ビチューメン、重油または重質留分を含む製油所流であり得る。一実施形態において、炭化水素原料はビチューメンを含む。
【0025】
本方法は、アルカリ金属反応炭化水素からアルカリ金属塩を重量測定法で分離するステップをさらに含む。
【0026】
一実施形態において、本方法は、加熱の前に、分離したアルカリ金属塩の一部を、アルカリ金属塩とアルカリ金属反応炭化水素との混合物に添加するステップを含む。別の実施形態において、本方法は、アルカリ金属と反応させる前に、分離したアルカリ金属塩の一部を炭化水素原料に添加するステップを含む。
【0027】
開示される方法は、炭化水素または原料油をアップグレードする広範な方法の一部であり得る。本方法は、ビチューメンなどの、少なくとも1種の重質留分を有する炭化水素原料によって最も有用になる。炭化水素原料は、一般的に、少なくとも1炭素原子と硫黄ヘテロ原子および/または1種もしくは複数種の重金属を含む。本方法において、多量の炭化水素原料は、アルカリ金属、および少なくとも1炭素原子と少なくとも1水素原子とを含むアップグレードする炭化水素と反応するか、または水素ガスもしくはその中に溶解した水素を含む液体と反応する。アルカリ金属を硫黄ヘテロ原子および/または1種もしくは複数種の重金属と反応させて、アルカリ金属硫化物またはアルカリ金属多硫化物を含む1種もしくは複数種の無機生成物を形成する。アップグレードする炭化水素または水素を、炭化水素原料と反応させて、アップグレードされた炭化水素原料を生成する。アップグレードされた炭化水素原料中の炭素原子の数は、炭化水素原料中の炭素原子の数を超え得る。
【0028】
無機生成物と、アップグレードする炭化水素との混合物を、機械的に混合しながら、約350℃〜400℃の範囲内の温度まで加熱する。その後、無機生成物は、アップグレードされた炭化水素原料から重量測定法で分離される。
【0029】
本方法は、加熱する前に、分離した無機生成物の一部を、無機生成物と、アップグレードする炭化水素との混合物に添加する任意選択のステップを含んでもよい。本方法は、アルカリ金属と反応させる前に、任意選択で、分離した無機生成物の一部を炭化水素原料に添加するステップを含む。
【0030】
[本発明1001]
アルカリ金属反応炭化水素からのアルカリ金属塩の分離を促進する方法であって、
アルカリ金属と、少なくとも1種の重質留分を有する多量の炭化水素原料との反応から生じる混合物を加熱するステップであって、前記混合物がアルカリ金属塩と、アルカリ金属反応炭化水素とを含み、前記混合物が約350℃〜400℃の範囲の温度まで加熱される、ステップと;
前記加熱ステップの間、前記混合物を機械的に混合するステップと
を含む、方法。
[本発明1002]
前記混合物が約375℃±10℃の温度まで加熱される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記混合物が15分以上の間、加熱され、機械的に混合される、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記混合物が30分以上の間、加熱され、機械的に混合される、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記混合物が少なくとも1時間の間、加熱され、機械的に混合される、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記混合物が約1時間〜2時間の間、加熱され、機械的に混合される、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記多量の炭化水素原料がビチューメンを含む、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記アルカリ金属反応炭化水素から前記アルカリ塩を重量測定法で分離するステップをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
加熱する前に、前記分離したアルカリ金属塩の一部を、前記アルカリ金属塩とアルカリ金属反応炭化水素との混合物に添加するステップをさらに含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
前記アルカリ金属と反応させる前に、前記分離したアルカリ金属塩の一部を前記炭化水素原料に添加するステップをさらに含む、本発明1008の方法。
[本発明1011]
ナトリウム反応炭化水素からの硫化ナトリウムの分離を促進する方法であって、
融解したナトリウムと、少なくとも1種の重質留分を有する多量の炭化水素原料との反応から生じる混合物を加熱するステップであって、前記混合物が硫化ナトリウムと、ナトリウム反応炭化水素とを含み、前記混合物が約350℃〜400℃の範囲内の温度まで加熱される、ステップと;
