(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような胆管ステントを実際に患者体内に留置する現場においては、胆管ステント全体の長さをなるべく短くしたいという要望がある。
【0006】
このような要望に対し、従来の胆管ステントにおける膜体の長さを短くすれば、胆管ステント全体の長さを従来よりも短くすることができる。しかしながら、膜体の長さを単に短くした場合には、次の問題が発生すると考えられる。
【0007】
すなわち、従来の胆管ステントにおいて、膜体の長さを単に短くした場合には、胆のう側から膜体にかかる圧力に比べて十二指腸側から膜体にかかる圧力が高くなったときに、十二指腸側に延び出ていた膜体が胆のう側に裏返ってしまう可能性がある。胆のう側に裏返った状態の膜体では、十二指腸から胆のう側への逆流を防止することができず、期待された弁機能を発揮することができない。
【0008】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、胆管ステント全体の長さを従来よりも短くしつつ、弁機能を十分に発揮することが可能な胆管ステントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の胆管ステント(1)は、径方向に拡張可能に構成された管状のステント本体(10)と、前記ステント本体(10)の一端部から突出するように設けられ、胆汁流出口(34)を有する管状の膜体(30)と、前記膜体(30)を支持する2つの支持部材(40,50)とを備え、前記2つの支持部材(40,50)の各一方端部(42,52)は、前記ステント本体(10)の前記一端部に接続されており、前記2つの支持部材(40,50)の各他方端部(44,54)は、前記胆汁流出口(34)の近傍に接続されており、前記2つの支持部材(40,50)は、前記ステント本体の管軸(10ax)を間にして向かい合う位置に配置され、かつ、互いに離隔する方向に沿って前記胆汁流出口(34)に力を加えるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の胆管ステントによれば、2つの支持部材がステント本体の管軸を間にして向かい合う位置に配置され、かつ、互いに離隔する方向に沿って胆汁流出口に力を加えるように構成されているため、胆のうから十二指腸側への流れが無いときに胆汁流出口は直線状(ほぼ真一文字)に閉じることとなる。本発明の胆管ステントを、膜体(胆汁流出口)が十二指腸側を向くようにして胆管内に留置すると、胆のうからの胆汁はステント本体内を通過し、膜体内を通過して胆汁流出口から十二指腸へと流れることとなる一方、十二指腸から胆のう側への逆流は直線状に閉じた胆汁流出口によって阻止されることとなる。すなわち、上記した膜体及び2つの支持部材によって、弁機能を発揮することが可能となる。
【0011】
また、本発明の胆管ステントによれば、2つの支持部材の各他方端部が、胆汁流出口の近傍に接続されているため、胆のう側から膜体にかかる圧力に比べて十二指腸側から膜体にかかる圧力が高くなったとしても、膜体が胆のう側に裏返ってしまうこともなく、膜体の突出する向きを維持することが可能となる。つまり、膜体の長さを短くすることにより胆管ステント全体の長さを従来よりも短くしたとしても、上記した弁機能を十分に発揮することが可能となる。
【0012】
したがって、本発明の胆管ステントは、胆管ステント全体の長さを従来よりも短くしつつ、弁機能を十分に発揮することが可能な胆管ステントとなる。
【0013】
本発明の胆管ステント(1)においては、前記膜体(30)を取り外した場合の、前記2つの支持部材(40,50)における前記他方端部(44,54)間の直線距離をLとし、前記2つの支持部材(40,50)を取り外した場合の、前記膜体(30)における前記胆汁流出口(34)の周長をCとしたとき、「2L≧C」の関係式を満たすように構成されていることが好ましい。
【0014】
詳細については後述するが、上記のように構成することにより、「2つの支持部材が互いに離隔する方向に沿って胆汁流出口に力を加える」という構成を、比較的容易に実現することが可能となる。
【0015】
本発明の胆管ステント(1)においては、前記2つの支持部材(40,50)を取り外した場合の、前記膜体(30)における前記胆汁流出口(34)の端面形状は、扁平であることが好ましい。
【0016】
胆汁流出口が直線状(ほぼ真一文字)に閉じることからいえば、膜体の胆汁流出口の端面形状が直線状に近ければ近いほど、胆汁流出口を閉じるために要する力は小さくて済むといえる。また、胆汁流出口を閉じるために要する力が大きいと、2つの支持部材又は膜体の材料として比較的強い弾性力を有するものを使用する必要性が生じ、2つの支持部材又は膜体として使用する材料が限定されてしまいかねない。
本発明の胆管ステントによれば、膜体の胆汁流出口の端面形状が扁平であり、比較的直線状に近い形状であることから、胆汁流出口を閉じるために要する力を比較的小さく抑えることができ、結果として、2つの支持部材及び膜体の材料選択の自由度を高めることが可能となる。
【0017】
