【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、汎用的な医療機器であって、独立請求項1の特徴部の構成を備えた医療機器により達成される。その他の有利な実施形態の付加的構成は、従属請求項の記載から明らかになる。
【0018】
本発明にかかる医療機器、特に、外科機器またはミクロ外科機器には、医療介入のための介入部と、当該機器を保持するために構成された、好ましくは前記介入部を操作するために構成された把持部と、が設けられており、前記把持部は、把持面部を含み、前記把持面部は、整形体および当該整形体間に形成されたエンクロジャー部を含む配置構造を有する。前記介入部は、非可動に構成されているか、例えば鉗子等として可動に構成されているか、または電動に構成されている。本発明では、それぞれの前記整形体が、等長の6つエッジ部を含む六角形状のエッジ部を有している。この場合、それぞれの整形体における前記エッジ部のうちの、互いに隣り合うエッジ部は、前記配置構造が平面上に展開される前および/または展開された後で、120°の同一の角度を形成している。前記六角形状のエッジ部は、近接する整形体間に形成された前記エンクロジャー部、好ましくは直方形状の構造の前記エンクロジャー部によって形成されており、これにより前記把持面部上にハニカム構造が得られている。直方形状の構造のエンクロジャー部を有する好ましい形態では、互いに傾いて配置された3つの直方形状のエンクロジャー部が、1つの三角形状の境を形成している。
【0019】
一実施形態において、前記把持面部の前記整形体は、前記把持面部における陥入部(Vertiefung) として形成されており、すなわち、前記把持面部における凹所(Ausnehmung)、押し跡(Eindellung)、圧痕(Einpraegung)または窪み(Einwoelbung)として形成されている。前記把持面部の前記エンクロジャー部は、前記把持面部における陥入部として形成された前記整形体に対して盛り上がっている。この実施形態では、前記医療機器を保持する外科医の、その手袋のうちの指先部又は指先部の周囲の部分が、それぞれ六角形状に形成された前記エッジ部を有する前記陥入部に当該指先部の対応する弾性変形を伴って係合すると共に、盛り上がり状に形成された前記エンクロジャー部にも載置される。
【0020】
本発明のこの実施形態における前記把持面部は、それぞれの整形体が6つのエッジ部を有する陥入部として形成されていて且つ盛り上がったエンクロジャー部へとこれらのエッジ部が遷移すると共にこれらのエッジ部の各々が互いに60°(または120°)オフセットした3つの軸心のうちの一つの軸心上に位置していることにより、前記医療機器を保持する外科医による力付加の方向を特に気にすることなく、当該機器の極めて高い把持性を可能にしている。しかも、極めて高い把持性およびこれによる滑りのリスクの減少に加えて前記陥入部は、自身の六角形状のエッジ部により、外科医の手袋のうちの、前記把持面部と接触した部分で加えられる力を多数の接触点にわたって一様に分散させるという効果を奏する。これにより、手袋への損傷のリスクが、既知の溝付き把持面部と比べて抑えられる。
【0021】
本発明に従って形成された前記陥入部は、六角形状のエッジ部を有する当該陥入部のうちの隣り合うエッジ部同士が120°の鈍角(よって、広角)を形成するので、良好な洗浄性を有する。また、前記陥入部の、本発明にかかる配置構成により、前記機器の蒸気殺菌の実行後に残留液体が蓄積するのを防止することができる。
【0022】
他の実施形態において、前記把持面部の前記整形体は、前記把持面部における突出部(Auswoelbung)として形成されており、すなわち、前記把持面部における膨らみ(Ausbeulung)、隆起(Erhebung)または盛り上がり(Huegel)として形成されている。前記把持面部の前記エンクロジャー部は、前記把持面部における突出部として形成された前記整形体に対して凹んで形成されている。この実施形態では、前記医療機器を保持する外科医の、その手袋のうちの指先部又は指先部の周囲の部分が、突出部として形成された前記整形体の前記六角形状のエッジ部を形成する前記エンクロジャー部に当該指先部の対応する弾性変形を伴って係合すると共に、前記突出部にも同じく当該指先部の対応する弾性変形を伴って載置される。
【0023】
本発明のこの実施形態における前記把持面部は、各整形体が6つのエッジ部を有する突出部として形成されていて且つ凹んだエンクロジャー部へとこれらのエッジ部が遷移すると共にこれらのエッジ部が互いに60°(または120°)オフセットした3つの軸心のうちの一つの軸心上に位置していることにより、前記医療機器を保持する外科医による力付加の方向を特に気にすることなく、当該機器の極めて高い把持性を可能にしている。しかも、極めて高い把持性およびこれによる滑りのリスクの減少に加えて前記突出部は、自身の六角形状のエッジ部により、外科医の手袋のうちの、前記把持面部と接触した部分で加えられる力を、当該突出部と凹んだ前記エンクロジャー部へと遷移する当該突出部の前記エッジ部とによって形成される多数の接触点にわたって一様に分散させるという効果を奏する。これにより、手袋への損傷のリスクが抑えられる。
