(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記性能汎函数を最適化することは、前記性能汎函数に基づき、渦電流磁場を生じる構造表面にわたって生成する予想渦電流密度パターンを最小化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
前記渦電流磁場指数は、所定の渦電流磁場形状であり、前記性能汎函数を最適化することは、渦電流磁場を生じる構造表面にわたる渦電流密度図を制約することであって、前記渦電流密度図による予想渦電流磁場が前記所定の渦電流磁場形状を生じるように制約することを更に含む、請求項1に記載の方法。
前記渦電流密度図は、流れ関数モードの線型独立した基底セットに基づき、前記制約することは、前記流れ関数モードのうちの1つ又は2つ以上を抑制することを更に含む、請求項6に記載の方法。
前記電磁コイルは、勾配磁場コイルであり、前記MRIは、補正コイルを更に含み、前記補償電流は、前記MRIの動作中に、前記勾配磁場コイル及び前記補正コイルの組み合わせによって生成される、請求項14に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、例示的な実施形態による核磁気共鳴画像化(MRI)システムのブロック図を100によって示す。100によって示されるMRIシステムの例示的な実施形態は、単に例示を目的とするものであり、更なる構成要素、より少ない構成要素、及び/又は変形された構成要素を含む変形例が可能である。
【0019】
従来の核磁気共鳴画像化(MRI)システムは、物体中の水素原子などのプロトンからの核磁気共鳴(MR)シグナルの画像を構築するために主に使用される画像診断法を提供している。医療用MRIにおいて、対象となる典型的なシグナルは、組織の主な水素含有成分である水及び脂肪からのMRシグナルである。
【0020】
図1に示されるように、例示的なMRIシステム100は、データ処理システム105を備える。データ処理システム105は、概ね、ディスプレイなどの1つ又は2つ以上の出力デバイスと、キーボード及びマウスなどの1つ又は2つ以上の入力デバイスと、揮発性及び持続性構成要素を有するメモリに接続されている1つ又は2つ以上のプロセッサと、を備えることができる。データ処理システム105は、スキャンを行うために使用されるMRIシステム100のハードウェア構成要素との通信及びデータ交換に適合した1つ又は2つ以上のインターフェースを更に備えることができる。
【0021】
図1を継続して参照して、例示的なMRIシステム100はまた、主磁石110を備えることができる。主磁石110は、例えば、永久磁石、超伝導磁石、又は抵抗磁石として実装されてもよい。ハイブリッド磁石を含む、MRIシステム100における使用に適した他の磁石種が、現在、当業者に想起及び想到されると思われる。主磁石10は、強度B0及び軸に沿った方向を有する、実質的に均一な静磁場を生成するよう動作可能である。静磁場を使用して、物体の水及び脂肪内の水素におけるプロトンなどの所望の原子核がスキャンに備えて磁気的にアライメントされる造影ボリュームを生成することができる。いくつかの実施形態において、この例示的な実施形態でのように、主磁石110の動作を制御するためにデータ処理システム105と通信している静磁場制御装置115を使用することができる。
【0022】
MRIシステム100は、例えば、3つの直交勾配軸に沿って、例えば、静磁場における空間情報を符号化するために使用される勾配磁場コイル120などの勾配磁場コイルを更に備えてもよい。勾配磁場コイル120は、制御され、かつ均一な線形勾配を勾配磁場コイル120が生成するようなサイズ及び構成であってもよい。例えば、主磁石110内に位置する3対の直交通電一次コイルは、所望の線形勾配磁場を生成するように構成されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、勾配磁場コイル120は、遮蔽されていてもよく、一次−遮蔽コイル対を形成する一次勾配磁場コイルにより生成された勾配磁場を反転させる逆磁場を生成することができる遮蔽磁石の外層、例えば、コイルを含んでいてもよい。このようなコイル対において、「一次」コイルは、勾配磁場の生成に関与し、「遮蔽」コイルは、勾配磁場コイル120の外側のボリュームなどのあるボリュームの外側の一次コイルの漂遊磁場の低減に関与することができる。勾配磁場コイル120の一次−遮蔽コイル対、すなわち、一次コイル及び遮蔽コイルは、直列に接続されてもよい。遮蔽勾配磁場コイル120を共に形成する任意の所与の勾配軸用の三層以上のコイルを有することも可能である。遮蔽勾配磁場コイル120は、渦電流およびスキャンされた画像にアーチファクトを引き起こす場合がある他の干渉を軽減することができる。渦電流は、主にMRIシステム100の導電性構成要素に流れ、勾配磁場コイル120の外部の時変磁場(リーク磁場)により生じるため、勾配磁場コイル120により生成されるリーク磁場を減少させることにより、干渉を減少させることができる。したがって、一次−遮蔽コイル対の形状及びサイズ、導電体ワイヤのパターン及びサイズ、並びに電流振幅及びパターンは、勾配磁場コイル120の外側の正味磁場が可能な限りゼロに近づくように選択することができる。円筒形状の磁石の場合、例えば、2つのコイルを、同心の円筒形体で配置することができ、垂直界磁石の場合、2つのコイルを、同軸ディスク状に配置することができる。
【0024】
