【実施例1】
【0037】
図1,に示す本発明の第1実施例の保持部材1は、型鋼4の下フランジ41に取り付けられる取付部11と、該取付部11の上方に位置して側方が開放する溝状部13を備える包持部12とを有してなる構成であり、前記包持部12は、
図2の左側に示すように溝状部13が弾性に抗して拡開可能であって、且つ弾性に抗して溝状部13が型鋼4側へ傾倒可能である。
【0038】
先に、
図1に示される保持部材1以外の部材(型鋼4、化粧カバー材3、補助部材2、建材板5)について説明すると、まず
図1に示す型鋼4は縦方向に配されるウエブ42の両端(上下端)にフランジ43,41を有するC型鋼であって、先端に上向き片411を備える下フランジ41は図面右方へ延在している。
【0039】
また、
図1(d)〜(f)に示す化粧カバー3は、型鋼4の下フランジ41及び保持部材1の取付部11を下方側から被覆する部材であって、底面である化粧面31の左右が立ち上がる断面略樋状の長尺材である。先端(上端)が折り曲げられた一方の側面(右側面)32は、前記保持部材1の取付部11の外側に沿って前記取付部11の下フランジ41への取付を補助する役割も果たし、他方の側面(左側面)33の外側には補助部材2を取り付けるための複数の隆起部331が設けられている。
【0040】
さらに、
図1(g)〜(i)に示す補助部材2は、前記型鋼4のウエブ42に沿う縦片部21と、該縦片部21の下端から型鋼4の下フランジ41と背中合わせ状に延在するL字状の支持片部22とを備える。即ちこの支持片部22の上端は、前記型鋼4の下フランジ41の先端に形成された上向き片411の上端をほぼ同じ高さになるように形成されている。
また、前記縦片部21の上端には、型鋼4の上フランジ43に掛合する掛合片23が設けられ、その高さの中程には、複数の矩形状の切り込み空部211を形成し、該切り込みによる切り起こしにて外側へ突出する押さえ片212が複数箇所に形成されている。
【0041】
なお、
図1(j)は、意図的に保持部材1を配設していない状態を示すものであって、前記化粧カバー3の他方の側面33に形成された隆起部331が前記補助部材2の切り込み空部211に係合するので、間接的にこの補助部材2の型鋼4への取付を補助することが示されている。
しかし、この状態では建材板5の端部51xは、それぞれ型鋼4の下フランジ41(上向き片411)と補助部材2の支持片部22の上端に支持されているに過ぎないので、設置安定性が低い。
また、同図に示す建材板5は、隣り合う型鋼4,4間に架け渡されるように配設されるボード状の天井材であって、一方側の側方に位置する端部51xは、その表面から略垂直状に断裁されたものである。
【0042】
この第1実施例の保持部材1は、図示するように極めて短幅のピース材であって、C型鋼である型鋼4の長さ方向に所定間隔にて複数取り付けられるものである。また、この保持部材1には、型鋼4を挟んで隣り合う他方側の建材板(5)の端部(51y)を支持する支持部を備えない構成であるから、前記支持片部22を備える補助部材2と併用することにより、全ての建材板5を支持するものである。
【0043】
この第1実施例における取付部11は、図示するように型鋼4の下フランジ41及びその先端に形成された上向き片(リップ)411を包むコ字状に形成され、その上方には溝状部13を備える包持部12が連続的に形成されている。
【0044】
また、この第1実施例における溝状部13は、上片132と下片131との間隔が建材板5の端部51xの厚みより広く形成され、
図2の右側に示すように建材板5の端部51xを緩く保持するものである。また、この溝状部13の上片132の先端には、上方へ湾曲する案内片14が連続的に設けられ、建材板5の端部51xを溝状部13内に導く役割を果たす。即ち同図の左側に示すように外側下方(図面では右側下方)から臨ませる建材板5の端部51xが、この案内片14を突き上げ、弾性に抗して溝状部13が拡開されると共に弾性に抗して包持部12(溝状部13)を型鋼4側(この場合は左側)へ傾倒させる。
【0045】
図2は、前記各部材1〜3を用いて前記型鋼4,4間に建材板5を保持する構造の施工手順の一例を示すものであって、
