(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、p型半導体が再成長する縦方向と横方向との成長速度の関係から、溝部に再成長したp型半導体の内部に空洞が形成される。この空洞は、半導体装置の信頼性を低下させる要因となる。また、特許文献1の技術では、溝部の外側に広がるn型半導体層の表面にもp型半導体が再成長するため、溝部の外側にp型半導体が不要である場合には、その不要な部分を除去する必要があった。
【0005】
そのため、III族窒化物系の半導体装置において、n型半導体層の溝部に対して選択的にp型半導体を充填できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の第1の形態は、
半導体装置の製造方法であって、
III族窒化物から主に成るとともに結晶面のc面が表面に現れるn型半導体層を、エピタキシャル成長によって形成する工程と、
前記n型半導体層を前記表面からエッチングすることによって、結晶面のa面が側面に現れる溝部を、形成する工程と、
2000以上3000以下のV/III比でIII族原料とV族原料とを含有する原料ガスを用いたエピタキシャル成長によって、III族窒化物から主に成るp型半導体を前記溝部に充填する工程であって、
前記p型半導体に含まれるマグネシウム(Mg)の濃度が1×1019cm-3以上8×1019cm-3以下となるように、前記p型半導体を前記溝部に充填し、
前記p型半導体をエピタキシャル成長させる圧力は、10kPa以上100kPa以下である、工程と、を備える、半導体装置の製造方法である。
本発明の第2の形態は、
半導体装置であって、
III族窒化物から主に成り、結晶面のc面が表面に現れるn型半導体層と、
前記n型半導体層における前記表面から内部へと落ち込み、結晶面のa面が側面に現れる切欠部と、
III族窒化物から主に成り、前記切欠部に充填されたp型半導体と、
前記切欠部に充填された前記p型半導体における表面から前記n型半導体層の前記内部へと落ち込んだリセスと、
前記n型半導体層の前記表面から前記切欠部に充填された前記p型半導体の表面にわたって形成されたカソード電極と、
前記リセスにおいて露出した前記n型半導体層から前記切欠部に充填された前記p型半導体を介して前記カソード電極の上面にわたって形成された絶縁膜と、を備え、
前記p型半導体に含まれるマグネシウム(Mg)の濃度は、1×1019cm-3以上8×1019cm-3以下である、半導体装置である。
また、本発明は、以下の形態としても実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態は、半導体装置の製造方法を提供する。この製造方法は、III族窒化物から主に成るとともに結晶面のc面が表面に現れるn型半導体層を、エピタキシャル成長によって形成する工程と;前記n型半導体層を前記表面からエッチングすることによって、結晶面のa面またはm面が側面に現れる溝部を、形成する工程と;2000以上3000以下のV/III比でIII族原料とV族原料とを含有する原料ガスを用いたエピタキシャル成長によって、III族窒化物から主に成るp型半導体を前記溝部に充填する工程とを備える。この形態によれば、溝部の側面から成長するp型半導体の成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体の内部に空洞が形成されることを防止できるとともに、溝部の外側に広がるn型半導体層の表面にp型半導体が再成長することを防止できる。その結果、n型半導体層の溝部に対して選択的にp型半導体を充填できる。
【0008】
(2)上述した製造方法において、前記側面に結晶面のa面が現れてもよい。この形態によれば、側面に結晶面のm面が現れる場合と比較して、溝部の側面から成長するp型半導体の成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体の内部に空洞が形成されることをいっそう防止できるとともに、溝部の外側に広がるn型半導体層の表面にp型半導体が再成長することをいっそう防止できる。
【0009】
(3)上述した製造方法において、前記V/III比は、2500以上3000以下であってもよい。この形態によれば、V/III比が2500未満である場合と比較して、溝部の側面から成長するp型半導体の成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体の内部に空洞が形成されることをいっそう防止できるとともに、溝部の外側に広がるn型半導体層の表面にp型半導体が再成長することをいっそう防止できる。
【0010】
(4)上述した製造方法において、前記p型半導体に含まれるアクセプタ元素の濃度が1×10
19cm
-3以上8×10
19cm
-3以下となるように、前記p型半導体を前記溝部に充填してもよい。この形態によれば、p型半導体を効果的に形成できる。
【0011】
(5)上述した製造方法において、前記p型半導体をエピタキシャル成長させる温度は、950℃以上1200℃以下であってもよい。この形態によれば、p型半導体を効果的に形成できる。
【0012】
