特許第6480958号(P6480958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6480958
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/30 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   A61B17/30
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-570175(P2016-570175)
(86)(22)【出願日】2015年2月2日
(65)【公表番号】特表2017-506135(P2017-506135A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2015052091
(87)【国際公開番号】WO2015124416
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2017年12月12日
(31)【優先権主張番号】14156385.8
(32)【優先日】2014年2月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502338199
【氏名又は名称】エス・アンド・テー・アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】S & T AG
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(72)【発明者】
【氏名】ベームデルファー・リヒャルト
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−310273(JP,A)
【文献】 特開2012−143540(JP,A)
【文献】 特表2012−517869(JP,A)
【文献】 米国特許第4800880(US,A)
【文献】 米国特許第4928962(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007047059(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0132530(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0175067(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/130365(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 ― 90/98
A61C 1/00 ― 19/10
A61D 1/00 ― 99/00
A61F 2/00 ― 17/00
A61G 1/00 ― 99/00
A61H 1/00 ― 99/00
A61J 1/00 ― 19/06
A61M 1/00 ― 99/00
A61N 1/00 ― 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器であって、
医療介入のための介入部(20)と、
当該機器を保持するために構成された把持部(14)と、
を備え、前記把持部(14)は、ステンレス金属製の把持面部(1)を含み、前記把持面部(1)は、整形体(0)および当該整形体(O)間に形成されたエンクロジャー部(4,5,6,7)を含む配置構造を有し、
前記整形体(O)は、陥入部(11)または突出部(13)として構築されるか、および/または整形体(O)のうちの少なくともサブセットが、貫通孔として構築されている、医療機器において、
それぞれの前記整形体(0)が、等長の6つエッジ部(3−1,3−2,3−3,3−4,3−5,3−6)を含む六角形状のエッジ部(2)を有しており、
それぞれの整形体(0)における、互いに隣り合うエッジ部(3−1,3−2;3−2,3−3;…)は、前記配置構造が平面上に展開前および/または展開後で、120°の同一の角度(φ)に広がっており、
前記エッジ部(2)が、近接する整形体(0)間に形成された前記エンクロジャー部(4,5,6,7)によって形成されており、これによりハニカム構造(9)が得られていることを特徴とする、医療機器。
【請求項2】
請求項1に記載の医療機器において、前記整形体(0)は、所与の当該整形体における、互いに平行な一対の前記エッジ部(3−2,3−5)が、当該機器を使用する際の保持軸心(15)に対して直角に延びるように配置されていることを特徴とする医療機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療機器において、前記整形体は、当該整形体における、互いに隣り合うエッジ部(3−1,3−2;3−4,3−5)の角二等分線が、前記把持部および/または当該機器の長手軸心(19,8)と平行に延びるように配置されていることを特徴とする医療機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の医療機器において、所与の前記整形体における、所与の前記エッジ部が、別の前記整形体のうちの隣接する前記エッジ部に対して平行に延びており、かつ、前記エンクロジャー部のうち、これら隣接する平行なエッジ部間に配置されたエンクロジャー部(4,5,6)の、当該平行なエッジ部と直交するエンクロジャー部幅(B)が一定であることを特徴とする医療機器。
【請求項5】
請求項4に記載の医療機器において、前記エンクロジャー部のうち、隣接する平行なエッジ部間に配置された全てのエンクロジャー部(4,5,6)の、一定のエンクロジャー部幅(B)が、0.4〜3.7mmの範囲内であり、および/または、それぞれの前記整形体における、向かい合う平行な各エッジ部(3−1,3−4;3−2,3−5;3−3,3−6)間の幅(A)が一定であり、かつ、0.7〜5.7mmの範囲内であることを特徴とする医療機器。