図2に示すように屋根構造を構成する屋根断熱材6の下面に所定間隔にてC型鋼である型鋼4が取り付けられており、図面左側から保持部材1を、図面下方から化粧カバー3を、図面右側から補助部材2を臨ませてそれぞれ型鋼4に取り付ければよい。
手順としても、始めに保持部材1を型鋼4へ取り付け、その後に化粧カバー3を取り付け、最後に補助部材2を取り付けるようにすればよい。
【0046】
保持部材1の取付部11の内面側には、図示するように仮止め用の両面テープ111等を添設していることが望ましく、該両面テープ111は型鋼4の下フランジ41の上向き片411の外側に取り付けられる(接着される)。この状態で、保持部材1の溝状部13は型鋼4の開口内部に位置するものとなる。そのため、仮に両面テープ111による接着がなくても、保持部材1の重心は型鋼4の開口部内に位置するため、安定に取り付けられるが、その後に建材板5を取り付ける際にこの保持部材1が外れることがないように両面テープ111にて接着される。
【0047】
続いて化粧カバー3を取り付けるが、前述のようにその一方の側面(右側面)32は、前記保持部材1の取付部11の外側に沿うので、自身の取付と共に前記取付部11の下フランジ41への取付を補助する(脱離を防止する)役割を果たす。
また、この化粧カバー3の他方の側面(左側面)33は、型鋼4のウエブ42に沿う状態で取り付けられるので、次の工程にて補助部材2を取り付ける際に、その縦片部21とウエブ42との間に挟着状に取り付けられるものとなる。
【0048】
その後、補助部材2を取り付けるが、前述のように縦片部21の上端に設けた掛合片23を型鋼4の上フランジ43に掛合させると共に、前記化粧カバー3の複数の隆起部331を切り込み空部211にそれぞれ係合させる状態で位置合わせを行い、側方(左方)から固定ビス2bを打ち込んで型鋼4のウエブ42に取り付けている。
この工程では、前記固定ビス2bによりこの補助部材2を固定するが、その縦片部21は前記化粧カバー3の他方の側面33を介して型鋼4のウエブ42に沿っているので、この補助部材2の取付と共に前記化粧カバー3も型鋼4に一体的に固定される。
加えて前記化粧カバー3は、前述のように一方の側面32が、前記保持部材1の取付部11の外側に沿う構成であるため、この化粧カバー3の固定により、前記保持部材1も一体的に型鋼4に取り付けられる。
結局のところこの工程では、単に補助部材2のみが固定ビス2bにて型鋼4に固定されるばかりでなく、それによって前記化粧カバー3も一体的に固定され、さらにそれにより前記保持部材1も一体的に固定されるものである。
【0049】
そして、
図2の左側に示すように外側下方(図面では右側下方)から臨ませる建材板5の端部51xが、保持部材1の案内片14を突き上げるように押圧する(=押圧力を与える)と、弾性に抗して溝状部13が拡開されると共に弾性に抗して包持部12(溝状部13)が型鋼4側(この場合は左側)へ傾倒される。
この状態で、建材板5の他端側(右側端)を持ち上げるように回動させ、同図で点線で示すように略水平状とした時点で建材板5の他端(右端)を同図の右側に示す型鋼4(補助部材2)に当接するように位置調整すると、その分、建材板5の一方(左側)の端部51xも右側へスライド状に移動し、前記押圧力が解除されるため、保持部材1の包持部12(溝状部13)は当初の形状に弾性回復し、溝状部13に建材板5の端部51xが包持され、
図2の状態を得る。
【0050】
このように施工された
図2の保持構造では、建材板5の一方(左側)の端部51xは、保持部材1の溝状部13に包持され、建材板5の他方(右側)の端部51yは、補助部材2の支持片部21に突き合わせ状に支持される状態となる。したがって、溝状部13は、常に建材板5の端部51xを押さえている(圧接している)ものではないが、地震などによる何らかの負荷が掛かった際にはこの端部51xを押さえる役割を果たす。
また、建材板5の一方(左側)の端部51xの上方には、保持部材1の案内片14の下端が近接状に臨んでいるため、この案内片14の作用(=押さえ片)により、前述の端部51xを押さえる役割はより確実に果たされるものとなる。
さらに、建材板5の他方(右側)の端部51yの上方にも、補助部材2の押さえ片212が臨んでいるため、この押さえ片212の作用により、地震などによる何らかの負荷が掛かった際に他方側の端部51yを押さえる役割が果たされる。
【0051】
