(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
塗装、プラスチック、着色アルミニウム、カラーステンレスなどの工業製品は、その外観の仕上がりの優劣が販売、価格競争に大きな影響を与える。特に、自動車、家電製品などの外観の色、光沢、ヘーズ(曇り度)、写像性(像鮮明度)の測定は製品管理、検査の重要な課題であり、各産業界では種々の方法が採用され、実施されている。
【0003】
写像性は、各種金属や塗装面等の表面に映り込んだ物体の像、又はガラスやプラスチックあるいはそれらの材質からなるフィルムなどを透過して見える物体の像が、鮮明にゆがみなく見えるかという度合いであり、光沢値やヘーズ値ではあらわせない視感に合った値で評価できるため、既に多くの産業分野で利用されている。
【0004】
写像性の測定原理は、光源の光をスリットに通過させ、レンズで平行光として、この平行光を試料の表面に投影し、試料を反射もしくは透過した光をレンズによって写像性測定用光学くしの上に結像させた状態で、この光学くしを左右に移動させて、写像性用光学くし上の遮光部分、透過部分を通して受光器に光の変化を与え、透過部分の透過光の最大値M、遮光部分の光のモレによって生じる透過光の最小値mをそれぞれ測定して、(M−m)÷(M+m)×100の演算によって写像性の値を求めるものである。像がくっきりと見えるとき写像性値は高く、像がぼやけて見えるとき写像性値は低くなる(特許文献1参照)。
【0005】
写像性の測定には、透過測定、反射測定(45度・60度)の3つの光学条件が主に用いられている。試料の反射率はその材質等により異なるため、反射測定の場合、写像性を測定する際の光源からの平行光の試料への入射角度は、試料の材質を考慮して適宜選択する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
写像性測定の規格としては、JIS K 7374が知られている。当該規格では、光源に関しては「JIS C 7711の継線形式S−8で、フィラメントの太さが直径0.05mm以下のものを用いる。」と規定され、光源スリットに関しては「幅は、0.03mm±0.01mmで、光源スリットの高さは、20mm以上とする。」と規定されている。ところで、上記のとおり、フィラメントの太さは0.05mm以下と非常に細い。そのため、光源の細長いフィラメントを重力方向と一致する方向(以下、重力方向と一致する方向を「縦方向」と記載することがある。)と異なる方向に配置した場合、フィラメントが重力方向に撓み、その結果、光源の幅が広がり測定の安定性に影響を与えるという問題がある。したがって、特許文献1に記載されている発明では、光源の細長いフィラメントを縦方向に配置することでフィラメントが撓むことを防止しているが、その結果、光源から受光器に至る光学系は水平展開する必要があり、装置設計の自由度が少ないという問題がある(特許文献1の
図1参照)。
【0008】
また、任意付加的な課題として
、以下の問題が挙げられる。
(ア)細長いフィラメントを縦方向に配置した場合、光源スリットも縦方向に配置することになる。そうすると、試料に入射する光も縦方向になるため、試料の配置は縦方向に限定されることになる。そのため、例えば、試料がフィルム等の非自立性の場合、クリップ等で試料を固定・保持する必要がある。しかしながら、クリップ等で試料を固定する場合、種類によっては試料にキズが付く恐れがある。更に、試料を固定する時間が必要となるため、例えば、品質管理の項目として製造ライン上での写像性測定を行うなどの場合に、作業効率が悪くなるという問題がある。
(イ)従来の写像性測定器で測定する際には、(1)感度合わせ、(2)ゼロ点あわせ、(3)測定、の3つのステップが行われる。従来の「(3)測定」のステップでは、光学くしのくし領域の一方の端部から他方の端部まで移動させ、その後、ゼロ点位置まで戻す動作を繰り返していた。そのため、複数のくし領域の中から一部のくし領域のみを測定したい場合であっても、光学くしのくし領域の一方の端部から他方の端部まで移動させる必要があり、その結果、測定時間が長くなるという問題がある。
【0009】
