特許第6481033号(P6481033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481033
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】撚り対線を有するケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/00 20060101AFI20190304BHJP
   H01B 11/20 20060101ALI20190304BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20190304BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   H01B11/00 J
   H01B11/20
   H01B7/18 D
   H01B7/00 310
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-528537(P2017-528537)
(86)(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公表番号】特表2017-536679(P2017-536679A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015002384
(87)【国際公開番号】WO2016082935
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】202014009498.5
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506333314
【氏名又は名称】ローゼンベルガー ホーフフレクベンツテクニーク ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クンツ
(72)【発明者】
【氏名】グンナル アルムブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス レディング
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/080103(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/092812(WO,A1)
【文献】 特開2008−016400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動データ信号の伝送のためにそれぞれ構成されている少なくとも2本の対線(112,114)を備えるケーブル(10)、特にUSBケーブルであって、
前記少なくとも2本の対線(112,114)が、共通の撚り中心(20)の周りに螺旋配置でケーブル(L)の長手方向に延伸し、
少なくとも1本の補助の対線(116)が独立のシールドを有しておらず、前記補助の対線(116)の線が、特に前記撚り中心(20)の両側で互いに距離を置いて配置され、前記補助の対線(116)の前記線は、全ての対線(112,114,116)の周りの共通接地シールド(30)に隣接して配置されることを特徴とするケーブル。
【請求項2】
前記共通の撚り中心(20)の周りに螺旋配置で延伸する3本の対線(12,14,16)を特徴とし、前記ケーブル(10)が好ましくはUSB3ケーブルである請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記共通の撚り中心(20)が、好ましくは前記ケーブルの中心を通る補助の線(22)、特に前記USBケーブルの通電線を包含することを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記補助の線が、前記対線(12,14,16)の導体(25)よりも大きい断面積を持つ導体(24)を有することを特徴とする請求項3に記載のケーブル。
【請求項5】
前記補助の線(22)の導体(24)の断面積が0.5mm2より大きくて1mm2より小さく、特に0.75mm2であることを特徴とする請求項3または4に記載のケーブル。
【請求項6】
前記ケーブルは、USBケーブルであって、前記共通接地シールド(30)が前記USBケーブルの接地導体を形成することを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
【請求項7】
前記対線(12,14,16)の前記螺旋配置の撚りの長さが40mmより大きくて120mmより小さく、好ましくは60mmより大きくて100mmより小さく、特に80mmであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項8】
前記ケーブルを通る断面において、前記対線(12)の線(13)の間の距離がそれぞれ、隣接する対線(12,14)の間の距離より小さいことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項9】
