特許第6481547号(P6481547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481547
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】塔状構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/00 20060101AFI20190304BHJP
   H01Q 1/18 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   E04H12/00 A
   H01Q1/18
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-145961(P2015-145961)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-25608(P2017-25608A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】飯田 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】真弓 敏行
(72)【発明者】
【氏名】南部 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 一陽
(72)【発明者】
【氏名】橋本 達矢
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭50−007689(JP,Y1)
【文献】 特開2013−087478(JP,A)
【文献】 実開昭54−177705(JP,U)
【文献】 米国特許第03768016(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/00−12/28
H01Q 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間して地面から立設される少なくとも3つ以上の筒状構造物と、
前記筒状構造物に取り付けられ、かつ支持対象物を支持する少なくとも1以上の支持構造物と、
前記筒状構造物の先端部を閉塞する閉塞部と、
前記各筒状構造物を互いに連結する連結部と、
を備え、
前記筒状構造物は、
前記地面から上方に向かうに伴って、互いに接近する傾斜筒状部と、
前記傾斜筒状部から上下方向と平行に延在する鉛直筒状部と、
を有し、
前記支持構造物は、前記鉛直筒状部において支持され、
前記閉塞部は、前記鉛直筒状部の上方側端部を閉塞するものであり、
前記連結部は、隣り合う前記鉛直筒状部を連結するものであり、連結される一方の前記鉛直筒状部の内部に露出する第1連結部材と、連結される他方の前記鉛直筒状部の内部に露出し、前記第1連結部材と組み合わせて連結を行う第2連結部材とを有し、
前記筒状構造物の内部空間部には、少なくとも前記連結部の下方にステージが設けられる、
ことを特徴とする塔状構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の塔状構造物において、
前記連結部は、
隣り合う前記鉛直筒状部にそれぞれ形成された貫通孔に対して、隣り合う前記鉛直筒状部のうち、一方の内部から挿入される前記第1連結部材であるボルトと、
隣り合う前記鉛直筒状部のうち、他方の内部に露出し、前記ボルトに螺合する前記第2連結部材であるナットと、
を備える塔状構造物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塔状構造物において、
前記筒状構造物は、前記地面側に第1開口部が形成され、前記支持構造物に対応した第2開口部が形成され、
前記第1開口部および前記第2開口部は、前記筒状構造物の内部で連通している塔状構造物。
【請求項4】
請求項3に記載の塔状構造物において、
前記筒状構造物の内部空間部には、少なくとも前記第1開口部から前記第2開口部まで昇降手段が設けられる塔状構造物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1つに記載の塔状構造物において、
前記筒状構造物は、前記地面から上方向に積層された複数の筒状部材で形成されており、
前記筒状部材は、隣り合う前記筒状部材と前記上下方向において対向する端部に内側に突出するフランジが形成されており、
