(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平面部材は、飽和フルオロアルキル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基、長鎖アルキル基などの官能基をもつ物質による保油層の形成による表面処理、フィルムのラミネートによる表面処理、又は、プラズマ、反応性ガス、UV光等による表面処理が施されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の油滴吐出器検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)実施形態の概要
検査装置1は、ノズル5(液滴吐出器)からガラス板xyテーブル6に設置されたガラス板8(平面部材)に対して液滴15を複数回吐出する。
なお、検査装置1は、吐出のたびにガラス板8を移動させ、着滴した液滴15が重ならないようにする。
検査装置1は、このようにガラス板8に着滴した液滴15をガラス板8の裏側からカメラ10で撮影し、その画像から各々の着滴位置を解析する。
そして、検査装置1は、液滴15を着滴させる目標点と実際に着滴(着弾)した位置との誤差を計算し、ノズル5から吐出した液滴15がどちらの方向にどの範囲にどの程度ばらつくかを統計的に計算する。
着滴した液滴15の撮影は、液滴の吐出毎に着滴した液滴を撮影する場合、所定数の液滴を吐出した後に各液滴毎に撮影する場合、所定数の液滴を吐出した後に複数(全てを含む)の液滴を纏めて撮影する場合、のいずれでもよい。
【0011】
(2)実施形態の詳細
図1(a)は、第1実施形態に係る検査装置1を説明するための模式図である。
検査装置1は、液滴吐出器検査装置として機能し、ノズル検査部2とコンピュータ3を用いて構成されている。
検査装置1は、例えば、ノズル5の製造メーカがノズル5の精度を検査したり、ノズル5の購入を希望するユーザが購入前に精度を評価したり、あるいは、ノズル5を購入したユーザが使用前にノズル5の精度を検査したりするのに用いることができる。
【0012】
ノズル5は、高価な精密機器であり、また、製造メーカが通信の不便な海外メーカである場合もあるため、ノズル5のユーザにとって検査装置1で精度を検査することは非常に重要である。
また、後述するように、検査装置1を製造ラインに組み込んで、製造ラインの一部としても使用することができる。
ここで、ノズル5は、目標点に向けてノズルから液滴を吐出する液滴吐出器として機能している。
【0013】
ノズル検査部2は、筐体4とノズル固定部7を備えている。
筐体4は、内部に後述するカメラを内蔵する空洞部を有する箱形形状をしている。
筐体4の上面には、ガラス板xyテーブル6が形成されており、また、図示しない支持機構によりノズル固定部7をガラス板xyテーブル6の上方に保持している。
筐体4の上面には、適当な位置を原点とし、鉛直上方にz軸、水平長手方向にx軸、水平短手方向にy軸が右手系を形成するように設定されている。
【0014】
ノズル固定部7は、ノズル5の吐出方向を鉛直下方(−z方向)に向けてノズル5を着脱可能に固定・保持する。
ノズル固定部7は、コンピュータ3によって制御される数値制御系(図示せず)によってz方向に移動可能である。これにより、検査装置1は、ノズル5の高さを数値制御することができる。なお、治具によって手動でz方向に移動するように構成することもできる。
このように、ノズル5は、内壁で囲まれており、ノズル5近傍の空間が気流による外乱に対して隔てられている。このため、外気により汚染したり、液滴15が気流により偏向するのを防ぐことができる。
【0015】
ガラス板xyテーブル6は、液滴の非塗布面を構成する平板部材であるガラス板(スライドガラス)を水平に着脱可能に固定・保持する。
ガラス板xyテーブル6は、コンピュータ3によって制御される数値制御系(図示せず)によってx方向、及びy方向に移動可能である。これにより、検査装置1は、ガラス板xyテーブル6に設置されたガラス板8のxy平面上での位置を制御することができる。
【0016】
以上のように、ノズル固定部7とガラス板xyテーブル6が移動可能に構成されているため、検査装置1は、数値制御によって、ノズル5の先端(吐出口部分)をガラス板に対してx方向、y方向、及びz方向に相対的に数値制御にて移動することができる。
【0017】
コンピュータ3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、インターフェースなどを用いて構成されている。
CPUは、記憶装置などに記憶されたプログラムに従って、各種の情報処理や制御を行う。
