(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
野菜類、花弁類などの植物を短期間に生長させて収穫することは、生産者の常なる目標であり、販売業者にとっても望ましいことである。
前記野菜類の中でも根菜類は、収穫までに時間がかかるが、特に朝鮮人参は収穫までに極めて長期間を要し
手間隙のかかる植物である。
種を撒いてから収穫できるまでに、薬用の朝鮮人参の場合は5年以上要し、食用のものでも、2年苗、3年苗と言われているように、植苗してから収穫までの作業は時間がかかり容易ではない。
このように
手間隙のかかる朝鮮人参には、他の植物に比べて、特に抗酸化作用と血行促進作用が高いシンセノサイド(人参サポニン)が多量に含まれるため、薬用あるいは食用として古くから知られている高価な植物である。
【0003】
朝鮮人参の品質は土壌によって決まるため、栽培に際して先ず土壌作りを約1〜3年かけて行なう。
該土壌として、通気性、透水性かつ保水性がバランス良く確保されることが求められ、通常、粗大有機物、落ち葉、青草、又は市販の腐葉土を大量に漉き込んで、あるいは牛糞などの有機発酵肥料と土とを混ぜるなどして作製する。
この粗大有機物等を微生物が分解し養分が提供されるため、化学肥料などはむしろ生長の妨げとなるために使用されない。
しかしながら、朝鮮人参は長期間に土壌の全ての養分を吸収して育つと言われており、そのために、一つの土壌で連作はできず、次の栽培までに数年間土を寝かせる必要がある。
【0004】
また、朝鮮人参は、他の植物には例がないほど光に敏感で、直射日光を90〜95%程度避ける必要があると言われているが、反面、完全に遮光になるとほとんど生育しないことになり、照射光の調整が極めて難しい。
また、生育期間において朝鮮人参は、土壌菌や水分による根腐れとか害虫などによる被害も起きやすく、これらの障害を避ける必要がある。
【0005】
以上述べたように、従来から行われている朝鮮人参の栽培が、極めて
手間隙かかり作業効率が悪いにも拘わらず、新たな工夫とか提案がほとんどないまま現在に至っているのが実情である。
植物の生育を促進し早期に収穫する方法として、例えば、可視域に波長範囲にある光を植物の根域に照射して行う水耕栽培法が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に開示された栽培方法は、光合成に有効な波長範囲の光を選択的に植物の根域に照射することを特徴とするものであるが、朝鮮人参については植物の一例として示されているに過ぎず、実験例はなく、また、朝鮮人参の栽培は直射日光を避ける必要があるため、積極的に光照射することが生長促進にむしろ障害になる可能性がある。
また、特に、朝鮮人参について言えば、前述したように、土壌に透水性が求められるほど水分による根腐れが発生しやすく、また、水耕栽培の“水”について殺菌などの注意深いコントロールが必要となる。
【0006】
【特許文献1】特開2012−196202号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、生育を促進し短期収穫を可能とし、かつ手間暇の少ない簡易な朝鮮人参の新規栽培システムおよび新規栽培方法を提供することである。
また、本発明の課題は、ジンセノサイドをはじめとするサポニン等の有効成分の含有量が高い、朝鮮人参の新規栽培システムおよび新規栽培方法を提供することである。
また、本発明の課題は、生育の阻害となる土壌菌あるいはダニなどの害虫の発生を防止可能とし、水分などによる根腐が抑制された、朝鮮人参の新規栽培システムおよび新規栽培方法を提供することである。
さらに、本発明の課題は、同じ生育土壌で連作可能とする、朝鮮人参の新規栽培システムおよび新規栽培方法を提供することである。
またさらに、本発明の課題は、朝鮮人参に限らず、野菜類、花弁類などの植物を短期に収穫を可能とする、新規栽培システムおよび新規栽培方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、パーライトなどの開放型多孔質粒子の機能と、さらに植物の
生長に有効な気体、即ち、水素ガス、炭酸ガスおよび酸素ガスの効果とに着目して鋭意研究を重ね、その結果、以下の発明を創出するに至った。
【0010】
(1)植物を栽培する人工土壌中に、水素ガス、酸素ガスおよび炭酸ガスからなる群から選択される少なくとも一種の気体を強制的に注入して行う植物栽培システムであって、該人工土壌中に気体を注入する機構(気体注入機構)と、該気体注入機構に気体を供給する手段(気体供給手段)と、を具備し、該人工土壌が少なくとも開放型多孔質粒子と肥料を含むものであることを特徴とする植物栽培システム。
(2)該開放型多孔質粒子の該人工土壌から肥料を除いた部分に占める容量割合が30〜100%であることを特徴とする前記(1)に記載の植物栽培システム。
(3)該人工土壌が上部開放型の植物栽培容器内に収容され、該植物栽培容器の底部に、該人工土壌を構成する成分の流出防止機能を有し、通水孔が全面に設けられた部材(通水性部材)が設置されることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の植物栽培システム。
(4)該通水性部材の下側に、該通水孔からの漏水を集積し排出する部材(漏水集積部材)が設置されることを特徴とする前記(3)に記載の植物栽培システム。
