(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481637
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
F23N 5/02 20060101AFI20190304BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20190304BHJP
F24H 1/22 20060101ALI20190304BHJP
F22B 35/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
F23N5/02 345Z
F23N5/00 C
F23N5/02 350B
F24H1/22 301Z
F22B35/00 H
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-30141(P2016-30141)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-146071(P2017-146071A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】大西 隆二
(72)【発明者】
【氏名】羽藤 和洋
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−030907(JP,A)
【文献】
特開平05−106835(JP,A)
【文献】
特開平07−127916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/02
F22B 35/00
F23N 5/00
F24H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱流体を循環させて負荷側の被加熱流体との間で熱交換を行わせるボイラにおいて、
前記ボイラの排気ガス温度に基づいて前記ボイラの燃焼が停止しているか否かを判定する、ガス温度燃焼判定手段、
及び/又は、
循環する加熱流体の往き温度と還り温度との差である第1温度差、及び/又は、前記被加熱流体の熱交換後温度と熱交換前温度との差である第2温度差、を算出し、前記第1温度差及び/又は前記第2温度差に基づいて前記ボイラの燃焼が停止しているか否かを判定する、温度差燃焼判定手段、
を備えており、
更に、前記ガス温度燃焼判定手段及び/又は前記温度差燃焼判定手段の判定結果が「停止している」である場合に、前記ボイラの燃焼を停止させる、燃焼停止手段を、備えており、
前記温度差燃焼判定手段は、前記第1温度差及び/又は前記第2温度差が第2所定時間継続して第2所定値を下回っている場合に「停止している」と判定するようになっており、
前記第2所定時間は、前記ボイラの運転立ち上げ時間よりも長く設定されており、前記第2所定値は、前記加熱流体が最大流量で循環しているときの前記第1温度差以下に設定されており、
前記ガス温度燃焼判定手段は、前記排気ガス温度が第1所定時間継続して第1所定値を下回っている場合に「停止している」と判定するようになっており、
前記第1所定時間は、前記ボイラの運転立ち上げ時間よりも長く設定されており、前記第1所定値は、前記ボイラの最小燃焼時の排気ガス温度以下に設定されている、
ことを特徴とするボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱流体を循環させて負荷側の被加熱流体との間で熱交換を行わせるボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱流体を循環させて負荷側の被加熱流体との間で熱交換を行わせるボイラは、例えば、特許文献1に示されている。特許文献1のボイラでは、加熱流体の温度を所定の設定温度に維持するために、バーナの燃焼を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−127916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バーナの燃焼は、バーナへの燃料供給を継続しながら行われる。しかるに、バーナが燃焼していないにも拘わらず燃料供給が継続されると、すなわち、燃料の過剰供給が行われると、ボイラの性能やメンテナンス等に不具合が生じる。したがって、燃料の過剰供給を防止することが、望まれている。
【0005】
本発明は、バーナすなわちボイラが燃焼していないことを精度良く検知して燃料供給を停止することによって、燃料の過剰供給を防止できる、ボイラを、提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱交換器との間で加熱流体を循環させて負荷側の被加熱流体と熱交換を行わせるボイラにおいて、
前記ボイラの排気ガス温度によって前記ボイラの燃焼が停止しているか否かを判定する、ガス温度燃焼判定手段、
及び/又は、
循環する加熱流体の往き温度と還り温度との差である第1温度差、及び/又は、前記被加熱流体の熱交換後温度と熱交換前温度との差である第2温度差、を算出し、前記第1温度差及び/又は前記第2温度差によって前記ボイラの燃焼が停止しているか否かを判定する、温度差燃焼判定手段、
を備えており、
更に、前記ガス温度燃焼判定手段及び/又は前記温度差燃焼判定手段の判定結果が「停止している」である場合に、前記ボイラの燃焼を停止させる、燃焼停止手段を、備えており、
前記温度差燃焼判定手段は、前記第1温度差及び/又は前記第2温度差が第2所定時間継続して第2所定値を下回っている場合に「停止している」と判定するようになっており、
前記第2所定時間は、前記ボイラの運転立ち上げ時間よりも長く設定されており、前記第2所定値は、前記加熱流体が最大流量で循環しているときの前記第1温度差以下に設定されて
おり、