本実施形態では、記憶装置に記憶したプログラムをCPUで実行して、ノズル検査部2の数値制御、ノズル5による液滴の吐出制御、液滴の撮影、撮影した画像の解析、及び液滴着滴位置の統計処理などを行う。
【0018】
ROMは読み取り専用メモリであって、コンピュータ3が動作する際の基本的なプログラムやパラメータなどが記憶されている。
RAMは、読み書きが可能なメモリであって、CPUが動作する際のワーキングメモリを提供する。
記憶装置は、ハードディスクなどの記憶媒体を用いて構成されており、コンピュータ3を動作させるプログラムや、撮影した画像データ、統計処理結果などを記憶する。
【0019】
インターフェースは、ノズル検査部2の数値制御系、ノズル5の吐出制御系、カメラなどの電子制御手段を信号線でコンピュータ3に接続する。コンピュータ3は、当該信号線を介してノズル検査部2の数値制御、ノズル5の吐出制御、カメラによる撮影及び画像データの受信を行うことができる。
【0020】
なお、図示しないが、インターフェースには、キーボード、マウス、スピーカ、モニタ画面、プリンタなども接続されている。
モニタ画面には、検査操作画面やカメラによる画像、検査結果などの情報が表示され、作業者は、これに対してキーボードやマウスから検査に必要な操作を入力したり、検査結果を確認したりできる。
スピーカは、例えば、検査の開始・終了などを音声にて作業者に通知し、プリンタは検査結果をプリントアウトする。
【0021】
図1(b)は、ノズル検査部2のより詳細な構成を説明するための図である。
ノズル検査部2は、非接触式ディスペンサ吐出ノズルから液滴を吐出し、被塗布面上に液滴が着弾する位置を計測する液滴着弾位置測定装置を構成している。
ノズル5は、例えば、円筒、又は円錐形状を有する非接触式ディスペンサであり、先端の単穴から液滴を軸線方向に吐出する。
【0022】
ノズル5は、ノズル固定部7により、液滴の塗布対象であるガラス板8の上方に所定距離をおいて、吐出方向が鉛直下方向となるように保持されている。
これにより、ノズル5は、ガラス板8の上面と非接触で対向しており、液滴15をガラス板8に設けられた目標点(液滴15が設計上着滴する目標位置)に吐出する。
【0023】
ノズル5の先端から着滴の目標点までの距離が小さいほど液滴の着滴精度(着弾精度)が向上する。しかし、液滴の対象である機械部品との干渉をさけるためには、ノズル5の先端から目標点までの距離は大きい方がよい。そのため、後述の検査により両者の兼ね合いで最適な距離が探索される。
なお、本実施形態では、液滴15の液体を腕時計用の機械油とし、ノズル5は、油滴を吐出するものとする。このように、液滴吐出器は、液滴として油滴を吐出する。
【0024】
ガラス板xyテーブル6は、筐体4の上面の所定領域に設けられ、ガラス板8が載置・固定されている。
このような構成により、ガラス板8と筐体4は、下部が開放された略断面コ字状に形成されており、ガラス板8の表面は、ノズル5と対向して液滴15を受ける被塗布面として機能している。
【0025】
ガラス板8は、液滴15の着滴を受ける平面部材であって、ガラス板xyテーブル6とともに数値制御によってx方向、及びy方向に移動する。
本実施形態では、着滴した液滴15を下方から撮影するほか、液滴15として油滴を用いるため、液滴15を着滴させる平面部材として透明性及び耐溶剤性を有する材料であるガラス板を用いた。
このように、平面部材は、液滴の陰影が透過する透過部材で構成されるとともに、水平に配設されている。
【0026】
なお、これは透明性及び耐溶剤性を確保する観点から無機材料としてガラス板が好ましいためであり、部材を限定するものではない。
例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロレンフィルム等の透明な樹脂フィルムなどの有機材料を好適に用いることができる。
【0027】
後述するように、ガラス板8の上面には、コンピュータ3によって液滴15を着滴させる目標点が設けられる。
そして、ノズル5が目標点に液滴15を吐出して着滴すると、コンピュータ3の制御によりガラス板xyテーブル6が所定量移動し、これにともなってガラス板8も移動し、未着滴の次の目標点がノズル5の吐出口に対向するようになっている。
【0028】
このように、液滴吐出器(ノズル5)は、平面部材(ガラス板8)上の目標点に向けて液滴を吐出している。
また、ガラス板xyテーブル6は、液滴吐出器と撮影手段(後述のカメラ10)に対する、当該平面部材の平面方向の位置を、所定の量だけ相対移動させる移動手段として機能しており、当該移動手段は、液滴吐出器による液滴の吐出ごとに相対移動を行うことで、前記平面部材上の目標点を変更している。