少なくとも2本の対線(12,4)、特にすべての対線の各々が、好ましくは前記対線を覆う箔のシールドの形式の独立のシールド(15)を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項10】
一方では2本の対線(112,114)、他方では前記補助の対線(116)の2本の線が前記撚り中心(20)の両側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のケーブル(10”)。
【請求項11】
前記ケーブルを通る断面において、前記対線(12,14,16)の個々の線(13)の各々が、前記撚り中心(20)から実質的に同じ距離に配置されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項12】
前記ケーブルを通る断面において、前記対線(12,14,16)が前記撚り中心(20)についての実質的な回転対称状態で配置されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項13】
前記ケーブルの前記長手方向(L)にロープ状に延伸して、前記対線(12,14,16)とともに前記共通の撚り中心(20)の周りに螺旋配置で延伸するとともに、前記対線(12,14,16)の間に所定の距離を確保する充填要素(40,41)を特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項14】
前記ケーブルの前記長手方向(L)にロープ状に延伸して、前記対線(12,14,16)とともに前記共通の撚り中心(20)の周りに螺旋配置で延伸し、前記対線(12,14,16)の間に所定の距離を確保し、前記撚り中心(20)に成形される充填要素(40a)を特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項15】
共通の電気絶縁シースで被覆された対線(112,114)による2本の電気導体を特徴とする請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項16】
楕円形断面を持つ電気絶縁シースで被覆された個々の線(116)による電気導体を特徴とする請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動データ信号の伝送のためにそれぞれが構成されている少なくとも2本の対線を有するケーブルに関する。特に本発明は、USBケーブル、例えばUSB3.0ケーブルまたはUSB3.1ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
USB信号の伝送は、極めて広範囲の技術的用途に必要である。例えば、USBデバイスの挿嵌を可能にするため、USBソケットが車両の後部に求められ、これは、USBケーブルが前部から後部まで車両の中を通される必要があることを意味する。USBデバイスの接続のため、多様な場所(オフィス、公的機関、輸送手段など)でもUSBソケットやUSB接続が必要とされ、この目的のためUSBケーブルが敷設される必要がある。
【0003】
従来のUSB2インタフェース(例えばUSB2.0インタフェース)は、1本の信号対線(D+およびD)と給電用対線(GND,VBUS)のみを有する。データ伝送は信号対線を介して対称的に行われ、信号対線の1本の線を通してデータ信号(「信号部」)が伝送され、対応の反転データ信号(「基準部」)は他の線を通して伝送される。この目的のため、USB2信号の伝送のためのケーブルは、伝送干渉を最小にするため2本のツイスト、且つ、シールドされた線を信号導体対として使用する。信号の受信器は、信号対線を介して差動伝送されるデータ信号の差動電圧を判断するため、信号対線の両線に等しい程度に作用する干渉信号が除去される。
【0004】
数年前に、USB3規格が導入された。USB3インタフェース(例えばUSB3.0インタフェース)は、上に説明した接続(D+,D−,GND,VBUS)に加えて、少なくとも2本の補助の信号対線(SSTX+およびSSTX−;SSRX+およびSSRX−)を有する。差動データ信号は、これら2本の信号対線の各々を介して伝送される。全体的にこれは、従来のUSB2規格の場合より高いデータ速度が実現されることを可能にする。
【0005】
従来のUSB3.0ケーブルが、図2に図示されている。これは3本のツイストされた対線(ツイストされたペア112,114,116)を示しており、各々が差動データ信号の伝送のために構成されている。ドレイン線115の形の接地導体はそれぞれ、ツイスト対線に隣接して設けられる。加えて、2本の(非ツイスト)線122,124が給電のために設けられている。個々の対線はそれぞれ箔のシールドに覆われ、すべての線が共通のシールド130と保護シース150とにより覆われている。加えて、ケーブルが断面において丸いことを保証するため、充填要素140が設けられる。
【0006】
このような従来の線配置では、ケーブルの対線の経路とその間の距離とに応じて、強度の変化するクロストークが個々の対線の間に発生しうることが分かっている。また、従来のUSB3.0ケーブルは比較的肉厚であって、簡単で省スペースの設置を困難にする。
【0007】
