特許第6481298号(P6481298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6481298-ヘッドアップディスプレイ装置 図000002
  • 特許6481298-ヘッドアップディスプレイ装置 図000003
  • 特許6481298-ヘッドアップディスプレイ装置 図000004
  • 特許6481298-ヘッドアップディスプレイ装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481298
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20190304BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-184332(P2014-184332)
(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公開番号】特開2016-57491(P2016-57491A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春山 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宗也
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−203176(JP,A)
【文献】 特開平10−020399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の表示領域を有する表示部材と、光線を放出する光源と、前記光線を分割し前記光源の像を複数生成するレンズアレイと、前記レンズアレイにより生成される前記光源の像から発せられる前記光線を所定の角度で前記表示部材に入射させるフィールドレンズと、を備える表示器から発せられる表示光を投射部材を介して観察者の視点領域に導いて虚像を表示させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記レンズアレイの各レンズは、前記表示領域の短手方向に対応する第1方向における集光点と、前記表示領域の長手方向に対応する第2方向における集光点はレンズ内に位置し、前記第2方向における集光点が前記第1方向における集光点よりも入射曲面側に位置するトロイダル形状である
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記レンズアレイの各レンズは、前記第1方向における集光点が出射曲面の頂点に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記レンズアレイは、樹脂材料からなる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々提案されているヘッドアップディスプレイ装置として、特許文献1に開示されるものがある。このヘッドアップディスプレイ装置は、光線を放出する光源と、光線を分割し光源の像を複数生成するレンズアレイと、レンズアレイにより生成される光源の像から発せられる光線を所定角度で表示部材に入射させるフィールドレンズと、を有し、レンズアレイは、レンズアレイにより生成される光源の像面が、フィールドレンズの物体側焦点に対してフィールドレンズの主点側に位置するように配設されるものである。
【0003】
上述のようなヘッドアップディスプレイ装置によれば、アイボックスへの光照射効率を向上することができ、視点移動に伴う表示像の輝度変化量を抑制するこ
とが可能であり、また望ましい配光角度特性を実現可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−203176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レンズアレイを備えたヘッドアップディスプレイ装置においては、高温環境下で高輝度の光線を光源が発した場合に、レンズアレイを通過する光線の集光点がレンズアレイ内で1点に集まると、レンズアレイの材質によってはレンズアレイが変質して表示品位が低下してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、光源が発する光線の集光によってレンズアレイが変質する虞を低減したヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、
