特許第6481027号(P6481027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6481027広い沸騰温度の炭化水素原料から芳香族を生成するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481027
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】広い沸騰温度の炭化水素原料から芳香族を生成するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 69/08 20060101AFI20190304BHJP
   C10G 35/04 20060101ALI20190304BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C10G69/08
   C10G35/04
   C10G45/02
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-517703(P2017-517703)
(86)(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公表番号】特表2017-534719(P2017-534719A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015053412
(87)【国際公開番号】WO2016054323
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】62/059,249
(32)【優先日】2014年10月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/121,200
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】アブダウード,ラエド
(72)【発明者】
【氏名】アル−アメール,モハメド
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/092232(WO,A1)
【文献】 特表2012−513522(JP,A)
【文献】 米国特許第04246094(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02149594(EP,A1)
【文献】 特開2008−280451(JP,A)
【文献】 特開2010−111769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化水素原料から有機硫黄、窒素、および金属化合物が除去される炭化水素生成物を生成する方法であって、
素化処理反応器へ前記炭化水素原料および水素流を導入する工程;
記炭化水素原料を水素分解して軽質生成物ガス混合物とナフサ沸騰温度範囲の液体生成物の両方を形成するような条件下で前記水素化処理反応器を操作する工程であって、前記軽質生成ガス混合物が、水素と炭素原子数1〜5の炭化水素範囲の軽質アルカンを含み、前記ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物が、30℃〜240℃の範囲の沸点温度を有するナフサ沸騰温度範囲の液体生成物成分からなるものである前記水素化処理反応器を操作する工程;
芳香族化反応器システムへ前記ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物を送る工程
水素抽出ユニットへ前記軽質生成物ガス混合物を送る工程
前記炭化水素生成物と軽質生成物流を形成する条件として、前記芳香族化反応器システム内の温度を200℃〜600℃の範囲、圧力を5バール〜200バールの範囲および液空間速度(LHSV)を0.1時間−1〜20時間−1の範囲に維持し前記芳香族化反応器システムを操作する工程であって、前記炭化水素生成物は、少なくとも30重量%の炭素原子数6〜8の炭化水素範囲の芳香族化合物を含み、および軽質生成物流は、水素および炭素原子数1〜5の炭化水素範囲の軽質アルカンを含むものである前記芳香族化反応器システムを操作する工程
前記水素抽出ユニットへ前記軽質生成物流を送る工程;
前記水素抽出ユニット内で精製水素流および液化石油ガス(LPG)生成物を生成する工程であって、前記LPG生成物が70重量%以上の炭素原子数1〜4の炭化水素範囲のアルカンを含むものである工程;ならびに
前記水素化処理反応器へ前記精製水素流を送る工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記炭化水素生成物が、芳香族炭化水素、石油化学製品、ガソリン、灯油、ディーゼル燃料、液化石油生成物、燃料強化炭化水素、燃料安定化炭化水素およびオレフィンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記芳香族化反応器システムが、芳香族生成物、非芳香族液体生成物、およびそれらの組合せからなる群から選択される前記炭化水素生成物を生成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記非芳香族の液体生成物が、C9+パラフィン、C9+ナフテンおよびそれらの組合せからなる群から選択されるものを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化処理反応器が、さらに水素化処理触媒を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記水素化処理触媒が水素雰囲気中で維持される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化処理触媒が、硫黄、窒素、遷移金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される非炭化水素化合物の濃度を減少させるように操作可能である、請求項またはに記載の方法。
【請求項8】
前記水素抽出ユニットが、さらに溶媒抽出システムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
記炭化水素原料の一部が、230℃より高い真沸点(TBP)温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