【請求項6】
請求項5に記載の医療機器において、前記整形体の前記幅(A)と前記エンクロジャー部幅(B)との比が、1.4〜1.8の範囲内であることを特徴とする医療機器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の医療機器において、前記整形体(0)は、それぞれの当該整形体の前記六角形状のエッジ部(2)が存在する面に対する陥入部(11)もしくは突出部(13)として構築されており、当該整形体(0)は、それぞれの当該整形体の前記六角形状のエッジ部(2)が延在する前記面と直交して最大0.2〜1.4mmの範囲内で、延びていることを特徴とする医療機器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の医療機器において、前記整形体は、曲線状に構築されていることを特徴とする医療機器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の医療機器において、所与の前記エンクロジャー部から所与の前記整形体への遷移領域(17)は、角張ってもしくは丸みを持って構築されており、および/または、所与の前記エンクロジャー部における壁部(16)は、当該壁部(16)と前記遷移領域を介して隔てられた、所与の前記整形体における壁部(18)に対して直角もしくは鈍角に延びることを特徴とする医療機器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の医療機器において、前記把持面部が、当該機器の長手軸心(8)に対する半径周方向において少なくとも20°の角度(α)で互いに離隔した少なくとも2つの把持面サブ部(1−1,1−2)に分割されており、かつ、それぞれの把持面サブ部が、前記半径周方向全体の少なくとも10%にわたって前記半径周方向に配置されていることを特徴とする医療機器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の医療機器において、前記把持面部(1)が、隣り合う把持面サブ部に分割されており、一方の当該把持面サブ部は陥入部(11)としてのみ構成された整形体(0)を含み、他方の当該把持面サブ部は突出部(13)としてのみ構成された整形体(0)を含むことを特徴とする医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器、特に、外科手術用器具であって、医療介入のための介入部と、当該機器を保持するために構成された把持部(グリップ部)と、を備え、前記把持部は把持面部を含み、前記把持面部は、整形体(Ausformungen)および当該整形体間に形成されたエンクロジャー部を含む配置構造を有する、医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、請求項1のプリアンブルに記載されているような医療機器が数多く知られている。医療機器の長手軸心に沿って、医療介入(特には、外科手術介入または顕微手術介入)のための介入部が、術具先端としても知られている、当該医療機器の遠位端部(外科医から遠い側の端部)に配置されていると共に、把持部が、当該医療機器の近位端部に配置されている。
【0003】
これらの医療機器は、衛生面の法規制によりステンレス金属(一般的には、クロムバナジウム、ステンレス鋼、またはチタン)から全体的に製造されているのに加えて、陥入部(くぼみ部)や隆起部が施されていないスムースな表面構造を有しているのが普通である。
【0004】
これらの医療機器には、外科医が当該医療機器、特には、その介入部を、当該医療機器を操作している自身の手又は指が当該医療機器から滑り落ちることなく医療介入のために容易に取り扱えるように、把持面部を含む把持部が設けられている。
【0005】
第1のタイプの汎用的構成の医療機器では、そのような把持面部が、把持部の表面へのフライス加工によって形成された長溝を整形体として有する。把持部の表面における、フライス加工によって取り除かれなかった、長溝と長溝との間の残った材料が、エンクロジャー部としての盛り上がった細長リブを形成する。この場合、そのような深溝のそれぞれの形状が、三角形状の断面プロファイルを有するピラミッド形状となることが多い。すると、隣接する溝同士の断面プロファイル間に直角が形成される。これらの溝およびリブは、当該溝およびリブのそれぞれの長手軸心が医療機器の長手軸心に対して60°の角度を形成するように配置されることで、外科医の手(特には、外科医の力を加える親指)が滑り落ちるのを極めて効果的に防止することができる。具体的に述べると、一般的な医療機器において親指は、その機器の長手軸心に対して当該親指の長手軸心が30°の角度を形成するように把持部に載置される。これにより、上記の溝およびリブは、把持部に載置された親指の長手軸心と直交するように向くのである。
【0006】
第2のタイプの汎用的構成の医療機器では、把持面部が、把持部の表面における第1のグループの互いに平行な長溝および第2のグループの互いに平行な長溝を整形体として有すると共に、その第1のグループの溝が第2のグループの溝に対して直角を形成している。把持部の表面における、フライス加工によって取り除かれなかった、それら2つのグループの溝によって境界付けられる残った材料が、長方形状の盛り上がった台座の構造を形成する。
【0007】
医療機器(特には、外科手術用器具)には、洗浄性および把持性に関して極めて高い要求が課される。把持性の側面に関しては、外科医や医療機器のユーザが、衛生上の理由や自分を守るためや患者を守るために手袋(通常、ラテックス製の手袋)を装着するということが悪化要因となっている。そのため、医療機器の把持部は、外科医の手を覆う手袋と接触する把持面部がその把持面上で手袋が滑ることなく且つ手袋に入った、その把持面部に対して力を加える指が滑ることもなく、高い摩擦力の付加を可能にするように構成されなければならない。しかし、把持面部は高い静摩擦を与え、かつ、滑り始めた場合には高い滑り摩擦を与えるように構成されなければならない一方で、例えばリブと溝との間の鋭い遷移部等によって外科医の手袋を損傷することがないようにも構成されなければならない。さらに、把持面部は、外科医の指が医療機器から離れるときに当該把持面部に手袋がくっついたり当該把持面部における溝に手袋が食い込んだりしないようにも構成されなければならない。