(5)前記気体注入機構が気体噴出孔を有する送気管であって、該植物栽培容器の側壁に設けた貫通口を通して人工土壌中に埋設されることを特徴とする前記(1)乃至(4)いずれか1に記載の植物栽培システム。
【0011】
(6)前記気体注入機構が、該植物栽培容器の側壁の少なくとも一部を構成する二枚の板状部材からなる二重構造体であって、内壁を構成する板状部材に気体噴出孔が設けられ、外壁を構成する板状部材に、該気体供給手段から供給される気体を流入させる穴が設けられていることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれか1に記載の植物栽培システム。
(7)該人工土壌が農地上に直接設けられ、かつ該人工土壌を囲む構造体(囲み構造体)が設置されることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の植物栽培システム。
(8)前記気体注入機構が気体噴出孔を有する送気管であって、該囲み構造体に設けた貫通口を通して人工土壌中に埋設されることを特徴とする前記(7)に記載の植物栽培システム。
(9)前記気体注入機構が、該囲み構造体の少なくとも一部を構成する二枚の板状部材からなる二重構造体であって、内壁を構成する板状部材に気体噴出孔が設けられ、外壁を構成する板状部材に、該気体供給手段から供給される気体を流入させる穴が設けられていることを特徴とする前記(7)または(8)に記載の植物栽培システム。
(10)該植物栽培装置の外部に前記気体供給手段と連動する気体制御手段が設置され、該気体制御手段は、気体の種類、供給量及び供給時間(開始時間と終了時間)を制御することを特徴とする前記(1)乃至(9)のいずれか1に記載の植物栽培システム。
【0012】
(11)前記開放型多孔質粒子として、パーライト系、ゼオライト系、軽石系、人工ガラス系、焼結セラミック系および鉄鋼スラグからなる群から選択される一種あるい二種以上組み合わせて用いることを特徴とする前記(1)乃至(11)のいずれか1に記載の植物栽培システム。
(12)気体の他に活性水素水及び/又は追肥水溶液が前記気体注入手段によって注入されることを特徴とする前記(1)乃至(11)のいずれか1に記載の植物栽培システム。
(13)前記気体供給手段から供給される水素ガスと酸素ガスが、光触媒によって生成されるものであることを特徴とする前記(1)乃至(12)のいずれか1に記載の植物栽培システム。
(14)遮光手段としてソーラーパネル及び又は波長変換蛍光放射性資材が用いられることを特徴と前記(1)乃至(13)のいずれか1に記載の植物栽培システム。
(15)
前記(3)に記載の植物栽培容器の側壁の少なくとも1部または前記(7)に記載の囲み構造体の壁の少なくとも1部が波長変換蛍光放射性資材で形成されていることを特徴とする植物栽培システム。
【0013】
(16)
少なくとも開放型多孔質粒子と肥料を含む植物栽培用の人工土壌を植物栽培容器に収容しあるいは直接農地上に配置し、該人工土壌中に水素ガス、酸素ガスおよび炭酸ガスからなる群から選択される少なくとも一種の気体を強制的に注入し、かつ人工土壌に給水することを特徴とする植物栽培方法。
(17)朝鮮人参を栽培する場合において、人工土壌全体に含まれる気体の濃度が、培地1立方メートル当たり、炭酸ガスについては500〜1000ppm、水素ガスについては1000〜10000ppmおよび酸素ガスについては500〜2000ppmになるように注入されることを特徴とする前記(16)に記載の植物栽培方法。
(18)光放射による酸素発生型光合成の時間帯には水素ガスと炭酸ガスを注入することを特徴とする前記(13)又は(14)に記載の植物栽培方法。
(19)水素ガスの後に炭酸ガスを注入することを特徴とする前記(18)に記載の植物栽培方法。
(20)光量が少ない酸素非発生型光合成時間帯に酸素ガスを注入することを特徴とする前記(16)乃至(19)のいずれか1に記載の植物栽培方法。
(21)朝鮮人参を栽培する場合において、水を1日に土壌1立法メートル当り18〜30リットルの割合で供給することを特徴とする前記(16)乃至(20)のいずれか1に記載の植物栽培方法。
【0014】
(22)前記気体の種類、供給量、供給時間および供給時間帯を制御・調整し行うことを特徴とする前記(16)乃至(21)のいずれか1に記載の植物栽培方法。
(23)活性水素水及び/又は追肥水溶液を注入する及び/又は散布することを特徴とする前記(16)乃至(22)のいずれか1に記載の植物栽培方法。
(24)少なくとも開放型気泡粒子と肥料を含む人工土壌を上部開放型の植物栽培容器に収容し、その中で朝鮮人参を栽培する方法であって、該人工土壌から肥料を除いた部分に占める該開放型気泡粒子の容量割合が30〜100%であることを特徴とする朝鮮人参栽培方法。
(25)開放型気泡粒子と肥料を含み、該人工土壌から肥料を除いた部分に占める該開放型気泡粒子の容量割合が30〜100%であることを特徴とする朝鮮人参栽培用人工土壌。
(26)開放型気泡粒子と肥料を含み、該人工土壌から肥料を除いた部分に占める該開放型気泡粒子の容量割合が100%であることを特徴とする朝鮮人参栽培用人工土壌。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来法に比べて、植物の収穫までの期間を大幅に短縮でき、また、生育の阻害となる土壌菌とか害虫の発生を防止でき、さらに、栽培植物が朝鮮人参の場合には、ジンセノサイドに代表される有効成分の含有量が高く、かつ同じ土壌での連作を可能とする、手間暇の少ない新規栽培システムおよび新規栽培方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本発明の概要>