矩形の表示領域を有する表示部材113と、光線L0を放出する光源111aと、前記光線L0を分割し前記光源111aの像を複数生成するレンズアレイ111cと、前記レンズアレイ111cにより生成される前記光源111aの像から発せられる前記光線L0を所定の角度で前記表示部材113に入射させるフィールドレンズ111dと、を備える表示器110から発せられる表示光Lを投射部材120,220を介して観察者Dの視点領域Bに導いて虚像Vを表示させるヘッドアップディスプレイ装置100であって、
前記レンズアレイ111cの各レンズは、前記表示領域の短手方向に対応する第1方向における集光点P1と、前記表示領域の長手方向に対応する第2方向における集光点P2はレンズ111c内に位置し、前記第2方向における集光点P2が前記第1方向における集光点P1よりも入射曲面側に位置するトロイダル形状である。
【0008】
また、好ましくは、本発明のヘッドアップディスプレイ装置100の
前記レンズアレイ111cの各レンズは、前記第1方向における集光点P1が出射曲面の頂点に位置する。
【0009】
また、好ましくは、本発明のヘッドアップディスプレイ100の
前記レンズアレイ111cは、樹脂材料からなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光源が発する光線の集光によってレンズアレイが変質する虞を低減したヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態であるヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
図2】同上ヘッドアップディスプレイ装置の断面図である。
図3】同ヘッドアップディスプレイ装置における光路を説明する図である。
図4】同ヘッドアップディスプレイ装置におけるレンズアレイの光路を説明する図である。(a)は縦方向(第1方向)における光路を示し、(b)は横方向(第2方向)おける光路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1から図4に基づいて、本発明を車両用のヘッドアップディスプレイ装置に適用した一実施形態を説明する。
【0013】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、図1に示すように車両200のインパネ210内部に配設され、後述する液晶表示器(表示器)110が発する表示光Lをフロントガラス(投射部材)220を介して反射させ、車両200の運転者(観察者)DのアイボックスBに導いて、虚像(表示像)Vを表示する。これにより、運転者Dは表示光Lによる虚像Vを風景に重畳させて視認できる。
【0014】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、図2に示すように液晶表示器110と、凹面鏡120と、ハウジング130と、放熱部材140と、から主に構成される。
【0015】
液晶表示器110は、照明光学系111と、光拡散部材112と、液晶表示パネル(表示部材)113と、第1のケース体114と、第2のケース体115と、第3のケース体116と、を備える。
【0016】
照明光学系111は、いわゆるケーラー照明光学系であり、図3に示すように、光源111aと、コンデンサレンズ111bと、レンズアレイ111cと、フィールドレンズ111dと、で構成される。また、照明光学系111は、光源111aから発せられる光線L0を液晶表示パネル113の横長矩形の有効領域に均等に照射させつつ、同光線L0を凹面鏡120とフロントガラス220とで構成される投射光学系を介して、運転者DのアイボックスBへ導くように液晶表示パネル113面から出射される表示光Lの角度を制御する。
【0017】
光源111aは、LEDなどの発光素子からなり、光線L0を発する。光源111aは、回路基板(光源基板)117に実装されている。
【0018】
コンデンサレンズ111bは、波長587.56nmにおける屈折率Ndが1.4〜1.7である光学樹脂により作製される凸レンズからなり、光源111aから出射される光線L0を集光し、ヘッドアップディスプレイ装置100の光軸Aに対して平行化する機能を有する。コンデンサレンズ111bは、1個の光源111aに対して1つのレンズが対応し、本実施形態のように光源111aが複数使用される場合は、凸レンズ部が複数配置された集合レンズの形態を取る。コンデンサレンズ111bの有効焦点距離は5〜9mmであり、レンズ製造上の都合からレンズ曲面頂点間距離(レンズ厚さ)を一定以下に抑えたい場合など、仕様によっては2枚のレンズで構成してもよい。光源111aはその射出面がコンデンサレンズ111bの焦点に位置し、光源111aから射出される近軸光線がコンデンサレンズ111bを透過後に光軸Aと平行な平行光となる。なお、コンデンサレンズ111bの入射側曲面頂点と光源111aの射出面との間隔は光源111aからの光取り込み量及び寸法制約などを条件として規定される。光源111aがランバシアン配光に近い特性を持つ場合、コンデンサレンズ111bの射出側曲面形状は球面を基本とするが、光源111aの配光特性に応じて非球面のトロイダル形状としてもよい。