【0024】
この実施形態は、前記突出部を取り囲む前記エンクロジャー部がそれぞれの隣り合うエンクロジャー部と共に120°の鈍角(よって、広角)を形成することにより、良好な洗浄性をもたらすと共に、前記機器の蒸気殺菌の実行後に残留液体が蓄積するのを防止することができる。
【0025】
前記配置構造が平面状の把持部表面部位(前記整形体を考慮しないとして、平面状の表面を有する表面部位)に配置されたものである場合、それぞれの整形体における前記エッジ部のうちの、互いに隣り合うエッジ部は、前記配置構造が平面上に展開される前および展開された後で、120°の同一の角度を形成するものとなる。つまり、平面状の把持面部については、展開に関して各場合を区別する必要がなく、実施形態は同じ且つ一つとなる。
【0026】
前記配置構造が把持面における曲線状の表面部位(すなわち、前記整形体を考慮しないとして、曲線状の又は曲がった表面を有する把持面部)に配置されたものである場合、様々な実施形態が可能である。
【0027】
一実施形態において、それぞれの整形体における前記エッジ部のうちの、前記互いに隣り合うエッジ部同士は、前記把持面部の前記曲線状の表面が平面上に展開される前で、120°の同一の角度を形成する。この実施形態では、前記整形体が、一つの整形体に注目するとして、この整形体の前記六角形状のエッジ部を形成する前記等長の6つのエッジ部が前記把持部の曲線状の又は曲がった前記把持面部上においてその整形体特有の平面内に延在するように、そして、それらのエッジ部が厳密に直線状に延びて隣同士が120°の同一の角度を形成するように、そして、それらのエッジ部が当該把持面部の曲線状の表面の曲率と合致しないかたちで曲がるように、かつ/あるいは、その整形体におけるそれら隣り合うエッジ部同士が自身の全長にわたって同一のレベルに延在しないように、当該把持面部において最終的に配置される。同様のことが、その他の前記整形体にも当てはまり、これらその他の前記整形体の各々の前記等長の6つのエッジ部も、前記把持部の曲線状の又は曲がった把持面部上において各整形体特有の平面(別の整形体特有の平面と異なり得る平面)内に延在せしめられる。
【0028】
この実施形態は、前記把持面部の曲率半径が一定でない場合にも、当該把持面部の実質上全体にわたって前記整形体の構造を互いに共通させることができ、つまり、把持性および洗浄に関して当該把持面部の実質上全体にわたって一貫して際立った性能を実現することが可能である。
【0029】
他の実施形態において、それぞれの整形体における前記エッジ部のうちの、前記互いに隣り合うエッジ部は、前記把持面部の前記曲線状の表面が平面上に展開された後で、120°の同一の角度を形成する。この実施形態では、前記整形体が、一つの整形体に注目するとして、この整形体の前記六角形状のエッジ部を形成する前記等長の6つのエッジ部が前記把持部の曲線状の又は曲がった前記把持面部上においてその整形体特有の面(前記把持面部の曲線状の又は曲がった表面の一部を成す面)内に延在するように、そして、それらのエッジ部が当該把持面部の曲がった表面の曲率に従って曲がるように、および/または、その整形体におけるそれら隣り合うエッジ部同士が自身の全長にわたって同一のレベルに延在しないように、当該把持面部において最終的に配置される。同様のことが、その他の前記整形体にも当てはまる。
【0030】
この実施形態は、前記エッジ部を前記把持面部の曲がった表面の曲率に合致するように曲げて構成するものなので、それぞれの整形体について、当該整形体から当該整形体を取り囲む前記エンクロジャー部への遷移部を、前記把持面部の曲がった表面の各自の曲率に合わせて変化させることが可能である。したがって、強い曲率の場合であっても、前記整形体から当該整形体を取り囲む前記エンクロジャー部への遷移部が鋭くなるのを回避することができる。
【0031】
本発明の他の実施形態において、前記整形体は、当該整形体における、好ましくは全ての当該整形体における、前記エッジ部のうちの、互いに平行な一対のエッジ部が、前記機器を使用する際の保持軸心、特には、前記把持部もしくは前記把持面部および/または前記機器の長手軸心に対して直角を形成するように配置されている。この保持軸心とは、例えば、前記医療機器が意図どおりに使用される際に、外科医の親指が軸心に沿って前記把持面部に載置されたときの、その軸心のことを意味する。
