特許第6481026号(P6481026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サウジ アラビアン オイル カンパニーの特許一覧

特許6481026天然ガス/シェールガスコンデンセートからの芳香族生産のための2ステッププロセス
<>
  • 特許6481026-天然ガス/シェールガスコンデンセートからの芳香族生産のための2ステッププロセス 図000011
  • 特許6481026-天然ガス/シェールガスコンデンセートからの芳香族生産のための2ステッププロセス 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481026
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】天然ガス/シェールガスコンデンセートからの芳香族生産のための2ステッププロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 69/08 20060101AFI20190304BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20190304BHJP
   C10G 35/04 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C10G69/08
   C10G45/02
   C10G35/04
【請求項の数】18
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-517688(P2017-517688)
(86)(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公表番号】特表2017-534718(P2017-534718A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015053399
(87)【国際公開番号】WO2016054316
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】62/059,249
(32)【優先日】2014年10月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】アブダウード,ラエド
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/092232(WO,A1)
【文献】 特表2012−513522(JP,A)
【文献】 米国特許第04246094(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02149594(EP,A1)
【文献】 特開2008−280451(JP,A)
【文献】 特開2010−111769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広沸点範囲コンデンセートから芳香族リッチなシステム生成物を生産するための方法であって:
前記広沸点範囲コンデンセートおよび高純度水素再循環流を、芳香族生産システムの水素化処理反応器に導入するステップと;
前記水素化処理反応器は、前記沸点範囲コンデンセートを水素化分解して軽質生成物ガス混合物およびナフサ沸騰温度範囲液体生成物の両方を生成し、ここで、前記軽質生成物ガス混合物は、水素およびC1−5アルカンを含み、前記ナフサ沸騰温度範囲液体生成物は、220℃を超えない真沸点温度を有するナフサ沸騰温度範囲液体生成物成分からなり;
前記ナフサ沸騰温度範囲液体生成物は、芳香族化反応器システムへ進み、および前記軽質生成物ガス混合物は、水素抽出ユニットへ進み;
前記芳香族化反応器システムは、前記芳香族リッチなシステム生成物、水素リッチなガス生成物および非芳香族液体生成物を生成し、ここで、前記水素リッチなガス生成物は、水素およびC1−5アルカンを含み、前記非芳香族液体生成物は、C9+パラフィンおよびC9+ナフテンを含み;
前記水素リッチなガス生成物は、前記芳香族化反応器システムから前記水素抽出ユニットへ水素およびC1−5アルカンを含む軽質生成物流として進み、および前記非芳香族液体生成物の少なくとも一部は、前記芳香族化反応器システムへ進み;
前記水素抽出ユニットは、前記高純度水素再循環流および液化石油ガス(LPG)生成物を生成し、ここで、前記LPG生成物は、70重量%以上のC1−5アルカンを含み;および
前記高純度水素再循環流は、前記水素化処理反応器へ進むように前記芳香族生産システムを運転するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記広沸点範囲コンデンセートの一部が、233℃を超える真沸点(TBP)温度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記広沸点範囲コンデンセートの前記一部が、最大75重量%の前記広沸点範囲コンデンセートを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記広沸点範囲コンデンセートが、400℃〜565℃の範囲の最終沸点(FBP)温度を有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記広沸点範囲コンデンセートの一部が、25℃未満の真沸点(TBP)温度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記広沸点範囲コンデンセートの前記一部が、最大20重量%の前記広沸点範囲コンデンセートを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記広沸点範囲コンデンセートが、前記広沸点範囲コンデンセートの60重量%〜100重量%の範囲のパラフィンを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記広沸点範囲コンデンセートが、前記広沸点範囲コンデンセートの60重量%〜100重量%の範囲のナフテンを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記広沸点範囲コンデンセートが、前記広