前記上下方向において対向する前記フランジを連結するフランジ連結部を有する塔状構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塔状構造物に関し、特に、支持対象物を高所で支持する塔状構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パラボラアンテナなどのアンテナや、高圧電線などの支持対象物を高所で支持する塔状構造物が提案されている。塔状構造物は、例えば、特許文献1に示すように、鉄骨材をトラス構造に組み合わせたものや、特許文献2〜3に示すように、柱状部材や、筒状部材を地面から上方向に積層したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−291968号公報
【特許文献2】特開2013−60772号公報
【特許文献3】特開2013−53424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塔状構造物においては、支持対象物を支持する場合に高い精度が要求される場合がある。高い精度が要求される場合は、塔状構造物の剛性を向上させることとなる。積層された柱状部材により形成される柱状構造物や、積層された筒状部材により形成される筒状構造物が1つで塔状構造物が構成されている場合は、ワイヤなどで柱状構造物や筒状構造物を外周面から支持する。一方、複数の柱状構造物や筒状構造物が互いに離間して1つの塔状構造物が構成されている場合は、隣り合う柱状構造物間や筒状構造物間を梁などで連結する。
【0005】
梁などで、隣り合う柱状構造物間や筒状構造物間を連結する場合は、連結箇所が多くなり、塔状構造物のメンテナンス性が低下することとなる。
【0006】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、剛性およびメンテナンス性の確保を図ることができる塔状構造物を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る塔状構造物は、
(1)互いに離間して地面から立設される少なくとも3つ以上の筒状構造物と、前記筒状構造物に取り付けられ、かつ支持対象物を支持する少なくとも1以上の支持構造物と、前記筒状構造物の先端部を閉塞する閉塞部と、前記各筒状構造物を互いに連結する連結部と、を備え、前記筒状構造物は、前記地面から上方に向かうに伴って、互いに接近する傾斜筒状部と、前記傾斜筒状部から上下方向と平行に延在する鉛直筒状部と、を有し、前記支持構造物は、前記鉛直筒状部において支持され、前記閉塞部は、前記鉛直筒状部の上方側端部を閉塞するものであり、前記連結部は、隣り合う前記鉛直筒状部を連結するものであることを特徴とする。
【0008】
(2)また、上記(1)の塔状構造物において、前記連結部は、隣り合う前記鉛直筒状部にそれぞれ形成された貫通孔に対して、隣り合う前記鉛直筒状部のうち、一方の内部から挿入されるボルトと、隣り合う前記鉛直筒状部のうち、他方の内部に露出する前記ボルトに螺合するナットと、を備えることが好ましい。
【0009】
(3)また、上記(1)または(2)の塔状構造物において、前記筒状構造物は、前記地面側に第1開口部が形成され、前記支持構造物に対応した第2開口部が形成され、前記第1開口部および前記第2開口部は、前記筒状構造物の内部で連通していることが好ましい。
【0010】
(4)また、上記(3)の塔状構造物において、前記筒状構造物の内部空間部には、少なくとも前記第1開口部から前記第2開口部まで昇降手段が設けられることが好ましい。
【0011】
(5)また、上記(3)または(4)の塔状構造物において、前記筒状構造物の内部空間部には、少なくとも前記連結部の下方にステージが設けられることが好ましい。
【0012】
(6)また、上記(1)〜(5)のいずれか1つの塔状構造物において、前記筒状構造物は、前記地面から上方向に積層された複数の筒状部材で形成されており、前記筒状部材は、隣り合う前記筒状部材と前記上下方向において対向する端部に内側に突出するフランジが形成されており、前記上下方向において対向する前記フランジを連結するフランジ連結部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る塔状構造物は、隣り合う筒状構造物のうち、傾斜筒状部ではなく、鉛直筒状部を連結部により連結するので、傾斜筒状部を連結しなくても、剛性を確保することができるという効果を奏する。また、離間している隣り合う傾斜筒状部を連結する場合よりも、連結箇所を減少させることができるので、メンテナンス性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る塔状構造物の全体図である。