遮蔽の1つの副次的影響は、勾配磁場コイル120の一次−遮蔽コイル対により生成される磁場が造影ボリューム内で部分的に互いに打ち消す場合があることであり得る。したがって、遮蔽勾配磁場コイル120による特定の強度を有する勾配磁場を生成するためには、非遮蔽勾配磁場コイル20によるより、多くの電流が必要となる場合がある。この作用は、勾配効率として定量化することができ、駆動電流1アンペアに対して達成可能な勾配強度として定義することができる。勾配磁場コイルの性能を説明する別の重要なパラメータは、勾配スルーレートと称され、勾配磁場コイルをゼロからその最大振幅まで駆動させる速度である。同じ電力増幅器により駆動された場合、インダクタンスが大きくなるにしたがって、勾配磁場コイルにおける最大達成可能スルーレートが小さくなる。通常、非遮蔽勾配磁場コイル120の効率と比較して、遮蔽勾配磁場コイル120の効率を向上させるために、インダクタンスを増大させる必要がある。このインダクタンスの増大により、最大達成可能スルーレートが低下することとなる。遮蔽構成の効率低下は、一次コイルと遮蔽コイルとの間の距離と電流密度の比に依存し得る。一次−遮蔽コイル対間の距離を増大させることにより、効率を増大させることができる。
【0025】
遮蔽か又は非遮蔽かに関わらず、一次コイル及び遮蔽コイルを含む勾配磁場コイル120の導電性構成要素は、電気導体(例えば、銅、アルミニウム等)から構成することができる。電位差が勾配磁場コイル120の末端に印加された際に、電流が所望の経路を流れるように内部の電気接続を行うことができる。一次勾配磁場コイル及び遮蔽勾配磁場コイルの両者に関する3つの勾配磁場軸の導電性構成要素は、物理的分離及び/又は非導電性の障壁により絶縁される場合がある。非導電性基板(例えば、G10、FR4、エポキシ等)に一次勾配磁場の巻線を配置することができる。
【0026】
いくつかの変形例において、勾配磁場コイル120は、熱制御メカニズム又は熱抽出メカニズムを備えることができる。例えば、巻線の一部は、中空であってもよく、冷却剤が、これらの中空の導電体を通過して、勾配磁場コイル120から、例えば、電気が印加された際に巻線の抵抗加熱により生じる熱を抽出することができる。あるいは、勾配磁場コイル20内に冷却材流路を挿入するなど、熱を抽出する他の方法が使用されてもよい。冷却材流路は、勾配磁場コイル巻線と熱接触の状態にあってもよい。機械アセンブリが剛性であることを確保し、電気的破壊の可能性を限定するために、勾配磁場コイル120はまた、熱伝導性であるが、非電導性のエポキシに含有されていていもよい。
【0027】
造影ボリューム内の物体の空間選択励起が生じ得るように、勾配磁場コイル120により生成される磁場は、組み合わせてかつ/又は連続的に静磁場に重ね合わせることができる。空間励起が可能であることに加えて、勾配磁場コイル120は、特定の周波数及び位相情報を、造影ボリューム内に配置された原子核に空間的に取り付けることができ、これにより、得られたMRシグナルを有用な画像に再構成することができる。データ処理システム05と通信している勾配磁場コイル制御装置125を使用して、勾配磁場コイル120の動作を制御することができる。
【0028】
MRIシステム100のいくつかの実施形態において、補正コイル140などの追加の電磁コイルが存在してもよい。均一な磁場オフセットコイルであるシムコイル及び任意の他の補正電磁石を含むことができる補正コイル140は、従来、2次以上高い球状高調波(spherical harmonic)又は均一な磁場の磁場プロファイルを生成することができる(が、これらに限定されない)。能動的な補正又はシミング(種々の物体がシステム内又は同システム周囲に配置された場合、導入される磁場歪みの補正)を行うために、補正コイル140などの補正電磁石は通電し、通電を使用して、静磁場をより均一にするように作用する磁場を提供することができる。例えば、これらのコイルにより生成された磁場は、主磁石10中の不完全性若しくは外部強磁性物体の存在によるか、又は造影領域内における材料の磁化率の差若しくは任意の他の静電的若しくは時変現象による、静磁場中の不均一性の補正に役立つことができる。データ処理システム105と通信している補正コイル制御装置140を使用して、シムコイル140の動作を制御することができる。
【0029】
MRIシステム100は、無線周波数(RF)コイル30を更に備えてもよい。RFコイル130を使用して、原子核又は「スピン」を励起させるために、強度B1を有するRF磁場を確立することができる。RFコイル130はまた、撮像されている物体内の「緩和している」スピンから発せられるシグナルを検出することができる。したがって、RFコイル130は、別個の送受信コイルの形体であってもよく、又は送信モードと受信モードとの間を切り替えるための切替えメカニズムを有する組み合わせられた送受信コイルであってもよい。
【0030】
RFコイル130は、通常、受信専用コイル及び/又は送受信コイルであり得るボリュームコイルである表面コイルとして実装されてもよい。RFコイル130は、主磁石10のボア近くで一体化することができる。あるいは、スキャンされている頭部などの物体のより近位にRFコイル130を実装してもよく、ぴったりしたヘルメットのように物体の形状に近似する形状をとることができる。データ処理システム100と通信しているRFコイル制御装置135を使用して、RFコイル130の動作を制御することができる。
【0031】
