特許第6481263号(P6481263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6481263粒状物外観品位判別装置における品位判別基準の作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481263
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】粒状物外観品位判別装置における品位判別基準の作成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20190304BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20190304BHJP
   G01B 11/28 20060101ALI20190304BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20190304BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20190304BHJP
【FI】
   G01N21/85 A
   G01B11/24 K
   G01B11/28 H
   G01B11/02 H
   G06T7/00 300F
   G06T7/00 250
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-117106(P2014-117106)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-230265(P2015-230265A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】森尾 吉成
(72)【発明者】
【氏名】石突 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】石津 任章
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏明
(72)【発明者】
【氏名】越智 龍彦
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−242284(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/145873(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/002636(WO,A1)
【文献】 特開2000−146847(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/041388(WO,A1)
【文献】 特開2002−312762(JP,A)
【文献】 SERRANTI, S. et al.,The development of a hyperspectral imaging method for the detection of Fusarium-damaged, yellow berry and vitreous Italian durum wheat kernels,Biosystems Engineering,英国,Elsevier Ltd.,2013年 5月17日,Vol.115, No.1,第20頁-第30頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
G06T 7/00
G06T 7/20−7/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体上面に設けられる撮像面と、該撮像面を開閉するカバーを備える撮像手段であって、前記本体は、前記撮像面上に載置した粒状物に光を照射する光源と、該粒状物からの反射光を受光する受光部を備え、該撮像手段により粒状物を撮像して撮像データを取得し、前記撮像データに基づいて粒状物の品位を判別する粒状物外観品位判別装置における品位判別基準の作成方法であって、
複数の粒状物をトレイに収容し品位別に区分けして撮像手段の撮像面に載置する粒状物載置工程と、
前記撮像面に載置した前記複数の粒状物を前記撮像手段により撮像して撮像データを取得する撮像データ取得工程と、
前記撮像データに基づいて前記品位別に区分けした前記粒状物の外形形状、面積、長さ、幅、色彩及び胴割れの少なくとも一つを含む品位情報を取得する品位情報取得工程と、