図2図2は、実施形態に係る塔状構造物の平面図である。
図3図3は、実施形態に係る塔状構造物の要部断面図である。
図4図4は、連結部の詳細図である。
図5図5は、実施形態に係る塔状構造物の要部断面図である。
図6図6は、フランジの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
図1は、実施形態に係る塔状構造物の全体図である。図2は、実施形態に係る塔状構造物の平面図である。図3は、実施形態に係る塔状構造物の要部断面図である。図4は、連結部の詳細図である。図5は、実施形態に係る塔状構造物の要部断面図である。図6は、フランジの詳細図である。なお、図3図1のA−A断面図であり、図4図3の一部拡大図であり、図5図1のB−B断面図であり、図6図5のC−C断面図である。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る塔状構造物1は、地面GLに対して設置され、支持対象物であるアンテナ100,200を支持するアンテナ塔である。塔状構造物1は、筒状構造物2A,2B,2Cと、支持構造物3A,3B,3Cと、閉塞部4と、連結部5とを備えている。ここで、本実施形態に係る塔状構造物1は、全高が約90m程度であり、高所に支持対象物を支持することができるものである。アンテナ塔としての塔状構造物1は、パラボラアンテナであるアンテナ100、八木型アンテナであるアンテナ200のみを支持対象物とするものではなく、他のアンテナ、例えばコーリニアアンテナ、アンテナに関する機器や、塔に関する機器、例えば避雷設備、航空障害燈なども支持対象物とするものである。
【0018】
筒状構造物2A〜2C(以下、単に「筒状構造物2」とも称する)は、支持構造物3A〜3C(以下、単に「支持構造物3」とも称する)を介して、アンテナ100,200を高所に取り付けるものである。本実施形態に係る塔状構造物1は、3つの筒状構造物2A〜2Cを備える。筒状構造物2は、図2に示すように、互いに離間して地面GLから立設されており、下方側端部が基礎構造物6に固定されている。ここで、基礎構造物6は、例えば鉄筋コンクリート製であり、本体部61と、固定部62とにより構成されている。本体部61は、塔状構造物1の土台となるものであり、地面GLに埋設されている。固定部62は、塔状構造物1の上下方向と直交するする水平方向を含む水平面における基準点(基準線(図1に示す一点鎖線))Oを中心に、周方向に等間隔(120度)に離間して、本体部61と一体に形成されており、各筒状構造物2A〜2Cの下方側端部がそれぞれ固定されている。筒状構造物2A〜2Cは、図3に示すように、上下方向における下方側端部から上方側端部まで連通する内部空間部SA〜SCがそれぞれ形成されている。ここで、内部空間部SA〜SCの下方側端部は基礎構造物6により閉塞されている。
【0019】
筒状構造物2は、図1に示すように、傾斜筒状部21と、鉛直筒状部22とを有している。筒状構造物2は、地面GLから上方に向かって傾斜筒状部21、鉛直筒状部22に区画される。筒状構造物2は、傾斜筒状部21から鉛直筒状部22へと変遷する部分に、くびれ部23が形成されている。つまり、くびれ部23は、傾斜筒状部21と鉛直筒状部22との間に形成されている。従って、各筒状構造物2A〜2Cは、上下方向と直交する方向から見た場合にくの字に折れ曲がっている。各筒状構造物2A〜2Cの傾斜筒状部21は、地面GLから上方に向かうに伴って、互いに接近する。本実施形態における各筒状構造物2A〜2Cの傾斜筒状部21は、図2に示すように、下方側端部、すなわち各筒状構造物2A〜2Cの下方側端部が周方向に等間隔(120度)に離間している。傾斜筒状部21は、下方側端部から上方側端部までの途中が上下方向から見た場合に基準点Oに向かって、互いに次第に接近する。傾斜筒状部21は、図3に示すように、上下方向から見た場合に、上方側端部が基準点Oを中心に連結部5を挟んで、最も互いに接近する。本実施形態における各筒状構造物2A〜2Cの鉛直筒状部22は、図1に示すように、傾斜筒状部21の上方側端部から上下方向と平行に延在、すなわち上下方向と平行に上方に突出して形成されている。傾斜筒状部21と鉛直筒状部22の上下方向における長さの比率は、2:1〜4:1程度であることが好ましい。
【0020】
