【実施例】
【0038】
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0039】
(1)ミクロンオーダーのチタン酸リチウム粒子の利用
実施例1
活性炭(クラレケミカル株式会社製YP−17)と、スチレンブタジエンゴムバインダと、導電剤としてのケッチェンブラックとを、8:1:1の質量比で水に分散し、攪拌機で混合してスラリーを得た。得られたスラリーを、黒鉛を含む導電性接着層を備えたアルミニウム箔に所定厚みで塗布し、乾燥させた。次いで、乾燥後のシートを3×4cm
2の面積となるように打ち抜き、ロールプレス機でプレスすることにより、正極を得た。
【0040】
次いで、チタン酸リチウム(石原産業株式会社製LT−106、メジアン径6.9μm)5gと、変性アクリロニトリル樹脂を含むバインダ組成物(日立化成株式会社製LSR−7)4.29gと、N−メチルピロリドン13gを薄膜旋回型ミキサーで混合してスラリーを得た。得られたスラリーを、黒鉛を含む導電性接着層を備えたアルミニウム箔に所定厚みで塗布し、乾燥させた。次いで、乾燥後のシートを3×4cm
2の面積となるように打ち抜き、ロールプレス機でプレスすることにより、負極を得た。
【0041】
上記正極と上記負極とをセルロース製セパレータを介して積層し、1MLiBF
4を含むプロピレンカーボネート電解液を含浸させ、アルミニウムラミネートで封入して電気化学キャパシタを得た。
【0042】
上記正極と上記負極のそれぞれについて、上記電解液を含むセパレータを介してLi対極と組み合わせた半電池を形成し、チタン酸リチウムの単位質量あたりの100%放電容量及び活性炭の単位質量あたりの100%放電容量を求めた。これらの値を参照し、得られた電気化学キャパシタにおける正極における活性炭の質量と負極におけるチタン酸リチウムの質量とから、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を求めたところ、3.7(チタン酸リチウムの利用率27%)であった。
【0043】
得られた電気化学キャパシタを、60℃の条件下、電流12mAで3.0Vまで充電し、3.0Vで72時間放置した後、放電するエージングを行った。次いで、常温にて、電流12mAで2.8Vまで充電し、30分間2.8Vに維持し、電流12mAで1.5Vまで放電する充放電サイクルを2回行った。2回目の放電における放電開始〜1秒経過時における電圧降下からDCIRを算出した。次いで、電気化学キャパシタに温度60℃で2.8Vを1000時間印加する高温負荷試験を行った。高温負荷試験後、常温にて、電流12mAで2.8Vまで充電し、30分間2.8Vに維持し、電流12mAで1.5Vまで放電する充放電サイクルを2回行った。2回目の放電における放電開始〜1秒経過時における電圧降下からDCIRを算出し、DCIRの変化率を求めた。
【0044】
実施例2
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を2.7(チタン酸リチウムの利用率37%)に調整したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。
【0045】
実施例3
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を2.2(チタン酸リチウムの利用率45%)に調整したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。
【0046】
実施例4
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を5.0(チタン酸リチウムの利用率20%)に調整したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。
【0047】
実施例5
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を7.0(チタン酸リチウムの利用率14%)に調整したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。
【0048】
比較例1
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を1.8(チタン酸リチウムの利用率56%)に調整したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。
【0049】
図2に、実施例1〜5及び比較例1の電気化学キャパシタについてのDCIRとチタン酸リチウムの利用率との関係を示した。
図2から明らかなように、DCIRは利用率45%を超えると急激に上昇し、利用率14〜45%の間では利用率が低下するにつれてDCIRがなだらかに低下した。
図3に、実施例1〜5及び比較例1の電気化学キャパシタについての高温負荷試験前後のDCIRの変化率(ΔDCIR)とチタン酸リチウムの利用率との関係を示した。
図3から明らかなように、ΔDCIRは利用率45%を超えると急激に上昇し、利用率14〜45%の間では利用率が低下するにつれてΔDCIRがなだらかに低下した。したがって、利用率を14%〜45%の範囲に調整することにより、DCIRが低く、高温経験によってもDCIRの増加が抑制された電気化学キャパシタが得られることがわかった。
【0050】
(2)チタン酸リチウムナノ粒子の利用
実施例6
実施例1において用いたミクロンオーダーのチタン酸リチウム粒子を、エタノールを分散媒としてビーズミルにより湿式粉砕し、平均粒径35nmのナノ粒子を得た。ナノ粒子の平均粒径はSEM写真による観察から導出した。そして、上記ミクロンオーダーのチタン酸リチウムの代わりに平均粒径35nmのナノ粒子を用いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた電気化学キャパシタにおける正極における活性炭の質量と負極におけるチタン酸リチウムの質量は、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率が3.7(チタン酸リチウムの利用率27%)になるように調整した。
【0051】
実施例7
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を2.7(チタン酸リチウムの利用率37%)に調整したことを除いて、実施例6の手順を繰り返した。
【0052】
実施例8
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を2.2(チタン酸リチウムの利用率45%)に調整したことを除いて、実施例6の手順を繰り返した。
【0053】
実施例9
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を5.0(チタン酸リチウムの利用率20%)に調整したことを除いて、実施例6の手順を繰り返した。
【0054】
実施例10
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を7.0(チタン酸リチウムの利用率14%)に調整したことを除いて、実施例6の手順を繰り返した。
【0055】
比較例2
アルミニウム箔に塗布するチタン酸リチウム含有スラリーの厚みを調整することにより、チタン酸リチウムの100%放電容量の活性炭の100%放電容量に対する倍率を1.8(チタン酸リチウムの利用率56%)に調整したことを除いて、実施例6の手順を繰り返した。
【0056】
図4に、実施例6〜10及び比較例2の電気化学キャパシタについてのDCIRとチタン酸リチウムの利用率との関係を示した。
図4から明らかなように、チタン酸リチウムのナノ粒子を用いた場合にも、DCIRは利用率45%を超えると急激に上昇し、利用率14〜45%の間では利用率が低下するにつれてDCIRがなだらかに低下した。
図5に、実施例6〜10及び比較例2の電気化学キャパシタについての高温負荷試験前後のDCIRの変化率(ΔDCIR)とチタン酸リチウムの利用率との関係を示した。
図5から明らかなように、チタン酸リチウムのナノ粒子を用いた場合にも、ΔDCIRは利用率45%を超えると急激に上昇し、利用率14〜45%の間では利用率が低下するにつれてΔDCIRがなだらかに低下した。したがって、利用率を14%〜45%の範囲に調整することにより、DCIRが低く、高温経験によってもDCIRの増加が抑制された電気化学キャパシタが得られることがわかった。
【0057】
図2と
図4の比較から、チタン酸リチウムのナノ粒子を用いたキャパシタがより低いDCIRを示したことがわかる。これは、チタン酸リチウムのナノ粒子を使用すると、質量あたりの表面積が極めて大きいため、充放電におけるリチウムイオンの拡散距離が顕著に短くなったことを反映していると考えられる。また、
図3と
図5の比較から明らかなように、チタン酸リチウムのナノ粒子を用いた電気化学キャパシタがより低いΔDCIRを示したことがわかる。一般に高温ではチタン酸リチウムの表面積が大きいほどSEI皮膜が形成されやすくなると考えられるが、チタン酸リチウムと活性炭との割合を本発明の範囲に調整することにより、高温経験によるDCIRの変化が好適に抑制され、ミクロンオーダーのチタン酸リチウム粒子を用いたキャパシタよりもさらに安定なキャパシタが得られたことがわかる。