前記品位別に取得した前記品位情報を使用して品位判別基準を作成する品位判別基準作成工程と、を備え
前記粒状物載置工程で前記撮像手段の撮像面に載置される複数の粒状物は、複数の領域に仕切られたトレイに収容されて品位別に区分けされ、
前記粒状物載置工程における各品位別に区分けされた粒状物の数が一つ以上であり、
前記品位判別基準作成工程における品位判別基準の作成は、機械学習アルゴリズムを用いていることを特徴とする品位判別基準の作成方法。
【請求項2】
本体と、該本体上面に設けられる撮像面と、該撮像面を開閉するカバーを備える撮像手段であって、前記本体は、前記撮像面上に載置した粒状物に光を照射する光源と、該粒状物からの反射光を受光する受光部を備え、該撮像手段により粒状物を撮像して撮像データを取得し、前記撮像データに基づいて粒状物の品位を判別する粒状物外観品位判別装置における品位判別基準の作成方法であって、
複数の粒状物をトレイに収容し品位別に区分けして撮像手段の撮像面に載置する粒状物載置工程と、
前記撮像面に載置した前記複数の粒状物を前記撮像手段により撮像して撮像データを取得する撮像データ取得工程と、
前記撮像データに基づいて前記品位別に区分けした前記粒状物の外形形状、面積、長さ、幅、色彩及び胴割れの少なくとも一つを含む品位情報を取得する品位情報取得工程と、
前記品位別に取得した前記品位情報を使用して品位判別基準を作成する品位判別基準作成工程と、を備え
前記粒状物載置工程で前記撮像手段の撮像面に載置される複数の粒状物は、品位別に異なるトレイに収容されて区分けされ、
前記粒状物載置工程における各品位別に区分けされた粒状物の数が一つ以上であり、
前記品位判別基準作成工程における品位判別基準の作成は、機械学習アルゴリズムを用いていることを特徴とする品位判別基準の作成方法。
【請求項3】
さらに、前記粒状物の品位名を登録する品位名登録工程を備える請求項1又は2記載の品位判別基準の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物外観品位判別装置における穀粒やペレット等の粒状物の品位判別基準の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナー等の撮像手段により複数の穀粒を撮像して撮像データを取得し、該撮像データに基づいて前記複数の穀粒の品位を判別する穀粒外観品位判別装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
上記穀粒外観品位判別装置は、品位判別対象となる複数の穀粒を撮像手段により撮像して撮像データを取得し、前記撮像データに基づいて穀粒の品位情報(外形形状、面積、長さ、幅、色彩(RGB情報)、胴割れ等)を取得し、前記穀粒の品位情報を事前に設定された品位判別基準と比較して前記穀粒の品位を判別するものである。
そして、上記穀粒外観品位判別装置によれば、多数の穀粒の品位を容易かつ迅速に判別することができる。
【0004】
ところで、従来の穀粒外観品位判別装置では、事前に複数のサンプル粒の撮像データを取得し、作業者が目視により前記撮像データをディスプレイ上で確認しながら順次各サンプル粒の品位を指定することで、前記撮像データに基づいて取得する前記各サンプル粒の品位情報を利用して品位判別基準が作成されている。
【0005】
ところが、上記のように作業者が前記撮像データをディスプレイ上で確認しながら品位を指定するには熟練を要するため、穀粒外観品位判別装置において粒状物の品位判別基準を作成することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−242284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、熟練した作業者でなくても粒状物の品位判別基準を簡単に作成することができる粒状物外観品位判別装置における品位判別基準の作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
本体と、該本体上面に設けられる撮像面と、該撮像面を開閉するカバーを備える撮像手段であって、前記本体は、前記撮像面上に載置した粒状物に光を照射する光源と、該粒状物からの反射光を受光する受光部を備え、該撮像手段により粒状物を撮像して撮像データを取得し、前記撮像データに基づいて粒状物の品位を判別する粒状物外観品位判別装置における品位判別基準の作成方法であって、
