(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481264
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】測定用窓
(51)【国際特許分類】
G01N 21/03 20060101AFI20190304BHJP
G01N 21/49 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G01N21/49 A
G01N21/49 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-119730(P2014-119730)
(22)【出願日】2014年6月10日
(65)【公開番号】特開2015-232507(P2015-232507A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 愛
(72)【発明者】
【氏名】鍬形 武志
(72)【発明者】
【氏名】大矢 彰
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−103886(JP,U)
【文献】
実開昭54−096285(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3159509(JP,U)
【文献】
特開平02−257040(JP,A)
【文献】
特開昭61−225636(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/180106(WO,A1)
【文献】
特開平11−174230(JP,A)
【文献】
特開2006−071875(JP,A)
【文献】
実開昭62−108855(JP,U)
【文献】
米国特許第07659504(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/83
G01N 35/00−37/00
E06B 5/00
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を測定対象とした測定器において、液体を収容する部屋と測定を行なう部屋とを区分ける測定用窓であって、
濁度測定のための入射光が入射するガラス部と、前記ガラス部より熱伝導度が低いとともに測定側がレンズ形状に加工され、前記入射光を必要な光束形状とする透明樹脂部と、前記ガラス部と前記透明樹脂部とを密着した状態で張り合わせる応力緩和効果を持つ透明粘着材とを備え、前記ガラス部が前記液体を収容する部屋側に配置され、
前記透明粘着材は、シリコーン系のゲル状素材であることを特徴とする測定用窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体を測定対象とした測定器における測定用窓に関する。
【背景技術】
【0002】
濁度計、色度計、水質計等の水を測定対象とした測定器では、測定対象の水を流したり溜めたりする部屋と、発光や観測等を行なう部屋とを区分ける測定用窓が用いられている。測定用窓は、測定対象を正確に測定するために無色透明であることに加え、水中の異物の接触等によるキズが発生しない程度の硬度を備えている必要がある。
【0003】
ここでは、濁度計を例に説明する。濁度計は、水の濁り具合を表わす指標である濁度を測定する測定器である。
図7(a)は、濁度計の一方式である直角散乱型濁度計600の従来の構成を模式的に示す図である。本図に示すように、直角散乱型濁度計600は、測定対象の水を収容する液槽601と、液槽601に取り付けられたカバー602とカバー603とを備えている。
【0004】
カバー602の内部には、光源604とレンズ605と参照光用の受光素子606とが配置されており、カバー603の内部から液槽601内に突き出し、窓608が設けられた受光スペース607には散乱光用の受光素子609が配置されている。液槽601とカバー602とはOリング610によりシールされ、液槽601とカバー603とはOリング611によりシールされている。
【0005】
液槽601とカバー602内部の部屋とは、測定用窓612により区分けられ、液槽601とカバー603内部の部屋とは、測定用窓613により区分けられている。測定用窓612は、Oリング614によりシールされ、測定用窓613は、Oリング615によりシールされている。
【0006】
図7(b)は、濁度計の一方式である透過散乱型濁度計700の従来の構成を模式的に示す図である。本図に示すように、透過散乱型濁度計700は、液槽701と、液槽701に取り付けられたカバー702とカバー703とを備えている。
【0007】
カバー702の内部には、光源704とレンズ705と参照光用の受光素子706とが配置されており、カバー703の内部には、透過光用の受光素子706と散乱光用の受光素子707とが配置されている。液槽701とカバー702とはOリング710によりシールされ、液槽701とカバー703とはOリング711によりシールされている。
【0008】
液槽701とカバー702内部の部屋とは、測定用窓712により区分けられ、液槽701とカバー703内部の部屋とは、測定用窓713により区分けられている。測定用窓712は、Oリング714によりシールされ、測定用窓713は、Oリング715によりシールされている。
【0009】