ここで、各筒状構造物2A〜2Cは、上下方向から見た場合に、基準点Oからの角度が異なるが、同一構造である。本実施形態における各筒状構造物2A〜2Cは、地面GLから上方向に積層された複数の筒状部材24a〜24eで構成されている。本実施形態における傾斜筒状部21は、筒状部材24a,24b,24cおよび筒状部材24dの一部で構成されている。本実施形態における鉛直筒状部22は、筒状部材24dの一部および筒状部材24eで構成されている。くびれ部23は、筒状部材24dに形成されている。各筒状部材24a〜24eは、上下方向における両側端部に貫通する管状に形成され、筒状部材24dを除き、直線状に形成されている。従って、各筒状構造物2A〜2Cの内部空間部SA〜SCは、図3に示すように、筒状部材24a〜24eの内部空間部を上下方向に連通することで形成されている。本実施形態における各筒状部材24a〜24eは、耐候性を有する鋼管、例えば、耐候性鋼を管状に形成したものであり、無塗装であり、断面外周形状が円形である。なお、筒状部材24a〜24eの断面外周形状は、円形に限られず、楕円形、多角形であってもよい。
【0021】
各筒状構造物2A〜2Cは、図1および図2に示すように、地面GL側に、第1開口部25がそれぞれ形成されている。第1開口部25は、地面GLから作業員が各筒状構造物2A〜2Cの内部空間部SA〜SCに出入りができるようにするものである。本実施形態における第1開口部25は、筒状部材24aの下方側端部の近傍で、かつ長穴状に形成されている。また、各筒状構造物2A〜2Cは、支持構造物3に対応した第2開口部26がそれぞれ形成されている。つまり、本実施形態における第2開口部26は、1つの筒状構造物2A〜2Cにおいて各支持構造物3A〜3Cに対応してそれぞれ形成されている。第2開口部26は、各筒状構造物2A〜2Cの内部空間部SA〜SCから作業員が各支持構造物3A〜3Cに出入りできるようにするものである。従って、第1開口部25および第2開口部26は、内部空間部SA〜SCとそれぞれ連通しているので、作業員は、筒状構造物2A〜2Cのうちいずれか1つの内部空間部SA〜SCを介して、地面GLと支持構造物3との間を行き来することができる。これにより、作業員は、各筒状構造物2A〜2Cの外周に形成された昇降用ラダーなどを用いて、塔状構造物1の外部において地面GLと支持構造物3との間を行き来することがないので、移動において外部環境の影響を受けることを抑制することができる。なお、第1開口部25および第2開口部26は、開閉扉を設けてもよい。特に、第1開口部25は、ロック機能を有する開閉扉を設けることが好ましい。これにより、部外者の塔状構造物1への侵入を防止することができる。
【0022】
ここで、内部空間部SA〜SCには、図3および図5に示すように、作業員が使用する昇降用ラダー7がそれぞれ取り付けられている。昇降用ラダー7は、昇降手段であり、作業員が第1開口部25から第2開口部26まで昇降できるように、少なくとも第1開口部25から第2開口部26まで設けられている。昇降用ラダー7は、上下方向に沿って筒状部材24a〜24eごとにそれぞれの内部空間部に取り付けられている。昇降用ラダー7は、取付部71,72と、ラダー部73と、ケーブルサポート74とを有している。取付部71,72は、ラダー部73を各筒状部材24a〜24eにそれぞれ取り付けるものであり、一方の端部が各筒状部材24a〜24eに固定され、他方の端部がラダー部73の後述する2つ支持部の一方に固定されている。ラダー部73は、上下方向に延在し、かつ離間して対向する2つ支持部と、2つの支持部の間で、かつ上下方向に複数配置され、両端部が2つの支持部に固定されている複数の足かけ部と、を有している。ケーブルサポート74は、取付部72に固定され、上下方向から見た場合に、コの字状で、かつ上下方向に延在して形成されている。ケーブルサポート74は、支持構造物3A〜3Cに設置されているアンテナ100,200を含む機器に、電力を供給あるいは信号を伝達するためのケーブルを支持するものである。つまり、これらのケーブルは、内部空間部SA〜SCに配置されるので、外部環境の影響が抑制され、耐久性を向上することができる。
【0023】
各筒状部材24a〜24eのうち、鉛直筒状部22に対応する筒状部材24d,24eには、図4に示すように、隣り合う鉛直筒状部22と対向する部分に、外側から内側まで貫通する貫通孔27が形成されている。本実施形態における貫通孔27は、連結部5にそれぞれ対応するものであり、1つの連結部5に対して、上下方向および水平方向に複数箇所形成されている。
【0024】
