(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6481056
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】餃子調製具
(51)【国際特許分類】
A47J 43/20 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
A47J43/20
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-11367(P2018-11367)
(22)【出願日】2018年1月26日
【審査請求日】2018年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000123413
【氏名又は名称】下村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】下村 啓治
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第200951032(CN,Y)
【文献】
特開2001−154(JP,A)
【文献】
特開2002−263014(JP,A)
【文献】
特開2009−56179(JP,A)
【文献】
特開2012−223174(JP,A)
【文献】
特開2014−103965(JP,A)
【文献】
実開昭49−37598(JP,U)
【文献】
意匠登録第820425(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/00
A23P 10/00−30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪形を二分して左右に分離状態で配した半円弧状で上面に襞折り面を設けた襞折り成型部と、適宜な柔軟性を備えた薄板状で前記襞折り成型部の内周間を連結する餡包成型部とを樹脂一体成型で形成すると共に、襞折り成型部の対向縁に餡包成型部を下方に撓めて連結可能としたヒンジ連結部を設けてなることを特徴とする餃子調製具。
【請求項2】
ヒンジ連結部を襞折り成型部の外周縁箇所に、襞折り成型部と一体成型で形成してなる請求項1記載の餃子調製具。
【請求項3】
ヒンジ連結部を一方の襞折り成型部に設けた軸部と、他方襞折り成型部に設けた軸受部で構成してなる請求項2記載の餃子調製具。
【請求項4】
餡包成型部を、襞折り成型部間に架設される適宜幅の可撓横板部と可撓横板部間に設けられる縦板部で梯子形状に形成すると共に、可撓横板部の中央の内外に庇状の受舌部を上方に向けて設けた請求項1乃至3記載の何れかの餃子調製具。
【請求項5】
襞折り成型部の外周適宜箇所に、操作突部を突設すると共に、一方の操作突部に指孔を付設してなる請求項1乃至4記載の何れかの餃子調製具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餃子調製具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
餃子の調製は、周知の通り小麦粉で作った皮に、肉、魚介類、野菜等で作った餡(具材)を入れるもので、茹でる、蒸す、焼く等加熱調理して食するものである。この餃子の調製を手作業で行う場合、餡を皮で包む作業が煩瑣であり、綺麗に包み上げるにはある程度の熟練を要する。
【0003】
皮に餡を包む作業を簡素化するために従前より種々の器具が提案されているが、基本的な構成は、特許文献1(意匠登録第820425号公報)に示されているように、半円形凹部に形成した餡包成型部の外周に、斜め三角波形状の襞折り成型部を設けた成形型を、円盤状となるように突き合せ、二つ折り可能にヒンジ連結してなるものである。
【0004】
前記の器具は開披した成形型に皮を置き、中心部分(餡包成型部対応箇所)を凹ませ、餡を充填し、器具を二つ折りにして皮周縁部分を三角波状の襞折り成型部で重ね合わせ、皮周縁部分を付着させて餃子を調製するものである。
【0005】
また特許文献2(特開2009−56179号公報)には、ヒンジ連結された成形型の開閉動作をスムーズに行えるように、開口方向に付勢する発条が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】意匠登録820425号公報。
