(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481860
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】支持部材
(51)【国際特許分類】
F16H 61/00 20060101AFI20190304BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
F16H61/00
F16B5/02 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-156746(P2015-156746)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-36753(P2017-36753A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2017年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康介
(72)【発明者】
【氏名】中山 治
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹児
(72)【発明者】
【氏名】森田 光俊
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−313520(JP,A)
【文献】
特開2008−1225(JP,A)
【文献】
特開2003−92817(JP,A)
【文献】
特開2000−78721(JP,A)
【文献】
特開2004−208429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
F16B 5/02, 5/06
H02G 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材を支持して自動変速機に搭載される支持部材であって、
樹脂製の本体部と、
ボルトを介して前記自動変速機のボディに固定される金属製のプレートとを備え、
前記本体部は、前記プレートが装着される装着部を有するとともに、前記装着部内に突出し、前記プレートに対し前記装着部からの抜け出しを規制する弾性をもった弾性ロック部を有し、
前記プレートは、前記ボルトを挿通可能な挿通孔が貫通した平板状のプレート本体を有し、
前記弾性ロック部は、前記プレートが前記装着部に支持された状態で、前記プレート本体の側縁部に対し隙間をあけて対向し、前記隙間内で前記プレート本体の動きを許容しつつ前記プレートの抜け出しを規制する係止面を有することを特徴とする支持部材。
【請求項2】
導電部材を支持して自動変速機に搭載される支持部材であって、
樹脂製の本体部と、
ボルトを介して前記自動変速機のボディに固定される金属製のプレートとを備え、
前記本体部は、前記プレートが装着される装着部を有するとともに、前記装着部内に突出し、前記プレートに対し前記装着部からの抜け出しを規制する弾性をもった弾性ロック部を有し、
前記装着部は、前記プレートの装着方向に沿ったガイド溝を有し、前記ガイド溝が形成される側とは反対側の側面に、前記弾性ロック部が設けられていることを特徴とする支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線等の導電部材を支持して自動変速機に搭載される支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線を支持して自動変速機に搭載される支持部材(保持プレート)が開示されている。支持部材は、所定の形状に曲げ加工された金属製の本体部を有している。本体部は、円形に開口するボルト差し込み孔を有し、ボルト差し込み孔に差し込まれるボルトを介して、自動変速機のボディ(ケーシング)に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−199071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電線の組み付け性や加工性を考慮し、本体部を樹脂成形することが求められることがある。しかし、自動変速機の場合、高温油中での厳しい使用環境になることから、本体部が樹脂製になると、線膨張係数差によってボルトより本体部の変形量が大きくなり、ボルトが緩み易いという事情がある。これに鑑み、本体部に金属カラーをインサート成形によって一体的に取り付け、金属カラー内にボルトが差し込まれる構成にすることができる。しかし、金属カラーが切削加工で形成されていて本体部にインサート成形されるとなると、製造コストが高くつくという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、自動変速機に搭載される支持部材の製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明
の第1は、導電部材を支持して自動変速機に搭載される支持部材であって、樹脂製の本体部と、ボルトを介して前記自動変速機のボディに固定される金属製のプレートとを備え、前記本体部は、前記プレートが装着される装着部を有するとともに、前記装着部内に突出し、前記プレートに対し前記装着部からの抜け出しを規制する弾性をもった弾性ロック部を有
し、前記プレートは、前記ボルトを挿通可能な挿通孔が貫通した平板状のプレート本体を有し、前記弾性ロック部は、前記プレートが前記装着部に支持された状態で、前記プレート本体の側縁部に対し隙間をあけて対向し、前記隙間内で前記プレート本体の動きを許容しつつ前記プレートの抜け出しを規制する係止面を有するところに特徴を有する。