沸点範囲コンデンセートの最大40重量%の範囲の芳香族を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記芳香族リッチなシステム生成物が前記芳香族リッチなシステム生成物の2重量%〜30重量%の範囲のベンゼンを含むように前記芳香族生産システムが運転される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記芳香族リッチなシステム生成物が前記芳香族リッチなシステム生成物の10重量%〜40重量%の範囲のトルエンを含むように前記芳香族生産システムが運転される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記芳香族リッチなシステム生成物が前記芳香族リッチなシステム生成物の8重量%〜30重量%の範囲のキシレンを含むように前記芳香族生産システムが運転される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記高純度水素再循環流の少なくとも一部が前記芳香族化反応器システムへも進むように前記芳香族生産システムを運転するステップをさらに含む請求項1または請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記芳香族化反応器システムにより生産される前記非芳香族液体生成物のすべてが前記芳香族化反応器システムに再導入されるように前記芳香族生産システムが運転される請求項1または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記非芳香族液体生成物の少なくとも一部が前記水素化処理反応器へ進むように前記芳香族生産システムが運転される請求項1または請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
広沸点範囲コンデンセートからの芳香族リッチなシステム生成物の生産に有用な芳香族生産システムであって:
水素抽出ユニットと流体的に結合し、水素化処理触媒を含み、ならびに前記広沸点範囲コンデンセート、前記水素抽出ユニットから高純度水素再循環流を受け入れ、かつ軽質生成物ガス混合物およびナフサ沸騰温度範囲液体生成物を前記広沸点範囲コンデンセートの水素化分解により生産するように運転され、ここで、前記軽質生成物ガス混合物は、水素およびC1−5アルカンを含み、前記ナフサ沸騰温度範囲液体生成物が、220℃を超えない真沸点温度を有するナフサ沸騰温度範囲液体生成物成分からなる水素化処理反応器と;
前記水素化処理反応器と流体的に結合し、芳香族化触媒を含み、ならびに前記水素化処理反応器からの前記ナフサ沸騰温度範囲液体生成物および非芳香族液体生成物を受け入れ、かつ前記芳香族リッチなシステム生成物、水素リッチなガス生成物および前記非芳香族液体生成物を生産するように運転され、ここで、前記芳香族リッチなシステム生成物が、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを含み、前記水素リッチなガス生成物は、水素およびC1−5アルカンを含み、前記非芳香族液体生成物は、C9+パラフィンおよびC9+ナフテンを含む芳香族化反応器システムと;および
前記水素化処理反応器および前記芳香族化反応器システムの両方と流体的に結合し、ならびに前記水素化処理反応器からの前記軽質生成物ガス混合物および水素およびC1‐5アルカンを含む軽質生成物流として前記芳香族化反応器システムからの前記水素リッチなガス生成物を受け入れ、前記軽質生成物ガス混合物および前記水素リッチなガス生成物の両方から水素を選択的に分離し、かつ前記高純度水素再循環流および70重量%以上のC1−5アルカンを含む液化石油ガス(LPG)生成物を生産するように運転される前記水素抽出ユニットとを含むシステム。
【請求項17】
記芳香族化反応器システムからの前記非芳香族液体生成物の少なくとも一部を受け入れるものである前記水素化処理反応器を含む請求項16に記載の芳香族生産システム。
【請求項18】
記抽出ユニットからの前記高純度水素再循環流の少なくとも一部を受け入れるものである前記芳香族化反応器システムを含む請求項16または17に記載の芳香族生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野は、芳香族の生産に関する。さらに具体的には、本分野は、ガスコンデンセートから芳香族を生産するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ガス、軽質コンデンセート、天然ガス液、シェールガスおよび他のガスまたは液化炭化水素を含有する貯留層からの軽質石油液体(C3−12の範囲)を生産する広沸点範囲コンデンセートは分留塔に送られ、大気圧の原油分離塔において原油を分留するために利用される技術と同様の技術を利用して蒸留される。次に、分留された生成物−液化石油ガス(LPG)、天然ガソリン、ナフサおよび常圧ガス油の留分−は通常、各沸騰留分内に存在するさまざまな不純物のために処理されてから、オレフィン、ガソリン、ならびにガソリン、ケロシンおよびディーゼルのブレンド成分を含む精製品燃料および石油化学製品の生産に使用される。
【0003】
広沸点範囲コンデンセートの他の使用には、高分子および他の軽質オレフィン誘導体の石油化学製造において直接使用するために、材料を軽質オレフィン、特にC2−4オレフィンに分解する水蒸気分解改質装置または熱分解炉にコンデンセートを供給することが含まれる。コンデンセートを使用する別のプロセスには、コンデンセート材料と、フィッシャー−トロプシュ合成プロセスからの炭化水素流との組み合わせが含まれる。しかし、これらのプロセスのいずれも、硫黄および窒素を含有する化合物、ならびにニッケルおよびバナジウムを含むヘテロ有機種を含む、広沸点範囲コンデンセートに伴う不純物の取り扱いに苦労する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その生産源から最小限の前処理で有用な石油化学製品、特に、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを含む芳香族の汎用化学製品に変換するための代替の原料であると業界内の多くの人々が見なす広沸点範囲コンデンセートを受け入れるための、より直接的なプロセスを見出すことが望ましい。反応性が高い軽質オレフィンとは異なり、このような化学製品には世界市場があり、地域の使用に限定されない。広沸点範囲コンデンセートを最初に分留成分に分離する必要をなくすシステムを有することも望ましい。さらに、技術に関わらず、処理システム内の硫黄または金属に基づく付着物の堆積の防止が関心事となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