本発明は、播種されあるいは植苗された、少なくとも開放型多孔質粒子と肥料を含む人工土壌中に、水素ガス、酸素ガスおよび炭酸ガスの少なくとも一種の気体を強制的に注入することによって、生長を促進して栽培期間を大幅に短縮可能とする植物栽培方法であり、該気体を注入させるための気体供給手段と気体注入機構を具備する植物栽培システムに関するものである。
本発明の植物栽培方法およびシステム(以下、植物栽培システムと総称する場合がある)は、開放型多孔質粒子を含有させた人工土壌を用いることと、その土壌中に水素ガスなどの気体を直接注入させること、の2つが相乗して発明の課題の解決手段として有効に機能している。
【0018】
本発明の栽培システムは、人工土壌を、植物栽培容器内に収容して用いる場合と、農地上に直接盛って用いる場合に適用される。
また、本発明の植物栽培システムは、朝鮮人参に限らず、陰性植物、半陰性勅物、多肉植物、その他の各種野菜類および花弁類に適用され、これらの植物の苗を生長させて収穫する場合のみならず、種から苗を育成する場合にも適用される。
以下、本発明の植物栽培システムを、朝鮮人参を苗から生長させ収穫する場合を中心に説明する。
【0019】
<人工土壌>
本発明の植物栽培システムに用いる人工土壌は、少なくとも開放型多孔質粒子と肥料を含むものであり、土壌層の厚みは20〜40cm程度にすることが好ましい。
【0020】
<肥料>
先ず、該肥料について説明すると、栽培する植物と使用する開放型多孔質粒子と組み合わせを考慮して、適宜選択使用される。例えば、窒素系、リン酸系、カリ系の肥料、動物糞(馬、鶏、豚、牛など)の発酵有機肥料、海藻、籾殻、大豆粕、魚粉、油粕、腐葉土などを挙げることができる。
なお、該人工土壌には、開放型多孔質粒子および肥料以外の、例えば、珪藻土、黒土、赤土などの土類、抗菌性のゲルマニウム含有黒雲母などを、必要に応じて含有させることができる。
【0021】
<開放型多孔質粒子>
本発明の植物栽培システムにおいては、前述のように、人工土壌に含有させる開放型多孔質粒子が、発明の課題の解決手段として極めて重要な役割を果たしている。
従来から朝鮮人参の土壌が、通気性、透水性かつ保水性を備える必要があるとされ、該土壌づくりが朝鮮人参の栽培の
手間隙がかかる要因の1つとなっていたことは、先に述べたとおりである。
【0022】
本発明に用いられる開放型多孔質粒子は、 “孔”の多くが開放された開放型気泡からなる多孔構造の多孔質粒子であり、無機材料系と有機材料系のいずれも使用可能である。
該開放型多孔質粒子として、粒子径が100μ〜7mm程度であって、排水性であることが好ましく、また軽量であり、さらに形状が不均一なものが望ましい。
軽量であると、農作物の根にかかる圧力が低くなって、根が生長しやすく伸びやすくなり、また、形状が不均一であると、気体だけでなく水分の通路となる間隙を形成しやすくなるものと考えられる。
本発明に用いられる無機材料系の開放型多孔質粒子として、パーライト系、ゼオライト系、軽石系、人工ガラス系、焼結セラミック系、鉄鋼スラグ等を例示することができ、一種あるいが二種以上を組み合わせて使用することができる。
中でもパーライト系とゼオライト系が好ましく、特にパーライト系が好ましい。
パーライト系はイオン交換能が優れ水の浄化性を有すると言われ、本発明における人工土壌用として特に有効である。
【0023】
人工土壌内では、該開放型多孔質粒子間に形成される間隙が気体を植物の根域に誘導する通気路となると共に、開放型多孔質粒子が持つ数多くの気泡が気体を溜める役割を有している。
また、人工土壌には比較的多量の水が供給されるが、前記間隙が形成する通気路が透水路ともなり、該開放型多孔質粒子の高い排水性と相乗して、過剰な水分は外部に流して根腐れなどを防止すると共に、数多くの気泡が水を溜める保水効果も発揮する。
このように該開放型多孔質粒子が人工土壌に、通気性、透水性および保水性の3つの機能を合わせ持たせるのに極めて重要な役割を有しているばかりでなく、斯様な土壌を手間暇かけずに形成できるので、該開放型多孔質粒子は利便性が高い。
【0024】
該開放型多孔質粒子に前記3つの機能を十分に発揮させるための、人工土壌に占める含有割合は、特に限定的でないが高い方が好ましく、人工土壌から肥料を除いた量に対して、好ましくは30容量%以上、より好ましくは50容量%以上である。
30容量%未満になると、前記の3つの機能が発揮しない傾向が出てきて、植物の生長が困難になる。
本発明者の実験によれば、人工土壌に占める該開放型多孔質粒子の前記割合を100体積容量%すなわち全量含有させた場合にも、所期の栽培結果が得られている。
【0025】
人工土壌を作製するのに、栽培する植物の種類に応じて、開放型多孔質粒子と肥料と他の構成成分との組み合わせおよびそれらの量を決めた上で、例えば、セメントミキサー等を使って、可能な限り均一に混合することが、人工土壌に前記3つの機能をバランス良く持たせるために有効である。
【0026】
<植物栽培容器>
本発明に用いられる植物栽培容器について説明する。
該植物栽培容器は、形状は限定されないが、箱型のものが好ましく用いられ、また、材質についても、木製、合板、プラスチック製あるいは金属製等が使用可能であり、特に限定されない。
