(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機充填材(D)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種以上を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
前記エポキシ化合物(A)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)、前記シアン酸エステル化合物(B)、及び前記マレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、40〜75質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記シアン酸エステル化合物(B)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)、前記シアン酸エステル化合物(B)、及び前記マレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、20〜40質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記無機充填材(D)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)、前記シアン酸エステル化合物(B)、及び前記マレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、50〜300質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記イミダゾールシラン(E)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)、前記シアン酸エステル化合物(B)、及び前記マレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、0.10〜3.0質量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記樹脂シートの前記樹脂組成物からなる層を表面処理して、前記樹脂組成物からなる層にめっきによりパターン形成することにより作製された、請求項13に記載のプリント配線板。
前記金属箔張積層板の金属箔をエッチングし、前記金属箔張積層板の前記プリプレグからなる層を表面処理して、前記プリプレグからなる層にめっきによりパターン形成することにより作製された、請求項15に記載のプリント配線板。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
[I.樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、
絶縁層と、該絶縁層の表面にめっきにより形成される導体層と、を含むプリント配線板の前記絶縁層の材料として用いられる、樹脂組成物であって、
エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、マレイミド化合物(C)、無機充填材(D)、及びイミダゾールシラン(E)を含み、
前記マレイミド化合物(C)が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を含み、
前記マレイミド化合物(C)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)、前記シアン酸エステル化合物(B)、及び前記マレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、25質量%以下であり、
且つ、前記イミダゾールシラン(E)が、下記式(3)で表される化合物を含む。
【化6】
(上記式(1)中、nは、平均値として1〜30の範囲の実数である。)
【化7】
(上記式(2)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、nは、平均値として1〜10の範囲の実数である。)
【化8】
(上記式(3)中、R
5は、水素又は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、R
6は水素、ビニル基、又は炭素数が1〜5のアルキル基を示し、R
7及びR
8は、各々独立して、炭素数が1〜3のアルキル基を示し、Xは、酢酸イオン又はフタル酸イオンを示し、Yは、水素又は水酸基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
【0015】
本実施形態の樹脂組成物は、絶縁層と、該絶縁層の表面にめっきにより形成される導体層と、を含むプリント配線板の絶縁層の材料として用いられるものであり、より具体的には、絶縁層と、絶縁層の表面にセミアディティブ法又はフルアディティブ法により選択的にめっきされることにより形成される導体層と、を含むプリント配線板の絶縁層の材料として用いられるものであることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層は、絶縁層の表面にめっき形成される導体層との密着性に優れるため、このような用途に特に適したものとなる。
【0016】
〔I−1.エポキシ化合物(A)〕
本実施形態の樹脂組成物に含まれるエポキシ化合物(A)は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物である。エポキシ化合物(A)の1分子当たりのエポキシ基の数は、1以上である。該エポキシ基の数は2以上であることがより好ましい。
【0017】
エポキシ化合物(A)としては、特に限定されず従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(エポキシ基含有ビフェニルアラルキル樹脂)、ナフタレン型エポキシ化合物(ナフタレン骨格を有するエポキシ基含有化合物:ナフタレン2官能型エポキシ化合物)、ビスナフタレン型エポキシ化合物(ビスナフタレン骨格を有するエポキシ基含有化合物:ナフタレン4官能型エポキシ化合物)、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物(エポキシ基含有芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂)、アントラキノン型エポキシ化合物(アントラキノン骨格を有するエポキシ基含有化合物)、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物(エポキシ基含有ナフトールアラルキル樹脂)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ザイロック型エポキシ化合物(エポキシ基含有ザイロック樹脂)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ化合物(3官能フェノール骨格を有するエポキシ基含有化合物)、4官能フェノール型エポキシ化合物(4官能フェノール骨格を有するエポキシ基含有化合物)、ビフェニル型エポキシ樹脂(ビフェニル骨格を有するエポキシ基含有化合物)、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、トリアジン骨格エポキシ化合物(トリアジン骨格含有エポキシ樹脂)、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジル型エステル樹脂、ブタジエン等の二重結合含有化合物の二重結合をエポキシ化した化合物、及び、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0018】
なお、上記例示に記すように、本明細書では、ある樹脂又は化合物をエポキシ化して得られる構造を有するエポキシ化合物を、その樹脂又は化合物の名称に「〜型エポキシ化合物」との記載を付して表す場合がある。
【0019】
これらの中でも、エポキシ化合物(A)としては、絶縁層とめっき導体層との密着性及び難燃性等を向上させる観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物、アントラキノン型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、及びザイロック型エポキシ化合物からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。なお、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物の好ましい例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して得られた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を、フェノール、キシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素で変性し、更に当該水酸基をエポキシ化した化合物や、フェノール、キシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して得られた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の当該水酸基をエポキシ化した化合物等が挙げられる。
【0020】