複数の粒状物をトレイに収容し品位別に区分けして撮像手段の撮像面に載置する粒状物載置工程と、
前記撮像面に載置した前記複数の粒状物を前記撮像手段により撮像して撮像データを取得する撮像データ取得工程と、
前記撮像データに基づいて前記品位別に区分けした前記粒状物の外形形状、面積、長さ、幅、色彩及び胴割れの少なくとも一つを含む品位情報を取得する品位情報取得工程と、
前記品位別に取得した前記品位情報を使用して品位判別基準を作成する品位判別基準作成工程と、を備え
前記粒状物載置工程で前記撮像手段の撮像面に載置される複数の粒状物は、複数の領域に仕切られたトレイに収容されて品位別に区分けされ、
前記粒状物載置工程における各品位別に区分けされた粒状物の数が一つ以上であり、
前記品位判別基準作成工程における品位判別基準の作成は、機械学習アルゴリズムを用いていることを特徴とする。
前記粒状物載置工程で前記撮像手段の撮像面に載置される複数の粒状物は、品位別に異なるトレイに収容されて区分けされてもよい。
【0009】
本発明は、さらに、前記粒状物の品位名を登録する品位名登録工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、複数の粒状物を品位別に区分けして撮像手段の撮像面に載置する粒状物載置工程を備えるものであり、事前に品位別に仕分けされた粒状物を扱うことができるため、熟練した作業者でなくても、粒状物の品位判別基準を簡単に作成することができる。
【0014】
また、本発明によれば、作業者が事前に品位別に仕分けされた粒状物を撮像手段の撮像面に載置することで、コンピュータが品位判別基準を自動的に作成することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明によれば、事前に品位別に仕分けされた粒状物を繰り返し利用することができるため、客観性のある品位判別基準を繰り返し作成することが可能となる。
【0016】
本発明は、前記品位判別基準作成工程が、機械学習アルゴリズムを用いて前記品位判別基準を作成することとすれば、高精度な品位判別基準を簡単に作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の方法で使用する粒状物外観品位判別装置の一例を示す説明図。
図2】品位判別基準の作成手順のフロー図。
図3】粒状物を撮像手段の撮像面に載置した様子の説明図。
図4】品位判別基準の作成例のフロー図。
図5】品位判別手順のフロー図。
図6】品位判別例のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
[粒状物外観品位判別装置の構成]
図1は、本発明の方法で使用する粒状物外観品位判別装置の一例を示す。
粒状物外観品位判別装置1は、米、麦、豆、コーン等の穀粒やペレット等、粒状物を撮像する撮像手段2と、該撮像手段2とケーブル3で接続されるコンピュータ4を備える。前記撮像手段2には例えば市販のスキャナーや複合機を用いることができる。
【0019】
前記撮像手段2は、本体2aと、該本体2a上面に設けられる撮像面2bと、該撮像面2bを開閉するカバー2cを備える。また、前記本体2aは、前記撮像面2b上に載置した粒状物に光を照射する白色蛍光灯や白色LED等からなる光源と、該粒状物からの反射光を受光するカラーCCDラインセンサー等からなる受光部を備える。そして、前記粒状物Gは、トレイ5上に収容され前記撮像面2bに載置される。
【0020】
前記コンピュータ4は、前記撮像手段2により撮像される粒状物の撮像データを画像処理し、該粒状物の色彩等の光学情報及び外形等の形状情報等、各種品位情報を抽出する画像処理部と、該画像処理部において抽出される前記品位情報を使用して品位判別基準を作成する品位判別基準作成部と、該作成した品位判別基準を記憶する品位判別基準記憶部と、該品位判別基準記憶部に記憶した前記品位判別基準を利用して前記粒状物の品位を判別する品位判別部と、該品位判別部で得られた結果を表示するディスプレイと、を備える。
【0021】
上記粒状物外観品位判別装置1は、前記撮像手段2で取得される複数の粒状物の撮像信号を前記コンピュータ4に送り、該コンピュータ4において前記各粒状物の品位を判別する。
【0022】
以下、粒状物外観品位判別装置における品位判別基準の作成方法について説明する。
【0023】
[品位判別基準の作成手順]
図2は、粒状物外観品位判別装置における品位判別基準の作成手順のフローを示す。