【0019】
レンズアレイ111cは、波長587.56nmにおける屈折率Ndが1.4〜1.7である光学樹脂により作製される両凸レンズがヘッドアップディスプレイ装置100の光軸Aに対して垂直な平面に規則的に複数配置された光学部材である。レンズアレイ111cは、コンデンサレンズ111bによって平行化された光線L0をアレイ数に応じて分割して中間像を結ぶ機能を有する。この中間像は、コンデンサレンズ111bによって生成される光源111aの拡大像をアレイ数で分割した像である。レンズアレイ111cの各レンズは、レンズの縦方向と横方向が液晶表示パネル113の縦方向と横方向に対応しており、液晶表示パネル113の横長矩形の有効領域を均一に照明するように最適化される。
【0020】
レンズアレイ111cの各レンズの縦横におけるレンズ同士のピッチ間隔と、各レンズの形状によって、中間像面から出射される光線L0の配光角度(開口数)を調整できる。しかしながら、各レンズのピッチ間隔や形状を調整するが、各レンズのピッチ間隔を広げると、レンズアレイ11cにより生成される中間像の境界部分を運転者Dに視認されて表示品位が低下する虞が高まり好ましくない。
【0021】
また、レンズアレイ111cが光線L0の集光によって変質しないようにレンズアレイ111cに入射した光線L0が集光する位置をレンズアレイ111c外とすることが好ましい。しかしながら、液晶表示パネル113を適切に照明するために必要な中間像面から出射される光線L0の配光角度と、レンズアレイ111cの剛性を保つために必要な厚さから、レンズアレイ111cに入射した光線L0が集光する位置をレンズアレイ111c外とすることは難しい。
【0022】
よって、レンズアレイ111cの各レンズの形状を、図4に示すように、レンズアレイ111c上で集光する集光点Pの縦方向における集光位置P1と横方向における集光位置P2同士が1点で交わらず、中間像面から出射される横方向の光線L0の配光角度を縦方向の光線L0の配光角度に比べ広くなるように、集光位置P1よりも集光位置P2をレンズアレイ111cの近軸平行光が入射した側に位置するように規定した非球面のトロイダル形状とする。
【0023】
フィールドレンズ111dは、波長587.56nmにおける屈折率Ndが1.4〜1.7である光学樹脂により作製される凸レンズからなり、本実施形態においては少なくとも2つの凸レンズからなる。フィールドレンズ111dは、レンズアレイ111cが生成した中間像から発せられる光線L0を、所定の配光角度で液晶表示パネル113へ導く機能を有する。すなわち、照明光学系111は、レンズアレイ111cによって光源111aからの平行化された光線L0を分割して各中間像を生成し、生成される各中間像から発せられる光線L0をフィールドレンズ111dによってそれぞれ液晶パネル113面(液晶層の厚さ方向の中心線を通る平面)全体を照射するように拡大し、また、個々の物点を1つの面である液晶表示パネル113面に重ねる。これにより、アイボックスBへの光照射効率が向上し、また、集光後に横方向及び縦方向にのみ広げるレンチキュラレンズを用いた従来の方法に比べて虚像Vの輝度均斉度を改善して視点移動に伴う虚像Vの輝度変化量を抑制できる。
【0024】
光拡散部材112は、透明樹脂材料を基材としてフィルム状あるいは板状の部材であり、照明光学系111のフィールドレンズ111dと液晶表示パネル113との間に、全光路を覆う大きさで配置される。光拡散部材112は、第3のケース体116内に外装部品での挟み込みや接着等によって固定される。光拡散部材112は、フィールドレンズ111dの射出側曲面で反射される外光を拡散し、また、照明光学系111のレンズアレイ11cにより生成される中間像の境界部分を運転者Dに視認されないようにする機能を有する。
【0025】
液晶表示パネル113は、透明電極膜が形成された一対の透光性基板に液晶層を封入した液晶セルの前後両面に偏光板を貼着した表示パネルであり、例えばQVGA(Quarter Video Graphics Array)規格の横長矩形の有効領域を有し、第3のケース体116内に収納される。フィールドレンズ111dによって所定の配光角度で液晶表示パネル113面へ導かれた光線L0は液晶表示パネル113を透過して表示光Lとなって投射光学系を構成する凹面鏡120に照射される。
【0026】