(6)上述した製造方法において、前記p型半導体をエピタキシャル成長させる温度は、1000℃以上1100℃以下であってもよい。この形態によれば、p型半導体をいっそう効果的に形成できる。
【0013】
(7)上述した製造方法において、前記p型半導体をエピタキシャル成長させる圧力は、1kPa以上100kPa以下であってもよい。この形態によれば、p型半導体を効果的に形成できる。
【0014】
(8)上述した製造方法において、前記p型半導体をエピタキシャル成長させる圧力は、10kPa以上100kPa以下であってもよい。この形態によれば、p型半導体をいっそう効果的に形成できる。
【0015】
(9)上述した製造方法において、前記n型半導体層および前記p型半導体は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記n型半導体層のドーパント元素は、ケイ素(Si)であり、前記p型半導体のドーパント元素は、マグネシウム(Mg)であってもよい。この形態によれば、窒化ガリウム(GaN)系の半導体装置において、n型半導体層の溝部に対して選択的にp型半導体を充填できる。
【0016】
(10)本発明の一形態は、半導体装置を提供する。この半導体装置は、III族窒化物から主に成り、結晶面のc面が表面に現れるn型半導体層と;前記n型半導体層における前記表面から内部へと落ち込み、結晶面のa面またはm面が側面に現れる切欠部と;III族窒化物から主に成り、前記切欠部に充填されたp型半導体とを備える。この形態によれば、切欠部に充填されたp型半導体の結晶品質を向上させることができる。その結果、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0017】
(11)上述した半導体装置において、前記側面に結晶面のa面が現れてもよい。この形態によれば、側面に結晶面のm面が現れる場合と比較して、切欠部に充填されたp型半導体の結晶品質を向上させることができる。その結果、半導体装置の信頼性をいっそう向上させることができる。
【0018】
(12)上述した半導体装置において、前記p型半導体に含まれるアクセプタ元素の濃度は、1×10
19cm
-3以上8×10
19cm
-3以下であってもよい。この形態によれば、p型半導体におけるp型の特性を十分に確保できる。
【0019】
(13)上述した半導体装置において、前記n型半導体層および前記p型半導体は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記n型半導体層に含まれるドナー元素は、ケイ素(Si)であり、前記p型半導体に含まれるアクセプタ元素は、マグネシウム(Mg)であってもよい。窒化ガリウム(GaN)系の半導体装置において信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明における半導体装置の製造方法によれば、溝部の側面から成長するp型半導体の成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体の内部に空洞が形成されることを防止できるとともに、溝部の外側に広がるn型半導体層の表面にp型半導体が再成長することを防止できる。その結果、n型半導体層の溝部に対して選択的にp型半導体を充填できる。
【0021】
本発明の半導体装置によれば、切欠部に充填されたp型半導体の結晶品質を向上させることができる。その結果、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.第1実施形態
図1は、第1実施形態における半導体装置100を模式的に示す断面図である。
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸のうち、X軸は、
図1の紙面左から紙面右に向かう軸である。+X軸方向は、紙面右に向かう方向であり、−X軸方向は、紙面左に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Y軸は、
図1の紙面手前から紙面奥に向かう軸である。+Y軸方向は、紙面奥に向かう方向であり、−Y軸方向は、紙面手前に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Z軸は、
図1の紙面下から紙面上に向かう軸である。+Z軸方向は、紙面上に向かう方向であり、−Z軸方向は、紙面下に向かう方向である。
図1のXYZ軸は、他の図のXYZ軸に対応する。
【0024】
半導体装置100は、III族窒化物半導体を用いて形成されたIII族窒化物系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置100は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置100は、縦型ショットキーバリアダイオードである。本実施形態では、半導体装置100は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。
【0025】