(1)ステップS1:
撮像には、図1に示す撮像手段2を使用できる。作業者は分類したい各品位のサンプル粒、例えば米粒であれば、整粒、未熟粒、砕粒、胴割粒、着色粒、異物等のサンプル粒を事前に準備してグループ化(A,B,C,・・・)し、これらサンプル粒を撮像手段2の撮像面2bにグループ毎に区分けして載置する。ここで、前記グループ毎のサンプル粒の数は、一つでもよいが、後述する品位情報を多く取得するためには多い方が好ましい。なお、グループ間でサンプル粒の数を揃える必要はない。
図3に示すように、前記サンプル粒を前記撮像手段2の撮像面2bに載置するに際しては、複数領域に仕切られた一つのトレイ5上に収納することで前記グループ(A,B,C,・・・)別に区分けすることができる。また、一つのグループに一つのトレイを用いて、各グループのトレイを撮像面2bにそれぞれ載置するようにしてもよいし、トレイが用意できない場合などは、グループ毎に載置する領域を撮像面2上に設け、他のグループのサンプル粒と混在しないように、直接サンプル粒を撮像面2b上に載置してもよい。
なお、前記サンプル粒は、グループ毎に区分けする必要はあるが、整列させて載置する必要はない。
【0024】
(2)ステップS2:
ステップS1で撮像手段2の撮像面2bに前記グループ毎に区分けして載置されたサンプル粒を撮像し、各サンプル粒の撮像データを取得する。
【0025】
(3)ステップS3:
ステップS2で取得した撮像データに基づいて、コンピュータ4は各サンプル粒の品位情報(特徴情報)をグループ毎に取得する(品位情報取得)。
ここで、前記品位情報には、サンプル粒の外形形状、面積、長さ、幅、色彩(RGB情報)、胴割れなどが含まれる。
【0026】
(4)ステップS4:
ステップS2で取得した撮像データをディスプレイで確認しながら、作業者は各グループを良品・不良品のどちらかに指定する(良品・不良品情報指定)。
ここで、本実施の形態において、上記良品・不良品情報指定は必須のものではない。上記良品・不良品情報指定をすれば、後述する粒状物の品位判別において、品位判別対象の粒状物をステップS5でコンピュータ4に登録する品位名別に判別することに加え、良品・不良品別に分類することも可能となる。
【0027】
(5)ステップS5:
作業者は前記各グループの名称(品位名)をコンピュータ4に登録(入力)する(品位名設定)。これにより、品位名と品位情報、良品・不良品情報が関連づけられる(品位別情報設定)。ここでは、品位判別対象のサンプル粒を米粒とし、整粒、未熟粒、砕粒、胴割粒、着色粒及び異物の6種類の品位に設定することとする。
【0028】
(6)ステップS6:
後述する粒状物の品位判別に際し、二つ以上の品位に該当すると判別される場合において、一つの品位にのみ該当すると判別されるようにするために、優先順位を設定する(優先判別順位設定)。一方、前記優先順位を設定せず、該当する全ての品位に判別されるようにすることもできる。優先判別順位設定を行えば、一つのサンプル粒は一つの品位にカウントされ、優先判別順位設定を行わなければ、一つのサンプルは該当する全ての品位にカウントされることになる。
【0029】
(7)ステップS7:
上記品位別の品位情報を用いて、品位判別基準を作成する。本実施の形態では、公知のクラスター分析(例えば特開2010−60389等参照)及びアダブースト(AdaBoost(機械学習アルゴリズム))の分析(例えば特開2013−33331等参照)を使用してコンピュータ4が自動的に品位判別基準を作成する。
【0030】
<品位判別基準作成例>
品位判別基準の作成例について説明する。
図4は、ステップS7における品位判別基準作成の一例であって、クラスター分析及びアドブーストによる分析を利用した品位判別基準の作成フローを示す。
【0031】
(a)クラスター分析
(1)ステップS10:
クラスター分析を行うにあたり、この分析で使用する閾値及び目標系統数を取得する。前記閾値及び目標系統数は事前にコンピュータ4のメモリに保存されているものである。前記閾値は、クラスター分析で各サンプル粒を系統に分類仕分けするときに用いるもので、入力された品位情報から計算される系統間の距離について、正解か否かを判断するために用いるものである。前記目標系統数は、クラスター分析により分類仕分けする系統の数の目標値である。
【0032】
(2)ステップS11:
ステップS5で登録した品位名の中から一つの品位を選択し、それ以外の品位(非選択品位)のサンプル粒について、ステップS3で取得した品位情報を使用してクラスター分析を行う。この分析は、アダブーストによる分析を行うための前処理であって、ステップS5での作業者による品位名設定とは別に、上記非選択品位のサンプル粒を分類仕分けすることを目的としている。このクラスター分析による分類仕分けにより、ステップS1において作業者が各品位のサンプル粒を事前準備する際に生じる仕分けミスなどの影響を排除することが可能となる。
【0033】
(3)ステップS12:
ステップS11でのクラスター分析による分類仕分けで、前記目標系統数に分類仕分けされたかを確認する。本実施の形態では、目標系統数を6個としている。これは判別結果が優れた系統数を試験的に求めたものである。
ステップS11におけるクラスター分析による分類仕分けの結果、系統数が目標系統数と異なる場合は、上記目標系統数と一致するまで前記閾値を変更してクラスター分析を繰り返し行う。前記閾値は、その大きさにより系統数が増減するので、目標系統数に仕分けられるまで自動的に閾値を変更して分析を繰り返し行う。
【0034】
(4)ステップS13:
非選択品位のサンプル粒を目標系統数に分類仕分けした結果を保存する。例えば、ステップS11で選択した品位が整粒であれば、整粒以外のサンプル粒が、作業者がステップS5で登録した品位に関係なく、6個の系統に分類仕分けされたことになる。ステップS13では、これら系統を各品位で保存することになる。
【0035】
(5)ステップS14:
ステップS11でのクラスター分析は、全ての品位で行う。本実施の形態では、ステップS5にて6個の品位に分類しているので、これら全ての品位毎にクラスター分析を行い、品位毎に系統を求めることになる。
【0036】
(b)アダブーストによる分析
(6)ステップS15:
ステップS15では、ステップS5で登録した品位を一つ選択し、この選択した品位のサンプル粒と、その品位での系統(本実施の形態では6個)の中の一つの系統に分類仕分けされたサンプル粒とで、ステップS3で取得した品位情報を用いてアダブーストによる分析を行い、各品位情報の閾値・ポジネガ・重み係数を算出する。本実施の形態では、前記各品位情報の閾値・ポジネガ・重み係数が品位判別基準となる。
【0037】
(7)ステップS16:
ステップS16では、ステップS15の分析で算出した分析結果(品位情報毎の閾値・ポジネガ・重み係数)を保存する。
【0038】
(8)ステップS17:
ステップS15で選択した品位のサンプル粒について、全ての系統でアダブーストによる分析を行ったかを確認する。アダブーストによる分析は、系統毎に行う。
【0039】
(9)ステップS18:
ステップS18では、全ての品位でアダブーストによる分析を行ったかを確認する。全ての品位で品位毎にアダブーストによる分析を行い、全ての品位について全ての系統で各品位情報の閾値・ポジネガ・重み係数を算出し、品位判別基準として保存することで、品位判別基準の作成が終了(学習が完了)する。
【0040】
[品位判別手順]
図5は、粒状物外観品位判別装置における粒状物の品位判別手順のフローを示す。
(1)ステップS21:
品位判別対象の複数の粒状物を撮像手段2の撮像面2bに載置する。
【0041】
(2)ステップS22:
ステップS21で撮像手段2の撮像面2bに載置された粒状物を撮像し、各粒状物の撮像データを取得する。
【0042】
(3)ステップS23:
ステップS22で取得した撮像データに基づいて、コンピュータ4が各粒状物の品位情報を取得する。この品位情報は、ステップS3と同一のものである。
【0043】
(4)ステップS24:
ステップS23で取得した品位情報と、事前に作成した品位判別基準とを用いて、アダブーストによる分析で各粒状物の品位を判別する。
【0044】
(5)ステップS25:
ステップS24での判別結果とステップS4での良品・不良品情報に基づいて、コンピュータ4は各粒状物を良品又は不良品のどちらかに分類しデータを保存する。
【0045】
(6)ステップS26:
ステップS24での品位判別結果を保存する。
【0046】
(7)ステップS27:
ステップS25の分類結果に基づいて、良品又は不良品に分類された各粒状物を適宜ディスプレイにより表示する。
【0047】
(8)ステップS28:
ステップS24の品位判別結果に基づいて、判別された各粒状物を品位毎に適宜ディスプレイにより表示する。
【0048】
<品位判別例>
図6は、ステップ24における品位判別基準に基づく品位判別の一例であって、品位判別フローを示す。
(1)ステップS31:
まず、ステップS31で一つの品位を選択する。