図3に示す第2実施例の保持構造は、建材板5Bとして、左右側方に位置する端部51bx,51byを、下面側を切り欠いた段状に形成したものであって、この端部51bx,51byの厚みが薄くなった分だけ、それを包持する保持部材1Bの溝状部13b(包持部12b)の間隔も小さくした。それ以外の部材等については全て前記第1実施例と同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
この第2実施例では、建材板5Bの端部51bx,51byを段状に形成したので、型鋼4の上向き片411に端部51bが載置され、該上向き片411に切り欠き端面が当接する状態で保持され、建材板5Bは安定に型鋼4.4間に保持される。さらに、この建材板5Bとして、前記第1実施例よりも厚いものを用いることができるため、断熱効果等も向上させることができる。
【0053】
図4に示す第3実施例の保持構造は、型鋼4Cは縦方向に配されるウエブ44の両端(上下端)にフランジ46,45を有するZ型鋼であって、先端に上向き片451を備える下フランジ45は図面右方へ延在している(上フランジ46は左方へ延在している)。この型鋼4Cは、屋根構造を構成するコンクリート躯体6Cにアンカー61を打ち込んで吊り下げ状に支持させたものである。
また、この第3実施例では、縦片部21cを短く形成したピース状の補助部材2Cを用い、保持部材1B及び建材板5Bについては、前記第2実施例と同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
この第3実施例では、Z型鋼4Cのウエブ44に取付用のスリットを形成することにより、前記補助部材2Cの掛合片23cを該スリットに挿着して取り付けることができる。そのため、前記補助部材2Cを型鋼4Cの長さ方向に複数取り付ければよい。
【0055】
図5に示す第4実施例の保持構造は、保持部材1Dの溝状部13dの上片132dの先端に、上方へ湾曲する案内片14dが連続的に設けられている構成では、前記第2実施例の保持部材1Bと同様であるが、この溝状部13dは上片132dと下片131dとの間隔が建材板5Bの端部51bxの厚みより狭く形成されている点で相違する。
【0056】
即ち比較のために示した同図の第2実施例では、上片132と下片131との間隔が建材板5Bの端部51bxの厚みより広く形成されているので、端部51bの表面部には上片132は当接していない。
これに対し、この第4実施例では、上片132dと下片131dとの間隔が建材板5Bの端部51bxの厚みより狭く形成されているので、端部51bxの表面部に上片132dが常に弾性的に当接しており、取付安定性が極めて高いものとなる。
【0057】
このように第4実施例の保持部材1Dは、施工の際に弾性に抗して拡開させた溝状部13dが、建材板5の端部51bxに上下方向から圧接しているので、建材板5の端部51bxをより安定に型鋼4,4間に保持することができる。
【0058】
図6に示す第5実施例の保持部材1Eは、建材板5の一方の端部51xを包持して型鋼4に取り付けるばかりでなく、型鋼4を挟んで隣り合う建材板5の他方の端部51yを突き合わせ状に支持する支持部15eを備える態様であって、前記補助部材(2)を必要としない。
この保持部材1Eは、取付部11eが下フランジ41の全てを下方から覆う略樋状であり、この取付部11eの上方に略矩形状の溝状部13eを備える包持部12eが連続的に形成されている。なお、図中、1mは、取付部11eを型鋼4に固定するための横ビスである。
【0059】
また、この第5実施例における溝状部13eは、上片132eと下片131eとの間隔が建材板5の端部51xの厚みより僅かに小さく(ほぼ同一に)形成され、
図6(d)の左側、即ち
図6(e)に拡大して示すように建材板5の端部51xを包持する。更に、この溝状部13eの上片132eの先端には、斜め上方へ向く案内片14eが設けられ、建材板5の端部51xを溝状部13e内に導く役割を果たす。
【0060】
図6は、この第5実施例における取付補助材7であって、前記第1実施例における補助部材2とは異なり、建材板5の取付を補助する部材であって、型鋼4を挟んで隣り合う建材板5の他方の端部51yの上面に沿う水平状片711を備えるものである。
即ちこの取付補助材7は、