いずれの方式においても、水温が低く、液槽(601、701)内の測定水とカバー(602、603、702、703)内との温度差が大きくなった場合に、カバー(602、603、702、703)内の空気中に含まれる水分が測定用窓(612、613、712、713)で結露し、濁度測定に影響を与えるおそれが生じる。
【0010】
これを防ぐため、各カバー(602、603、702、703)を密閉構造にするとともに、内部に乾燥剤(616、716)を入れて、カバー(602、603、702、703)内の相対湿度を下げるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−153739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
カバー(602、603、702、703)内は、Oリングを使用した密閉構造となっているが、僅かな隙間やOリングのガス透過等により湿気が少量ずつカバー(602、603、702、703)内に漏れ込む場合がある。湿気の漏れ込みは、カバー(602、603、702、703)内の乾燥剤(616、716)の寿命に影響を与え、放置すると測定用窓(612、613、712、713)で結露が生じてしまう。
【0013】
密閉構造を念入りにすることで湿気の漏れ込みを防ぐことができるが、構造が大がかりとなり、コストの上昇を招来する。
【0014】
そこで、本発明は、液体を測定対象としたセンサーにおいて、簡易な構成で、コストの上昇を招くことなく測定用窓の結露を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、液体を測定対象とした測定器において、液体を収容する部屋と測定を行なう部屋とを区分ける測定用窓であって、
濁度測定のための入射光が入射するガラス部と、前記ガラス部より熱伝導度が低い
とともに測定側がレンズ形状に加工され、前記入射光を必要な光束形状とする透明樹脂部と、前記ガラス部と前記透明樹脂部とを密着した状態で張り合わせる応力緩和効果を持つ透明粘着材とを備え、前記ガラス部が前記液体を収容する部屋側に配置され
、前記透明粘着材は、シリコーン系のゲル状素材とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液体を測定対象としたセンサーにおいて、簡易な構成で、コストの上昇を招くことなく測定用窓の結露を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の測定用窓を適用した直角散乱型濁度計の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本実施形態の測定用窓の構造を示す図である。
【
図3】本実施形態の測定用窓を透過散乱型濁度計に適用した場合の構成を模式的に示す図である。
【
図5】レンズ一体型測定用窓を適用した直角散乱型濁度計の構成を模式的に示す図である。
【
図6】レンズ一体型測定用窓を適用した透過散乱型濁度計の構成を模式的に示す図である。
【
図7】従来の濁度計の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明の測定用窓を濁度計に適用した場合を例に説明するが、本発明の測定用窓は、濁度計に限られず、色度計、水質計等の液体を測定対象とした測定器に広く適用することができる。
【0019】
図1は、本実施形態の測定用窓150を適用した直角散乱型濁度計100の構成を模式的に示す図である。本実施形態の測定用窓150は、後述する三層構造により結露防止対策が施されている。
【0020】
本図に示すように直角散乱型濁度計100は、測定対象の水を収容するする液槽110と、光源部屋120と受光部屋130と透過光トラップ部屋140とを備えている。液槽110は、測定対象の水を流すものであっても、溜めるものであってもよい。
【0021】
光源部屋120と液槽110とは、測定用窓150aにより区分けられ、受光部屋130と液槽110とは、測定用窓150bにより区分けられ、透過光トラップ部屋140と液槽110とは、測定用窓150cにより区分けられている。各測定用窓150は、シール効果のある接着剤等で各部屋(120、130、140)と液槽110との間に取り付けられている。
【0022】
光源部屋120には、濁度測定のための入射光を発生させる光源121、レンズ122、参照光受光部123が配置されている。光源121は、ランプ、LED等を用いることができ、光源121が発する光はレンズ122により必要な光束形状となる。参照光受光部123は、光源121の光量変化を補正するために備えられているが、省くようにしてもよい。また、光源部屋120には、乾燥剤124が置かれているが、結露防止対策が施された測定用窓150aを用いているため、乾燥剤124を省くようにしてもよい。
【0023】
受光部屋130には、レンズ131、受光素子132が配置されている。受光素子132は、フォトダイオード等を用いることができる。レンズ131を用いない受光形態としてもよい。受光部屋130にも、乾燥剤133が置かれているが、結露防止対策が施された測定用窓150bを用いているため、乾燥剤133を省くようにしてもよい。
【0024】
透過光トラップ部屋140は、迷光を低減するための空間であり、必要に応じて設けられる。透過光トラップ部屋140にも、乾燥剤141が置かれているが、結露防止対策が施された測定用窓150cを用いているため、乾燥剤141を省くようにしてもよい。
【0025】