前記ガス温度燃焼判定手段は、前記排気ガス温度が第1所定時間継続して第1所定値を下回っている場合に「停止している」と判定するようになっており、
前記第1所定時間は、前記ボイラの運転立ち上げ時間よりも長く設定されており、前記第1所定値は、前記ボイラの最小燃焼時の排気ガス温度以下に設定されている、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ボイラが燃焼していないことを精度良く検知して燃料供給を停止できるので、燃料の過剰供給を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態のボイラの概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態のボイラの制御部を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態のボイラの作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施形態のボイラの概略構成を示している。本実施形態のボイラ1は、外部負荷5に温水を供給するように機能する。ボイラ1は、本体11、熱交換器12、5個の温度検出器Tg、T1、T2、T3、T4、制御部13、及び燃料供給弁14を、備えている。
【0010】
本体11のバーナ(図示せず)には、燃料供給ライン91が連結されている。燃料供給弁14は、燃料の供給をオン・オフするように、燃料供給ライン91に設けられている。温度検出器Tgは、本体11の排気ガス放出口111から放出されていく排気ガスの温度を検出するように、排気ガス放出口111に設けられている。
【0011】
本体11と熱交換器12とは、往きライン92と還りライン93とで連結されている。本体11と熱交換器12との間では、本体11の加熱流体が、往きライン92を通り、熱交換器12を経て、還りライン93を通って、本体11へ戻されるようになっている、すなわち、循環するようになっている。還りライン93には、加熱流体の循環を駆動するポンプ112が設けられている。一方、熱交換器12には、供給ライン94と送出ライン95とが連結されている。供給ライン94は、常温水の水源(図示せず)に連結されており、送出ライン95は、外部負荷5に連結されている。これにより、熱交換器12においては、供給ライン94を通って供給されて来た常温水(被加熱流体)と、往きライン92を通って供給されて来た加熱流体との間で、熱交換が行われ、加熱された常温水すなわち温水が送出ライン95を通って外部負荷5へ供給されるようになっている。外部負荷5は、例えば、温水をそのまま使用する温水シャワーである。
【0012】
温度検出器T1は、往きライン92を通る加熱流体の温度(往き温度)を検出するように、往きライン92に設けられている。温度検出器T2は、還りライン93を通る熱交換後の加熱流体の温度(還り温度)を検出するように、還りライン93に設けられている。温度検出器T4は、供給ライン94を通る常温水の温度(熱交換前温度)を検出するように、供給ライン94に設けられている。温度検出器T3は、送出ライン95を通る温水の温度(熱交換後温度)を検出するように、送出ライン95に設けられている。
【0013】
制御部13は、ボイラ1の作動を制御するように設けられている。制御部13は、
図2に示されるように、温度検出器Tgによって検出された排気ガス温度txに基づいてボイラ1の燃焼が停止しているか否かを判定する、ガス温度燃焼判定部131と、温度検出器T1によって検出された往き温度t1と温度検出器T2によって検出された還り温度t2との差である第1温度差t12、及び、温度検出器T3によって検出された熱交換後温度t3と温度検出器T4によって検出された熱交換前温度t4との差である第2温度差t34、を算出する機能を有する温度差算出部132と、算出された第1温度差t12及び第2温度差t34に基づいてボイラ1の燃焼が停止しているか否か、を判定する、温度差燃焼判定部133と、ガス温度燃焼判定部131及び温度差燃焼判定部133の両方の判定結果が「停止している」である場合に、ボイラ1の燃焼を停止させる、燃焼停止部134と、を備えている。「燃焼を停止させる」とは、燃料供給弁14をオフすることによって燃料供給を停止させることを含む。なお、制御部13は、CPU、ROM、RAM等により、実現されている。
【0014】
すなわち、本発明のガス温度燃焼判定手段は、温度検出器Tg及びガス温度燃焼判定部131を含んでおり、温度差燃焼判定手段は、温度検出器T1、T2、T3、T4、温度差算出部132、及び温度差燃焼判定部133を、含んでおり、燃焼停止手段は、燃料供給弁14及び燃焼停止部134を含んでいる。
【0015】
具体的には、ガス温度燃焼判定部131は、排気ガス温度txが所定時間H1(第1所定時間)継続して所定値ts(第1所定値)を下回っている場合に、「停止している」と判定するようになっている。ここで、所定値tsは、ボイラ1の最小燃焼時の排気ガス温度以下に予め設定されている。例えば、所定値tsは、ボイラ1がオン−オフの切り替えのボイラである場合には、オン状態のときの排気ガス温度以下に設定でき、ボイラ1が停止・低燃焼・高燃焼の切り替えが可能なボイラである場合には、低燃焼のときの排気ガス温度以下に設定できる。所定時間H1は、ボイラ1の加熱流体の温度が常温から所定の設定温度(定常運転状態の温度)に到達するまでのいわゆる「運転立ち上げ時間」に基づいて設定されており、通常は、「運転立ち上げ時間」よりも長く設定されている。例えば、「運転立ち上げ時間」が2分である場合には、所定時間H1は5分に設定される。
【0016】