【0008】
洗浄性に関して言えば、医療機器の場合、乾燥した血液等の汚染物が機器(特には、手袋が触れたり良好な把持性を実現するために溝とか他の陥入部が設けられたりする把持面部であって、そのため洗浄性が極めて重大となる把持面部)に付着しても楽に除去できることに重要性が置かれる。また、医療機器は、粗洗浄後にオートクレーブで蒸気殺菌されることから、蒸気殺菌の実行後に当該機器内又は当該機器上に蓄積する残留液体量がないように構成されなければならない。
【0009】
従来技術から知られている汎用的な医療機器は、機器の良好な把持性の実現と機器の良好な洗浄性の妥協を具現している。
【0010】
しかしながら、前述した第1のタイプの汎用的構成の医療機器では、把持面部の表面に沿った力が、互いに平行に配置されている溝およびリブと直交する方向に加えられないと、把持性が低下してしまう。その場合、溝およびリブに載置された外科医の指が当該溝およびリブのそれぞれの長手方向に滑ることがあり、外科医による医療機器の安全な操作が危うくなる。さらに、このような滑りが起こると、リブがナイフの刃のように作用することにより、滑ったことによるそのリブの長手方向沿いの動きで手袋が損傷するというリスクも生じる。しかも、互いに直角で繋がる深溝は、洗浄が困難である。
【0011】
前述した第2のタイプの汎用的構成の医療機器では、長方形状に盛り上がった台座が、直角に交差する溝部分のメッシュ状パターンを形成する溝によって完全に取り囲まれ、洗浄性が低下している。しかも、盛り上がった台座間の互いの間隔が狭過ぎると、当該台座間に手袋が食い込むというリスクもある。
【0012】
それだけでなく、いずれのタイプの汎用的構成の医療機器の場合も、蒸気殺菌後に、機器の溝内又は溝上に液体が蓄積する可能性がある。
【0013】
特許文献1には、請求項1のプリアンブルに記載されているような、把持面部を含む医療機器であって、その把持面部には陥入部が設けられて、好ましくは当該陥入部が細長い陥入部である、医療機器が記載されている。把持性の改善が必要のように見える。
【0014】
特許文献2、特許文献3および特許文献4には、医療機器以外に用いられる様々な把持部の概念について説明した、当該技術分野に属さない従来技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007047059号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0137472号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/0175067号明細書
【特許文献4】国際公開第2013/130365号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上に鑑みて本発明の目的の一つは、医療機器であって、従来技術と比べて、当該機器を保持する手が当該機器上で滑るというリスクを伴うことなく外科医が安全に取り扱えるように最適化された把持性を有し、把持面部からの手袋の優れた離れ易さを有し、かつ、最適化された洗浄性を有する、医療機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、汎用的な医療機器であって、独立請求項1の特徴部の構成を備えた医療機器により達成される。その他の有利な実施形態の付加的構成は、従属請求項の記載から明らかになる。
【0018】
本発明にかかる医療機器、特に、外科機器またはミクロ外科機器には、医療介入のための介入部と、当該機器を保持するために構成された、好ましくは前記介入部を操作するために構成された把持部と、が設けられており、前記把持部は、把持面部を含み、前記把持面部は、整形体および当該整形体間に形成されたエンクロジャー部を含む配置構造を有する。前記介入部は、非可動に構成されているか、例えば鉗子等として可動に構成されているか、または電動に構成されている。本発明では、それぞれの前記整形体が、等長の6つエッジ部を含む六角形状のエッジ部を有している。この場合、それぞれの整形体における前記エッジ部のうちの、互いに隣り合うエッジ部は、前記配置構造が平面上に展開される前および/または展開された後で、120°の同一の角度を形成している。前記六角形状のエッジ部は、近接する整形体間に形成された前記エンクロジャー部、好ましくは直方形状の構造の前記エンクロジャー部によって形成されており、これにより前記把持面部上にハニカム構造が得られている。直方形状の構造のエンクロジャー部を有する好ましい形態では、互いに傾いて配置された3つの直方形状のエンクロジャー部が、1つの三角形状の境を形成している。
【0019】
一実施形態において、前記把持面部の前記整形体は、前記把持面部における陥入部(Vertiefung) として形成されており、すなわち、前記把持面部における凹所(Ausnehmung)、押し跡(Eindellung)、圧痕(Einpraegung)または窪み(Einwoelbung)として形成されている。前記把持面部の前記エンクロジャー部は、前記把持面部における陥入部として形成された前記整形体に対して盛り上がっている。この実施形態では、前記医療機器を保持する外科医の、その手袋のうちの指先部又は指先部の周囲の部分が、それぞれ六角形状に形成された前記エッジ部を有する前記陥入部に当該指先部の対応する弾性変形を伴って係合すると共に、盛り上がり状に形成された前記エンクロジャー部にも載置される。
【0020】