【0032】
それぞれの前記整形体における互いに平行な合計三対のエッジ部のうち、一つの対のエッジ部が、前記把持面部の一平面内において前記保持軸心と直交するというこのような配置構成により、前記把持面部によってもたらされる把持性を、その保持軸心の方向に加えられる力に対して最適化することができる。
【0033】
本発明のさらなる他の実施形態において、前記整形体は、当該整形体における前記エッジ部のうちの、互いに隣り合うエッジ部の角二等分線が、前記把持部もしくは前記把持面部および/または前記機器の長手軸心と平行に延びるように配置されている。
【0034】
この構成によれば、それぞれの前記整形体における互いに平行な合計三対のエッジ部のうち、所与の対のエッジ部が、前記把持部に載置される親指の長手軸心であって、一般的な医療機器では把持部もしくは把持面部および/または機器の長手軸心に対して30°の角度を形成する長手軸心に対して、直角を形成することになる。これにより、前記把持面部によってもたらされる把持性を、その親指の通例的な保持軸心の方向に加えられる力に対して最適化することができる。さらなる利点としては、前記医療機器が当該医療機器の長手軸心回りに180°回転されても、それぞれの前記整形体における互いに平行ないずれかの対のエッジ部が前記把持部に載置される親指の長手軸心に対して直角を形成するので、相変わらず良好な把持性を有するという点が挙げられる。このことは、従来技術からの、前述した第1のタイプの汎用的構成の医療機器に対する大きな改良と言える。というのも、そのような医療機器が自身の長手軸心回りに180°回転されると、前述した溝がその機器の長手軸心に対して30°である通例的な保持軸心に対して直角を形成しなくなるからである。
【0035】
本発明のさらなる他の実施形態では、所与の前記整形体における、好ましくは全ての前記整形体における、所与の前記エッジ部が、別の前記整形体のうちの隣接する前記エッジ部に対して平行に延びており、かつ、前記エンクロジャー部のうち、これら隣接する平行なエッジ部間に配置されたエンクロジャー部の、当該平行なエッジ部と直交するエンクロジャー部幅が一定である。
【0036】
この構成によれば、前記把持面部の全体にわたって一様に高い把持性および等しく良好な洗浄性を有する極めて規則的なハニカム構造が得られる。
【0037】
直前に述べた本発明の実施形態をさらに発展・改良させた実施形態は、直前に述べた本発明の実施形態における前述した構成に加えて、前記エンクロジャー部のうち、隣接する平行な前記エッジ部間に配置された全てのエンクロジャー部の、一定のエンクロジャー部幅、好ましくは同じエンクロジャー部幅が、0.4〜3.7mmの範囲内、好ましくは0.5〜3.5mmの範囲内、より好ましくは0.6〜1.6mmの範囲内であるように構成されており、および/または、それぞれの前記整形体における、向かい合う平行な各エッジ部間の幅が一定であり、好ましくはその他の整形体と共通しており、かつ、0.7〜5.7mmの範囲内、好ましくは0.8〜5.5mmの範囲内、より好ましくは1.0〜2.4mmの範囲内であるように構成されている。
【0038】
これにより得られる、前述した寸法を有する極めて規則的なハニカム構造は、前記把持面部の全体にわたって、医療機器の最適な把持性および医療機器の最適な洗浄性をもたらす。
【0039】
直前に述べた本発明の実施形態をなおいっそう発展・改良させた実施形態は、直前に述べた本発明の実施形態における前述した構成に加えて、前記整形体の前記幅と前記エンクロジャー部幅との比が、1.4〜1.8の範囲内、好ましくは黄金比と一致するように構成されている。この場合の黄金比と一致する比とは、数字の1に対する黄金数の比、すなわち、約1.618:1である。無理数である黄金数は、近似的にしか与えることができない。よって、本発明の文脈においては、黄金数の数学的定義からのずれが5%未満の数字を黄金数であると見なす。なお、黄金数は、フィボナッチ(Fibonacci-Folge)数列の中の極めて大きい番数の数値の、同じ数列の中の直前の数値に対する比からも得ることができる。
【0040】
これにより得られる、前述した寸法および比を有する極めて規則的なハニカム構造は、前記把持面部の全体にわたって、医療機器のなおいっそう最適な把持性および医療機器のなおいっそう最適な洗浄性をもたらす。
【0041】
本発明のさらなる実施形態は、前記整形体が、特に、互いの間で一様に、それぞれの当該整形体の前記六角形状のエッジ部が延在する面に対する陥入部(すなわち、凹所、押し跡、圧痕もしくは窪み)または突出部(すなわち、膨らみ、隆起もしくは盛り上がり)として形成されており、当該整形体が、特に、互いの間で一様に当該整形体が、それぞれの当該整形体の前記六角形状のエッジ部が延在する前記面と直交して最大0.1〜1.4mmの範囲内、好ましくは最大0.2〜1.4mmの範囲内、より好ましくは最大0.35〜1.20mmの範囲内で延びているように構成されている。