広沸点範囲コンデンセートからの芳香族リッチなシステム生成物の生産に有用な芳香族生産システムは、水素化処理反応器を含む。水素化処理反応器は、水素抽出ユニットと流体的に結合する。水素化処理反応器は、水素化処理触媒を含む。水素化処理反応器は、液化炭化水素コンデンセートならびに高純度水素を受け入れ、かつ軽質生成物ガス混合物およびナフサ沸騰温度範囲液体生成物を生産するように運転可能である。ナフサ沸騰温度範囲液体生成物は、220℃を超えない真沸点温度を有するナフサ沸騰温度範囲液体生成物成分からなる。芳香族生産システムは、芳香族化反応器システムを含む。芳香族化反応器システムは、水素化処理反応器と流体的に結合する。芳香族化反応器システムは、芳香族化触媒を含む。芳香族化反応器システムは、ナフサ沸騰温度範囲液体生成物、非芳香族液体生成物、および任意選択で高純度水素を受け入れ、かつ芳香族リッチなシステム生成物、水素リッチなガス生成物および非芳香族液体生成物を生産し、かつ液体生成物を芳香族リッチなシステム生成物および非芳香族液体生成物に選択的に分離するように運転可能である。芳香族リッチなシステム生成物中の芳香族には、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。芳香族生産システムは、水素抽出ユニットを含む。水素抽出ユニットは、水素化処理反応器および芳香族化反応器システムと流体的に結合する。水素抽出ユニットは、軽質生成物ガス混合物および水素リッチなガス生成物を受け入れ、導入されるガスから水素を選択的に分離し、かつ高純度水素および水素プアーな混合ガスを生産するように運転可能である。
【0006】
広沸点範囲コンデンセートから芳香族リッチなシステム生成物を生産するための方法は、広沸点範囲コンデンセートおよび高純度水素を芳香族生産システムの水素化処理反応器に導入するステップを含む。水素化処理反応器に導入される広沸点範囲コンデンセートに対する高純度水素の体積比は、約0.01〜約10の範囲にある。本方法は、水素化処理反応器が軽質生成物ガス混合物およびナフサ沸騰温度範囲液体生成物の両方を生成するように芳香族生産システムを運転するステップを含む。ナフサ沸騰温度範囲液体生成物は、220℃を超えない真沸点温度を有するナフサ沸騰温度範囲液体生成物成分からなる。本方法は、ナフサ沸騰温度範囲液体生成物が芳香族化反応器システムへ進み、かつ軽質生成物ガス混合物が水素抽出ユニットへ進むように芳香族生産システムを運転するステップを含む。本方法は、芳香族化反応器システムが、芳香族リッチなシステム生成物、水素リッチなガス生成物および非芳香族液体生成物を生成するように芳香族生産システムを運転するステップを含み、ここで、非芳香族液体生成物は、C9+パラフィンおよびナフテンを含み、かつ約5重量%未満の芳香族を含む。本方法は、水素リッチなガス生成物が水素抽出ユニットへ進み、かつ非芳香族液体生成物の少なくとも一部が芳香族化反応器システムへ進むように芳香族生産システムを運転するステップを含む。本方法は、水素抽出ユニットが、高純度水素および水素プアーな混合ガスを生成するように芳香族生産システムを運転するステップを含む。水素プアーな混合ガスは、約70重量%以上のC1−5アルカンを含む。本方法は、高純度水素が水素化処理反応器へ進むように芳香族生産システムを運転するステップを含む。
【0007】
2ステッププロセスは、ベンゼン、トルエンおよびキシレン(BTX)ならびに有用な軽質炭化水素ガスに富んだ生成物流への炭化水素コンデンセートの効率的な変換を可能にする。ベンゼンおよびp−キシレンは、多くの化学材料およびポリマー材料にとって有用な石油化学の構成要素である。安価な代替の炭化水素含有流体からの生産は、これらの有用な石油化学製品の世界的な能力の向上にとって有用である。
【0008】
本プロセスにおいて、ナフサ沸騰温度範囲を超える温度で沸騰する成分を含む広温度範囲コンデンセートは、触媒的なナフサ改質装置への導入に適したナフサ沸騰温度範囲液体生成物が生産されるようにアップグレードされる。生産された流れが高感度の改質触媒に許容されるように硫黄および他の不純物を除去するためにコンデンセートを水素化処理し、より高級な炭素化合物をナフサ沸騰温度範囲液体生成物に水素化分解すると、芳香族化触媒による水素化処理装置の生成物の処理がより容易になる。触媒的な改質装置は、ナフサ沸騰温度範囲液体生成物からBTX芳香族を生産する。本プロセスは、水素およびLPGへの再処理に有用である軽質炭化水素ガスの損失を最小にし、未変換の非芳香族液体生成物をoblivionに再循環することにより、BTX生産を最大にする。
【0009】
任意選択で、芳香族化反応器システムの流出物から選択的に分離される非芳香族液体生成物を水素化処理反応器に再循環すると、芳香族化反応中に生成する可能性のあるオレフィンの飽和が可能になる。このようなオレフィンは、直接再循環されると、ナフサ改質触媒の性能に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0010】
コンデンセートが水素化処理され、かつ水素化分解されて、芳香族化反応に適したナフサ沸騰温度範囲液体生成物を生産する従来の方法は見出されていない。開示されているプロセスは、コンデンセートが処理される既知の方法とは異なり、かつ、広温度範囲コンデンセート材料を有用な芳香族化学製品に変換するためのステップの数を減らす。
【0011】
本発明の特徴、利点および組成物、ならびに明らかになるであろうその他が達成される方法がさらに詳細に理解されるように、本明細書の一部をなす添付図に示すこれらの実施形態を参照することにより、上に簡潔にまとめた本発明をより個別に説明する場合がある。しかし、図面は、本発明の好ましい実施形態のみを示しており、したがって、本発明は、等しく効果的な他の実施形態が認められるため、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことに留意されたい。本技術は、これらの非限定的な実施形態の以下の詳細な説明を読み、添付図面を検討することでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】芳香族生産システムの実施形態の一般的なプロセスフローチャートを示す図である。