半導体装置100は、基板110と、n型半導体層120と、p型半導体130と、カソード電極142と、アノード電極148と、絶縁膜160とを備える。半導体装置100は、n型半導体層120に形成された構造として、切欠部125を有する。半導体装置100は、n型半導体層120およびp型半導体130に形成された構造として、リセス150を有する。
【0026】
半導体装置100の基板110は、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成す半導体である。本実施形態では、基板110は、III族窒化物の1つである窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本明細書の説明において、「窒化ガリウム(GaN)から主に成る」とは、モル分率において窒化ガリウム(GaN)を90%以上含有することを意味する。本実施形態では、基板110は、n型の特性を有するn型半導体であり、本実施形態では、ケイ素(Si)をドナー元素として含有するn型半導体である。本実施形態では、基板110に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値は、約1×10
18cm
-3である。基板110の厚さ(Z軸方向の長さ)は、100μm以上500μm以下が好ましく、本実施形態では、約300μmである。本実施形態では、半導体装置100における+Z軸方向を向いた表面には、基板110の結晶面としてc面が現れる。
【0027】
半導体装置100のn型半導体層120は、結晶成長によって基板110の上に形成された半導体層である。本実施形態では、n型半導体層120は、基板110の+Z軸方向側に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる。n型半導体層120は、III族窒化物から主に成り、本実施形態では、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、n型半導体層120は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有する。本実施形態では、n型半導体層120に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値は、約1×10
16cm
-3である。n型半導体層120にn型の特性を十分に確保する観点から、n型半導体層120に含まれるアクセプタ元素(例えば、マグネシウム(Mg))の濃度の平均値は、1×10
15cm
-3未満であることが好ましい。n型半導体層120の厚さ(Z軸方向の長さ)は、5μm以上30μm以下が好ましく、本実施形態では、約10μmである。
【0028】
n型半導体層120は、表面121を有する。本実施形態では、表面121は、+Z軸方向を向いた面である。表面121には、n型半導体層120の結晶面としてc面が現れる。
【0029】
n型半導体層120の切欠部125は、n型半導体層120の表面121に対するエッチングによって形成された構造である。切欠部125は、表面121に対して段差を形成する。本実施形態では、表面121の外側に切欠部125が形成され、切欠部125の外側にリセス150が形成されている。切欠部125の深さ(Z軸方向の長さ)は、0.1μm以上5.0μm以下が好ましく、本実施形態では、1.0μmである。切欠部125の幅(Z軸に直交する方向の長さ)は、0.1μm以上100μm以下が好ましく、本実施形態では、5μmである。
【0030】
n型半導体層120は、切欠部125を構成する面として、底面125bと、側面125sとを有する。底面125bは、+Z軸方向を向いた面である。底面125bには、n型半導体層120の結晶面としてc面が現れる。側面125sは、Z軸に直交する方向を向いた面である。本実施形態では、側面125sには、n型半導体層120の結晶面としてa面が現れる。他の実施形態では、側面125sには、n型半導体層120の結晶面としてm面が現れてもよい。
【0031】
半導体装置100のp型半導体130は、切欠部125に結晶を再成長させることによって、切欠部125に充填された半導体である。p型半導体130は、カソード電極142の端部に位置し、半導体装置100に発生するリーク電流を抑制する。p型半導体130は、III族窒化物から主に成り、本実施形態では、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、p型半導体130は、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含有する。p型半導体130に含まれるマグネシウム(Mg)濃度の平均値は、1×10
19cm
-3以上8×10
19cm
-3以下であることが好ましく、本実施形態では、約5×10
19cm
-3である。p型半導体130にp型の特性を十分に確保する観点から、p型半導体130に含まれるドナー元素(例えば、ケイ素(Si))の濃度の平均値は、1×10
15cm
-3未満であることが好ましい。
【0032】
半導体装置100のリセス150は、p型半導体130の+Z軸方向側からn型半導体層120にわたって窪んだ凹部である。本実施形態では、リセス150は、n型半導体層120およびp型半導体130に対するエッチングによって形成された構造である。