本出願における開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、鋭意研究を行ったところ、光源にフィラメントを含まない半導体発光素子を用いることで、光源および試料を任意の方向に配置した写像性測定器を提供できることを、新たに見出した。
【0010】
すなわち、本出願における開示の目的は、光学系の装置設計の自由度が高い写像性測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願における開示は、以下に記載する写像性測定器に関する。
【0012】
(1)写像性測定器であって、該写像性測定器は、
光源と、
試料に入射する光の像の大きさを調節するため、基板上に形成された細長の光源スリットと、
前記光を平行光にする第一レンズと、
前記平行光を前記試料に反射もしくは透過させた光を集光する第二レンズと、
遮光部分と透過部分とを有する光学くしと、
前記光学くしを移動させる駆動部と、
前記光学くしを透過した光を測定する受光器と、
を備え、
前記光源が、半導体発光素子である
写像性測定器。
(2)試料を載置できる試料台を更に含む
上記(1)に記載の写像性測定器。
(3)前記試料台に開口部が形成されている
上記(2)に記載の写像性測定器。
(4)前記試料台に、試料を載置すべき場所を示す目印が付されている
上記(2)または(3)に記載の写像性測定器。
(5)前記試料台に、試料の位置決めをする位置決め手段が形成されている
上記(2)〜(4)の何れか一つに記載の写像性測定器。
(6)前記試料台に、試料を保持する保持部が形成されている
上記(2)〜(5)の何れか一つに記載の写像性測定器。
(7)前記細長の光源スリットの長軸方向が、重力方向に対して略直交する方向に配置されている
上記(1)または(2)に記載の写像性測定器。
(8)前記光学くしは、
光透過性材料に前記遮光部分が形成されたものであり、
前記遮光部分の幅が異なる複数のくし領域を含み、
前記複数のくし領域の任意の一つのくし領域は、幅が同じである複数の遮光部分で形成され、
前記駆動部は、
ステッピングモータと、
前記ステッピングモータの移動量を制御する駆動制御部と
を含み、
前記駆動制御部は、前記ステッピングモータの回転数と前記光学くしの移動量を関連付けた情報を記憶するメモリを含み、該メモリに記憶した情報に基づき前記ステッピングモータの回転数を駆動制御することで、前記第二レンズと前記受光器との間に所期のくし領域を配置できる
上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の写像性測定器。
(9)前記試料の搬入口および搬出口を含む
上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の写像性測定器。
(10)写像性測定器であって、該写像性測定器は、
光源と、
試料に入射する光の像の大きさを調節するため、基板上に形成された細長の光源スリットと、
前記光を平行光にする第一レンズと、
前記平行光を前記試料に反射もしくは透過させた光を集光する第二レンズと、
遮光部分と透過部分とを有する光学くしと、
前記光学くしを移動させる駆動部と、
前記光学くしを透過した光を測定する受光器と、
を備え、
前記光学くしは、
光透過性材料に前記遮光部分が形成されたものであり、
遮光部分の幅が異なる複数のくし領域を含み、
前記複数のくし領域の任意の一つのくし領域は、幅が同じである複数の遮光部分で形成され、
前記駆動部は、
ステッピングモータと、
前記ステッピングモータの移動量を制御する駆動制御部と
を含み、
前記駆動制御部は、前記ステッピングモータの回転数と前記光学くしの移動量を関連付けた情報を記憶するメモリを含み、該メモリに記憶した情報に基づき前記ステッピングモータの回転数を駆動制御することで、前記第二レンズと前記受光器との間に所期のくし領域を配置できる、
写像性測定器。
【発明の効果】
【0013】
本出願で開示する写像性測定器は、光源に半導体発光素子を採用することで、光源を任意の方向に配置した写像性測定器を提供でき、装置設計の自由度が高くなる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、写像性測定器1の各実施形態について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1および