さらに、樹脂組成物の熱膨張率をより一層低くする観点から、エポキシ化合物(A)は、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物及びアントラキノン型エポキシ化合物からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0021】
ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(6)で表される化合物が好ましい。このようなビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を用いることにより、樹脂組成物の耐燃焼性がより向上する傾向にある。
【化9】
(上記式(6)中、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、通常は10、好ましくは7である。)
【0022】
エポキシ化合物(A)の含有量は、特に限定されないが、絶縁層とめっき導体層との密着性を維持しながら、絶縁層に高いガラス転移温度と良好な耐熱性とを付与する観点から、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、及びマレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、好ましくは40〜75質量%であり、より好ましくは50〜70質量%であり、さらに好ましくは60〜70質量%である。なお、2種以上のエポキシ化合物(A)を併用する場合には、これらの合計含有量が上記値を満たすことが好ましい。
【0023】
エポキシ化合物(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0024】
エポキシ化合物(A)としては、様々な構造の既製品が市販されており、それら適宜入手して用いることができる。また、公知の種々の製法を用いて、エポキシ化合物(A)を製造してもよい。このような製法としては、特に限定されないが、例えば、所望の骨格を有する水酸基含有化合物を入手又は合成し、当該水酸基を公知の手法により修飾してエポキシ化(エポキシ基導入)する方法等が挙げられる。
【0025】
〔I−2.シアン酸エステル化合物(B)〕
本実施形態の樹脂組成物に含まれるシアン酸エステル化合物(B)は、シアナト基(シアン酸エステル基)を有する化合物である。シアン酸エステル化合物(B)を用いることにより、樹脂組成物に対し、耐薬品性、高ガラス転移温度、低熱膨張性等の優れた特性を付与することができる。
【0026】
シアン酸エステル化合物(B)としては、特に限定されず従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有ナフトールアラルキル樹脂)、ノボラック型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有ノボラック樹脂)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂)、及びビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有ビフェニルアラルキル樹脂)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0027】
なお、上記例示に記すように、本明細書では、ある樹脂又は化合物をシアナト化(シアン酸エステル化)して得られる構造を有するシアン酸エステル化合物(B)を、その樹脂又は化合物の名称に「〜型シアン酸エステル化合物」との記載を付して表す場合がある。
【0028】
これらの中でも、シアン酸エステル化合物(B)としては、難燃性に優れ、硬化性が高く、かつ得られる硬化物のガラス転移温度が高い樹脂組成物を提供するという観点から、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ノボラック型シアン酸エステル化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物、及びビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物からなる群から選択される1種又は2種以上が特に好ましい。なお、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等の芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を得て、得られた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂をフェノール又はキシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素で変性し、更に水酸基をシアナト化する方法、フェノール又はキシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して水酸基含有芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を得て、得られた水酸基含有芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の水酸基をシアナト化する方法等により得られる化合物が挙げられる。
【0029】
さらにこのなかでも、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物及び/又はノボラック型シアン酸エステル化合物が好ましい。ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物を用いることにより、樹脂組成物の硬化性がより一層向上し、耐燃性がさらに優れる硬化物を得ることができる傾向にある。また、ノボラック型シアン酸エステル化合物を用いることにより、耐熱性と耐燃性がより向上する傾向にある。
【0030】
上記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(4)で表される化合物が好ましい。
【化10】
上記式(4)中、R
9、R
10、R
11、及びR
12は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、この中でも水素原子が好ましい。また、上記式(4)中、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、好ましくは10であり、より好ましくは6である。
【0031】
また、ノボラック型シアン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(5)で表される化合物が好ましい。
【化11】
上記式(5)中、R
13、R
14、R
15、及びR
16は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、この中でも水素原子が好ましい。また、上記式(5)中、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、好ましくは10であり、より好ましくは7である。
【0032】
樹脂組成物におけるシアン酸エステル化合物(B)の含有量は、特に限定されないが、絶縁層に高いガラス転移温度と良好な耐熱性とを付与する観点から、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、好ましくは20〜40質量%であり、より好ましくは20〜35質量%である。なお、2種以上のシアン酸エステル化合物(B)を併用する場合には、これらの合計含有量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物において、シアン酸エステル化合物(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、上述のシアン酸エステル化合物(B)以外の公知のシアン酸エステル化合物を1種又は2種以上併用することも可能である。
【0034】
シアン酸エステル化合物(B)としては、様々な構造の既製品が市販されており、それら適宜入手して用いることができる。また、公知の種々の製法を用いて、シアン酸エステル化合物(B)を製造してもよい。このような製法としては、特に限定されないが、例えば、所望の骨格を有する水酸基含有化合物を入手又は合成し、当該水酸基を公知の手法により修飾してシアナト化する方法等が挙げられる。水酸基をシアナト化する手法としては、特に限定されないが、例えば、Ian Hamerton, "Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins," Blackie Academic & Professionalに記載の手法が挙げられる。
【0035】
〔I−3.マレイミド化合物(C)〕
本実施形態の樹脂組成物に含まれるマレイミド化合物(C)は、下記式(1)で表されるマレイミド化合物及び/又は式(2)で表されるマレイミド化合物を含み、これらのマレイミド化合物のプレポリマー、これらのマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマー等を用いることもできる。下記式(1)で表されるマレイミド化合物を用いることにより、絶縁層とめっき導体層との密着性を維持しながら、絶縁層に耐熱性を付与することができる。また、下記式(2)で表されるマレイミド化合物を用いることにより、絶縁層とめっき導体層との密着性を維持しながら、高いガラス転移温度を付与することができる。
【化12】