【0033】
半導体装置100のカソード電極142は、n型半導体層120にショットキー接合されたショットキー電極である。本実施形態では、カソード電極142は、n型半導体層120の表面121からp型半導体130の上にわたって形成されている。本実施形態では、カソード電極142は、n型半導体層120側から順に、パラジウム(Pd)から主に成る層、ニッケル(Ni)から主に成る層、白金(Pt)から主に成る層、金(Au)から主に成る層を積層した電極である。
【0034】
半導体装置100のアノード電極148は、基板110の−Z軸方向側にオーミック接触するオーミック電極である。本実施形態では、アノード電極148は、n型半導体層120側から順に、チタン(Ti)から主に成る層、アルミニウム(Al)から主に成る層を積層した後に、熱処理を加えた電極である。
【0035】
半導体装置100の絶縁膜160は、電気絶縁性を有する膜である。絶縁膜160は、リセス150からカソード電極142の上にわたって形成されている。本実施形態では、絶縁膜160は、二酸化ケイ素(SiO
2)から主に成る。
【0036】
図2は、半導体装置100の製造方法を示す工程図である。
図3から
図6は、半導体装置100を製造する様子を模式的に示す説明図である。
【0037】
まず、製造者は、基板110の上にn型半導体層120をエピタキシャル成長によって形成する(工程P110、
図3)。これによって、製造者は、製造途中にある半導体装置として、基板110の上にn型半導体層120が形成された半導体装置100aを得る。
【0038】
本実施形態では、製造者は、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いたエピタキシャル成長によって、基板110の上にn型半導体層120を形成する。本実施形態では、製造者は、MOCVD装置の反応炉に基板110を配置した後、キャリアガスである水素(H
2)と共に、V族原料であるアンモニア(NH
3)を反応炉に導入する。その後、製造者は、反応炉を1050℃に加熱する。その後、製造者は、キャリアガスである水素(H
2)と共に、III族原料であるトリメチルガリウム(TMGa)と、n型ドーパントとしてシラン(SiH
4)とを反応炉に導入することによって、基板110の上にn型半導体層120をエピタキシャル成長させる。n型半導体層120を形成する原料ガスのV/III比は、900以上3000以下であることが好ましく、本実施形態では2500である。V/III比は、III族原料に対するV族原料のモル比である。
【0039】
本実施形態では、製造者は、基板110の表面のうち、基板110の結晶面としてc面が現れる+Z軸方向側の表面に対して、n型半導体層120をエピタキシャル成長させる。これによって、n型半導体層120の表面121は、n型半導体層120の結晶面としてc面が現れる表面となる。
【0040】
n型半導体層120を形成した後(工程P110)、製造者は、n型半導体層120の表面121をエッチングすることによって、切欠部125の元となるトレンチ125pを形成する(工程P120)。これによって、製造者は、製造途中にある半導体装置として、n型半導体層120にトレンチ125pが形成された半導体装置100bを得る。
【0041】
本実施形態では、製造者は、ドライエッチングによってトレンチ125pを形成する。トレンチ125pは、n型半導体層120の表面121から−Z軸方向に窪んだ溝部である。トレンチ125pは、相互に対向する2つの側面125sと、2つの側面125sを繋ぐ底面125bとによって構成される。本実施形態では、側面125sには、n型半導体層120の結晶面としてa面が現れる。他の実施形態では、側面125sには、n型半導体層120の結晶面としてm面が現れてもよい。底面125bには、n型半導体層120の結晶面としてc面が現れる。
【0042】
トレンチ125pを形成した後(工程P120)、製造者は、洗浄処理を行う(工程P130)。洗浄処理(P130)において、製造者は、半導体装置100bを反応炉から取り出した後、半導体装置100bを洗浄液に浸漬することによって、半導体装置100bの表面に付着したドナー性不純物(例えば、ケイ素(Si)、酸素(O)など)を除去する。本実施形態では、洗浄処理(P130)において、製造者は、半導体装置100bを取り出した反応炉についても洗浄することによって、反応炉内に付着したドナー性不純物を除去する。
【0043】
洗浄処理(工程P130)を終えた後、製造者は、p型半導体130の元となるp型半導体130pをエピタキシャル成長によってトレンチ125pに充填する(工程P140)。これによって、製造者は、製造途中にある半導体装置として、p型半導体130pがトレンチ125pに充填された半導体装置100cを得る。
【0044】
本実施形態では、製造者は、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いたエピタキシャル成長によって、p型半導体130pをトレンチ125pに充填する。本実施形態では、製造者は、MOCVD装置の反応炉に半導体装置100bを配置した後、キャリアガスである水素(H
