(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走行輪よりも上方を前記走行車体の外方に向けて延在し、走行位置の目安となる進行基準線を圃場面に形成する線引きマーカを支持する線引きマーカ支持フレームを備え、
前記線引きマーカ支持フレームには、下方に向けて凸状に湾曲形成されたフレーム屈曲部が形成されるとともに、前記保護パイプの前記走行輪よりも上方側には、前記走行車体の外方に向けて凸状に湾曲形成されたパイプ屈曲部が形成され、
前記走行輪の上方から当該走行輪の裏側にかけて、所定の線条体を前記走行輪の機体内側へ案内する線条体案内経路が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態に係る作業車両を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、作業車両を、施肥装置を搭載した乗用型の苗移植機とする。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0021】
図1は、実施形態に係る作業車両としての苗移植機を示す側面図、
図2は、同苗移植機を示す平面図、
図3は、前輪の説明図、
図4は、肥料濃度センサの電極板の説明図、そして、
図5は、後輪の説明図である。なお、以下においては、苗移植機を8条植としており、苗移植機を指して機体と記す場合がある。また、実施形態中、前後、左右の方向を規定するに際し、運転席31からみて走行車体2の走行方向を基準とする。
【0022】
図1および
図2に示すように、苗移植機は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側には施肥装置100の本体部分が設けられる。なお、苗植付部4は作業装置の一例であり、図示するような肥料濃度センサ700を有し、施肥作業を行うことのできる作業車両であればよい。例えば、作業車両としては、種子を供給する播種装置や、圃場を耕耘する耕耘ロータリを作業装置として備えるものでも構わない。
【0023】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10および左右一対の後輪11を走行輪として備える四輪駆動車両である。機体の前部にはミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に、走行伝動ケースとしての前輪ファイナルケース13が設けられる。そして、かかる左右の前輪ファイナルケース13からそれぞれ外向きに突出する左右の前車軸10aに前輪10がそれぞれ取り付けられている。なお、
図1中、符号10bは車軸カバーを示す。
【0024】
前輪10は、
図3に示すように、その外周縁部の左右中央部に、36個の中央ラグ10Cが10度毎に形成される一方、左右両側には、18個の左側ラグ10L、右側ラグ10Rが20度毎に各々配置される。左側ラグ10Lと右側ラグ10Rは、中央ラグ10Cの左右側方に互いに隣接しないように配置される。これにより、中央ラグ10Cで土壌を掻きつつ、左側ラグ10Lと右側ラグ10Rが交互に土を掻くので、前輪10の接地面積が減少し、泥土が付着しにくくなるとともに、泥土から前輪10が離れにくく、走行性が低下することが防止される。
【0025】
また、
図3(a)に示すように、左右の前輪10それぞれには、肥料濃度センサ700が設けられる。肥料濃度センサ700は、左右の前輪10間の肥料濃度を検知するもので、環状の電極板で構成される。肥料濃度センサ700に電気を流すと、前輪10の左右間の土壌、または水に含有される肥料濃度によって電気抵抗が変化するので、電気抵抗の変化がその地点の肥料濃度の信号として後述するコントローラ210(
図11)へ送られる。なお、電気抵抗は、肥料濃度が高い、即ち電解質が多い状態では電気が流れやすいので低くなり、肥料濃度が低い、即ち電解質が少ない状態では電気が流れにくいので高くなる。なお、図示するように、肥料濃度センサ700は、前輪10の機体内側または外側で、かつ土壌や水中に近い外周縁部付近に配置されるが、前輪10ではなく左右の後輪11に設けてもよい。
【0026】
本実施形態における肥料濃度センサ700は、
図4に示すように、複数の弧状部材700a,700aの端部同士を、導電性を有する連結具700dを介して連結することで環状に形成される。ここでは、
図3に示すように、3つの弧状部材700aを周方向に連結するとともに、連結具700dを介して前輪10に、例えばボルト・ナットなどを用いて装着している。本実施形態で用いる連結具700dは、スポーク700cを前輪10に連結するためのものを共用している。そのため、部品点数などを増やすことなく弧状部材700aを環状に連結することができる。
【0027】
また、肥料濃度センサ700を構成する環状の電極板を、複数の弧状部材700a,700aに分割・組立可能な構成としたことにより、例えば肥料濃度センサ700の一部が破損した場合、肥料濃度センサ700をまるごと交換する必要などはなく、破損個所を含む弧状部材700aを交換すればよい。したがって、肥料濃度センサ700の全体としての耐久性が向上することになる。しかも、本実施形態のように、略扇形とした弧状部材700aであれば、一定の大きさの金属板からより多くの弧状部材700aを得ることができるため、肥料濃度センサ700のコストダウンを図ることができる。
【0028】
図1および
図2に戻って説明を続ける。ミッションケース12の背面部には、メインフレーム15の前端部が固着されており、メインフレーム15の後部の左右両側には後輪ギアケース18L,18Rが設けられ、後輪ギアケース18(18L,18R)からそれぞれ外向きに突出する左右の後車軸18aに後輪11が各々取り付けられる。
【0029】
後輪11は、
図5に示すように、外周縁部に後輪ラグ11aが3個1組で11組設けられ、後輪ラグ11aの組同士の間に、後輪11および後輪ラグ11aの左右幅よりも幅が広い幅広ラグ11bが合計11個設けられている。また、後輪11は、前輪10よりも大径である。
【0030】
これにより、後輪11が回転すると、所定角度回転する毎に接地面積の大きい幅広ラグ11bが地面に接触するため、地面の抵抗に負けない推進力が得られる。
【0031】
なお、前輪10および後輪11は、金属製のホイールにゴムや合成樹脂をコーティングするか、あるいは空気の代わりにゴムや合成樹脂を封入して形成するソリッドタイヤであり、パンクしない構成である。あるいは、リムやラグも金属で一体成形した、あるいは複数の金属部品を組み合わせた金属タイヤを用いてもよい。タイヤ全体を金属とすることにより、耐久性が大きく向上する。
【0032】
なお、湿田などのように、ソリッドタイヤでは土中に沈みやすく推進力が得にくい圃場で作業する場合は、空気を封入するチューブを内装するチューブタイヤを用いてもよい。左右に幅の広いチューブタイヤを用い、接地面積を広くするとともに、空気による浮力を得ることで、沈み込みが抑えられ、走行性の低下が防止される。