本発明の胆管ステント(1)においては、前記胆汁流出口(34)の端面形状は、楕円であり、当該楕円は、短径を1としたときに長径が2以上であることが好ましい。
【0018】
膜体の胆汁流出口の端面形状が、短径を1としたときに長径が2以上である楕円であれば、胆汁流出口が閉じたときの形状とさほど大きく離れていないことから、上述した理由と同様に、2つの支持部材及び膜体の材料選択の自由度が大きい胆管ステントを、比較的容易に実現することが可能となる。
【0019】
本発明の胆管ステント(1)においては、前記胆汁流出口(34)の端面形状は、端面長手方向の略中央部が両端部に対して幅狭となる形状であることが好ましい。
【0020】
膜体の胆汁流出口の端面形状が、端面長手方向の略中央部が両端部に対して幅狭となる形状であれば、2つの支持部材の互いに離隔する方向に沿って加えられた力により、胆汁流出口を確実に閉じることが可能である。
【0021】
本発明の胆管ステント(1)においては、前記2つの支持部材(40,50)は、前記膜体(30)の外側に配設されていることが好ましい。
【0022】
このように構成することにより、膜体の内側には2つの支持部材が存在しないため、胆汁流出口が閉じたときの望ましくない隙間の発生を抑制することが可能となる。
【0023】
本発明の胆管ステントにおいては、前記2つの支持部材は、前記膜体の内側に配設されていることが好ましい。
【0024】
このように構成することにより、製造時には2つの支持部材の外側から覆うようにして膜体を比較的容易に取り付けることができるため、胆管ステントの製造容易性を向上することが可能となる。
【0025】
本発明の胆管ステントにおいては、前記2つの支持部材は、前記膜体の内部に埋設されていることが好ましい。
【0026】
このように構成することにより、膜体の内側には2つの支持部材が存在しないため、胆汁流出口が閉じたときの望ましくない隙間の発生を抑制することが可能となる。また、支持部材が金属材料からなる場合、金属部分が露出しないようになるため、金属アレルギーにより胆管ステント非適用となるリスクを軽減することができる。
【0027】
本発明の胆管ステント(2)においては、前記胆汁流出口(34)に接続された管状の吹流し部(60)をさらに備えることが好ましい。
【0028】
このように構成することにより、十二指腸から胆のう側への逆流をより一層防止することができるため、弁機能をさらに高めることが可能となる。
【0029】
なお、請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、図面を参照することにより、請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、請求の範囲及び本欄に記載された技術的内容を限定するものではない。
【発明の効果】
【0030】
本発明の胆管ステントによれば、膜体が十二指腸側を向くようにして胆管内に留置した際、膜体及び2つの支持部材によって、弁機能を発揮することが可能となる。また、2つの支持部材の各他方端部が、胆汁流出口の近傍に接続されているため、膜体の長さを短くすることにより胆管ステント全体の長さを従来よりも短くしたとしても、上記した弁機能を十分に発揮することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の胆管ステントについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0033】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る胆管ステント1の構成について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0034】
図1(a)〜
図1(d)は、第1実施形態に係る胆管ステント1を説明するために示す図である。
図1(a)は胆管ステント1を模式的に示す斜視図であり、
図1(b)は胆管ステント1の上面図であり、
図1(c)は胆管ステント1の側面図であり、
図1(d)はステント本体10と支持部材40,50を説明するために示す図である。なお、
図1(d)においては発明の理解を容易にするため、膜体30を破線で図示している。
【0035】
図2(a)〜
図2(c)は、胆管ステント1における胆汁流出口34を説明するために示す図である。
図2(a)は胆管ステント1に内圧がかかっていないときの胆汁流出口34の端面図であり、
図2(b)は胆管ステント1に内圧がかかっているときの胆汁流出口34の端面図であり、
図2(c)は
図2(b)に示す胆汁流出口34の拡大端面図である。なお、
図2(a)〜
図2(c)において、発明の理解を容易にするため、胆汁流出口34における膜体30の肉厚及び支持部材40,50の各他方端部44,54の大きさについては、誇張して図示している。
【0036】
図3(a)〜
図3(c)は、膜体30を説明するために示す図である。
図3(a)は膜体30の斜視図であり、
図3(b)は膜体30の胆汁流出口34の端面図であり、
図3(c)は第1実施形態の変形例に係る膜体30aにおける胆汁流出口34aの端面図である。なお、