本発明のこの実施形態における前記把持面部は、それぞれの整形体が6つのエッジ部を有する陥入部として形成されていて且つ盛り上がったエンクロジャー部へとこれらのエッジ部が遷移すると共にこれらのエッジ部の各々が互いに60°(または120°)オフセットした3つの軸心のうちの一つの軸心上に位置していることにより、前記医療機器を保持する外科医による力付加の方向を特に気にすることなく、当該機器の極めて高い把持性を可能にしている。しかも、極めて高い把持性およびこれによる滑りのリスクの減少に加えて前記陥入部は、自身の六角形状のエッジ部により、外科医の手袋のうちの、前記把持面部と接触した部分で加えられる力を多数の接触点にわたって一様に分散させるという効果を奏する。これにより、手袋への損傷のリスクが、既知の溝付き把持面部と比べて抑えられる。
【0021】
本発明に従って形成された前記陥入部は、六角形状のエッジ部を有する当該陥入部のうちの隣り合うエッジ部同士が120°の鈍角(よって、広角)を形成するので、良好な洗浄性を有する。また、前記陥入部の、本発明にかかる配置構成により、前記機器の蒸気殺菌の実行後に残留液体が蓄積するのを防止することができる。
【0022】
他の実施形態において、前記把持面部の前記整形体は、前記把持面部における突出部(Auswoelbung)として形成されており、すなわち、前記把持面部における膨らみ(Ausbeulung)、隆起(Erhebung)または盛り上がり(Huegel)として形成されている。前記把持面部の前記エンクロジャー部は、前記把持面部における突出部として形成された前記整形体に対して凹んで形成されている。この実施形態では、前記医療機器を保持する外科医の、その手袋のうちの指先部又は指先部の周囲の部分が、突出部として形成された前記整形体の前記六角形状のエッジ部を形成する前記エンクロジャー部に当該指先部の対応する弾性変形を伴って係合すると共に、前記突出部にも同じく当該指先部の対応する弾性変形を伴って載置される。
【0023】
本発明のこの実施形態における前記把持面部は、各整形体が6つのエッジ部を有する突出部として形成されていて且つ凹んだエンクロジャー部へとこれらのエッジ部が遷移すると共にこれらのエッジ部が互いに60°(または120°)オフセットした3つの軸心のうちの一つの軸心上に位置していることにより、前記医療機器を保持する外科医による力付加の方向を特に気にすることなく、当該機器の極めて高い把持性を可能にしている。しかも、極めて高い把持性およびこれによる滑りのリスクの減少に加えて前記突出部は、自身の六角形状のエッジ部により、外科医の手袋のうちの、前記把持面部と接触した部分で加えられる力を、当該突出部と凹んだ前記エンクロジャー部へと遷移する当該突出部の前記エッジ部とによって形成される多数の接触点にわたって一様に分散させるという効果を奏する。これにより、手袋への損傷のリスクが抑えられる。
【0024】
この実施形態は、前記突出部を取り囲む前記エンクロジャー部がそれぞれの隣り合うエンクロジャー部と共に120°の鈍角(よって、広角)を形成することにより、良好な洗浄性をもたらすと共に、前記機器の蒸気殺菌の実行後に残留液体が蓄積するのを防止することができる。
【0025】
前記配置構造が平面状の把持部表面部位(前記整形体を考慮しないとして、平面状の表面を有する表面部位)に配置されたものである場合、それぞれの整形体における前記エッジ部のうちの、互いに隣り合うエッジ部は、前記配置構造が平面上に展開される前および展開された後で、120°の同一の角度を形成するものとなる。つまり、平面状の把持面部については、展開に関して各場合を区別する必要がなく、実施形態は同じ且つ一つとなる。
【0026】
前記配置構造が把持面における曲線状の表面部位(すなわち、前記整形体を考慮しないとして、曲線状の又は曲がった表面を有する把持面部)に配置されたものである場合、様々な実施形態が可能である。
【0027】
一実施形態において、それぞれの整形体における前記エッジ部のうちの、前記互いに隣り合うエッジ部同士は、前記把持面部の前記曲線状の表面が平面上に展開される前で、120°の同一の角度を形成する。この実施形態では、前記整形体が、一つの整形体に注目するとして、この整形体の前記六角形状のエッジ部を形成する前記等長の6つのエッジ部が前記把持部の曲線状の又は曲がった前記把持面部上においてその整形体特有の平面内に延在するように、そして、それらのエッジ部が厳密に直線状に延びて隣同士が120°の同一の角度を形成するように、そして、それらのエッジ部が当該把持面部の曲線状の表面の曲率と合致しないかたちで曲がるように、かつ/あるいは、その整形体におけるそれら隣り合うエッジ部同士が自身の全長にわたって同一のレベルに延在しないように、当該把持面部において最終的に配置される。同様のことが、その他の前記整形体にも当てはまり、これらその他の前記整形体の各々の前記等長の6つのエッジ部も、前記把持部の曲線状の又は曲がった把持面部上において各整形体特有の平面(別の整形体特有の平面と異なり得る平面)内に延在せしめられる。
【0028】
この実施形態は、前記把持面部の曲率半径が一定でない場合にも、当該把持面部の実質上全体にわたって前記整形体の構造を互いに共通させることができ、つまり、把持性および洗浄に関して当該把持面部の実質上全体にわたって一貫して際立った性能を実現することが可能である。
【0029】
他の実施形態において、それぞれの整形体における前記エッジ部のうちの、前記互いに隣り合うエッジ部は、前記把持面部の前記曲線状の表面が平面上に展開された後で、120°の同一の角度を形成する。この実施形態では、前記整形体が、一つの整形体に注目するとして、この整形体の前記六角形状のエッジ部を形成する前記等長の6つのエッジ部が前記把持部の曲線状の又は曲がった前記把持面部上においてその整形体特有の面(前記把持面部の曲線状の又は曲がった表面の一部を成す面)内に延在するように、そして、それらのエッジ部が当該把持面部の曲がった表面の曲率に従って曲がるように、および/または、その整形体におけるそれら隣り合うエッジ部同士が自身の全長にわたって同一のレベルに延在しないように、当該把持面部において最終的に配置される。同様のことが、その他の前記整形体にも当てはまる。
【0030】