【0029】
筐体4に囲まれた空間の底部には、数値制御によって駆動するカメラxyテーブル11が設けられており、そのテーブル上にカメラ10が設置されている。
このように、カメラ10は、ガラス板8によってノズル5から隔離されているため、液滴15によりレンズが汚れるのを防ぐことができる。
また、撮影系と吐出系の機械的な干渉を防ぎつつノズル検査部2を小型化することができる。
【0030】
カメラ10は、デジタル式のカメラであり、撮影方向(カメラレンズの中心線方向)にある対象の像を光学系でCCD(Charge−Coupled Device)撮像面に結像し、これをデジタルデータに変換する。
カメラ10は、液滴吐出器により複数回吐出された液滴を撮影する撮影手段として機能している。
【0031】
カメラ10は、鉛直上方を撮影方向とし、撮影方向を保ったまま、カメラxyテーブル11によってxy平面上を移動する。そして、カメラ10は、ガラス板8の裏側(下方)から着滴済みの液滴15を撮影(撮像)する。
このように、撮影手段は、平面部材に着滴した液滴を撮像する。
【0032】
このようにカメラ10を数値制御にてxy平面内で移動可能としたのは、目標点のxy座標値を得るためである。
即ち、カメラ10は、ガラス板8を透かしてノズル検査部2を撮影することができ、作業者は、コンピュータ3を操作して、カメラ10の中心位置をノズル5の吐出口直下に移動する。
【0033】
このときのカメラ10の中心の座標値が目標点の座標値である。即ち、カメラレンズの中心とノズルの先端を結ぶ鉛直線とガラス板8の交点が目標点となり、その座標値をカメラxyテーブル11から読み取ることができる。
目標点の座標値が分かれば、着滴した液滴15の中心と目標点の差分から着滴位置のばらつきを求めることができる。
【0034】
以上のように、吐出器は、平面部材の上方に配設され、平面部材上の目標点を通る鉛直軸の上方から平面部材上の目標点に向けて液滴を吐出している。
更に、撮影手段は、平面部材の下方に配設され、平面部材に着滴した液滴の陰影を平面部材の裏側から撮影している。
この場合、撮影手段は、平面部材の下方に配設され、平面部材に着滴した液滴の陰影を、鉛直線上で平面部材の裏側から撮影することも可能である。
【0035】
図2(a)は、ガラス板8の構造を説明するための図である。
本実施形態では、着滴した液滴15とガラス板8の間の接触角を考慮し、隣接する液滴15同士が接触しない材質の部材を用いることが好ましい。
そこで、ガラス板8を構成するガラス製のベース部材21の表面には、保油層22が形成されている。
保油層22は、ベース部材21の表面を保油処理することにより形成され、固体の表面自由エネルギーを低下させる(即ち、油をはじくようにする)にコーティング処理がされた層である。
【0036】
表面自由エネルギーの小さい物質としては、飽和フルオロアルキル基(特にトリフルオロメチル基、いわゆるテフロン(登録商標)など)、アルキルシリル基(ステアリン酸、ろうそくの元)、フルオロシリル基、長鎖アルキル基などの官能基を持つものが代表的である。
このほか、引張強度と液滴15に対する接触角の最適化のため、異なる種類のフィルムをラミネートしたものを用いることもできる。
また、プラズマ、反応性ガス、UV光等によって表面処理を施したガラス板及びフィルムを用いることもできる。
【0037】
図2(b)は、ノズル5の構造を説明するための図である。
ノズル5の内部には液滴15となる液体(ここでは、油)を供給する導管33が吐出方向と同軸に配設されている。
導管33の一端側は、吐出口を構成する開口部となっており、他端側は、液体を蓄えるタンクにつながっている。
導管33には、側面にピエゾ素子31が取り付けてある。コンピュータ3からの信号によりピエゾ素子31が変形すると、これにともなって導管33も変形し、これによって液体が吐出する。
【0038】
更に、導管33のピエゾ素子31より吐出口側には、ヒータ32が巻かれている。ヒータ32は、液体の温度を加熱して液体の粘度を下げ、微細な液滴15ができるようにする。
加熱温度は、室温より高く、液体が熱によって劣化しはじめる温度より低い温度であり、例えば、摂氏70度である。
【0039】
図2(c)は、カメラ10の側からみたガラス板8であり、複数の液滴15、15、15、・・・が目標点周辺に着滴している。
このように、ノズル検査部2は、各液滴15が着滴時の衝撃やガラス板8の表面の濡れ性に起因して着滴点の周囲に広がったとしてもお互いに重なり合うことがないような位置に点在させるように液滴15を塗布する。
図では18カ所に液滴15が着滴しているが、後述するように吐出精度を統計処理するため、液滴15は、多いほど(100カ所以上が望ましい)よい。