図2を参照して、第1の実施形態に係る写像性測定器1aについて説明する。
図1は反射法による写像性測定器1aの概略を示す図である。なお、
図1に示す例では、紙面の下方向(図中の矢印Zが示す方向)が重力方向である。
図2は、第1の実施形態に係る写像性測定器1aに用いることができる試料台9の各種実施形態を示す図である。
【0017】
図1に示す写像性測定器1aは、光源2、光源スリット3、第一レンズ4、第二レンズ5、光学くし6、駆動部7、受光器8を少なくとも備えている。なお、以下において、これらの構成要素を纏めて「光学系」と記載する場合がある。光源2は、半導体発光素子を用いている。半導体発光素子は、従来の光源と異なりフィラメントを使用していないことから、半導体発光素子は任意の向きに配置することができる。
【0018】
半導体発光素子としては、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(Laser Diode)等が挙げられる。
【0019】
光源スリット3は、試料Sに入射する光の像の大きさを調節するため、光源2から照射された光を絞ることができれば特に制限はない。例えば、光不透過性基板31に細長の孔を形成、或いは、ガラス等の光透過性基板32に金属皮膜等の遮光部分を形成すればよい。
【0020】
第一レンズ4は、光源スリット3を通過した光を平行光にできるレンズであれば特に制限はなく、公知のレンズを用いることができる。また、第二レンズ5は、
図1に示す例では、試料Sから反射した光を集光できれば特に制限はなく、公知のレンズを用いることができる。
【0021】
光学くし6は、遮光部分と透過部分との比が、1対1の縞模様が並んでいる。
図1に示す例では、光学くし6をくし保持部材61上に貼り付け、くし保持部材61を駆動部7で駆動しているが、例えば、光透過性ガラス等の光透過性材料に金属等を蒸着することで遮光部分を形成し、くし保持部材61を不要としてもよい。
【0022】
駆動部7は、第二レンズ5で集光した光の進行方向に対して、光学くし6を略直交方向に駆動することができれば特に制限はない。例えば、ブラシモータ、ステッピングモータ等の公知の駆動源と駆動源の回転力を水平方向の駆動力に変換するラック・アンド・ピニオン等の公知の駆動力伝達機構を組み合わせて作製することができる。また、リニアモータを用いることもでき、その場合は、駆動力伝達機構は不要である。また、駆動部7は、駆動源を制御するための駆動制御部71を含んでもよい。
【0023】
受光器8は、光学くし6の透過部分を透過した光を受光できるものであれば特に制限はなく、公知の受光器を用いればよい。そして、図示しない演算部により、受光した光量に基づき写像性値が算出される。なお、演算部は、写像性測定器1aの構成要素として含まれてもよいし、写像性測定器1aとは別体としてもよい。別体とする場合は、受光器8で測定した光量のデータを有線又は無線等により演算部に送信すればよい。
【0024】
図1に示す例では、試料Sが重力方向Zに対して略直交する面(横方向)に載置されている。従来の写像性測定器では、試料Sを縦方向に配置するため、試料Sを縦方向に保持する試料保持部が必須であった。一方、第1の実施形態に係る写像性測定器1aは、試料Sを横方向に載置できることから、試料Sがフィルム等の非自立性の試料であっても直接写像性測定器1aの筐体等に載置できる。換言すると、第1の実施形態に係る写像性測定器1aにおいて、試料保持部は必須の構成ではない。つまり、第1の実施形態は、従来の写像性測定器に必須であった試料保持部を含まなくても試料Sの写像性の測定が可能な写像性測定器1aといえる。第1の実施形態に係る写像性測定器1aでは、図示は省略するが、光学系を収納するための筐体に第一レンズ4を通過した平行光が投影する位置、或いは、試料Sを載置する位置に目印を付しておくことで、試料Sを載置する位置が分かるようにしておけばよい。
【0025】
ところで、反射法により写像性を測定する場合、入射光と反射光は所定の角度Xを有する。換言すると、光源2から光源スリット3を通過し試料Sに入射する光は、重力方向と所定の角度を持つことになる。したがって、光源として従来のフィラメントを用いて
