特許第6481255号(P6481255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481255
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20190304BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190304BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20190304BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/36
   C08K5/54
   B60C1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-59747(P2014-59747)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-183062(P2015-183062A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】三原 諭
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−192842(JP,A)
【文献】 特表2005−533140(JP,A)
【文献】 特開2013−237864(JP,A)
【文献】 特開2015−183061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に、乾式シリカであるシリカAを5〜100重量部、湿式シリカであるシリカBを5〜150重量部を配合し、シランカップリング剤を前記シリカAおよびシリカBの合計に対し4〜30重量%配合したタイヤ用ゴム組成物であって、前記シリカAの表面のヒドロキシ基数が5個/nm2未満、前記シリカBの表面のヒドロキシ基数が5個/nm2以上であり、下記一般式(I)で表される前記シリカAのゴム組成物単位体積当たりの粒子数の指標Yが0.11以上0.23以下であることを特徴するタイヤ用ゴム組成物。
【数1】
ただし、YはシリカAのゴム組成物単位体積当たりの粒子数の指標[−]、
φAは、ゴム組成物中のシリカAの重量分率[−]、
ρは、ゴム組成物の加硫物の密度(g/cm3
Kは下記一般式(II)で表される係数を表す。
【数2】
(式(II)において、(N2SA)AはシリカAの窒素吸着比表面積(m2/g)、
(R)AはシリカAの平均1次粒子径(nm)を表す。)
【請求項2】
前記シリカAの平均1次粒子径(R)Aが7〜12nmであることを特徴する請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記シリカAの配合量(Wa)と前記シリカBの配合量(Wb)の合計(Wa+Wb)に対するシリカAの配合量(Wa)の比[Wa/(Wa+Wb)]が0.05〜0.95であることを特徴する請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低転がり抵抗性能、ウェット性能およびシリカの補強性能を両立させたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃費性能を向上させるため空気入りタイヤの転がり抵抗を小さくすることが求められている。また同時に操縦安定性およびウェット性能を十分に確保することが空気入りタイヤとって必要である。一般に、低転がり抵抗性およびウェット性能を改良するためシリカを配合したタイヤ用ゴム組成物が知られている。しかし、カーボンブラックの一部をシリカに置き換えると、ゴムに対する補強性能が低下し操縦安定性が低下することが懸念される。
【0003】
このため窒素吸着比表面積が大きいシリカを配合することが提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、タイヤ性能に対する需要者の要求レベルはより高く、更なる改良が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−166862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低転がり抵抗性能、ウェット性能およびシリカの補強性能を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に、乾式シリカであるシリカAを5〜100重量部、湿式シリカであるシリカBを5〜150重量部を配合し、シランカップリング剤を前記シリカAおよびシリカBの合計に対し4〜30重量%配合したタイヤ用ゴム組成物であって、前記シリカAの表面のヒドロキシ基数が5個/nm2未満、前記シリカBの表面のヒドロキシ基数が5個/nm2以上であり、下記一般式(I)で表される前記シリカAのゴム組成物単位体積当たりの粒子数の指標Yが0.11以上0.23以下であることを特徴する。
【数1】
ただし、YはシリカAのゴム組成物単位体積当たりの粒子数の指標[−]、
φAは、ゴム組成物中のシリカAの重量分率[−]、
ρは、ゴム組成物の加硫物の密度(g/cm3
Kは下記一般式(II)で表される係数を表す。
【数2】
(式(II)において、(N2SA)AはシリカAの窒素吸着比表面積(m2/g)、