【0013】
図2】本発明のいくつかの実施形態による炭化水素処理ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の概要、図面の簡単な説明および好ましい実施形態の詳細な説明を含む本明細書ならびに添付された特許請求の範囲は、本発明の特定の特徴(プロセスまたは方法ステップを含む。)について言及している。本発明は、本明細書に記載の特定の特徴のすべての可能な組み合わせおよび使用を含むことを当業者は理解する。本発明は、本明細書に記載の実施形態の説明に限定されたり、またはこれらによって限定されたりしないことを当業者は理解する。本発明の主題は、本明細書および添付の特許請求の範囲の趣旨において以外は限定されない。
【0015】
特定の実施形態を説明するために用いられる専門用語は、本発明の範囲または広さを限定しないことも当業者は理解する。本明細書および添付の特許請求の範囲の解釈において、すべての用語は、各用語の文脈と一致して、できるだけ最も広く解釈されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるすべての技術用語および科学用語は、他に定義されていない限り、本発明が属する技術分野の技術者に一般に理解されるような同じ意味を有する。
【0016】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそれ以外に明確に示していなければ、複数の指示対象を含む。動詞「を含む(comprises)」およびその活用形は、「実質的に〜からなる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」などを含め、要素、構成要素またはステップを非排他的に参照すると解釈されるべきであり、適切に開示されている本発明の例示は、具体的に開示されていない任意の要素がない状態で実施されてもよい。言及された要素、構成要素またはステップは、明示的に言及されていない他の要素、構成要素またはステップと存在しても、利用されても、または組み合わせられてもよい。動詞「を結合する(couple)」およびその活用形は、電気的、機械的または流動的な接合を含む任意のタイプの必要な接合をなして、それまで連結されていなかった2つ以上の物体から単一の物体を形成することを意味する。第1のデバイスを第2のデバイスに結合する場合、直接または一般的なコネクタを通じて接続が行われ得る。「任意選択で(optionally)」およびそのさまざまな形態は、続いて記載される事象または状況が発生しても、発生しなくてもよいことを意味する。説明には、事象または状況が発生する場合の例、および事象または状況が発生しない場合の例が含まれる。「運転可能な(operable)」およびそのさまざまな形態は、その適切な機能性への適合を意味し、その使用目的のために用いることができる。
【0017】
空間的な用語は、別の物体または物体の群に対する物体または物体の群の相対位置を記述する。空間的な関係は、垂直軸および水平軸に沿って適用される。「上流」、「下流」および他の同様の用語を含む方向および関連語は、記述的な利便性のためのものであり、特に記載のない限り限定するものではない。
【0018】
本明細書または添付された特許請求の範囲に値の範囲が記載されている場合、その区間は、上限と下限の間に挟まれたそれぞれの値ならびに上限および下限を包含するものと理解される。本発明は、記載されている任意の特定の除外を受けるさらに狭い範囲を包含し、その境界を定める。「相当な(substantial)」は、示した計量単位で10%以上を意味する。「大幅な(significant)」は、示した計量単位で1%以上を意味する。「検出可能な(detectable)」は、示した計量単位で0.01%以上を意味する。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲が、2つ以上の定義されたステップを含む方法について言及している場合、定義されたステップは、文脈によりその可能性が排除される場合を除き、任意の順番で、または同時に実施することができる。
【0020】
本開示において特許または刊行物が参照されるとき、その参考文献が本開示の記載と矛盾しない限りにおいて、その参考文献は参照によりその全体が組み込まれる。
【0021】
[図1]
芳香族生産システムは、広沸点範囲コンデンセートを利用して、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを含む芳香族生成物を生成する。広沸点範囲コンデンセートは、上流の源およびプロセスの外部からコンデンセート供給ライン10を通じて芳香族生産システム1に導入される。また、芳香族生産システム1は、下流の石油化学処理のために2つの有用な生成物流を通す。芳香族生産システム1は、芳香族生成物流12を通す。芳香族生成物流12は、実際には、混合された、または部分的に精製されたベンゼン、トルエン、キシレンおよびこれらの組み合わせを含む1つまたはいくつかの流れを含んでもよい。また、芳香族生産システム1は、LPG流14を通す。LPG流14は、水素分離および精製プロセスからの流出物であり、軽質アルカン(C1−4)および減量した水素を含む。LPG流14の水素プアーな混合ガスは、別の精製(例えば、水素抽出)に有用であり、芳香族生産システム1の外部の蒸気発生および発電のための高BTUボイラ供給として有用である。
【0022】