記炭化水素原料が、15%〜75%の範囲の初期変換率で前記ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物へ変換される、請求項1またはに記載の方法。
【請求項11】
記炭化水素原料が、400℃〜600℃の範囲の最終沸点(FBP)温度を有する、請求項1または請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
記炭化水素原料が、0.1重量%〜40重量%の範囲で芳香族を含む、請求項1または請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記芳香族炭化水素が、8重量%〜30重量%の範囲で混合キシレンを含む、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業的に価値のある芳香族化学物質の生成に関する。より具体的には、本技術分野は、広い沸騰温度範囲の炭化水素原料からベンゼン、トルエンおよびキシレン(BTEX)などの芳香族化学物質を生成する方法およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素系燃料および汎用化学物質の効率的かつ経済的な生成は、世界市場および商業にとって非常に重要である。天然ガス、軽質炭化水素凝縮物、天然ガスの液体、頁岩ガスおよび軽質原油などの地下貯蔵所に由来する未精製の「広い沸騰」温度範囲の炭化水素画分は、典型的には、プロピル(C)からドデシル(C12)炭化水素の範囲で、周知の分画法および蒸留法を経て、軽質石油液体を生成するために使用される。場合によって、これらのプロセスは、従来の原油を分留するための1以上の大気圧力粗分離塔を使用する方法に匹敵する。分留生成物は、液化石油ガス(LPG)、天然ガソリン、ナフサ、および大気ガス油の画分を含む。得られた生成物は、商品化されるか、またはガソリン、灯油、ディーゼル燃料、燃料増強および安定化用添加剤ならびにエチレンおよびプロピレンを含むオレフィンなどの精製された燃料ならびに炭化水素系化学物質を生成するために、各沸騰画分内に見られる様々な不純物の減少または除去のためにさらに処理されてよい。
【0003】
広い沸騰温度範囲の炭化水素は、また、特に、エチル(C)からブチル(C)炭化水素の範囲で、重質炭化水素材料を軽質オレフィン、市販のポリマーサブユニットおよび関連する誘導体化学物質に「分解」するための水蒸気分解改質または熱分解炉ベースのプロセスを用いる軽質オレフィンの生成において有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、広い沸騰温度範囲の炭化水素の処理は、典型的には、硫黄化合物および窒素化合物ならびにヘテロ有機種由来の混入をもたらす。これらの望ましくない混入物質、ならびに銅、鉄、ニッケル、バナジウムおよびナトリウムなどの外来金属は、最終的に市販の燃料および汎用化学物質を生じる炭化水素画分から効率的に除去または低減される必要がある。したがって、ベンゼン、トルエンおよびキシレン(BTEX)を含む芳香族汎用化学物質などの有用な石油化学製品へ変換するための最小限の処理で広い沸騰温度範囲の炭化水素画分を処理することが望ましい。広い沸騰範囲の凝縮物は、タイトガスの地層から世界的に開発されている「代替」原料と考えられるが、BTEX化学物質およびそれらの誘導体は反応性が低い。これらの貴重な化学物質は、例えば、反応性が高く、したがって、取り扱いおよび輸送が高価である軽質オレフィンとは異なり、局所使用に限定されない世界的な市場を有する。硫黄、金属およびそれらを含有する化合物などの望ましくない混入物質を処理および精製し、望ましくない混入物質の存在を低減する前に、広い沸騰温度範囲の炭化水素を分留成分に分離する必要性を低減または排除することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、広い沸騰範囲の凝縮物から炭化水素生成物を生成する方法であって、芳香族生成システムの水素化処理反応器へ広い沸騰範囲の凝縮物および水素を導入する工程で、導入される広い沸騰範囲の凝縮物に対する水素の体積比が約0.01〜約10の範囲にある工程;該水素化処理反応器が、軽質生成物ガス混合物とナフサ沸騰温度範囲の液体生成物の両方を形成するような条件下で該芳香族生成システムを操作させる工程で、該ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物成分が、約30℃〜約240℃の範囲の沸点温度を有するナフサ沸騰温度範囲の液体生成物からなる工程;芳香族化反応器システムに該ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物を送り、水素抽出ユニットに軽質生成物ガス混合物を送る工程;1種以上の炭化水素生成物を形成するのに適切な条件下で、該芳香族化反応器システムを操作させる工程;該水素抽出ユニットに水素を送り、該芳香族化反応器システムに非芳香族液体生成物の少なくとも一部を送る工程;該水素抽出ユニットで水素および混合水素に乏しいガスを生成する工程で、混合水素に乏しいガスがC〜Cアルカンを70重量%以上含む工程;ならびに該水素化処理反応器に水素を送る工程を含む方法に関する。
【0006】
好ましい実施形態において、該炭化水素生成物は、芳香族炭化水素、石油化学製品、ガソリン、灯油、ディーゼル燃料、液化石油生成物、燃料強化炭化水素、燃料安定化炭化水素およびオレフィンからなる群から選択される。さらなる実施形態において、該水素は高純度の水素を含む。さらに別の実施形態において、該芳香族化反応器システムは、芳香族に富むシステム生成物、水素に富むガス生成物、非芳香族液体生成物から選択される1種以上の炭化水素生成物を生成する。特定の実施形態において、非芳香族液体生成物は、C9+パラフィン類、ナフテン類および1つのベンゼン系の環を含む芳香族化合物である単環式芳香族化合物を含む。いくつかの実施形態において、水素化処理反応器は、さらに水素雰囲気中で水素化処理触媒を含む。特定の実施形態において、該水素化処理触媒は、硫黄、窒素、遷移金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される非炭化水素化合物の濃度を減少させるように操作可能である。
【0007】
