(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481212
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ソーラーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20190304BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-201162(P2017-201162)
(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公開番号】特開2019-29633(P2019-29633A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2017年10月17日
(31)【優先権主張番号】106124903
(32)【優先日】2017年7月25日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517348215
【氏名又は名称】海力雅集成股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】黄 庭輝
【審査官】
島田 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−145810(JP,A)
【文献】
特開平11−298029(JP,A)
【文献】
特開2016−063019(JP,A)
【文献】
特開2013−229576(JP,A)
【文献】
特開2013−206926(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0315209(US,A1)
【文献】
特表2015−533028(JP,A)
【文献】
特開2015−138891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/02−31/078
H01L31/18−31/20
H01L51/42−51/48
H02S10/00−10/40
H02S30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面および前記第1表面と反対する側にある第2表面を有する封止層と、
前記封止層に埋め込まれた複数の太陽電池であって、互いに隣り合う太陽電池の間に間隔を有する複数の太陽電池と、
前記封止層の前記第1表面に結合され、前記間隔の位置に対応する第1パターン層と、
前記封止層の前記第1表面および前記第1パターン層に結合される第1透光板と、
前記封止層の前記第2表面に結合される第2透光板と、
を含み、
前記封止層の前記第1表面および/または前記第2表面に結合され、前記封止層の端部に位置する第2パターン層をさらに含み、
前記第1パターン層および前記第2パターン層の模様および色は、前記太陽電池の模様および色と同じである
ソーラーモジュール。
【請求項2】
前記第2パターン層および前記第1パターン層は、同じ材料からなる、請求項1に記載のソーラーモジュール。
【請求項3】
前記封止層の外囲に配置され、前記第2パターン層と重なるように前記第2パターン層の位置に対応するシール材をさらに含む、請求項1に記載のソーラーモジュール。
【請求項4】
前記シール材と前記太陽電池との間は、前記間隔とは異なる他の間隔を有する、請求項3に記載のソーラーモジュール。
【請求項5】
前記第2パターン層は、前記他の間隔を遮蔽する、請求項4に記載のソーラーモジュール。
【請求項6】
前記第2パターン層の塗布面積は、前記シール材の塗布面積と同じまたはそれよりも大きい、請求項3に記載のソーラーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関し、特に複数の太陽電池を整合するソーラーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
建物のファサードに適用されるシリコン型ソーラーモジュールは、建物の品質の要求を満たすために、高い耐久性と安全性を有すること、および外観のパターンの外観が滑らかであることが必要である。
【0003】
図1Aに示すように、従来のシリコン型ソーラーモジュール1は、ガラスカバー12とバックシート11を用いて、直列に溶接された太陽電池13を透明または部分的に白色の封止層10内に封止した後、この封止構造の周囲にフォームテープ14でアルミフレーム15を結合する。封止層10を形成する材料としては、エチレン・酢酸ビニル(Ethylene−VinylAcetate、EVAとも略す)共重合体またはポリビニルブチラール(PVB)であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、耐久性と安全性の点から、前記ソーラーモジュール1は、建物のファサードに設置する要求を満たしていない。例えば、前記ソーラーモジュール1を長時間使用した後、バックシート11が風化しやすくなるので、ソーラーモジュール1が破損するか、あるいは、ソーラーモジュール1におけるバックシート11が発火しやすくなる。