2)と共に、V族原料であるアンモニア(NH
3)を反応炉に導入する。その後、製造者は、p型半導体130pをエピタキシャル成長させる温度に反応炉を加熱する。その後、製造者は、キャリアガスである水素(H
2)と共に、III族原料であるトリメチルガリウム(TMGa)と、p型ドーパントとしてシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp
2Mg)を反応炉に導入することによって、トレンチ125pの内側にp型半導体130pをエピタキシャル成長させる。p型半導体130pの内部に空洞が形成されることを防止するには、側面125sから成長するp型半導体130pの成長速度を十分に速くするとともに、表面121および底面125bから成長するp型半導体130pの成長速度を十分に遅くする必要がある。
【0045】
p型半導体130pの内部に空洞が形成されることを防止する観点から、p型半導体130pを形成する原料ガスのV/III比は、2000以上3000以下であることが好ましく、2500以上3000以下であることが好ましく、本実施形態では2500である。n型半導体層120の結晶面に対するp型半導体130pの成長速度に関し、V/III比が2000以上である場合、a面における成長速度は、m面における成長速度より速く、m面における成長速度は、c面における成長速度より速い。V/III比が2000より高くなるに従って、a面およびm面における成長速度がc面に対して速くなる。V/III比が3000超過となる場合、p型半導体130pの結晶品質が低下する。
【0046】
製造者は、p型半導体130pに含まれるアクセプタ元素の濃度が1×10
19cm
−3以上8×10
19cm
−3以下となるように、Cp
2Mgの流量を制御する。本実施形態では、Cp
2Mgの流量は、300sccmである。
【0047】
p型半導体130pの内部に空洞が形成されることを防止する観点から、p型半導体130pに含まれるアクセプタ元素の濃度が1×10
19cm
-3以上となるように、p型半導体130pをエピタキシャル成長させることが好ましい。これによって、a面およびm面から成長するp型半導体130pの成長速度を向上させることができる。その原因は、p型半導体130pに含まれるアクセプタ元素の濃度が1×10
19cm
-3以上となる場合、a面およびm面において、マグネシウム(Mg)が触媒となって、ガリウム原子(Ga)および窒素原子(N)のマイグレーションが促進されるためであると考えられる。p型半導体130pに含まれるアクセプタ元素の濃度が1×10
19cm
-3未満となる場合、ガリウム原子(Ga)および窒素原子(N)のマイグレーションを促進させる触媒となるマグネシウム(Mg)が不足するため、側面125sから成長するp型半導体130pの成長速度を十分に速くすることができない。
【0048】
p型半導体130pのアクセプタ濃度を効果的に確保する観点から、p型半導体130pに含まれるアクセプタ元素の濃度が8×10
19cm
-3以下となるように、p型半導体130pをエピタキシャル成長させることが好ましい。p型半導体130pに含まれるアクセプタ元素の濃度が8×10
19cm
-3超過となる場合、p型半導体130pにおけるドナー性欠陥が増加するため、p型半導体130pのアクセプタ濃度が低下する。
【0049】
p型半導体130pをエピタキシャル成長させる温度は、950℃以上1200℃以下が好ましく、1000℃以上1100℃以下がいっそう好ましく、本実施形態では、1050℃である。p型半導体130pの成長温度が950℃未満である場合、結晶化に必要なエネルギが十分にガリウム原子(Ga)および窒素原子(N)に供給されないため、結晶の異常成長によってp型半導体130pに空洞が発生する場合がある。p型半導体130pの成長温度が1100℃超過である場合、過剰な熱エネルギによってn型半導体層120からガリウム原子(Ga)および窒素原子(N)が抜け出すことによってn型半導体層120の結晶構造が崩壊するため、p型半導体130pを成長させることができなくなる。
【0050】
p型半導体130pをエピタキシャル成長させる圧力は、1kPa以上100kPa以下が好ましく、10kPa以上100kPa以下がいっそう好ましく、本実施形態では、100kPaである。p型半導体130pの成長圧力が1kPa未満である場合、p型半導体130pに炭素原子(C)が過剰に取り込まれることによって、p型半導体130pのp型特性が劣化する。
【0051】
p型半導体130pをトレンチ125pに充填した後(工程P140)、製造者は、リセス150を形成する(工程P150)。製造者は、製造途中にある半導体装置として、リセス150が形成された半導体装置100dを得る。本実施形態では、製造者は、ドライエッチングによってリセス150を形成する。
【0052】
リセス150を形成した後(工程P150)、製造者は、各電極を形成する(工程P160)。本実施形態では、製造者は、カソード電極142を形成した後、アノード電極148を形成する。他の実施形態では、アノード電極148を形成した後、カソード電極142を形成してもよい。本実施形態では、製造者は、蒸着によってカソード電極142およびアノード電極148を形成する。他の実施形態では、製造者は、スパッタリングによってカソード電極142およびアノード電極148を形成してもよい。