MRシステム100を使用して、T1及びT2強調画像を含む画像を取得するための多くの手法が存在する。MRIシステム100の機能性を簡潔に説明するために、プロトン密度強調画像を得るための動作を簡潔にし、非限定的な例として説明する。例示的な説明に従って画像を生成するために、MRIシステム100は、物体を比較的大きな磁場に供することにより、組織中に見出される水又は脂肪中の水素プロトンの存在などの物体内のスピン角運動量を含む原子核の存在を検出する。この例示的な実施形態において、静磁場は、強度B0を有し、スピン角運動量を含む原子核は、水素プロトン又は単にプロトンであってもよい。静磁場は、主磁石110の造影ボリュームに配置された物体中の水素プロトンを部分的に分極させる。その後、プロトンは、適切に変調されたRF放射により励起され、例えば、強度B1を有するRF磁場を形成する。最後に、励起されたプロトンからの弱いRF放射シグナルが、MRシグナルとして、すなわち、磁性相互作用からのプロトンの「緩和」として検出される。検出されたMRシグナルの周波数は、これらが供された磁場に比例する。シグナルを得るための物体の断面は、静磁場の磁場値が物体中の種々の場所に沿って可変で有り得るように、物体を横断する磁場勾配を生成することにより選択することができる。シグナル周波数が、生成された変動磁場に比例すると仮定すると、変動は、特定のシグナル周波数及び位相を、物体内のある場所に割り当てることができる。したがって、得られたMRシグナルにおいて十分な情報を見出すことができ、従来のMRI画像に基づく、プロトンの存在に関する物体のマップを構成することができる。例えば、プロトンの密度が組織の種類により変動するため、得られたシグナルが処理された後の画像コントラスト変化として組織の変化をマッピングすることができる。
【0032】
ここから
図2を参照して、MRIシステム100による例示的なシグナル取得プロセスを更に説明するために、240によって示されるZ軸に沿って向いている強度B0を有する静磁場20を有する主磁石110の造影ボリューム250内に、物体が配置されると想定するものとする。続いて、物体は、正味磁化ベクトルを有する。この説明のための例において、205によって示されるように、X軸及びY軸に沿う平面におけるスライスが撮像されている。この例では、スライスは、Z軸に沿う有限厚を有し、体積測定用スライス205を生成していることに留意されたい。
【0033】
従来の様式において、MRIシステム100から画像を取得するために、1つ又は2つ以上の組のRFパルス及び勾配波形(まとめて、「パルスシーケンス」と呼ばれる)が、データ処理システム105において選択される。データ処理システム105は、選択されたパルスシーケンス情報を、RF制御装置35及び勾配磁場制御装置125に伝達する。これらの制御装置は、まとめて、スキャンを行うパルスシーケンスを提供するために、関連付けられた波形及びタイミングを生成する。
【0034】
印加されるRFパルスシーケンス及び勾配磁場波形、すなわち、パルスシーケンスの種類は、緩和時間が画像の特性に最も影響を有するように変更することができる。例えば、12
*緩和は、グラディエントエコー(GRE)シーケンスに使用される90°RFパルスを受けて有意な影響を有し、T2緩和は、(スピンエコーシーケンスとしても知られる)90°〜180°の連続的なRFパルスを受けてより有意な影響を有する。
【0035】
ここから
図3を参照して、MRIシステム100を使用して画像を取得するために使用することができる例示的なパルスシーケンス300を示す。具体的には、例示的なパルスシーケンスのタイミング図が示されている。タイミング図は、時間の関数としての、送信された(RFt)シグナルに対するパルス又はシグナルの大きさ、磁場勾配Gx、Gy、及びGz、並びに受信されたRFxシグナルを示している。例示の目的で単純化された理想化パルスシーケンスは、スライス選択無線周波数パルス310(RFt)、スライス選択勾配磁場パルス320(Gz)、位相符号化勾配磁場パルス330(Gy)、周波数符号化勾配磁場パルス340(Gx)、並びに検出MRシグナル350(RFx)を含み得る。3つの勾配磁場Gx、Gy、及びGzに対するパルスは、勾配磁場コイル120により生成することができる磁場勾配の大きさ及び持続期間を表わす。スライス選択パルス310は、RFコイル130の送信態様により生成することができる。検出MRシグナル350は、RFコイル130の受信態様により検出することができる。この説明のための例では、RFコイル130の送信態様及び受信態様は、別箇のコイルにより形成されると想定するものとする。
【0036】
パルスシーケンス300において生じる最初のイベントは、スライス選択勾配磁場パルス320をオンにすることであり得る。スライス選択RFパルス310を、同時に印加することができる。この説明のための例では、スライス選択RFパルス310は、RFエネルギーのサイン関数形状バーストであってもよい。他の実施形態において、他のRFパルスの形状及び持続期間が使用されてもよい。スライス選択RFパルス310がオフになると、スライス選択勾配磁場パルス320もオフになることができ、位相符号化勾配磁場パルス330はオンになることができる。位相符号化勾配磁場パルス330がオフになると、周波数符号化勾配磁場パルス340はオンになることができ、検出MRシグナル350を記録することができる。
図3に示されたパルス及びシグナルの形状、大きさ、順序、及び持続期間は、例示の目的で選択されたものであり、実施形態においては、これらの要因及び他のうち1つ又は2つ以上が、所望のスキャンの結果を得るために変更可能であることに留意されたい。
【0037】