図3(a)〜
図3(c)においては、2つの支持部材40,50を取り外した場合の、膜体30,30aにおける胆汁流出口34,34aの端面を図示している。
【0037】
図4(a)及び
図4(b)は、支持部材40,50を説明するために示す図である。
図4(a)は膜体30を取り付けた状態における支持部材40,50を上面方向(
図1(b)と同一方向)から見た図であり、
図4(b)は膜体30を取り外した場合における支持部材40,50を上面方向から見た図である。
【0038】
この明細書において「ステント本体の内側(又は内部)」とは、ステント本体の管軸10axに沿う方向からステント本体10(後述するフレーム12〜14)を見たときに、フレーム12〜14の壁面よりステント本体の管軸10ax側に向かった領域のことをいう。一方、「ステント本体の外側(又は外部)」とは、ステント本体の管軸10axに沿う方向からステント本体10(フレーム12〜14)を見たときに、フレーム12〜14の壁面よりステント本体の管軸10axとは反対側に向かった領域のことをいう。
【0039】
第1実施形態に係る胆管ステント1は、
図1(a)〜
図1(d)に示すように、径方向に拡張可能に構成された管状のステント本体10と、ステント本体10の内側に配置された管状の膜体30と、膜体30を支持する2つの支持部材40,50とを備える。胆管ステント1は、例えば自己拡張型の胆管ステントである。
【0040】
ステント本体10は、並んで配置された3つのフレーム12,13,14と、フレーム12〜14をそれぞれ連結する4つの連結部材15,16,17,18とを有する。
【0041】
フレーム12〜14は、例えば、細い金属線がジグザグ状に折り返され、さらに略円筒状となるように構成されている。連結部材15〜18についても同様に、例えば細い金属線からなり、各フレーム12〜14の一部に接続固定されている。フレーム12〜14及び連結部材15〜18を構成する金属線の材料としては、例えば、SUS316L等のステンレス鋼、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金を好ましく用いることができる。
【0042】
膜体30は、ステント本体10の内周面を覆いつつ、ステント本体10の一端部(フレーム12側の端部)から突出するように設けられている。膜体30は、
図1(a)〜
図1(c)及び
図3(a)に示すように、管状であって、フレーム14側に位置する胆汁流入口32と、フレーム12側に位置する胆汁流出口34とを有する。
【0043】
胆汁流出口34は、対向する2つの辺が互いに近接するように狭窄可能である。膜体30の胆汁流出口34の端面形状(2つの支持部材40,50を取り外した場合の、膜体30における胆汁流出口34の端面形状)は、
図3(b)に示すように、楕円である。このときの楕円は、短径bを1としたときに長径aが2以上(a≧2b)となるように設定されている。
なお、第1実施形態においては、胆汁流出口34の楕円中心位置から外面までの距離を、楕円の短径又は長径としている。
【0044】
膜体30を構成する材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などを好ましく用いることができる。これらの樹脂材料によって作成された膜状部材は、生体適合性及び耐久性が比較的高く、かつ、化学的にも安定している。ほかには、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、シリコーン樹脂などを膜体の構成材料として用いることができる。
【0045】
2つの支持部材40,50のそれぞれは、
図1(c)から分かるように、略V字状の線材である。一方の支持部材40は、胆管ステント1を胆汁流出口34側から見たときに右側位置であって膜体30の外側に配設されている。他方の支持部材50は、胆管ステント1を胆汁流出口34側から見たときに左側位置であって膜体30の外側に配設されている。支持部材40,50の一方端部42,52は、ステント本体10のフレーム12にそれぞれ接続されており、他方端部44,54(V字の谷部)は、胆汁流出口34の近傍(胆汁流出口34の縁、
図3(b)に示す両端部36,37)にそれぞれ接続されている。
【0046】
支持部材40,50を構成する材料としては、例えば、SUS316L等のステンレス鋼、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金を好ましく用いることができる。
【0047】
支持部材40,50は、
図1(d)に示すように、ステント本体10の管軸10axを間にして向かい合う位置に配置され、かつ、互いに離隔する方向(
図1(d)及び
図2(a)に示す白抜き矢印の指す方向)に沿って胆汁流出口34に力を加えるように構成されている。
【0048】