また、該植物栽培容器の側壁の少なくとも一部を、本発明者等によって特許第5505630号などで提案の、波長変換蛍光放射性シートおよび波長変換蛍光放射性ネットに替え適宜使用して、農作物生長を促進することもできる。該波長変換蛍光放射性シートについては、後述する。
さらに、該植物栽培容器のサイズについては、栽培する植物の種類あるいは栽培規模等によって決まるもので限定されないが、朝鮮人参の場合、例えば、巾が50〜100cm、高さが40〜60cm程度のものが好ましく、長さについては栽培規模等によって決まり、制限はない。
【0027】
<植物栽培容器の底部の構成>
朝鮮人参を栽培する場合には、人工土壌は保水性を確保しつつ、根腐れを発生させない排水性が必要であり、そのために該植物栽培用容器の底部の構成に特徴を持たせている。
植物栽培容器の底部には、人工土壌の荷重に耐えて、かつ開放型気泡粒子などの流出を防止できる高い強度を有し、かつ水分が溜らないような排水性を有する部材(通水性部材という)が固定される。
該通水性部材として、板状あるいは膜状で、ネットのような可撓性のものが好ましく、金属製、プラスチック製など、材質は限定されない。該通水孔の径は0.1〜0.25mm程度が好ましく用いられる。
【0028】
該通水性部材の下側に、該通水性部材から漏れ落ちる水を集める部材(以後、漏水集積部材という)が設置される。
該通水性部材は底部に張りを持たせて固定されるが、人工土壌の荷重によって形成される膨らみを該漏水集積部材が支える状態となり、その部分に集まる水が該漏水集積部材の表面を伝わって流れ、排水されている。
該漏水集積部材としては、荷重がかかった該通水性部材を支え、かつ接触する部分で水が集まるような形状の金網とかじゃばら状の凹凸を有する部材など、また、表面が樹脂で被覆加工し耐水性、撥水性を持たせたものなどが好ましく用いられる。
例えば、金網の場合にはメッシュが5mm〜2cm程度のものが好ましい。
さらに、必要な場合に、該漏水集積部材の下側に間隔をおいて、排水溝となるような排水部材を、例えば、板状部材を長さ20mに対して高さ20cm程度の傾斜を持たせて、設置することができる。
【0029】
以上述べた植物栽培容器として、長い大型のものを1つ用いることができれば、小型のものを複数用いることもできる。
小型の容器を複数個を並べて使用する場合には、例えば、送気管を串刺し状態にして使用することができる。
また、複数の容器を用いる場合、栽培棚を使用することもでき、該栽培棚については特に限定はなく、簡易なものから、例えば、本発明者等が提案の特許第5565988号公報に記載されるような、遮光手段としてのソーラーパネルに合わせたものを使用することができる。
【0030】
また、植物栽培容器の側壁の一部に、本発明者等が提案の波長変換蛍光放射性シート(特許第5505630号など)を用いて、直射日光を遮って植物生長に有効な蛍光を植物に照射させるようにして、本発明の栽培システムに有効に活かすことができる。
さらに、該波長変換蛍光放射性シートは、夏場の高温時には内部の温度を降下し、冬場の低温時には適度の保温効果の発する特性を有している。
【0031】
<農地に盛られた人工土壌による栽培>
農地上にじかに盛られた人工土壌を使って行う栽培について説明する。
具体的には、例えば、農地に畝を造って盛り土を行い、その盛り土の上に人工土壌を形成し、該人工土壌を囲むように囲み構造体を設置し固定する。
盛り土と畝は必ずしも必要はなく、農地の上に直接人工土壌を造ることもできる。
囲み構造体とは、例えば、通常の箱から上部と下部が取り除かれた、一周連続に繋がった壁からなる構造体を意味する造語であり、その形状は必ずしも四角に限らない。
囲み構造体の材質としては直接地面に接し固定するために、耐久性があるものが好ましく、前述の植物栽培容器に使用する材料も使用可能である。
例えば、四角形の囲み構造体であれば、4枚の板状部材を組み合わせ、側癖壁部から可能な限り気体が漏れないように密着させて固定して作製し、そのサイズは制限がなく、適宜選択可能である。
また、該囲み構造体は、注入した気体が可能な限り漏れないように、端部が多少地中に埋まるように設置し、さらに、開放された上部をシートなどで覆うことが必要である。
該シートとして特に限定されないが、例えば、上記の波長変換蛍光放射性シートを用いることもできる。
【0032】
囲み構造体を用いた植物栽培システムにおいては、気体として水素を流すと、雑草が生えにくくなり、また、畝を掘って人工土壌を形成する場合、作業者が作業しやすいように畝の深さと高さを調整し形成すれば、作業者がかがむ必要がなくなるなど、作業性を向上させることができる。
【0033】
<人工土壌に注入する気体>
次に、人工土壌に注入する気体について説明する。
一般に植物は、光によって炭酸ガス(二酸化炭素)と水と葉緑素から有機化合物を合成し(所謂光合成)生長するが、一方、二酸化炭素の供給が制限される時間帯(例えば夜間)には、植物は酸素を吸収し二酸化炭素を発生させて(所謂光呼吸)、活性酸素の生成を防止し植物を光傷害から守る機能を有すると言われている。
本発明の植物栽培システムにおける人工土壌には、人為的に気体を注入しない状態でも、炭酸ガス、水素ガスおよび酸素ガスの3種類の気体は自然に大気から供給されているが、本発明においては、これら3種類の気体の少なくとも一種を強制的に直接人工土壌に注入することによって、人工土壌中のこれら気体の総濃度を高め、根がより多く気体を取り込んで気体の上記機能をより活かして、植物の生育を促進させることを特徴とするものである。
【0034】