図1に示す位置に配置した場合、フィラメントの中央が重力方向に撓み湾曲し、光源の幅が広がり直線状の光源スリット3と一致しなくなる。一方、第1の実施形態に係る写像性測定器1aは光源2として半導体発光素子を用いている。そのため、光源2から光源スリット3を通過し試料Sに入射する光が重力方向と所定の角度を有したとしても、光源スリット3に入射する光が変化しないという効果を奏する。
【0026】
また、
図1に示すように第1の実施形態に係る写像性測定器1aは試料Sを横方向に載置している。したがって、試料Sが非自立性であっても従来のように試料保持部を用いず測定することも可能である。また、例えば、試料Sの写像性を先ず測定し、次いで、保護フィルム等を試料Sに重ねた際の写像性を測定する場合、クリップ等で試料Sと保護フィルム等を留める作業が不要となるので、作業効率が向上するという効果を奏する。加えて、半導体発光素子の光量は、フィラメントを用いた光源より光量が多い。したがって、光学くし6の移動速度を従来のフィラメントを用いた光源より早くしても、写像性の演算をするために必要な積算光量が得られることから、測定時間を短縮できる。
【0027】
上記のとおり、第1の実施形態に係る写像性測定器1aは、従来の試料保持部は必須ではないが、試料Sの載置の利便性及び/又はズレを防止するため、必要に応じて試料台9を設けてもよい。
図2は第1の実施形態に係る写像性測定器1aに用いることができる試料台9の各種実施形態を示している。
図2Aは、試料台9を形成する基板91上に、試料Sを載置すべき場所を示す目印92を付した例を示している。
図2Aに示す例では、試料台9を形成する基板91上に、第一レンズ4を通過した平行光が投影する位置に目印92が付されている。なお、平行光が投影する位置に代え、試料Sを載置すべき領域がわかる目印としてもよい。
図2Aに示す例では、試料Sを載置する際の利便性が向上する。
【0028】
図2Bおよび
図2Cは、試料台9を形成する基板91上に、試料Sの位置決め手段93を形成した例を示している。
図2Bに示す例は、試料Sを位置決めするためのガイド部材93aが形成されている。ガイド部材93aは、試料台9の平行光が投影する位置に試料Sをガイドすることができれば、設置場所や大きさに特に制限はない。例えば、試料Sのサイズが一定の場合、ガイド部材93aは
図2Bに示すように試料Sを挟むように2カ所に設けることができる。なお、図示は省略するが、ガイド部材93aは、3カ所、或いは、4カ所に形成されていてもよい。また、試料Sのサイズが変わる場合、図示は省略するが、ガイド部材93aは一か所、或いは、
図2Cに示すように試料Sの隅を位置決めできるように、2カ所に隣接するように形成されてもよい。換言すると、ガイド部材93aは、基板91上に少なくとも一か所以上形成されていればよい。また、図示は省略するが、位置決め手段93として、ガイド部材93aに代え、基板91に試料Sを嵌める凹部が形成されていてもよい。
【0029】
上記
図2Aに示した目印92を付した試料台9、或いは、
図2B乃至
図2Cに示した位置決め手段93を設けた試料台9、換言すると、試料Sの保持部を有しない試料台9は、光源2として半導体発光素子を採用することで可能となる新規な構成である。ただし、試料台9として、従来と同様、試料Sの保持部を形成することを妨げるものではない。なお、本明細書において、「保持部」とは、試料Sを試料台9の基板91方向に押圧して保持するための機構を意味し、試料Sを試料台9の基板91に押圧しない位置決め手段93とは異なる。
図2Dは、
図2Aに示す試料台9に保持部94を形成した例、
図2Eは
図2DのX−X’断面図を示している。
図2Dおよび
図2Eに示す例では、板バネ94aの一端をネジ等の固定部材94bで基板91に固定することで保持部94を形成する例を示しているが、保持部94は試料Sを保持できれば特に制限はない。また、
図2Fは、
図2Bに示す試料台9に保持部94を形成した例を示している。
図2Fに示す例では、保持部94は一か所に形成されているが、保持部94を2カ所に形成してもよい。
【0030】
(第2の実施形態)
図3および
図4を参照して、第2の実施形態に係る写像性測定器1bについて説明する。
図3は反射法による写像性測定器1bの概略を示す図である。なお、
図3に示す例では、紙面の下方向(図中の矢印Zが示す方向)が重力方向である。