さらなる実施態様において、該水素抽出ユニットは、さらに溶媒抽出システムを含む。さらなる実施形態において、広い沸騰範囲の凝縮物の一部は、約230℃より高い真沸点(TBP)温度を有する。いくつかの実施形態において、広い沸騰範囲の凝縮物は、約15%〜約75%の範囲での初期変換率でナフサ沸騰温度範囲の液体生成物へ変換される。特定の実施形態において、広い沸騰範囲の凝縮物は、約400℃〜約600℃の範囲の最終沸点(FBP)温度を有する。いくつかの実施形態において、広い沸騰範囲の凝縮物は、広い沸騰範囲の凝縮物の約0.1重量%〜約40重量%の範囲で芳香族を含む。特定の実施形態において、該芳香族炭化水素は、約8重量%〜約30重量%の範囲で混合キシレンを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、該水素化処理反応器へ導入される広い沸騰範囲の凝縮物画分に対する水素画分の体積比は、約0.01〜約10の範囲にある。該水素画分は、「補給」水素と生成される高純度水素の両方を含む。いくつかの実施形態において、該水素画分の「補給」水素部分は、レギュレータ制御または連続流水素ラインによって生成される。いくつかの実施形態において、該水素画分の高純度水素部分は、再循環流で生成される。
【0009】
本発明の特徴、利点および組成物、ならびに明らかになる他のものが、達成され、より詳細に理解され得るように、上記で簡単に要約した本発明は、本明細書の一部を形成する添付の図面に示される実施形態を参照することによってより具体的に説明され得る。しかしながら、図面は、本発明の好ましい実施形態のみを示し、したがって、本発明は他の等しく有効な実施形態を認めることができるので、その範囲を限定するものと考えるべきではないことに留意すべきである。本技術は、その非限定的な実施形態の以下の詳細な説明を読み、添付の図面を精査することでより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】芳香族生成システムの実施形態の一般的なプロセスフローダイアグラムを示す。
【0011】
図2】本発明のいくつかの実施形態に係る炭化水素処理ユニットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は例示の目的のために具体的な詳細を含むが、当業者は、以下の詳細の多くの例、変形および変更が本発明の範囲および趣旨内にあることを理解するであろう。したがって、本明細書に記載され、添付図面に提供される本発明の例示的な実施形態は、特許請求される本発明に対する、一般性を失うことなく、かつ過度の制限なく、記載されている。参照される要素、構成要素または工程は、明示的に参照されていない他の要素、構成要素または工程とともに存在、利用または組み合わせてもよい。本明細書で使用する技術的および科学的用語は、別途定義されない限り、一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0013】
本明細書で使用する用語「水素化処理」は、ナフサ、燃料、潤滑油、汎用化学物質およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されない1以上の市販されていない炭化水素前駆体および/または市販されている炭化水素生成物が最終的に生成されるような、「予備処理」法を含む、1以上の炭化水素画分を処理および/または精製することができる任意の方法論を指す。いくつかの実施形態において、水素化処理は、穏やかな水素化分解、中程度の圧力および/または温度の水素化分解ならびに完全転化水素化分解、真空ガス油水素化分解、ディーゼル水素化分解および水素処理を含む水素化分解を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、水素化処理は、代替的に水素化転化触媒または水素処理触媒と呼ばれる1以上の水素化処理触媒を用いて行われる。これらの触媒の例としては、シリカ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、ならびに必要に応じて、シリカ、シリカ−アルミナおよび/またはゼオライトによって支持されるモリブデン、ニッケルならびにコバルトなどの遷移金属が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によれば、水素化処理触媒は、必要に応じて、触媒床によって支持されてよい。
【0014】
代替的に「芳香族炭化水素」、「芳香族化学物質」、「芳香族化合物」および「アレーン」と呼ばれる用語「芳香族」は、単結合と二重結合の交互結合などの別々の交互結合とは対照的に、非局在化パイ(π)電子密度によって特徴付けられる有機(炭素系)化学物質または化合物を指す。本発明によれば、芳香族は、ベンゼンを含むがこれらに限定されない同じ数の炭素原子および水素原子(C)を含む同素環;硫黄、窒素および酸素などのヘテロ原子ならびにヘテロアレーンを含む複素環;ナフタレン、アントラセンおよびフェナントレンを含むがこれらに限定されない多環系類;ならびにトルエンおよびキシレンを含むがこれらに限定されない置換芳香族などの化学物質または化合物を含む。
【0015】
本発明の芳香族化学生成の方法およびシステムは、BTEX化学物質などの芳香族生成物を形成するために、広い沸騰温度範囲の炭化水素原料を使用する。本方法は、芳香族生成システムへ広い沸騰温度範囲の炭化水素原料を導入する工程を含む。図1を参照すると、広い沸騰温度範囲の炭化水素原料は、システムの上流およびプロセス外からの広い沸騰温度範囲の炭化水素原料源から炭化水素原料の供給ライン10を通って芳香族生成システム1へ導入される。本方法は、該芳香族生成システム1へ水素流または水素雰囲気を導入する工程を含む。補給水素供給ライン12は、プロセスの水素処理/水素化分解部分における水素雰囲気を維持するために、該芳香族生成システム1へ水素ガスを導入する。該芳香族生成システム1は、好ましい実施形態において、下流の石油化学処理に有用な化学生成物を生成する。
【0016】
本方法は、該芳香族生成システム1からのベンゼン、トルエンおよびキシレンを含む芳香族に富むシステム生成物流を通過させる工程を含む。該芳香族生成システム1は、必要に応じて、混合したまたは部分精製したベンゼン、トルエン、キシレン(代替的に混合キシレンと呼ばれる)、およびそれらの組合せを含有する単一化学物質流またはいくつかの合わせた化学物質流を含む芳香族生成物流14を通過させ、全芳香族は、約30重量%〜約95重量%の範囲で芳香族生成物流中に存在する。いくつかの実施形態において、芳香族生成物流14は、約2重量%〜約30重量%の範囲でベンゼンを含み、約10重量%〜約40%重量の範囲でトルエンを含み、約1.5重量%〜約9重量%の範囲で存在するパラキシレンと混合キシレンを約8重量%〜約30重量%の範囲で含む。該芳香族生成システム1は、液化石油ガス(LPG)流16も通過させる。LPG流16は、水素分離・精製プロセスからの流出物であり、メチル(C)からブチル(C)炭化水素の範囲のものなどの軽質アルカン、および減少量の水素を含有する。LPG流16の混合水素に乏しいガスは、(例えば、水素抽出における)追加の精製に、ならびに該芳香族生成システム1の外の蒸気および発電用の高BTUボイラー供給として有用である。