人工土壌に注入する気体の量は、植物の種類によって変わるが、人工土壌全体に常時含まれる量として、朝鮮人参の場合で言えば、比重の低い水素ガスが1,000〜10,000ppm、特に3,000〜7,000ppmが好ましく、炭酸ガスは500〜1,000ppm、特に700〜900ppmが好ましく、酸素ガスは500〜2,000ppm、特に700〜1,500ppmであることが好ましい。
なお、供給する気体については、その製法等に限定はないが、例えば、水素ガスと酸素ガスとして光触媒によって生成されるものを使用することができる。
【0035】
<気体注入機構>
本発明の新規植物栽培システムにおいては、該人工土壌中に気体を直接注入するための気体注入機構が極めて重要である。
【0036】
該気体注入機構としては、特に限定的でないが、気体噴出孔が設けられたパイプ状の送気管が好ましく、前記植物栽培容器の側壁に設けた貫通口を通して人工土壌中に埋設される。
また、該送気管として、通常真直ぐな長尺のものを用いられるが、限定的ではなく、植物の種類による植え方等に合わせて、例えば、真直ぐではなく曲げたもの、あるいは複数の菅を格子状に繋げ連通させたものなど、気体を可能な限り人工土壌全体に行き渡せ、より分散させるような形状・構造に、適宜加工したものを使用することができる。
【0037】
送気管を構成する材料として、気体による劣化が生じないものであれば、特に限定されず、ポリエチレンなどの樹脂製のもの、あるいはステンレスのような金属製のものが使用され、内径が8〜15mm、外径が12〜30mm程度のものが好ましく用いられる。供給する気体が水素ガスの場合、該ガスに反応し劣化しないものを選択することが好ましい。
また、送気管に設けられる噴出孔の径は、開放型気泡粒子が詰まらないように、開放型気泡粒子の粒径より小さいことが必要であり、30〜100μ程度が好ましく、その数は特に限定的でなく、例えば、噴出孔の数の違う送気管を複数準備しておいて、気体の流量に応じて切り替えることもできる。
また、該噴出孔は、気体が三次元方向に噴出できるように設けることが好ましい。
【0038】
さらに、他の該気体注入機構として、植物栽培容器の側壁を二枚の板状部材からなる二重構造にして、人工土壌側の部材(内壁)に気体噴出孔を設けて、二枚の板状部材の間に形成される間隙に気体を供給して、該噴出孔から気体を人工土壌に注入する方式を採用することができ、さらに、送気管と二重構造方式を併用することもできる。
【0039】
該送気管は、注入する気体の種類によって、炭酸ガス、水素ガスおよび酸素ガスのそれぞれ専用のものを準備し使用することもできる。
また、該送気管は、人工土壌表面に略平行に人工土壌中に埋設されるが、収獲する植物の根の長さを想定し、また、根域まで行き渡るように気体の比重を考慮し、比重が低い水素ガスの場合は下部に、比重が水素ガスより高い炭酸ガスの場合にはより上部に、さらに送気管の噴出孔が根に向かうように、埋設することが好ましい。
さらに、該送気管を固定設置するのではなく、適時人工土壌表面から容器の底部に向けて上下に動かし挿入し使用することもでき、これらの固定と手動のいずれか一方あるいは双方を併用して、気体を注入することもできる。
【0040】
<気体供給手段>
次に、前記気体注入機構に気体を供給するための気体供給手段について説明する。
気体供給手段としては、特に限定されないが、例えば、所定の気体が圧入されたガスシリンダーが用いられる。
水素ガス、炭酸ガスおよび酸素ガスが充填された各ガスシリンダーは、圧力調整機と圧力計を設置されたものが好ましく用いられ、圧力を調整した上で気体が気体注入機構に供給される。
【0041】
ガス取扱い法を念頭に入れて、水素ガスについては0.1〜0.2MPa程度、炭酸ガスについては20リットル/分程度にそれぞれ調整して、供給することが好ましい。
また、供給時間は特に限定されず、長ければ長いほど効果を上げることができるが、連続的でなく間欠的に供給することもでき、日に一回10〜15分間程度の供給時間にしても十分効果を発揮することができる。
【0042】
本発明の植物栽培システムにおいて、注入する気体の所期の効果を発揮させるためには、先ず、注入する気体の種類、注入量および注入時間帯(開始時間と終了時間)を決めた上で、注入を開始させることが好ましい。
従って、気体の種類、注入量および注入時間帯を自動制御できる気体制御手段を、前記気体供給手段に内在させるかあるいは別途付属物として設置することが好ましい。
なお、気体供給手段から気体注入機構に気体を送るのに、チューブを用いるのが好ましく、例えばウレタン系樹脂のような、非化学反応性の素材からなるチューブが好ましく、特に活性が強い水素ガスについては、その素材の選定は慎重に行う必要がある。
【0043】
<気体の注入方法など>
気体の注入方法などについて説明する。
光合成に有効な水素ガスと炭酸ガスの注入は、太陽光放射並びに人工光放射による酸素発生型光合成の時間帯に行うのが効果的である。
水素ガスと炭酸ガスを同時に注入すると、両者が反応する可能性があって好ましくなく、比重の低い水素ガスを先に注入して培地中に十分拡散させ、その後に炭酸ガスを注入することが好ましい。
一方、夜間の照射光量が少ない酸素非発生型光合成時間帯には、酸素ガスを注入して、前述したように、二酸化炭素を発生させ活性酸素の生成防止に有効である。
なお、本発明の栽培システムにおいては栽培用の照射光としては、直射光でなく間接光の太陽光を、あるいは、例えば、蛍光灯並びにLEDなどの電気による人工光を用いることができる。
【0044】