【0033】
また、
図1および
図2に示すように、メインフレーム15の上にはエンジン20が搭載される。かかるエンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21およびHST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる油圧無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0034】
図6は、前輪ファイナルケース13とサスペンション機構14の検出部を示す説明図である。図示するように、左右の前輪ファイナルケース13は、上部ケース13aと、この上部ケース13aを中心に左右方向に回動可能で、かつ上下摺動可能に設ける下部ケース13bで構成される。そして、下部ケース13bの機体外側に前輪10が回転可能に装着される。
【0035】
上部ケース13aと下部ケース13bの内部には、前輪10に伝動するキングピン13cが回転可能かつ上下摺動可能に配置される。このキングピン13cの外周で、かつ上部ケース13aと下部ケース13bの間に、当該下部ケース13bを下方に向かって押し下げるサスペンションスプリング13dが設けられる。なお、キングピン13cは、機体外側に向かう傾斜姿勢で配置されている。
【0036】
サスペンションスプリング13dは、サスペンション機構14を構成するもので、前輪10が地面の凹凸や石等の障害物の上を通過する際に伸縮して下部ケース13bを上下動させる。こうして、走行車体2の前側が大きく上下動して、走行車体2の後部に装着する苗植付部4等の作業装置が圃場面から大幅に離間することや、圃場面に接近し過ぎることを防止する。なお、サスペンション機構14が機能するときは、後輪11の車軸中心が回動支点となる。
【0037】
サスペンション機構14が機能するとき、キングピン13cが上下摺動するため、キングピン13cの上部にはストロークセンサ14aを設ける。ストロークセンサ14aは、キングピン13cの中心に近い位置ほど正確な伸縮を検出できるが、キングピン13cは回転している。そこで、上部ケース13a内部の上部に上下動自在に設けるカウンタプレート14bの軸受(図示省略)にキングピン13cの上端軸13eを取り付ける構成にしている。こうして、ストロークセンサ14aは、カウンタプレート14bを介して伸縮量を検出することができる。かかる構成により、サスペンション機構14の作動時のストロークセンサ14aの伸縮検出精度が向上する。
【0038】
また、ミッションケース12に伝達された回転動力から分離して取り出される外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達される。そして、かかる植付クラッチケース25から植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝達される。
【0039】
図1および
図2に示すように、エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置される。運転席31の前方には各種操作機構を備えるボンネット32が設けられ、その上部に前輪10を操舵する操縦ハンドル34が設けられる。なお、エンジン20はガソリン機関、ディーゼル機関が一般的であるが、ガスタービン等を用いてもよい。また、ボンネット32の下部で操縦座席31の前側下部には、左右のサイドクラッチ機構(不図示)を入切操作するサイドクラッチペダル96が設けられる。
【0040】
また、ボンネット32には、走行車体2の走行伝動を圃場内で作業をする際の「作業速」と、路上を移動する際の「移動速」に切り替える副変速切替レバー900が設けられている。さらに、ボンネット32の左右中央上部には、GPS(Global Positioning System)制御装置120を構成するGPS受信アンテナ(以下、単に受信アンテナと記す場合がある)710が搭載されている。受信アンテナ710の受信信号はコントローラ210へ送られる(
図11参照)。
【0041】
かかるコントローラ210は、施肥装置100の動作等を制御する制御装置であり、ボンネット32の内部に収納される。なお、コントローラ210は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)を有し、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、苗移植機の各部を制御する。
【0042】
そして、かかるコントローラ210よりも下部で、かつメインフレーム15の機体前側で、かつバンパー15aの後側には、燃料を貯留する燃料タンク33が設けられる。燃料タンク33には、エンジン20に対応する燃料、例えばガソリン、軽油等を貯留する。
【0043】
エンジンカバー30およびボンネット32の下部における左右両側は、略水平なフロアステップ35が形成されている。フロアステップ35は、
図2に示すように、一部格子状になっており、フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下する構成となっている。
【0044】
走行車体2の後部に連結される苗植付部4を昇降させる昇降リンク機構3は、平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備える。上リンク40および下リンク41,41は、それらの基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結される。
【0045】
メインフレーム15に設けたシリンダ支持部材(不図示)と上リンク40に一体形成したスイングアーム(不図示)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられる。かかる昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢を保持したまま昇降する。
【0046】
苗植付部4は、前述したように8条植の構成であり、フレームを兼ねる植付伝動ケース50と、苗載せ台51と、植付装置52等を備えている。苗載せ台51は、マット苗(図示省略)を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a(
図2参照)に供給するとともに、横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給すると、苗送りベルト51bにより苗を下方に移送する。植付装置52は、苗取出口51aに供給された苗を苗植付具52aによって圃場に植付ける。なお、苗植付具52aは、1条に付き2つ設けられ、回転ケースに装着されて交互に苗を取って圃場に植え付けることができる。
【0047】