(上記式(1)中、nは、平均値として1〜30の範囲の実数である。)
【化13】
(上記式(2)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、nは、平均値として1〜10の範囲の実数である。)
【0036】
上記式(1)で表されるマレイミド化合物(C)は、{ポリテトラメチレンオキサイド−ビス(4−マレイミドベンゾエート)}であり、上記式(1)で表されるnが異なるマレイミド化合物を、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。上記式(1)で表されるマレイミド化合物(C)は、下記式(7)で表されるジアミノ化合物{ポリテトラメチレンオキサイド−ビス(4−アミノベンゾエート)}と、無水マレイン酸と、を反応させることにより得ることができる。下記式(7)で表されるジアミノ化合物の分子量には、通常、原料のポリテトラメチレングリコール由来の分子量分布が反映されることから、上記式(1)で表されるマレイミド化合物(C)は、ほとんどの場合、所定の範囲の分子量分布を有する。
【化14】
(上記式(7)中、nは平均値として1〜30の範囲の実数である。)
【0037】
上記式(1)及び(7)中、nは、平均値として、1〜30の範囲の実数であり、好ましくは3〜21の範囲の実数であり、より好ましくは7〜18の範囲の実数である。式(1)で表されるマレイミド化合物(C)の製品例としては、ケイ・アイ化成(株)製の「BMI−650P」及び「BMI−1000P」が挙げられる。
【0038】
式(2)で表されるマレイミド化合物(C)の製品例としては、大和化成(株)製「BMI−2300」が挙げられる。
【0039】
マレイミド化合物(C)の含有量は、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、及びマレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、25質量%以下であり、好ましくは0.10〜25質量%であり、より好ましくは3.0〜20質量%である。マレイミド化合物(C)の含有量が25質量%以下であることにより、樹脂組成物の各成分、特にシアン酸エステル化合物(B)及び特定のイミダゾールシラン(E)との相互作用がより向上し、樹脂組成物を用いて形成された絶縁層とめっき導体層との密着性を顕著に向上させつつ、絶縁層のガラス転移温度Tgも極めて高い値(例えば230℃以上)に維持することができる。かくして、本実施形態の樹脂組成物によれば、優れた密着性と高耐熱性とを高い水準で両立させるという、予測し得ない顕著な効果を得ることが可能となる。
【0040】
なお、本実施形態の樹脂組成物において、マレイミド化合物(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。2種以上のマレイミド化合物(C)を併用する場合には、これらの合計含有量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0041】
〔I−4.無機充填材(D)〕
本実施形態の樹脂組成物に含まれる無機充填材(D)としては、特に限定されないが、例えば、カオリン、焼成カオリン、焼成クレー、未焼成クレー、シリカ(例えば天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ、湿式シリカ、合成シリカ、アエロジル等)、アルミニウム化合物(例えばベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、ハイドロタルサイト、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム等)、マグネシウム化合物(例えば炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等)、カルシウム化合物(例えば炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸カルシウム等)、モリブデン化合物(例えば酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等)、タルク(例えば天然タルク、焼成タルク等)、マイカ(雲母)、ガラス(例えばAガラス、NEガラス、Cガラス、Lガラス、Sガラス、MガラスG20、Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の、短繊維状ガラス、球状ガラス、微粉末ガラス、中空ガラス等)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸ナトリウム、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、錫酸亜鉛等の錫酸塩、ゴム系充填材(例えば、スチレン型、ブタジエン型、アクリル型などのゴムパウダー、コアシェル型のゴムパウダー、シリコーン複合パウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー等)などが挙げられる。本実施形態の樹脂組成物において、無機充填材(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
これらの中でも、無機充填材(D)としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種又は2種以上が好適である。このような無機充填材(D)を用いることにより、低熱膨張化及び耐燃性がより向上する傾向にある。
【0043】
特に、低熱膨張性の観点から、無機充填材(D)としては、シリカが好ましく、溶融シリカが特に好ましい。シリカの具体例としては、電気化学工業(株)製のSFP−130MC等、(株)アドマテックス製のSC2050―MB、SC2500―SQ、SC4500−SQ等が挙げられる。
【0044】
また、無機充填材(D)としては、水酸化マグネシウム及び/又は酸化マグネシウムを単独で、或いはシリカ等の他の無機充填材との組み合わせで使用することも好ましい。水酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを用いることにより、耐燃性がより向上する傾向にある。水酸化マグネシウムの具体例としては、タテホ化学工業(株)製の「エコーマグZ−10」、「エコーマグPZ−1」、神島化学工業(株)製の「マグシーズN」、「マグシーズS」、「マグシーズEP」、「マグシーズEP2−A」、堺化学工業(株)製のMGZ−1、MGZ−3、MGZ−6R、協和化学工業(株)製の「キスマ5」、「キスマ5A」、「キスマ5P」等が挙げられる。酸化マグネシウムの具体例としては、タテホ化学工業(株)製のFNM−G、堺化学工業(株)製のSMO、SMO−0.1、SMO−S−0.5等が挙げられる。
【0045】
無機充填材(D)の平均粒子径は、特に限定されないが、プリプレグの製造性向上の観点から、好ましくは0.01〜5.0μmであり、より好ましくは0.1〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.2〜1.5μmである。なお、本明細書において無機充填材(D)の「平均粒子径」とは、無機充填材(D)のメジアン径を意味するものとする。ここで「メジアン径」とは、ある粒子径を基準として粉体の粒度分布を2つに分けた場合に、より粒径が大きい側の粒子の体積と、より粒径が小さい側の体積とが、全粉体の夫々50%を占めるような粒子径を意味する。無機充填材(D)の平均粒子径(メジアン径)は、湿式レーザー回折・散乱法により測定することができる。
【0046】
樹脂組成物における無機充填材(D)の含有量は、特に限定されないが、絶縁層の熱膨張化を低減しながら高いめっきピール強度を得る観点から、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、好ましくは50〜300質量%であり、より好ましくは60〜280質量%であり、さらに好ましくは70〜250質量%である。なお、2種以上の無機充填材(D)を併用する場合には、これらの合計含有量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0047】
〔I−5.イミダゾールシラン(E)〕
本実施形態の樹脂組成物に含まれるイミダゾールシラン(E)は、下記式(3)で表される化合物を含む。下記式(3)で表されるように、酢酸イオン又はフタル酸イオンと塩を形成しているイミダゾールシランを用いることにより、ワニスゲルタイムが比較的長くなり、プリプレグの製造性がより向上する。
【化15】
(上記式(3)中、R
5は、水素又は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、R
6は水素、ビニル基、又は炭素数が1〜5のアルキル基を示し、R
7及びR
8は、各々独立して、炭素数が1〜3のアルキル基を示し、Xは、酢酸イオン又はフタル酸イオンを示し、Yは、水素又は水酸基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
【0048】
R
5は、特に合成の容易性の点から、水素、メチル、エチル、ウンデシル、ヘプタデシルが好ましい。また、R
6は、特に合成の容易性の点から、水素、メチル、エチル、ビニルが好ましい。さらに、R
7は、特に合成の容易性の点から、メチル、エチルが好ましく、貯蔵安定性の点からエチル基がより好ましい。R
8は、特に合成の容易性の点から、メチル基が好ましい。
【0049】