本発明の栽培システムにおいては、人工土壌中に気体を注入する方法として、前記の気体注入機構と併用して、例えば、気体供給手段に繋がる前記チューブの先端部から、人工土壌全面に行き渡るように、気体を噴出させ表面から人工土壌中に注入させて、気体注入効果をより有効に発揮させることができる。
人工土壌表面に気体を供給する場合に限らず、気体注入機構によって人工土壌中を通って表面に流れ出る気体についても、人工土壌表面に溜まる気体が外部に漏れないように、栽培用容器の側壁を高くしておくことが好ましく、特に比重が大きい炭酸ガスについては有効である。
さらに、気体が外部に漏れないように、植物栽培容器の開放された上部を、例えば、前述の波長変換蛍光放射性シートなどで覆うこともできる。
【0045】
<農地上の人工土壌栽培における気体注入機構と気体供給手段>
気体注入機構として送気管を用いる場合には、囲み構造体に設けた貫通穴を通して送気管を設置し、また、二重構造体の場合には、囲み構造体の壁の少なくとも一部を二重構造にして、その内壁に噴出孔を設け二重構造の間隙に気体を流入させるやり方となり、その他の気体注入機構と気体供給手段などの条件については、植物栽培容器の場合と同様である。
【0046】
<給水>
本発明の植物栽培方法で行う給水について説明する。
本発明の植物栽培方法において、人工土壌を常時保水状態にしておく必要があり、そのために給水は欠かせない作業である。
前述したように、人工土壌に含まれる開放型気泡粒子の気泡が水を蓄える機能も有すると共に、開放型気泡粒子の材質自体の排水性および開放型気泡粒子間に形成される間隙が通水路となって排水し、その結果、供給される水をバランス良く排水と保水を行わせて、生長に有効な保水状態を維持している。
給水量は、限定されないが、1日に人工土壌1立法メートル当り18〜30リットル程度の割合で供給するのが好ましい。
給水方法として、特に限定的なものはないが、通常の散水機、スプリングクラーなどを用いて、人工土壌表面から行う。
【0047】
<活性水素水と追肥水溶液の使用>
また、植物の生育を一層促進させるのに、気体注入に合わせて、活性水素水及び/又は追肥水溶液(以後、活性水素水等ともいう)を供給することもできる。
具体的には、必要に応じて活性水素水等の貯蔵容器を準備し、気体注入用の前記送気管に活性水素水等を、気体と一緒にあるいは別時に流して人工土壌中に注入して行うか、あるいは給水と同様にして、活性水素水等を人工土壌表面から散布して行うこともでき、送気管を用いるやり方と併用することもできる。
【0048】
<遮光方法、ソーラーパネル、蛍光放射性シート>
本発明の植物栽培システムによって朝鮮人参を栽培する場合、従来法のような遮光率90〜95%の必要はなく、直射日光を避けさえすれば良い。
従って、遮光手段として、日除け用屋根とか遮光ネットなどを使用することができ、また、形成される遮光状態に比較的バラつきの少ないソーラーパネルを用いて、その日蔭で栽培することもできる。
特に、近年各地で太陽光発電が盛んに行われているため、そのソーラーパネル下の土地利用の意味から有効と考えられる。
また、ビニールハウス等の建屋内で栽培し、遮光手段として先述の波長変換蛍光放射性シートを用い、開放型栽培容器の開放された上部を覆って遮光することもできる。
【0049】
<本植物栽培システムの利点、纏め>
先述したように、従来の朝鮮人参の栽培方法によると、栽培期間が薬用で5年〜6年、食用でも2〜4年と長期間を要し、その結果、収穫後の土壌が疲弊してしまって連作が不可能であった。
本発明の植物栽培システムによれば、人工土壌を簡易に準備できる上に、食用の朝鮮人参の場合にはほぼ4ケ月以内の短期間で収穫することができ、また、収穫を終えた人工土壌は、追肥することによって連作ができるために、持続的な植物栽培が可能となる上に、ジンセノサイドの含有量の高い朝鮮人参を収穫することができる。
【0050】
また、本発明において人工土壌に注入した気体は、複合効果として、炭酸ガスは土壌殺菌とダニなどの殺虫の効果があり、水素ガスは、土壌殺菌と特に窒素系肥料の元肥と追肥の効力が増進された。
本発明は、朝鮮人参を主たる研究の対象として検討されたものであるが、本発明の新規の植物栽培システムによれば、朝鮮人参に限らず他の植物にも適用できることを確認した。
【0051】
<図面によるシステムの説明>
次に、本発明の植物栽培システムを図面に基づいて説明する。
先ず、本発明の植物栽培システムについて、上部開放型箱型の栽培容器を用い、気体注入機構として2本の送気管を用いる場合を例にとって説明する。
図1は外観図、
図2は
図1に表示のA−A線の断面図、および
図3はB−B線の断面図をそれぞれ示している。
植物栽培容器(1)は、板状部材からなる側壁部(2)、(3),(4)及び(5)と底部(6)とから構成され、人工土壌(7)が収容され、側壁部(2)に設けられた2つの貫通口(9)を通して、人工土壌(7)に送気管(8)が埋設される。
植物栽培容器(1)外部に設置の気体供給手段(10)から供給される気体は、チューブ(11)を介して送気管(8)に送られ、該送気管(8)に多数設けられた噴出孔(図示していない)から人工土壌(7)に注入されて、植物の根域に達して生長を促進させる。
【0052】
図4は、
図3における植物栽培容器(1)の人工土壌(7)の内部と底部(6)の構成を拡大した模式図である。
植物栽培容器の底部には、通水性部材(13)が固定され、その下側に漏水集積部材(14)が設置されている。