特許文献1および特許文献2から周知であるのは、差動データ信号の伝送のための少なくとも2本の対線を備えるケーブルであり、少なくとも2本の対線は共通の撚り中心の周りに螺旋配置でケーブルの長手方向に延伸する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2013/033950号明細書
【特許文献2】米国特許第6,452,107号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題を考慮すると、上述したタイプのケーブルをよりコンパクトにするのと同時に、外部干渉と隣接の対線により生じる干渉とに対する十分な防御を保証することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は請求項1に記載のケーブルによって解決される。本発明のさらに有効な発展例は、従属請求項に記載されている。本発明によるケーブルでは、少なくとも2本の対線が共通の撚り中心の周りに螺旋配置でケーブルの長手方向に延伸する。
【0011】
言い換えると、対線の個々の線はそれぞれ一緒にツイストされず、むしろ対線が共通の撚り中心の周りで一緒に撚り加工される。また、本発明による撚り加工のため、個々の対線の相互経路とケーブルに沿って隣接する対線からの距離とがそれぞれ予め決定されるため、予測可能な一定のケーブル単位長あたりクロストークレベルが予想される。また、撚り中心の周りにおける個々の対線の整然とした経路のため、ケーブルは、従来のケーブルよりもコンパクトで、ゆえに細くて省スペースでもあり、その結果、設置に関わる労力と輸送コストとが削減可能である。
【0012】
本発明によれば、ケーブルの少なくとも2本の対線、USB3ケーブルの場合は2本の超高速対が独立のシールドを有しているが、ケーブルの少なくとも第3の対線、USB3ケーブルの場合は高速対D+,D−は独立のシールドを有していない。この後者の場合に、第3の対線の線が、好ましくは撚り中心の両側で、互いに良好な距離を置いてケーブル内に配置されると有効である。特に、この後者の場合には、第3の対線の2本の線が、すべての対線を覆う共通のシールドに隣接して配置されて、接地された「共通」のシールドへのこれらの線の最大限の結合が保証されると有効である。この場合、第3の対線の線から始まる電界がそれぞれ、通電線が通るケーブルの中心の方向ではなく近くの共通のシールドの方向に向くので、通電線から下のケーブルの中心への減結合に優れた、第3の対線を介した「疑似接地基準による伝送」と呼ぶことができる。
【0013】
同等の内部導体または線断面を持つ従来のケーブル、例えば図2に図示されているようなUSB3.xケーブルと比較して、本発明による対線の配置は、約20%から約40%、特に約30%のケーブル直径の縮小を可能にする。例えば、同等の線断面を持つ従来のUSB3ケーブルは、7mmと8mmとの間のケーブル直径を有する。対照的に、本発明によるUSB3ケーブルは、5と6mmの間、特に約5.5mmのケーブル直径を有する。
【0014】
好ましくは、本発明によるケーブルは、共通の撚り中心の周りに螺旋配置で延伸するちょうど3本の対線を有する。ケーブルがUSB3.xケーブルである場合、3本の対線は、上述した導体対SSTX+およびSSTX−;SSRX+およびSSRX−;D+およびD−を表す。代替的に、それぞれ差動信号の伝送のために構成された4本以上の対線も可能である。
【0015】
特にコンパクト設計のケーブルを実現するため、好ましくはケーブルの中心を通る補助の線、特にUSBケーブルの通電線(VBUS)、を有する共通の撚り中心が有効であることが確認されている。ケーブルの中心を通る補助の線の形で撚り中心を設けて、その周りに対線を螺旋配置で延伸させることにより、多量の充填要素を必要とせずに簡単な手段により所望のケーブル真円度も保証可能である。
【0016】
好ましくは、補助の線は、差動対線の導体より大きな断面積を持つ導体を有する。一方では、これは補助の線の周りでの撚線の製造を可能にする。例えば、補助の線の断面積は、その周りに撚り加工される対線の数に応じて増大する。また、大きな導体断面積を持つ線を介して、高い電流強度または高い電力が伝達可能である。対線の個々の線の導体直径は、好ましくは補助の線の導体直径の大きさの半分より小さい。
【0017】
例えばUSBポートを介したモバイルデバイスの急速充填に求められる、おそらく必要な2A以上の高い電流強度を可能にするため、補助の線の導体の断面積が0.5mmより大きくて1.5mmより小さく、特に約0.75mmであると好都合であることが確認されている。本発明によるケーブルが自動車用途に使用される際には特に、本発明によるケーブルを介して高い電力がすでに伝達可能であるので、USBケーブルに加えて補助の電力ケーブルを敷設することがこの場合には不要にできる。
【0018】
好ましくは、補助の線の導体は、それぞれ0.5mmより小さく、特に0.25mmより小さい直径を持つ、10本以上の、特に15本以上の銅線を包含する。補助の線の絶縁体は、HF技術における「不良」材料、すなわち高い散逸係数または高い減衰率を持つ材料から成る。例えば、補助の線の絶縁体はPVC絶縁体である。このようにして、例えばSSTX/SSRX対線の間の結合増加を招きうるケーブル内での干渉伝搬が付加的に抑制可能である。