【0017】
広い沸騰温度範囲の炭化水素原料は、炭化水素原料供給ライン10を用いて、水素化処理反応器20へ導入される。合わせた水素画分は、合わせた水素供給ライン22を用いて水素化処理反応器20へ導入される。図1に示すように、2つの水素含有流が合わさり、合わさった水素供給ライン22によって運ばれる含有物を形成する:水素は、補給水素供給ライン12を通り、高純度水素は精製水素再循環ライン52を通る。精製水素再循環ライン52は、水素抽出ユニット50を水素化処理反応器20に連結し、高純度水素を水素抽出ユニット50から水素化処理反応器20へ運ぶ。芳香族生成システム1は、該水素化処理反応器へ導入される広い沸騰温度範囲の炭化水素原料に対する合わせた水素の体積比が約0.1〜約10の範囲にあるように操作する。代替的に水素画分と呼ばれる水素供給原料は、「補給」水素および再循環される高純度水素を含む。代替実施形態において、水素抽出ユニット50は、さらに、芳香族化反応器システム40に連結することができる溶媒抽出システムを含む。
【0018】
水素化処理反応器20は、水素化処理生成物ライン24を用いて水素化分解生成物スプリッタ30と連結する。水素化処理生成物ライン24は、水素化処理反応器20から水素化分解生成物スプリッタ30に水素化処理生成物の混合物を運ぶ。さらなる実施形態において、水素化処理反応器20は、任意の供給ラインを用いて、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物などの炭化水素流を芳香族化反応器システム40へ運ぶための圧力スイング吸着(PSA)ユニットと連結されてもよい。水素化処理反応器20は、さらに、任意の供給ラインを用いて水素ガスおよび軽質炭化水素ガスを運ぶための圧力スイング吸着(PSA)ユニットと連結されてもよい。水素ガスまたは軽質炭化水素ガスは、任意の供給ラインを用いて、圧力スイング吸着(PSA)ユニットから水素化処理反応器20に戻されてよい。
【0019】
独立した流れ、または合わせた供給流として示されているが、炭化水素原料供給ライン10、補給水素供給ライン12および精製された水素再循環ライン52のそれぞれは、必要に応じて、事前に組み合わせることなく水素化処理反応器20に直接供給することができるか、または合わせた供給流として互いに導入することができる。
【0020】
水素化処理反応器20において、広い沸騰温度範囲の炭化水素原料および水素は、水素化処理触媒を含有する少なくとも1種類の水素化処理触媒床と接触する。本発明において使用するための水素化処理触媒は、米国特許第5,993,643号、同第6,515,032号、および同第7,462,276号に記載のものを含む;これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本発明は、さらに、広い沸騰温度範囲の炭化水素原料および水素がナフサ沸騰温度範囲の液体生成物を含む水素化処理生成物の混合物へ変換することができるように芳香族生成システムを操作させる工程を含む。原料の混合物は、いくつかの反応が同時に発生し得るような水素化処理条件下で水素化処理触媒床内の水素化処理触媒と接触する。本発明の水素化処理条件は、有機硫黄、窒素および金属化合物を除去し、硫化水素およびアンモニアなどのガスを形成するために、該水素化分解反応器が水素雰囲気中で水素化処理触媒を操作するのを可能にする。該水素化処理反応器はまた、該システムへ導入され、約220℃より高い真沸点(TBP)温度を示すパラフィン、ナフテンおよび芳香族が、約30℃〜約220℃であるナフサ沸騰温度範囲内のTBP温度を有するパラフィンに都合よく分解および飽和されるような水素化分解の厳しさで操作する。該生成物の組成は、ナフサ沸騰範囲の最高温度(約233℃)よりも高いTBP温度を有する炭化水素成分を有していない。このTBP温度低下も、水素化処理反応器の生成物組成が本質的に主にパラフィン系であることを保証するのに役立つ;しかし、該生成物は、必要に応じて、かなりの量の芳香族および/またはナフテンを含んでいてよい。いくつかの実施形態において、該芳香族生成システムの水素化処理反応器内の温度は、約200℃〜約600℃の範囲に維持される。さらなる実施形態において、該芳香族生成システムの水素化処理反応器内の圧力は、約5バール〜約200バールの範囲に維持される。特定の実施形態において、該芳香族生成システムの水素化処理反応器内の液空間速度(LHSV)は、約0.1時間−1〜約20時間−1の範囲に維持される。
【0022】
好ましい実施形態において、該芳香族生成システムは、水素化処理反応器内で水素化処理反応器の操作条件下で、広い沸騰温度範囲の炭化水素原料および水素との組合せならびに変換から水素化処理生成物の混合物を形成する。該水素化処理混合物は、軽質生成物ガス混合物、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物および未変換で、水素処理し、部分的に水素化分解した炭化水素画分を含む液体とガスの組合せである。いくつかの実施形態において、該芳香族生成システムは、広い沸騰温度範囲の炭化水素原料の、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物への第一パス変換率が、導入される広い沸騰範囲の凝縮物の約15%〜約75%の範囲にあるように操作する。
【0023】
芳香族生成システム1は、水素化処理生成物ライン24を用いて、水素化処理生成物の混合物を水素化処理反応器20から水素化分解生成物スプリッタ30に通過させるように操作可能である。軽質生成物流34は、水素化分解生成物スプリッタ30を水素抽出ユニット50と連結する。水素化分解生成物スプリッタ30はまた、ナフサ供給流36を用いて芳香族化反応器システム40と連結する。
【0024】
