特許第6481195号(P6481195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481195
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】電池パックの車載構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20190304BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   B60K1/04 Z
   B62D25/20 G
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-175660(P2014-175660)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49851(P2016-49851A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】ルー ウェン レオン
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−83601(JP,A)
【文献】 実開平5−10118(JP,U)
【文献】 特開2009−101768(JP,A)
【文献】 実開昭62−176189(JP,U)
【文献】 実開昭57−204973(JP,U)
【文献】 実開昭48−87716(JP,U)
【文献】 特開昭57−134366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用の電池を収容する電池パックの車載構造において、
前記電池パックに付設され、当該電池パック内に配置された高電圧回路を遮断するサービスプラグと、
前記電池パックの上方に設けられるフロアパネルと、
前記フロアパネルに形成され、前記サービスプラグを操作するときに使用される操作孔と、
前記操作孔を塞ぐように、前記フロアパネルに複数の固定点によって取り付けられるカバー部材と、
前記カバー部材の表面に取り付けられることにより、当該カバー部材を補強する補強部材と
前記固定点に締結される締結部材とを備え、
前記補強部材は、隣接した前記固定点間を結ぶ直線に架け渡されるように形成され
前記補強部材の端部は、前記補強部材を前記カバー部材から取り外した状態で前記締結部材の頭部に形成される係合部と係合する
ことを特徴とする電池パックの車載構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックの車載構造において、
前記カバー部材の外縁部を、複数の前記固定点によって取り付けるようにし、
前記補強部材は、
前記カバー部材の中央部に配置される基部と、
隣接した前記固定点間を結ぶ直線に架け渡されるように、前記基部から前記カバー部材の外側に向けて張り出す複数の張出部とを有する
ことを特徴とする電池パックの車載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に搭載された電池パックのサービスプラグを、車体側操作孔を介して、操作することができる電池パックの車載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動車両には、走行用駆動源となる電動機が設けられるだけでなく、その電動機に電力を供給するための電池パックも搭載されている。このような電池パックにおいては、車室や荷室等の容積を確保することを目的として、当該車室や荷室の下部を形成するフロアパネルの下方に設置されることが、一般的となっている。
【0003】
また、電池パック内には、高電圧が導電する導電部品が数多く配置されている。これにより、電池パックをメンテナンスする場合には、当該電池パックに付設されるサービスプラグを操作することにより、電池パック内の高電圧回路を遮断して、作業者の安全を確保するようにしている。このとき、作業者によるサービスプラグの操作については、車室内や荷室内から、フロアパネルに形成されるサービスプラグ用の操作孔を介して行われていた。
【0004】
そして、上述したような、従来の電池パックの車載構造としては、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−159235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記従来の電池パックの車載構造においては、操作孔を使用しないときには、その操作孔をカバー部材によって塞ぐようにしている。しかしながら、カバー部材は、外縁部が操作孔の開口縁部に取り付けられるため、操作孔を塞いだ状態のカバー部材においては、特に、その中央部分が強度不足になり易い。これにより、車室内や荷室内からの荷重を、カバー部材によって十分に支えきれず、電池パックに悪影響を与えるおそれがある。
【0007】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、電池パックに対するメンテナンス作業性を維持しつつ、電池パックを十分に保護することができる電池パックの車載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第1の発明に係る電池パックの車載構造は、
車両駆動用の電池を収容する電池パックの車載構造において、
前記電池パックに付設され、当該電池パック内に配置された高電圧回路を遮断するサービスプラグと、
前記電池パックの上方に設けられるフロアパネルと、
前記フロアパネルに形成され、前記サービスプラグを操作するときに使用される操作孔と、
前記操作孔を塞ぐように、前記フロアパネルに複数の固定点によって取り付けられるカバー部材と、
前記カバー部材の表面に取り付けられることにより、当該カバー部材を補強する補強部材と
前記固定点に締結される締結部材とを備え、
前記補強部材は、隣接した前記固定点間を結ぶ直線に架け渡されるように形成され