【0019】
USBケーブルは概して、例えば編組されたシールドの形式のシールドを有する。好ましくは、すべての対線を覆うこのような共通のシールドも、本発明によるケーブルに設けられる。このシールドは好ましくは接地され、特に好ましくはケーブルの接地導体(GND)を形成する。これは、補助の線の形で従来のUSBに存在する接地導体(図2の参照番号124)がそのケーブルでは不要になることを意味する。言い換えると、いずれにしても存在するシールドが接地導体を形成し、その結果としてケーブルのコンパクト性がさらに向上するのと同時に、シールド効果を維持する。特に、この場合には撚り中心を、単線、すなわちUSBケーブルの通電線の形で設計することが可能であり、これは、他の干渉発生線が存在しないため撚りケーブルの製造を簡単にする。
【0020】
外部干渉の効果的な抑制を実現するため、個々の対線の螺旋配置の撚りの長さが40mmより大きくて120mmより小さく、好ましくは60mmより大きくて100mmより小さく、特に約80mmであると好都合であることが確認されている。撚りの長さは、対線が撚り中心の周りに360°巻き付けられるのに必要であるケーブルの長手方向距離の長さである。
【0021】
同時に、好ましくはケーブルを通る(すべての)断面において、対線の線間距離は隣接の対線との間の距離より短い。特に、少なくとも2本の対線の2本の線は、次に近い対線と距離を保ちながら、互いにすぐ隣接して位置する。この目的のため、個々の対線の間にスペーサ要素が設けられ、スペーサ要素は、対線とともに共通の撚り中心の周りに撚り加工される。その結果、個々の対線は、特に整然としたコンパクトな配置でケーブル内を通る。
【0022】
本発明の他の実施形態では、少なくとも2本の対線の2本の線がそれぞれ互いに隣接して配置されるのに対して、少なくとも第3の対線の2本の線は互いに距離を置いて配置される。例えば、第3の対線の2本の線は撚り中心の両側に配置される、および/または、それぞれ他の2本の対線に対して約90°オフセットしている。好ましくは、第3の対線はUSBケーブルの高速対線(D+およびD−)であり、他の2本の対線はUSBケーブルの超高速対線(SSTX+およびSSTX−;SSRX+およびSSRX−)である。重要なのは、少なくとも1本の第3の対線の線も共通の撚り中心の周りに撚り加工されることである。好ましくは、少なくとも2本の対線は、好ましくは対線を封入する箔のシールドの形式の独立のシールドを有する。コンパクトな配置を実現するため、こうして個々の対線の箔のシールドはそれぞれ、撚り中心を形成する補助の線に正接している。
【0023】
本発明の特に好適な実施形態において、対線を覆うシールド、例えば箔のシールドはそれぞれ、上述した、すべての対線を覆うケーブルの一括シールド(「共通のシールド」)と電気接触する。共通のシールドが接地される場合、これは、個々の対線シールドも接地されるか共通の電気レベルにあることを意味する。ゆえに、製造プロセスの結果生じる箔シールドのギャップはそれぞれ径方向の外側を向いて共通のシールドに面していると好都合であることが確認されている。さらに、この場合、従来のケーブルでは概して対線の2本の線に加えて箔のシールド内に設けられる接地導体、例えばドレイン線が不要になる。
【0024】
ケーブルを通る(すべての)断面で、対線の個々の線の各々が撚り中心から実質的に同じ距離に配置されると好都合であることも確認されている。言い換えると、対線の個々の線の中心の各々は、撚り中心の周りの円上に位置する。
【0025】
ケーブルを通る(すべての)断面で、対線が撚り中心についての実質的な回転対称状態で配置されるという点で、ケーブルのコンパクト性がさらに向上する。特に好ましくは、対線(または対線の線中心)はそれぞれ、撚り中心を包囲する正三角形や正方形の辺の上に実質的に位置している。正三角形の場合には、最大3本の対線が―三角形の各辺に1本ずつ―設けられ、正方形の場合には、最大4本の対線が―正方形の各辺に1本ずつ―設けられる。
【0026】
ケーブルの長手方向にロープ状に延伸して対線とともに共通の撚り中心の周りに螺旋配置で延伸しうる充填要素によって、個々の対線の間に所定の距離が確保可能である。代替的または付加的に、全体として実質的に円形のケーブル断面が結果的に得られるように、充填要素がケーブルに配置可能である。代替的または付加的に、対線の線の断面と実質的に対応する断面を有する充填要素が設けられるため、対線ばかりでなく、対になった充填要素も撚り中心の周りに螺旋配置で延伸し、全体として回転対称配置を形成する。例えば、ケーブルを通る断面で、3本の対線と一対の充填要素とが正方形の四辺に位置し、共通の撚り中心の周りで撚り加工される。
【0027】
好適な実施形態において、対線と、中央に配置された補助の線とに加えて、補助の導体がケーブルの中を通る。これらの補助の導体は、要件に応じて、データ信号、制御信号、電流その他の伝送のために設けられる。補助の導体は、必ずしも共通の撚り中心の周りに螺旋配置で通る必要はない。必要であれば線形経路を辿ってもよい。代替的または付加的に、補助の導体が上述したロープ状の充填要素の代わりに、ケーブル内のそれらの位置に装填される。