本発明は、水素化処理生成物の混合物が液体画分およびガス画分に選択的に分離されるような芳香族生成システムの操作を含み、ガス画分は軽質生成物ガス混合物であり、液体画分はナフサ沸騰温度範囲の液体生成物を含む。該軽質生成物ガス混合物は、主にメチル(C)からペンチル(C)の炭化水素範囲の水素および軽質アルカンの混合物であり、未処理混合物と比較して減少した量の硫化水素、アンモニアおよび水蒸気を含有してよい。いくつかの実施形態において、該芳香族生成システムは、軽質生成物ガス混合物が軽質生成物ガス混合物の約0.1重量%〜約50重量%を超える範囲で水素を含むように操作する。芳香族生成システム1は、水素化分解生成物スプリッタ30からの軽質生成物ガス混合物を通過させ、軽質生成物流34を使用して水素抽出ユニット50にそれを導入するように操作可能である。該軽質生成物ガス混合物は、総水素化処理生成物の混合物の約1重量%〜約15重量%で含まれてよい。
【0025】
本方法は、さらに、該芳香族生成システムを使用して、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物および未変換で、水素処理し、部分的に水素化分解した炭化水素生成物を選択的に分離する工程を含む。ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物は、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物の最大TBP温度(約233℃)よりも高いTBP温度を有する材料を有する、未変換で、水素処理し、部分的に水素化分解した炭化水素から水素化分解生成物スプリッタで分離された、約220℃以下のTBP温度を有する材料からなる。ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物および未変換で、水素処理し、部分的に水素化分解した炭化水素生成物は、当業者に公知の従来の蒸留法、ならびに充填されたキャピラリーカラム、分別および分離トレーならびにこれらの組合せなどの充填カラムを用いて分離することができる。特定の実施形態において、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物は、約150℃〜約220℃の範囲の高いTBP温度を有する。そのような実施形態において、液体の残りの部分を含む未変換で、水素処理し、部分的に水素化分解した炭化水素は、約233℃までのナフサ沸騰温度範囲の液体生成物の高いTBP温度より高いTBP温度を有する。いくつかの実施形態において、ナフサ沸騰温度液体生成物対水素化処理生成物の混合物の総量は、約5重量%〜約90重量%の範囲にある特定の実施形態において、未変換で、水素処理し、部分的に水素化分解した炭化水素対水素化処理生成物の混合物の総量は、約0.1重量%〜約95重量%の範囲にある。さらなる実施形態において、該芳香族生成システムは、約0.1重量%〜約49重量%の水素化処理生成物の混合物が再循環されて水素化処理反応器へ戻るように操作する。
【0026】
さらなる実施形態において、本方法は、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物がベンゼン、トルエンおよび混合キシレンを含む芳香族に富むシステム生成物へ変換されるように芳香族生成システムを操作させる工程を含む。図1は、ナフサ供給流36を用いて、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物を芳香族化反応器システム40へ導入するように操作可能である芳香族生成システム1を示す。芳香族生成物流14は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを含む芳香族に富むシステム生成物を、追加の処理および分離のために下流の、石油化学処理を含む芳香族生成システム1の外側に運ぶ。軽質生成物流42は、芳香族化反応器システム40から水素回収および再循環用の水素抽出ユニット50に水素に富むガス生成物を運ぶように操作可能である。
【0027】
さらなる実施形態において、該芳香族生成システムは、該水素抽出ユニットからの高純度水素が導入されるように操作させることができる。図1は、この任意の流路を示す破線の高純度水素供給ライン54を示す。いくつかの実施形態において、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物に対する高純度水素の体積比が約0.01〜約10の範囲に維持される。別々に導入される流れとして示されているが、供給流は該システムに別々に導入されるか、または該システム内で組み合わされてよい。
【0028】
該芳香族化反応器システムでは、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物は、芳香族化触媒を含有する少なくとも1種類の芳香族化触媒床と接触する。該触媒床は、移動床または固定床反応器であり得る。有用な芳香族化触媒は、国際公開第1998/036037号に記載のものを含む任意の選択的ナフサ改質触媒を含む。
【0029】
供給流は、導入され、いくつかの反応が同時に発生し得るような条件下で芳香族化触媒と接触し得る。該芳香族化反応器システムは、ナフサ沸騰温度範囲の液体生成物をヘキシル(C)からオクチル(C)炭化水素範囲内の芳香族生成物および水素に富むガス生成物へ変換することが可能な条件下で操作可能である。いくつかの実施形態において、該芳香族生成システムは、該芳香族化反応器システム内の温度が約200℃〜約600℃の範囲に維持されるように操作される。特定の実施形態において、該芳香族生成システムは、該芳香族化反応器システム内の圧力が約5バール〜約200バールの範囲に維持されるように操作される。さらなる実施形態において、該芳香族生成システムは、該芳香族化反応器システム内の液空間速度(LHSV)が約0.1時間−1〜約20時間−1の範囲に維持されるように操作される。
【0030】
好ましい実施形態において、該芳香族生成システムは、芳香族に富むシステム生成物への広い沸騰温度範囲の炭化水素原料の変換率が、導入される広い沸騰温度範囲の炭化水素原料の約50%〜約90%の範囲にあるように操作される。特定の実施形態において、芳香族に富むシステム生成物は、ヘキシル(C)からオクチル(C)の範囲内の芳香族を少なくとも30重量%〜約75重量%含む。いくつかの実施形態において、芳香族に富むシステム生成物は、ヘキシル(C)からオクチル(C)の範囲内の芳香族を少なくとも80重量%含む。さらなる実施形態において、芳香族に富むシステム生成物は、ヘキシル(C)からオクチル(C)の範囲内の芳香族を少なくとも90重量%含む。さらなる実施形態において、芳香族に富むシステム生成物は、ヘキシル(C)からオクチル(C)の範囲内の芳香族を少なくとも95重量%含む。
【0031】
