(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、燃料を燃焼させて発生させた燃焼ガスにより水を加熱し蒸気を生成する缶体と、この缶体に供給される水(給水)を加熱する給水加熱器と、を備えるボイラ装置が提案されている。給水加熱器は、缶体において蒸気の生成に用いられた後排出される燃焼ガスの熱を利用して給水を加熱することで、ボイラ装置の熱の利用効率(ボイラ効率)を向上させる。
【0003】
ここで、缶体への給水は、缶体の内部の水位に基づいて制御される。即ち、缶体の水位が低くなった場合には給水が行われ、缶体の水位が高くなった場合には給水が停止される。そのため、給水加熱器を備えるボイラ装置において、給水が停止されて給水加熱器に給水が滞留した場合には、給水が過剰に加熱されて沸騰してしまう場合がある。
【0004】
このような給水加熱器における給水の沸騰を防止するために、缶体の水位に応じて給水流量を連続的に変更し、缶体の水位が高くなった場合にも一定の流量(最低流量)で給水を行う連続給水制御を行うボイラ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のボイラ装置1の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態のボイラ装置1は、水を加熱して蒸気の生成を行う蒸気ボイラであり、蒸気を使用する負荷機器50に蒸気を供給する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のボイラ装置1は、ボイラ本体10と、給水ラインL1と、給水加熱器としてのエコノマイザ20と、燃料供給ラインL2と、蒸気供給ラインL3と、ボイラ装置1の動作を制御する制御装置100と、を備える。
尚、本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、各ラインには、各種バルブ、各種センサ、逆止弁、オリフィス、ストレーナ等の機器が必要に応じて設けられるが、
図1では適宜に図示を省略する。
【0014】
ボイラ本体10は、燃料を燃焼させて給水を加熱することで蒸気を生成する。ボイラ本体10は、外形を構成する円筒形状の缶体11と、バーナ12と、排気筒13と、缶内圧力センサ14と、水位測定部としての水位計15と、を備える。
缶体11は、複数の水管、下部ヘッダ、上部ヘッダ、及び燃焼室(いずれも図示せず)を含んで構成される。缶体11では、後述の給水ラインL1から下部ヘッダを介して複数の水管に導入された給水が、燃料供給ラインL2から供給された燃料を燃焼させることで発生させた燃焼ガスにより加熱されて蒸気が生成される。
【0015】
バーナ12は、缶体11の上部に配置される。バーナ12は、燃料供給ラインL2から缶体11に供給された燃料を燃焼させる。
排気筒13は、缶体11で発生し蒸気の生成に用いられた後の燃焼ガスを排ガスとして外部に排出する。排気筒13の基端側は、缶体11の側面に接続され、先端側は上方に延びる。
【0016】
缶内圧力センサ14は、缶体11の内部の圧力(蒸気圧)を測定する。水位計15は、缶体11の内部の水位(複数の水管の水位)を測定する。
缶内圧力センサ14及び水位計15は、後述の制御装置100に電気的に接続されている。缶内圧力センサ14で測定された缶体11の内部の圧力及び水位計15で測定された缶体11の内部の水位は、検出信号として制御装置100に送信される。
【0017】
給水ラインL1は、給水W1を缶体11に供給する。給水ラインL1の上流側の端部は、給水源(不図示)に接続されている。給水ラインL1の下流側の端部は、缶体11の下部(下部ヘッダ)に接続されている。給水ラインL1には、給水ポンプ16が配置される。
【0018】
給水ポンプ16は、インペラ(羽根車)の回転によって圧力差を生み出して給水W1を吸入し、缶体11に向けて吐出する。給水ポンプ16は、インペラと、このインペラを回転させる駆動モータと、この駆動モータの回転数を制御するインバータと、を備える。
給水ポンプ16は、制御装置100に電気的に接続されている。そして、制御装置100からの制御信号に基いてインバータが所定の周波数を入力することで、入力された周波数に応じて駆動モータが回転し、給水ポンプ16による給水の吐出力が制御される。
【0019】
エコノマイザ20は、給水ラインL1に配置され、缶体11に供給される給水W1を缶体11において発生した燃焼ガスにより加熱する。より具体的には、エコノマイザ20は、給水ラインL1における給水ポンプ16よりも下流側の一部を、排気筒13を経由させることで構成される。そして、給水ラインL1を流通する給水W1は、排気筒13を流通する排ガスとの間で熱交換を行うことで加熱され、缶体11に供給される。