また、苗植付部4の下部には、中央のセンターフロート55と、左右のサイドフロート56と、該左右のサイドフロート56よりも機体外側のアウタフロート57とが各々回動可能に設けられる。これらフロート55,56,57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に植付装置52により苗が植え付けられる。
【0048】
センターフロート55には、圃場深さの変化によるセンターフロート55の回動量を検出するフロートセンサ58が設けられる(
図11参照)。かかるフロートセンサ58が角度変化を検出すると、コントローラ210は、圃場の深さが変化したと判断し、検出された角度に合わせて苗植付部4の高さが適切な高さとなるように昇降油圧シリンダ46を伸縮させ、苗植付部4の作業高さを自動的に調節する。
【0049】
なお、フロートセンサ58の検出値は、センターフロート55が圃場面に略水平姿勢で接地するときを0度としている。そして、検出値が仰角方向(上方)であるときは、コントローラ210は、圃場深さが浅くなり、苗植付部4と圃場面の間隔が狭くなったと判断し、昇降油圧シリンダ46を収縮させて苗植付部4を上昇させ、苗の植付深さが深くなり過ぎることを防止する。一方、検出値が俯角方向(下方)であるときは、コントローラ210は、圃場深さが深くなり、苗植付部4と圃場面の間隔が広くなったと判断し、昇降油圧シリンダ46を伸張させて苗植付部4を下降させ、苗の植付深さが浅くなり過ぎることを防止する。
【0050】
また、
図1に示すように、苗植付部4の下部には、苗の植付深さを安定させるために、圃場面の凸凹を均す整地ロータ27が設けられる。整地ロータ27は、機体左右一側の後輪ギアケース18Lの機体内側で、かつ後車軸18aよりも機体上側に基部側が配置されるロータ伝動軸28から駆動力を受けて回転するものであり、土質が硬い圃場であっても凸凹を均すことが可能である。
【0051】
ここで、施肥装置100について説明する。
図7は、施肥装置100と後輪ギアケース18R間の施肥伝動機構を示す概略正面図、
図8は、施肥装置100の繰出部の断面視による説明図、
図9は、施肥装置100の平面視による説明図である。
図1、
図2および
図7〜
図9に示すように、施肥装置100は、左側肥料ホッパ60Lと、右側肥料ホッパ60Rとに一定の隙間を空けて分離された肥料ホッパと、繰出部61と、施肥ホース62と、施肥ガイド63と、エアダクト68とを備える。
【0052】
左右側肥料ホッパ60L,60Rは、それぞれ4条分が共用であり、上部に開閉可能な蓋60aが取り付けられる。左右側肥料ホッパ60L,60Rの下部は施肥条数分(4条分)に分岐して漏斗状の流下部60bを形成しており、この流下部60bの下部が各繰出部61の上端に接続される。また、流下部60bの下方と繰出部61の間には、枠形状のシャッタケース80が各条に設けられ、かかるシャッタケース80の前後に形成された左右方向に長く上下方向に短いシャッタ穴に、板形状の施肥シャッタ81が摺動自在に設けられる。
【0053】
肥料を施肥ホース62に移動させる搬送風が通過するエアダクト68の左端部はエア切替管(図示省略)を介して、ブロア用電動モータ66で駆動するブロア67に接続されている。そして、ブロア67からのエアがエアダクト68を経由し接続管から繰出部61の吐出口61aを通過する際に、肥料を巻き込みながら施肥ホース62側に吹き込まれる構成としている。
【0054】
そして、肥料ホッパ60L,60Rに貯留されている粒状の肥料を、各苗植付条毎に設けられている繰出部61によって一定量ずつ繰り出すようにしている。繰り出した肥料は、施肥ホース62でセンターフロート55、サイドフロート56およびアウタフロート57の左右両側に取り付けた施肥ガイド63まで導かれる。そして、施肥ガイド63の前側に設けた作溝体64により、苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むことができる。
【0055】
繰出部61は、
図8に示すように、例えば右側肥料ホッパ60R(あるいは左側肥料ホッパ60L)に収容された肥料を下方に繰り出す2個の第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bを内蔵している。第1および第2繰出ロール73A,73Bは、外周部に溝状の凹部74が形成された回転体で、左右方向に設けた共通の繰出軸75の角軸部75a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転する構成で嵌合する。
【0056】
そして、第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bが、
図8の矢印方向に回転することにより、左側肥料ホッパ60L(又は、右側肥料ホッパ60R)から落下供給される肥料が凹部74に収容されて下方に繰り出される。第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bにより繰り出された肥料は、下端の吐出口61aから吐出される。繰出部61の吐出口61aには、前端部がエアダクト68の背面部に前後方向に挿入連結されて、後端部が繰出部61の吐出口61aに連通する接続管(図示省略)が接続される。
【0057】
また、
図8に示すように、繰出部61の内部には、凹部74が下方に移動する側(前側)の第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bの外周面に摺接するブラシ76が着脱自在に設けられている。このブラシ76によって第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bの凹部74に肥料が摺り切り状態で収容され、第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bによる肥料繰出量が一定に保たれる。
【0058】
そして、
図7に示すように、施肥伝動駆動ロッド462から駆動力の伝達方向を機体前後方向に変更する中継ロッド463を左右方向に配置する。また、施肥伝動駆動ロッド462と中継ロッド463の間には、施肥伝動駆動ロッド462の上下動に連動して連結支点ピン464aを支点として前後両端部が上下方向に揺動する連結プレート464を配置するとともに、中継ロッド463の他端部に駆動力を後述する繰出回動アーム467(
図9)に伝達するサブ駆動ロッド465を配置することにより、施肥伝動機構300が構成される。
【0059】
また、同じく
図7に示すように、左側肥料ホッパ60Lの左右方向の中央部付近の下方には、施肥量調節装置として、正逆自在に高速回転する施肥量調節モータ400が配置されている。かかる施肥量調節モータ400は、
図9に示すように、エンジン20の周囲を覆うエンジンカバー30の左側後方に間隔を空けて配置される。かかる施肥量調節モータ400の動力は、施肥伝動機構300を介して伝達され、繰出部61から繰り出される施肥量を調節することができる。