上記式(3)で表される化合物の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平05−186479号又は特開平09−296135公報に開示された方法が挙げられる。イミダゾールシラン(E)の具体例としては、JX日鉱日石金属(株)製の「IA−100A」、「IA−100F」及び「IM−100F」が挙げられる。
【0050】
樹脂組成物中において、イミダゾールシラン(E)は、無機充填材(D)に表面処理に供せず、無機充填材(D)から遊離した状態であることが好ましい。このような状態であることにより、樹脂組成物を用いて形成された絶縁層とその表面にめっきで形成された導体層との密着性がより向上する傾向にある。このような観点から、イミダゾールシラン(E)は、乾式法、湿式法、加熱還流処理等の脱水縮合を進行させる方法によって添加されるよりも、樹脂組成物中に直接添加されることが好ましい。
【0051】
樹脂組成物におけるイミダゾールシラン(E)の含有量は、特に限定されないが、プリプレグ製造性の観点から、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、及びマレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、好ましくは0.05〜3.0質量%であり、より好ましくは0.07〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1.0質量%である。なお、2種以上のイミダゾールシラン(E)を併用する場合には、これらの合計含有量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0052】
〔I−6.その他の成分〕
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、マレイミド化合物(C)、無機充填材(D)、及びイミダゾールシラン(E)の他に、その他の1又は2種以上の成分を含有していてもよい。
【0053】
例えば、本実施形態の樹脂組成物は、吸湿耐熱性向上の目的で、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されない。具体例としては、アミノシラン系シランカップリング剤(例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン系シランカップリング剤(例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、ビニルシラン系シランカップリング剤(例えばγ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、カチオン性シラン系シランカップリング剤(例えばN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等)、フェニルシラン系シランカップリング剤等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0054】
シランカップリング剤を使用する場合、その含有量は、特に限定されないが、吸湿耐熱性向上の観点から、無機充填材(D)100質量%に対して、好ましくは0.050〜5.0質量%であり、より好ましくは0.10〜3.0質量%である。なお、2種以上のシランカップリング剤を併用する場合には、これらの合計含有量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0055】
また、本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグ製造性向上等の目的で、湿潤分散剤を含有してもよい。湿潤分散剤としては、一般に塗料等に使用されている湿潤分散剤であれば、特に限定されない。具体例としては、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、Disperbyk−111、Disperbyk−180、Disperbyk−161、BYK−W996、BYK−W9010、BYK−W903等が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0056】
湿潤分散剤を使用する場合、その含有量は、特に限定されないが、プリプレグ製造性向上の観点から、無機充填材(D)100質量%に対して、好ましくは0.10〜5.0質量%であり、より好ましくは0.50〜3.0質量%である。なお、2種以上の湿潤分散剤を併用する場合には、これらの合計含有量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0057】
また、本実施形態の樹脂組成物は、硬化速度の調整等の目的で、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、エポキシ化合物やシアン酸エステル化合物等の硬化促進剤として公知であり、一般に使用されるものであれば、特に限定されない。具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属を含む有機金属塩類(例えばオクチル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等)、イミダゾール類及びその誘導体(例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール等)、第3級アミン(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン等)等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0058】
硬化促進剤を使用する場合、その含有量は、特に限定されないが、高いガラス転移温度を得る観点から、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、及びマレイミド化合物(C)の合計含有量100質量%に対して、好ましくは0.010〜2.0質量%であり、より好ましくは0.10〜1.0質量%である。なお、2種以上の硬化促進剤を併用する場合には、これらの合計含有量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0059】
また、本実施形態の樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、その他の種々の高分子化合物及び/又は難燃性化合物等を含有してもよい。高分子化合物及び難燃性化合物としては、一般に使用されているものであれば限定されない。高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、各種の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂並びにそのオリゴマー、エラストマー類等が挙げられる。
【0060】
難燃性化合物としては、特に限定されないが、例えば、リン含有化合物(例えばリン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂等)、窒素含有化合物(例えばメラミン、ベンゾグアナミン等)、オキサジン環含有化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。これらの高分子化合物及び/又は難燃性化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0061】
また、本実施形態の樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、種々の目的により、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0062】
〔I−7.樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物は、上述の成分、即ちエポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、マレイミド化合物(C)、無機充填材(D)、イミダゾールシラン(E)、及び必要に応じてその他の成分を混合することにより製造することができる。なお、必要に応じて、上記各成分を有機溶剤に溶解させた溶液の状態で混合してもよい。このようにして得られる樹脂組成物の溶液は、後述する本実施形態のプリプレグ及び樹脂シートを作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。
【0063】
有機溶剤としては、上記各成分を各々好適に溶解又は分散させることができ、且つ、本実施形態の樹脂組成物の所期の効果を損なわないものであれば限定されない。具体例としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等)、芳香族炭化水素類(例えばトルエン、キシレン等)等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0064】
本実施形態の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層の材料として用いた場合、プリプレグ製造性に優れ、絶縁層とめっき導体層との密着性に優れる。更には、ガラス転移温度が高く、更には吸湿耐熱性にも優れた絶縁層とすることができる。加えて、耐薬品性に優れる等、その他の好適な効果も発揮し得る。このように、本実施形態の樹脂組成物は、各種の優れた特徴を有し、特に優れた密着性と高耐熱性とを高い水準で両立させることができることから、プリント配線板の絶縁層の材料として極めて有用である。