(R)AはシリカAの平均1次粒子径(nm)を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に、表面のヒドロキシ基数が5個/nm2未満であるシリカAを5〜100重量部、表面のヒドロキシ基数が5個/nm2以上であるシリカBを〜150重量部を配合し、シランカップリング剤をシリカAおよびシリカBの合計に対し4〜30重量%配合し、前記一般式(I)で表されるゴム組成物単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yを0.11以上0.23以下にしたので、1次粒子径が小さいシリカAをジエン系ゴム中に良好に分散させ、これによりジエン系ゴムに対するシリカの補強性能、低転がり抵抗性能およびウェット性能を従来レベル以上に向上させることができる。
【0008】
前記シリカAの平均1次粒子径(R)Aとしては5〜12nmであるとよい。また前記シリカAを乾式シリカ、前記シリカBを湿式シリカにすることができる。さらに前記シリカAの配合量(Wa)と前記シリカBの配合量(Wb)の合計(Wa+Wb)に対するシリカAの配合量(Wa)の比[Wa/(Wa+Wb)]が0.05〜0.95であるとよい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、ゴム成分はジエン系ゴムにする。ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴム等を例示することができる。なかでもスチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴムが好ましい。各ジエン系ゴムの含有量は特に制限されるものでなく、適用するタイヤ部材の要求特性によって適宜選択することができる。
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカAおよびシリカBを共に配合する。
【0011】
シリカAは、その表面のヒドロキシ基数が5個/nm2未満のシリカである。一方、シリカBは、その表面のヒドロキシ基数が5個/nm2以上のシリカである。シリカ表面のヒドロキシ基は、シリカ粒子が凝集する要因の一つである。一般に湿式法により製造されたシリカが、その表面のヒドロキシ基数が多いのに対し、乾式法で製造されたシリカは、その表面のヒドロキシ基数が少ない。本発明において、シリカAを乾式シリカ、シリカBを湿式シリカにすることができる。
【0012】
本明細書において、シリカ表面のヒドロキシ基数は以下に記載の方法で測定するものとする。
i)シリカを水に100分間以上、浸漬する。
ii)そのシリカを乾燥器に入れ、110℃で16時間乾燥する。
iii)乾燥したシリカを、坩堝に入れ秤量する。
iv)その坩堝を電気炉に入れ、110℃から1100℃まで強熱減量させる。
v)その後、坩堝を秤量し、シリカ1g当たりの重量減少M(g)を求める。
vi)上記重量減少が水の蒸発によるものとし、蒸発した水1分子をヒドロキシ基2個として下記一般式によりシリカ表面のヒドロキシ基数(OH)を算出する。
OH=2×M×6.02×1023/18/(N2SA×1018
ただし、OHは、シリカ表面のヒドロキシ基数(個/nm2)、
Mは、シリカ1g当たりの重量減少量(g)、
2SAは、シリカの窒素吸着比表面積(m2/g)
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、シリカAを配合することにより、低転がり抵抗性能、ウェット性能およびシリカの補強性能を改良することができる。シリカAの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、5〜100重量部、好ましくは5〜60重量部である。シリカAの配合量が5重量部未満であると、転がり抵抗を小さくする効果が十分に得られず、ゴムに対する補強性を十分に改良することができない。またシリカAの配合量が100重量部を超えると、ゴムに対する補強性が却って低下すると共に、混合加工性が低下する。
【0014】
シリカAは、窒素吸着比表面積が、好ましくは160m2/gを超え500m2/g以下、より好ましくは180〜450m2/g、さらに好ましくは200〜400m2/gであるとよい。窒素吸着比表面積が160m2/g未満であると、ジエン系ゴムに対する補強性能が不足し、更にウェット性能を改良することができない。また窒素吸着比表面積が500m2/gを超えると、混合加工性が低下する。本明細書において、シリカの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2により測定された値とする。
【0015】
またシリカAの平均1次粒子径(R)Aは、好ましくは7〜12nmであるとよい。シリカAの平均1次粒子径(R)Aが12nmより大きいと、ゴムに対するシリカの補強性能が不足し、更にウェット性能を改良することができない。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム組成物の単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yが0.11以上0.23以下である。単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yをこのような範囲内にすることにより、低転がり抵抗性能、ウェット性能およびジエン系ゴムに対する補強性能を向上することができる。単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yは、0.11以上0.23以下である。単位体積当たりの粒子数の指標Yが0.11未満であると、転がり抵抗が大きくなる。また単位体積当たりの粒子数の指標Yが0.23を超えると、転がり抵抗が大きくなると共にシリカの補強性能が悪化する。