この実施形態は、前記エッジ部を前記把持面部の曲がった表面の曲率に合致するように曲げて構成するものなので、それぞれの整形体について、当該整形体から当該整形体を取り囲む前記エンクロジャー部への遷移部を、前記把持面部の曲がった表面の各自の曲率に合わせて変化させることが可能である。したがって、強い曲率の場合であっても、前記整形体から当該整形体を取り囲む前記エンクロジャー部への遷移部が鋭くなるのを回避することができる。
【0031】
本発明の他の実施形態において、前記整形体は、当該整形体における、好ましくは全ての当該整形体における、前記エッジ部のうちの、互いに平行な一対のエッジ部が、前記機器を使用する際の保持軸心、特には、前記把持部もしくは前記把持面部および/または前記機器の長手軸心に対して直角を形成するように配置されている。この保持軸心とは、例えば、前記医療機器が意図どおりに使用される際に、外科医の親指が軸心に沿って前記把持面部に載置されたときの、その軸心のことを意味する。
【0032】
それぞれの前記整形体における互いに平行な合計三対のエッジ部のうち、一つの対のエッジ部が、前記把持面部の一平面内において前記保持軸心と直交するというこのような配置構成により、前記把持面部によってもたらされる把持性を、その保持軸心の方向に加えられる力に対して最適化することができる。
【0033】
本発明のさらなる他の実施形態において、前記整形体は、当該整形体における前記エッジ部のうちの、互いに隣り合うエッジ部の角二等分線が、前記把持部もしくは前記把持面部および/または前記機器の長手軸心と平行に延びるように配置されている。
【0034】
この構成によれば、それぞれの前記整形体における互いに平行な合計三対のエッジ部のうち、所与の対のエッジ部が、前記把持部に載置される親指の長手軸心であって、一般的な医療機器では把持部もしくは把持面部および/または機器の長手軸心に対して30°の角度を形成する長手軸心に対して、直角を形成することになる。これにより、前記把持面部によってもたらされる把持性を、その親指の通例的な保持軸心の方向に加えられる力に対して最適化することができる。さらなる利点としては、前記医療機器が当該医療機器の長手軸心回りに180°回転されても、それぞれの前記整形体における互いに平行ないずれかの対のエッジ部が前記把持部に載置される親指の長手軸心に対して直角を形成するので、相変わらず良好な把持性を有するという点が挙げられる。このことは、従来技術からの、前述した第1のタイプの汎用的構成の医療機器に対する大きな改良と言える。というのも、そのような医療機器が自身の長手軸心回りに180°回転されると、前述した溝がその機器の長手軸心に対して30°である通例的な保持軸心に対して直角を形成しなくなるからである。
【0035】
本発明のさらなる他の実施形態では、所与の前記整形体における、好ましくは全ての前記整形体における、所与の前記エッジ部が、別の前記整形体のうちの隣接する前記エッジ部に対して平行に延びており、かつ、前記エンクロジャー部のうち、これら隣接する平行なエッジ部間に配置されたエンクロジャー部の、当該平行なエッジ部と直交するエンクロジャー部幅が一定である。
【0036】
この構成によれば、前記把持面部の全体にわたって一様に高い把持性および等しく良好な洗浄性を有する極めて規則的なハニカム構造が得られる。
【0037】
直前に述べた本発明の実施形態をさらに発展・改良させた実施形態は、直前に述べた本発明の実施形態における前述した構成に加えて、前記エンクロジャー部のうち、隣接する平行な前記エッジ部間に配置された全てのエンクロジャー部の、一定のエンクロジャー部幅、好ましくは同じエンクロジャー部幅が、0.4〜3.7mmの範囲内、好ましくは0.5〜3.5mmの範囲内、より好ましくは0.6〜1.6mmの範囲内であるように構成されており、および/または、それぞれの前記整形体における、向かい合う平行な各エッジ部間の幅が一定であり、好ましくはその他の整形体と共通しており、かつ、0.7〜5.7mmの範囲内、好ましくは0.8〜5.5mmの範囲内、より好ましくは1.0〜2.4mmの範囲内であるように構成されている。
【0038】
これにより得られる、前述した寸法を有する極めて規則的なハニカム構造は、前記把持面部の全体にわたって、医療機器の最適な把持性および医療機器の最適な洗浄性をもたらす。
【0039】
直前に述べた本発明の実施形態をなおいっそう発展・改良させた実施形態は、直前に述べた本発明の実施形態における前述した構成に加えて、前記整形体の前記幅と前記エンクロジャー部幅との比が、1.4〜1.8の範囲内、好ましくは黄金比と一致するように構成されている。この場合の黄金比と一致する比とは、数字の1に対する黄金数の比、すなわち、約1.618:1である。無理数である黄金数は、近似的にしか与えることができない。よって、本発明の文脈においては、黄金数の数学的定義からのずれが5%未満の数字を黄金数であると見なす。なお、黄金数は、フィボナッチ(Fibonacci-Folge)数列の中の極めて大きい番数の数値の、同じ数列の中の直前の数値に対する比からも得ることができる。
【0040】
これにより得られる、前述した寸法および比を有する極めて規則的なハニカム構造は、前記把持面部の全体にわたって、医療機器のなおいっそう最適な把持性および医療機器のなおいっそう最適な洗浄性をもたらす。
【0041】
本発明のさらなる実施形態は、前記整形体が、特に、互いの間で一様に、それぞれの当該整形体の前記六角形状のエッジ部が延在する面に対する陥入部(すなわち、凹所、押し跡、圧痕もしくは窪み)または突出部(すなわち、膨らみ、隆起もしくは盛り上がり)として形成されており、当該整形体が、特に、互いの間で一様に当該整形体が、それぞれの当該整形体の前記六角形状のエッジ部が延在する前記面と直交して最大0.1〜1.4mmの範囲内、好ましくは最大0.2〜1.4mmの範囲内、より好ましくは最大0.35〜1.20mmの範囲内で延びているように構成されている。
【0042】
前記整形体のこのような形態により、極めて良好な把持性および良好な洗浄性を実現するができる。