【0005】
このため、バックシートをガラス板11'に置き換えた技術として、
図1Bに示すようなソーラーモジュール1’が開発された。それは、ダブルガラスを組み合わせた封止構造を採用する、すなわち、ガラスカバー12とガラス板11'を用いて、直列に溶接された太陽電池13を前記封止層10内に封止することにより、ソーラーモジュール1’は、風化の問題を回避でき、使用寿命を他の建築材料と同じになるように延ばし、構造安全性を向上させて発熱・発火のリスクを低減できる。
【0006】
しかし、前記ソーラーモジュール1’において、光線は、太陽電池13の間の隙間wを通過し、ガラス板11'を介して建物に照射するので、透明または部分的に白色の封止層10のどちらを採用するかに関わらず、外観としては、いずれも太陽電池13の格子状パターンを示す。よって、建物が醜くなり、美観の要求を満たすことができず、また、紫外線の照射により前記封止層10が黄変しやすくので、建物外観の老朽化を促進してしまう。
【0007】
また、従来のソーラーモジュール1’をファサードに用いる場合のサイズは、建築仕様に合わせる必要があるので、従来のシリコン型ソーラーモジュールの標準サイズ(例えば、60個の太陽電池である1656mm×992mmのサイズ、または72個の太陽電池である1956mm×992mmサイズ)ではなく、例えば、600mm×1200mmまたは900mm×1800mmとすることがある。したがって、透明または部分的に白色の封止層10を採用するとき、太陽光は、前記ソーラーモジュール1’の上にある非常に大きい領域を直接に通過して、太陽電池13の間の隙間wを経由し、建物外壁に照射できるので、前記ソーラーモジュール1’の建物外壁を遮蔽する効果を達成できなくなる。このため、建物外壁の日照時の温度が非常に高いので、温度を調整する時のエアコン(またはクーラー)の電力消費量を増やす必要があり、全体のエネルギー消費量に占める建物のエネルギー消費量(例えば、エアコン用の電力消費量など)の割合が非常に高く(約24%以上)、省エネのニーズに応えることは困難である。
【0008】
したがって、如何にして従来の市販ソーラーモジュールまたは建物一体型ソーラーモジュール(BIPVソーラーモジュール)の技術の様々な問題点を解決するかは、重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、第1表面および第1表面と反対する側にある第2表面を有する封止層と、封止層に埋め込まれた複数の太陽電池であって互いに隣り合う太陽電池の間に間隔を有する複数の太陽電池と、封止層の第1表面に結合され、間隔の位置に対応する第1パターン層と、を含むソーラーモジュールを提供する。
【0010】
本発明のソーラーモジュールにおいて、それらの太陽電池は、電気的に直列に接続されてもよい。
【0011】
本発明のソーラーモジュールは、封止層の第1表面および第1パターン層に結合される第1透光板をさらに含むことができる。
【0012】
本発明のソーラーモジュールは、封止層の第2表面に結合される第2透光板をさらに含むことができる。
【0013】
本発明のソーラーモジュールは、封止層の第1表面および/または第2表面に結合され、封止層の端部に位置する第2パターン層をさらに含むことができる。また、例えば、第2パターン層および第1パターン層は、同じ材料からなることができる。好ましくは、第1パターン層および第2パターン層の模様および色は、太陽電池の模様および色と同じである。
【0014】
一方、本発明のソーラーモジュールは、封止層の外囲に配置され、第2パターン層と重なるように第2パターン層の位置に対応するシール材をさらに含むことができる。また、例えば、シール材と太陽電池との間は、他の間隔を有することができる。好ましくは、第2パターン層の塗布面積は、シール材の塗布面積と同じまたはそれよりも大きく、第2パターン層は、他の間隔を遮蔽する。
【発明の効果】
【0015】
上記の内容から分かるように、本発明のソーラーモジュールにおいて、主に、互いに隣り合う太陽電池の間の間隔の位置に対応するように第1パターン層を配置することにより、間隔を通過した光線を吸収して、光線を第1透光板に通過させないので、建物外壁を遮蔽するという効果を達成できる。したがって、従来技術に比べて、本発明のソーラーモジュールは、建物外壁の日照時の温度を下げることができるため、温度を調整する時のエアコン(またはクーラー)の電力消費量を低減し、全体のエネルギー消費量に占める建物のエネルギー消費量の割合を効果的に低減して、省エネのニーズに応えることができる。