【0028】
好ましくは、ケーブルの各断面において、対になった線と交差しない、対になった線の間で、撚り中心を通る直線が各対線に割り当てられる。
【0029】
好適な実施形態において、充填要素は、ケーブルの長手方向にロープ状に延伸し、対線とともに共通の撚り中心の周りに螺旋配置で延伸して、対線の間に所定の距離を確保し、撚り中心の上に成形される。これは、独立した充填要素のような個別部品の形の充填要素を不要にすることができ、この方法により、ケーブルの製造とともに製造関連の物流を簡単にする。成形された充填要素は、撚り中心の線を被覆する絶縁体に使用される材料で形成可能である。これは、撚り中心が、一体成形された充填要素を有する単体として形成可能で、線および/または対線が部分的に埋設される溝や凹部を形成できることを意味する。
【0030】
好適な実施形態において、対線の2本の電気導体は共通の電気絶縁シースで被覆される。これは、このような対線の製造を簡単にする。
【0031】
好適な実施形態において、個々の線の電気導体は、楕円形断面を持つ電気絶縁シースで被覆可能である。個々の線は補助の対線の2本の線の一方である。これも、充填要素を不要にすることを可能にし、そのためケーブルの製造を簡単にする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
以下の記載において、文章では詳細に説明されない発明に重要な発明の詳細を示す添付図面を参照して、本発明が記載される。
図1a】本発明によるケーブルの第一実施形態の断面図(左)と側面図(右)とを示す。
図1b】本発明によるケーブルの第二実施形態の断面図(左)と側面図(右)とを示す。
図2】従来のUSB3.0ケーブルの断面図を示す。
図3】本発明によるケーブルの第三実施形態の断面図を示す。
図4a】本発明によるケーブルの第四実施形態の断面図を示す。
図4b】本発明によるケーブルの対線のさらなる実施形態の断面図を示す。
図5】本発明によるケーブルの第五実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1aにおいて、本発明の第一実施形態の断面図が左に図示され、この実施形態の長手方向の様子が一部切除された側面図で右に図示されている。これは、合計3本の対線12,14,16を有するUSB3.xケーブル10を示し、対線の各々は差動データ信号の伝送のために構成されている。各対線は、互いに隣りに通る2本の隣接する線13を有し、独立のシールド15、例えば箔のシールドにより覆われている。
【0034】
個々の線13はスズ銅線から成り、0.05と0.2mmの間の導体断面積とPP絶縁体とを有する。
【0035】
対線は、共通の撚り中心20の周りに螺旋配置でケーブル10の長手方向Lに延伸し、ケーブルの中心を通る大きな導体直径Xを持つ補助の線22により、撚り中心が形成される。言い換えると、個々の対線の線は一緒にツイストされるのでなく、むしろ対線が一緒に撚り加工されて単一の撚線を形成し、これは特にコンパクトで安定したケーブルをもたらす。撚り加工の撚りの長さは約80mmに達し、要件に応じて、また対線の数と撚り中心20の直径とに応じて、他の撚りの長さも可能である。ケーブルの全径は5mmと6mmとの間に位置する。同等の従来USBケーブルは約20%から40%だけ大きい全径を有する。
【0036】
補助の線22の導体24の断面積は約0.75mmであるのに対して、対線12,14,16の導体25の断面積は約0.14mmである。これは、対線の導体25の直径Yが導体24の直径Xの大きさの半分未満であることを意味する。中心の補助の線22は、2Aよりも大きい高電流の伝送のために構成されている。これは、USBケーブルの通電線を形成する。
【0037】
ケーブル10は、スズ銅線で作られた編組体の形式ですべての線を覆ってUSBケーブルの接地導体を形成する共通のシールド30も含む。そのためケーブルの内部を通る補助の接地線は不要である。個々の対線の箔のシールド15は、共通のシールド30と電気接触する。ゆえに箔のシールド15の中を通る補助のドレイン線は、必ずしも必要とされない。
【0038】
左に示された断面図ではっきりと分かるように、3本の対線12,14,16は、三回転対称性を持つ実質的な回転対称状態で補助の線22の周りに配置されている。言い換えると、それぞれの対線は、撚り中心20に対して約120°の角度をそれらの間に挟んでいる。この回転対称配置は、対線12,14,16の間にそれぞれ配置されるとともに撚り中心20の周りに撚り加工される充填要素41によって保証される。
【0039】
ケーブル10は、例えばPVCから成る保護シース50により覆われる。
【0040】
図1bにおいて、本発明の第二実施形態の断面図が左に図示され、この実施形態の長手方向の様子が一部切除された側面図で右に図示されている。このケーブル10’も、各々が差動データ信号の伝送を目的とする合計3本の対線12,14,16を有するUSBケーブル(USB3.xケーブル)である。以下に記載される特徴を除くと、第二実施形態によるケーブル10’は第一実施形態によるケーブル10に対応するため、上記の見解が参照可能である。
【0041】