各筒状部材24a〜24eは、上下方向における両側端部のうち、少なくとも筒状部材24a〜24eが上下方向において対向する側の端部に、図5および図6に示すように、フランジ28が形成されている。フランジ28は、筒状部材24a〜24eの内側に突出してリング状に形成されている。フランジ28には、上下方向に貫通する貫通孔29が形成されている。本実施形態における貫通孔29は、フランジ28の周方向において等間隔に複数形成されている。各筒状部材24a〜24eは、上下方向において隣り合う筒状部材24a〜24eに対して、フランジ連結部9により連結されている。フランジ連結部9は、上下方向において対向するフランジ28,28の貫通孔29,29を用いて、筒状部材24a〜24eどうしを固定するものである。フランジ連結部9は、ボルト91と、ナット92とを有している。ボルト91は、上下方向において隣り合う筒状部材24a〜24eうち、一方の筒状部材24a〜24eの貫通孔29、および、一方の筒状部材24a〜24eの貫通孔29と上下方向において対向する他方の筒状部材24a〜24eの貫通孔29に挿入される。ナット92は、他方の筒状部材24a〜24eの貫通孔29から露出するボルト91の先端部に螺合する。従って、フランジ連結部9は、ボルト91およびナット92の間に隣り合う筒状部材24a〜24eのフランジ28,28を締結するものである。これにより、筒状構造物2A〜2Cは、内部空間部SA〜SCからフランジ連結部9により筒状部材24a〜24eを連結することで、構成されている。つまり、各筒状部材24a〜24eに連結するフランジ連結部9が内部空間部SA〜SCに位置しているため、作業員は、内部空間部SA〜SCを上下方向に移動することで、筒状部材24a〜24eの各連結箇所を点検・保守することができる。従って、フランジ連結部9が筒状構造物2A〜2Cの外部に露出していないことで、作業員が筒状構造物2A〜2Cの外部からフランジ連結部9にアクセスする必要がない。これにより、点検・保守時において、フランジ連結部9に対して作業員がアクセスするために、筒状構造物2A〜2Cの外部に仮設足場を設置する必要がなく、メンテナンスコストの低減・メンテナンス工期の短縮を図ることができるので、メンテナンス性を向上することができる。
【0025】
ここで、内部空間部SA〜SCには、図3および図5に示すように、作業員が使用するステージ8がそれぞれ取り付けられている。ステージ8は、筒状部材24a〜24eごとにそれぞれの内部空間部に取り付けられている。本実施形態におけるステージ8は、貫通孔27、フランジ28、第2開口部26に対応して取り付けられている。ステージ8は、貫通孔27に対応する連結部5およびフランジ28の貫通孔29に対応するフランジ連結部9に対して、これらの下方に位置付けられ取り付けられており、作業員がこれらに容易にアクセスすることができる。ステージ8は、第2開口部26から作業員が容易に、出入りできるように、例えば第2開口部26の下方側端部と同じ、あるいは若干下方に位置付けられ取り付けられている。
【0026】
支持構造物3は、筒状構造物2に取り付けられ、図1および図2に示すように、アンテナ100,200を支持するものである。本実施形態における塔状構造物1は、3つの支持構造物3A〜3Cを備える。各支持構造物3A〜3Cは、上下方向に離間して鉛直筒状部22にそれぞれ取り付けられている。支持構造物3は、上記筒状部材24a〜24eと同様な材料で構成されており、内部筒状部材31と、上方側リング部材32と、下方側リング部材33と、上方側梁34と、図示しない下方側梁と、内部空間部35と、上下梁36と、ステージ37と、出入り口38とを有している。内部筒状部材31は、支持構造物3の内周壁を構成する筒形状であり、上下方向に開口する内部空間部35を形成するものである。ここで、内部空間部35には、各筒状構造物2A〜2Cの鉛直筒状部22が挿入される。内部筒状部材31は、各筒状構造物2A〜2Cに、例えば、溶接やボルト・ナットなどの固定手段により固定されている。内部筒状部材31は、水平方向において各第2開口部26と対向する位置に出入り口38がそれぞれ形成されている。つまり、作業員は、出入り口38および第2開口部26を介して、各内部空間部SA〜SCから支持構造物3に出入りすることができる。上方側リング部材32および下方側リング部材33は、上下方向において離間し、かつ、内部に内部筒状部材31が配置されている。上方側リング部材32および下方側リング部材33は、周方向に複数配置された上方側梁34および下方側梁により、内部筒状部材31に対して連結されている。