図4は、第2の実施形態に係る写像性測定器1bに用いることができる試料台9の各種実施形態を示す図である。第2の実施形態に係る写像性測定器1bは、(1)光学系が試料Sより重力方向の下方側に配置されている点、(2)試料台9を構成要素として含み、試料台9に開口部95が形成されている点、以外は、第1の実施形態に係る写像性測定器1aと同様である。
【0031】
図4Aは第2の実施形態に係る写像性測定器1bに用いられる試料台9に試料Sを載置した際の上面図、
図4Bは
図4AのY−Y’断面図である。
図4Bの紙面の下方向(図中の矢印Zが示す方向)が重力方向である。
図4Aおよび
図4Bに示すように、第2の実施形態に係る写像性測定器1bは、試料台9に開口部95が形成されている。そのため、光学系を試料Sの下方に配置しても、開口部95を介して光源2からの光Lを試料Sに照射し、試料Sで反射した光Lを受光器8に送ることができるので、試料Sの写像性を測定できる。また、
図4Cおよび
図4Dに示すように、第2の実施形態に係る写像性測定器1bに用いられる試料台9も、第1の実施形態の試料台9と同様、必要に応じて、位置決め手段93(ガイド部材93aまたは凹部)、保持部94を形成してもよい。なお、第2の実施形態に係る写像性測定器1bに用いられる試料台9は、開口部95が試料Sを載置する際の目印となるが、必要に応じて、試料Sを載置すべき領域がわかる目印を付けてもよい。
【0032】
(第3の実施形態)
図5を参照して、第3の実施形態に係る写像性測定器1cについて説明する。
図5は透過法による写像性測定器1cの概略を示す図である。なお、
図5に示す例では、紙面の下方向(図中の矢印Zが示す方向)が重力方向である。第3の実施形態に係る写像性測定器1bは、光源2、光源スリット3、第一レンズ4が、試料台9より重力方向の下側、第二レンズ5、光学くし6、駆動部7、受光器8が、試料台9より重力方向で上側に配置されているが、光学系の配置は上下逆でもよい。なお、試料台9は開口部95が形成されていれば特に制限はなく、第2の実施形態で記載した試料台9を用いることができる。
【0033】
(第4の実施形態)
図6を参照して、第4の実施形態に係る写像性測定器1dについて説明する。
図6は反射法による写像性測定器1dの概略を示す図である。上記のとおり、光源2として半導体発光素子を採用することで「試料の配置は縦方向に限定される」という課題を解決できるが、半導体発光素子を採用することで受光器8の単位時間当たりの光量を多くでき、その結果、測定時間を短縮できることを新たに見出した。したがって、
図6に示すように、光源2に半導体発光素子を用いる以外は、従来の反射法による写像性測定器と同様の構成配置としても、測定時間が短縮できるという効果を奏する。
【0034】
(第5の実施形態)
図7を参照して、第5の実施形態に係る写像性測定器1eについて説明する。
図7は透過法による写像性測定器1eの概略を示す図である。第4の実施形態における説明のとおり、半導体発光素子を採用することで測定時間を短縮できるという効果を奏する。したがって、
図7に示すように、光源2に半導体発光素子を用いる以外は、従来の透過法による写像性測定器と同様の構成配置としても、測定時間が短縮できるという効果を奏する。
【0035】
第4および第5の実施形態に係る写像性測定器1d、eの光源スリット3の長軸方向は、
図6および
図7に示すとおり、重力方向と一致する。一方、第1、第2、および第3の実施形態に係る写像性測定器1a〜cでは、
図1、
図3および
図5に示すとおり、光源スリット3の長軸方向は重力方向と略直交である。また、
図8に示すように、第1の実施形態に係る写像性測定器1aの試料Sおよび光学系を重力方向に対して傾いた状態となるように配置することもできる。したがって、第1〜第5の実施形態および
図8から明らかなように、光源として半導体発光素子を採用することで、光源2の配置、光源スリット3の長軸方向、光源スリット3を通過し試料Sに光が入射する角度、或いは、重力方向に対する試料Sの配置角度を任意に設定できる。つまり、重力方向に対して任意の角度で光学系を配置することも可能である。したがって、実施形態に係る写像性測定器1は、反射法、透過法を問わず、装置設計の自由度が格段に向上する。
【0036】
(実施形態に係る写像性測定器1の任意付加事項1)