【0040】
ガラス板8の三隅には十字形状をした座標作成用マーカ35、35、35が配置されている。
座標作成用マーカ35は、カメラ10の画像によりコンピュータ3がガラス板8のxy座標を認識するための基準位置を示している。
【0041】
図に示したx方向の破線36とy方向の破線37は、座標作成用マーカ35を基準にコンピュータ3がガラス板8上に設定した目標点基準線である。
なお、ガラス板8上に破線36、37が予め印刷したものが利用可能な場合は、これを用いてもよい。
破線36、37は、等間隔の格子状に配設され、その格子点(交点)がノズル5による吐出の目標点となる。
【0042】
検査装置1は、1の目標点に対してノズル5から液滴15を吐出すると、未使用の目標点にノズル5を移動して液滴15を吐出し、以降、この動作を繰り替えすることにより、ガラス板8上に統計データをとるためのサンプルとしての液滴15が複数個形成される。
【0043】
図2(d)は、ガラス板8に着滴した液滴15のカメラ10による画像の例を示した図である。
このように、コンピュータ3は、カメラ10で作成された画像データを受信し、これに基づいて着滴状態(着弾状態)を解析する。
コンピュータ3は、液滴15の画像から液滴15の重心点41を求め、破線36と破線37の交点である目標点42からのx軸方向のずれΔxとy軸方向のずれΔyを計算する。即ち、重心点41は、着滴点であり、重心点41の位置が着滴位置となる。
【0044】
より詳細には、コンピュータ3は、例えば、重ならずにガラス板8に着滴した液滴15の画像情報を予め記憶しておき、この情報とカメラ10から取り込んだ液滴15の画像とを比較し、所定の画像処理を行うことにより、各液滴15の重心点を求める。
コンピュータ3は、このずれの計算をガラス板8に着滴した各液滴15に対して行い、これによって、ノズル5による液滴15の着滴位置のばらつきのサンプルが得られる。
このように、検査装置1の撮影手段は、液滴吐出器により複数回吐出された液滴を、当該液滴ごとに撮影し、検査装置1は、当該撮影した各液滴の画像によって、液滴ごとの着滴位置を取得する着滴位置取得手段を備えている。
液滴ごとの撮影は、液滴が吐出される毎に各液滴を撮影する場合と、所定量の液滴を吐出した後に各液滴毎に撮影する場合のいずれの場合も可能である。
【0045】
図3は、コンピュータ3が行う統計処理の例を説明するための図である。
図3(a)は、ノズル5のz座標を一定に保って液滴15の着滴位置のx軸方向のばらつきの分布を示したグラフである。
このグラフは、横軸にΔx、縦軸に当該Δxとなったサンプル数(度数)をプロットしたものである。なお、図では、わかりやすくするために度数を曲線で表してある。
【0046】
一般に液滴15の着滴位置のばらつきは正規分布となり、コンピュータ3は、サンプルを統計処理することにより、その全体的なずれであるΔXと、中心点に対するばらつきを計算することができる。
分散をσの自乗とすると、1σ、2σ、3σは、それぞれ液滴15が68.27%、±2σ、99.73%と含まれる範囲である。
以上は、x軸方向のばらつきであるが、コンピュータ3は、y軸方向のばらつきについてもΔYとσを計算する。
コンピュータ3は、ノズル5の計測時のz座標とともに、これらの値を出力する。
このように、検査装置1は、各液滴の着滴位置の統計に基づいて、液滴吐出器が吐出する液滴の着滴位置の目標点に対する精度を取得する精度取得手段を備えている。
【0047】
ΔX、ΔYは、ノズル5が吐出した液滴15の飛ぶ方向が、まっすぐに飛んだ場合よりもどちらにどれだけ全体的に偏っているかを表している。一方、σは、突出した液滴15がどれだけ広がるかを示している。
ノズル5をガラス板8に近づけと、即ち、ノズル5のz座標を小さくすると、ΔX、ΔYは、0に近づき、σの値は小さくなる。
そこで、作業者は、ノズル5のz座標ごとのこれらの値を計測し、ノズル5が油滴の対象となる機械部品との干渉を考慮して、ノズル5の最適のz座標を選択する。
【0048】
ノズル5の高さを選択したz座標値に設定し、当該z座標値におけるΔX、ΔYだけノズル5をxy平面上でオフセットすると、
図3(b)に示したように、着滴位置は目標点を中心とするベルカーブとなる。
そして、σの値が所定の設定値の範囲にあれば(例えば、3σがDの範囲にあれば)、作業者は、ノズル5を合格品と判断する。
また、液滴15の塗布における最適なz座標値、ΔX、ΔYも知ることができる。
【0049】
次に、このように構成した検査装置1によるノズル検査方法について説明する。
検査方法には、着滴ごとに撮影する方法と、複数着滴させて一度に撮影する方法がある。