【0017】
ゴム組成物の単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yは、下記一般式(I)で表される。
【数3】
ただし、YはシリカAのゴム組成物単位体積当たりの粒子数の指標[−]、
φAは、ゴム組成物中のシリカAの重量分率[−]、
ρは、ゴム組成物の加硫物の密度(g/cm3
Kは下記一般式(II)で表される係数を表す。
【数4】
(式(II)において、(N2SA)AはシリカAの窒素吸着比表面積(m2/g)、
(R)AはシリカAの平均1次粒子径(nm)を表す。)
【0018】
前記一般式(I)において、φAは、ゴム組成物中のシリカAの重量分率であり、ジエン系ゴム100重量部にシリカAを5〜100重量部すると、およそ0.048〜0.5の実数になる。なお、ジエン系ゴムおよびシリカA以外の配合剤、例えばシリカBやカーボンブラック等の他の充填剤を配合することにより、シリカAの重量分率は上記値より小さくなる。
【0019】
ρは、ゴム組成物の加硫物の密度であり、JIS K6268「加硫ゴム−密度測定」に記載されたA法に基づき測定される。
【0020】
またKは前記一般式(II)で表される係数であり、シリカAの1次粒子径から算出される球体の表面積に対する窒素吸着比表面積の比として求められる。係数Kは、シリカAの1次粒子径が小さいほど大きな値になる。またシリカAの1次粒子径が小さくなると、窒素吸着比表面積は通常大きくなるので、係数Kは、相乗的に大きくなる。
【0021】
シリカAの窒素吸着比表面積(N2SA)Aは、前述の通り決定される。またシリカAの1次粒子径は、透過型電子顕微鏡で個々のシリカ粒子を実測し、その数平均として算出されたにより測定された値とする。
【0022】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、上述したシリカAと共にシリカBを配合する。シリカBを配合することにより、シリカAの分散性を改良し、ゴム組成物単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yを0.11以上0.23以下に調節しやすくなる。シリカBの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、〜150重量部、好ましくは5〜120重量部である。シリカBの配合量が150重量部を超えると、発熱性(低転がり抵抗性)とウェット性能の両立ができない。
【0023】
またシリカAの配合量(Wa)とシリカBの配合量(Wb)の合計(Wa+Wb)に対するシリカAの配合量(Wa)の比[Wa/(Wa+Wb)]は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.05〜0.95、より好ましくは0.10〜0.85、更に好ましくは0.10〜0.75であるとよい。比[Wa/(Wa+Wb)]が0.05未満であると、転がり抵抗を小さくしかつウェット性能を高くする効果が十分に得られず、ゴムに対する補強性を十分に改良することができない。また比[Wa/(Wa+Wb)]が0.95を超えると、シリカAの分散性を良好にすることが難しくなり、所期の効果が得られなくなる虞がある。
【0024】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカAおよびシリカBの分散性を向上しゴムに対する補強性を高めることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカAおよびシリカBの配合量の合計に対し4〜30重量%、好ましくは3〜15重量%にする。シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の4重量%未満であるとシリカAおよびシリカBの分散を十分に改良することができない。シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の30重量%を超えるとシランカップリング剤同士が縮合し、ゴム組成物における所望の硬度や強度を得ることができない。
【0025】
シランカップリング剤の種類は、シリカ配合のゴム組成物に使用可能なものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等の硫黄含有シランカップリング剤を例示することができる。
【0026】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、1次粒子径が小さいシリカAをゴム組成物中に良好に分散させる方法としては、例えばジエン系ゴムおよびシリカAを比較的低い温度で長い時間をかけて混練する方法、シリカAをシランカップリング剤を含む可塑剤成分と予め混合し得られた混合物をジエン系ゴムと混練する方法等を例示することができる。
【0027】
ジエン系ゴムおよびシリカAを比較的低い温度で長い時間をかけて混練する方法としては、例えば混練温度を好ましくは130〜180℃、より好ましくは130〜160℃に調節しながら、混練時間を好ましくは3〜15分間、より好ましくは3〜10分間にする混練方法を例示することができる。