【0065】
[II.プリプレグ、樹脂シート、金属箔張積層板及びプリント配線板]
本実施形態のプリプレグ、樹脂シート、金属箔張積層板、及びプリント配線板は、何れも上述した本実施形態の樹脂組成物を用いて形成される。
【0066】
〔II−1.プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、上記樹脂組成物が、基材に添着されたものである。基材としては、各種プリント配線板の材料として一般に用いられる公知の基材を使用することができる。具体的には、ガラス繊維(例えばAガラス、Cガラス、Eガラス、Dガラス、Hガラス、Lガラス、Sガラス、NEガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、及び球状ガラス等)、無機繊維(例えば石英(クオーツ)等のガラス以外の無機繊維)、有機繊維(例えばポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維;ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維;ポリイミド樹脂繊維;フッ素樹脂繊維等)が挙げられ、目的とする用途や性能により適宜選択できる。
【0067】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等が挙げられる。これらの中でも、強度や吸水性の面からは、ガラス繊維が好ましく、電気特性の面からは、液晶ポリエステル織布が好ましい。基材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
基材の厚みは限定されないが、例えば0.01〜0.3mmの範囲が好ましい。吸湿耐熱性の面からは、エポキシシラン処理、アミノシラン処理等のシランカップリング剤などで表面処理を施したガラス織布が好適であり、寸法安定性の面からは、超開繊処理や目詰め処理を施した織布が好適である。
【0069】
樹脂組成物を上述の基材と組み合わせてプリプレグを製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させた溶液又は分散液(ワニス)を基材に含浸又は塗布し、加熱(例えば100〜200℃の乾燥機中で1〜60分加熱等)及び/又は減圧下で乾燥し、溶媒を除去して半硬化させ、樹脂組成物を基材に添着させる手法等が挙げられる。
【0070】
基材に対する樹脂組成物の添着量は、プリプレグ全体100質量%に対して、好ましくは15〜95質量%であり、より好ましくは20〜90質量%である。
【0071】
本実施形態のプリプレグは、プリント配線板のビルドアップ材料として使用することが可能である。ここで、「ビルドアップ」とは、プリプレグ又は樹脂シートを積層すると共に、一層毎に孔あけ加工、配線形成などを繰り返すことによって、多層構造のプリント配線板を作製することを意味する。本実施形態のプリプレグを用いて形成されたプリント配線板においては、プリプレグが、絶縁層を構成することになる。なお、プリント配線板については後述する。
【0072】
〔II−2.樹脂シート〕
本実施形態の樹脂シートは、金属箔又は金属フィルムからなる外層と、該外層上に積層された、上記樹脂組成物からなる層と、を含む。
【0073】
外層として使用される金属箔又は金属フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、銅やアルミニウム等の金属からなる箔又はフィルムが挙げられる。中でも銅箔又は銅フィルムが好ましく、特に電解銅箔、圧延銅箔、銅合金フィルム等が好適に使用できる。金属箔又は金属フィルムには、例えばニッケル処理やコバルト処理等、公知の表面処理が施されていてもよい。金属箔又は金属フィルムの厚さは、使用用途によって適宜調整することができるが、好ましくは5〜70μmである。
【0074】
上述の金属箔又は金属フィルムからなる外層上に、樹脂組成物からなる層(樹脂組成物層)を形成して樹脂シートを製造する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させた溶液(ワニス)を、上述の金属箔又はフィルムの表面に塗工(塗布、含浸等)し、加熱及び/又は減圧下で乾燥し、溶媒を除去して樹脂組成物を固化させ、樹脂組成物層を形成する方法等が挙げられる。
【0075】
乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、樹脂組成物層100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下となるように乾燥させる。斯かる乾燥を達成する条件は、ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量部の有機溶剤を含むワニスの場合、50〜160℃の加熱条件下で3〜10分程度乾燥させればよい。本実施形態の樹脂シートにおける樹脂組成物層の厚さは限定されないが、通常は外層の厚さ(上述のように通常は5〜70μm程度)と同様であり、好ましくは10〜100μmである。
【0076】
本実施形態の樹脂シートも、プリント配線板のビルドアップ材料として使用可能である。本実施形態の樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板においては、樹脂組成物からなる層が、絶縁層を構成することになる。プリント配線板については後述する。
【0077】
〔II−3.金属箔張積層板〕
本実施形態の金属箔張積層板は、上記プリプレグと、該プリプレグの片面又は両面に積層された金属箔と、を含む。プリプレグは一枚でもよく、二枚以上を積層して用いてもよい。
【0078】
本実施形態の金属箔張積層板を作製する方法は限定されないが、例えば、プリプレグを一枚、或いは二枚以上を積層した上で、その片面又は両面に金属箔を配置し、例えば温度180〜220℃、加熱時間100〜300分、面圧20〜40kgf/cm
2(約2.0MPa〜約3.9MPa)等の条件で積層成形する手法等が挙げられる。
【0079】
金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅やアルミニウム等の金属箔が挙げられる。この中でも銅箔が好ましい。特に電解銅箔、圧延銅箔等が好適に使用できる。金属箔には、例えばニッケル処理やコバルト処理等、公知の表面処理が施されていてもよい。金属箔の厚さは、プリント配線板の材料として適した範囲内で適宜調整することができるが、好ましくは2〜35μmである。
【0080】
また、金属箔のマット面を絶縁層(プリプレグからなる層)の表面に転写させ、絶縁層表面に転写された凹凸のアンカー効果によって、絶縁層上にめっき形成される導体層との密着を高める観点から、金属箔のマット面の表面粗さRzは、好ましくは0.5〜2.5μmであり、より好ましくは0.6〜2.3μmであり、さらに好ましくは0.7〜2.0μmである。ここで、「表面粗さRz」とは、金属箔のマット面の粗さを表す指標であり、レーザー顕微鏡により測定対象面の粗さ曲線を測定し、平均線を越える山頂を高い順に5つ、平均線に届かない谷底を低い順に5つ夫々抽出し、抽出された山頂の高さ及び谷底の低さの絶対値の平均値を算出することにより求めることができる。
【0081】
本実施形態の金属箔張積層板も、プリント配線板のビルドアップ材料として使用することが可能である。本実施形態の金属箔張積層板を用いて形成されたプリント配線板においては、プリプレグ(基材及びこれに添着された樹脂組成物)が、絶縁層を構成することになる。プリント配線板については後述する。
【0082】
〔II−4.プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層と、を含み、前記絶縁層が上記樹脂組成物を含むものである。
【0083】
斯かるプリント配線板は、上述の本実施形態のプリプレグ、樹脂シート、又は金属箔張積層板をビルドアップ材料として用いて作製することができる。すなわち、これらをビルドアップ材料として用いてプリント配線板を作製することにより、プリプレグ(基材及びこれに添着された樹脂組成物)、又は、樹脂シートの樹脂組成物層(樹脂組成物からなる層)が、樹脂組成物を含む絶縁層を構成することになる。
【0084】
具体的には、本実施形態の樹脂シートをビルドアップ材料として用いる場合は、常法により、当該樹脂シートの樹脂組成物層(絶縁層)を表面処理し、絶縁層表面にめっきにより配線パターン(導体層)を形成することにより、本実施形態のプリント配線板が得られる。
【0085】
本実施形態の金属箔張積層板をビルドアップ材料として用いる場合は、常法により、金属箔張積層板の金属箔をエッチングした後、プリプレグからなる層(絶縁層)を表面処理し、絶縁層表面にめっきにより配線パターン(導体層)を形成することにより、本実施形態のプリント配線板を得ることができる。
【0086】
本実施形態のプリプレグをビルドアップ材料として用いる場合は、上記金属箔張積層板の製造方法によりプリプレグを用いて金属箔張積層板を作製してから、上記方法により本実施形態のプリント配線板を得ることができる。或いは、後述のように多層プリント配線板の材料として用いる場合等は、プリプレグをそのままビルドアップ材料として使用してもよい。
【0087】
なお、何れの場合も、必要に応じてその他の各種の工程(例えば、ビアホール、スルーホール等を形成する穴加工処理等)を加えてもよい。
【0088】
以下、本実施形態のプリント配線板を製造するための各工程について説明する。