【0060】
このように、施肥量調節モータ400を、左側肥料ホッパ60Lの左右方向中央部付近の下方に配置したことにより、施肥量調節モータ400が左右側肥料ホッパ60L,60Rへの肥料の補給等の作業に干渉しない配置となるので、作業能率が向上する。また、左右側肥料ホッパ60L,60Rの前後方向の回動を規制しないので、肥料の排出時等に左右側肥料ホッパ60L,60Rを後方傾斜させて、残留している肥料を速やかに排出させることが妨げられることもない。
【0061】
また、後輪ギアケース18Rの機体内側で、かつ後車軸18aよりも機体前側には、施肥装置100の施肥伝動機構300へ伝動する施肥伝動出力軸461と、この施肥伝動出力軸461への伝動を入切する施肥クラッチ機構460が設けられる。
【0062】
後輪ギアケース18Rに設ける施肥伝動出力軸461から施肥伝動機構300に伝動することにより、後輪11への駆動力を用いて施肥装置100を作動させることができるので、施肥装置100への伝動経路を別に構成する必要がなく、部品点数の削減や構造の簡潔化が図られる。
【0063】
ところで、
図9に示すように、施肥量調節モータ400は、モータケース400aに周囲を覆われており、モータケース400aの上端面を施肥シャッタ81よりも機体下側に位置させて、右側肥料ホッパ60Rの左右方向の中央部付近に配置している。具体的には、機体右端から数えて2条目と3条目の繰出部61,61、および流下部60b,60bの左右間に生じている空間部に配置するものとする。また、施肥量調節モータ400には、ボールネジ420を回転可能に設け、このボールネジ420の表面に形成された螺旋形状の溝に螺合して高速で機体前後方向に移動するボールナット430を設けている。そして、ボールナット430に繰出回動ピン469を設ける。
【0064】
さらに、繰出回動ピン469は、ボールナット430の上下方向中央部よりも機体上側寄りに配置し、側面視でボールネジ420とオフセットするとともに、ボールネジ420よりも上方に位置する構成とする。
【0065】
かかる構成により、施肥量調節モータ400が施肥シャッタ81の開閉操作を妨げないので、施肥シャッタ81を作業状態に合わせて操作する際に部品の着脱等の作業を必要としないので、作業能率が向上する。
【0066】
また、
図9に示すように、左右側肥料ホッパ60L,60Rの後側下部には、排出通路から排出された肥料を機体側方の排出口79aに移動させる排出ダクト79が左右方向に配置される。排出ダクト79の一側端部はブロア67に接続されており、前述の作業切替レバーを施肥側に操作するとエアダクト68に搬送風が吹き込まれ、排出側に操作すると排出ダクト79に搬送風が吹き込まれる。
【0067】
かかる構成により、作業切替レバーを排出側に操作して各条の切替シャッタを開くと、肥料が各排出通路を通じて排出ダクト79に移動し、排出ダクト79内に吹き込む搬送風により肥料が排出口79aに運ばれて排出される。なお、排出口79aには回収用の袋やバケツを臨ませておくが、吹き出される肥料の拡散を抑えるために、細かい網目の排出ホースなどを設けておくと、肥料の散らばりが防止され、肥料の回収量が増加する。
【0068】
上述した施肥装置100の構成において、例えば、ボールネジ420を支持する支点部材420a(
図9)などのように、経時的に摩耗が進行しやすい部位には、予めシム(不図示)を挟んでおき、シムが摩耗すれば新品と交換するように構成するとよい。このように、部品の摩耗を交換容易なシムに負わせることで、効率的にガタ防止を図ることができ、施肥量が設定どおりに供給されなくなることが防止され、作物が安定して生育する。
【0069】
また、
図1および
図2に示すように、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく左右一対の予備苗枠38が設けられている。そして、右側の予備苗枠38の下部には、予備苗枠38から独立して回動する資材搬送装置600が設けられている。資材搬送装置600は、肥料袋等の作業資材を機外から積み込み、走行車体2側に移動させることができるもので、右側に限らず左側、あるいは両側に設けることもできる。
【0070】
図10は、苗移植機の一部を省略した正面図である。
図10に示すように、資材搬送装置600は、苗枠フレーム38a上に回動可能に設ける第1回動アーム601と、第1回動アーム601に回動自在に設ける第2回動アーム602と、第2回動アーム602の端部に回動自在に設ける資材載置台603で構成する。
【0071】
資材搬送装置600を使用するときは、第1回動アーム601および第2回動アーム602を回動させて機体前側に突出させると、資材載置台603が走行車体2よりも機体前側に突出するので、圃場外から容易に肥料袋等の作業資材を載置することができる。かかる状態で第1回動アーム601を機体後方に向かって回動させると、資材載置台603は円弧を描いて機体側方に突出し、走行車体2の上方まで移動する。このとき、資材載置台603は左右側肥料ホッパ60L,60R、および苗植付部4の上部に接近するので、肥料や苗の補充を行う際、作業者が肥料袋や苗を持って移動する距離が短くなり、作業者の労力が軽減されるとともに、作業能率が向上する。
【0072】
一方、資材搬送装置600を収納するときは、第1回動アーム601を機体後方に向かって回動させるとともに、第2回動アーム602を機体前側に向かって回動させる。これにより、資材載置台603が予備苗枠38の下方に位置するので、収納時等に資材搬送装置600が機体外側や機体前側に突出することが防止され、周囲との接触で資材搬送装置600が破損することが防止される。
【0073】
なお、左右一側に資材搬送装置600を設けるとき、反対側の予備苗枠38の下部には、作業資材や苗を積載する補助載置台610を設けることができる(
図1参照)。本実施形態では、左側の予備苗枠38の下部に補助載置台610が設けられている。
図10中、符号605で示すものは、資材搬送装置600の回動を規制する回動規制体である。
【0074】
また、
図1および
図2に示すように、走行車体2の前側左右両側で、かつ左右の予備苗枠38よりも機体後側に、圃場に直進の目安となるガイド線を形成する左右の線引マーカ16が各々設けられる。左右の線引マーカ16は、圃場に接触する水車マーカ16aと、水車マーカ16aを装着するガイドロッド16bと、ガイドロッド16bを機体外側および内側に回動させるマーカ回動モータ16cで構成されている。
【0075】
左右の線引マーカ16は、植付作業中は左右一側が下降して作業状態になると左右他側が上方に退避し、旋回走行すると左右一側が上方に退避し、左右他側が作業状態になる制御構成とする。旋回時や植付作業をしていないときは、左右の線引マーカ16のいずれも上方に退避した状態になる。左右の線引マーカ16が形成したガイド線に、走行車体2の前端部でかつ左右中央に設ける、センターマスコット17を合わせることで、前の作業位置に沿った植付作業を行なうことができるので、作業能率や植付精度が向上する。