また、上方側リング部材32および下方側リング部材33は、周方向に複数配置された上下梁36により、互いに連結されている。ステージ37は、作業員が使用するものであり、下側梁に支持され、内部筒状部材31および下方側リング部材33の間に配置されている。支持対象物であるアンテナ100,200は、本実施形態において各支持構造物3A〜3Cの上下梁36にそれぞれボルト・ナットなどのアンテナ100,200を着脱自在とする固定手段により固定されている。ここで、上下梁36は、周方向に複数設けられているので、アンテナ100,200を固定する上下梁36を選択することで、アンテナ100,200の水平面における角度を任意の角度とすることができる。なお、上下方向において隣り合う支持構造物3A〜3Cの間を作業員が行き来するために、上下方向において隣り合う支持構造物3A〜3Cの間にラダーを取り付けてもよい。
【0027】
閉塞部4は、筒状構造物2の先端部を閉塞するものである。閉塞部4は、図2に示すように、各筒状構造物2A〜2Cの鉛直筒状部22の上方側端部を閉塞するものである。閉塞部4は、各支持構造物3A〜3Cのうち、最上方側に位置する支持構造物3Aの内部筒状部材31の上方側端部の開口を閉塞する。各鉛直筒状部22の上方側端部は、上下方向において支持構造物3Aの内部空間部35に位置している。従って、閉塞部4は、支持構造物3Aの内部筒状部材31を上方側から閉塞することで、各鉛直筒状部22の上方側端部がそれぞれ閉塞されることとなる。従って、各筒状構造物2A〜2Cは、閉塞部4によりそれぞれの先端部が閉塞されているため、雨、風や雪などが上方側端部から内部空間部SA〜SCに侵入することを防止することができる。これにより、作業員が内部空間部SA〜SCにおいて作業を行う際に、外部環境の変化によって影響を受けることを抑制することができ、メンテナンス性が向上する。また、雨、風や雪などが上方側端部から内部空間部SA〜SCに侵入することを防止することができるので、連結部5やフランジ連結部9など、連結手段の耐久性の低下を抑制することができる。
【0028】
連結部5は、各筒状構造物2A〜2Cを互いに連結するものである。連結部5は、図3に示すように、隣り合う鉛直筒状部22を連結するものである。本実施形態における連結部5は、上下方向から見た場合に、周方向に隣り合う鉛直筒状部22の対向する箇所、すなわち周方向に複数箇所(3箇所)に設けられている。また、連結部5は、図1に示すように、鉛直筒状部22に対して上下方向において複数箇所(5箇所)に設けられている。また、連結部5は、図4に示すように、スペーサ51〜54と、ボルト55と、ナット56とを有している。スペーサ51〜54は、ボルト55とナット56との間に介在するものであり、連結部5の締結力を隣り合う筒状構造物2A〜2Cのそれぞれに確実に作用させるものである。本実施形態におけるスペーサ51,54は、同一形状であり、例えば、隣り合う内部空間部SB,SCのそれぞれに配置されるものであり、筒状部材24dの内周面に沿った曲面と、曲面と水平方向において対向し、かつボルト55あるいはナット56が接触する平面とがそれぞれ形成されている。また、スペーサ51,54は、平面からこの平面と直交する方向に曲面まで貫通し、筒状部材24dの各貫通孔27に対応する貫通孔51a,54aが形成されている。本実施形態におけるスペーサ52,53は、同一形状であり、例えば、隣り合う内部空間部SB,SCの間にそれぞれに配置されるものであり、筒状部材24dの外周面に沿った曲面と、曲面と水平方向において対向する平面とがそれぞれ形成されている。また、スペーサ52,53は、平面からこの平面と直交する方向に曲面まで貫通し、筒状部材24dの各貫通孔27に対応する貫通孔52a,53aが形成されている。ボルト55は、例えば、隣り合う鉛直筒状部22のうち、一方の内部である内部空間部SCから、スペーサ54の貫通孔54a、筒状構造物2Cの貫通孔27、スペーサ53の貫通孔53a、スペーサ52の貫通孔52a、筒状構造物2Bの貫通孔27、およびスペーサ52の貫通孔52aに挿入される。ナット56は、他方の内部である内部空間部SBから露出するボルト55の先端部に螺合する。従って、連結部5は、ボルト55およびナット56の間に隣り合う筒状構造物2A〜2Cの隣り合う鉛直筒状部22,22を締結するものである。これにより、筒状構造物2A〜2Cは、内部空間部SA〜SCから連結部5により鉛直筒状部22,22どうしを連結することで、構成されている。つまり、隣り合う筒状構造物2A〜2Cを連結する連結部5が内部空間部SA〜SCに位置しているため、作業員は、内部空間部SA〜SCを上下方向に移動することで、鉛直筒状部22の各連結箇所を点検・保守することができる。