【特許文献2】特開2009−56179号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半円状の成形型を二つ折りにする餃子調製具において、餡包作業を効率的に行うには、成形型が開口付勢するように設けておくと良い。しかし特許文献2に示されているように発条を付設すると、発条が金属製部材であり経年変化による錆の発生の恐れもあり、食品調製器具としては必ずしも最適とは言い難い。
【0008】
また器具製造の面からは、2部材の組み合わせで形成されるために、2部材を組み合わせる工程が必要である。
【0009】
そこで本発明は、発条を備えることなく開口付勢力を備え、且つ製造の簡素化を実現できる単一部材で形成される餃子調製具を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載に係る餃子調製具は、輪形を二分して左右に分離状態で配した半円弧状で上面に襞折り面を設けた襞折り成型部と、適宜な柔軟性を備えた薄板状で前記襞折り成型部の内周間を連結する餡包成型部とを樹脂一体成型で形成すると共に、襞折り成型部の対向縁に餡包成型部を下方に撓めて連結可能としたヒンジ連結部を設けてなることを特徴とするものである。
【0011】
而して前記餃子調製具は、餡包成型部を撓めて襞折り成型部をヒンジ連結し、襞折り成型部が鈍角で開口状態にして使用するもので、その使用は開口状態にある襞折り成型部の上に皮を拡げ、皮中央に餡を押し込むと共に皮の外縁周面に水を塗布し、襞折り成型部を閉口して皮の外縁周面を重ね合わせて強圧すると、生餃子が調製される。襞折り成型部の挟圧を解除すると、餃子形状に撓んでいた餡包成型部の弾性反発力で襞折り成型部が開口し、調製された生餃子を取出し、次の調製に取り掛かる。
【0012】
また本発明の請求項2、3記載に係る餃子調製具は、ヒンジ連結部を襞折り成型部の外周縁箇所に、襞折り成型部と一体成型で形成してなるものであり、特にヒンジ連結部を一方の襞折り成型部に設けた軸部と、他方襞折り成型部に設けた軸受部で構成してなるもので、器具の製造と同時にヒンジ機構も成形される。
【0013】
また本発明の請求項4記載に係る餃子調製具は、餡包成型部を、襞折り成型部間に架設される適宜幅の可撓横板部と可撓横板部間に設けられる縦板部で梯子形状に形成すると共に、可撓横板部の中央の内外に庇状の受舌部を上方に向けて設けてなるもので、ヒンジ連結した襞折り成型部の閉口に伴う餡包成型部の撓み反発力が発生し易いように柔軟性を高めると、皮上から餡を押し込むと餡包成型部が撓んで落ち込む。その対応として受舌部を設けて、撓み反発力を維持しながら餡の押し込みに対する反発力を備えることで、餡の包み作業がスムーズに行われる。
【0014】
また本発明の請求項5記載に係る餃子調製具は、特に襞折り成型部の外周適宜箇所に、操作突部を突設すると共に、一方の操作突部に指孔を付設してなるもので、器具を掌に装着して餃子調整作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成は上記のとおり一体成形で襞折り成型部と餡包成型部を形成し、襞折り成型部をヒンジ連結して開口状態とした器具で、餃子調製時の閉口時に撓められた餡包成型部の弾性反発力で開口付勢されるもので、発条を備えることなく開口付勢力を備え、且つ全体の一体成形によって製造の簡素化を実現したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した器具は全体を樹脂で一体成形した器具で、輪形を二分して左右に分離状態で配した半円弧状の左右の襞折り成型部1a,1bと、前記襞折り成型部1a,1bの内周縦面間を連結する餡包成成型部2で構成される。
【0018】
襞折り成型部1a,1bは、上面11と内周縦面12と外周縦面13を備えた下方開口コの字状断面で形成されるもので、上面11は、左右互いに噛み合う斜め三角波状の襞折り面を設け、対向縁の外周位置にヒンジ連結部14a,14bを設けたものである。
【0019】
離間状態のヒンジ連結部14a,14bは、後述する餡包成型部2を撓ませて連結可能な構造としたもので、一方のヒンジ連結部14aには軸部を設け、他方のヒンジ連結部14bは軸受部に形成したものである。