【0076】
なお、圃場の土質によっては、左右の線引マーカ16により形成したガイド線がすぐに埋もれてしまい、直進の目安が消えてしまうことがある。このとき、左右の線引マーカ16よりも機体後側に設ける左右のサイドマーカ19を機体外側方向に移動させ、植え付けられた苗の上方に該サイドマーカ19を位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに合わせた植付作業が可能になる。
【0077】
次に、苗移植機の制御系について説明する。
図11は、コントローラ210を中心としたブロック図である。コントローラ210は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部には、苗移植機を制御するコンピュータプログラムが格納される。例えば、コントローラ210は、肥料濃度センサ700により取得した圃場の肥料濃度に基づいて、施肥量を自動調節することができる。
【0078】
図示するように、コントローラ210には、モータ等のアクチュエータ類や、各部の情報を取得するセンサ類等が接続される。例えば、コントローラ210には、アクチュエータ類として、施肥量を調節するための施肥量調節モータ400、エンジン20の吸気量を調節するスロットル(図示省略)を作動させることにより、エンジン20の回転数を増減させるスロットルモータ201、線引きマーカ16を作動させるマーカモータ69、整地ロータ27を駆動する駆動モータ870、整地ロータ27を昇降させる昇降モータ804、さらには苗植付部4を昇降させる昇降油圧シリンダ46などが接続される。
【0079】
また、コントローラ210に接続されるセンサ類としては、左右の前輪10それぞれに設けられた肥料濃度センサ700、後輪回転センサ23、フロートセンサ58、深度センサ720、温度センサ790および傾斜センサ830などが接続される。
【0080】
肥料濃度センサ700は、前述したように、左右の前輪10,10に設けられた電極板により構成され、圃場の肥料濃度を検出する。後輪回転センサ23は、後輪11の回転速度を検知することにより、走行車体2の車速を検知する圃場の深さを測定する。フロートセンサ58は、センターフロート55の回動量を検出する。
【0081】
深度センサ720は、超音波の反射により水面、または土壌表面までの深さを測定する超音波センサから構成される。
図1および
図2に示すように、深度センサ720は、左右の予備苗枠38を各々支持する左右の苗枠フレーム38aに、機体前側に突出する取付アーム721を各々設け、これら左右の取付アーム721の前端部に取付けられている。なお、深度センサ720は、圃場水面からの反射波を検出しているため、水面が高いほど反射時間は短くなり、コントローラ210は深度が「深い」と判定する。しかし、水面と深度センサ720との距離は、波などの影響を受けて変動するため、その影響を可及的に排除するために、ここでは、0.01秒ごとに20個の検出値を取得し、その中で最大値とその次に大きな値、および最小値とその次に小さな値の4つを捨て、残りの16の検出値の平均を用いて深度を検出している。
【0082】
また、深度センサ720の検出結果は、通常、偏りを防止するために、左右の深度センサ720,720の検出値の平均を用いるようにしている。しかし、左右の深度センサ720,720のうち、例えば、一方が断線したり、ケーブルなどへの泥土の付着、あるいはケーブルの他部材(苗枠フレーム38aなど)による挟み込みなどでショートした異常状態になったりすることもある。その場合、一方が明らかに異常な値を出力したり、ゼロ検出であったりするため、左右の平均をとると実際の値との差が大きくなってしまう。そこで、本実施形態に係る苗移植機では、異常状態にはない他方の深度センサ720のみを用いてセンシングするようにしている。
【0083】
また、例えば、両方の深度センサ720,720の異常が検出された場合は、施肥量の自動制御を停止し、施肥量を基準量に戻すとよい。ここで、基準量とは、施肥量を切り替えるための基準値であり、例えば、ティーチング作業で算出した値、後述する情報記憶端末130から入力した値、あるいはコントローラ210に入力された初期値などを用いるとよい。なお、ここでは、両方の深度センサ720,720が異常状態になった場合に基準値を用いるとしたが、一方が異常状態になった場合にも他方のみのセンシングを行うのではなく、基準値を用いることとしてもよい。
【0084】
ところで、深度センサ720の異常検出は、コントローラ210が、その出力結果を解析して判定することにより行うことができる。また、圃場の深さが計測できないと、施肥量の適正なコントロールができないため、早期のメンテナンスを促すためにも、深度センサ720の異常を判定した場合、コントローラ210は、例えばブザーやモニターを用いて作業者に異常を報知するように構成することが好ましい。
【0085】
また、苗移植機は、それぞれコントローラ210に接続されるGPS制御装置120およびタブレット端末などの情報記憶端末130を備える。
【0086】
GPS制御装置120は、GPSを用いることにより地球上における苗移植機の位置情報、あるいは座標情報を取得することができ、GPS制御装置120で取得した位置情報は、コントローラ210に伝達することができる。GPS制御装置120は、このようにGPSを用いることにより苗移植機の位置情報を取得するため、GPSで使用される人工衛星からの信号を受信する受信アンテナ710を有する(
図1および
図2を参照)。
【0087】
情報記憶端末130は、情報を表示する表示部と、各種の入力操作を行う入力操作部と、情報を記憶する記憶部とを有する。このうち、表示部と入力操作部とは、別体で構成されていてもよく、タッチパネル式のディスプレイによって一体で構成されていてもよい。なお、情報記憶端末130は、例えば、走行車体2の操縦座席31の近くに着脱自在に取付可能に構成するとよい。
【0088】
なお、情報記憶端末130の記憶部は、一または複数の圃場の位置情報、及び圃場での以前の作業時における位置情報から導出した所定個所の地点情報を記憶するとともに、GPS制御装置120で取得した最新の位置情報をコントローラ210を介して記憶することができる。
【0089】
上述してきたように、本実施形態に係る苗移植機は、左右の前輪10に、左右の前輪10間の肥料濃度を検知する肥料濃度センサ700(
図1、
図3、
図4および
図11参照)が各々設けられている。そして、肥料濃度センサ700で検知された左右の前輪10間の肥料濃度に基づいて、苗移植機のコントローラ210は、圃場へ供給する施肥量を決定し、決定した一定量の肥料が供給されるように施肥量調節モータ400の回転を制御することができる。
【0090】
肥料濃度センサ700の検出結果は、コントローラ210に通信ケーブル750を介して伝達されるが、本実施形態では、かかる通信ケーブル750の構成およびその支持構造に特徴がある。