【0020】
燃料供給ラインL2は、燃料供給源(不図示)から送出された燃料を、バーナ12に供給する。
蒸気供給ラインL3は、缶体11(複数の水管)で発生した蒸気W2を負荷機器50に供給する。
【0021】
制御装置100は、ボイラ装置1の動作を制御する。本実施形態では、ボイラ装置1は、複数の段階的な燃焼位置(例えば、燃焼停止位置、低燃焼位置、中燃焼位置及び高燃焼位置の4位置)で燃焼可能な段階値制御ボイラにより構成される。そして、制御装置100は、ボイラ装置1の燃焼状態(燃焼位置)及び当該燃焼状態に応じた缶体11への給水等を制御する。
【0022】
本実施形態では、制御装置100は、缶体11からの給水要求の有無に応じて、給水ポンプ16を駆動させる周波数を制御することにより、エコノマイザ20において給水が沸騰してしまうことを抑制する。即ち、エコノマイザ20における給水の沸騰は、給水要求がない場合に給水ラインL1において給水W1の流れが停滞することで発生する。一方、ボイラ装置1が燃焼している状態で給水要求がない場合(給水が停止されている場合)には、所定の速度で缶体11の内部の水位は低下していく。
【0023】
そこで、本実施形態では、給水要求がない場合における給水ポンプ16の駆動周波数(後述の第2周波数)を、缶体11の内部の水位の変化量に基いて制御することで、給水要求がない場合に、缶体11の内部の水位が上昇しない程度の流量で給水W1を缶体11に供給し、エコノマイザ20における給水W1の沸騰を抑制している。
【0024】
制御装置100は、
図2に示すように、制御部110として機能するCPU及び記憶部120として機能するメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)を含んで構成される。
【0025】
記憶部120は、ボイラ装置1を動作させるための各種情報を記憶する。本実施形態では、記憶部120には、ボイラ装置1の燃焼位置に応じてそれぞれ設定される缶体11の目標水位(帯)に関する情報、後述の第1周波数に関する情報、及び後述の第2周波数を決定するために用いられる水位変化の目標速度に関する情報等が記憶される。
【0026】
制御部110は、給水制御部111と、水位変化量算出部112と、燃焼状態取得部113と、第2周波数制御部114と、を備える。
【0027】
給水制御部111は、缶体11に対する給水要求があった場合に第1周波数で給水ポンプ16を駆動させて缶体11に給水を供給させ、給水要求がない場合に第1周波数よりも小さい第2周波数で給水ポンプ16を駆動させる。
【0028】
ここで、第1周波数は、給水要求があった場合に、給水ラインL1を流通する給水W1の流量が予め設定された第1流量以上の流量となるように給水ポンプ16を駆動させられる周波数として設定され、記憶部120に記憶される。
第2周波数は、後述の水位変化量算出部112及び第2周波数制御部114により決定される。
【0029】
水位変化量算出部112は、水位計15により測定される水位の変化速度を算出する。水位変化量算出部112による水位の変化速度の算出は、所定の時間間隔で(例えば1秒毎に)行われる。
【0030】
燃焼状態取得部113は、ボイラ装置1の燃焼状態(燃焼位置)を取得する。本実施形態では、燃焼状態取得部113は、缶内圧力センサ14により測定される缶体の内部の圧力に基いて決定されるボイラ装置1の燃焼位置に関する情報を取得する。
【0031】
第2周波数制御部114は、缶体11への給水要求がない場合に、水位変化量算出部112により算出される水位の変化速度が設定された目標速度となるように、第2周波数を制御する。
より具体的には、上述の記憶部120には、複数の燃焼位置と、これら複数の燃焼位置に対応してそれぞれ設定された複数の目標速度と、が関連付けて記憶される。この目標速度は、給水要求がない場合に缶体11への給水が行われなかったときの水位の低下速度よりも緩やかに水位が低下していく速度として設定され、記憶部120に記憶される。
そして、第2周波数制御部114は、まず、燃焼状態取得部113により取得された燃焼位置に対応した目標速度を記憶部120から抽出する。次いで、水位変化量算出部112により算出される缶体11の内部の水位の変化速度が目標速度となるように第2周波数の値を制御する。