前記加熱ステップの間、前記混合物を機械的に混合するステップと;
前記ナトリウム反応炭化水素から前記硫化ナトリウムを重量測定法で分離するステップと
を含む、方法。
[本発明1012]
前記混合物が約375℃±10℃の温度まで加熱される、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記混合物が15分以上の間、加熱され、機械的に混合される、本発明1011の方法。
[本発明1014]
前記混合物が30分以上の間、加熱され、機械的に混合される、本発明1011の方法。
[本発明1015]
前記混合物が少なくとも1時間の間、加熱され、機械的に混合される、本発明1011の方法。
[本発明1016]
前記混合物が約1時間〜2時間の間、加熱され、機械的に混合される、本発明1011の方法。
[本発明1017]
前記多量の炭化水素原料がビチューメンを含む、本発明1011の方法。
[本発明1018]
加熱する前に、前記分離したアルカリ金属塩の一部を、前記アルカリ金属塩とアルカリ金属反応炭化水素との混合物に添加するステップをさらに含む、本発明1011の方法。
[本発明1019]
前記アルカリ金属と反応させる前に、前記分離したアルカリ金属塩の一部を前記炭化水素原料に添加するステップをさらに含む、本発明1011の方法。
[本発明1020]
炭化水素原料をアップグレードする方法であって、
少なくとも1種の重質留分を有する多量の原料油を得るステップであって、炭化水素原料が、少なくとも1炭素原子と、硫黄ヘテロ原子および/または1種もしくは複数種の重金属とを含む、ステップと;
前記多量の炭化水素原料を、アルカリ金属およびアップグレードする炭化水素と反応させるステップであって、前記アップグレードする炭化水素が少なくとも1炭素原子と、少なくとも1水素原子とを含み、前記アルカリ金属が前記硫黄ヘテロ原子および/または1種もしくは複数種の重金属と反応して、アルカリ金属硫化物またはアルカリ金属多硫化物を含む1種または複数種の無機生成物を形成し、前記アップグレードする炭化水素が前記炭化水素原料と反応して、アップグレードされた炭化水素原料を生成し、前記アップグレードされた炭化水素原料中の炭素原子の数が前記炭化水素原料中の炭素原子の数を超える、ステップと;
前記無機生成物と前記アップグレードする炭化水素の混合物を約350℃〜400℃の範囲内の温度まで加熱するステップと;
前記加熱ステップの間、前記混合物を機械的に混合するステップと;
前記アップグレードされた炭化水素原料から前記無機生成物を分離するステップと
を含む、方法。
[本発明1021]
前記多量の炭化水素原料がビチューメンを含む、本発明1020の方法。
[本発明1022]
加熱する前に、前記分離した無機生成物の一部を、前記無機生成物と前記アップグレードする炭化水素との混合物に添加するステップをさらに含む、本発明1020の方法。
[本発明1023]
前記アルカリ金属と反応させる前に、前記分離した無機生成物の一部を前記炭化水素原料に添加するステップをさらに含む、本発明1020の方法。
[本発明1024]
アルカリ金属反応炭化水素からのアルカリ金属塩の分離を促進する方法であって、
前記分離したアルカリ金属塩の一部を、少なくとも1種の重質留分を有する前記アルカリ金属炭化水素原料の混合物に添加するステップを含み、前記混合物がアルカリ金属塩とアルカリ金属反応炭化水素とを含む、方法。
[本発明1025]
前記アルカリ金属の添加の前に、前記分離したアルカリ金属塩の一部を、前記アルカリ金属炭化水素原料の混合物に添加するステップをさらに含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
アルカリ金属反応炭化水素からの残留アルカリ金属の除去を促進する方法であって、融剤と前記炭化水素を混合して、前記アルカリ金属を溶解するステップを含む、方法。
[本発明1027]
前記融剤がアンモニアである、本発明1026の方法。
[本発明1028]
溶解したアルカリ金属を含む前記アンモニアを蒸発分離させて、前記アルカリ金属を得る、本発明1027の方法。
本発明のこれらの特色および利点は、以下の説明および添付した特許請求の範囲からより完全に明らかになろう、または本明細書の以下に記述する本発明の実施によって明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の前述および他の特色と利点が得られる方法が容易に理解される順番で、簡潔に上述した本発明のより詳細な説明を、添付した図面に図示するその特定の実施形態を参照により提示する。これらの図面が本発明の一般的な実施形態だけを表し、したがってその範囲を限定すると考えるべきではないということを了解し、本発明は添付する図面を使用して、さらに特異的かつ詳細に記述し、説明する。