穴加工処理は、ビアホール、スルーホール等の形成のために実施される。穴加工処理は、NCドリル、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、YAGレーザー、プラズマ等の公知の方法のうち何れか1種を用い、或いは必要により2種以上を組み合わせて行う。
【0089】
絶縁層に対する表面処理は、絶縁層とめっき導体層との密着性の向上や、スミア除去等の観点から実施される。表面処理としては、特に限定されないが、例えば、粗化処理、シランカップリング処理等が挙げられる。粗化処理は、孔あけ工程により生じたスミアの除去も兼ねることができる。この場合、樹脂組成物の硬化度の違いにより、粗化状態が異なるため、後述の積層成形の条件は、その後の粗化処理条件やめっき条件との組み合わせで最適な条件を選ぶことが好ましい。
【0090】
粗化処理は、膨潤工程、表面粗化及びスミア溶解工程、及び中和工程からなる。
膨潤工程は、膨潤剤を用いて表面絶縁層を膨潤させることにより行う。膨潤剤としては、表面絶縁層の濡れ性が向上し、次の表面粗化及びスミア溶解工程において酸化分解が促進される程度にまで表面絶縁層を膨潤させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられる。
【0091】
表面粗化及びスミア溶解工程は、酸化剤を用いて行う。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、過マンガン酸塩溶液等が挙げられ、好適な具体例としては、過マンガン酸カリウム水溶液、過マンガン酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。斯かる酸化剤処理はウェットデスミアと呼ばれるが、当該ウェットデスミアに加えて、プラズマ処理やUV処理によるドライデスミア、バフ等による機械研磨、サンドブラスト等の他の公知の粗化処理を、適宜組み合わせて実施してもよい。
【0092】
中和工程は、前工程で使用した酸化剤を還元剤で中和するものである。還元剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン系還元剤が挙げられる。このなかでも、ヒドロキシルアミン硫酸塩水溶液、エチレンジアミン四酢酸水溶液、ニトリロ三酢酸水溶液等の酸性還元剤が挙げられる。
【0093】
微細配線パターンを形成する上で、粗化処理後の絶縁層の表面凹凸は小さい方が好ましい。具体的には、Rz値で4.0μm以下が好ましく、より好ましくは2.0μm以下である。粗化処理後の表面凹凸は、樹脂組成物の硬化度や粗化処理の条件等に応じて決まるため、所望の表面凹凸を得るための最適条件を選ぶことが好ましい。特に、本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層は、表面粗度が低くても、めっき導体層との密着性を確保することができ、極めて好適である。
【0094】
めっきにより配線パターン(導体層)を形成する方法としては、セミアディティブ法、フルアディティブ法、サブトラクティブ法等が挙げられる。中でも、微細配線パターンを形成する観点からは、セミアディティブ法が好ましい。
【0095】
セミアディティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面に無電解メッキ等により薄い導体層を形成した後、メッキレジストを用いて選択的に電解メッキを施し(パターンメッキ)、その後メッキレジストを剥離し、全体を適量エッチングして配線パターン形成する手法が挙げられる。
【0096】
フルアディティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面にメッキレジストを用いて予めパターン形成を行い、選択的に無電解メッキ等を付着させることにより配線パターンを形成する手法が挙げられる。
【0097】
サブトラクティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面にメッキにより導体層を形成した後、エッチングレジストを用いて選択的に導体層を除去することにより、配線パターンを形成する手法が挙げられる。
【0098】
めっきにより配線パターンを形成する際に、絶縁層と導体層との密着強度を向上させる観点から、メッキの後に乾燥を行うことが好ましい。セミアディティブ法によるパターン形成では、無電解めっきと電解めっきとを組み合わせて行うが、その際、無電解めっきの後と、電解めっきの後に、それぞれ乾燥を行うことが好ましい。無電解後の乾燥は、例えば80〜180℃で10〜120分に亘って行うことが好ましく、電解めっき後の乾燥は、例えば130〜220℃で10〜120分に亘って行うことが好ましい。
【0099】
本実施形態のプリント配線板は、多層プリント配線板とすることも可能である。例えば、上記手順により、プリプレグの両面に金属箔(例えば銅やアルミニウム等)を配置した金属箔張積層板を形成した後、これに内層回路を形成し、得られた回路に黒化処理を実施して、内層回路板とする。こうして得られた内層回路板、又は、金属箔(例えば銅やアルミニウム等)の片面又は両面に、プリプレグ又は樹脂シートを配置し、更に金属箔(例えば銅やアルミニウム等)又は離型フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム等の表面に離型剤を塗布したフィルム)をその外側に配置する、という操作を繰り返し、積層成形することにより、多層プリント配線板が製造される。
【0100】
積層成形は、通常のプリント配線板用積層板の積層成形に一般に使用される手法、例えば、多段プレス、多段真空プレス、ラミネーター、真空ラミネーター、オートクレーブ成形機等を使用し、温度は例えば100〜300℃、圧力は例えば0.1〜100kgf/cm
2(約9.8kPa〜約38MPa)、加熱時間は例えば30秒〜5時間の範囲で適宜選択して行う。また、必要に応じて、例えば150〜300℃の温度で後硬化を行い、硬化度を調整してもいい。
【実施例】
【0101】
以下に合成例、実施例及び比較例を示し、本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0102】
1.シアン酸エステル化合物の製造
・合成例1 α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(式(4a)の化合物)の合成:
【化16】
(式中、nの平均値は3〜4である。)
【0103】
温度計、攪拌器、滴下漏斗及び還流冷却器を取りつけた反応器を予め食塩水により0〜5℃に冷却しておき、そこへ塩化シアン7.47g(0.122mol)、35%塩酸9.75g(0.0935mol)、水76mL、及び塩化メチレン44mLを仕込んだ。
【0104】
この反応器内の温度を−5〜+5℃、pHを1以下に保ちながら、撹拌下、下記式(4a’)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:214g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)20g(0.0935mol)、及びトリエチルアミン14.16g(0.14mol)を塩化メチレン92mLに溶解した溶液を滴下漏斗により1時間かけて滴下し、滴下終了後、更にトリエチルアミン4.72g(0.047mol)を15分間かけて滴下した。
【化17】
(式中、nの平均値は3〜4である。)
【0105】
滴下終了後、同温度で15分間撹拌後、反応液を分液し、有機層を分取した。得られた有機層を水100mLで2回洗浄した後、エバポレーターにより減圧下で塩化メチレンを留去し、最終的に80℃で1時間濃縮乾固させて、上記式(4a)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂のシアン酸エステル化物(α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物)23.5gを得た。
【0106】
2.樹脂組成物及び銅張積層板の作製
・実施例1:
エポキシ化合物(A)として、上記式(6)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC−3000−FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)のメチルエチルケトン溶液(以下、「MEK溶液」ともいう。)(不揮発分75質量%)53.3質量部(不揮発分換算で40質量部)、更に第2のエポキシ化合物(A)として、ナフタレン型エポキシ化合物(HP4710、エポキシ当量240g/eq.、DIC(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)20質量部(不揮発分換算で10質量部)、シアン酸エステル化合物(B)として、合成例1により得られた上記式(4a)のα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアネート当量:261g/eq.)のメチルエチルケトン溶液(不揮発分50質量%)70質量部(不揮発分換算で35質量部)、マレイミド化合物(C)として、上記式(2)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300、大和化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)30質量部(不揮発分換算15質量部)、イミダゾールシラン(E)として、上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA−100A(不揮発分70質量%)、JX日鉱日石金属(株)製)を0.5質量部(不揮発分換算0.35質量部)、硬化促進剤として2,4,5−トリフェニルイミダゾール(和光純薬製)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(不揮発分1質量%)50質量部(不揮発分換算で0.5質量部)及びオクチル酸マンガンのMEK溶液(不揮発分1質量%)5質量部(不揮発分換算で0.05質量部)をMEKに溶解又は分散させた。さらに、無機充填材(D)として、シリカ(SFP−130MC、電気化学工業(株)製、平均粒子径0.6μm)100質量部を添加して、高速攪拌装置を用いて30分間攪拌して、ワニス(エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、マレイミド化合物(C)、無機充填材(D)、及びイミダゾールシラン(E)を含む樹脂組成物の溶液)を得た。