芳香族に富むシステム生成物は、検出可能な量よりも少ないパラフィン、ナフテンおよびオレフィンを有する。いくつかの実施形態において、該芳香族生成システムは、芳香族に富むシステム生成物が芳香族に富むシステム生成物の約2重量%〜約30重量%の範囲でベンゼンを含むように操作される。さらなる実施形態において、該芳香族生成システムは、芳香族に富むシステム生成物が芳香族に富むシステム生成物の約10重量%〜約40重量%の範囲でトルエンを含むように操作される。さらに別の実施形態において、該芳香族生成システムは、芳香族に富むシステム生成物が芳香族に富むシステム生成物の約8重量%〜約30重量%の範囲でキシレンを含むように操作される。
【0032】
図1は、軽質生成物ガス流34を用いて水素化分解生成物スプリッタ30からの軽質生成物ガス混合物と、軽質生成物流36を用いて芳香族化反応器システム40からの水素に富むガス生成物の両方を水素抽出ユニット50へ運ぶように操作可能な芳香族生成システム1を示す。軽質生成物ガス流34と軽質生成物流42の両方は、水素抽出ユニット50で選択的に分離される水素および軽質アルカンを提供する。あるいは、軽質生成物ガス混合物および軽質生成物流は、事前に合わされて、水素抽出ユニット50へ導入されてよい。
【0033】
水素抽出ユニット50は、該芳香族生成システムが、導入されるガス混合物から水素を選択的に分離し、2種類の生成物:高純度水素および混合水素に乏しいガスを形成することができるように操作可能である。有用な水素抽出ユニットの例としては、圧力スイング吸着(PSA)システム、抽出蒸留システム、溶剤抽出膜セパレータおよびそれらの組合せが挙げられる。水素抽出ユニットの構成は、導入される混合ガス流の量、ならびに再導入のために生成された水素の量および純度を反映している。いくつかの実施形態において、該芳香族生成システムは、導入される混合ガスから生成された高純度水素が、導入される混合ガスの約70重量%〜約99重量%の範囲にあるように操作される。
【0034】
図1は、精製された水素再循環ライン52を用いて、高純度の水素を水素化処理反応器20に通過させる芳香族生成システム1を示す。必要に応じて、高純度の水素は、芳香族化反応を容易にするために、芳香族化反応器システム40に供給される。LPG流16は、副生成物流として芳香族生成システム1から混合水素に乏しいガスを通過させる。混合水素に乏しいガスは、蒸気および/もしくは電気需要を相殺するように、LPG燃料として、または工場内燃焼および発電のために分散されてよい。該芳香族生成システムは、混合水素に乏しいガスがメチル(C)からペンチル(C)の範囲内の炭化水素を約50重量%以上含むように操作される。
【0035】
広い沸騰温度範囲の炭化水素原料の例としては、表1に示す中東起源の2種類の有用な広い沸騰範囲の凝縮物を含む、広い沸騰範囲の凝縮物が挙げられる。天然ガス井、特に「タイトガス(tight gas)」地層は、本発明のための原料として有用である広い沸騰範囲の凝縮物炭化水素を生成することができる。広い沸騰範囲の凝縮物は、プロピル(C)からドデシル(C12)の範囲内の軽油液を生成する天然ガス貯蔵所、軽質凝縮物貯蔵所、天然ガス液、頁岩ガスおよび他のガス貯蔵所または液体炭化水素含有貯蔵所などの天然の炭化水素含有供給源に由来し得る。
【0036】
広い沸騰温度範囲の炭化水素原料の別の例としては、約39.5〜約51.1の範囲のAPI比重値を示す、表2に記載の中東アラビアン超軽質(ASL)原油を含む「超軽質(super light)」原油が挙げられる。本発明によれば、超軽質原油は、天然炭化水素含有供給源または合成源に由来し得る。
【0037】
広い沸騰温度範囲の凝縮物は、硫黄重量基準で約200ppm〜約600ppmの範囲で硫黄含有ヘテロ有機化合物を含有する。超軽質原油は、硫黄重量基準で約100ppm〜約300ppmの範囲の硫黄含有ヘテロ有機化合物を含有する。このような硫黄含有ヘテロ有機化合物には、硫化水素および脂肪族メルカプタン、硫化物ならびにジスルフィドが含まれる。好ましい実施形態において、本発明は、広い沸騰温度範囲の凝縮物中の硫黄含有ヘテロ有機化合物および元素硫黄に起因する硫黄レベルを有利に低下させる。該化合物は、硫化水素へ変換され、水素化処理反応器から発生するか、または水素化処理反応器の中に収集することができる。
【0038】
広い沸騰温度範囲の炭化水素原料は、バナジウム、ニッケル、コバルトおよび鉄などの遷移金属を含むがこれらに限定されない金属含有ヘテロ有機化合物、ならびにナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムを含むがこれらに限定されないアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含有し得る。バナジウムなどの遷移金属は、水素化処理触媒を被毒化することが可能である。広い沸騰範囲の凝縮物中の総金属は、典型的には、金属−炭化水素原料に基づいて約50ppm以下まで制限される。超軽質原油中の総金属は、金属−炭化水素原料に基づいて約60ppm以下まで制限される。
【0039】
広い沸騰温度範囲の炭化水素原料はまた、ピリジン、キノロン、イソキノリン、アクリジン、ピロール、インドールおよびカルバゾールを含む少量の窒素含有化合物を含有する。本発明によれば、窒素レベルは、総ピリジン、キノロン、イソキノリンおよびアクリジン、ならびに硝酸塩などの窒素含有塩の量であり、広い沸騰範囲の凝縮物において、窒素重量に基づいて約600ppm以下まで制限される。超軽質原油中の全窒素レベルは、金属−炭化水素原料に基づいて約350ppm以下まで制限される。
【0040】
広い沸騰範囲の凝縮物は、実質的な量のパラフィン、ナフテンおよび芳香族を含むが、典型的には、検出可能な量よりも少ないオレフィンを有する。いくつかの実施形態において、広い沸騰範囲の凝縮物は、広い沸騰範囲の凝縮物の約60重量%〜約100重量%の範囲でパラフィンを含む。さらなる実施形態において、広い沸騰範囲の凝縮物は、広い沸騰範囲の凝縮物の約60重量%〜約100重量%の範囲でナフテンを含む。さらに別の実施形態において、広い沸騰範囲の凝縮物は、広い沸騰範囲の凝縮物の約0.1重量%〜約40重量%の範囲で芳香族を含む。該超軽質原油は、同量のパラフィン、ナフテンおよび芳香族を含むが、同様に検出可能な量よりも少ないオレフィンを有する。
【0041】