図2は、本実施形態の測定用窓150の構造を示す図である。本図に示すように、測定用窓150は三層構造により結露防止対策を施しており、ガラス部151と透明樹脂部152とを透明粘着材153で貼り合わせた構造となっている。この構造において、ガラス部151を接液側とし、透明樹脂部152を測定側として用いるようにする。
【0026】
ガラス部151は、ケイ酸塩ガラス、サファイアガラス、石英ガラス、アクリルガラス等を用いることができる。測定水中の粒子による傷を防ぐため、固い材料が望ましい。また、測定用の光を透過させるため透明度が高い材料を用いるようにする。
【0027】
透明樹脂部152は、ガラス部151に比べて熱伝導度が低い部材で構成する。例えば、ポリカーボネート、アクリル等のシートまたは板材を用いることができる。例えばケイ酸塩ガラスの熱伝導度が1.00W/m・Kであるのに対し、ポリカーボネートの熱伝導度は、0.19W/m・Kである。測定のための光を阻害することなく透過させるために透明度が高い材料を用いるようにする。
【0028】
透明粘着材153は、極めて高い光透過性、耐久性および衝撃吸収性を持つ柔らかい光学用の粘着シートである。例えば、シリコーン系のゲル状素材を用いることができる。一般に、このような素材の熱伝導度はポリカーボネートと同等程度である。透明粘着材153は、ガラス部151および透明樹脂部152と隙間なく密着させた状態で張り合わせるようにする。
【0029】
このように、本実施形態の測定用窓150は、濁度測定の阻害要因となる結露が発生しやすいガラス部151の測定側面を熱伝導度の低い透明樹脂部152で覆うことにより、結露の発生を防止している。
【0030】
このとき、ガラス部151と透明樹脂部152という線膨張係数の異なる部材を直接張り合わせると、温度変化等により僅かな剥がれ等が生じて干渉縞ができやすくなる。ガラス部151と透明樹脂部152それぞれの透明度が高くても、干渉縞が発生すると、濁度測定の誤差要因となってしまう。そこで、本実施形態では、応力緩和効果を持つ透明粘着材153で、両者を密着して張り合わせることにより干渉縞の発生を防いでいる。
【0031】
図3は、本実施形態の測定用窓150を透過散乱型濁度計200に適用した場合の構成を模式的に示す図である。本図に示すように透過散乱型濁度計200は、測定対象の水を収容する液槽210と、光源部屋220と、受光部屋230とを備えている。
【0032】
光源部屋220と液槽210とは、測定用窓150dにより区分けられ、受光部屋230と液槽210とは、測定用窓150eにより区分けられている。各測定用窓150は、シール効果のある接着剤等で各部屋(220、230)と液槽210との間に取り付けられている。
【0033】
光源部屋220には、濁度測定のための入射光を発生させる光源221、レンズ222、参照光受光部223が配置されている。光源221は、ランプ、LED等を用いることができ、光源221が発する光はレンズ222により必要な光束形状となる。参照光受光部223は、光源221の光量変化を補正するために備えられているが、省くようにしてもよい。また、光源部屋220には、乾燥剤224が置かれているが、結露防止対策が施された測定用窓150dを用いているため、乾燥剤224を省くようにしてもよい。
【0034】
受光部屋230には、透過光受光素子231および散乱光受光素子232が配置されている。透過光受光素子231および散乱光受光素子232は、フォトダイオード等を用いることができる。受光部屋230にも、乾燥剤233が置かれているが、結露防止対策が施された測定用窓150eを用いているため、乾燥剤233を省くようにしてもよい。
【0035】
なお、上述の
図1、
図3に例示した濁度計(100、200)においては、レンズ(122、131、222)と測定用窓150とを別々に設けていたが、
図4に示すようなレンズ一体型測定用窓160を用いることにより、独立したレンズを省く構成としてもよい。
【0036】
本図に示すように、レンズ一体型測定用窓160は、測定用窓150と同様に三層構造により結露防止対策を施しており、ガラス部161とレンズ形状透明樹脂部162とを透明粘着材163で貼り合わせた構造となっている。レンズ形状透明樹脂部162は、透明樹脂部152と同様の材料で構成し、測定側をレンズ形状に加工したものである。ガラス部161と透明粘着材163は、上述のガラス部151と透明粘着材153と同様とすることができる。本例では、凸レンズ形状としているが、用途によっては凹レンズ形状としてもよい。
【0037】
このようなレンズ一体型測定用窓160を測定用窓150の代わりに用いることにより、測定に影響を与える結露を防止できることに加え、
図5に示すように、直角散乱型濁度計101において、光源部屋120のレンズ122、受光部屋130のレンズ131が不要となる。また、
図6に示すように、透過散乱型濁度計201において、光源部屋220のレンズ222が不要となる。
【符号の説明】
【0038】
100…直角散乱型濁度計、101…直角散乱型濁度計、110…液槽、120…光源部屋、121…光源、122…レンズ、123…参照光受光部、124…乾燥剤、130…受光部屋、131…レンズ、132…受光素子、133…乾燥剤、140…透過光トラップ部屋、141…乾燥剤、150…測定用窓、151…ガラス部、152…透明樹脂部、153…透明粘着材、160…レンズ一体型測定用窓、161…ガラス部、162…レンズ形状透明樹脂部、163…透明粘着材、200…透過散乱型濁度計、201…透過散乱型濁度計、210…液槽、220…光源部屋、221…光源、222…レンズ、223…参照光受光部、224…乾燥剤、230…受光部屋、231…透過光受光素子、232…散乱光受光素子、233…乾燥剤