【0032】
【
図1】原料油をアップグレードする方法の一実施形態を示す、フロー図である。
【
図2】原料油をアルカリ金属でアップグレードし、アップグレードされた原料油から無機生成物を分離する方法の一実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な説明
本発明の本実施形態は、図面を参照すると最も理解されるであろう。図面では全体を通して同じ部分が同一番号で指定されている。本明細書の図面で全般的に記述され、図示されている、本発明の構成成分は、多種多様な異なる構成で準備され、設計され得ることが容易に理解されるであろう。このように、
図1および2に表すように、以下の本発明の方法およびセルの実施形態のより詳細な説明は、主張する本発明の範囲を限定することを意図していなく、本発明の本実施形態を単に表している。
【0034】
本実施形態は、'984出願に開示されるように、以前はヘテロ原子および金属に結合していた壊れた結合を覆うために、原料油と、アルカリ金属およびアップグレードする炭化水素物質または水素とを結合させることにより、炭化水素または原料油(重油、シェールオイル、ビチューメンなど)をアップグレードする方法に関する。この反応は、原料油中に含まれる硫黄、窒素および/または重金属を除去するように作用する。
【0035】
本方法で用いるアップグレードする炭化水素は、水素ガス(H
2)であってもよく、または炭化水素であってもよい。用いることができる炭化水素の例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、エテン、プロペン、ブタン、ペンテン、ジエンおよびそれらの異性体が挙げられる。他の炭化水素(オクタン、または1もしくは複数の炭素原子を含む他の炭素含有化合物など)を用いてもよい。炭化水素ガスは、炭化水素ガスの混合物(天然ガス、またはシェールガス(シェールを乾留過程によって生成したガス)など)も含み得る。多くの実施形態において、炭化水素ガスは天然ガス由来のメタンであり得る。この成分が安価で容易に利用できるからである。
【0036】
一実施形態において、炭化水素は少なくとも1炭素原子と、少なくとも1水素原子とを有する。水素原子は、炭素原子から離れて、原料の有機分子と結合を形成することができるようでなければならない。炭化水素原子は、そこに結合された水素原子を含み得るが、炭化水素分子は少なくとも1炭素原子を含む必要がある(およびしたがってH
2ガスを含むことができない)。炭化水素は、有機生成物中の水素対炭素の割合が増えるように選択されることができる。これは、炭化水素が出発原料よりも大きい水素対炭素の割合を有するように炭化水素を選択することによってなされる。もちろん、炭化水素中の水素対炭素の割合が低くても、ヘテロ原子含有量を減少させれば、アップグレーディング利点を依然としてもたらすことができる。
【0037】
別の実施形態において、アップグレードする炭化水素を利用するよりはむしろ、水素または水素を含むガス混合物を利用する。
【0038】
炭化水素または原料油を、反応容器中で炭化水素(メタンなど)または水素およびアルカリ金属(ナトリウムなど)と結合させて、一定時間反応させる。一部の実施形態において、この反応は、約450℃未満の温度で行われることができる。一実施形態において、反応は150℃より高い温度で行われる。反応は、約250psiより高い圧力で行われることができる。一実施形態において、反応は約2500以下の圧力で行われる。他の実施形態は、低い温度および/または低い圧力で行われることもある。
【0039】
一部の実施形態において、本方法は、化学的反応を促進するのを助けるために、触媒の存在下で行われ得る。非限定的な例として触媒は、モリブデン、ニッケル、コバルトまたはモリブデンの合金、ニッケルの合金、コバルトの合金、ニッケルおよび/またはコバルトを含有するモリブデンの合金、コバルトおよび/またはモリブデンを含有するニッケルの合金、酸化モリブデン、酸化ニッケルまたは酸化コバルト、鉄もしくは酸化鉄およびそれらの組み合わせが挙げられる。本方法では、アルカリ金属の混合物および/または合金を含めて任意のアルカリ金属を用いることができるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、カリウム、ナトリウム、リチウムおよび/またはそれらの合金を使用してもよい。
【0040】