図4は、液滴15が着滴するごとにこれを撮影して計測する場合の検査方法を説明するためのフローチャートである。
【0050】
まず、作業者は、ガラス板8をガラス板xyテーブル6に設置し、カメラ10を駆動してガラス板8の座標作成用マーカ35を撮影する。
すると、コンピュータ3は、座標作成用マーカ35の位置から、ガラス板8上にxy座標系を設定する。
次に、コンピュータ3は、ノズル5の先端のz座標値を設定する。これは、例えば、ノズル固定部7にz座標値の基準点が設けてあり、この点からノズル5の先端までの距離をパラメータとして入力することにより行うことができる。
【0051】
次に、作業者は、モニタ画面からカメラ10の画像を確認し、制御装置を駆動してカメラの中心とノズル5の先端が一致するようにする。
例えば、画像にはカメラの中心を示す十字が表示され、作業者は、ノズル5の先端が十字と一致するようにする。これにより、ノズル5の先端とカメラ10の中心が鉛直線上に並ぶ。
このときのカメラxyテーブル11上でのカメラの位置から目標点(即ち、ノズル5の直下)のxy座標値が得られる。
次に、作業者は、ノズル5の先端のz座標値(適切な初期値)をコンピュータ3に入力する。
【0052】
次に、作業者は、検査プログラムを起動し、コンピュータ3は、以下の処理を検査プログラムに従って行う。
まず、検査装置1は、ノズル5の先端からガラス板8の表面までの距離が初期値となるようにz軸を数値制御してノズル5の高さを設定する(ステップ5)。
【0053】
次に、検査装置1は、ノズル5を駆動して液滴15をガラス板8に吐出する(ステップ15)。
吐出した液滴15は、ノズル5の精度に基づいて目標点付近に着滴する。
すると、検査装置1は、カメラ10を駆動してガラス板8に着滴した液滴15を撮影し、液滴15の画像データをコンピュータ3に送信する(ステップ20)。
【0054】
コンピュータ3は、画像データを画像処理して着滴位置のxy座標値を計算する(ステップ25)。
この計算は、液滴15の画像を画像処理して液滴15の重心点を計算し、このxy座標値を着滴位置とする。
コンピュータ3は、先に計算した目標点の座標値と着滴位置の差分を計算し、これを誤差として記憶する。
【0055】
次に、コンピュータ3は、ガラス板xyテーブル6を駆動してガラス板8を所定方向に所定距離だけ移動する(ステップ30)。
これにより、ガラス板8の未使用の領域が次の目標点としてノズル5の直下に供給される。
次に、コンピュータ3は、予め設定された所定回数だけノズル5が吐出したか否かを判断する(ステップ35)。
【0056】
所定回数に満たない場合(ステップ35;N)、コンピュータ3は、ステップ15に戻り、検査を続行する。
このように、検査装置1は、ガラス板xyテーブル6でガラス板8を一定量平面移動させ、再度誤差を求めることにより、繰り返しによるばらつきを求めることができる。
一方、所定回数に達した場合(ステップ35;Y)、コンピュータ3は、各液滴15の誤差をノズル5のz座標値ごとに集計して統計計算を行い、モニタ画面やプリンタなどの出力装置に出力する(ステップ40)。
【0057】
次に、コンピュータ3は、ノズル5を他のz座標値で計測するか否かを判断する(ステップ45)。
これは、例えば、0.1mmずつ合計1mmまでz座標値を増やすなどと予め作業者が設定しておくか、あるいは作業者が手動で行う。
必要がある場合は、この間にガラス板8を手動、又は自動にて交換する。
【0058】
他のz座標値で計測する場合(ステップ45;Y)、コンピュータ3は、ステップ5に戻り、ノズル5の高さを次の値に設定し、以下、同様の処理を繰り返す。
一方、他のz座標値で計測しない場合(ステップ45;N)、コンピュータ3は、処理を終了する。
以上の検査により、ノズル5の先端から目的位置までの距離に応じたノズル5の着滴精度を統計的に得ることができる。
【0059】
図5は、液滴15を複数着滴させて一度に撮影する場合の検査方法を説明するためのフローチャートである。
図4と同じ処理には同じステップ番号を付し、説明を省略する。
ステップ5、15は、先の説明と同じである。
次に、この方法では、コンピュータ3は、ステップ15の後、撮影と着滴位置の計算は行わずに、ステップ30に移行して、ガラス板8の移動と液滴15の吐出を所定回数行う。
【0060】
このように、ガラス板8の一面に液滴15を所定回数吐出した後(ステップ35;Y)、コンピュータ3は、ガラス板8に着滴した液滴15の画像を一度に撮影する(ステップ100)。このため、カメラ10に広角レンズを用いると効果的である。
コンピュータ3は、画像に写った座標作成用マーカ35の位置を基準にして各目的点の位置を計算する。
次に、コンピュータ3は、撮影された液滴15の個々について着滴位置を計算し、更に、目的点からの誤差を計算する(ステップ105)。