3本の対線12,14,16も、通電する線22により形成される共通の撚り中心20の周りに螺旋配置で、断面が実質的に回転対称である配置で延伸する。しかし、第一実施形態とは異なり、回転対称はこの場合に四回転対称であり、充填要素40の対は(存在しない)第4の対線のスペースを占める。言い換えると、各断面において、3本の対線12,14,16と充填要素40の対はそれぞれ、撚り中心20を包囲する正方形の辺に位置する。ゆえに充填要素40の直径は、対線12,14,16の線13の直径に実質的に対応する。
【0042】
撚り中心20に対して、それぞれの対線は約90°の角度をそれらの間に挟む。
【0043】
要件に応じて、対線12,14,16の所定の相互配置を保証するため、および/または、くぼみなどのない全体的に丸いケーブルを生産するため、さらに充填要素40,41が設置可能である。(非導電性)充填要素40,41の代わりに、データ、信号、電流その他の伝送に使用可能である補助の導体が、ケーブルの中に設けられてもよい。代替的または付加的に、非撚り加工導体、例えば線形補助の導体がケーブルの中に設けられてもよい。
【0044】
図3は、本発明によるUSB3.xケーブル10”の第三実施形態の断面を図示している。このケーブル10”は、共通のシールド30と電気接触している独立する箔のシールド15によりそれぞれ覆われている2本の対線112,114(USBケーブルの2本の超高速対)を有する。これら2本の対線112,114は、中心の通電する線22の両側に配置され、その線22により形成される共通の撚り中心20の周りに螺旋配置で延伸している。(高速対D+,D−の)第3の対線116の2本の線は、2本の対線112,114に対してそれぞれ約90°オフセットして、中心の通電する線22の両側で互いに距離を置いてケーブル内に配置されている。撚り中心20の周りの回転は別にして、ケーブルがいかなる断面でも同じ線配置を有するように、第3の対線116の線も撚り中心20の周りに撚り加工されている。こうして第3の対線116の2本の線は、接地された共通のシールド30にすぐ隣接して配置されているため、実際には中心の通電する線22の方向の結合を伴わずに、疑似接地基準による伝送が結果的に得られる。
【0045】
全体として、撚り中心20の周りでの線の実質的な四回転対称配置が結果的に得られ、一方では2本の対線112,114が、他方では第3の対線116の2本の個々の線がケーブル10”内で互いに反対に位置している。
【0046】
図3は、この実施形態で、撚り中心20と、2本の対線112,114および第3の対線116との間に4本の充填要素40が配置されていることも示している。
【0047】
導電糸および/または線による編組体、および/または導電箔を共通のシールド30が包含することにも注意すべきである。
【0048】
その他については、第三実施形態にもまた提供可能な上述の本発明の第一および第二実施形態の特徴を参照する。
【0049】
図4aは、撚り中心20が、これに成形された充填要素40aを有しているという点で第三実施形態と異なっている、本発明によるUSB3.xケーブル10”’の第四実施形態を断面で図示している。成形される充填要素40aは、この実施形態では、線22を被覆する絶縁体の材料で形成されている。ゆえに、第四実施形態では、充填要素40aが上に成形された単体として、撚り中心20が形成されている。成形された充填要素40aを有する撚り中心20は、2本の対線112,114と第3の対線116とが少なくとも部分的に埋設される溝または凹部も形成する。
【0050】
その他については、第四実施形態にも提供可能な上述の本発明の第一、第二、第三実施形態の特徴が参照される。
【0051】
図4bは、2本の対線112,114の2本の電気導体がそれぞれ共通の電気絶縁シース200で覆われているという点で第三実施形態と異なっている、2本の対線112,114によるさらなる実施形態を図示している。
【0052】
図5は、第3の対線116の2本の電気導体をそれぞれ覆う二つのシース202a,202bの断面が楕円形であるという点で第四実施形態と異なっている、本発明によるUSB3.xケーブル10””の第五実施形態の断面を図示している。
【0053】
この実施形態では、図3に示されている第三実施形態のように、撚り中心20は円形断面を有する。しかし代替的に、撚り中心20は、第四実施形態と同様に、上に成形される充填要素40aを有してもよい。また、この第五実施形態は、図3および4aに示されている2本の対線112,114の実施形態、または図4bに示されている2本の対線112,114の実施形態を有してもよい。
【0054】
本発明は、記載された実施形態に限定されない。特に、本発明によるケーブルは必ずしもUSBケーブルでなくてもよい。また、本発明によるケーブルは、2本または3本以上の撚り加工による対線のみを包含してもよい。回転対称構造を保証するため、1本を超える対線が一対の充填要素で置き換えられてもよい。本発明で特に重要なのは、共通の撚り中心の周りでの対線の撚り加工であり、撚り中心は好ましくは、USBケーブルの中心に配置された通電線により形成される。
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図5