第1のケース体114は、液晶表示器110の後方側に設けられ、非透過性樹脂材料からなる断面略矩形状の筒状部材であり、コンデンサレンズ111bを収容する。
【0027】
第2のケース体115は、非透過性樹脂材料からなる断面矩形状の筒状部材であり、第1のケース体114と第3のケース体116との間に設けられ、照明光学系111を構成する各部材を収容、保持する。
【0028】
第3のケース体116は、液晶表示器110の前方側(射出側)に設けられ、非透過性樹脂材料からなり、光拡散部材112及び液晶表示パネル113を収納する。また、第3のケース体120には液晶表示パネル113の表示面を露出する窓部116aが設けられており、窓部116aから表示光Lが射出される。
【0029】
凹面鏡120は、例えばポリカーボネートなどの樹脂材料に例えばアルミニウムなどの金属を蒸着させて凹面状の反射面を形成した反射鏡である。凹面鏡120は、液晶表示器110が発した表示光Lを拡大してフロントガラス220に照射する機能と、フロントガラス2の曲面による表示光Lの歪みを凹面状の曲面にて補正する機能を有する。
【0030】
ハウジング130は、非透過性樹脂材料からなり、液晶表示器110及び凹面鏡120を収納する。ハウジング130には、表示光を出射する窓部131が設けられている。この窓部131は例えばアクリルなどの透光性樹脂材料からなり、湾曲形成されている。また、ハウジング130には、後方側に放熱部材140を配設するための開口部132が設けられている。
【0031】
放熱部材140は、ハウジング130の開口部132に設けられる。放熱部材140は、例えばアルミニウムなどの金属材料で作成されるフィン型の構造体であり、光源117が発する熱を外部に放出する役割を有する。放熱部材140には、螺子止めにより第1,第2のケース体114,115が固定される。また、放熱部材140はハウジング130に螺子止めされる。
【0032】
以上の各部によってヘッドアップディスプレイ装置100が構成される。
【0033】
本実施形態によれば、レンズアレイ111cに入射した近軸平行光が屈折して集光する位置Pを、縦方向(第1方向)と横方向(第2方向)における集光位置P1,P2が互いにレンズアレイ111c上で重ならないように規定することで、光線L0がレンズアレイ111cの1点に集光しないため、レンズアレイ111cが光線L0の集光によってレンズアレイが変質して表示品位が低下してしまう虞を低減できる。
【0034】
また、本実施形態は、液晶表示パネル(表示部材)113の横長矩形の有効領域に均等に光線L0を照射するにあたって、横方向(第2方向)における集光位置P2を縦方向(第1方向)における集光位置P1よりもレンズアレイ111cの入射側曲面側に配置することで、レンズアレイ111cの各レンズの横方向(第2方向)のピッチを広げて配光角度を広げるのに比べて、照明光学系111のレンズアレイ111cにより生成される中間像の境界部分を運転者Dに視認されにくくなり、表示品位が低下する虞を低減できる。
【0035】
また、本実施形態は、レンズアレイ111cに入射した近軸平行光が屈折して集光する位置Pを、縦方向(第1方向)と横方向(第2方向)における集光位置P1,P2が互いにレンズアレイ111c上で重ならないように規定することで、光線L0がレンズアレイ111cの1点に集光せず、レンズアレイ111cが光線L0の集光による変質の虞を低減できるため、例えば無機ガラスからなるレンズアレイ111cに比べ、耐熱性は低いが安価で成形が容易な光学樹脂からなるレンズアレイ111cを採用できた。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施ができる。
【0037】
例えば、本実施形態においては、LEDなどの発光素子からなる点光源の光源111aが発する光線L0を、コンデンサレンズ111bによって集光し、ヘッドアップディスプレイ装置100の光軸Aに対して平行化して、レンズアレイ111cに出射したが、光源111aが平行光を発する面光源であれば、コンデンサレンズ111bを廃してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に好適である。
【符号の説明】
【0039】
100 :ヘッドアップディスプレイ装置
110 :液晶表示器(表示器)
111 :照明光学系
111a :光源
111b :コンデンサレンズ
111c :レンズアレイ
111d :フィールドレンズ
112 :光拡散部材
113 :液晶表示パネル(表示部材)
114 :第1のケース体
115 :第2のケース体
116 :第3のケース体
117 :回路基板(光源基板)
120 :凹面鏡
130 :ハウジング
140 :放熱部材
図1
図2
図3
図4