図4を用いながら具体的に説明すると、膜体30を取り付けた状態における支持部材40,50の他方端部44,54間の直線距離をMとし、膜体30を取り外した場合における支持部材40,50の他方端部44,54間の直線距離をLとしたとき、「M<L」であり、支持部材40,50を取り外した場合の胆汁流出口34の周長Cとの間で、「2L≧C」の関係式を満たすように構成されている。すなわち、支持部材40,50を取り付ける前の胆汁流出口34の周長Cは、他方端部44,54間の直線距離Lを2倍した長さと同じか、それよりも小さい。このため、膜体30を支持部材40,50に取り付けることによって、支持部材40,50の他方端部44,54が内側に撓むこととなる。内側に撓んだ支持部材40,50の他方端部44,54には、元の状態に戻ろうとする力が働くことから、胆汁流出口34には、互いに離隔する方向(
図1(d)及び
図2(a)に示す白抜き矢印の指す方向)に沿う力が加えられることとなる。また、このような力が胆汁流出口34に加わることによって、胆汁の流れが無いとき(内圧がかからないとき)の胆汁流出口34は、
図2(a)に示すように直線状に閉じることとなる。
【0049】
すなわち、胆汁が胆管ステント1の内部を通過しない状態(内圧がかかっていない状態)では、2つの支持部材40,50の互いに離隔する方向に開こうとする力により胆汁流出口34の両端部36,37が引っ張られるため、胆汁流出口34は閉じることとなる。その場合、胆汁流出口34の端面形状は、
図2(a)に示したすように、ほぼ真一文字の直線状となる。そして、胆汁が胆のうから十二指腸側に流れて胆管ステント1の内部を通過する際には、内圧により胆汁流出口34が開き(
図2(b)参照。)、胆汁が通過可能となる。
胆汁流出口34が開いたときの形状(開口形状)は、胆汁が通過可能であれば特に限定はされないが、第1実施形態においては、楕円となる。このときの楕円は、
図2(c)に示したように、短径bを1としたときに長径aが2以上(a≧2b)であることが好ましい。
【0050】
ここで、第1実施形態の胆管ステント1の作製方法の一例として、ディッピング法により作製する方法を説明する。
まず、膜体30を構成する樹脂材料を溶解させた溶液に、金型を浸漬させる。この金型は、例えば円筒状又は円柱状の金属部材であり、一方端部には胆汁流出口34を形成するための円錐部が設けられている。円錐部における突端部分の端面形状は、短径bを1としたときに長径aが2以上(a≧2b)となる楕円であり、
図3(b)に示した胆汁流出口34の端面形状に対応するものである。
【0051】
次に、金型に溶液が付着した状態で、溶媒を蒸発させ、薄膜を金型から取り外すことにより、膜体30を構成する樹脂材料からなる管状体を得ることができる。この管状体について、胆汁流出口34に相当する部分を径方向に引っ張り、扁平形状とし、その端面長手方向の両端をヒートプレスすると、膜体30となる。
【0052】
そして、膜体30の内側にステント本体10及び支持部材40,50を挿入し、例えば、熱による溶着によって互いを接続する。これにより、胆管ステント1を得ることができる。
【0053】
次に、胆管ステント1を胆管内に留置したときの胆管ステント1の向きと、胆管ステント1の弁機能について、
図5を用いて説明する。
図5は、胆管ステント1を胆管内に留置した様子を模式的に示す図である。なお、
図5では、大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)PVの周囲に存在するオッディ括約筋が正常に機能していないために、総胆管CBD内に胆管ステント1を留置するケースを例示的に図示している。また、主すい管の図示を省略している。
【0054】
上記した胆管ステント1を総胆管CBD内に留置するにあたっては、
図5に示すように、胆汁流入口32が胆のう側を向き、かつ、胆汁流出口34が十二指腸側を向くようにして留置する。なお、ここでは胆管ステント1を総胆管CBD内に留置する方法についての説明は省略するが、例えば内視鏡的胆管ステント留置術や経皮経肝的胆管ステント留置術などの手技を用いて、胆管ステント1を総胆管CBD内に留置すればよい。
【0055】
上記の向きで胆管ステント1を胆管内に留置すると、胆のうから流れてくる胆汁は、胆汁流入口32からステント本体10内を通過し、胆汁流出口34から十二指腸側へとスムーズに流れることとなる。一方、十二指腸から胆のう側への逆流は、直線状に閉じた胆汁流出口34(
図2(a)参照。)によって阻止されることとなる。
【0056】
以上のように構成された第1実施形態に係る胆管ステント1によれば、2つの支持部材40,50がステント本体10の管軸10axを間にして向かい合う位置に配置され、かつ、互いに離隔する方向に沿って胆汁流出口34に力を加えるように構成されているため、胆のうから十二指腸側への流れが無いときに胆汁流出口34は直線状(ほぼ真一文字)に閉じることとなる。第1実施形態に係る胆管ステント1を
図5に示すようにして胆管内に留置すると、胆のうからの胆汁はステント本体10内を通過し、胆汁流出口34から十二指腸へと流れることとなる一方、十二指腸から胆のう側への逆流は直線状に閉じた胆汁流出口34によって阻止されることとなる。すなわち、上記した膜体30及び2つの支持部材40,50によって、弁機能を発揮することが可能となる。
【0057】