有用な広い沸騰範囲の凝縮物は、ナフサ沸騰温度範囲内の真沸点(TBP)蒸留温度を有するかなりの部分の凝縮物を含む。表1に示すように、両方の凝縮物は、全材料の約30重量%が約233℃より高いTBP温度を有する。約233℃よりも高いTBP温度を有する凝縮物の部分は、ガス油沸点温度範囲の材料であり、これはディーゼル燃料を生成するために使用することができる。本方法の実施形態において、広い沸騰範囲の凝縮物の一部は、233℃より高い真沸点(TBP)温度を有する。本方法のさらなる実施形態において、233℃より高いTBP温度を有する部分は、導入される広い沸騰範囲の凝縮物の約75重量%までで含まれる。いくつかの実施形態において、広い沸騰範囲の凝縮物は、約400℃〜約565℃の範囲で最終沸点(FBP)温度を有する。
【0042】
表2は、ナフサ沸騰温度範囲内の真沸点(TBP)蒸留温度を有する実質的な化学部分を含む超軽質原油由来のデータを示し、両方の凝縮物は全材料の約35重量%が約212℃より高いTBP温度を有する。約212℃より高いTBP温度を有する超軽質原油の部分は、ディーゼルおよび重質燃料油へ変換することができるガス油および燃料油の沸点温度範囲の材料である。いくつかの実施形態において、超軽質原油の一部は、212℃より高い真沸点(TBP)温度を有する。さらなる実施形態において、212℃より高いTBP温度を有する部分は、導入される超軽質原油の約50重量%までで含まれる。特定の実施形態において、該超軽質原油は、約600℃〜約900℃の範囲、好ましくは、約700℃〜約800℃の範囲で最終沸点(FBP)温度を有する。
【0043】
広い沸騰温度範囲の炭化水素原料は、材料の一部が約25℃未満のTBP温度を有する。表1の2種類の広い沸騰範囲の凝縮物については、約25℃未満のTBP温度を有する材料の部分は、全材料の約5重量%で含まれるが、表2の超軽質原油は、全材料の約3重量%〜約6重量%で含まれる。広い沸騰温度範囲の炭化水素原料のこの画分は、水素化処理を支持するためのLPGおよび/または水素ガスとして収集することができる。いくつかの実施形態において、広い沸騰温度範囲の炭化水素原料の一部は、約25℃未満の真沸点(TBP)温度を有する。さらなる実施形態において、該部分は、該原料の約20重量%までで含まれる。
【表1】
【表2】
【0044】
表1の広い沸騰範囲の凝縮物および表2の超軽質原油は、芳香族化プロセスへの導入前に特定の問題が対処されると、芳香族化を含む触媒ナフサ改質プロセスのための良好な広い沸騰温度範囲の炭化水素原料になる。例えば、原料中のヘテロ有機硫黄および金属化合物が除去されると、改質触媒の品質が有益に保たれる。加えて、これらの原料の高沸点材料をより軽質のナフサ沸騰温度範囲の液体に水素化分解すると、得られる炭化水素液体の処理のエネルギー消費がより少なくなり、補助的水素の必要性が低減される。原料中の最も軽質な材料、すなわち、約25℃未満のTBP温度を有する材料の除去は、触媒ナフサ改質に使用される装置のサイズおよび容積要件を有利に低減する。典型的には、LPGを含む低温沸騰物質は、該プロセスにおいて希釈剤として作用する。そうでなければ、これらの軽質材料は、炭素含有量が多い炭化水素よりも水素化分解のために外部エネルギーを多く必要とする。したがって、広い沸騰温度範囲の炭化水素原料の排除により、炭素含有材料が多く高濃度の水素化分解と同一の処理をより低い処理温度で実現可能であり、エネルギーの消費およびコストを有利に低減できる。
【0045】
本発明を詳細に説明してきたが、様々な変更、置換、および改変が、本発明の原理および範囲から逸脱することなく本発明でなされ得ることが理解されるべきである。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの適切な合法的均等物によって決定されるべきである。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められている。本発明の実施において十分に機能するために以下の実施例に開示された技術および組成物は、本発明者らによって発見された技術および組成物を表し、ゆえに、その実践に好ましい様式を構成するように考慮され得ることが当業者によって理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変更が、開示される特定の実施形態においてなされ、さらに同様または類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0047】
[実施例1]
本発明の実施形態によれば、粗製コンディショナーを、炭化水素を含む水素処理および水素化分解の反応の両方の動力学プロセスを組み込むことができるHYSYS水素化処理モデルを使用してモデル化した。粗製コンディショナーモデルを、以前の試験から得られた粗製コンディショナーパイロットプラント試験データと一致するように較正した。粗製コンディショナーモデルユニットを用いて、アラブエキストラライト(AXL)原油およびKuffガス凝縮物(KGC)のアップグレードならびに改善を含むがこれらに限定されない、原油および天然ガスの精製ならびに処理に関連する特性を評価し、予測することができる。
【0048】
AXL原油、KGCおよび水素ガスを該粗製コンディショナーに供給した。供給流の調整を、較正したHYSYS動力学モデルを用いて行う。該HYSYSモデルは、3つの反応器床、高圧分離器、再循環圧縮機および水素再循環ループを含み、図2に示すように、較正において反応器と水素再循環ループの両方を考慮に入れるようにする。
【0049】
図2に示すように、高圧分離器からの高圧分離ガスおよびHPS液体流出物はメインフローシートに出て、高圧分離器からの液体は、硫化水素(HS)吸収剤および全てのHSを含む構成要素スプリッタに進み、水素(H)、アンモニア(NH)および水(HO)が除去される。得られた液体炭化水素流は構成要素スプリッタへ送られ、そこで流出物は、炭化水素流カットポイントの合計沸点(TBP)温度に基づいて水素画分に分離され、得られる収量が計算される。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のHYSYS水素化処理モデルは、水素ガスなどの化合物を含み、分子の複雑さを増加させ得る1種以上の原料、例えば、47個の炭素原子を含む、最高で約50個の炭素原子を含有する炭化水素化合物を特徴付けるために、142の変数または「偽構成要素」のセットを使用する。「偽構成要素」の構成要素は、特定の実施形態において、一連の177の反応経路を含むモデルを含む最高で約200の反応経路を含むことができ、代替的に「反応ネットワーク」と呼ばれる一連の反応経路をモデル化するために使用される。本明細書に記載の構成要素および反応ネットワーク(複数可)は、当業者に公知の水素化処理反応と一致している。
【0051】