【0016】
また、第1パターン層および第2パターン層の配置により、本発明のソーラーモジュールは、その外観に太陽電池の格子状パターンを示さず、建物が醜くなる問題を回避できるので、美観の要求を満たすことができる。
【0017】
また、第1パターン層および第2パターン層は、間隔位置を通過した光線を吸収するため、封止層の紫外線照射量を低減して、封止層の黄変程度を減少できるので、従来技術に比べて、本発明のソーラーモジュールは、建物外観の老朽化の速度を遅らせる目的を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは従来のソーラーモジュールの断面模式図である。
【
図1B】
図1Bは従来のもう一つのソーラーモジュールの断面模式図である。
【
図2】
図2は本発明のソーラーモジュールの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を具体的な実施態様によって説明する。当業者は、本発明の明細書の記載内容に基づいて、本発明のほかの利点および効果を容易に理解できる。
【0020】
ただし、本発明の図面に示されている構造、割合、サイズは、いずれも本発明の実施可能な範囲を限定する限定条件ではなく、本発明の明細書の開示内容と合わせて当業者に理解・閲読させるためのものであるため、技術的に実質的な意味がなく、本発明の生じる効果および達成できる目的を損なわない範囲であれば、任意の構造の修飾、割合関係の変更、またはサイズの調整は、本発明に開示されている技術内容に含まれる範囲に入るべきである。また、本発明の明細書における「上」および「その」などの用語は、本発明の実施可能な範囲を限定するためのものではなく、説明の便利だけのために使用され、技術内容が実質的に変更されない範囲であれば、その相対関係の変更または調整は、本発明の実施可能な範囲とするべきである。
【0021】
図2は、本発明のソーラーモジュール2の断面模式図である。
図2に示すように、前記ソーラーモジュール2は、封止層20と、第1透光板21と、第2透光板22と、複数の太陽電池23と、第1パターン層24と、第2パターン層25a、25bと、シール材26とを含む。
【0022】
前記封止層20は、第1表面20aおよび前記第1表面20aと反対する側にある第2表面20bを有する。
【0023】
本発明の実施態様において、前記封止層20を形成する材料としては、透明材料、半透明材料、または部分的に白色の材料であり、例えば、エチレン・酢酸ビニル(EVAとも略す)共重合体、ポリビニルブチラール(PVB)またはポリオレフィン(Polyolefin。POとも略す)が挙げられるが、上記の例に限定されない。
【0024】
前記太陽電池23は、互いに隣り合う太陽電池23の間に間隔tを有するように、分離して前記封止層内20に埋め込まれる。前記太陽電池23は、複数の回路(非図示)にはんだ付けするように、互いに直列に電気的な接続を示す。
【0025】
前記第1パターン層24は、前記封止層20の第1表面20aに配置され、前記間隔の位置に対応する。
【0026】
本発明の実施態様において、前記第1パターン層24を形成する材料としては、釉薬(glaze)である。
【0027】
前記第1透光板21は、ガラス板または他の適宜な材料であり、前記封止層20の第1表面20aと前記第1パターン層24に結合される。
【0028】
前記第2透光板22は、ガラス板または他の適宜な材料であり、前記封止層20の第2表面20bに結合される。
【0029】
前記第2透光板22は、前板であり、光線を進入させて、太陽電池23に到達する。前記第1透光板21は、後板である。
【0030】
したがって、ダブルガラス(すなわち、前記第1透光板21および前記第2透光板22)の封止構造を設計することにより、前記ソーラーモジュール2の使用寿命を他の建築材料と同じになるように延ばす(少なくとも50年)だけでなく、風化の問題をも回避し、構造安全性を向上させて発熱・発火の問題を回避できる。
【0031】
前記第2パターン層25a、25bは、前記封止層20の前記第1表面20aおよび/または前記第2表面20bに配置され、前記封止層20の端部に位置する。
【0032】
本発明の実施態様において、前記第2パターン層25a、25bおよび前記第1パターン層24は、同じ材料からなる。好ましくは、前記第2パターン層25a、25bの釉薬の模様および色は、前記太陽電池23の模様および色と同じであることにより、ソーラーモジュール2の外観パターンを均一にして、建物の美しさと質感を大幅に向上させる。
【0033】
前記シール材26(例えば、防水材)は、環状体(例えば、防水環)を表し、前記封止層20の外囲に配置して、例えば、