人工土壌(7)に含有させた開放型多孔質粒子(15)の間に形成される間隙を通って、水が通水性部材(13)の通水孔(16)から漏れ落ちる状態となる(人工土壌(7)に含有させる肥料は図示していない)。
【0053】
通水性部材(13)は人工土壌(7)の荷重によって、所々に下側に膨らみあるいは突起状態(以下、膨らみと総称する)を形成し、その膨らみ部を漏水集積部材(14)の凸部(例えば、蛇腹形状の鋭角部)が支え接し、前述の漏れ落ちる状態にある水が膨らみ部から該凸部を伝わって流れる。
該漏水集積部材(14)の下側に間隔をおいて、排水溝となる排水部材(19)を傾斜を持たせて設置し、漏水集積部材から流れてくる水を受けて、排水部材(19)上を流して排水される。但し、該排水部材(19)は本発明において必須ではない。
なお、送気管(8)の噴出孔(17)から噴出される気体は、開放型多孔質粒子(15)の間に形成される間隙を通って植物の根(18)に接触される。
【0054】
図5は、本発明の植物栽培システムを、農地上に形成した人工土壌に適用する場合の模式図である。
畝(20)を掘って盛り土(21)を造り、その上に人工土壌(22)が盛られ、該人工土壌(22)の周囲を囲むように囲み構造体(23)が設置されている。人工土壌(22)中には送気管(24)が埋設され、その噴出口から気体を噴出させて植物の根に供給される。
なお、注入気体の漏れ防止とか照射光量の調整などが必要な場合には、一方法として囲み構造体(23)の開放された上部をシートで覆うやり方があり、該シートとして、例えば、前述の波長変換蛍光放射性シートを用いることができる。
他の条件については植物栽培容器を用いる場合と同様である。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例および比較参考例によって具体的に説明するが、本発明はこの実施例および比較参考例によって限定されるものではない。
【0056】
<植物栽培システムの準備>
(箱型植物栽培容器の作製)
実験に用いる該箱型植物栽培容器として、送気管が2本のもの(容器Aという)、1本のもの(容器Bという)および送気管を設置しないもの(容器Cという)の3種類を準備した。
先ず、側壁部が縦50cm、横75cm、奥行き490cmの合板製で、底部に0.98mmメッシュ(目合)の樹脂製のフレキシブルな通水性部材(ダイオ化成(株)製、商品名:ダイオ強力サンシャインN−2220。巾93cm、長さ100m)を固定し、さらにその下側に10mmメッシュの金網を前記通水性部材にわずかな間隔をあけて設置固定して、容器Cを7つ作製した。
【0057】
次に、容器Cのうちの2つを使い、それぞれの側壁部を構成する縦50cm、横75cmの合板2枚のうちの1つに、底部から20cmの高さおよび両端から30cmの箇所に、直径約30mmの2つの貫通口を予め設けておく。
気体注入機構として使用する送気管は、気体を三次元方向に噴出可能とする多数の約100μ径の孔が設けられたポリエチレン製パイプ(トーメイ工業(
株)製。内径18mm、外径30mm)で、一端部を閉じたものが用いられる。
該パイプ2本をそれぞれ前記貫通口を通して容器内に設置し、端部を前記貫通口に固定して、容器Aを2つ作製した。
さらに、容器Cのうちの他の2つを使い、それぞれについて、容器Aに貫通
口を設けた同じ側壁部の合板の、底部から20cmの高さおよび両端から37.5cmの箇所に、予め、直径約30mmの貫通口1つを設けておき、容器Aの場合と同じパイプを1本用いた以外は、同様にして多孔パイプを設置して、容器Bを2つ作製した。
【0058】
こうして、容器Aと容器Bをそれぞれ2つ、容器Cを3つ準備し、岡谷市湊に設置された50KW太陽光発電パネル下に直射日光を避けるように2段棚に設置した。
さらに、各容器から3乃至5メートル離れた所に、いずれも圧力計と圧力調整器を備えた水素ガス、炭酸ガスおよび酸素ガスの各ガスシリンダーを設置し、容器の貫通口部から突出したポリエチレン製パイプの端部とをウレタン製のチューブで繋いで、本発明の植物栽培システムの準備を完了した。
【実施例1】
【0059】
1. 2立法メートル量の韓国産
パ−ライト(韓国Gungon Geotec社製)を開放型多孔質粒子として用い、これと120gの韓国産肥料(商品名:ZEM酵素パウダー)とをミキサーで混合し、得られた人工土壌を前記栽培容器Aに厚さが約35cmになるように収容し、ポリエチレン製パイプを人工土壌に埋設した。
次に、平均重量が約0.8g、根と茎を合わせた平均長さが約5cmの朝鮮人参の2年苗680本を、約7cmの間隔をあけて、ほぼ横列10本、縦列68本になるようにして2014年6月30日に植苗した。
【0060】
次に、7立法メートルの水素ガスシリンダーおよび30Kgの炭酸ガスシリンダーを用いて、水素ガスについては0.05Mpaの流量に、炭酸ガスについては毎分17〜20リットルの流量に調整した後、該パイプを通して人工土壌に注入した。注入時間は毎日午前中15分間程度であった。
また、栽培中毎日、1日にほぼ20リットル量の水を人工土壌表面に散布した。
酸素ガスシリンダーについては、日照状態が低くなった時間を見計らって、水素ガスシリンダーと切り替えるべく準備したが、結局、酸素ガスを注入せずに栽培を継続した。
以上説明したようにして朝鮮人参を栽培した。
【実施例2】
【0061】
0.6立法メートル量の韓国産パーライト(韓国Gungon Geotec社製)と0.6立法メートル量の昭和電工社製パーライトを開放型多孔質粒子として用い、これらと120グラムの韓国産肥料(商品名:ZEM酵素パウダー)をミキサーで混合し、得られた人工土壌を容器Aに収容する以外、実施例1と同様にして朝鮮人参を栽培した。