本発明の第2は、導電部材を支持して自動変速機に搭載される支持部材であって、樹脂製の本体部と、ボルトを介して前記自動変速機のボディに固定される金属製のプレートとを備え、前記本体部は、前記プレートが装着される装着部を有するとともに、前記装着部内に突出し、前記プレートに対し前記装着部からの抜け出しを規制する弾性をもった弾性ロック部を有し、前記装着部は、前記プレートの装着方向に沿ったガイド溝を有し、前記ガイド溝が形成される側とは反対側の側面に、前記弾性ロック部が設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
プレートが弾性ロック部によって装着部からの抜け出しを規制されるとともに、ボルトを介してボディに固定されるため、装着部に金属カバーをインサート成形する場合に比べ、コスト高になるのを抑えることができる。また、プレートと弾性ロック部との間に生じ得るガタ付きの範囲内でプレートが動き得るため、樹脂製の本体部と金属製のプレートとの間の熱膨張差を吸収することができる。
本発明の第2によれば、プレートの一方側をガイド溝側に位置させ、プレートの他方側を弾性ロック部側に位置させるようにして、プレートの取り付けを行うことができるため、弾性ロック部から過大な弾性反力を受けるのを防止することができ、取り付けの操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】自動変速機のボディに取り付ける前の支持部材の正面視方向の断面図である。
【
図3】自動変速機のボディに取り付けられた支持部材の正面視方向の断面図である。
【
図4】自動変速機のボディに取り付ける前の支持部材の側面視方向の断面図である。
【
図5】自動変速機のボディに取り付けられた支持部材の側面視方向の断面図である。
【
図6】自動変速機のボディに取り付けられた支持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施例>
本発明の実施例を
図1〜
図7によって説明する。実施例の支持部材10は、自動車の自動変速機に搭載される配線盤としての合成樹脂製の本体部20と、ボルト40を介して本体部20を自動変速機のボディ50(ケースを含む)に取り付けるための金属製のプレート60とを備えている。なお、以下の説明において、上下方向は、自動車に搭載された状態を基準としている。
【0011】
図1に示すように、本体部20は、前後方向(長さ方向)に延出する板状部材であって、上面に電線80を支持する平坦な電線支持面21を有している。本体部20の外周部は、電線支持面21の両側を区画するリブ状の区画部22で区画されている。
【0012】
本体部20の前後両端部には、装着部23が設けられている。装着部23は、区画部22に連続して延出する左右一対の側壁24、25と、両側壁24、25と直交し、電線支持面21との間を仕切る端壁26とを有している。装着部23は、端壁26が対向する側と上下両側とに開放され、上方の開放部分を通して、両側壁24、25と端壁26との間に、プレート60が挿入されて保持される。
【0013】
図2に示すように、両側壁24、25のうちの一方の側壁24は、先端側のガイドリブ27と端壁26との間に、上下方向に延出するガイド溝28を有している。また、
図4に示すように、一方の側壁24は、ガイド溝28の上端開口のうち、端壁26寄りの半分を閉塞する上側覆い部31と、ガイド溝28の下端開口のうち、先端寄りの半分を閉塞する下側覆い部32とを有している。上側覆い部31及び下側覆い部32は、いずれも前後方向に延出するリブ状をなし、互いに前後に位置ずれして配置されている。
【0014】
図4に示すように、ガイドリブ27は、上下方向に延出するリブ状をなし、下端で下側覆い部32と一体に連結されている。上側覆い部31は、端壁26の上端と一体に連結されている。なお、ガイド溝28には、プレート60の後述する立上片62が挿入される。
【0015】
図1に示すように、両側壁24、25のうちの他方の側壁25は、先端寄りの位置で内側に張り出す門型(逆U字形)の枠部33を有し、端壁26寄りの下端部で枠部33と並び合う位置に図示しない下支え部を有している。枠部33の上辺部分は、装着部23において一段高くなるように配置されている。
【0016】
図2に示すように、他方の側壁25は、枠部33の上辺部分から下方へ片持ち状に突出する突片状の弾性ロック部34を有している。弾性ロック部34は、ガイド溝28の先端寄りの半分と対向する位置に配置され、枠部33の上辺部分を支点として内外に撓み変形可能とされている。枠部33内には、弾性ロック部34が対向する側面部分との間に、弾性ロック部34の撓み動作を許容する撓み空間35が確保されている。また、弾性ロック部34は、下方へ行くに従って内側に傾斜するテーパ状の斜面36と、斜面36の下端に連なり、装着部23の下端開口に上方から臨む係止面37とを有している。
【0017】
プレート60は、
図2に示すように、断面L字形の板材であって、平板状のプレート本体61と、プレート本体61の一方の側縁から立ち上げられる立上片62とを有している。このプレート60は、切削加工によらず、金属板をプレス加工で打ち抜いた後、曲げ加工することにより形成されるものである。
【0018】
プレート本体61には、ボルト40を挿通可能な円形の挿通孔63が貫通して設けられている。
図1及び