図2を示される重複領域Sのように、前記第2パターン層25a、25bと重なる(overlap)ように前記第2パターン層25a、25bの位置に対応する。前記封止層20およびシール材26は、第1透光板21と第2透光板22との間に挟まれる。前記重複領域Sは、前記第1透光板21およびその上の第2パターン層25aと、前記シール材26と、前記第2透光板22およびその上の第2パターン層25bとを含む。
【0034】
本発明の実施態様において、前記シール材26は、例えば、ブチル系接着剤(butyladhesives)であり、黒色を示す。
【0035】
また、前記シール材26は、前記第2パターン層25a、25bと接し、太陽電池23と接しないことにより、前記シール材26と太陽電池23との間に間隔t’をも有し、前記間隔t’は太陽電池23の厚さよりも大きい。
【0036】
また、前記第2透光板22の上の第2パターン層25bは、前記シール材26を遮蔽できるので、前記第2パターン層25bの釉薬塗布面積Aは、前記シール材26の塗布面積Bよりも大きいまたはそれと同じである必要がある。したがって、前記第2透光板22の上の第2パターン層25bで前記シール材26を遮蔽することにより、前記ソーラーモジュール2の外観に黒色環を示して前記ソーラーモジュール2の美観を破壊する問題を回避する。また、前記第1透光板21の上の第2パターン層25a(または前記第2透光板22の上の第2パターン層25b)を利用して、前記シール材26と太陽電池23との間の間隔t’を遮蔽することにより、光線を前記第1透光板21に通過させないことができる。
【0037】
また、前記シール材26の耐湿性により、長年の使用後も前記封止層20が剥がれることがなく、水蒸気浸透による前記太陽電池23の発電率の低下の問題を回避できる。
【0038】
本発明のソーラーモジュール2の製作過程は、まず、釉薬を転写またはスプレーコーティングによって前記第1透光板21および前記第2透光板22の上に形成し、少なくとも500℃以上の高温で焼結して、前記釉薬を前記第1パターン層24および前記第2パターン層25a、25bとし、前記第1透光板21および前記第2透光板22に密着させる。そして、前記第1透光板21および第2透光板22の上に封止材を形成して、前記第1透光板21および第2透光板22を前記封止材でラミネートし、それらの直列に接続された太陽電池23を覆って、前記封止材を熱硬化させて、前記封止層20を形成し、シール材26を重ねることにより、ソーラーモジュール2の製作を完成する。
【0039】
上記のように、本発明のソーラーモジュール2を使用するとき、前記第1パターン層24が前記間隔tの位置に対応するとともに、前記第2パターン層25a、25bが前記間隔t’の位置に対応することにより、間隔tおよびt’を通過した光線を吸収して、光線を前記第1透光板21に通過させず、前記ソーラーモジュール2の全体は不透明な状態を示すので、建物外壁を遮蔽する効果を達成でき、建物外壁の日照時の温度を下げて、温度を調整する時のエアコン(またはクーラー)の電力消費量を低減できる。したがって、本発明のソーラーモジュール2は、全体のエネルギー消費量に占める建物のエネルギー消費量(エアコン用の電力消費量など)の割合(例えば、従来では24%以上)を低減して(すなわち、24%以下に低下させる)、省エネのニーズに応えることができる。
【0040】
また、前記第1パターン層24および前記第2パターン層25a、25bの配置により、前記ソーラーモジュール2は、その外観に太陽電池13の格子状パターンを示さず、建物が醜くなる問題を回避できるので、美観の要求を満たすことができる。
【0041】
さらに、前記第1パターン層24および前記第2パターン層25a、25bは、前記間隔tおよびt’を通過した光線を吸収するため、前記封止層20の紫外線照射量を低減して、前記封止層20の黄変程度を減少できるので、本発明のソーラーモジュール2は、建物外観の老朽化の速度を効果的に遅らせることができる。
【0042】
上記の実施態様は、本発明の原理およびその効果を例示的に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱していない限り、上記の実施態様を変更できる。したがって、本発明の権利範囲は、添付の「特許請求の範囲」に記載されるとおりである。
【符号の説明】
【0043】
1、1’、2…ソーラーモジュール
10、20…封止層
11…バックシート
11’…ガラス板
12…ガラスカバー
13、23…太陽電池
14…フォームテープ
15…アルミフレーム
20a…第1表面
20b…第2表面
21…第1透光板
22…第2透光板
24…第1パターン層
25a、25b…第2パターン層
26…シール材
A、B…塗布面積
d…厚さ
S…重複領域
t、t’…間隔
w…隙間