【0053】
各電極を形成した後(工程P160)、製造者は、絶縁膜160を形成する(工程P170)。本実施形態では、製造者は、二酸化ケイ素(SiO
2)を用いて絶縁膜160を形成する。本実施形態では、製造者は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって絶縁膜160を形成する。他の実施形態では、製造者は、スパッタリング、プラズマCVDなどによって絶縁膜160を形成してもよい。
【0054】
これらの工程を経て、半導体装置100が完成する。半導体装置100のp型半導体130には、空洞が存在しないことが好ましい。半導体装置100におけるn型半導体層120の表面121には、p型半導体が存在しないことが好ましい。
【0055】
以上説明した第1実施形態によれば、トレンチ125pの側面125sから成長するp型半導体130pの成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体130pの内部に空洞が形成されることを防止できるとともに、トレンチ125pの外側に広がるn型半導体層120の表面121にp型半導体130pが再成長することを防止できる。その結果、n型半導体層120のトレンチ125pに対して選択的にp型半導体130pを充填できる。
【0056】
また、側面125sに結晶面のa面が現れるため、側面125sに結晶面のm面が現れる場合と比較して、トレンチ125pの側面125sから成長するp型半導体130pの成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体130pの内部に空洞が形成されることをいっそう防止できるとともに、トレンチ125pの外側に広がるn型半導体層120の表面121にp型半導体130pが再成長することをいっそう防止できる。
【0057】
また、p型半導体130pをエピタキシャル成長させるV/III比は、2500以上3000以下であるため、V/III比が2500未満である場合と比較して、トレンチ125pの側面125sから成長するp型半導体130pの成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体130pの内部に空洞が形成されることをいっそう防止できるとともに、トレンチ125pの外側に広がるn型半導体層120の表面121にp型半導体130pが再成長することをいっそう防止できる。
【0058】
また、p型半導体130pに含まれるアクセプタ元素の濃度が1×10
19cm
-3以上8×10
19cm
-3以下となるように、p型半導体130pをトレンチ125pに充填するため、p型半導体130pを効果的に形成できる。
【0059】
また、p型半導体130pをエピタキシャル成長させる温度は、950℃以上1200℃以下であるため、p型半導体130pを効果的に形成できる。
【0060】
また、p型半導体130pをエピタキシャル成長させる圧力は、1kPa以上100kPa以下であるため、p型半導体130pを効果的に形成できる。
【0061】
また、半導体装置100において、切欠部125に充填されたp型半導体130の結晶品質を向上させることができる。その結果、半導体装置100の信頼性を向上させることができる。
【0062】
また、半導体装置100において、側面125sに結晶面のa面が現れるため、側面125sに結晶面のm面が現れる場合と比較して、切欠部125に充填されたp型半導体130の結晶品質を向上させることができる。その結果、半導体装置100の信頼性をいっそう向上させることができる。
【0063】
また、p型半導体130に含まれるアクセプタ元素の濃度は、1×10
19cm
-3以上8×10
19cm
-3以下であるため、p型半導体130におけるp型の特性を十分に確保できる。
【0064】
B.第2実施形態
図7は、第2実施形態における半導体装置200を模式的に示す断面図である。
図7には、
図1と同様に、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
【0065】
半導体装置200は、III族窒化物半導体を用いて形成されたIII族窒化物系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置200は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置200は、縦型ショットキーバリアダイオードである。本実施形態では、半導体装置200は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。
【0066】
半導体装置200は、基板210と、n型半導体層220と、p型半導体230と、カソード電極242と、アノード電極248と、絶縁膜260とを備える。半導体装置200は、n型半導体層220に形成された構造として、切欠部225を有する。
【0067】