【0043】
直前に述べた本発明の実施形態に加えて、任意で、あるいは、代わりに、前記整形体のうちの少なくとも一部が、貫通孔として形成されてもよい。
【0044】
これにより、特に、前記医療機器の洗浄性を向上させると共に、蒸気殺菌後に当該機器上に残留液体が蓄積するのを防ぐ。
【0045】
本発明のさらなる実施形態は、前記整形体が、特に、互いの間で一様な前記整形体が、曲線状に形成されているように構成されている。好ましくは、この場合の曲線形状は、凹状の陥入部または凸状の突出部として、形成されている。このとき、その曲率半径が、蒸気殺菌後の残留液体の蓄積が回避される度合いを決める。
【0046】
このような曲線状の構造により、洗浄性を向上させることができると共に、蒸気殺菌後に前記医療機器上に残留液体が蓄積するのを防止することができる。さらに、凹椀状の陥入部または凸椀状の突出部とすることにより、前記医療機器に当たった光を散乱・方向転換させるので、既知の汎用的な機器と比べて、機器への入射光による眩惑作用を抑えることができる。
【0047】
本発明の他の実施形態は、所与の前記エンクロジャー部から所与の前記整形体への遷移領域が、特に、全ての前記エンクロジャー部および全ての前記整形体に一様に、角張ってまたは丸みを持って形成されているように構成されている。
【0048】
角張って形成された遷移領域は把持性を向上させることができて、丸みを持って形成された遷移領域は洗浄性を促進させると共に蒸気殺菌後の残留液体の蓄積の回避を促すことができる。
【0049】
直前に述べた本発明の実施形態に代えて、あるいは、加えて、所与の前記エンクロジャー部における壁部、特に、全ての前記エンクロジャー部および全ての前記整形体に一様に、当該壁部が、当該壁部と前記遷移領域を介して隔てられた、所与の前記整形体における壁部に対して直角または鈍角を形成するものとされてもよい。
【0050】
形成された直角は把持性を向上させることができて、鈍角は洗浄性を促進させると共に蒸気殺菌後の残留液体の蓄積の回避を促すことができる。
【0051】
本発明の有利な他の実施形態において、前記把持面部は、前記機器の長手軸心に対する半径周方向において20°以上の角度で互いに離隔した少なくとも2つの把持面サブ部に分割されており、かつ、それぞれの把持面サブ部は、前記半径周方向全体の10%以上にわたって前記半径周方向に配置されている。
【0052】
前記把持面部を分割すると、それにより得られる前記把持面サブ部を、前記把持部において外科医の異なる指に対して選択的に配置することができるので、分割されていない把持面部と比べて把持性を向上させることが可能である。また、単一の広域な把持面部ではなく、より選択的なのでより効率よく配置することが可能な把持面サブ部とすることにより、洗浄性を向上させることも可能である。
【0053】
本発明の他の実施形態は、前記把持面部が、隣り合う把持面サブ部に分割されており、一方の当該把持面サブ部は陥入部としてのみ形成された整形体を含み、他方の当該把持面サブ部は突出部としてのみ形成された整形体を含むように構成されている。
【0054】
これにより、前記整形体についての原則的に実施可能な2つの形態を併用することが可能となり、このように形成された把持面部は、両方の種類の整形体のそれぞれの利点を全て享受することができる。
【0055】
本発明の有利なその他の実施形態は、これまでに説明したか又はこれから説明する本発明の実施形態を2つ以上組み合わせてなる、明らかに合理的でない組合せ以外の組合せによって得られる。
【0056】
本明細書で述べられている角度寸法および「等長」という特定に関しては、角度寸法については2°以内のずれ、長さに関しては2%以内のずれであれば、これらの角度寸法および特定と合致するものと見なす。なお、周角としても知られる真円の角度寸法は、360°である。
【0057】
本発明にかかる機器は、前記把持面部を含め、ステンレス金属(例えば、クロムバナジウム、ステンレス鋼、チタンなど)から製造されている。ただし、本発明にかかる機器には、プラスチック材料または他の材料から製造された部分があってもよい。
【0058】
好ましい一実施形態において、本発明にかかる医療機器は、本発明にかかる六角形状の構造を含む把持面部が設けられた、神経外科用ピンセットである。これにより、そのような極めてディケートな機器であっても、把持面部への外科医の手の密着性を確実に良好にすることができる。
【0059】
以下では、本発明の例示的な実施形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】整形体および当該整形体間に形成されたエンクロジャー部を含む本発明にかかる配置構造を示す平面図である。
図2A図1に示す断面線C−C’に沿った断面図であって、整形体が一貫して凹椀状の陥入部として形成されている一実施形態を示す断面図である。
図2B図1に示す断面線C−C’に沿った断面図であって、整形体が一貫して凸椀状の突出部として形成されている他の実施形態を示す断面図である。
図3】所与のエンクロジャー部から所与の整形体への遷移領域、および所与のエンクロジャー部における壁部と当該壁部と前記遷移領域を介して隔てられた、所与の整形体における壁部との間に形成される角度に関しての、様々な実施形態を示す図である。
図4】医療機器の、2つの把持面サブ部を含む把持部を示す図である。
図5A】本発明にかかる機器の一例を示す斜視図である。