パルスシーケンス300は、1つの画像を生成するのに必要とされる全てのデータを収集するために、特定の回数又は反復数、例えば、256回繰り返されてもよい。パルスシーケンス300のそれぞれの反復間の時間は、反復時間(TR)と称することができる。更に、スライス選択パルス310の中心点と検出MRシグナル350のピークとの間の持続期間は、エコー時間(TE)と称することができる。TR及びTEは両方とも、所望のスキャンに適するように変更可能である。
【0038】
MRIシステム100のシグナル取得プロセスを更に説明するために、
図3と併せて、
図2を参照する。スライスを選択するために、スライス205中に位置しているプロトンに対する共鳴条件を満たす、スライス選択勾配磁場パルス320がZ軸に沿って印加されてもよい。実際に、Z軸に沿うスライスの場所は、スライス選択勾配磁場パルス320に一部基づいて決定することができる。したがって、スライス選択勾配磁場パルス320と同時に生成されたスライス選択パルス310は、この例におけるスライス205内に位置しているプロトンを励起させることができる。スライス205の上下に位置しているプロトンは、通常、スライス選択パルス310により影響を受けない。
【0039】
説明のための例を継続して、パルスシーケンス300に従って、スライス選択勾配磁場パルス320の後にパルス符号化勾配磁場パルス330を印加することができる。これをY軸に沿って印加すると仮定すると、Y軸に沿う種々の場所におけるスピンは、種々のLarmor周波数で歳差運動を開始することができる。位相符号化勾配磁場パルス330がオフになると、種々の場所における正味磁化ベクトルは、同じ速度で歳差運動することができ、種々の位相を有することができる。これらの位相は、位相符号化勾配磁場パルス330の持続期間及び大きさにより判定することができる。
【0040】
位相符号化勾配磁場パルス330がオフになると、周波数符号化勾配磁場パルス340がオンになることができる。この例では、周波数符号化勾配磁場は、X方向にある。周波数符号化勾配磁場は、その場所Xに応じた速度で歳差運動するように、選択されたスライス中にプロトンを生じさせることができる。したがって、スライス内の種々の空間的位置は、固有の位相角及び歳差周波数により、ここで特徴付けられる。RF受信コイル130を使用して、周波数符号化勾配磁場パルス340がオンである間にスキャンされた物体中に含まれるプロトンにより生成された検出シグナル350を受信することができる。
【0041】
パルスシーケンス300がMRIシステム100により行われる場合、
図4の400によって示されるように、k−空間と称される一時マトリクスに、取得されたシグナルを記憶することができる。通常、k−空間は、スキャンに対して測定される検出シグナルの収集であり、空間周波数ドメインに存在する。X軸420(Kx)に沿う周波数符号化データ及びY軸430(Ky)に沿う位相符号化データによりk−空間をカバーすることができる。スライスについてのk−空間マトリクス用の全ての線が(例えば、シグナルスライスのスキャン終了時に)受信された場合、例えば、二次元フーリエ変換により、数学的にデータを処理して、最終的な画像を生成することができる。このため、k−空間は、画像を空間ドメイン内で再構成する前に、生データを保持することができる。通常、k−空間は、最終的な画像と同じ数の列及び行を有し、スキャン中、通常、パルスシーケンス300あたり1本の線である生データにより満たされる。例えば、410で示されるk−空間400の第1の線は、スライスをスキャンするために生成されたパルスシーケンスの第1の反復完了後に満たされ、そのパルスシーケンス反復について検出されたシグナルを含む。パルスシーケンスの複数回の反復後に、k−空間を満たすことができる。パルスシーケンスの各反復は、k−空間の適切な部分に対するシグナルが取得されるように、わずかに変更可能である。尚、種々のパルスシーケンスに基づいて、例えば、スパイラル様式などでk−空間を満たす他の方法が可能であり、他の方法が想到されることに留意されたい。
【0042】
勾配磁場コイル120は、特定の空間分布を有する事変磁場を生成し、MRIシステムの典型的な構成要素である。磁場変動の大きさが大きくなるにつれ、MR画像化シーケンスをより速く行なうことができ、解像度が増大する。上記で検討したとおり、最大達成可能勾配磁場強度は、勾配磁場効率により特徴付けられる。勾配磁場コイル120の効率は、勾配磁場コイル120の形状、サイズ、及び配置における変動により改善することができる。例えば、円筒形の実施形態において、一次勾配磁場コイル巻線は、造影ボリューム内の物体により近いより小さい半径で構築することができる。あるいは、ワイヤ数(巻線密度)を増やすことができる。
【0043】
勾配磁場コイル120は、例えば、撮像される物体がコイルの中心に位置している場合に、高度の対称性を有することができる。したがって、このようなコイルは、通常、対称性勾配磁場コイルと称することができる。物理的及び幾何学的制約により、一部のMRIシステム100に関して、撮像される物体は、勾配磁場コイル120の中心において対称的に位置しなくてもよい。更に、かかるコイルは、対称的な形状でなくてもよい。例えば、頭部勾配磁場コイルは、頭部に適合することができるが、肩に適合することはできない。あるいは、胸部の上及び背中の下に延在するコイルを有する肩用のスロットが存在してもよい。この種類のコイルは、通常、非対称性勾配磁場コイルとして既知である。
【0044】