また、第1実施形態に係る胆管ステント1によれば、2つの支持部材40,50の各他方端部44,54が、胆汁流出口34の近傍に接続されているため、胆のう側から膜体30にかかる圧力に比べて十二指腸側から膜体30にかかる圧力が高くなったとしても、膜体30が胆のう側に裏返ってしまうこともなく、膜体30の突出する向きを維持することが可能となる。つまり、膜体の長さを短くすることにより胆管ステント全体の長さを従来よりも短くしたとしても、上記した弁機能を十分に発揮することが可能となる。
【0058】
したがって、第1実施形態に係る胆管ステント1は、胆管ステント全体の長さを従来よりも短くしつつ、弁機能を十分に発揮することが可能な胆管ステントとなる。
【0059】
第1実施形態に係る胆管ステント1においては、上記したように、膜体30を取り外した場合における2つの支持部材40,50の他方端部44,54の直線距離Lと、支持部材40,50を取り外した場合の胆汁流出口34の周長Cとの関係が「2L≧C」の関係式を満たすように構成されているため、「2つの支持部材40,50が互いに離隔する方向に沿って胆汁流出口34に力を加える」という構成を、比較的容易に実現することが可能となる。
【0060】
第1実施形態に係る胆管ステント1においては、支持部材40,50を取り外した場合の膜体30における胆汁流出口34の端面形状は楕円であり、当該楕円は、短径を1としたときに長径が2以上である。このような楕円からなる端面形状であれば、胆汁流出口34が閉じたときの形状とさほど大きく離れていないため、胆汁流出口34を閉じるために要する力を比較的小さく抑えることができ、結果として、2つの支持部材40,50及び膜体30の材料選択の自由度が大きい胆管ステントを、比較的容易に実現することが可能となる。
【0061】
第1実施形態に係る胆管ステント1においては、2つの支持部材40,50は、膜体30の外側に配設されている。これにより、膜体30の内側には2つの支持部材が存在しないため、胆汁流出口34が閉じたときの望ましくない隙間の発生を抑制することが可能となる。
【0062】
第1実施形態に係る胆管ステント1においては、ステント本体10の内周面を膜体30で覆うように構成されているため、胆管ステント1の内面に消化物等が付着しにくくなる。
【0063】
[第1実施形態の変形例]
第1実地形態において、膜体30の胆汁流出口34の端面形状は、例えば端面長手方向の略中央部が両端部に対して幅狭となる形状としてもよい。
具体的には、
図3(c)に示したように、膜体30aにおける胆汁流出口34aの対向する2つの辺が、端面長手方向の略中央部35aが互いに近接するように内側に湾曲し、略中央部35aの幅が両端部36a,37aの幅よりも狭い、いわゆる両凹状とすることができる。
【0064】
第1実施形態の変形例に係る膜体30aは、第1実施形態に係る膜体30と同様に、例えばディッピング法により管状体を形成し、当該管状体について、胆汁流出口34aに相当する部分における端面長手方向の両端をヒートプレスすることにより作製することができる。
【0065】
[第2実施形態]
図6(a)〜
図6(e)は、第2実施形態に係る胆管ステント2を説明するために示す図である。
図6(a)は胆管ステント2を模式的に示す斜視図であり、
図6(b)は胆管ステント2の上面図であり、
図6(c)は胆管ステント2の側面図であり、
図6(d)は胆汁流出口34が閉じたときの吹流し部60の端面図であり、
図6(e)は胆汁流出口34が開いたときの吹流し部60の端面図である。なお、
図6(a)〜
図6(e)において、
図1と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。また、
図6(d)及び
図6(e)において、発明の理解を容易にするため、吹流し部60の肉厚については、誇張して図示している。
【0066】
第2実施形態に係る胆管ステント2は、基本的には第1実施形態に係る胆管ステント1とよく似た構成を有するが、
図6(a)〜
図6(c)に示すように、吹流し部60をさらに備えている点で、第1実施形態に係る胆管ステント1とは異なる。
【0067】
吹流し部60は、管状の部材であって、膜体30の胆汁流出口34に接続されている。なお、第2実施形態に係る胆管ステント2においては、吹流し部60は、膜体30と一体形成されている。
【0068】
第1実施形態に係る胆管ステント1と同様に、胆汁が胆管ステント2の内部を通過しない状態(内圧がかかっていない状態)では、吹流し部60の端部64は閉じており、その形状は、
図6(d)に示したように、ほぼ真一文字の直線状である。一方、胆汁が胆のうから十二指腸側へ流れて胆汁が胆管ステント2の内部を通過する際には、内圧により吹流し部60の端部64が開く。吹流し部60の端部64が開いたときの形状(開口形状)は、胆汁が通過可能であれば特に限定はされないが、
図6(e)に示すように、楕円である。
【0069】
吹流し部60を構成する材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などを好ましく用いることができる。ほかには、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、シリコーン樹脂などを吹流し部の構成材料として用いることができる。