実施形態に係る写像性測定器1に対し、例えば、反射ミラー等の光学用ミラーを光学系に配置することで、光軸の向きを変えてもよい。
【0037】
(実施形態に係る写像性測定器1の任意付加事項2)
実施形態に係る写像性測定器1は、半導体発光素子を光源として採用することで、測定時間を短縮できる。したがって、写像性の試験が必要な製品の製造ラインに実施形態に係る写像性測定器1を組み込んでもよい。写像性測定器1は筐体で覆われている。したがって、製造ラインに組み込む場合は、写像性測定器1の筐体に試料Sの搬入口および搬出口を形成し、搬入口および搬出口から入射する光が、写像性の測定に影響を与えないように、遮光カーテン等を設ければよい。そして、製造ラインで搬送する製品(試料)の重力方向に対する角度に応じて、写像性測定器1の光学系の角度を調整すればよい。
【0038】
(写像性測定器の測定時間を短縮するための構成例)
図9を参照して、写像性測定器の測定時間を短縮するための構成例について説明する。
図9は、JIS K 7374で規定されている光学くし6を示す図である。
図9に示す例では、透明ガラスに金属を蒸着し、蒸着した金属が遮光部分を形成し、金属が蒸着していない部分が透過部分を形成する。そして、端部に暗部6aが形成され、暗部に続き、遮光部分と透過部分との比が1:1で、その幅が0.125mmのくし領域6b、幅が0.25mmのくし領域6c、幅が0.5mmのくし領域6d、幅が1.0mmのくし領域6e、幅が2.0mmのくし領域6fが形成されている。
【0039】
従来の写像性測定器で測定する際には、(1)感度合わせ、(2)ゼロ点あわせ、(3)測定、の3つのステップが行われる。なお、前回の試料と同様の反射(透過)光量が得られると分かっている場合には、前記(1)感度合わせ、および、(2)ゼロ点あわせ、は省略が可能である。従来の「(3)測定」のステップでは、光学くし6を暗部6aから6fまで移動させ、その後、ゼロ点位置まで戻す動作を繰り返していた。そのため、複数のくし領域の中から一部のくし領域のみ、例えば、くし領域6eを透過する光量のみを測定したい場合であっても、光学くし6を暗部6aから6fまで移動させる必要があり、その結果、測定時間が長くなるという問題があった。
【0040】
一方、測定時間を短縮するための構成例では、駆動部7は、(1)ステッピングモータ(図示は省略)、(2)ステッピングモータの移動量を制御する駆動制御部71、を含んでいる。そして、駆動制御部71は、ステッピングモータの回転数と光学くしの移動量を関連付けた情報を記憶するメモリを含んでおり、該メモリに記憶した情報に基づき前記ステッピングモータの回転数を駆動制御することで、第二レンズ5と受光器8との間に所期のくし領域を配置できる。したがって、従来の写像性測定器と異なり、例えば、くし領域6eを透過する光量のみを測定したい場合は、光学くし6全体ではなく、くし領域6eを透過する光を測定できる距離のみ光学くし6を移動すればよく、測定に要する時間を短縮できる。
【0041】
(写像性測定器1の測定時間を短縮するための構成例)で記載した構成例は、本明細書で開示する光源2として半導体発光素子を用いた写像性測定器1に適用できる。半導体発光素子による単位時間当たりの光量の増加による測定時間の短縮と当該構成例による測定時間の短縮により、従来のフィラメントを含む光源を用いた写像性測定器と比較して、測定時間の大幅な短縮が可能である。なお、本構成例は、光学くし6の駆動制御により測定時間を短縮していることから、光源の種類を問わない。換言すると、従来のフィラメントを含む光源を用いた写像性測定器にも適用が可能である。従来の写像性測定器に(写像性測定器1の測定時間を短縮するための構成例)で記載した構成例を適用することで、従来の写像性測定器の測定時間を短縮できる。
【解決手段】写像性測定器1であって、該写像性測定器1は、光源2と、試料Sに入射する光の像の大きさを調節するため、基板上に形成された細長の光源スリット3と、前記光を平行光にする第一レンズ4と、前記平行光を前記試料Sに反射もしくは透過させた光を集光する第二レンズ5と、遮光部分と透過部分とを有する光学くし6と、前記光学くし6を移動させる駆動部7と、前記光学くし6を透過した光を測定する受光器8と、を備え、前記光源2が、半導体発光素子である。