図12Aは、通信ケーブル750の配設状態を示す説明図、
図12Bは、支持プレートの説明図である。
【0091】
図12Aに示すように、前輪ファイナルケース13の下部ケース13bは、キングピン13cや前車軸10aを回転させるベベルギア13fを内装する走行ケース13baと、肥料濃度センサ700が検出した肥料濃度を伝達する通信ケーブル750を接続するスリップリング701を内装する検出ケース13bbで構成される。前車軸10aは、走行ケース13baと検出ケース13bbを貫通して機体外側に突出し、この突出部に肥料濃度センサ700を装着した前輪10が設けられる。
【0092】
肥料濃度センサ700に接続された通信ケーブル750は、前輪10の内側から機体外側に取り出され、前輪10の機体外側の中心部に設ける車軸カバー10b内で屈曲され、前車軸10aに沿ってスリップリング701に接続される。
【0093】
スリップリング701からコントローラ210には、前輪ファイナルケース13の一部を構成する検出ケース13bbに取り付ける第1ケーブル730を介して検出値が送信される。なお、通信ケーブル750は、第1ケーブル730を含む複数のケーブルが連結されて構成される。本実施形態では、少なくとも、前輪ファイナルケース13の内部に配設される第1ケーブル730と、前輪ファイナルケース13の外部に配設される第2ケーブル740と、第1ケーブル730と肥料濃度センサ700とを接続する第3ケーブル760とを備える。
【0094】
そして、かかる複数のケーブルは、車軸カバー10b内および検出ケース13bb内に設けるカプラ704で連結し、メンテナンス等着脱が必要なときにハーネスを簡単に外せる構造としている。かかる構成の中で、図示するように、第1ケーブル730と第2ケーブル740とは、ギボシ端子を用いて直接着脱可能、言い換えればワンタッチで接続可能としている。
【0095】
すなわち、第1ケーブル730の端部に取付けられた第1接続端子706と、第2ケーブル740の端部に取付けられた第2接続端子707とを直接着脱可能とし、ワンタッチで接続可能に構成している。したがって、特に、工具がなくても第1ケーブル730と第2ケーブル740の連結、または分解を行うことができるので、メンテナンス作業能率が向上する。なお、このようにワンタッチ接続可能な構成であれば、ギボシ端子に限定する必要はない。
【0096】
図13は、通信ケーブルの比較例に係る配設状態を示す説明図である。なお、
図12Aで示す本実施形態に係る構成と同一の構成要素には同一符号を付して説明は省略する。図示するように、従来では、通信ケーブル750の端子同士を連結するために、ボルト7004、ナット7002や丸端子7003、さらには樹脂カラー7001などを配設していた。
【0097】
その点、本実施形態では、第1接続端子706と第2接続端子707とを直接接続することができるため、上述のボルト7004、ナット7002、丸端子7003、樹脂カラー7001などの部品が不要となり、部品点数が減ってメンテナンス時の分解組立作業が容易になる。また、第1接続端子706と第2接続端子706とがワンタッチで接続可能であるため、メンテナンス作業時に簡単に第1ケーブル730と第2ケーブル740との接続を解除することができ、前輪10や前輪ファイナルケース13の着脱作業の能率が向上する。さらに、メンテナンス時に、第1ケーブル730や第2ケーブル740を断線させるおそれを可及的に防止できるため、通信ケーブル750の耐久性を向上させることができる。
【0098】
また、本実施形態に係る苗移植機は、通信ケーブル750を支持する支持プレート71が設けられている。ここでは、支持プレート71は、前輪ファイナルケース13から外部へ延在する第2ケーブル740を支持する構成としている。
【0099】
すなわち、
図12Aおよび
図12Bに示すように、本実施形態に係る苗移植機は、第2ケーブル740を支持する支持プレート71を備えている。支持プレート71は、底部に矩形の面状に形成されたプレート側取付
板71aと、このプレート側取付
板71aの両端部からそれぞれ斜め上方に延在し、先端部同士の間に所定の間隔をあけて形成された支持部71cが設けられた細長の起立板71b,71bとから構成される。
【0100】
図12Bに示すように、起立板71bの先端部間に形成された支持部71cは、起立板71bの先端が斜めに切り落とされ、細長の起立板71bの幅寸よりも長い支持縁同士で第2ケーブル740を挟持可能としている。
【0101】
一方、プレート側取付
板71aに対応する前輪ファイナルケース13の頂部には、このプレート側取付
板71aに連結できるようにケース側取付面13gが面状に形成されている。そして、プレート側取付
板71aとケース側取付面13gとに、第1接続端子706および第2接続端子707が、それぞれ挿通された状態で互いに接続される接続用孔735が、それぞれ形成される。
【0102】
また、第2ケーブル740を、保護パイプ703で被覆するとともに、この保護パイプ703は、先端がプレート側取付
板71aに当接するように配設されている。
【0103】
このように、保護パイプ703の先端がプレート側取付
板71aに当接するため、接続用孔735に水や泥土が浸入することを防止できる。そのため、前輪ファイナルケース13を分解して、溜まった水や泥土を除去する作業が不要となり、メンテナンス性が向上する。
【0104】
また、浸入した水や泥土の影響により、肥料濃度センサ700からコントローラ210に伝達される肥料濃度が、実際とは異なる値になることを可及的に防止できるため、施肥量調節モータ400の切替による施肥量の適正化を図ることができる。
【0105】
さらに、通信ケーブル750を構成する第2ケーブル740の外周面を保護パイプ703で覆うと共に、これを支持プレート71で支持することにより、第2ケーブル740が前輪10と接触して破損することを可及的に防止でき、耐久性が向上すると共に、肥料濃度センサ700の検出結果に基づく適量の肥料を圃場に供給でき、作物の生育を良好にすることができる。
【0106】
ところで、苗移植機は、例えばトラックなどの輸送車両の荷台に積載して移送することがある。その場合、ロープやワイヤなどの線条体を用いて苗移植機を荷台上に拘束することが一般的であるが、その際に、線条体を走行車体2の前輪10や後輪11の内側に掛け渡すことが多い。そのとき、前輪10に掛け渡す場合であれば、線条体が通信ケーブル750を強く圧迫してしまい、通信ケーブル750を断線させてしまうおそれがある。これは、通信ケーブル750を保護パイプ703で被覆していても同様である。
【0107】
そこで、本実施形態では、前輪10の上方から当該前輪10の裏側にかけて、線状体(ここではロープRとする)を前輪10の機体内側へ案内する線条体案内経路Gを形成している。
図14は、線条体案内経路Gの説明図である。なお、