広沸点範囲コンデンセートは、合わせた供給ライン22を用いて水素化処理反応器20に導入される。図1に示す通り、他の2つの流れは、コンデンセート供給ライン10と合わさって、合わせた供給ライン22を形成する。精製水素再循環ライン42は、水素抽出ユニット40を水素化処理反応器20に結合し、高純度水素を水素抽出ユニット40から水素化処理反応器20へ運ぶ。芳香族生産システムは、水素化処理反応器に導入される広沸点範囲コンデンセートに対する高純度水素の体積比が約0.01〜約10の範囲にあるように運転される。任意選択で、水素化処理反応器20は、非芳香族液体再循環ライン38を用いて芳香族化反応器システム30に結合し、このラインは、芳香族化反応器システム30の芳香族変換プロセスからの非芳香族液体生成物の少なくとも一部を運んで水素化処理反応器20に戻すように運転可能である。合わせた流れとして示されているが、コンデンセート供給ライン10、非芳香族液体再循環ライン38および精製水素再循環ライン42のそれぞれは、システムの別の実施形態では、合わせた供給ライン22内に事前に合わせることなく、水素化処理反応器20内に直接供給することができる。
【0023】
水素化処理反応器内において、広沸点範囲コンデンセート、高純度水素および任意選択の非芳香族液体生成物は、水素化処理反応器20内の水素化処理触媒を含む少なくとも1つの水素化処理触媒床に接触する。有用な水素化処理触媒には、米国特許第5,993,643号明細書(1999年11月30日発行)、米国特許第6,515,032号明細書(2003年2月4日発行)および米国特許第7,462,276号明細書(2008年12月9日発行)に記載の触媒が含まれる。
【0024】
合わせた供給は、いくつかの反応が同時に起こるように、水素化処理条件で水素化処理触媒に接触する。水素化処理条件において、水素化分解反応器は、導入される高純度水素および水素化処理触媒を用いて有機硫黄化合物、窒素化合物および金属化合物を除去して、硫化水素およびアンモニアなどのガスおよび金属固体を生成するように運転可能である。非芳香族液体生成物も水素化処理反応器に再循環される場合、導入される任意のオレフィンは、高純度水素によりパラフィンに飽和される。水素化処理反応器は、約220℃を超える真沸点(TBP)温度を有する、導入されるパラフィン、ナフテンおよび芳香族が分解され、ナフサ沸騰温度範囲内のTBP温度(この温度は約30℃〜約220℃である。)を有するパラフィンに飽和されるように、水素化分解の厳しさにおいても稼働する。生成物組成は、ナフサ沸点範囲において従来から最高温度と考えられている温度(約233℃)を超えるTBP温度を有するどのような炭化水素成分も含まないが、特にパラフィンを含まない。また、これにより、水素化処理され、かつ部分的に水素化分解された炭化水素生成物は、確実に大部分がパラフィン系になる。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、水素化処理反応器内の温度が約200℃〜約600℃の範囲に維持されるように運転される。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、水素化処理反応器内の圧力が約10bar〜約200barの範囲に維持されるように運転される。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、水素化処理反応器内の液空間速度(LHSV)が約0.1時間−1〜約20時間−1の範囲に維持されるように運転される。
【0025】
水素化処理反応器は、広沸点範囲コンデンセート、高純度水素および任意選択の非芳香族液体生成物の水素化処理から、軽質生成物ガス混合物およびナフサ沸騰温度範囲液体生成物を生成するように運転可能である。ナフサ沸騰温度範囲液体生成物は、約220℃を超えない真沸点温度を有するナフサ沸騰温度範囲液体生成物成分からなる。ナフサ沸騰温度範囲液体生成物成分は、パラフィン、および任意選択で著しい量の芳香族またはナフテン、あるいは両方を含む。ナフサ沸騰温度範囲液体生成物は、約30℃〜約220℃の範囲の沸点温度範囲を有することができる。ナフサ沸騰温度範囲液体生成物を通す流れ対広沸点範囲コンデンセートを導入する流れの体積比は約4:5であり、これは、分解反応によって、処理されつつある流体の体積が大きくなることを示す。液体生成物流24は、水素化処理反応器20を芳香族化反応器システム30に結合し、ナフサ沸騰温度範囲液体生成物は、水素化処理反応器20から芳香族化反応器システム30へ進む。軽質生成物ガス混合物は大部分が水素および軽質(C1−5)アルカンの混合物であり、さらに少ない量の硫化水素、アンモニアおよび水を含んでもよい。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、軽質生成物ガス混合物が、軽質生成物ガス混合物の約0重量%〜約50重量%の範囲の水素を含むように運転される。軽質生成物流26は、水素化処理反応器20を水素抽出ユニット40に結合し、軽質生成物ガス混合物は、水素化処理反応器20から水素抽出ユニット40へ進む。
【0026】
図1は、合わせた供給ライン32を用いてナフサ沸騰温度範囲液体生成物を芳香族化反応器システム30に導入する芳香族生産システム1を示す。非芳香族液体再循環ライン34は、液体生成物流24と合わさって、合わせた供給ライン32を形成する。非芳香族液体再循環ライン34は、芳香族化反応器システム30から進んで芳香族化反応器システム30の前に戻る非芳香族液体生成物の少なくとも一部を再導入する。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族化反応器システムに導入される非芳香族液体生成物の重量パーセントが、芳香族化反応器システムへの供給の約10重量%〜約50重量%の範囲にあるように運転される。芳香族生産システムは、芳香族化反応器システムによって生産される非芳香族液体生成物が、C9+パラフィンおよびナフテンおよび約5重量%未満の芳香族を含むように運転される。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、非芳香族液体生成物中に著しい量のオレフィンが存在するように運転される。
【0027】
非芳香族液体再循環ライン34は、分離された非芳香族液体生成物(さまざまなパラフィンおよびナフテンを含む。)の少なくとも一部が芳香族化反応器システム30内で芳香族へと再び処理されるように、これらの非芳香族液体生成物を通して、合わせた供給ライン32に戻す。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族化反応器システムにより生産される非芳香族液体生成物のすべてが芳香族化反応器システムに再導入されるように運転される。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、非芳香族液体生成物の少なくとも一部が、水素化処理反応器へ進むように運転される。図1は、非芳香族液体再循環ライン38(破線)経由で水素化処理反応器20へ進む非芳香族液体生成物の少なくとも一部の任意選択の経路設定を示す。非芳香族液体生成物がオレフィンを含むとき、この生成物の少なくとも一部を通して水素化処理反応器に戻す目的は、オレフィンの飽和を可能にすることであり、オレフィンの向きを変えて芳香族化反応器システム内に戻すと、芳香族化触媒を汚染する恐れがあるためである。