この反応の間、硫黄原子および窒素原子は、原料油中の有機分子から分離し、アルカリ金属(ナトリウムおよびリチウム)と結合して硫化物および窒化物を形成する。これらのアルカリ金属硫化物/窒化物は、有機化合物を収容する有機相とは異なる無機相に分離する無機化合物である。鉄、ヒ素およびバナジウムなどの有機物質に元々含まれている一部の重金属は還元され、および無機相に分離されることもできる。生じる有機化合物は有機相中に存在し、メタンなどのアップグレードする炭化水素と、または水素と反応する。ヘテロ原子はアルカリ金属と反応するので、生じる生成物は、元の原料油よりもヘテロ原子対炭素の割合が低い。
【0041】
アルカリ金属硫化物の自由エネルギー形成は、H
2Sの自由エネルギー形成よりも大きいので、アルカリ金属は、反応容器に添加してもよい。一実施形態において、反応は、アルカリ金属の導入により、容易に進行する。一実施形態において、アルカリ金属はナトリウム、リチウムなどを含み得る。
【0042】
ここで、
図1を参照して、原料油をアップグレードするための一実施形態の概略方法100を開示する。
図1に示すように、多量の原料油102が得られる。この原料油102は、本明細書に記述するビチューメン、シェールオイル、重油または他の物質を含み得る。原料油102は、採掘または他の方法で採取され得る。原料油102を反応容器104(本明細書では反応器104と呼ぶ)に添加する。反応器104は、反応を促進するために、そこに添加される化学物質を混合する(撹拌する)ように設計されているミキサー107を含み得る。上述の種類の触媒105も反応器104に添加して、反応を促進してもよい。
【0043】
多量のアルカリ金属108も反応器104に添加する。このアルカリ金属108は、任意のアルカリ金属108であってよく、アルカリ金属108の混合物を含んでもよい。一部の実施形態において、ナトリウムまたはリチウムを用いてもよい。
【0044】
多量のアップグレードする炭化水素106を用いて反応器104に添加してもよく、またはアップグレードする炭化水素の代わりに水素を用いてもよい。上述のように、このアップグレードする炭化水素106は、メタン、エタン、プロパンなどであってもよく、または任意の他の炭化水素(またはその混合物でも)であってもよい。しかし、その比較的安価な特徴のために、天然ガスまたはシェールオイル(通常、メタンCH
4を含む)が、使用され得る。
【0045】
本明細書に示すように、反応器104は、特定の温度または圧力で反応を生じさせることができる。一部の実施形態において、反応のために用いる温度は、最高約450℃まで上昇させてもよい。例示的な一温度は、350℃であり得る。他の実施形態において、温度は、アルカリ金属108が融解状態にあるような温度であり得る。ナトリウムは約98℃で融解状態になるが、リチウムは約180℃で融解状態になることを当業者は認識するであろう。このように、反応器104の温度がアルカリ金属108の融解温度を上回る温度である、実施形態が設計され得る。反応の圧力は、大気圧およびそれを上回る程度であってもよい。一部の例示的な実施形態は、約250psiを超える圧力で行われる。他の実施形態は、約2500psi以下の圧力で行われ得る。
【0046】
温度が上昇すると、アルカリ金属108は、この化学物資と他の化学物質との混合を促進するように融解し得る。しかし、アルカリ金属108の粉末含量または他の固形含量を、他の化学物質と反応するように、反応器104に吹き込む、さもなければ導入する、他の実施形態が設計され得る。
【0047】
反応器104で生じる反応において、ヘテロ原子(硫黄および窒素など)および他の重金属は、原料油102から除去される。次いで、反応器104からの生成物は、分離器112に送られる。分離器112は、他の反応生成物からアップグレードされた原料油116を分離するように設計されている種々の装置/処理を含み得る。分離器112は、フィルター、遠心分離機などを含み得る。分離器112は、実施形態に応じて、融剤119の流入を受け取ることもあり得る。この融剤物質119は、分離を促進する硫化水素H
2Sまたは水または他の化学物質(複数可)であり得る。アルカリ水硫化物を形成するために、処理した原料を硫化水素と混合することにより、有機相(原料油)から分離相を形成することができる。この反応を以下に示す。反応においてナトリウム(Na)はアルカリ金属であるが、他のアルカリ金属も用いてもよい。
Na
2S+H
2S→2NaHS(375℃で液体である)
Na
3N+3H
2S→3NaHS+NH
3
【0048】
窒素生成物は、放出させ、回収することができるアンモニアガス(NH
3)の形態で除去され、一方硫化生成物は、さらなる処理で分離される、アルカリ水硫化物の形態で除去される。いずれの還元重金属もまた、重量測定分離手法によって有機炭化水素から分離される。
【0049】