【0049】
(2)ステップS32:
選択した品位には、目標値(本実施の形態では6個)の系統がクラスター分析により求められているので、その中の一つの系統を選択する。
【0050】
(3)ステップS33:
選択した品位及び系統のアダブーストによる分析結果(品位情報毎の閾値・ポジネガ・重み係数)であって、ステップS16において保存されたものをメモリから読み込む。
【0051】
(4)ステップS34:
撮像により取得した撮像データの中から一つの粒状物を選択する。
【0052】
(5)ステップS35:
選択した粒状物についての品位情報を一つ選択する。
【0053】
以下は、アダブーストによる分析である。
(6)ステップS36:
ステップS34で選択した粒状物について、ステップS35で選択した品位情報がステップS33で読み込んだ閾値よりも大きいかどうかを判断する。
【0054】
(7)ステップS37及びステップS38:
上記品位情報が上記閾値よりも大きい場合は、ステップS37にて、ネガポジを確認する。逆に上記品位情報が上記閾値よりも小さい場合は、ステップS38にてネガポジを確認する。上記ネガポジの確認結果により、加算値を求める。
ここで、本実施の形態でのネガポジは、上記品位情報が上記閾値のプラス側にある場合とマイナス側にある場合とで、どちら側にある場合に選択した品位に該当するかを判断する基準(フラグ)である。
【0055】
(8)ステップS39:
ステップS39にて、系統毎に求める信頼度(又は類似度)に、ステップS37又はステップS38で求めた加算値を加算する。
【0056】
(9)ステップS40:
全ての品位情報についてステップS36〜ステップS39の作業を行ったか確認する。ステップS36での判断は、使用する全ての品位情報について行う。
【0057】
(10)ステップS41:
全ての粒状物についてステップS36〜ステップS39の作業を行ったか確認する。ステップS36での判断は、撮像した全ての粒状物について行う。
【0058】
(11)ステップS42:
全ての系統についてステップS36〜ステップS39の作業を行ったか確認する。ステップS36での判断は、選択した品位の全ての系統について行う。
【0059】
(12)ステップS43:
全ての品位についてステップS36〜ステップS39の作業を行ったか確認する。ステップS36での判断は、ステップS5で設定した全ての品位について行う。
【0060】
(13)ステップS44:
撮像した粒状物毎に複数の信頼度が求められるが、この信頼度の大きさ等に基づいて、各粒状物の品位を判別する。これにより、品位の判別を終了する。
【0061】
本発明の実施の形態によれば、複数のサンプル粒をグループ毎(品位毎)に区分けして撮像手段2の撮像面2bに載置するものであり、事前にグループ化されたサンプル粒を扱うことができるため、熟練した作業者でなくても、粒状物の品位判別基準を簡単に作成することができる。
【0062】
また、本発明の実施の形態によれば、作業者が事前にグループ化されたサンプル粒を撮像手段2の撮像面2bにグループ毎に区分けして載置することで、コンピュータ4が品位判別基準を自動的に作成することが可能となる。
【0063】
さらに、本発明の実施の形態における品位判別基準の作成方法によれば、事前にグループ毎に仕分けされた粒状物を繰り返し利用することができるため、客観性のある品位判別基準を繰り返し作成することが可能となる。
【0064】
本発明の実施の形態は、クラスター分析及びアドブーストによる分析を利用して前記品位判別基準を作成することとしたため、高精度な品位判別基準を作成することが可能となる。
【0065】
なお、上記本発明の実施の形態において、品位判別基準の作成にはクラスター分析及びアドブーストによる分析を利用したが、前記品位判別基準は、他の機械学習アルゴリズムによる分析やその他の公知の方法を利用して作成することができる。
【0066】
本発明は、上記実施の形態に限らず発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、熟練した作業者でなくても粒状物品位判別基準を簡単に作成することができるため、非常に利用価値の高いものである。
【符号の説明】
【0068】
1 粒状物外観品位判別装置
2 撮像手段(スキャナー)
2a 本体
2b 撮像面
2c カバー
3 ケーブル
4 コンピュータ
5 トレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6