勾配磁場コイル120が構成されると、特定の性能指数を検討することができる。例えば、勾配磁場コイル120は、通常、それらが通電時に受ける正味の力及びトルクを減少させるように構成される。正味の力は、電流1アンペアあたり、ニュートン単位で、x、y、及びz方向のそれぞれにおいて特徴付けることができ、この数量により、通電時にコイルが空間内を移動する傾向を決定することができる。正味のトルクは、1メートルあたり、1アンペアあたり、ニュートン単位で、x、y、及びz方向のそれぞれにおいて特徴付け付けることができ、この数量により、通電時にコイルが回転する傾向を決定することができる。力及びトルクを均衡させることは、特に、長手方向(z)寸法に沿って非対称な勾配磁場コイル120について困難な課題である。例えば、
図5に示されるように、長手方向に沿って非対称な勾配磁場コイルは、コイルの各面に1つのスパイラル510(以下、「サムプリント」510と称する)を有するワイヤパターンを有することができ、この構成により効率を上げることができる。この例では、一次コイルに対応する遮蔽コイルの一部である、2つの更なるサムプリント510’が示されている。
【0045】
勾配磁場コイル120は、通常、このような非対称設計による正味の力及びトルクをより低くするように設計及び構成される。例えば、一部の変形例では、2つのコイルが同じ剛性の機械アセンブリの部品である場合、遮蔽コイルを使用して、一次コイルのトルクを打ち消すことができる。一次コイル及び遮蔽コイルのワイヤパターンが同じ剛性のメカニズムの部品を形成する場合、一次コイル用の1つのサムプリント及び遮蔽コイル用の1つのサムプリントを使用することにより、トルクが均衡した実施形態を得ることができる。ただし、他のパターン及び数のサムプリントに対してトルクが均衡した実施形態を得ることも可能である。
ワイヤの密度及びパターンなどの他の考察を使用して、正味のトルク及び力を低減することができる。他の性能指数の制限を考慮して、受ける正味のトルク及び力を減少させることができる。このため、いくつかの実施形態において、最適な力及び/又はトルクの均衡は、他の性能指数についての要件設定を実現するために犠牲にされる場合がある。
【0046】
効率は、勾配磁場コイル120を構成する際に考慮される別の性能指数である。効率は、勾配磁場コイル120により駆動される単位電流あたりの勾配磁場強度として定義することができる。効率が高い場合、大きい勾配磁場振幅を生成することができ、振幅により、例えば、より高い解像度の画像を取得することができ、又はスキャン時間を短くすることができる。効率は、勾配磁場コイル120の巻線密度に線形に比例する。例えば、巻線密度が2倍になると、通常、効率も2倍になる。したがって、勾配磁場コイル120は、通常、他の性能指数についての要件設定を含む他の性能指数を考慮して、可能な限り高い効率を有するように構成される。このため、いくつかの実施形態において、最適効率は、他の性能指数についての要件設定を実現するために犠牲にされる場合がある。例えば、特定の巻線密度は、他の性能指数についての制限を満たすことができるように、最高可能効率より低い場合がある所望の効率を得るように選択することができる。
【0047】
電力損失は、考慮されるべき更に別の性能指数である。電力損失は、電流の2乗を掛けた勾配磁場コイル120の抵抗である電力に基づいて決定することができる。したがって、電力損失は、勾配磁場コイル20の通電時に生じ得る熱の量の測定値であり得る。電力損失は、巻線密度の二乗に比例する。例えば、巻線密度が2倍になると、電力損失は、通常、4倍になる。したがって、勾配磁場コイル120は、通常、他の性能指数要件設定を考慮して、可能な限り少ない電力損失(ひいては発熱)を有して構成される。例えば、他の性能指数について設定した要件を満たすことができるように、最小可能電力損失より高い場合がある所望の電力損失を得るように特定の巻線密度を選択することができる。
【0048】
エネルギーは、勾配磁場コイル120を構成する際に考慮することができる更なる性能指数である。エネルギーは、電流の2乗を掛け、0.5を掛けた勾配磁場コイル120のインダクタンスとして定義され得る。この指数は、勾配磁場コイル120がどれだけ速くオン又はオフに切り替わることができるかの測定値であり得る。通常、エネルギーが低いほど、切替え速度が早くなることを意味する。エネルギーは、電力損失と同様に、巻線密度の2乗に比例する。例えば、巻線密度が2倍になると、エネルギーは、通常、4倍になる。したがって、勾配磁場コイル120は、通常、他の性能指数要件を考慮して、可能な限り低いエネルギー(最速切替え)を有して構成される。例えば、他の性能指数についての要件設定を満たすことができるように、最低可能エネルギーより高い場合がある所望のエネルギーを得るように特定の巻線密度を選択することができる。
【0049】
勾配磁場形状指数は、更なる性能指数である。磁場勾配の線形性及び均一性は、通常、勾配磁場コイル120を実装する際の主要な検討事項である。勾配磁場形状指数は、勾配磁場コイル120が生成する磁場がターゲットの勾配磁場にどれだけ十分に適合しているかの測定値である。この例では、MRIシステム100は、直線的でかつ均一な空間勾配磁場を有する。この勾配磁場指数を定義することができる多くの方法が存在する。定義の一例として、対象となるボリュームにおける1組の位置にわたる勾配磁場コイル120により生成される磁場とターゲットの勾配磁場との間の平方差の和が挙げられる。この定義に基づいて、指定される他の性能指数要件を考慮して、勾配磁場形状指数は可能な程度に下げられる。例えば、他の性能指数についての特定の要件を満たすことができるように、最低可能勾配磁場線形性指数より高い場合がある特定の勾配磁場線形性指数を得るように特定の巻線パターンを選択することができる。