融剤は、未反応のアルカリ金属を取り除くように利用されたアンモニアであり得る。次いで、アルカリ金属を含んだアンモニアは、原料油から分離され、蒸発させ、およびアルカリ金属はさらなる処理のために反応器に送り返され得る。
【0050】
原料102から還元された一部の重金属118は、ここで分離することもあり、重金属118として抽出され得る。また、分離によって、有機生成物が生成される。これはアップグレードされた原料油116である。このアップグレードされた原料油116は、必要に応じて、この物質を適切な炭化水素燃料とするように、さらなる処理のために製油所に発送されてもよい。分離器112の別の産出物は、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属窒化物および重金属118の混合物114(流れ)である。この混合物114は、後述するようにさらに処理され得る。その代わりにまたはそれに加えて、いずれの窒素含有生成物(放出され、収集されたアンモニアガス(NH
3)などによる)も、用いられる処理の種類に応じて、この段階から除去され得る。
【0051】
アルカリ金属硫化物、アルカリ金属窒化物および重金属118の混合物114は、混合物が非酸化性雰囲気下および乾燥雰囲気下で高温まで加熱され、次いで再生器120に送られ得る、217出願に記述のように、熱処理され得る。再生器120の目的は、反応器104でのさらなる処理で再利用されることができるように、アルカリ金属108を再生することである。このように、再生器120の産出物の一つは、多量のアルカリ金属108である。多くの実施形態において、再生ステップは、アルカリ金属イオン伝導性セラミック膜(例えば、Salt Lake City,UtahのCeramatec,Inc.から販売されているNaSiCONまたはLiSiCON膜など)を用いる、アルカリ金属硫化物および/または多硫化物の電解反応(電気分解)を含む。そのような処理の非限定例は、米国特許第8,088,270号、'918出願および'984出願に見出せる。この電解処理の結果は、硫黄124が捕集されることである。さらに、重金属132は、電解処理または他の処理を介して、混合物114から分離され得る。さらなる実施形態において、窒素含有化合物128も、再生器120で収集され得る上述のように、そのような窒素化合物128は、放出されるかまたは収集されるアンモニアガスであり得る。他の実施形態において、窒素化合物前駆体130を再生器120に添加して、混合物114中の窒素含有化合物を捕集する/窒素含有化合物と反応し、次いで化合物128を生成する。当業者は、窒素化合物128を捕集するために(またはさもなければ、反応から得られる窒素を処理するために)用いることができる種々の化学物質および処理を認識するであろう。
【0052】
図1の方法100は、実施形態に応じて、バッチ処理として実行されてもよく、または連続処理であってもよい。具体的には、連続処理の場合、反応物は反応器104に連続して添加され、生成物は連続して除去、分離などが行われる。さらに、反応器104における反応は、単一ステップ(例えば、すべての化学物質を単一の反応器104に入れる)として実行されてもよく、または一連のステップもしくは反応として行われる可能性もあり得る。
【0053】
ここで
図2を参照して、原料油をアップグレードするための一実施形態の概略方法200を開示する。開示される方法は、
図1の方法に基づく。
図1に示す一部の特色は、
図2に関して複製されないが、
図2は上述の特色を含み得ることを理解すべきである。
図2から分かるように、多量の原料油202が得られる。この原料油202は、重質留分を含む、本明細書に記述したビチューメン、シェールオイル、重油または他の物質を含み得る。本明細書で用いる場合、「重質留分」という用語は、524℃以上の沸点を有する、1種または複数種の留分を指す。ビチューメンは重質留分を含むことが知られている。原料油202は、採掘または他の方法によって得ることができる。原料油202を反応容器204(本明細書では反応器204と呼ぶ)に添加する。反応器204は、反応を促進するために、そこに添加される化学物質を混合する(撹拌する)ように設計されているミキサー207を含み得る。反応器204は、反応物を所定の温度まで加熱するために、ヒーター209を含み得る。
【0054】
また、多量のアルカリ金属208が反応器204に添加される。このアルカリ金属208は、任意のアルカリ金属208であってよく、およびアルカリ金属208の混合物を含み得る。一部の実施形態において、ナトリウムまたはリチウムを用いてもよい。
【0055】