【0061】
このように、この方法では、まず、連続的に液滴15をガラス板8に着滴させてガラス板8の裏側からこれらの着滴済み液滴15の全てを一度に撮影し、全ての着滴位置のばらつきを一度に計算することができる。そのため、検査処理を高速化することができる。
また、ガラス板8の裏側から全体を一度に撮影すると、レンズの中心から離れるほど画像が歪むが、これを補正する機能を備えるとより測定精度を高めることができる。
【0062】
次に第2実施形態について説明する。
説明した第1実施形態では、ノズル5から鉛直下に存在する、平面部材(ガラス板8)上の目標点にむけて液滴を吐出し、ガラス板8の裏側からカメラ10で当該液滴の陰影を撮影する場合について説明した。
これに対し、第2実施形態では、ノズル5から斜め方向に存在する、平面部材上の目標点にむけて斜め方向に液滴を吐出し、平面部材に対してノズル5と同じ側からカメラ10で当該液滴を撮影する。
この第2実施形態によれば、腕時計などの機械部品は、基盤に対して斜め横から油を注油したりなど、複雑な注油技術を必要とする場合に対応することが可能になる。
【0063】
図6は、第2実施形態の検査装置1で使用するノズル検査部2におけるノズル5とカメラ10の配設位置を説明するための図である。
図6(a)は、ノズル5から斜め下に向けて液滴15を吐出する場合である。
ノズル5は、ノズル固定部7により斜め下方に向けられており、ノズル固定部7とカメラxyテーブル11とガラス板xyテーブル6は、それぞれ筐体4の上面と下面に設けられている。
カメラ10は、鉛直下方を向いており、撮影方向にガラス板8の目標点が位置するようになっている。
そして、カメラ10は、ガラス板8の上面に着滴した液滴15を撮影する。
【0064】
ノズル5の傾きの角度θ(筐体4の壁面とノズル5の軸線の成す角度)は、可変であり、例えば、数値制御により角度を調節することができる。よって各θにおける着滴位置や液滴15の形状を観察し、最適なθを求めることもできる。
また、液滴15の塗布対象である平面部材は透明である必要はないため、ガラス板8の代わりに、耐溶剤性を確保する観点から、ステンレス、チタン、アルミニウムなどの金属材料による板材を用いることもできる。
液滴15を複数回吐出してその着滴位置をカメラ10により撮影するなどの構成は、第1実施形態で説明した検査装置1と同様である。
【0065】
また、この構成では、カメラ10がノズル5より高い位置に設置されており、このため、液滴15がカメラ10に付着せず、良好な画像を撮影することができる。
更に、この構成では、筐体4の内部にノズル5やカメラ10が格納されるため、小型化が図れるほか、気流により液滴15が偏向するのを防ぐことができる。
【0066】
図6(b)は、ノズル5から斜め上に向けて液滴15を吐出する場合である。
ノズル5は、ノズル固定部7により斜め上方に向けられており、ノズル固定部7とカメラxyテーブル11とガラス板xyテーブル6は、それぞれ筐体4の下面と上面に設けられている。
カメラ10は、鉛直上方を向いており、撮影方向にガラス板8の目標点が位置するようになっている。
そして、カメラ10は、ガラス板8の下面に着滴した液滴15を撮影する。
【0067】
図6(c)は、ノズル5から斜め下に向けて液滴15を吐出する場合の他の例である。
ノズル5は、ノズル固定部7により斜め下方に向けられており、ノズル固定部7とカメラxyテーブル11とガラス板xyテーブル6は、それぞれ筐体4の対向する側面に設けられている。
カメラ10は、水平を向いており、撮影方向にガラス板8の目標点が位置するようになっている。
そして、カメラ10は、ガラス板8の表面に着滴した液滴15を撮影する。
【0068】
図6(d)は、ノズル5から斜め上に向けて液滴15を吐出する場合の他の例である。
ノズル5は、ノズル固定部7により斜め上方に向けられており、ノズル固定部7とカメラxyテーブル11とガラス板xyテーブル6は、それぞれ筐体4の対向する側面に設けられている。
カメラ10は、水平を向いており、撮影方向にガラス板8の目標点が位置するようになっている。
そして、カメラ10は、ガラス板8の表面に着滴した液滴15を撮影する。
【0069】
以上の例では、平面部材は、水平又は鉛直に配設されており、液滴吐出器は、平面部材における平面の一方の側に配設され、平面部材上の目標点に向けて斜め方向から液滴を吐出している。
そして、撮影手段は、平面部材における平面の一方の側に配設され、平面部材に着滴した液滴を、平面部材に直交する直交軸上から撮影している。
この場合、撮影手段は、平面部材における平面の一方の側に配設され、平面部材に着滴した液滴を、目標点を通り平面部材に直交する直交軸上から撮影する、ことも可能である。