半導体装置200の基板210は、第1実施形態の基板110と同様である。
【0068】
半導体装置200のn型半導体層220は、表面121に代えて表面221を有する点、切欠部125に代えて切欠部225が形成されている点、並びに、リセス150が形成されていない点を除き、第1実施形態のn型半導体層120と同様である。
【0069】
n型半導体層220の表面221は、+Z軸方向を向いた面である。表面221には、n型半導体層220の結晶面としてc面が現れる。
【0070】
n型半導体層220の切欠部225は、n型半導体層220の表面221に対するエッチングによって形成された構造である。切欠部225は、表面221から−Z軸方向に窪んだトレンチ(溝部)である。本実施形態では、切欠部225は、二重に形成され、内側の切欠部225は、カソード電極242に覆われ、外側の切欠部225は、カソード電極242の端部に位置する。切欠部225の深さおよび幅は、第1実施形態の切欠部125と同様である。
【0071】
n型半導体層220は、切欠部225を構成する面として、底面225bと、側面225sとを有する。底面225bは、第1実施形態の底面125bと同様である。側面225sは、第1実施形態の側面125sと同様である。
【0072】
半導体装置200のp型半導体230は、切欠部225に結晶を再成長させることによって、切欠部225に充填された半導体である。p型半導体230は、第1実施形態のp型半導体130と同様に、半導体装置200に発生するリーク電流を抑制する。本実施形態では、p型半導体230は、内側の切欠部225と外側の切欠部225との両方に充填されている。p型半導体230の組成は、第1実施形態のp型半導体130と同様である。
【0073】
半導体装置200のカソード電極242は、n型半導体層220にショットキー接合されたショットキー電極である。本実施形態では、カソード電極242は、一方の外側に位置するp型半導体230の上から、n型半導体層220の表面221を通じて、他方の外側に位置するp型半導体230の上にわたって形成されている。カソード電極242の組成は、第1実施形態のカソード電極142と同様である。
【0074】
半導体装置200のアノード電極248は、基板210の−Z軸方向側にオーミック接触するオーミック電極である。アノード電極248の組成は、第1実施形態のアノード電極148と同様である。
【0075】
半導体装置200の絶縁膜260は、電気絶縁性を有する膜である。絶縁膜260は、p型半導体230の外側に位置するn型半導体層220の表面221から、カソード電極242の上にわたって形成されている。絶縁膜260の組成は、第1実施形態の絶縁膜160と同様である。
【0076】
第2実施形態における半導体装置200の製造方法は、切欠部225となるトレンチを二重に形成する点、並びに、リセス150を形成しない点を除き、第1実施形態における半導体装置100の製造方法と同様である。
【0077】
以上説明した第2実施形態によれば、切欠部225の側面225sから成長するp型半導体230の成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体230の内部に空洞が形成されることを防止できるとともに、切欠部225の外側に広がるn型半導体層220の表面221にp型半導体230が再成長することを防止できる。その結果、n型半導体層220の切欠部225に対して選択的にp型半導体230を充填できる。
【0078】
また、側面225sに結晶面のa面が現れるため、側面225sに結晶面のm面が現れる場合と比較して、切欠部225の側面225sから成長するp型半導体230の成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体230の内部に空洞が形成されることをいっそう防止できるとともに、切欠部225の外側に広がるn型半導体層220の表面221にp型半導体230が再成長することをいっそう防止できる。
【0079】
また、p型半導体230をエピタキシャル成長させるV/III比は、2500以上3000以下であるため、V/III比が2500未満である場合と比較して、切欠部225の側面225sから成長するp型半導体230の成長速度を向上させることができる。そのため、p型半導体230の内部に空洞が形成されることをいっそう防止できるとともに、切欠部225の外側に広がるn型半導体層220の表面221にp型半導体230が再成長することをいっそう防止できる。
【0080】
また、p型半導体230に含まれるアクセプタ元素の濃度が1×10
19cm
-3以上8×10
19cm
-3以下となるように、p型半導体230を切欠部225に充填するため、p型半導体230を効果的に形成できる。
【0081】
また、p型半導体230をエピタキシャル成長させる温度は、950℃以上1200℃以下であるため、p型半導体230を効果的に形成できる。
【0082】
また、p型半導体230をエピタキシャル成長させる圧力は、1kPa以上100kPa以下であるため、p型半導体230を効果的に形成できる。
【0083】
また、半導体装置200において、切欠部225に充填されたp型半導体230の結晶品質を向上させることができる。その結果、半導体装置200の信頼性を向上させることができる。