【0028】
シリカAをシランカップリング剤を含む可塑剤成分と予め混合し得られた混合物をジエン系ゴムと混練する方法において、可塑剤成分は、シランカップリング剤を必ず含み、加えてオイル、加工助剤、アルキルシランから選ばれる少なくとも1つを含有する。シランカップリング剤は、上述した通りにすることができる。
【0029】
オイルとしては、例えばアロマオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル等を例示することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。オイルは、シリカAの重量に対し、好ましくは0〜300重量%、より好ましくは3〜200重量%を配合し、予備混合すると良い。
【0030】
加工助剤としては、例えばポリアルキレングリコール、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等を例示することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤は、乾式シリカの重量に対し、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜20重量%を配合し、予備混合すると良い。
【0031】
またアルキルシランを配合することにより、シリカの凝集や、ゴム組成物の粘度上昇を抑制し、転がり抵抗およびウェット性能をより優れたものにすることができる。アルキルシランとしては、炭素数7〜20のアルキル基を有するアルキルトリエトキシシランが好ましい。炭素数7〜20のアルキル基として、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が挙げられる。なかでもジエン系ゴムとの相溶性の観点から、炭素数8〜10のアルキル基がより好ましく、オクチル基、ノニル基がさらに好ましい。アルキルシランは、シリカAの重量に対し、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.5 〜20重量%を配合し、予備混合すると良い。
【0032】
予備混合するための混合条件は、特に制限されるものではなく、シリカAおよび可塑剤成分が略均一に混合するように、温度、回転数等を適宜、決めることができる。予備混合により得られたシリカAの混合物とジエン系ゴムを混合、混練することにより、ゴム組成物中にシリカAを良好に分散させることができる。
【0033】
タイヤ用ゴム組成には、シリカAおよびシリカBを除く他の補強性充填剤を配合することができる。他の補強性充填剤としては、例えばカーボンブラック、クレー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等を例示することができる。なかでもカーボンブラックが好ましい。
【0034】
カーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物の硬度、強度および耐摩耗性を高くすることができる。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、好ましくは3〜50重量部、より好ましくは5〜40重量部であるとよい。
【0035】
タイヤトレッド用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂などのタイヤトレッド用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。タイヤトレッド用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混練、混合することによって製造することができる。
【0036】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
表3に示す配合剤を共通配合とし、表1,2に示す16種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(標準例、実施例1〜5、参考例1〜3、比較例1〜7)を調製した。調製方法は、シリカ−3〜シリカ−5、シランカップリング剤およびオイルを1.7Lの密閉式バンバリーミキサーで3分間混合した。これに硫黄及び加硫促進剤を除く残りの成分を投入し、6分間混練し、マスターバッチとして放出し室温冷却させた。このマスターバッチを1.7Lの密閉式バンバリーミキサーに戻し硫黄及び加硫促進剤を加えて混合することにより、タイヤ用ゴム組成物を調製した。
【0038】
なお表1,2のスチレンブタジエンゴム(SBR)の欄に、製品の配合量に加え、括弧内に油展成分を除く正味のSBRの配合量を記載した。また表3に記載した配合剤の配合量は、表1,2に記載したジエン系ゴム100重量部に対する重量部で示した。
【0039】
得られた16種類のゴム組成物を所定の金型中で、170℃で10分間プレス加硫してタイヤ用ゴム組成物からなる試験片を作製した。得られた試験片の密度ρ、補強性およびtanδ(0℃)、tanδ(60℃)を、以下の方法で評価した。
【0040】
密度ρ
得られた試験片を用いて、JIS K6268 A法に基づき、ゴム組成物の加硫物の密度ρ[g/cm3]を測定した。得られた結果を表1,2に記載した。