また、目標点に対する液滴の吐出方向については、目標点を通り平面部材に直交する直線に対して所定角度で目標点に向けて液滴を吐出する場合の全てを含むものである。
【0070】
図7は、注油装置60の構成を説明するための図である。
第1実施形態、第2実施形態で説明した検査装置1は、ノズル5の精度を評価するために検査したが、注油装置60は、ノズル5の位置を検査するとともに更正する。
注油装置60は、ノズル検査部2と注油部61、及びコンピュータ3から構成されており、液滴供給装置として機能している。
【0071】
ノズル検査部2のノズル固定部7は、更に、x軸方向、y軸方向の位置を調節する調節機構を備えている。
この調節機構は、数値制御であってもよいし、あるいは、マイクロメータなどの計測機器で数値を読みながら手動で調節するものでもよい。
このように、注油装置60は、精度取得手段で取得した、液滴吐出器が吐出する油滴の着滴位置の目標点に対する精度に基づいて、液滴吐出器におけるノズルの位置を補正する補正手段を備えている。
【0072】
そして、作業者は、ノズル検査部2で液滴15の着滴精度の検査を行い、検査結果に基づいてノズル5の位置を−ΔX、−ΔYだけ調節する。
なお、先に説明した検査装置1では、ノズル5自体の着滴精度を評価したいのに対し、注油装置60では、後述の機械部品62に設定された目標点への着滴精度(油滴を注油する機械系としての精度)を評価したい点が異なる。
即ち、検査装置1では、ノズル5自体の着滴精度を評価するのに対し、注油装置60では、ノズル5自体の着滴精度とノズル固定部7の(組み立て精度などに起因する)機械精度が合成された精度を評価する。
【0073】
そのため、検査装置1では、ノズル5の吐出口直下を目標点としてノズル5自体の着滴の誤差ΔX、ΔYを測定するに対し、注油装置60では、数値制御系でねらった点を目標点とし、その誤差ΔX、ΔYを測定する。
そして、当該ΔX、ΔYにてノズル5の位置を補正すると、数値制御系でねらった点を着滴中心とすることができる。
【0074】
注油部61は、ノズル検査部2と一体に形成されており、ノズル固定部7は、注油部61へ調節後のΔX、ΔYを保ったまま移動できるようになっている。移動後のノズル固定部7とノズル5は、破線で示してある。
あるいは、ソフトウェアによってΔX、ΔYだけノズル固定部7の位置をオフセットしてもよい。
そして、注油部61は、調節後のノズル5をx方向、y方向、z方向に数値制御にて駆動し、機械部品62の複数箇所に吐出による注油を行う。
このように、注油装置60は、油滴の供給対象である機械部品の油滴供給位置を目標点として、ノズルの位置を補正した液滴吐出器を移動する液滴吐出器移動手段を備えている。
液滴15の体積はおおよそ一定であるため、必要量に達するまで連続して吐出することにより、注油対象に応じて適量の油を塗布することができる。
【0075】
注油部61は、機械部品62の注油が終わると次の機械部品62を設置して注油するようになっており、連続して複数の機械部品62に注油することができる。
また、機械部品62の種類によって注油位置や注油量が異なっても、機械部品62の種類ごとに注油箇所、及び注油量をコンピュータ3に記憶しておき、機械部品62の種類ごとに個別に注油することもできる。
作業者は、以上のように構成された注油装置60により、作業前、及び作業中適宜ノズル5の精度をチェックすることができる。
また、本実施形態では、ノズル検査部2と注油部61を連結して注油装置60を構成したが、ガラス板8を取り除いてガラス板8の位置に機械部品62を設置して注油を行うように、ノズル検査部2と注油部61をまとめてもよい。
この場合、ノズル固定部7を注油部61に移動する必要がないため、着滴精度をより高めることができる。
【0076】
以上述べたように第1、第2実施形態によれば、非接触式ディスペンサであるノズル5の液滴15の吐出状態を容易に検知することができるので、ノズル5を使用する前にノズル5の液滴吐出状態が良好な状態か否かを検査することができる。
【0077】
また、第1実施形態によれば、カメラ10が、ノズル5側の空間の雰囲気から隔てられているため、ノズル5から吐出された液滴15や、着滴した液滴15から蒸発した液滴溶剤がカメラ10側の空間に入り込むことがない。
その結果、カメラ10が液滴15により汚染されることがなく、常に良好な液滴像を撮影することができる。
【0078】
第1、第2実施の形態によれば、液滴15を複数回吐出して検査するため、1回吐出しただけでは検出することが困難なノズル5の軽微な吐出不良を精度よく検出することができるとともに、実際の液滴の塗布に近い状態で吐出を行うことにより、液滴塗布時におけるノズル5の液滴15の吐出ずれの有無を確実に検査することができる。