従って、連結部5が筒状構造物2A〜2Cの外部に露出していないことで、作業員が筒状構造物2A〜2Cの外部から連結部5にアクセスする必要がない。これにより、点検・保守時において、連結部5に対して作業員がアクセスするために、筒状構造物2A〜2Cの外部に仮設足場を設置する必要がなく、メンテナンスコストの低減・メンテナンス工期の短縮を図ることができるので、メンテナンス性を向上することができる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る塔状構造物1は、筒状構造物2A〜2Cのうち、隣り合う鉛直筒状部22が連結部5により連結されており、離間している隣り合う傾斜筒状部21を連結していない。つまり、筒状構造物2A〜2Cは、くびれ部23よりも上方側の筒状構造物2A〜2Cが1つに束ねられた(集束された)箇所で、互いに連結することとなる。従って、隣り合う筒状傾斜部21を連結する場合よりも、隣り合う鉛直筒状部22を連結部5により連結することで、基準点Oの近くで隣り合う筒状構造物2A〜2Cを連結することができる。従って、隣り合う傾斜筒状部21どうしを梁などで連結することで、補強しなくても、剛性を確保することができる。つまり、風に対する塔状構造物1の振れが十分に抑制され、支持対象物であるアンテナ100,200を支持する場合に高い精度を実現することができる。また、隣り合う傾斜筒状部21を連結する場合は、互いに傾斜筒状部21どうしが離間しているため、隣り合う傾斜筒状部21の間に梁などを介在させ、梁の両端部と隣り合う傾斜筒状部21を連結することとなるので、連結箇所が多くなる。一方、鉛直筒状部22を連結部5により連結する場合は、梁などが不要であり、連結箇所を減少させることができるので、メンテナンス性を確保することができる。これらにより、剛性およびメンテナンス性の確保を図ることができる。
【0030】
また、筒状構造物2A〜2Cの先端部を閉塞部4により閉塞しているので、筒状構造物2A〜2Cの内部空間部SA〜SCに雨、風や雪などが侵入することを防止できる。従って、筒状構造物2A〜2Cにおける内部に、例えば作業員が点検・保守を行う箇所があっても、耐久性の低下を抑制することができる。
【0031】
なお、本実施形態における筒状構造物2は、3つの筒状構造物2A〜2Cとしたが、これに限定されるものではなく、3つ以上、例えば、4つあるいは5つであってもよい。筒状構造物2が4つである場合は上下方向から見て正方形、5つである場合は上下方向から見て正五角形となるように互いに離間して地面GLから立設される。また、本実施形態における支持構造物3は、3つの支持構造物3A〜3Cとしたが、1つ以上であればよく、2つ、4つ以上であってもよい。
【0032】
また、本実施形態における塔状構造物1は、アンテナ塔として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、支持構造物3により、発電所から中継設備まで高圧の電力を送電する高圧電線を支持する高圧電線塔であってもよい。また、支持構造物3により、液体、気体などを圧送する配管を支持する配管塔であってもよい。
【0033】
また、本実施形態における連結部5およびフランジ連結部9は、ボルト55,91およびナット56,92により構成したが、これに限定されるものではない。連結部5およびフランジ連結部9は、溶接部であってもよい。この場合、筒状構造物2A〜2Cの内部空間部SA〜SCにおいて溶接加工が行われることが好ましいが、外部で溶接加工を行ってもよい。
【0034】
また、本実施形態における昇降手段は、昇降用ラダー7としたが、これに限定されるものではなく、内部空間部SA〜SCに階段、あるいはエレベータなどの昇降機が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 塔状構造物
2,2A,2B,2C 筒状構造物
21 傾斜筒状部
22 鉛直筒状部
23 くびれ部
24a〜24e 筒状部材
25 第1開口部
26 第2開口部
27 貫通孔
28 フランジ
29 貫通孔
3,3A,3B,3C 支持構造物
31 内部筒状部材
4 閉塞部
5 連結部
55 ボルト
56 ナット
6 基礎構造物
7 昇降用ラダー
8 ステージ
9 フランジ連結部
91 ボルト
92 ナット
O 基準点
SA,SB,SC 内部空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6