なお、第2実施形態に係る胆管ステント2においては、膜体30を構成する材料と吹流し部60を構成する材料とは同じであるが、膜体と吹流し部とが異種材料で構成されていてもよい。
【0070】
胆汁流出口34が開いた状態のとき、吹流し部60の端部64も同様に開いた状態となる(
図6(e)参照。)。これにより、胆のうから流れてくる胆汁は、胆汁流入口32からステント本体10内を通過して胆汁流出口34も通過し、さらに吹流し部60も通過して、十二指腸側へとスムーズに流れることとなる。
一方、胆のう側から膜体30にかかる圧力に比べて十二指腸側から膜体30にかかる圧力が高くなると、膜体30における胆汁流出口34が閉塞するとともに、吹流し部60の端部64が閉塞する(
図6(d)参照。)。その結果、十二指腸から胆のう側への逆流が阻止されることとなる。
【0071】
第2実施形態の胆管ステント2は、第1実施形態に係る胆管ステント1と同様の方法で作製することができる。この場合において、膜体30と吹流し部60とを一体で作製することができる。
【0072】
このように、第2実施形態に係る胆管ステント2は、第1実施形態に係る胆管ステント1とは吹流し部をさらに備えている点で異なるが、第1実施形態で説明した2つの支持部材40,50を備えているため、第1実施形態で説明した理由と同様の理由により、胆管ステント全体の長さを従来よりも短くしつつ、弁機能を十分に発揮することが可能な胆管ステントとなる。
【0073】
第2実施形態に係る胆管ステント2においては、上記した吹流し部60をさらに備えるため、十二指腸から胆のう側への逆流をより一層防止することができ、弁機能をさらに高めることが可能となる。
【0074】
第2実施形態に係る胆管ステント2は、吹流し部をさらに備えている点以外では、第1実施形態に係る胆管ステント1と同様の構成を有するため、第1実施形態に係る胆管ステント1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0075】
[第3実施形態]
図7(a)及び
図7(b)は、第3実施形態に係る胆管ステント3を説明するために示す図である。
図7(a)は胆管ステント3を模式的に示す斜視図であり、
図7(b)は胆管ステント3の上面図である。なお、
図7(a)及び
図7(b)において、
図1と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図8は、第3実施形態に係る胆管ステント3の使用方法の一例を模式的に示す図である。
【0076】
第3実施形態に係る胆管ステント3は、
図7(a)に示すように、径方向に拡張可能に構成された管状のステント本体110と、ステント本体110の内側に配置された管状の膜体130と、膜体130を支持する2つの支持部材40,50とを備える。胆管ステント3は、例えば自己拡張型の胆管ステントである。
【0077】
ステント本体110は、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、1つのフレーム112からなる。フレーム112は、第1実施形態で説明したフレーム12〜14と同様に、例えば、細い金属線がジグザグ状に折り返され、さらに略円筒状となるように構成されている。フレーム112を構成する金属線の材料としては、例えば、SUS316L等のステンレス鋼、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金を好ましく用いることができる。
【0078】
膜体130は、ステント本体110の内周面を覆いつつ、ステント本体110の一端部から突出するように設けられている。膜体130は、胆汁流出口132と、胆汁流出口134とを有する。
【0079】
なお、膜体130の形状(胆汁流出口134の端面形状及び胆管ステント3に内圧がかかったときの胆汁流出口134の開口形状)並びに膜体130を構成する材料については、第1実施形態で説明した膜体30と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0080】
第3実施形態に係る胆管ステント3を胆管内に留置するにあたっては、例えば
図8に示すように、弁構造を有しない他の胆管ステント9の内部に別体として取り付けて使用することもできる。
【0081】
ここで、他の胆管ステント9の構成について、
図8を用いて説明する。
他の胆管ステント9は、
図8に示すように、4つのフレーム911,912,913,914からなるステント本体910の外側に、例えばポリエステル樹脂などの樹脂材料で構成されたグラフト部材930を被覆・縫合したものである。フレーム911〜914は、第1実施形態で説明したフレーム12〜14と同様の構成からなる。なお、他の胆管ステント9は弁構造を有していない。
【0082】
このような弁構造を有しない他の胆管ステント9に、上記した第3実施形態に係る胆管ステント3を組み合わせることによって、新たに弁機能を付加することが可能となる。このとき、胆管ステント3を留置する向きが重要であり、胆汁流入口132が胆のう側を向き、胆汁流出口134が十二指腸側を向くようにして留置すると、膜体130及び2つの支持部材40,50の弁機能を効果的に発揮することができる。その結果、胆のうからの胆汁を十二指腸側に流すとともに十二指腸から胆のう側への逆流を防止することが可能となる。