第2周波数制御部114による第2周波数の制御は、PI制御又はPID制御により行われる。即ち、水位変化量算出部112により算出された水位の変化速度が目標速度よりも早い場合には、第2周波数制御部114は、第2周波数を大きくして給水ポンプ16による給水W1の缶体11への供給量を増加させる。また、水位変化量算出部112により算出された水位の変化速度が目標速度よりも遅い場合には、第2周波数制御部114は、第2周波数を小さくして給水ポンプ16による給水W1の缶体11への供給量を減少させる。
【0032】
次に、本実施形態のボイラ装置1の給水制御の流れにつき、
図3を参照しながら説明する。
図3は、第1実施形態のボイラ装置1における給水制御の流れを示すフロー図である。
【0033】
まず、ステップST1において、燃焼状態取得部113は、ボイラ装置1の燃焼状態(燃焼位置)を取得する。そして、処理はステップST2に移る。
【0034】
ステップST2において、制御部110は、缶体11への給水要求があるか否かを判定する。制御部110により缶体11への給水要求があると判定された場合(YES)、処理はステップST3に移る。制御部110により缶体11への給水要求がないと判定された場合(NO)、処理はステップST4に移る。
【0035】
ステップST3において、給水制御部111は、給水ポンプ16を第1周波数で駆動させて缶体11に第1流量で給水W1を供給させる。そして、処理はステップST1に戻る。
【0036】
ステップST4において、水位変化量算出部112は、水位計15により測定される水位の変化速度を算出する。そして、処理はステップST5に移る。
【0037】
ステップST5において、制御部110は、燃焼状態取得部113により取得されたボイラ装置1の燃焼位置に応じて設定された目標速度の値を記憶部120から抽出する。そして、処理はステップST6に移る。
【0038】
ステップST6において、第2周波数制御部114は、水位変化量算出部112により算出される水位の変化速度が抽出された目標速度となるように、第2周波数を算出する。そして処理はステップST7に移る。
【0039】
ステップST7において、給水制御部111は、給水ポンプ16を第2周波数で駆動させて缶体11に給水W1を供給させる。そして、処理はステップST1に戻る。
【0040】
以上説明した本実施形態のボイラ装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0041】
(1)ボイラ装置1を、エコノマイザ20と、水位計15と、入力された周波数に応じて駆動する給水ポンプ16と、給水要求があった場合に給水ポンプ16を第1周波数で駆動させ、給水要求がない場合に給水ポンプ16を第1周波数よりも小さい第2周波数で駆動させる給水制御部111と、水位の変化速度を算出する水位変化量算出部112と、缶体への給水要求がない場合に、水位変化量算出部112により算出される水位の変化速度が設定された目標速度となるように第2周波数の値を制御する第2周波数制御部114と、を含んで構成した。これにより、給水要求がない場合に缶体11の水位の上昇を起こさない程度の流量で缶体11への給水を行えるので、エコノマイザ20において給水W1が滞留して沸騰してしまうことを防げる。よって、給水流量計を設けることなく連続的な給水制御を行わせられるので、製造コストを高くすることなく、エコノマイザ20において給水W1が沸騰してしまうことを抑制できる。
【0042】
(2)ボイラ装置1の燃焼位置が高い場合には、燃焼位置が低い場合に比して缶体11の内部における給水の蒸発速度は早くなる。そのため、給水要求がない場合に、缶体11の水位が上昇しない範囲で給水ラインL1を流通させられる給水W1の流量(第2流量)は、燃焼位置が高い場合の方が、燃焼位置が低い場合よりも大きくなる。そこで、ボイラ装置1を、ボイラ装置1の燃焼状態(燃焼位置)を取得する燃焼状態取得部113を含んで構成し、記憶部120に、複数の燃焼状態(燃焼位置)と、これら複数の燃焼状態に対応してそれぞれ設定された複数の目標速度と、を関連付けて記憶させた。これにより、給水要求がない場合に、ボイラ装置1の燃焼状態に応じてより好適な流量で給水W1を流通させられるので、エコノマイザ20における給水W1の沸騰をより好適に抑制できる。
【0043】
以上、本発明のボイラ装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、ボイラ装置を、段階値制御ボイラにより構成したが、これに限らない。即ち、ボイラ装置を、燃焼量を連続的に変更可能な連続制御ボイラにより構成してもよい。