多量のアップグレードする炭化水素206または水素もまた用いて、反応器204に添加してもよい。上述のように、このアップグレードする炭化水素206は、メタン、エタン、プロパンなどあってもよく、または任意の他の炭化水素(またはその混合物でも)であってもよい。しかし、その比較的安価な特徴のため、天然ガスまたはシェールオイル(通常、メタンCH
4を含む)が使用され得るが、その代わりに水素もしくはその混合物を用いてもよい。
【0056】
本明細書に示すように、反応器204は、特定の温度または圧力で反応を生じさせることができる。一部の実施形態において、反応のために用いる温度は、最高約450℃まで上昇させてもよい。例示的な一温度は、350℃であり得る。他の実施形態において、温度は、アルカリ金属208が融解状態にあるような温度であり得る。ナトリウムは約98℃で融解状態になるが、リチウムは約180℃で融解状態になることを当業者は認識するであろう。このように、反応器204の温度がアルカリ金属208の融解温度を上回る温度である、実施形態が設計され得る。反応の圧力は、大気圧およびそれ上回る程度であってもよい。一部の例示的な実施形態は、約250psiを超える圧力で行われる。他の実施形態は、約2500psi以下の圧力で行われ得る。
【0057】
反応器204内で生じる反応において、ヘテロ原子(硫黄および窒素など)と他の重金属は、アルカリ金属硫化物もしくは多硫化物、アルカリ金属窒化物および重金属の混合物に変換され、集合的に無機生成物およびアップグレードされた原料油と呼ばれる。原料油202が重質留分を含む場合、無機生成物とアップグレードされた原料油との混合物は、さらなる処理なしで効率的に分離されることができない。
【0058】
図2に示すように、無機生成物およびアップグレードされた原料油は、ミキサー207とヒーター209も含んでいる保持容器210に導入される。保持容器210は、反応器204と別の容器であり得、または反応器204それ自体であり得るので、破線で示す。無機生成物とアップグレードされた原料油との混合物は、約350℃〜400℃の範囲内の温度まで加熱され、加熱ステップの間、この混合物は機械的に混合される。混合物は約375℃±10℃の温度まで加熱され得る。
【0059】
一実施形態において、混合物は、15分以上の間、加熱され、機械的に混合される。別の実施形態において、混合物は、30分以上の間、加熱され、機械的に混合される。さらに別の実施形態において、混合物は、少なくとも1時間の間、加熱され、機械的に混合される。さらなる実施形態において、混合物は、約1時間〜2時間の間、加熱され、機械的に混合される。
【0060】
次いで、反応器204からのアルカリ金属生成物の混合物は、分離器212に送られる。分離器212は、他の反応生成物からアップグレードされた原料油を分離するように設計されている種々の装置/処理を含み得る。分離器212は、フィルター、遠心分離機などを含み得る。
【0061】
有機生成物は、アップグレードされた原料油216である。このアップグレードされた原料油216は、必要に応じて、この物質を適切な炭化水素燃料とするように、さらなる処理のために製油所に発送されてもよい。分離器212の別の産出物は、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属窒化物および重金属の混合物214(流れ)である。この混合物214は、後述するようにさらに処理され得る。その代わりにまたはそれに加えて、いずれの窒素含有生成物(放出され、収集されたアンモニアガス(NH
3)などによる)も、用いられる処理の種類に応じて、この段階から除去され得る。
【0062】
アルカリ金属硫化物、アルカリ金属窒化物および重金属などのアルカリ金属塩の混合物を含む無機生成物214は、混合物が非酸化性雰囲気下および乾燥雰囲気下で高温まで加熱され、次いで再生器220に送られ得る、217出願に記述のように、熱処理され得る。再生器220の目的は、反応器204でのさらなる処理で再利用されることができるように、アルカリ金属208を再生することである。このように、再生器220の産出物の一つは、多量のアルカリ金属208である。
【0063】
一実施形態においては、
図2に示す方法は、保持容器210中で加熱する前に、アルキル金属硫化物または多硫化物などの分離した無機生成物の一部を、無機生成物と、アップグレードされた原料油との混合物に添加できることを含む。理論に束縛されることなく、分離した無機生成物は、混合物内のアルキル金属硫化物微粒子の凝集を促進するため、最終的に分離過程を促進する「シード」を提供することができると、現在考えられている。このように、分離した無機生成物の一部が保持容器210に送られ得る、再循環流224を提供する。
【0064】
別の関連した実施形態において、