【0028】
任意選択で、水素抽出ユニット40が高純度水素を芳香族化反応器システム30へ運ぶように、芳香族化反応器システム30は、水素ライン44(破線)を用いて水素抽出ユニット40に結合する。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、高純度水素が芳香族化反応器システムに導入されるように運転される。このような実施形態において、芳香族化反応器システムに導入される供給に対する高純度水素の体積比は、約0.01〜約6の範囲に維持される。合わせた流れとして示されているが、液体生成物流24、非芳香族液体再循環ライン34および水素ライン44のそれぞれは、システムの別の実施形態では、合わせた供給ライン32内に事前に合わせることなく、芳香族化反応器システム30内に直接供給することができる。
【0029】
芳香族化反応器システム内において、ナフサ沸騰温度範囲液体生成物、および非芳香族液体生成物の少なくとも一部は、芳香族化触媒を含む少なくとも1つの芳香族化触媒床に接触する。触媒床は、移動床または固定床反応器にすることができる。有用な芳香族化触媒には、国際公開第1998/036037号(1998年8月20日公開)に記載の触媒を含む任意の選択的なナフサ改質触媒が含まれる。
【0030】
合わせた供給は、いくつかの反応が同時に起こるように、芳香族化条件で芳香族化触媒に接触する。芳香族化条件において、芳香族化反応器システムは、ナフサ沸騰温度範囲液体生成物、および非芳香族液体生成物の少なくとも一部を液体生成物に変換するように運転可能であり、ここで、生産される芳香族はC6−8の範囲内であり、水素リッチなガス生成物である。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族化反応器システム内の温度が約200℃〜約600℃の範囲に維持されるように運転される。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族化反応器システム内の圧力が約1bar〜約80barの範囲に維持されるように運転される。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族化反応器システム内の液空間速度(LHSV)が約0.5時間−1〜約20時間−1の範囲に維持されるように運転される。また、芳香族化反応器システムは、非芳香族液体生成物が再循環できるように、液体生成物を芳香族リッチなシステム生成物および非芳香族液体生成物に選択的に分離するように運転可能である。化学的抽出または蒸留あるいはこれら2つの組み合わせを芳香族化反応器システム内で用いて、芳香族から非芳香族を選択的に分離することができる。
【0031】
芳香族生成物流12は、芳香族生産システム1の外部の石油化学処理を含む別の処理および分離のために、芳香族リッチなシステム生成物(ベンゼン、トルエンおよびキシレンに富む。)を下流に通す。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族化反応器システムに導入される供給の芳香族リッチなシステム生成物への変換率が、導入される供給の約50%〜約90%の範囲にあるように運転される。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、導入される広沸点範囲コンデンセートの芳香族リッチなシステム生成物への初回通過変換率が、導入される広沸点範囲コンデンセートの約40%〜約72%の範囲にあるように運転される。
【0032】
芳香族リッチなシステム生成物は、検出可能な量未満のパラフィン、ナフタレンおよびオレフィンを含む。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族リッチなシステム生成物が、芳香族リッチなシステム生成物の約2重量%〜約30重量%の範囲のベンゼンを含むように運転される。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族リッチなシステム生成物が、芳香族リッチなシステム生成物の約10重量%〜約40重量%の範囲のトルエンを含むように運転される。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族リッチなシステム生成物が、芳香族リッチなシステム生成物の約8重量%〜約30重量%の範囲のキシレンを含むように運転される。
【0033】
水素リッチなガス生成物は、芳香族化反応器システム内に供給されるパラフィンの芳香族化プロセスから生産される水素および軽質アルカン(C1−5)の未精製の混合物である。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、芳香族化反応システムに導入される供給に対する水素リッチなガス生成物の比が、重量で約3:10であるように運転される。軽質生成物流36は、芳香族化反応器システム30を水素抽出ユニット40に結合し、水素リッチなガス生成物は、芳香族化反応器システム30から水素抽出ユニット40へ進む。
【0034】
図1は、軽質生成物流26を用いて水素化処理反応器20から軽質生成物ガス混合物を、および軽質生成物流36を用いて芳香族化反応器システム30から水素リッチなガス生成物を水素抽出ユニット40に導入する芳香族生産システム1を示す。軽質生成物流26および軽質生成物流36の両方が、水素抽出ユニット40内で選択的に分離される水素および軽質アルカンを供給する。合わせた流れとして示していないが、システムの別の実施形態では、軽質生成物流26および軽質生成物流36の両方が単一の流れに合わせられてもよく、水素抽出ユニット40内に直接供給されてもよい。
【0035】