【0084】
また、半導体装置200において、側面225sに結晶面のa面が現れるため、側面225sに結晶面のm面が現れる場合と比較して、切欠部225に充填されたp型半導体230の結晶品質を向上させることができる。その結果、半導体装置200の信頼性をいっそう向上させることができる。
【0085】
また、p型半導体230に含まれるアクセプタ元素の濃度は、1×10
19cm
-3以上8×10
19cm
-3以下であるため、p型半導体230におけるp型の特性を十分に確保できる。
【0086】
C.第3実施形態
図8は、電力変換装置10の構成を示す説明図である。電力変換装置10は、交流電源Eから負荷Rに供給される電力を変換する装置である。電力変換装置10は、交流電源Eの力率を改善する力率改善回路の構成部品として、制御回路20と、トランジスタTRと、4つのダイオードD1と、コイルLと、ダイオードD2と、キャパシタCとを備える。本実施形態では、ダイオードD1,D2は、第1実施形態の半導体装置100と同様である。他の実施形態では、ダイオードD1,D2は、第2実施形態の半導体装置200と同様であってもよい。
【0087】
電力変換装置10のダイオードD1,D2は、ショットキーバリアダイオードである。電力変換装置10において、4つのダイオードD1は、交流電源Eの交流電圧を整流するダイオードブリッジDBを構成する。ダイオードブリッジDBは、直流側の端子として、正極出力端Tpと、負極出力端Tnとを有する。コイルLは、ダイオードブリッジDBの正極出力端Tpに接続されている。ダイオードD2のアノード側は、コイルLを介して正極出力端Tpに接続されている。ダイオードD2のカソード側は、キャパシタCを介して負極出力端Tnに接続されている。負荷Rは、キャパシタCと並列に接続されている。
【0088】
電力変換装置10のトランジスタTRは、FET(Field-Effect Transistor)である。トランジスタTRのソース側は、負極出力端Tnに接続されている。トランジスタTRのドレイン側は、コイルLを介して正極出力端Tpに接続されている。トランジスタTRのゲート側は、制御回路20に接続されている。電力変換装置10の制御回路20は、交流電源Eの力率が改善されるように、負荷Rに出力される電圧、および、ダイオードブリッジDBにおける電流に基づいて、トランジスタTRのソース−ドレイン間の電流を制御する。
【0089】
以上説明した第3実施形態によれば、ダイオードD1,D2の各デバイス特性を向上させることができる。その結果、電力変換装置10による電力変換効率を向上させることができる。
【0090】
D.他の実施形態
本発明は、上述した実施形態、実施例および変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、実施形態、実施例および変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えおよび組み合わせを行うことが可能である。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除することが可能である。
【0091】
本発明が適用される半導体装置は、上述の実施形態で説明したショットキーバリアダイオードに限られず、n型半導体層の溝部にp型半導体が充填された半導体装置であればよく、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、接合型トランジスタ、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、MESFET(metal-semiconductor field effect transistor)およびサイリスタなどであってもよい。
【0092】
上述の実施形態において、基板の材質は、窒化ガリウム(GaN)に限らず、ケイ素(Si)、サファイア(Al
2O
3)および炭化ケイ素(SiC)などのいずれであってもよい。上述の実施形態において、エピタキシャル成長による半導体の主成分は、窒化ガリウム(GaN)に限らず、III族窒化物半導体であればよい。
【0093】
上述の実施形態において、n型半導体に含まれるドナー元素は、ケイ素(Si)に限らず、ゲルマニウム(Ge)、酸素(O)などであってもよい。
【0094】
上述の実施形態において、p型半導体に含まれるアクセプタ元素は、マグネシウム(Mg)に限らず、亜鉛(Zn)、炭素(C)などであってもよい。
【0095】
上述の実施形態において、絶縁膜の材質は、電気絶縁性を有する材質であればよく、二酸化ケイ素(SiO
2)の他、窒化ケイ素(SiNx)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸窒化ジルコニウム(ZrON)、酸窒化ハフニウム(HfON)などの少なくとも1つであってもよい。絶縁膜は、単層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0096】
上述の実施形態において、各電極の材質は、上述の実施形態の材質に限らず、他の材質であってもよい。