軽質ガス(C3(プロパン)およびそれより軽質のもの)を含む化合物は、本明細書に記載のモデル化においてメタン、エタンおよびプロパンならびに関連誘導体として計算した。C4(ブタン)からC10(デカン)の範囲の炭化水素種については、1種類の純粋成分を、いくつかの異性体を表すために使用した。例えば、n−ブタンに関連する特性を、n−ブタンとイソブタンの両方の特性を表すために使用した。より多数の炭素原子を有する炭化水素化合物については、14、18、26、および47の炭素数の値が、より高い(10個を上回る炭素数の)炭化水素化合物画分中の広い沸点範囲の成分を代表することが判明したので、これらの炭素数を有する化合物を使用した。
【0052】
本明細書に記載の水素化処理モデルで使用した成分はまた、芳香族およびナフテン系を含む単環(1つの環)から4環(4つの環)の炭素種を含む異なるクラスの炭化水素を含む。13種の硫黄成分が供給中の硫黄化合物の分布を表すために使用され、10種の塩基性および非塩基性の窒素成分を利用した。本明細書に記載のHYSYS水素化処理モデルは、遷移金属錯体またはアスファルテンなどの金属を追跡しないので、これらの化合物はモデル化から除外した。AXL原油(表3)およびKGC(表4)アッセイの供給フィンガープリント結果を表3および4に示す:
【表3】
【表4】
【0053】
粗製コンディショナーモデルを用いて、AXLおよびKGCアッセイの水素化処理結果を予測した。未処理のAXL原油と水素化処理したAXL原油との比較(表5)および未処理のKGCと水素化処理したKGC(表6)との比較の結果は以下の通りである:
【表5】
【表6】
表7および8は、粗製コンディショニングユニット(CCU)のある場合とない場合で処理したAXL原油の1日あたり100,000バレル(bbl/日)を処理するユニットの予測される収量変化を示す:
【表7】
【表8】
【0054】
表8に示すように、ナフサ収量の有意な増加が、粗製コンディショナーユニット内のAXL原油の処理後に観察された。さらに、70〜220℃のナフサカットは、AXL原油処理による芳香族およびナフテン含有量のレベルの増加ならびにパラフィン含有量の減少を示した。これらの結果は、通常の蒸留と比較したナフサ収量の増加と、ナフサ芳香族種を含む、生成されたナフサの品質の向上の両方を示す。得られたナフサ流で生成された芳香族含有量の増加は、いくつかの実施形態において、貴重な芳香族を単離するためにベンゼン−トルエン−エチルベンゼン−キシレン(BTEX)抽出ユニットを使用して有利に抽出することができる。
【0055】
加えて、改善されたディーゼルおよび関連する炭化水素画分が観察された。AXL原油から生成される「ディーゼルカット(diesel cut)」は、蒸留ルートで現れる硫黄および他の汚染物質が非常に少ない量か全く存在しないため、例えば、原油蒸留で生成されるディーゼルと比較して、有利に品質が高い。同様に、上述した「ナフサカット(naphtha cut)」は、原油蒸留で生成されるナフサと比較して、硫黄および他の汚染物質を除去するための処理を必要としない。
【0056】
KGC炭化水素処理に関しては、この供給流を、粗製コンディショナー(水素化処理)ユニットを使用して処理すると、ナフサ収量も有利に増加する。70℃〜220℃のナフサカットは、さらに、KGCの水素化処理の際に、生成される芳香族のレベルの実質的な増加およびパラフィン含有量の低下を示した。得られた芳香族は、いくつかの実施形態において、さらなる処理のための触媒改質ユニットにナフサを送る前に反応器流出物から容易に抽出することができる。ナフサ流中の増加した芳香族含有量は、任意のBTEX抽出ユニットで抽出することができ、ナフテン含有量は、触媒ナフサ改質ユニット中で芳香族へ容易に変換することができる。AXL原油と同様に、処理したKGCも、改善されたディーゼル範囲の収量または「ディーゼルカット収量(diesel cut yield)」をもたらした。
【0057】
文脈上明確に特に指示がない限り、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その」は、複数の言及を含む。
【0058】
「任意の(Optional)」または「任意に(optionally)」は、その後に記載の構成要素が存在しても、しなくてもよいか、またはその事象もしくは状況が生じても、生じなくてもよいことを意味する。この記述は、構成要素が存在する場合および構成要素が存在し無い場合、ならびにその事象もしくは状況が生じる場合およびその事象もしくは状況が生じない場合を含む。動詞「連結(couple)」およびそのコンジュゲート形態は、2以上の前もって結合されていない物体から単一の物体を形成するために、電気的接合、機械的接合または流体接合を含む、任意の種類の必要な接合を完成することを意味する。第1の装置が第2の装置と連結する場合、接続は、直接または共通のコネクタを介して生じ得る。この記述は、事象または状況が生じる場合および事象または状況が生じない場合を含む。「操作可能(operable)」およびその様々な形態は、その適切な機能に適合し、その意図された使用のために使用することができることも意味する。
【0059】
範囲は、1つの特定のおよその値から、および/または別の特定のおよその値として本明細書で表され得る。そのような範囲が表される場合、別の実施形態が、前記範囲内の全ての組合せと共に、1つの特定の値から、および/または他の特定の値であることを理解されたい。値の範囲は、本明細書に記載されるか、または参照されている場合に、区間が、上限値と下限値の間の各介在値ならびに上限および下限を包含し、提供される任意の特定の除外を条件とするより小さな区間の範囲を含む。
【0060】
空間的用語は、別の物体または物体のグループに対する、物体または物体のグループの相対的な位置を説明する。空間的関係は、縦軸および横軸に沿って適用される。配向ならびに「上流(upstream)」、「下流(downstream)」および他の同様の用語を含む関連性のある言葉は、説明の便宜のためのものであり、特に示されない限り限定するものではない。
【0061】
2以上の定義された工程を含む方法が本明細書に記載または参照される場合は、定義された工程は、文脈がその可能性を排除する場合を除いて、任意の順序でまたは同時に行うことができる。
【0062】
特許または刊行物が参照されている本出願を通して、これらの参考文献の開示はその全体が、これらの参考文献が本明細書でなされる開示と矛盾する場合を除いて、本発明が属する技術分野の状態をより完全に説明するために、本出願に参照により組み込まれることが意図される。
図1
図2