水素抽出ユニット40は、高純度水素および水素プアーな混合ガスが生成するように、2つの生成物ガス混合物から水素を選択的に分離するように運転可能である。水素抽出ユニットは、圧力スイング吸着(PSA)システム、抽出蒸留、溶媒抽出または膜分離にすることができる。水素抽出ユニットの構成は、水素の体積および純度を反映する。本方法のある実施形態において、芳香族生産システムは、水素抽出ユニットに導入される供給から生産される高純度水素が、水素抽出ユニットへの供給の約35重量%〜約90重量%の範囲にあるように運転される。図1は、精製水素再循環ライン42および合わせた供給ライン22経由で高純度水素を水素化処理反応器20に通す芳香族生産システム1を示す。任意選択で、芳香族化反応を容易にするために、少量の高純度水素が水素ライン44経由で芳香族化反応器システム30に供給されてもよい。LPG流14は、LPG燃料としての分配、または内部プラント燃焼および発電を含む、芳香族生産システム1の外部の処理のために、水素プアーな混合ガスを通す。芳香族生産システムは、水素プアーな混合ガスが約70重量%以上のC1−5アルカンを含むように運転される。
【0036】
[広沸点範囲コンデンセート]
2つの天然ガス生産井に由来する2つの有用な広沸点範囲コンデンセートの一例を表1に示す。先述の通り、広沸点範囲コンデンセートは、天然ガス貯留層、軽質コンデンセート貯留層、天然ガス液、シェールガスおよび他のガスなどの天然の炭化水素を含有する源、またはC3−12の範囲の軽質石油液体を生産する液化炭化水素を含有する貯留層に由来し得る。
【0037】
広沸点範囲コンデンセートは、硫黄重量に基づいて約200ppm〜約600ppmの範囲の硫化水素ならびに脂肪族メルカプタン、スルフィドおよびジスルフィドを含む硫黄含有ヘテロ有機化合物を含む。これらの化合物は、水素化処理反応器内で硫化水素に変換される。
【0038】
広沸点範囲コンデンセートには、さらに少量の窒素含有化合物(ピリジン、キノロン、イソキノリン、アクリジン、ピロール、インドール、カルバゾールを含む。)、金属含有ヘテロ有機化合物(バナジウム、ニッケル、コバルトおよび鉄を含むことができる。)および塩水からの塩(ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムを含むことができる。)も含まれる。バナジウムは、水素化処理触媒に対して毒であることが既知である。広沸点範囲コンデンセート中の全金属は、金属重量に基づいて約5ppm重量%以下に限られる。
【0039】
塩基性窒素はピリジン、キノロン、イソキノリンおよびアクリジンの合計であり、広沸点範囲コンデンセート中において、窒素重量に基づいて約600ppm重量%以下に限られる。
【0040】
広沸点範囲コンデンセートは、相当量のパラフィン、ナフテンおよび芳香族を含む一方、検出可能な量未満のオレフィンを含む。本方法のある実施形態において、広沸点範囲コンデンセートは、広沸点範囲コンデンセートの約60重量%〜約100重量%の範囲のパラフィンを含む。本方法のある実施形態において、広沸点範囲コンデンセートは、広沸点範囲コンデンセートの約60重量%〜約100重量%の範囲のナフテンを含む。本方法のある実施形態において、広沸点範囲コンデンセートは、広沸点範囲コンデンセートの約0重量%〜約40重量%の範囲の芳香族を含む。
【0041】
有用なコンデンセートには、ナフサ沸騰温度範囲内である範囲の真沸点蒸留温度を有する材料が含まれる。表1に示す通り、いずれのコンデンセートも、全材料の約30重量%が、約233℃を超える真沸点温度を有する。これは、表1のコンデンセートの約30重量%が、ディーゼル燃料の製造に有用なガス油沸点温度範囲材料であることを示す。本方法のある実施形態において、広沸点範囲コンデンセートの一部は、233℃を超える真沸点(TBP)温度を有する。本方法の別の実施形態において、この部分は、最大約75重量%の広沸点範囲コンデンセートを含む。本方法のある実施形態において、広沸点範囲コンデンセートは、約400℃〜約565℃の範囲の最終沸点(FBP)温度を有する。
【0042】
また、いずれのコンデンセートも、全材料の約5重量%をなす、約25℃未満の真沸点温度を有するコンデンセートの部分を含むように見受けられる。コンデンセートのこの部分は、LPGとして回収するのに有用である。本方法のある実施形態において、広沸点範囲コンデンセートの一部は、25℃未満の真沸点(TBP)温度を有する。本方法の別の実施形態において、この部分は、最大約20重量%の広沸点範囲コンデンセートを含む。
【表1】
【0043】
広沸点範囲コンデンセートは、表1に示した2つの材料を含め、芳香族化プロセスへの導入前に対処可能ないくつかの問題を除いて、場合によっては、芳香族化を含む触媒的なナフサ改質プロセスの良好な原料になり得る。ヘテロ有機硫黄および金属化合物の除去により、改質触媒の品質が保たれる。高沸点材料−約233℃を超えるTBP温度を有する材料−の、より軽質なナフサ沸騰温度範囲液体への水素化分解は、炭化水素液体の処理を、エネルギー集約的・水素集約的(hydrogen−intensive)でないものにする。最も軽質な材料−約25℃未満の真沸点温度を有する材料−を除去すると、コンデンセートのこの部分はプロセスの希釈剤として働くため、触媒的なナフサ改質に用いられる装置のサイズ/体積が小さくなる。さらに、これらの軽質材料は、水素化分解するために、炭素含有量がさらに高い炭化水素よりも大量のエネルギーを必要とする;したがって、濃度がより高く、炭素含有量がより高い材料に対して、低い処理温度を用いて同じ水素化分解操作を実施できる可能性がある。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために記載される。以下の実施例に開示されている技術および組成物は、本発明者らによって見出された、本発明の実施においてよく機能する技術および組成物を表し、したがって、その実施に好ましいモードを構成すると考えられることを当業者は理解すべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態において、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの変更を加えることができ、依然として同様または類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0045】