図7に示すように、プレート本体61の他方の側縁は、装着部23の下支え部に支持される張出片64を有し、且つ、先端寄りの位置にて張出片64と段付き状に連なる前後方向に沿ったストレート縁部65を有している。
【0019】
立上片62は、矩形板状をなし、ほぼ全体がガイド溝28内に収容される。
図2に示すように、立上片62の基端部66は、プレート本体61に対し曲面状に連なる形状になっている。
【0020】
次に、本実施例の作用効果を説明する。
組み付けに際し、本体部20の装着部23に、上方からプレート60が挿入される。このとき、プレート本体61の立上片62側の側縁部がやや下向きとなるように、プレート60が傾けられ、その状態からプレート60が引き降ろされる。すると、プレート本体61のストレート縁部65が弾性ロック部34の斜面36を摺動し、弾性ロック部34が撓み空間35に撓み変形させられる。また、プレート60の引き降ろしの過程で、プレート本体61が次第に水平となるように徐々に姿勢矯正され、ガイド溝28に立上片62が嵌り込む。
【0021】
こうしてプレート60が装着部23に正規に挿入されると、弾性ロック部34が弾性復帰してプレート本体61のストレート縁部65に上方から係止可能となり、且つ、張出片64が下支え部に下方から支持される。ここからプレート60が引き上げられると、プレート本体61のストレート縁部65に弾性ロック部34が当接して、プレート60のそれ以上の浮き上がり(抜け出し)が規制される。
【0022】
図7に示すように、プレート60が下支え部と下側覆い部32とに載置して支持された状態では、弾性ロック部34の係止面37がプレート本体61のストレート縁部65に若干の隙間をあけて対向して配置され、且つ、上側覆い部31が立上片62の上端に若干の隙間をあけて対向して配置される。また、ガイド溝28を区画する端壁26とガイドリブ27との間に、立上片62が前後方向に遊びをもって配置される(
図4を参照)。さらに、両側壁24、25間に、プレート60全体が左右方向に遊びを持って配置される(
図2を参照)。したがって、プレート60は、本体部20の装着部23に対し全方位に遊動可能な状態で装着される。
【0023】
続いて、自動変速機のボディ50に支持部材10を取り付ける。取り付けに際し、ボディ50の上面に突設されたボス部51の上端面に装着部23が載置され、ボス部51のねじ孔52に、装着部23に装着されたプレート60の挿通孔63が連通するように位置合わせされる。このとき、装着部23に対してプレート60が動き得るため、組み付け時の寸法誤差を吸収することができる。
【0024】
次いで、プレート本体61の挿通孔63に上方からボルト40が挿通され、ボルト40の先端部がねじ孔52にねじ込まれる。すると、
図3及び
図5に示すように、プレート本体61がボス部51の上端面とボルト40の頭部41との間に上下方向(板厚方向)に緊密に挟まれ、これによって、プレート60がボディ50に固定され、さらにプレート60を介して本体部20がボディ50に取り付けられる。なお、ここで言うボルト40は、ドライバーで締め付けられる小ねじ等のねじ部材を含む概念である。
【0025】
ところで、仮に、上記プレート60の代わりに、切削加工で形成される金属カラーが用いられ、本体部20に金属カラーが一体にインサート成形されるとすると、金属カラー自体の製造コストが高価であるのに加え、インサート成形の金型設備が必要となるため、全体の製造コストが高くなるという事情がある。
【0026】
その点、本実施例によれば、プレート60がプレス加工で形成され、本体部20が通常の樹脂成形(射出成形)で形成されるに過ぎないため、全体の製造コストを低く抑えることができる。また、プレート60が本体部20の装着部23に対し所定のガタ付きをもって装着されるため、金属製のプレート60と合成樹脂製の本体部20との間の線膨張係数差に起因し、自動変速機の高温油中下において、本体部20の変形量がプレート60の変形量より大きくなっても、ガタ付きの範囲内でプレート60の変形量を吸収することができる。
【0027】
また、装着部23にはガイド溝28と弾性ロック部34が設けられ、プレート60の一方側(立上片62側)がガイド溝28側に位置し、プレート60の他方側(張出片64、ストレート縁部65側)が弾性ロック部34側に位置するようにして、プレート60の取り付け作業がなされるため、弾性ロック部34から不必要に大きな弾性反力を受けることがなく、取り付けの操作性に優れる。
【0028】
<他の実施例>
本発明の他の実施例を簡単に説明する。
(1)本体部は、必ずしも板状部材でなくてもよく、例えば、ブロック状部材であってもよい。
(2)本体部の電線支持面を有する溝底部分には、自動変速機のボディの形状に沿うように、高さ方向の段差が設けられていてもよい。
(3)ボルトの頭部とプレートとの間にワッシャ等の座金が介在する構造であってもよい。
(4)装着部内に、弾性ロック部が遊動するスペースが積極的に設けられるのではなく、弾性ロック部の弾性構造に起因して弾性ロック部とプレートとの間に自然に生じる隙間の範囲で、プレートが動き得るだけであってもよい。
(5)弾性ロック部は装着部の左右両側面に対をなして設けられるものであってもよく、弾性ロック部の個数、配置は上記実施例から変更可能である。
(6)支持部材は、電線以外の導電部材として、例えば、バスバーを支持するものであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…支持部材
20…本体部
23…装着部
28…ガイド溝
34…弾性ロック部
50…ボディ
60…プレート
80…電線
90…ボルト