前記補強部材の端部は、前記補強部材を前記カバー部材から取り外した状態で前記締結部材の頭部に形成される係合部と係合する
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第2の発明に係る電池パックの車載構造は、
前記カバー部材の外縁部を、複数の前記固定点によって取り付けるようにし、
前記補強部材は、
前記カバー部材の中央部に配置される基部と、
隣接した前記固定点間を結ぶ直線に架け渡されるように、前記基部から前記カバー部材の外側に向けて張り出す複数の張出部とを有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従って、本発明に係る電池パックの車載構造によれば、操作孔を塞ぐカバー部材に、隣接した固定点間を結ぶ直線に架け渡すように形成した補強部材を、取り付けることにより、カバー部材の固定点を固定した際に発生する固定力が及ばない範囲を、補強することができる。これにより、電池パックに対するメンテナンス作業性を維持しつつ、電池パックを十分に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例に係る電池パックの車載構造の縦断面図である。
図2図1の要部拡大図であって、(a)は図1のA矢視図、(b)は同図(a)のB−B矢視断面図である。
図3】補強部材を締結部材に係合させる様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電池パックの車載構造について、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1に示すように、電動機の駆動力によって走行する電動車両の内部には、車室11が区画形成されている。そして、車室11の底部は、フロアパネル12によって形成されており、このフロアパネル12の下方には、蓄えた電力を上記電動機に供給するための電池パック20が搭載されている。
【0015】
なお、フロアパネル12は、電動車両の骨格を構成する車体部材となっている。また、電池パック20は、例えば、複数の電池セルを積層してモジュール化した電池モジュールを、樹脂製の電池パックカバー21によって、上下方向から覆って収容したものとなっている。
【0016】
更に、車室11内には、前部座席13及び後部座席14が、車両前方側から後方側に向って順に設けられており、これら前部座席13及び後部座席14は、フロアパネル12の上面(車室11の底面)に支持されている。
【0017】
一方、フロアパネル12は、前部12a、後部12b、及び、凹部(車体側凹部)12cを有している。前部12aの上面には、前部座席13が支持されており、後部12bの上面には、後部座席14が支持されている。
【0018】
そして、後部12bは、前部12aよりも上方に配置されている。更に、凹部12cは、車両前後方向において、前部12aと後部12bとの間に配置されており、前部12aの後端及び後部12bの前端から下方に向けて凹むように形成されている。つまり、凹部12cは、後部座席14に着座する乗員の足の置き場所となっている。
【0019】
これに対して、フロアパネル12の下方に搭載される電池パック20においては、電池パックカバー21の上部(上面)における車両前後方向の形状が、フロアパネル12における車両前後方向の凹凸形状に対応したものとなっている。
【0020】
即ち、電池パックカバー21の上部における車両前後方向中間部には、凹部(電池側凹部)22が、フロアパネル12の凹部12cと上下方向において対向するように形成されている。凹部22は、電池パックカバー21の上面から下方に向けて凹むように形成されており、この凹部22の底面22aは、電池パックカバー21の上面を構成する面の中で、最も低い位置に配置されている。
【0021】
また、図1及び図2(a),(b)に示すように、電池パック20内には、サービスプラグ25が付設されている。このサービスプラグ25は、絶縁構造を有することにより、電池パック20のメンテナンス時において、当該電池パック20内に配置される高電圧回路を遮断することが可能となっている。具体的には、サービスプラグ25を電池パック20から引き抜くことにより、高電圧回路を遮断することができる一方、サービスプラグ25を電池パック20に押し込むことにより、高電圧回路を接続することができる。
【0022】
ここで、サービスプラグ25は、凹部22と上下方向において対向するように設けられており、その底面22aよりも上方に突出している。これにより、底面22aには、膨出部(サービスプラグカバー部)23が、サービスプラグ25の周囲を覆うように、一体的に形成されている。
【0023】
そして、膨出部23は、底面22aから上方に向けて膨出し、且つ、凹部22内から上方に向けて突出しない程度に、形成されている。更に、膨出部23の頂部には、サービスプラグ25を操作する際に使用する操作孔(電池側操作孔)23aが、形成されており、この操作孔23aには、蓋部材24が取り付けられている。つまり、作業者(乗員)は、蓋部材24を取り外すことにより、操作孔23aを介して、膨出部23内に収納されたサービスプラグ25を操作することができる。
【0024】
一方、フロアパネル12の凹部12cには、操作孔(車体側操作孔)12dが、操作孔23aと上下方向において対向するように形成されている。具体的には、操作孔12dは、操作孔23aの直上に配置されている。更に、操作孔12dの開口面積は、操作孔23aの開口面積よりも大きくなっており、操作孔12dの開口縁部は、操作孔23aの開口縁部よりも外側に位置している。
【0025】
そして、凹部12cの底面には、矩形をなした板状のカバー部材31が、操作孔12dを塞ぐように設けられている。このカバー部材31は、枠状のシール部材32を介して、凹部12cの底面に取り付けられている。
【0026】