[実施例1]
本発明の実施形態にしたがい、HYSYS水素化処理モデルを用いて未精製品コンディショナーをモデル化した。このモデルは、炭化水素が関与する水素化処理反応および水素化分解反応の両方の速度過程を組み込むことができる。以前の試行から得られた未精製品コンディショナーパイロットプラント試験データに合うように未精製品コンディショナーモデルを校正した。未精製品コンディショナーモデルユニットを用いて、原油および天然ガスの精製および処理(アラブ・エクストラ・ライト(AXL)原油およびクフ(Kuff)ガスコンデンセート(KGC)のアップグレーディングおよび改良を含むが、これらには限定されない。)に関連する特性を評価および予測することができる。
【0046】
AXL原油、KGCおよび水素ガスを未精製品コンディショナーに供給した。供給流のコンディショニングは、校正済みのHYSYS速度モデルを用いて実施される。HYSYSモデルは3つの反応器床、高圧セパレータ、再循環圧縮機および水素再循環ループを含み、校正において図2に示す反応器および水素再循環ループの両方を考慮に入れるようにする。
【0047】
図2に示す通り、高圧セパレータからの高圧分離ガスおよびHPS液体流出物は主フローシート(main flowsheet)に入り、そこで、高圧セパレータからの液体は硫化水素(HS)吸収装置を含む成分スプリッタ(component splitter)に進み、すべてのHSならびに水素(H)、アンモニア(NH)および水(HO)が除去される。生じる液化炭化水素流は成分スプリッタに送られ、ここで流出物は、炭化水素流のカットポイントの全沸点(TBP)温度に基づいて水素留分に分離され、得られる収率が計算される。
【0048】
いくつかの実施形態において、本明細書に記述されるHYSYS水素化処理モデルは、1組の142変数または「擬似成分」を用いて、水素ガスなどの化合物を含んでもよく、分子の複雑さが増してもよい1つまたは複数の原料(例えば、最大約50個の炭素原子を含む、47個の炭素原子を含む炭化水素化合物)を特徴付ける。特定の実施形態において、「擬似成分」成分は、一連の177反応経路を含むモデルを含め、最大約200反応経路を含んでもよい一連の反応経路(「反応ネットワーク」とも呼ばれる。)をモデル化するために用いられる。本明細書に記述される成分および(1つまたは複数の)反応ネットワークは、当業者に既知の水素化処理反応と一貫している。
【0049】
軽質ガス(C3(プロパン)およびさらに軽質のもの)を含む化合物を、メタン、エタンおよびプロパンならびに本明細書に記述されるモデリングにおいて関連する誘導体として計算した。C4(ブタン)〜C10(デカン)の範囲の炭化水素種については、純粋な一成分を用いていくつかの異性体を表した。例えば、n−ブタンに関連する特性を用いて、n−ブタンおよびイソブタンの両方の特性を表した。炭素原子の数がさらに多い炭化水素化合物については、炭素数が14、18、26および47の化合物を用いた。これらの値が、さらに多い(炭素原子が10個を超える)炭化水素化合物留分において、広範囲の沸点成分を表すことが明らかになったためである。
【0050】
本明細書に記述される水素化処理モデルにおいて用いられる成分は、芳香族化合物およびナフテン化合物を含む単環式(一環)〜四環式(四環)の炭素種を含む、さまざまなクラスの炭化水素も含む。13の硫黄成分を用いて供給内における硫黄化合物の分布を表す一方、塩基性および非塩基性の10の窒素成分を用いた。本明細書に記述されるHYSYS水素化処理モデルでは、遷移金属錯体などの金属またはアスファルテン(ashphaltene)を追跡しないため、これらの化合物はモデリングから除外した。AXL原油(表2)およびKGC(表3)分析供給フィンガープリント結果を表2および表3に示す:
【表2】
【表3】
【0051】
未精製品コンディショナーモデルを用いて、AXLおよびKGC分析水素化処理の結果を予測した。未処理および水素化処理のAXL原油(表4)およびKGC(表5)の結果の比較は以下の通りである:
【表4】
【表5】
【0052】
表6および表7は、未精製品コンディショニングユニット(CCU)あり、またはなしで処理される、1日あたり100,000バレル(bbl/day)のAXL原油を処理するユニットにおいて予測される収率の変化を示す:
【表6】
【表7】
【0053】
表7に示す通り、未精製品コンディショナーユニット内におけるAXL原油の処理後、ナフサの収率の大幅な上昇が観察された。さらに、70〜220℃のナフサカットは、AXL原油処理による芳香族分およびナフテン分のレベルの上昇ならびにパラフィン分の低下を示した。これらの結果は、通常の蒸留と比べたナフサ収率の上昇、およびナフサ芳香族種を含む生産されるナフサの品質の向上の両方を示す。いくつかの実施形態において、生じるナフサ流中で生成される増加した芳香族分は、その中の価値のある芳香族を単離するために、ベンゼン−トルエン−エチルベンゼン−キシレン(BTEX)抽出ユニットを用いて有利に抽出することができる。
【0054】
さらに、改善されたディーゼルおよび関連する炭化水素留分が観察された。AXL未精製品から生産される「ディーゼルカット」は、蒸留経路において出会う硫黄および他の汚染物質が非常に少ないか、存在しないため、例えば原油蒸留により生産されるディーゼルと比べて有利に品質が高い。同様に、上で言及した「ナフサカット」は、原油蒸留を用いて生産されるナフサと比べて、硫黄および他の汚染物質を除去する処理を必要としない。
【0055】
KGC炭化水素処理に関して、この供給流を未精製品コンディショナー(水素化処理)ユニットを用いて処理すると、ナフサ収率も有利に上昇する。70℃〜220℃のナフサカットはさらに、KGCを水素化処理すると、生産される芳香族のレベルの相当な上昇ならびにパラフィン分の低下を示した。いくつかの実施形態において、生じる芳香族は、別の処理のためにナフサを触媒的な改質ユニットに送る前に反応器流出物から容易に抽出することができる。ナフサ流中の増加した芳香族分は、任意選択のBTEX抽出ユニット内で抽出することができ、ここで、ナフテン分は、触媒的なナフサ改質ユニット内で芳香族に容易に変換することができる。AXL原油と同じく、処理されたKGCも、改善されたディーゼル範囲収率または「ディーゼルカット収率」を与えた。
図1
図2