また、胆管ステント3を他の胆管ステント9の内部に留置した後において、胆のう側から膜体130にかかる圧力に比べて十二指腸側から膜体130にかかる圧力が高くなったとしても、胆管ステント3は支持部材40,50を備えていることから、膜体130が胆のう側に裏返ってしまうこともなく、膜体130の突出する向きを維持することが可能となる。その結果、上記した弁機能を十分に発揮することが可能となる。
【0083】
以上、本発明の胆管ステントを上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0084】
(1)上記各実施形態においては、2つの支持部材を取り外した場合の、膜体における胆汁流出口の端面形状が、短径を1としたときに長径が2以上となるように設定された楕円である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば第1実施形態の変形例として説明したように、膜体における胆汁流出口の対向する2つの辺が、端面長手方向の略中央部が互いに近接するように内側に湾曲した両凹状(
図3(c)参照。)であってもよいし、膜体における胆汁流出口の対向する2つの辺のうち一方のみが内側に湾曲した平凹状(平凹レンズ状)であってもよいし、膜体における胆汁流出口の対向する2つの辺のうち一方が内側に湾曲し他方が外側に湾曲した凹メニスカス状(凹メニスカスレンズ状)であってもよい。また、略長方形状などの扁平形状であってもよい。
【0085】
(2)上記各実施形態においては、2つの支持部材が膜体の外側に配設されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2つの支持部材が膜体の内側に配設されていてもよいし、2つの支持部材が膜体の内部に埋設されていてもよい。なお、2つの支持部材が膜体の内側に配設されている場合又は膜体の内部に埋設されている場合において、胆汁流出口の端面形状が「長径a≧短径2b」に設定された楕円であるとき、当該楕円の短径又は長径は、楕円中心位置から胆汁流出口の内面までの距離を指す。
【0086】
(3)上記各実施形態においては、膜体がステント本体の内側に配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、膜体がステント本体の外側に配置されていてもよいし、膜体の内部にステント本体が埋設されていてもよい。ステント本体の外側に膜体が被覆されている場合又は膜体の内部にステント本体が埋設されている場合は、本発明の胆管ステントを胆管内に留置した後で当該胆管ステントを回収する必要が生じた際に、当該胆管ステントを回収しやすいというメリットがある。
【0087】
(4)上記第1及び第2実施形態においては、ステント本体として、3つのフレーム12〜14が連結部材15〜18で連結されたステント本体10を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、フレームの数が4つ以上で構成されたものや、連結部材が無くフレームが連続しているものなど、他の構成からなるステント本体を用いてもよい。上記第3実施形態においても同様に、1つのフレーム112からなるステント本体110に限定されるものではなく、2つ以上のフレームで構成されたステント本体であってもよい。
【0088】
(5)上記各実施形態においては、ステント本体及び支持部材が金属材料で構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、セラミックや樹脂などを材料として用いたものであってもよい。
【0089】
(6)上記各実施形態においては、ステント本体及び支持部材と膜体とが、熱による溶着によって接続されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、縫合糸による縫合や、接着剤又は溶剤による接着などの他の接合方法によって接続されていてもよい。
【0090】
(7)上記第2実施形態においては、膜体30と吹流し部60とが一体形成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、膜体と吹流し部とがそれぞれ別体として形成されたのち、接着等の手段によって膜体と吹流し部とが接合されたものであってもよい。
【0091】
(8)上記第3実施形態においては、ステント本体910の外側にグラフト部材930を被覆・縫合した他の胆管ステント9を例示して、このような弁構造を有しない他の胆管ステント9の内部に上記した胆管ステント3を留置する場合を例示して説明したが、他の胆管ステントとしてはこれに限定されるものではなく、例えば、ステント本体の内側にグラフト部材が被覆・縫合された胆管ステントや、金属のステント本体のみから構成された、いわゆるメタリックステントと呼ばれる胆管ステントに対しても、上記した胆管ステント3を留置することができる。
【0092】