このとき、シール部材32は、操作孔12dの開口縁部を囲むように、凹部12cに設けられている。また、カバー部材31は、外縁部がシール部材32の外側まで十分に張り出すように形成されており、四隅の各角部における固定点が、ボルトやねじ等の締結部材33によって固定されている。そして、締結部材33の頭部33aには、直線状(スリット状)の溝となる係合部33bが形成されている。
【0027】
更に、カバー部材31の上面には、十字形をなした板状の補強部材34が、取付部材35を介して、取り付けられている。補強部材34は、カバー部材31をその上面側から補強するためのものであって、全体の厚さが、一様で、且つ、カバー部材31の厚さよりも薄くなるように形成されている。
【0028】
補強部材34には、基部34a及び4つの張出部34bが形成されている。基部34aは、補強部材34の中央部に配置されており、張出部34bは、基部34aからカバー部材31の外側に向けて張り出すように延設している。そして、張出部34bの下面(裏面)には、取付部材35が装着されている。この取付部材35は、補強部材34をカバー部材31の上面に取り付けるものであって、例えば、磁石やテープ等となっている。
【0029】
以上より、補強部材34をカバー部材31に取り付ける場合には、基部34を、カバー部材31の中央部に配置すると共に、張出部34を、隣接した締結部材33間の中心軸同士を結ぶ直線に架け渡すように配置する。このように、補強部材34を取り付けることにより、カバー部材31における締結部材33を締め付けた際に発生する締付力(固定力)が及ばない範囲を、補強部材34によって補強することができる。
【0030】
更に、図3に示すように、補強部材34の厚さは、締結部材33の頭部33aに形成される係合部33bの溝幅よりも薄くなるように形成されている。これにより、張出部34は、係合部33bと係合可能となっており、張出部34bの先端(張出端)を係合部33bに係合させた状態で、補強部材34を回転させることにより、締結部材33を締め付けたり、緩めたりすることができる。
【0031】
つまり、作業者は、補強部材34によって締結部材33を緩めることにより、カバー部材31を取り外すことができ、フロアパネル12の操作孔12dを介して、蓋部材24の取り付け及び取り外しを行うことができる。
【0032】
よって、補強部材34は、取り付けられたカバー部材31を補強するための部材となるだけでなく、締結部材33を締め付けたり緩めたりするための工具にもなっている。言い換えれば、補強部材34は、取り付けられたカバー部材31を補強するための機能と、カバー部材31の取り付け及び取り外しを行うための機能とを備えている。
【0033】
以上より、サービスプラグ25を操作する場合には、先ず、補強部材34をカバー部材31から取り外す。
【0034】
次いで、図3に示すように、取り外した補強部材34の張出部34bの先端を、締結部材33の係合部33bに係合させ、補強部材34を回転させる。これにより、締結部材33を緩めることができるので、カバー部材31をフロアパネル12の凹部12cから取り外すことができる。
【0035】
そして、フロアパネル12の操作孔12dを介して、蓋部材24を膨出部23の操作孔23aから取り外す。これにより、車体側の操作孔12dと、電池パック側の操作孔23aとが、連通するため、サービスプラグ25の操作が可能となる。
【0036】
また、サービスプラグ25の操作が完了した場合には、フロアパネル12の操作孔12dを介して、蓋部材24を膨出部23の操作孔23aに取り付ける。
【0037】
次いで、図3に示すように、補強部材34の張出部34bの先端を、締結部材33の係合部33bに係合させ、補強部材34を回転させる。これにより、締結部材33を締め付けることができるので、カバー部材31をフロアパネル12の凹部12cに取り付けることができる。
【0038】
そして、補強部材34を、取付部材35を介して、カバー部材31の上面に取り付けて、元の位置に収納する。
【0039】
なお、上述した実施形態においては、補強部材34をカバー部材31における平面となる上面に取り付けるようにしているが、例えば、カバー部材31の上面に、補強部材34の外形形状(輪郭)に対応した凹部を形成し、この凹部内に、補強部材34を収納するようにしても構わない。このとき、凹部に収納した補強部材34が、その凹部から突出するか否かについては、車体構造によって適宜調整する。
【0040】
更に、上述した実施形態においては、カバー部材31の固定点を固定する固定部材として、締結部材33を用いているが、例えば、樹脂製クリップなどのクリップ部材や、接着剤を用いても構わない。
【0041】
従って、本発明に係る電池パックの車載構造によれば、フロアパネル12の操作孔12dを塞ぐカバー部材31に、隣接した締結部材33間を結ぶ直線に架け渡すように形成した補強部材34を、取り付けることにより、カバー部材31における締結部材33を締め付けた際に発生する締付力が及ばない範囲を、補強することができる。これにより、電池パック20に対するメンテナンス作業性を維持しつつ、電池パック20を十分に保護することができる。
【0042】
また、補強部材34の張出部34を、固定点に締結された締結部材33の係合部33bと係合可能とすることにより、補強部材34を、締結部材33を締め付けたり緩めたりする際の工具として使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る電池パックの車載構造においては、電池パックのサービスプラグの直上に位置するカバー部材を補強して、電池パックを保護することができるため、電動車両の安全性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
11 車室
12 フロアパネル
12a 前部
12b 後部
12c 凹部
12d 操作孔
13 前部座席
14 後部座席
20 電池パック
21 電池パックカバー
22 凹部
22a 底面
23 膨出部
23a 操作孔
24 蓋部材
25 サービスプラグ
31 カバー部材
32 シール部材
33 締結部材
33a 頭部
33b 係合部
34 補強部材
34a 基部
34b 張出部
35 取付部材
図1
図2
図3