【0079】
なお、第1、第2実施形態は、上述の実施形態に限られるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態においては、ガラス板8に着滴した全ての液滴15の液滴像を取り込む(撮影する)場合について説明したが、特定の領域の液滴15の液滴像を取り込む(撮影する)ようにしてもよい。
【0080】
また、第1、第2実施の形態は、機械部品に対する注油を行う場合について説明したが、例えば、水性の溶液を塗布したり、配線パターンを塗布したり、塗布により塗布膜を形成してもよい。
【0081】
更に、第1、第2実施の形態では、平面部材(ガラス板8)に液滴15が着滴した後にカメラ10で液滴15を撮影したが、液滴15が着滴する直前に液滴15を撮影することも可能である。この場合の目標点は、平面部材上ではなく、平面部材よりもわずかにノズル側に位置することになる。
なお、第1実施形態では、液滴をガラス板8の裏側から撮影するので、より透明度の高いガラス板8を使用することが好ましい。
着滴前の液滴を撮影することで、それぞれの液滴15は、着滴直前に撮影されるため、着滴時の衝撃やガラス板8の表面の濡れ性に起因して着滴点の周囲に広がったとしても、着滴に起因する変形のない液滴15の像を撮影することができる。
【0082】
第1、第2実施の形態によれば、液滴塗布の際に非接触式ディスペンサの吐出ノズルの軽微な吐出不良(液滴着弾位置ばらつき)を精度よく測定することができるとともに、実際の液滴の塗布に近い状態で吐出を行うことにより、液滴塗布時における吐出ノズルの液滴の吐出ずれの有無を確実に検査することができる。
【0083】
なお、本実施形態としては、次のように構成することも可能である。
(1)構成1
目標点に向けてノズルから液滴を吐出する液滴吐出器と、前記液滴吐出器により複数回吐出された液滴を撮影する撮影手段と、前記撮影した各液滴の画像によって、前記液滴ごとの着滴位置を取得する着滴位置取得手段と、前記取得した各液滴の着滴位置の統計に基づいて、前記液滴吐出器が吐出する液滴の着滴位置の目標点に対する精度を取得する精度取得手段と、を具備したことを特徴とする液滴吐出器検査装置を提供する。
(2)構成2
前記撮影手段は、前記液滴吐出器により複数回吐出された液滴を、当該液滴ごとに撮影する、ことを特徴とする構成1に記載の液滴吐出器検査装置を提供する。
(3)構成3
平面部材を備え、前記液滴吐出器は、前記平面部材上の目標点に向けて液滴を吐出し、前記撮影手段は、前記平面部材に着滴した液滴を撮像する、ことを特徴とする構成1、又は構成2に記載の液滴吐出器検査装置を提供する。
(4)構成4
前記液滴吐出器と前記撮影手段に対する、前記平面部材の平面方向の位置を、所定の量だけ相対移動させる移動手段を備え、前記移動手段は、前記液滴吐出器による液滴の吐出ごとに相対移動を行うことで、前記平面部材上の目標点を変更する、ことを特徴とする構成3に記載の液滴吐出器検査装置を提供する。
(5)構成5
前記平面部材は、液滴の陰影が透過する透過部材で構成されるとともに、水平に配設され、前記液滴吐出器は、前記平面部材の上方に配設され、前記平面部材上の目標点を通る鉛直軸の上方から前記平面部材上の前記目標点に向けて液滴を吐出し、前記撮影手段は、前記平面部材の下方に配設され、前記平面部材に着滴した液滴の陰影を、前記平面部材の裏側から撮影する、ことを特徴とする構成3又は構成4に記載の液滴吐出器検査装置を提供する。
(6)構成6
前記液滴吐出器は、液滴として油滴を吐出する、ことを特徴とする構成1から構成5のうちの何れか1の構成に記載の液滴吐出器検査装置を提供する。
(7)構成7
構成6に記載の液滴吐出器検査装置と、前記精度取得手段で取得した、前記液滴吐出器が吐出する油滴の着滴位置の目標点に対する精度に基づいて、前記液滴吐出器における前記ノズルの位置を補正する補正手段と、油滴の供給対象である機械部品の油滴供給位置を目標点として、前記ノズルの位置を補正した前記液滴吐出器を移動する液滴吐出器移動手段と、を具備したことを特徴とする液滴供給装置を提供する。
(8)構成8
目標点に向けてノズルから液滴を吐出する液滴吐出器を検査する液滴吐出器検査方法であって、前記液滴吐出器により複数回吐出された液滴を撮影する撮影ステップと、前記撮影した各液滴の画像によって、前記液滴ごとの着滴位置を取得する着滴位置取得ステップと、前記取得した各液滴の着滴位置の統計に基づいて、前記液滴吐出器が吐出する液滴の着滴位置の目標点に対する精度を取得する精度取得ステップと、を含むことを特徴とする液滴吐出器検査方法を提供する。