図14において、符号708は、第1接続端子706および第2接続端子707が接続された状態を簡略化して示した端子接続部を示している。
【0108】
すなわち、本実施形態に係る苗移植機は、走行車体2の前側左右両側に、圃場に、走行位置や直進の目安となる進行基準線(ガイド線)を形成する左右の線引マーカ16が各々設けられている(
図1および
図2参照)。かかる線引マーカ16を支持する線引きマーカ支持フレーム165は、
図14に示すように、前輪10よりも上方を走行車体2の外方に向けて延在している。
【0109】
この線引きマーカ支持フレーム165に、下方に向けて凸状に湾曲形成されたフレーム屈曲部166を形成する。一方、保護パイプ703における前輪10よりも上方側には、走行車体2の外方に向けて凸状に湾曲形成されたパイプ屈曲部705を形成する。こうして、ロープRを前輪10の上方から機体内側へ進入させると、ロープRは線条体案内経路Gに沿って、前輪10の上方からその機体内側に円滑に移動することになる。
【0110】
こうして、前輪10の上方から掛け渡されるロープRは、先ずフレーム屈曲部166によって斜め下方へ案内され、パイプ屈曲部705の存在により、通信ケーブル750の上方側ではなく下方側へ案内されることになる。したがって、ロープRは、前輪10の機体内側面に円滑に案内され、ロープ掛け作業の能率が高まる。
【0111】
しかも、ロープRが保護パイプ703を圧迫して、内部の通信ケーブル750(第2ケーブル740)を断線させることを可及的に防止できるため、肥料濃度センサ700が使用不能になることが防止され、圃場の肥料濃度に合わせた適切な施肥作業が可能となる。
【0112】
図12A、
図15A〜
図15Cを参照しながら、引き続き、通信ケーブル750の構成およびその支持構造について説明する。
図15Aは、第3ケーブル760と第3接続端子770とを覆う防護部材を示す説明図、
図15Bは、防護部材の構成を示す説明図、
図15Cは、第3ケーブル760の配設状態を示す説明図である。
【0113】
図12Aに示すように、通信ケーブル750は、前輪ファイナルケース13内に配設された第1ケーブル730と肥料濃度センサ700とを接続する第3ケーブル760を有する。そして、かかる第3ケーブル760の基部には、肥料濃度センサ700と接続する第3接続端子770が取り付けられている。
【0114】
かかる構成において、
図15Aに示すように、前輪10における第3接続端子770の取付位置から、前輪ファイナルケース13に亘って、第3ケーブル760と第3接続端子770とを覆う防護部材800が設けられている。すなわち、第3ケーブル760は、所定のスポーク700cの近傍位置に配設されており、かかる第3ケーブル760を防護部材800により覆っている。
【0115】
防護部材800は、
図15Bに示すように、金属板により形成され、第3ケーブル760を覆う防泥カバー810と、ゴムや合成樹脂などの絶縁体により形成された端子カバー820とを備える。両者は、略同一形状ながら、端子カバー820が短尺に形成されている。そして、図示するように、肥料濃度センサ700に接続した第3接続端子770を端子カバー820で覆うとともに、その上に防泥カバー810を連結している。なお、連結に際しては、防泥カバー810、端子カバー820、および前輪10のホイルカバー700eにそれぞれ形成した連結孔800cにビス780など(
図15A参照)を挿通して連結する。
【0116】
また、防護部材800は、第3ケーブル760を内包可能なケーブル配設部800aが形成されている。すなわち、防泥カバー810および端子カバー820の各中央部に、外方へ凸状に湾曲させたケーブル配設部800aを形成している。そのため、防護部材800は、ホイルカバー700eから肥料濃度センサ700にかけて密着した状態で第3ケーブル760を覆うことができる。
【0117】
このように、第3接続端子770を介して肥料濃度センサ700と第3ケーブル760とを接続しているため、例えば、前輪10や肥料濃度センサ700を取り外す際に、通信ケーブル750を外しておくことができる。したがって、メンテナンス作業中に通信ケーブル750が断線することを可及的に防止することができる。
【0118】
また、第3ケーブル760と第3接続端子770とを覆う防護部材800によって、肥料濃度センサ700と第3ケーブル760との間で水や泥土が接触することを可及的に防止できる。そのため、肥料濃度センサ700からコントローラ210に伝達される肥料濃度が、実際とは異なる値になることを可及的に防止でき、施肥量調節モータ400の切替による施肥量の適正化を図ることができる。
【0119】
このとき、ホイルカバー700eに、第3ケーブル760を這わすための電線通路800bを形成することができる。かかる電線通路800bに第3ケーブル760を這わすことで、防護部材800と協働して、第3ケーブル760を確実に保護することができる。また、第3ケーブル760の位置を固定することができるため、断線防止を図ることができる。なお、本実施形態では、防護部材800と電線通路800bとのいずれも採用しているが、いずれか一方を採用することとしてもよい。
【0120】
ここで、第3接続端子770を保護する他の実施形態について説明する。
図16Aは、端子保護壁の一例を示す斜視図、
図16Bは、端子保護壁を断面視で示す説明図である。図示するように、第3接続端子770の少なくとも一部を囲う端子保護壁781を設けた構成とするものである。
【0121】
すなわち、電極板を構成する弧状部材700aに形成したケーブル接続孔761を挟むように、所定の高さで弧状部材700a(肥料濃度センサ700)から切り起こされた壁体により端子保護壁781が形成されている。符号782は、端子保護壁781が切り起こされた後に電極板である弧状部材700aに残された孔部を示す。
【0122】
このように、前輪10の円周周方向に、第3接続端子770を挟んで互いに向かい合うように端子保護壁781を設けたため、水や泥などからの圧力は端子保護壁781が受けることになり、第3接続端子770は直接圧力を受けることがない。したがって、第3接続端子770が損傷することを効果的に防止することができる。
【0123】
なお、ここでは、端子保護壁781を、肥料濃度センサ700を構成する電極板(弧状部材700a)からの切り起こしにより形成したため、部品点数などが増えることがないが、別部材により形成した保護片を第3接続端子770を囲むように配設してもよい。その場合、端子保護壁781の大きさや形状の設計自由度が高まる。
【0124】
このように、肥料濃度センサ700による濃度検出が正常に行われるように、通信ケーブル750や各端子を保護しているが、それでもなお、例えば、断線やショートなどが発生した場合、自動施肥制御を停止して、施肥量調節モータ400を減肥なしの通常の施肥を行う位置まで戻し、通常の施肥量による施肥作業を行うようにするとよい。
【0125】