【0107】
このワニスを更にMEKで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、160℃で4分間加熱乾燥して、樹脂組成物含有量50質量%のプリプレグを得た。得られたプリプレグを4又は8枚重ねて、3μm厚の電解銅箔(JXUT−I、JX日鉱日石金属(株)製、表面粗さRz=1.1μm)のマット面をプリプレグ側に配置し、圧力40kgf/cm
2(約3.9MPa)、温度220℃で120分間の積層成形を行い、絶縁層厚さ0.4mm及び0.8mmの銅張積層板(それぞれプレプリグ4枚及び8枚使用)を得た。
【0108】
・実施例2:
イミダゾールシラン(E)として、上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA−100A)の使用量を3質量部(不揮発分換算2.1質量部)に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0109】
・実施例3:
マレイミド化合物(C)として、上記式(2)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)の代わりに、上記式(1)で表されるマレイミド化合物(BMI−1000P、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)30質量部(不揮発分換算15質量部)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0110】
・実施例4:
上記式(2)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を16質量部(不揮発分換算8質量部)に変更し、第2のマレイミド化合物(C)として、上記式(1)で表されるマレイミド化合物(BMI−1000P)のMEK溶液(不揮発分50質量%)14質量部(不揮発分換算7質量部)をさらに加えたこと以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0111】
・実施例5:
エポキシ化合物(A)である、上記式(6)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC−3000−FH)のMEK溶液(不揮発分75質量%)の使用量を60質量部(不揮発分換算で45質量部)に変更し、シアン酸エステル化合物(B)として、合成例1により得られた上記式(4a)のα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を40質量部(不揮発分換算で20質量部)に変更し、マレイミド化合物(C)である、上記式(2)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を40質量部(不揮発分換算20質量部)に変更し、イミダゾールシラン(E)である、上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA―100A)の使用量を1質量部(不揮発分換算0.7質量部)に変更し、第2のマレイミド化合物(C)として、上記式(1)で表されるマレイミド化合物(BMI−1000P)のMEK溶液(不揮発分50質量%)10質量部(不揮発分換算5質量部)をさらに加え、第2の無機充填材(D)として、シリカ(SC4500−SQ、アドマテックス(株)製、平均粒子径1.5μm)50質量部をさらに加えたこと以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0112】
・実施例6:
第2の無機充填材(D)である、シリカ(SC4500−SQ)の使用量を200質量部に変更し、イミダゾールシランである、上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA―100A)の使用量を0.2質量部(不揮発分換算0.14質量部)に変更したこと以外は、実施例5と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0113】
・実施例7:
シアン酸エステル化合物(B)である、合成例1により得られた上記式(4a)のα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を80質量部(不揮発分換算で40質量部)に変更し、マレイミド化合物(C)である、上記式(2)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を10質量部(不揮発分換算5質量部)に変更し、第2のマレイミド化合物(C)である、上記式(1)で表されるマレイミド化合物(BMI−1000P)を使用せず、イミダゾールシラン(E)である上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA―100A)の使用量を0.5質量部(不揮発分換算0.35質量部)に変更したこと以外は、実施例5と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0114】
・実施例8:
エポキシ化合物(A)である、上記式(6)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC−3000−FH)のMEK溶液(不揮発分75質量%)の使用量を73.3質量部(不揮発分換算で55質量部)に変更し、第2のエポキシ化合物(A)である、ナフタレン型エポキシ化合物(HP4710)のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を30質量部(不揮発分換算で15質量部)に変更し、シアン酸エステル化合物(B)である、合成例1により得られた上記式(4a)のα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を40質量部(不揮発分換算で20質量部)に変更し、マレイミド化合物(C)である、上記式(2)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)のMEK溶液(不揮発分50質量%)を20質量部(不揮発分換算10質量部)に変更したこと以外は、実施例7と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0115】
・実施例9:
シアン酸エステル化合物(B)である、合成例1により得られた上記式(4a)のα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を70質量部(不揮発分換算で35質量部)に変更し、マレイミド化合物(C)である、上記式(2)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を20質量部(不揮発分換算10質量部)に変更したこと以外は、実施例7と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0116】
・実施例10:
シアン酸エステル化合物(B)として、合成例1により得られた上記式(4a)のα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物の代わりに、上記式(5)におけるR
13〜16がすべて水素原子である下記式(5a)で表されるシアン酸エステル化合物(プリマセット PT−60,ロンザジャパン株式会社製、)のMEK溶液(不揮発分50質量%)を70質量部(不揮発分換算で35質量部)使用したこと以外は、実施例9と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【化18】
(nは1以上の整数を示す。)
【0117】
・実施例11:
イミダゾールシラン(E)として、上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA−100A)の代わりに、上記式(3)におけるXがフタル酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA―100F、JX日鉱日石金属(株)製、不揮発分70%)を0.5質量部(不揮発分換算0.35質量部)使用した以外は、実施例9と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0118】
・実施例12:
イミダゾールシラン(E)として、上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA−100A)の代わりに、上記式(3)におけるXがフタル酸イオンであり、Yが水素であるイミダゾールシラン(IM―100F、JX日鉱日石金属(株)製、不揮発分80%)を0.5質量部(不揮発分換算0.4質量部)使用したこと以外は、実施例9と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0119】
・実施例13:
無機充填材(D)として、シリカ(SFP−130MC)及びシリカ(SC4500−SQ)の代わりに、水酸化マグネシウム(MGZ−6R、堺化学工業(株)、平均粒子径2.0μm)100質量部をワニスに配合したこと以外は、実施例9と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0120】
・実施例14:
無機充填材(D)として、水酸化マグネシウムの代わりに、酸化マグネシウム(SMO−0.4、堺化学工業(株)製、平均粒子径0.4μm)100質量部を用いたこと以外は、実施例13と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0121】
・実施例15:
無機充填材(D)として、水酸化マグネシウムの代わりに、ベーマイトシリカ(AOH−60、Nabaltec製、平均粒子径0.9μm)100質量部を用いたこと以外は、実施例13と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0122】
・比較例1:
イミダゾールシラン(E)として、上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA−100A)を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0123】
・比較例2:
イミダゾールシラン(E)として、上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA−100A)の代わりに、下記式(8)で表されるイミダゾールシラン(IS−1000,JX日鉱日石金属(株)製、不揮発分90質量%)を1質量部(不揮発分換算0.9質量部)使用したこと以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【化19】
(式(8)中、R
17は、水素又は炭素数が1〜20のアルキル基、R
18は水素、ビニル基又は炭素数が1〜5のアルキル基、R
19、R
20は炭素数が1〜3のアルキル基、nは1〜3の整数を示す。)
【0124】
・比較例3:
イミダゾールシラン(E)として、上記式(3)におけるXが酢酸イオンであり、Yが水酸基であるイミダゾールシラン(IA−100A)の代わりに、下記式(9)で表されるイミダゾールシラン(IM−1000,JX日鉱日石金属(株)製、不揮発分95質量%)を1質量部(不揮発分換算0.95質量部)使用したこと以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【化20】
(R
21は水素又は炭素数が1〜20のアルキル基、R
22は水素、ビニル基又は炭素数が1〜5のアルキル基、R
23、R
24は炭素数が1〜3のアルキル基、nは1〜3の整数を示す。)
【0125】
・比較例4:
マレイミド化合物(C)として、上記式(2)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)の代わりに、ビス(3−エチル−5−メチル−4マレイミドフェニル)メタン(BMI−70,ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)を30質量部(不揮発分換算15質量部)使用したこと以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0126】
・比較例5:
合成例1により得られた上記式(4a)のα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物の代わりに、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(SN495V2(SN−OH)、フェノール当量236g/eq.、新日鐵化学(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)70質量部(不揮発分換算35質量部)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0127】
・比較例6:
エポキシ化合物(A)である、上記式(6)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC−3000−FH)のMEK溶液(不揮発分75質量%)の使用量を35.7質量部(不揮発分換算で25質量部)に変更し、更に第2のエポキシ化合物(A)である、ナフタレン型エポキシ化合物(HP4710)のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を10質量部(不揮発分換算で5質量部)に変更し、マレイミド化合物(C)である、上記式(2)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)のMEK溶液(不揮発分50質量%)の使用量を70質量部(不揮発分換算35質量部)に変更したこと以外は、実施例9と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調製し、銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0128】
3.樹脂組成物の評価
・銅張積層板の湿式粗化処理と導体層めっき:
実施例1〜15及び比較例1〜6で得られた絶縁層厚さ0.4mm及び0.8mmの銅張積層板(それぞれプレプリグ4枚及び8枚使用)の表層銅箔をエッチングにより除去し、上村工業製の無電解銅めっきプロセス(使用薬液名:MCD−PL、MDP−2、MAT−SP、MAB−4−C、MEL−3−APEA ver.2)にて、約0.5μmの無電解銅めっきを施し、130℃で1時間の乾燥を行った。続いて、電解銅めっきをめっき銅の厚みが18μmになるように施し、180℃で1時間の乾燥を行った。こうして、厚さ0.4mm及び0.8mmの絶縁層上に厚さ18μmの導体層(めっき銅)が形成された回路配線板サンプルを作製し、以下の評価に供した。
【0129】
・評価方法:
(1)ワニスゲルタイム変化率
170℃のホットプレート上にワニスを載せ硬化するまでの時間(ワニスゲルタイム)を測定した。ワニス作製当日のワニスゲルタイムと、30℃で2日間保管した時のワニスゲルタイムとを測定し、下数式(1)によりワニスゲルタイム変化量を求め、下記評価基準で評価した。結果を表1〜3に示す。
数式(1):ワニスゲルタイム変化量(%)=ワニス作製2日後のワニスゲルタイム/ワニス作製当日のワニスゲルタイム×100
○:ワニスゲルタイム変化量が75%〜100%である。
△:ワニスゲルタイム変化量が50%〜74%である。
×:ワニスゲルタイム変化量が49%以下である。
【0130】
(2)めっき銅ピール強度:
上記手順により作製された絶縁層厚さ0.4mmの回路配線板サンプルを用い、めっき銅ピール強度(接着力)をJISC6481に準じて3回測定し、めっき銅ピール強度の平均値を求めた。電解銅めっき後の乾燥で膨れたサンプルに関しては、膨れていない部分を用いて評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0131】
(3)ガラス転移温度:
上記手順により作製された絶縁層厚さ0.8mmの回路配線板サンプルを用い、その表層銅箔をエッチングにより除去し、熱機械分析装置(TAインスツルメント製Q800)で40℃から300℃まで毎分10℃で昇温し、ガラス転移温度を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0132】
(4)吸湿耐熱性:
上記手順により作製された絶縁層厚さ0.4mmの回路配線板サンプルを用い、50mm×50mm角にカットした後、片面の半分以外のめっき銅をエッチングにより除去したサンプルを作製した。そのサンプルを、プレッシャークッカー試験機(平山製作所製PC−3型)で、121℃、2気圧で1、3、5時間処理した後、260℃の半田槽に60秒間浸漬させて、外観変化の異常の有無を目視にて観察した。3枚試験を行い、一枚ごとに、異常が無いものを「良」、膨れが発生したものを「否」と表記した。結果を表1〜3に示す。なお、表中「PCT−1H」、「PCT−3H」及び「PCT−5H」とは、それぞれプレッシャークッカー試験機による1、3、5時間処理後に得られた結果を示す。
【0133】
【表1】
※DMA:動的粘弾性測定
【0134】
【表2】
※DMA:動的粘弾性測定
【0135】
【表3】
※DMA:動的粘弾性測定
【0136】
表1〜3より、本発明の樹脂組成物を用いて形成された絶縁層を有する実施例1〜15は、比較例1〜6に比べ、めっきピール強度及びガラス転移温度が高く、吸湿耐熱性も優れていることがわかる。また、比較例2及び3はワニスゲルタイムの変化量が小さくなり、安定的にプリプレグを製造することが困難であった。
【0137】
本出願は、2013年6月3日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2013−116901)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。