【0042】
前記整形体のこのような形態により、極めて良好な把持性および良好な洗浄性を実現するができる。
【0043】
直前に述べた本発明の実施形態に加えて、任意で、あるいは、代わりに、前記整形体のうちの少なくとも一部が、貫通孔として形成されてもよい。
【0044】
これにより、特に、前記医療機器の洗浄性を向上させると共に、蒸気殺菌後に当該機器上に残留液体が蓄積するのを防ぐ。
【0045】
本発明のさらなる実施形態は、前記整形体が、特に、互いの間で一様な前記整形体が、曲線状に形成されているように構成されている。好ましくは、この場合の曲線形状は、凹状の陥入部または凸状の突出部として、形成されている。このとき、その曲率半径が、蒸気殺菌後の残留液体の蓄積が回避される度合いを決める。
【0046】
このような曲線状の構造により、洗浄性を向上させることができると共に、蒸気殺菌後に前記医療機器上に残留液体が蓄積するのを防止することができる。さらに、凹椀状の陥入部または凸椀状の突出部とすることにより、前記医療機器に当たった光を散乱・方向転換させるので、既知の汎用的な機器と比べて、機器への入射光による眩惑作用を抑えることができる。
【0047】
本発明の他の実施形態は、所与の前記エンクロジャー部から所与の前記整形体への遷移領域が、特に、全ての前記エンクロジャー部および全ての前記整形体に一様に、角張ってまたは丸みを持って形成されているように構成されている。
【0048】
角張って形成された遷移領域は把持性を向上させることができて、丸みを持って形成された遷移領域は洗浄性を促進させると共に蒸気殺菌後の残留液体の蓄積の回避を促すことができる。
【0049】
直前に述べた本発明の実施形態に代えて、あるいは、加えて、所与の前記エンクロジャー部における壁部、特に、全ての前記エンクロジャー部および全ての前記整形体に一様に、当該壁部が、当該壁部と前記遷移領域を介して隔てられた、所与の前記整形体における壁部に対して直角または鈍角を形成するものとされてもよい。
【0050】
形成された直角は把持性を向上させることができて、鈍角は洗浄性を促進させると共に蒸気殺菌後の残留液体の蓄積の回避を促すことができる。
【0051】
本発明の有利な他の実施形態において、前記把持面部は、前記機器の長手軸心に対する半径周方向において20°以上の角度で互いに離隔した少なくとも2つの把持面サブ部に分割されており、かつ、それぞれの把持面サブ部は、前記半径周方向全体の10%以上にわたって前記半径周方向に配置されている。
【0052】
前記把持面部を分割すると、それにより得られる前記把持面サブ部を、前記把持部において外科医の異なる指に対して選択的に配置することができるので、分割されていない把持面部と比べて把持性を向上させることが可能である。また、単一の広域な把持面部ではなく、より選択的なのでより効率よく配置することが可能な把持面サブ部とすることにより、洗浄性を向上させることも可能である。
【0053】
本発明の他の実施形態は、前記把持面部が、隣り合う把持面サブ部に分割されており、一方の当該把持面サブ部は陥入部としてのみ形成された整形体を含み、他方の当該把持面サブ部は突出部としてのみ形成された整形体を含むように構成されている。
【0054】
これにより、前記整形体についての原則的に実施可能な2つの形態を併用することが可能となり、このように形成された把持面部は、両方の種類の整形体のそれぞれの利点を全て享受することができる。
【0055】
本発明の有利なその他の実施形態は、これまでに説明したか又はこれから説明する本発明の実施形態を2つ以上組み合わせてなる、明らかに合理的でない組合せ以外の組合せによって得られる。
【0056】
本明細書で述べられている角度寸法および「等長」という特定に関しては、角度寸法については2°以内のずれ、長さに関しては2%以内のずれであれば、これらの角度寸法および特定と合致するものと見なす。なお、周角としても知られる真円の角度寸法は、360°である。
【0057】
本発明にかかる機器は、前記把持面部を含め、ステンレス金属(例えば、クロムバナジウム、ステンレス鋼、チタンなど)から製造されている。ただし、本発明にかかる機器には、プラスチック材料または他の材料から製造された部分があってもよい。
【0058】
好ましい一実施形態において、本発明にかかる医療機器は、本発明にかかる六角形状の構造を含む把持面部が設けられた、神経外科用ピンセットである。これにより、そのような極めてディケートな機器であっても、把持面部への外科医の手の密着性を確実に良好にすることができる。
【0059】
以下では、本発明の例示的な実施形態を、添付の図面を参照しながら説明する。