図5B】本発明にかかる機器の、図5Aに示された例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、整形体および当該整形体間に形成されたエンクロジャー部を含む本発明にかかる配置構造を示す平面図である。把持面部1は、複数の整形体0を含む。それぞれの整形体0は、等長の6つエッジ部3−1,3−2,3−3,3−4,3−5,3−6を含む六角形状のエッジ部2を一つずつ有している。それぞれの整形体0におけるこれらのエッジ部のうちの、互いに隣り合うエッジ部同士は、同一の角度φ(φ=120°)を形成している。近接する整形体の、互いに平行に延びて隣接し合うエッジ部間には、直方形状のエンクロジャー部4,5,6が形成されている。直方形状のエンクロジャー部4,5,6は、辺の向きが互いに異なっている。これら3つの直方形状のエンクロジャー部4,5,6のそれぞれの一辺が、三角形状のエンクロジャー部7を境界付けている。具体的に述べると、直方形状のエンクロジャー部4,5,6が、向きが互いに異なっている辺によって、その三角形状のエンクロジャー部7を取り囲んでいる。それぞれの整形体0は、当該それぞれの整形体0における、向かい合うエッジ部の間隔(例えば、エッジ部3−1とエッジ部3−4との間隔、エッジ部3−2とエッジ部3−5との間隔、エッジ部3−3とエッジ部3−6との間隔など)によって形成される幅Aが、互いに均一である。近接し合う整形体の、隣接する平行なエッジ部は、均一なエンクロジャー部幅Bをもって互いに隔てられている。図1に示された把持面部は、規則的なハニカム構造9を有している。さらに、整形体0における、互いに隣り合うエッジ部のそれぞれの角二等分線(例えば、エッジ部3−1とエッジ部3−2との角二等分線、エッジ部3−4とエッジ部3−5との角二等分線など)は、機器の長手軸心8(図1に示された長手軸心8の矢印の先端は、術具先端の方向を指している)と平行である。図1には、さらに、機器を使用する際の保持軸心15が、前述したよくある保持角度β(β=30°)の前提のもとに描かれている。さらに、それぞれの整形体0における、エッジ部3−2およびエッジ部3−5が、保持軸心15と直交するように延びている。
【0062】
図1に示された把持面部1は、完全に閉じた六角形状のエッジ部を有する整形体のみを含む。他の実施形態では、把持面部が自身のエッジにおいて、完全に閉じた六角形状のエッジ部ではなくエッジ部の数が6つ未満である(例えば、3つのエッジ部などの)開いたエッジ部しか有さない整形体によって境界付けられることができる。
【0063】
図2Aは、図1に示す断面線C−C’に沿った断面図であって、整形体が一様な凹椀状の陥入部として形成されている一実施形態を示す断面図である。整形体0は凹椀状の陥入部11として形成されていて、エンクロジャー部4,5,6は盛り上がったエンクロジャー部10として形成されている。
【0064】
図2Bは、図1に示す断面線C−C’に沿った断面図であって、整形体が一様な凸椀状の突出部として形成されている他の実施形態を示す断面図である。整形体0は凸椀状の突出部13として形成されていて、エンクロジャー部4,5,6は凹んだエンクロジャー部12として形成されている。
【0065】
図2Aおよび図2Bのいずれの実施形態においても、整形体は、曲線の方向、曲線の曲率半径および曲線の最大深さに関して互いに一様に形成されている。
【0066】
図3には、その上から下にかけて、考えられ得る整形体についての下記の実施形態が示されている:陥入部として形成された整形体であって、盛り上がったエンクロジャー部とその陥入部との間の遷移領域が丸みを持っていて、この丸みを持った遷移領域に繋がる壁部が直角を形成する、整形体;陥入部として構成された整形体であって、盛り上がったエンクロジャー部とその陥入部との間の遷移領域が角張っていて、この角張った遷移領域に繋がる壁部が直角を形成する、整形体;陥入部として形成された整形体であって、盛り上がったエンクロジャー部とその陥入部との間の遷移領域が丸みを持っていて、この丸みを持った遷移領域に繋がる壁部が鈍角を形成する、整形体;陥入部として形成された整形体であって、盛り上がったエンクロジャー部とその陥入部との間の遷移領域が角張っていて、この角張った遷移領域に繋がる壁部が鈍角を形成する、整形体;突出部として形成された整形体であって、凹んだエンクロジャー部とその突出部との間の遷移領域が丸みを持っていて、この丸みを持った遷移領域に繋がる壁部が直角を形成する、整形体;突出部として形成された整形体であって、凹んだエンクロジャー部とその突出部との間の遷移領域が角張っていて、この角張った遷移領域に繋がる壁部が直角を形成する、整形体;突出部として形成された整形体であって、凹んだエンクロジャー部とその突出部との間の遷移領域が丸みを持っていて、この丸みを持った遷移領域に繋がる壁部が鈍角を形成する、整形体;および突出部として形成された整形体であって、凹んだエンクロジャー部とその突出部との間の遷移領域が角張っていて、この角張った遷移領域に繋がる壁部が鈍角を形成する、整形体。
【0067】
図4は、医療機器の、2つの把持面サブ部を含む把持部を示す図である。具体的に述べると、機器の長手軸心8の方向に延びる把持部14が、その機器の長手軸心8に対する半径周方向において角度αで互いに離隔した2つの把持面サブ部1−1,1−2を含む。それぞれの把持面サブ部1−1,1−2は、前記半径周方向全体の10%以上にわたって前記半径周方向に配置されている。
【0068】
図5Aおよび図5Bは、本発明にかかる医療機器の一例を示す図である。本発明にかかる医療機器は、介入部20と把持部14とを備え、把持部14は把持面部1を含む。機器の長手軸心8は、把持部の長手軸心19と同じ方向に延びている。把持部の長手軸心19と機器を使用する際の親指の保持軸心15とは、角度βを形成する。
【0069】
例を用いて説明した、本発明のこれらの実施形態は、本発明の保護範囲を限定するものではない。むしろ、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。 以下、本発明に含まれる態様を記す。
[態様1] 医療機器、特には、外科手術用器具であって、
医療介入のための介入部(20)と、
当該機器を保持するために構成された、好ましくは前記介入部を操作するために構成された、把持部(14)と、
を備え、前記把持部(14)は、ステンレス金属製の把持面部(1)を含み、前記把持面部(1)は、整形体(0)および当該整形体間に形成されたエンクロジャー部(4,5,6,7)を含む配置構造を有する、医療機器において、
それぞれの前記整形体(0)が、等長の6つエッジ部(3−1,3−2,3−3,3−4,3−5,3−6)を含む六角形状のエッジ部(2)を有しており、