【0050】
対象となる他の性能指数は、渦電流磁場指数である。渦電流は、主磁石110のボア内などの、通電される勾配磁場コイル120以外の導電表面に誘導される。上述したように、非遮蔽勾配磁場コイル120は、勾配磁場コイル120の外側に、時変磁場を生成する場合がある。これらの磁場により、円筒形状の主磁石110のボアなどの、勾配磁場コイルの外側の外部導電表面に渦電流が誘導され得る。詳しく上述したように、渦電流は、造影ボリューム内に不要な時変磁場(渦電流磁場)を生成する場合があり、多くの画像化シーケンスに対して画像品質に悪影響を及ぼし得る。渦電流磁場による影響の大きさは、遮蔽勾配磁場コイルを追加することにより、大きく減少させることができる。この遮蔽勾配磁場コイルは、典型的には、一次的な勾配磁場コイルの外側に、反対方向の巻線で構成される。
【0051】
遮蔽勾配磁場コイル120では、非遮蔽勾配磁場コイル120と比較して、誘導される渦電流の大きさが、かなりの程度減少するが、遮蔽勾配磁場コイル120の使用により、渦電流が完全に消滅するわけではない。実際には、遮蔽しているにもかかわらず、一部の渦電流磁場が残存する。勾配磁場コイル120が対称的であり、かつ遮蔽されており、なおかつ、導電表面が勾配磁場コイルに対して対称である場合、典型的には、渦電流磁場の空間磁場プロファイルは、勾配磁場コイル120によって生成される磁場の空間磁場プロファイルに適合する。すなわち、これらの渦電流磁場は、例えば、
図6(a)に示されているように実質的に、空間的に線形なプロファイルを有し得る。それ故、勾配磁場コイル120を通って送られる電流波形を微調整することにより、
図6(b)に示すように、これらの渦電流磁場を補償することができる。
【0052】
非対称な遮蔽勾配磁場コイル120の場合、残存する渦電流磁場の空間磁場プロファイルは、勾配磁場コイル120によって生成される磁場の空間磁場プロファイルと適合しない場合がある。すなわち、これらの渦電流磁場は、
図7に示すような非線形な空間プロファイルを有し得る。したがって、勾配磁場コイル120を通って送られる電流波形を調整することにより、簡単に残存渦電流磁場を減少させることはできない。
【0053】
制約された渦電流磁場が作り出されるように勾配磁場コイル120を実装することにより、非対称勾配磁場コイル120を使用した、先進的な画像化技術が可能となり得る。いくつかの実施形態において、勾配磁場コイル120の設計に基づいて、渦電流磁場の制約を行うことができる。例えば、非対称かつ遮蔽勾配磁場コイル120の設計を、残存渦電流磁場を、勾配磁場コイル120によって生成される勾配磁場の空間プロファイルに適合させる(例えば、空間的に線形にすることができる)ように実施することができる。代替的に又は追加的に、勾配磁場コイル20の設計により、渦電流磁場を能動的に補償できるように、制約することも可能であり得る。例えば、勾配磁場コイル120と補正コイル140との所望のセットによって示され得る渦電流磁場が生成されるように、非対称な勾配磁場コイル120を実装することができる。例えば、勾配磁場コイル120により生じる、制約された渦電流磁場を、勾配磁場コイル120の動作中に、補正コイル140により動的に制御することができる。
【0054】
渦電流磁場指数を定義することができる多くの方法が存在する。定義の一例として、勾配磁場コイル120によって生成される渦電流磁場とターゲットの渦電流磁場との間の平方差の和が挙げられ、これは、関心領域のボリューム上の1組の点にわたる、渦電流磁場における所望の制約を表す。この定義に基づいて、渦電流磁場指数は、指定される他の性能指数要件を考慮して、可能な程度に下げられる。例えば、特定の巻線パターンは、他の性能指数についての特定の要件を満たすことができるように、最低可能渦電流磁場指数より高い場合がある特定の渦電流磁場指数を得るように選択され得る。当業者であれば、既知の導電表面にわたる渦電流密度を最小化することなどの、他の同様の渦電流磁場指数の定義及び最小化法を使用できることを理解するであろう。
【0055】
種々の性能指数要件に関連する性能指数の制限を実現するために、勾配磁場コイル120が存在する表面(例えば、円筒形)にわたる勾配磁場コイル120についての電流密度の図を生成することができる。この図は、解析的であることができ、通常、所与の幾何形状についての基本図の一部のソートを包含している。例えば、勾配磁場コイル120が円筒形上に存在する場合、円筒状高調波を、基本図として使用することができる。あるいは、この図は、数字で表されてもよい。例えば、勾配磁場コイル120についての電流密度は、有限三角メッシュ上の電流要素に基づくことができる。境界要素法(BEM)のコイル設計の手法において、例えば、電流が流れることができる任意の表面は、表面全体にわたるメッシュを形成する三角形要素の収集により近似されるか又は表現することができる。各要素中に、電流密度の方向及び大きさを説明する情報が含まれる。したがって、BEMにおける工程は、三角形要素で構成される有限メッシュ内の表面幾何形状の離散化である。以下では、三角形要素を要素と称し、以下では、これらの要素の頂点をノードと称する。
図8に、勾配磁場コイル120が配置され、三角形で構成される微細なメッシュに離散化される、例示的な円筒形状の表面を示す。
【0056】