具体的には、温度差燃焼判定部133は、算出された第1温度差t12及び第2温度差t34が共に所定時間H2(第2所定時間)継続して所定値tz(第2所定値)を下回っている場合に、「停止している」と判定するようになっている。ここで、所定値tzは、加熱流体が最大流量で循環しているときの第1温度差以下として予め設定されている(例えば、3度に設定される)。なお、第2温度差t34に関する所定値tzと第1温度差t12に関する所定値tzとは独立して設定してもよい。所定時間H2は、所定時間H1と同様に、ボイラ1の「運転立ち上げ時間」に基づいて設定されており、通常は、「運転立ち上げ時間」よりも長く設定されている。
【0017】
図3は、本実施形態のボイラ1の作動を示すフローチャートである。まず、ボイラ1の作動に伴って排気ガス放出口111から放出されていく排気ガスの温度txが、温度検出器Tgによって検出され、且つ、第1温度差t12及び第2温度差t34が温度差算出部132によって算出される(ステップ201)。次に、温度txが所定時間H1継続して所定値tsを下回っているか(以下、要件Aと称する)否かが、ガス温度燃焼判定部131によって判定され、且つ、第1温度差t12及び第2温度差t34が共に所定時間H2継続して所定値tzを下回っているか(以下、要件Bと称する)否かが、温度差燃焼判定部133によって判定される(ステップ202)。そして、要件A、Bのいずれかが満たされていない場合、すなわち、いずれか一方が「下回っていない」場合には、ステップ201が繰り返される。一方、要件A、Bの両方が満たされている場合、すなわち、両方とも「下回っている」場合には、燃焼停止部134によって、燃料供給弁14がオフされる(ステップ203)。
【0018】
ところで、要件Aが満たされている場合には、バーナすなわちボイラ1の燃焼が極めて低い状態であるので、「ボイラ1の燃焼が停止している」すなわち「ボイラ1は燃焼していない」と判断しても支障はない。
【0019】
一方、第1温度差t12及び第2温度差t34が所定値tzを上回っている場合には、熱交換器12において熱交換が行われていると判断できるので、「ボイラ1は燃焼している」と判断できる。これに対して、第1温度差t12及び第2温度差t34が所定値tzを下回っている場合には、熱交換器12において熱交換が行われていない可能性があると判断できる。しかるに、例えば負荷側の急激な流量変化に起因した瞬間的な温度変動があると、第1温度差t12が所定値tzを一時的に下回る場合が、想定される。また、ボイラ1が定常状態になっていない場合には第1温度差t12が小さいので、第1温度差t12が所定値tzを一時的に下回る場合が、想定される。しかしながら、要件Bでは、第1温度差t12が所定値tzを所定時間H2継続して下回ることが要求されている。したがって、要件Bが満たされている場合には、熱交換器12において熱交換が行われていないと判断でき、すなわち「ボイラ1は燃焼していない」と判断できる。
【0020】
そして、本実施形態では、要件A、Bの両方が満たされた場合のみ、「ボイラ1は燃焼していない」と判断しているので、「ボイラ1が燃焼していない」ことを精度良く判断できる。したがって、本実施形態のボイラによれば、ボイラが燃焼していないことを精度良く検知して燃料供給を停止することによって、燃料の過剰供給を防止できる。
【0021】
(変形例)
(1)前記実施形態において、温度差算出部132は、第1温度差t12及び第2温度差t34の両方を算出しており、温度差燃焼判定部133は、第1温度差t12及び第2温度差t34の両方に基づいて判定している。しかるに、本発明は、これに限るものではなく、温度差算出部132は、第1温度差t12及び第2温度差t34の一方のみを算出し、温度差燃焼判定部133は、算出された、第1温度差t12のみ又は第2温度差t34のみに基づいて判定してもよい。
【0022】
(2)前記実施形態において、燃焼停止部134は、ガス温度燃焼判定部131及び温度差燃焼判定部133の両方の判定結果が「停止している」である場合に、ボイラ1の燃焼を停止させている。しかるに、本発明は、これに限るものではなく、燃焼停止部134は、ガス温度燃焼判定部131及び温度差燃焼判定部133の一方のみの判定結果が「停止している」である場合に、ボイラ1の燃焼を停止させてもよい。
【0023】
(3)前記実施形態では、要件A、Bの両方が満たされることが要求されている。しかるに、本発明は、要件A、Bの両方が満たされることを、特定の場合のみに限定して要求してもよい。すなわち、加熱流体の循環量が所定量Vより多い場合には、第1温度差t12の値の信用性が低いので、要件Bだけでなく要件Aも採用するが、加熱流体の循環量が所定量Vより少ない場合には、第1温度差t12の値の信用性が高いので、要件Bのみを採用してもよい。なお、所定量Vは、温度検出器T1、T2の性能に起因して定まる。
【0024】
(4)前記実施形態は、熱交換器を内部に含む型のボイラを対象としているが、本発明は、熱交換器が外部例えば顧客先に存在している型のボイラを対象としてもよく、同様に適用できる。またボイラは、温水ボイラであってもよく、又は、熱媒ボイラや他のタイプのボイラであってもよい。
【0025】
(5)前記実施形態では、所定時間H1、H2は、「運転立ち上げ時間」よりも長く設定している。しかしながら、本発明では、所定時間H1、H2は、「運転立ち上げ時間」より短く設定されてもよく、その場合には、「運転立ち上げ時間」以降において、ガス温度燃焼判定部131及び/又は温度差燃焼判定部133が、ボイラ1の燃焼が停止しているか否かを判定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のボイラは、ボイラが燃焼していないことを精度良く検知して燃料供給を停止できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0027】
1 ボイラ 11 本体 12 熱交換器 13 制御部 131 ガス温度燃焼判定部 132 温度差算出部 133 温度差燃焼判定部 134 燃焼停止部
14 燃料供給弁 5 外部負荷 Tg、T1、T2、T3、T4 温度検出器