【0041】
また、前記一般式(I)を構成する係数およびφAの値、並びに算出されるゴム組成物単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yを、表1,2に記載した。
【0042】
補強性(M300/M100)
得られた試験片をJIS K6251に準拠したJIS3号ダンベル型試験片を切り出した。この試験片を使用してJIS K6251に基づき引張り試験を行い、100%伸長時の応力(M100)およ300%伸長時の応力(M300)を測定し、これら応力の比(M300/M100)を算出した。得られた結果は、標準例の値を100とする指数として表1,2の「補強性(M300/M100)」の欄に示した。この値が大きいほどゴムに対する補強性が優れることを意味する。
【0043】
tanδ(0℃)およびtanδ(60℃)
得られた試験片の動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定し、雰囲気温度0℃および60℃におけるtanδを測定した。得られた結果は、標準例の値を100とする指数で表わし表1,2の「ウェット性能」の欄にtanδ(0℃)を「発熱性」の欄にtanδ(60℃)を示した。ウェット性能の値が大きいほどウェット性能が優れることを意味する。発熱性の値が小さいほど転がり抵抗が小さく燃費性能が優れることを意味する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
なお、表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・SBR:スチレンブタジエンゴム、旭化成社製E581、スチレンブタジエンゴム100重量部にオイル37.5重量部を配合した油展製品
・BR:ブタジエンゴム、日本合成ゴム社製Nipol BR1220
・シリカ−1:シリカBに相当する湿式シリカ、Solyay社製Zeosil 200MP、窒素吸着比表面積が210m2/g、1次粒子径が10nm、真密度が1.95g/cm3、表面のヒドロキシ基数が6個/nm2
・シリカ−2:シリカBに相当する湿式シリカ、Solyay社製Zeosil 1165MP、窒素吸着比表面積が160m2/g、1次粒子径が14nm、真密度が1.95g/cm3、表面のヒドロキシ基数が6個/nm2
・シリカ−3:シリカAに相当する乾式シリカ、トクヤマ社製QS−30、窒素吸着比表面積が300m2/g、1次粒子径が7nm、真密度が1.95g/cm3、表面のヒドロキシ基数が2個/nm2
・シリカ−4:シリカAに相当する乾式シリカ、トクヤマ社製QS−102、窒素吸着比表面積が200m2/g、1次粒子径が12nm、真密度が1.95g/cm3、表面のヒドロキシ基数が2個/nm2
・シリカ−5:シリカAに相当する乾式シリカ、トクヤマ社製GS−90、窒素吸着比表面積が90m2/g、1次粒子径が22nm、真密度が1.95g/cm3、表面のヒドロキシ基数が2個/nm2
・カーボンブラック、東海カーボン社製シーストKH
・カップリング剤:シランカップリング剤、Evonik社製Si69
・オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
【0047】
【表3】
【0048】
表3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
・酸化亜鉛:正同化学社製酸化亜鉛3種
・老化防止剤:精工化学社製オゾノン6C
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤1:大内新興化学社製ノクセラーCZ−G
・加硫促進剤2:住友化学社製ソクシノールD−G
【0049】
表2から明らかなように実施例1〜のタイヤ用ゴム組成物は、ウェット性能、ゴムへの補強性および低転がり抵抗性(低発熱性)に優れることが確認された。
【0050】
表1から明らかなように比較例1のゴム組成物は、シリカAを配合しなかったので、発熱が大きくなり、転がり抵抗が悪化した。
【0051】
比較例2のゴム組成物は、シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の4重量%未満であったので、ウェット性能および転がり抵抗性が悪化した。
【0052】
比較例3のゴム組成物は、ゴム組成物単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yが0.11未満であったので、ウェット性能および補強性能が悪化した。
【0053】
比較例4のゴム組成物は、シリカAの配合量が5重量部未満、ゴム組成物単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yが0.11未満であったので、ゴムに対する補強性能が悪化した。
【0054】
比較例5のゴム組成物は、ゴム組成物単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yが0.11未満であったので、ゴムへの補強性能が悪化した。
【0055】
比較例6のゴム組成物は、シリカAを配合しなかったので、ゴムへの補強性および転がり抵抗が悪化した。
【0056】
比較例7のゴム組成物は、ゴム組成物単位体積当たりのシリカAの粒子数の指標Yが0.23を超えたので、ゴムへの補強性および転がり抵抗が悪化した。