【実施例3】
【0062】
0.6立法メートル量の韓国産パーライト(韓国Gungon Geotec社製)と0.6立法メートル量の昭和電工社製パーライトを開放型多孔質粒子として用い、これらと120グラムの野菜専用ホウ素入り化成肥料((株)こうじや製、商品番号14−10−12−0.2)と混合し、得られた人工土壌を容器Bに収容する以外、実施例1と同様にして朝鮮人参を栽培した。
【実施例4】
【0063】
0.8立法メートル量の昭和電工社製パーライトと0.4立法メートル量の太平洋セメント社製パーライトを開放型多孔質粒子として用い、これらと120グラムの野菜専用ホウ素入り化成肥料((株)こうじや製、商品番号14−10−12−0.2)を混合し、得られた人工土壌を容器Bに収容する以外、実施例1と同様にして朝鮮人参を栽培した。
【0064】
<比較参考例1>
1.2立法メートル量の昭和電工社製パーライトを開放型多孔質粒子として用い、これと120グラムの韓国産肥料(商品名:ZEM酵素パウダー)とを混合し、得られた人工土壌を容器Cに収容する以外、実施例1と同様にして朝鮮人参を栽培した。
【0065】
<比較参考例2>
0.8立法メートル量の昭和電工社製パーライトと0.4立法メートル量の太陽セメント製パーライトを開放型多孔質粒子として用い、これらと120グラムの野菜専用ホウ素入り化成肥料((株)こうじや製、商品番号14−10−12−0.2)とを混合し、得られた人工土壌を容器Cに収容する以外、実施例1と同様にして朝鮮人参を栽培した。
【0066】
<比較参考例3>
0.4立法メートル量の太陽セメント製パーライトと0.2立法メートル量のゼオライトを開放型多孔質粒子として用い、これらと0.3立法メートル量の発酵牛糞、0.25立法メートル量の赤玉(細粒)および0.05立法メートル量のゲルマニウム含有黒雲母とを混合し、得られた人工土壌を容器Cに収容する以外、実施例1と同様にして朝鮮人参を栽培した。
【0067】
<収穫物の秤量>
植苗後3ヶ月半経った10月15日に、前記実施例と参考例において栽培した朝鮮人参の生長状況を確認して、本発明のシステムの効果を確認した。
各栽培容器の貫通孔を設けた側壁側から数えて、1〜10列目までにある50本の朝鮮人参を採集して秤量し、1)50本の合計重量(総重量)、2)根の部分の長さの平均値および3)茎の部分の長さの平均値を算出した。その結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<気体注入による効果:生長期間とジンセノサイド含有量>
表1の秤量結果を観ると、送気管2本用いて水素ガスと炭酸ガスを注入し行った実施例1と2の場合は、送気管1本の実施例3と4に比べて、総じて、総重量が大きく、根と茎がそれぞれ長く、前記気体の注入量が多い分生長が早いことを示している。
一方、前記気体の注入がない比較参考例1〜3の場合は、実施例1〜4に比べて、各秤量データが2割以上低く、また、総重量40gの苗50本の収穫時の総重量が、実施例1では68gに対して比較参考例1では45gで、後者では5g(0.1g/本)しか生長しておらず、本発明の気体の注入効果が極めた高いこと示している。
【0070】
総重量が60g程度に生長すると、通常、食用として市販できるレベルのものとして扱われている。
総重量が68gに生長した実施例1のものについて、ジンセノサイドの含有量を測定(日本食品分析センターによる)したところ、5.2%(5.2g/100g)という極めて高い数値となった。この値から、気体注入によって光合成が活性化されていることが推察される。
参考までに、広告宣伝資料に記載の、従来法で栽培された朝鮮人参のジンセノサイドの含有量を示す。
1)中国産製薬用オタネ人参 ・栽培期間:5〜6年 ・含有量:1.0%
2)韓国産高麗人参 ・栽培期間:6年 ・含有量:0.7%(日本薬局法の規定)
以上の結果は、本発明の栽培方法が、朝鮮人参の生長を促進するばかりでなく、朝鮮人参の有効成分の含有量も増加させる効果があることを示している。
【0071】
実施例で栽培した朝鮮人参は、通称2年もの、すなわち従来の栽培法では植苗から収穫までに2年程度要するものであるが、本発明によれば、3ヶ月半で食用として出荷可能までに生長し、栽培期間が約1/7までに短縮されたことになり、実に驚異的な結果である。
【0072】
<気体注入しないで
開放型多孔質粒子を用いて行う栽培>
比較参考例1〜3は、気体注入機構
を設けない栽培容器Cに、開放型多孔質粒子を50〜100容量%含有させた人工土壌を用いて行った実験例であるが、2年ものの朝鮮人参が3ヶ月半の栽培期間で、実施例1の収穫物の総重量68gに対して66%以上の大きさまでに生長している事実から、栽培期間がおそらく6〜12か月
程で実施例1と同程度の重量に成長して、出荷が可能になることが想定され、
従来法の2年間要する栽培期間が
約1/3〜1/2に短縮されることになる。
このような結果が得られたのは、開放型多孔質粒子を50〜100容量%の多量に含有させてなる人工土壌自体が、朝鮮人参の栽培に必要な通気性、保水性および透水性の3つの機能を高いレベルに有する
からであり、
開放型多孔質粒子の有用性に起因している。しかしながら、開放型多孔質粒子の使用と気体注入を併用する本発明の場合には、さらに栽培期間の短縮に極めて効果的で、従来法の2年間要する栽培期間が約1/7に短縮されることは、上述のとおりである。