実際に、BEMに従って、二次元表面上の電流密度パターンは、スカラー流れ関数の形式において、間接的な様式で表現することができる。勾配磁場コイル120が配置される表面幾何形状にわたる区分線形(又はより高次の)関数として流れ関数を表現することができる。流れ関数は、メッシュにおけるノードごとに1つのスカラー値からなり得る。全てのノードが共に検討される場合、各三角形要素における電流密度の方向及び大きさを見出すために流れ関数を変換することができる。
【0057】
一実施形態において、対応する電流密度J(r)を有する要素の表面内に存在する流れ関数ψ(r)を定義することができる。ここで、rは、メッシュ上の位置を表わす。ノードnごとの基底関数の加重和により、以下のとおり流れ関数を近似することができる。
(等式1.1)
【0058】
等式1.1中、l
nは、ノードnの基底関数ψ
n(r)についての重み付け係数である。近似により、流れ関数についての電流密度は、電流密度基底関数の合計として表され、以下のように定義することができる。
(等式1.2)
(等式1.3)
(等式1.4)
(等式1.5)
【0059】
等式1.2〜1.5中、n(r)は、表面の外向きの法線であり、Kは、ノードnを取り囲む三角形の数であり、A
kは、ノードnに関連する三角形要素kの面積であり、e
nkは、三角形要素k内のノードnに対向するベクトルである。
【0060】
電流密度図(又は流れ関数)を使用して、適合している磁場目標の均衡、及び低い電力損失を有すると同時に、渦電流についての特定の要件を満たすなどの性能指数についての設定要件を達成する電流密度のパターンを生成することができる。例えば、勾配磁場形状指数、散逸電力、エネルギー、渦電流、力及びトルクを含む、例えば、電流密度により説明することができる性能指数は、種々の性能指数関数に基づいて説明することができる。
【0061】
性能指数についての特定の要件設定を達成する流れ関数及び対応する電流密度図を見出すために、性能指数を関数として使用して性能汎函数を形成することができる。いくつかの実施形態において、性能指数関数は、重み付けパラメータを含むことができる。他の実施形態において、性能指数関数は、性能汎函数における制約として設定されてもよい。1つの値(すなわち、ゼロに制約される)、又はその性能関数に許容される値の範囲の形式で制約を設定することができる。また更なる変形例では、性能指数要件を満たすために上記で検討されたアプローチを組み合わせてもよく、例えば、一部の性能指数を使用して、性能汎函数及び重み付けパラメータを含む他の性能指数を制約することができる。
【0062】
制約を使った一例として、いくつかの実施形態において、所与の面についての流れ関数を、まとめて、流れ関数モードの線型独立した基底セット(固有モード、又はジャストモード(just mode)と呼ばれる)に分解する(broken down)ことができる。より高次なモードは、短い距離にわたってより大きい空間変動を有する流れ関数によって表される。例えば、これらのモードは、球状高調波(spherical harmonic)場の変動に対応する、直交する空間磁場の変動を表し得る。そして、全体の流れ関数は、モードの線形結合として表される。一例として、主磁石110のボアなどの導電表面に誘導される渦電流密度に対応する流れ関数を、モードの線形結合として表すことができる。渦電流の流れ関数は、主磁石110のボアなどの対象の導電表面との、勾配磁場コイル120図の計算された電流密度の相互インダクタンスによって計算することができる。
【0063】
誘導渦電流を制約して、特定の磁場形状を生じさせる(例えば、勾配磁場の空間変動にぴったりと適合する渦電流磁場を生成するモードのみを認める)ために、所望のモード以外の1組のモード(例えば、高次の球状高調波モード)を抑制することができる。この抑制は、性能指数汎函数に、不要な全てのモードの振幅を最小値又はゼロに抑制する制約を含めることにより、行うことができる。したがって、補償できない渦電流磁場成分を消滅させることができる。例えば、円筒形の非対称勾配磁場コイルの場合、通常の傾斜線パターンの空間変動は、典型的には、短い距離で急激に変化しないため、球状高調波の基底において、およそ4次よりも高次の、磁場変動を作り出すモードに対する制約を含む必要はない場合がある。非円筒形の勾配磁場コイルの場合、円筒形の場合よりも高次のモードを抑制する必要がある場合がある。更なる一例として、MRIシステム100が2次の補正コイル140を含む場合、3次以上のモードを抑制できるため、シムコイル140により、生じた渦電流磁場を補償することができる。変形例として、所望の形状の渦電流磁場が得られるように、これらのモードに重み付けを行ってもよい。したがって、重み付けを行って組み合わせた、ゼロ次、1次、又はより高次のモードの任意の組み合わせを形成してもよい。
【0064】
性能汎函数が形成されると、特定の勾配磁場コイル性能指数の制約を実現する電流密度パターンを生成するために性能汎函数を最小化又は最適化することができる。最小化は、最小二乗マトリクス逆変換、解析公式、又は反復ソルバなどの種々の手法に基づくことができる。例えば、1つ又は2つ以上の性能指数関数が重み付けパラメータを含む場合、性能汎函数を最小化する1組のパラメータを見出すことにより、少ない電力損失及び所望の磁場形状などの所望の性能指数要件を得るために、競合する性能指数を同時に均衡させることができる。更なる例として、1つ又は2つ以上の性能指数が制約として設定される実施形態において、制約された最適化を使用して、所望の性能指数要件を見出すことができる。変形例では、特定の所望の範囲に制約されるように性能汎函数自体のソリューションを設定することができる。範囲内に無い場合、例えば、性能指数又は重み付けパラメータを変更して、異なるソリューションを得ることができる。得られたソリューションが許容される設計目的の範囲内に入るまで、このプロセスを反復的に繰り返すことができる。例示的な目的としては、最小導電体分離、単位面積あたり最大電力堆積、所与の構成要素上での最大の力等が挙げられる。