そして、この場合も、深度センサ720が異常状態になった場合もそうであったように、肥料濃度センサ700の異常を検出した場合、それをブザーなどによって作業者に報知する構成とすることが望ましい。
【0126】
ここで、
図12Aを参照しながら、前輪ファイナルケース13の構成についてさらに説明を加える。図示するように、キングピン13cの下部やベベルギア13fは、回転による摩耗や焼き付きを防止すべく、グリスやオイル等の潤滑剤を必要とするため、従来、前輪ファイナルケース13の内部には潤滑剤を大量に封入し、摩耗や焼付を防止する必要がある部材を潤滑剤に浸していた。しかしながら、スリップリング701や通信ケーブル750に潤滑剤が接触していると、潤滑剤が通電性に影響を与え、正確な肥料濃度がコントローラ210に送信されなくなることがある。
【0127】
そこで、下部ケース13bを走行ケース13baと検出ケース13bbを別体で構成し、前車軸10aはシールベアリング10dを介して装着することで、走行ケース13baには潤滑剤を封入し、検出ケース13bb内には潤滑剤が入り込まない構成としている。なお、検出ケース13bbの機体外側を前車軸10aが貫通する位置にもシールベアリング10dを設け、前車軸10aから圃場の水や泥土が検出ケース13bb内に入り込むことを防止する構成とする。
【0128】
かかる構成により、キングピン13cやベベルギア13fの摩耗や焼き付きを防止しつつ、肥料濃度センサ700の検出値を正確に送信することができるので、耐久性の低下を防止しつつ、施肥量の正確な算出が可能になる。
【0129】
また、通信ケーブル750が機体外側に突出する前車軸10aの端部を車軸カバー10bで覆うことにより、通信ケーブル750のカプラ704による接続部に水や泥土が浸入することを防止できるので、肥料濃度センサ700の検出値が正確に送信され、施肥量の正確な算出が可能になる。
【0130】
また、前輪10を前車軸10aに取付けるためのフランジ部10fと車軸カバー10bとの連結部の内側において、フランジ部10fとその内側の取付プレート10gとの間にOリング10eを配設している。これにより、前輪10の内側への泥水の浸入を防止するとともに、メンテナンス時の組み立て性なども向上させることが可能となる。
【0131】
深度センサ720は、超音波やレーザー光の反射により水面、または土壌表面までの深さを測定することができ、
図1および
図2に示すように、左右の予備苗枠38を各々支持する左右の苗枠フレーム38aに、機体前側に突出する取付アーム721を各々設け、これら左右の取付アーム721の前端部に取付けられている。なお、深度センサ720は、圃場水面からの反射波を検出しているため、水面が高いほど反射時間は短くなり、コントローラ210は深度が「深い」と判定する。しかし、水面と深度センサ720との距離は、波などの影響を受けて変動するため、その影響を可及的に排除するために、ここでは、0.01秒ごとに20個の検出値を取得し、その中で最大値とその次に大きな値、および最小値とその次に小さな値の4つを捨て、残りの16の検出値の平均を用いて深度を検出している。
【0132】
上述してきた実施形態より、以下の作業車両(苗移植機)が実現できる。
【0133】
(1)左右の前輪10を備える走行車体2と、前輪10に駆動力を伝達する前輪ファイナルケース13と、前輪10に装着され、圃場の肥料濃度を検出可能な肥料濃度センサ700と、走行車体2に設けられる施肥装置100と、施肥装置100の施肥量を調節する施肥量調節モータ400と、肥料濃度センサ700の検出結果に基づき、施肥量調節モータ400の動作を制御するコントローラ210と、肥料濃度センサ700の検出結果をコントローラ210に伝達する通信ケーブル750とを備え、通信ケーブル750は、前輪ファイナルケース13の内部に配設される第1ケーブル730と、前輪ファイナルケース13の外部に配設される第2ケーブル740とを有し、第1ケーブル730の端部に取付けられた第1接続端子706と第2ケーブル740の端部に取付けられた第2接続端子707とがワンタッチで接続可能に構成されている作業車両。
【0134】
(2)上記(1)において、第2ケーブル740を支持する支持プレート71と、第1接続端子706および第2接続端子707が、それぞれ挿通された状態で互いに接続される接続用孔735と、少なくとも第2ケーブル740を被覆する保護パイプ703とを備え、接続用孔735は、支持プレート71に面状に形成されたプレート側取付
板71aと、当該プレート側取付
板71aに連結できるように、前輪ファイナルケース13の頂部に面状に形成されたケース側取付面13gとにそれぞれ形成され、保護パイプ703は、先端がプレート側取付
板71aに当接するように配設される作業車両。
【0135】
(3)上記(2)において、前輪10よりも上方を走行車体2の外方に向けて延在し、走行位置の目安となる進行基準線を圃場面に形成する線引きマーカ16を支持する線引きマーカ支持フレーム165を備え、線引きマーカ支持フレーム165には、下方に向けて凸状に湾曲形成されたフレーム屈曲部166が形成されるとともに、保護パイプ703の前輪10よりも上方側には、走行車体2の外方に向けて凸状に湾曲形成されたパイプ屈曲部705が形成され、前輪10の上方から当該前輪10の裏側にかけて、ロープRを前輪10の機体内側へ案内する線条体案内経路Gが形成される作業車両。
【0136】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、肥料濃度センサ700は、複数の弧状部材700a,700aの端部同士が、導電性を有する連結具700dを介して連結されて環状に形成されており、当該連結具700dを介して前輪10に装着される作業車両。
【0137】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、前輪ファイナルケース13内に配設された第1ケーブル730と肥料濃度センサ700とを接続する第3ケーブル760と、第3ケーブル760の基部に設けられ、肥料濃度センサ700と接続する第3接続端子770と、前輪10における第3接続端子770の取付位置から、前輪ファイナルケース13に亘って、第3ケーブル760と第3接続端子770とを覆う防護部材800とを備える作業車両。
【0138】
(6)上記
(1)〜(4)のいずれかにおいて、
前輪ファイナルケース13内に配設された第1ケーブル730と肥料濃度センサ700とを接続する第3ケーブル760と、第3ケーブル760の基部に設けられ、肥料濃度センサ700と接続する第3接続端子770と、第3接続端子770の
少なくとも一部を囲う端子保護壁781
と、を備える作業車両。
【0139】
上述してきた実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素などのスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質など)は、適宜に変更して実施することができる。