それぞれの整形体(0)における、互いに隣り合うエッジ部(3−1,3−2;3−2,3−3;…)は、前記配置構造が平面上に展開前および/または展開後で、120°の同一の角度(φ)に広がっており、
前記エッジ部(2)が、近接する整形体(0)間に形成された前記エンクロジャー部(4,5,6,7)によって形成されており、これによりハニカム構造(9)が得られていることを特徴とする、医療機器。
[態様2] 態様1に記載の医療機器において、前記整形体(0)は、所与の当該整形体における、好ましくは全ての当該整形体における、互いに平行な一対の前記エッジ部(3−2,3−5)が、当該機器を使用する際の保持軸心(15)、特には、前記把持部および/または当該機器の長手軸心(19,8)に対して直角に延びるように配置されていることを特徴とする医療機器。
[態様3] 態様1または2に記載の医療機器において、前記整形体は、当該整形体における、互いに隣り合うエッジ部(3−1,3−2;3−4,3−5)の角二等分線が、前記把持部および/または当該機器の長手軸心(19,8)と平行に延びるように配置されていることを特徴とする医療機器。
[態様4] 態様1から3のいずれか一項に記載の医療機器において、所与の前記整形体における、好ましくは全ての前記整形体における、所与の前記エッジ部が、別の前記整形体のうちの隣接する前記エッジ部に対して平行に延びており、かつ、前記エンクロジャー部のうち、これら隣接する平行なエッジ部間に配置されたエンクロジャー部(4,5,6)の、当該平行なエッジ部と直交するエンクロジャー部幅(B)が一定であることを特徴とする医療機器。
[態様5] 態様4に記載の医療機器において、前記エンクロジャー部のうち、隣接する平行なエッジ部間に配置された全てのエンクロジャー部(4,5,6)の、一定のエンクロジャー部幅(B)、好ましくは同一のエンクロジャー部幅(B)が、0.4〜3.7mmの範囲内、好ましくは0.5〜3.5mmの範囲内、より好ましくは0.6〜1.6mmの範囲内であり、および/または、それぞれの前記整形体における、向かい合う平行な各エッジ部(3−1,3−4;3−2,3−5;3−3,3−6)間の幅(A)が一定であり、好ましくはその他の整形体と同一であり、かつ、0.7〜5.7mmの範囲内、好ましくは0.8〜5.5mmの範囲内、より好ましくは1.0〜2.4mmの範囲内であることを特徴とする医療機器。
[態様6] 態様5に記載の医療機器において、前記整形体の前記幅(A)と前記エンクロジャー部幅(B)との比が、1.4〜1.8の範囲内、好ましくは黄金比と一致することを特徴とする医療機器。
[態様7] 態様1から6のいずれか一項に記載の医療機器において、前記整形体(0)は、特には互いに一様であり、それぞれの当該整形体の前記六角形状のエッジ部(2)が存在する面に対する陥入部(11)もしくは突出部(13)として構築されており、当該整形体(0)は、それぞれの当該整形体の前記六角形状のエッジ部(2)が延在する前記面と直交して最大0.1〜1.4mmの範囲内、好ましくは最大0.2〜1.4mmの範囲内、より好ましくは最大0.35〜1.20mmの範囲内で、特には互いに一様に、延びており、および/または、前記整形体(0)のうちの少なくともサブセットが、貫通孔として構築されていることを特徴とする医療機器。
[態様8] 態様1から7のいずれか一項に記載の医療機器において、前記整形体は、特には、互いに一様である前記整形体は、曲線状に構築されており、特には、凹状の陥入部(11)または凸状の突出部(13)としての曲線状に構築されていることを特徴とする医療機器。
[態様9] 態様1から8のいずれか一項に記載の医療機器において、所与の前記エンクロジャー部から所与の前記整形体への遷移領域(17)、特には、全ての前記エンクロジャー部(4,5,6)および全ての前記整形体(0)に一様に、当該遷移領域(17)は、角張ってもしくは丸みを持って構築されており、および/または、所与の前記エンクロジャー部における壁部(16)、特には、全ての前記エンクロジャー部および全ての前記整形体に一様に、当該壁部(16)は、当該壁部(16)と前記遷移領域を介して隔てられた、所与の前記整形体における壁部(18)に対して直角もしくは鈍角に延びることを特徴とする医療機器。
[態様10] 態様1から9のいずれか一項に記載の医療機器において、前記把持面部が、当該機器の長手軸心(8)に対する半径周方向において少なくとも20°の角度(α)で互いに離隔した少なくとも2つの把持面サブ部(1−1,1−2)に分割されており、かつ、それぞれの把持面サブ部が、前記半径周方向全体の少なくとも10%にわたって前記半径周方向に配置されていることを特徴とする医療機器。
[態様11] 態様1から10のいずれか一項に記載の医療機器において、前記把持面部(1)が、隣り合う把持面サブ部に分割されており、一方の当該把持面サブ部は陥入部(11)としてのみ構成された整形体(0)を含み、他方の当該把持面サブ部は突出部(13)としてのみ構成された整形体(0)を含むことを特徴とする医療機器。
【符号の説明】
【0070】
0 整形体
1 把持面部
1−1,1−2 把持面サブ部
2 六角形状のエッジ部
3−1,3−2,3−3,3−4,3−5,3−6 エッジ部
4,5,6 直方形状のエンクロジャー部
7 三角形状のエンクロジャー部
8 機器の長手軸心
9 ハニカム構造
10 盛り上がったエンクロジャー部
11 凹椀状の陥入部
12 凹んだエンクロジャー部
13 凸椀状の突出部
14 把持部
15 機器を使用する際の保持軸心
16 エンクロジャー部における壁部
17 遷移領域
18 整形体における壁部
19 把持部の長手軸心
20 介入部
α 把持面サブ部の離隔角度
β 機器を使用する際の保持軸心と把持部および/または機器の長手軸心
との間に形成される保持角度
φ 互いに隣り合うエッジ部によって形成される角度
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B