【0065】
性能汎函数を最小化又は最適化することにより得られた電流密度パターンは、ワイヤパターンを得るようにコンタリングすることができる。同パターンは、流れ関数により表わされた電流密度を近似させる不連続数の電流経路である。
図9(a)及び
図9(b)はそれぞれ、円筒形状の表面上に実装された横方向勾配磁場コイルに対してコンタリングされた後の流れ関数及び対応するワイヤパターンを表わす。性能指数重み付け及び制約のうち一部は、ワイヤ密度、例えば、特定の最小ワイヤ分離を強いる制約に関係することができるので、コンタリング数(ひいてはコイルのワイヤ密度)の選択もまた、性能指数重み付け及び制約に基づくことができる。
【0066】
この勾配磁場コイルの実装法を使用することにより、任意の所望の表面形状を用いて、コイルの実装を行うことが可能となる。この流れ関数の離散化は、最終的な表面の形状ではなく、メッシュを構成する有限要素の形状に依存する。ただし、通常、メッシュ表面が交差することはない。
【0067】
図10を参照して、勾配磁場コイル120を製造する方法が、1000で示される。010において、勾配磁場が生成されることとなる対象のボリュームが選択される。通常、これは、主磁石10内のボリュームに対応する。1020において、渦電流磁場が引き起こされる構造表面(この例では、主磁石110のボア)が識別される。1030において、勾配磁場コイル120が配置される表面の形状が識別される。同表面形状は、この例では、主磁石110のボア内の円筒形である。1040において、表面の図が形成される。例えば、この表面及び円筒形表面は、三角形で表され、図が形成される。1050において、性能指数設定制限が(この例では、制約という形で)特定される。具体的には、この例では、勾配磁場線形性指数と渦電流磁場指数の2つの制約である。ターゲットの渦電流磁場では、2次の球状高調波より高次の、磁場変動を作り出すモードが抑制される。これは、補正コイル140は2次のコイルであり、2次の球状高調波より高次のモードを補正できないからである。1060において、性能汎函数が形成され、最小化される。この例における性能汎函数は、勾配磁場線形性指数及び渦電流磁場指数についての性能指数関数を含む。1070においては、最小化された性能汎函数に基づいて電流密度が計算され、その電流密度パターンのコンタリングに基づいてコイル巻線が得られる。
【0068】
変形例として、生成される渦電流磁場を打ち消すように、勾配磁場コイル120及び補正コイル140を通る補償電流が含まれるような方法で、製造した勾配磁場コイル120を動作させることもできる。この補償電流は、任意のパルスシーケンスに対する渦電流応答のシミュレーションに基づく、予測的なシミュレーションと決定法により決定することができる。続いて、シミュレーションされた渦電流磁場プロファイルを、勾配磁場コイル120及び補正コイル140を通る電流の組み合わせによって、可能な限り渦電流磁場を打ち消すように、造影ボリューム内に磁場が作り出されるように、時間ステップ毎に補正コイル140によって生成される磁場の線形結合にまで分解できる。これは、例えば、最小二乗最小化、又は任意の他の同様の方法によって行うことができる。代替法としては、パルスシーケンスに対する渦電流の時間変動及び空間変動を測定してから、補償のために補正コイル140に流す電流波形として最も適したものを計算する、という方法がある。必要な補正電流波形は、例えば、データ処理システム105にて、パルスシーケンスとともに保存され、必要なリアルタイム補償が提供されるように、パルスシーケンス傾斜波形と同時にプレイアウト(played out)される。
【0069】
上述の方法に従って製造され、動作する勾配磁場コイル120は、MRIシステムの任意の用途及び形状に適用可能である。例えば、一変形例として、撮像領域は、勾配磁場コイル120の中心にあってもよいし、MRI環境における導電表面は、勾配磁場コイルの周囲に対称的に分布していなくてもよい。導電表面の位置が固定的で既知である場合、動的補正を行いやすくするため、本勾配磁場コイル実装法を、制約された渦電流が作り出されるように調整することもできる。また、変形例では、上述の方法を、勾配磁場コイル以外の電磁石の設計、製造、及び動作に適用することも可能である。例えば、主磁石
110又は補正コイル140を、上述のプロセスに従って製造することもできる。更なる例として、デルタ緩和拡張核磁気共鳴画像法(delta relaxation enhanced magnetic resonance imaging)において使用される磁場移動用コイル(field-shifting coil)を、上述のプロセスに従って、設計及び製造し、動作させることもできる。
【0070】
上述された実施形態は、例示であることを意図しており、本明細書に添付の特許請求の範囲によってのみ定義される範囲から逸脱することなく、当業者により、変形及び改変がこれらになされてもよい。例えば、検討された方法、システム、及び実施形態を、完全に又は部分的に、変形及び組み合わせることができる。