図2に示した方法は、アルカリ金属と反応する前に、分離した無機生成物の一部を原料油に添加する能力を含む。理論に束縛されることなく、分離した無機生成物は、混合物内のアルキル金属硫化物微粒子の凝集を促進するため、最終的に分離過程を促進する「シード」を提供することができると、現在考えられている。このように、分離した無機生成物の一部が反応器204に送られ得る、再循環流226を提供する。シード添加処理は、アルカリ金属添加の前に、またはアルカリ金属添加の後に行われ得る。
【0065】
アルカリ金属反応炭化水素からのアルカリ金属化合物と還元重金属の混合物を、高温、例えば、375℃±10℃、ごくわずかな熱クラックが起こることが予想される温度にかけること、成分を、例えば1〜2時間の間、混合すること、次いで、混合物を冷却させることによって、固形物および液体は、遠心分離または他の重量測定分離方法によって容易に分離することができることが観察された。
【0066】
理論に束縛されることなく、ナトリウムがオイル原料中の有機硫黄と反応すると、硫化ナトリウムは分子レベルで形成される。最初に、硫化ナトリウム粒子は、極めて微細のため、原料油よりも高い比重を有していても、容易に分離されない。しかし、アルカリ金属化合物、還元重金属およびアルカリ金属反応炭化水素原料の混合物を高温で、一定時間混合することにより、微粒子は、重量測定法で分離することができる程度に十分大きいサイズまで凝集するか、またはクラスターを形成すると考えられている。再循環無機物質は、反応後に高温で混合を行い、さらに有機物質から無機物質を分離するのに必要な時間を縮小することができるのに極めて効果的であることを示している。
【0067】
低すぎる温度、例えば300℃での2時間の混合では、微粒子は、従来の方法を用いることでは、依然として分離しないが、380℃の高温での1時間の混合により、ほとんど分離する混合物をもたらしたことを実験は示した。例えば、形成される硫化ナトリウムの約90%は、遠心分離によって容易に分離する。380℃で2時間撹拌することによって、形成された硫化ナトリウムの99%は、遠心分離によって分離する。
【0068】
これは、実施した実験において、粘度が時間と共にゆっくりと落ちて行き、次いで最終的に経時的に安定したので、アルカリ金属硫化物粒子がある程度まで凝集したとき、明らかであった。混合容器中の撹拌機に電力をかけると、粘度が減少し、最終的に安定すると、攪拌機の速度は上昇した。処理が行われるために必要とされる時間は、混合効率、開始粘度、および温度などの多くのパラメータによって変化すると理解される。
【0069】
本発明において原料油は、油が元々有機硫黄を含んでいた、石油、重油、乾留したオイルシェール、ビチューメンおよび石油製油所流などの多くの供給源に由来し得ると理解される。開示する方法は、重質留分を含む原料油に、最も適用可能である。
【0070】
524℃以上の沸点および53%の出発硫黄濃度を有する、約50%の残油留分のアルバータ・ビチューメン原料を用いた、別の実験において、以前のバッチ反応器稼働からの再循環無機物質104gを新しいビチューメン650gに加えた。再循環物質は、ナトリウム金属48.5gとの反応の過程において、形成される無機物質の凝集のための「シード」として機能させることを目的とした。反応は、357℃、1500psiで、反応の間、水素混合雰囲気下で実施した。ナトリウムとの最初の反応の後は、それ以上混合を行わなかった。「シード」を利用したとき、反応器から混合物を取出し、遠心分離した。生成物の硫黄濃度は1.32%であった。「シード」を利用しなかったとき、硫黄濃度は、油中の濃度とほぼ同じ状態のままであった。生成された硫化ナトリウムは、油中に残留しており、遠心分離よって分離することができなかったからである。
【0071】
別の関連した実施形態において、アルカリ金属反応炭化水素からのアルカリ金属塩の分離を促進するための方法は、分離したアルカリ金属塩の一部を、少なくとも1種の重質留分を有するアルカリ金属炭化水素原料の混合物に添加することを含む。混合物は、アルカリ金属塩およびアルカリ金属反応炭化水素を含み得る。方法は、アルカリ金属の添加の前に、分離したアルカリ金属塩の一部を、アルカリ金属炭化水素原料の混合物に添加することを含む。アルカリ金属反応炭化水素からの残留するアルカリ金属の除去のための関連する方法において、融剤を炭化水素と混合して、アルカリ金属を溶解する。一実施形態において、融剤はアンモニアである。溶解したアルカリ金属を含むアンモニアを蒸発させて、アルカリ金属を得ることができる。
【0072】
本発明の具体的な実施形態を例示し、説明したが、多数の修正が本発明の趣旨から著しく逸脱することなく思い浮かぶ。保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。