図6にも拡大して示すように型鋼4のウエブ42の外側に沿う縦面部71の上下端に、フランジ43,41に係止状に沿うフランジ状部72,72を備える略コ字状であって、縦面部71には切り起こしにて略水平状に外側へ延在する水平状片711が形成され、その下方部分の内面側には仮止め用の両面テープ712が添設されている。
【0061】
この第5実施例の保持部材1E及び前記取付補助材7を用いた保持構造は、以下の手順にて施工することができる。
まず、前記取付補助材7を前記両面テープ712にて前記型鋼4のウエブ42の外側に沿うように仮止めする。
次に、仮止めした取付補助材7の水平状片711に、建材板5の端部51yの上面が当接するように配設し、下方から縦ビス1nを打ち込んで前記水平状片711に建材板5を吊り固定状に仮固定する。
続いて、前記保持部材1Eを下方から臨ませ、その樋状の取付部11eが型鋼4の下フランジ41を下方から覆い、溝状部13eが型鋼4の(開口)内部に位置するように配し、側方(左方)から横ビス1mを打ち込んで型鋼4のウエブ41に固定する。
なお、この保持部材1Eは、支持部15eが、建材板5の他方の端部51yの下面に沿うように固定するので、建材板5は、他方の端部51yが上下から保持される状態となるが、一方の端部51xを略水平状より僅かに上方へ持ち上げて以下の操作を行うことに支障はない。
そして、建材板5の一方の端部51xを溝状部13eへ挿着するが、その際、僅かでも端部51xにて案内片14eは左方へ突き上げられ、弾性に抗して溝状部13eは拡開されると共に弾性に抗して包持部12e(溝状部13e)は型鋼4側(この場合は左側)へ傾倒される。
端部51xの溝状部13eへの挿着が完了すると、包持部12e(溝状部13e)は当初の形状に弾性回復し、建材板5は略水平状に型鋼4,4間に保持されるものとなり、端部51yの端面は、取付補助材7の縦面部71に当接するように位置調整され、
図6(d),(e)の状態を得る。
【0062】
このように第5実施例の保持部材1Eは、建材板5の一方の端部51xを包持して型鋼4に取り付けるばかりでなく、型鋼4を挟んで隣り合う建材板5の他方の端部51yを支持する支持部15eをも備えているため、実質的にこの部材(1E)のみで全ての建材板5を型鋼4,4間に保持することができる。
【0063】
また、この第5実施例に用いられた前記取付補助材7は、建材板5の配設時にはその取付を補助する役割を果たし、建材板5の取付後には、他方の端部51yを包持する役割を果たす。即ちその水平状片711にて他方の端部51yの上面を押さえるので、この端部51yは上下から、即ち水平状片711と支持部15eとの間に挟まれて安定に突き合わせ状に支持(包持)されるので、この水平状片711は押さえ片としての役割も果たす。
【0064】
図7に示す第6実施例の保持部材1Fは、2つのC型鋼を背中合わせ状に接続して用いた型鋼4Fに取り付けるものであって、前記第5実施例の保持部材1Eと同様に建材板5の一方の端部51xを包持するばかりでなく、型鋼4Fを挟んで隣り合う建材板5の他方の端部51yを突き合わせ状に支持する支持部15fを備える態様である。そのため、取付部11fが一面状に連なる下フランジ41,41の全てを下方から覆う横長の略樋状である以外は前記第5実施例と同様であって、その包持部12f、溝状部13f(上片132f,下片131f)、案内片14f、及び支持部15fは、前記第5実施例における包持部12e、溝状部13e(上片132e,下片131e)、案内片14e、及び支持部15eとほぼ同様である。
【0065】
したがって、この第6実施例の保持部材1F(及び前記取付補助材7)を前記型鋼4Fに取り付ける
図7に示す保持構造も、前述の第5実施例における施工方法と全く同様の手順にて施工することができる。
また、この第6実施例においても、前述の第5実施例と全く同様の効果を奏することができる。
【0066】
この第6実施例は、前述のように2つのC型鋼を背中合わせ状に接続した型鋼4Fからなる母屋に対して建材板5を取り付けたものと解釈することもできるし、例えば前記第5実施例のようにC型鋼4の下フランジ41が同一方向に延在するように配設されている母屋の一部に存在する、C型鋼を背中合わせ状に組み合わされて取り付けられている箇所における態様と解釈することもできる。