【0020】
また外周縦面13の中間箇所(ヒンジ軸方向と直交する直径方向位置)から操作突部15a,15bを延設したもので、一方の操作突部15aは、外周縦面13から外方(外周方向)へ突出する指当面部151と、外周縦面13の延長で指当面部151の下方の位置に指孔部152を設けてなるものである。また他方の操作突部15bは、外周縦面13の延長部分と延長部分から外方に突出する受板面を備えたL状板で形成される。
【0021】
餡包成型部2は、適宜な可撓性及び撓みに対する弾性反発力を備えるように薄板状にして襞折り成型部1a,1bの内周縦面12の間に架設したものである。
【0022】
具体的には内周縦面12の間に架設する適宜幅の可撓横板部21と、可撓横板部21間に設けられる縦板部22で梯子形状に形成し、可撓横板部21の中央の内外に庇状の受舌部23を上方に向けて設けてなるものである。
【0023】
而して前記餃子調製具は、餡包成型部2を撓めて襞折り成型部1a,1bのヒンジ連結部14a,14bを連結し、襞折り成型部1a,1bが鈍角で開口状態にして使用するものである。
【0024】
餃子の調製は、指孔部152に中指を差し入れて襞折り成型部1a,1bの開閉自在となるように器具を掌に載せて行う。
【0025】
餃子の調製は開口状態の器具に餃子の皮Aを敷き、餡包成型部2の形状に合わせて皮Aを押し込んで凹所を形成し、手或いは
図3で示した水塗器具Cで皮Aの外縁周面に水を塗布し、同時に前記凹所にスプーンD(匙部を格子網目に形成し、僅かに湾曲した柄部を備える)を使用して餡(具材)Bを押し込む。
【0026】
特に皮Aの上から餡Bを押し込む作業において、受舌部23で餡Bの押し込みを受けるので、餡Bを押し込み過ぎないようにしている。
【0027】
水の塗布及び餡Bの押し込みの直後に襞折り成型部1a,1bを閉口し、皮Aの外縁周面を重ね合わせて強圧し、重ね合わせ箇所を襞折り状態で付着させる。
【0028】
そして襞折り成型部1a,1bの挟圧を解除すると、撓んでいた餡包成形部2の弾性反発力で襞折り成型部が開口し、餡包成型部2で調製された生餃子が押し上げられ、そこで器具外に取出し、次の調製に取り掛かるものである。
【0029】
勿論前記の餃子調製作業において、器具を掌に載せずに、テーブル上に載置して、皮Aの器具上への載置、餡Bの押し込み、水の塗布の各作業を行い、操作突部15a,15bを持って襞折り成型部1a,1bを閉口し、餃子を調製しても良い。
【0030】
尚水塗器具C及びスプーンDは、本調理器具と一纏めとしておくことができる。例えば水塗器具Cは、襞折り成型部1bと対応する半輪板状として、且つ襞折り成型部1bの裏面に掛け止突起16設け、当該襞折り成型部1bの裏面への収納可能な構造とする。
【0031】
またスプーンDについても適宜な大きさ及び形状に形成しておくと、
図6に示すように匙部を指孔部152に通し、柄部を襞折り成型部1a,1bの内周縦面12の下縁と可撓横板部21の空隙に挿通すると、餡包成型部2の弾性反発力で柄部が内周縦面12の下縁で抑えられ、安定した状態で一纏めとすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1a,1b 襞折り成型部
11 上面(襞折り面)
12 内周縦面
13 外周縦面
14a ヒンジ連結部(軸部)
14b ヒンジ連結部(軸受部)
15a,15b 操作突部
151 指当面部
152 指孔部
16 掛け止突起
2 餡包成型部
21 可撓横板部
22 縦板部
23 受舌部
【要約】 (修正有)
【課題】発条を備えることなく開口付勢力を備え、且つ製造の簡素化を実現できる単一部材で形成される餃子調製具を提供する。
【解決手段】輪形を二分して左右に分離状態で配した半円弧状で上面11に襞折り面を設けた襞折り成型部1a,1bと、適宜な柔軟性を備えた薄板状で前記襞折り成型部の内周縦面12間を連結する餡包成型部とを樹脂一体成型で形成すると共に、襞折り成型部1a,1bの対向縁に餡包成型部を下方に撓めて連結可能としたヒンジ連結部14a,14bを設け、餡包成型部を撓めて襞折り成型部1a,1bをヒンジ連結し、襞折り成型部1a,1bが鈍角で開口状態にして使用する。
【選択図】
図2