(9)上記各実施形態においては、自己拡張型の胆管ステントである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バルーン拡張型の胆管ステントにも本発明を適用可能である。
【0093】
(10)本発明の胆管ステントを留置する位置について、上記第1実施形態では、
図5に示したように、総胆管の十二指腸側出口となる大十二指腸乳頭の部分に留置する場合を例示して説明したが、これに限定されるものではない。例えば、胆のう胆管と総肝管とが合流した部分の近傍位置など、総胆管におけるさらに胆のう側の位置であっても本発明の胆管ステントを留置できることはいうまでもない。
【0094】
(11)上記各実施形態においては、膜体を作製する際に、胆汁流出口に相当する部分における端面長手方向の両端をヒートプレスする場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、超音波や高周波を利用して当該部分を圧着してもよいし、接着剤や溶剤を用いて当該部分を接着(溶着)してもよい。
【0095】
(12)上記各実施形態においては、胆汁流出口が開いたときの形状(開口形状)が楕円である場合を例示して説明したが、胆汁が流出可能であれば特に限定されない。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0097】
[実施例]
上述の第1実施形態に係る胆管ステント1の構成をもとに、ステント本体の内側に配置され、かつ、ステント本体の一端部から突出するように設けられた膜体を、膜体外面から支持する2つの支持部材を備えるものを実施例とした。
具体的には、Ni−Ti合金からなるステント本体及び2つの支持部材の内側に、軟質ポリ塩化ビニル樹脂(DEHP75パーツ添加)からなる管状の膜体が有機溶剤によって溶着されたものを、実施例に係る試料とした。ステント本体は拡張時のステント径が10mmであり、ステント本体と溶着されている部分の膜体の径は10mmであった。胆汁流出口の開口形状は楕円であり、胆汁流出口の周長Cは約18mmであった。また、膜体を取り付ける前の2つの支持部材における他方端部間の直線距離Lは、約12mmであった。つまり、実施例に係る試料においては、「2L>C」の関係式を満たしており、2つの支持部材が互いに離隔する方向に沿って胆汁流出口に力を加えるように構成されている。
【0098】
[比較例]
ステント本体の内側に管状の膜体を配置しただけのもの(すなわち、2つの支持部材を備えていないもの)を比較例とした。
具体的には、Ni−Ti合金からなるステント本体の内側に、軟質ポリ塩化ビニル樹脂(DEHP75パーツ添加)からなる管状の膜体が有機溶剤によって溶着されたものを、比較例に係る試料とした。ステント本体は拡張時のステント径が10mmであった。ステント本体内に配置される膜体としては、径10mmの直管からなるものを用いた。すなわち、胆汁流出口の開口形状は真円である。
【0099】
上記した実施例及び比較例に係る試料について、各試料の弁機能を評価するため、以下の2種の試験を行った。
【0100】
[試験例1]
試験例1は、胆のうから十二指腸へ向かう流れに対する胆管ステントの開通性を評価するための試験である。胆管ステントの開通性を評価するにあたっては、
図9(a)及び
図9(b)に示す模擬胆道内に実施例及び比較例に係る試料を留置し、模擬胆道内を流れる液体の通液状態を確認することにより、胆管ステントの開通性を官能評価した。
【0101】
図9(a)及び
図9(b)は、試験例1として用いた模擬胆道950を説明するために示す図である。
図9(a)は各試料を配置する前の模擬胆道950を示す図であり、
図9(b)は模擬胆道950内に留置した試料Tに対して通液させている様子を模式的に示す図である。
【0102】
(1)試験方法
まず、
図9(a)に示す模擬胆道950を準備した。模擬胆道950は、ポリ塩化ビニル樹脂製の管状部材である。模擬胆道950は、試料が留置される留置部951と、シリンジ962が接続される注入口954と、模擬胆道950内の液体が排出される排出口955とを有する。留置部951は、小径部952と大径部953とを有し、段状に構成されている。小径部952の管径は9mmである。このような構成からなる模擬胆道950に、管内の流体の圧力を測定するためのマノメーター960(日本電産コパル電子株式会社製)を配設した。
【0103】
準備した模擬胆道950の留置部951に、実施例又は比較例に係る試料を留置した。このとき、いわゆる乳頭出しを想定して、試料の一部が小径部952から大径部953に突出するようにして試料を留置した。そして、模擬胆道950内をサラダ油で満たした状態で、着色水を充填したシリンジ962を注入口954に接続し、シリンジ962内の着色水を模擬胆道950内に注入した。着色水注入時にマノメーター960が示した圧力は、2mmHg未満であった。なお、シリンジ962内に充填した着色水としては、模擬胆道950内に充填されたサラダ油とは明確に分離するものを用いており、シリンジ962から注入された着色水の流れを十分に視認することが可能であった。
【0104】
(2)評価方法
模擬胆道950内に着色水を注入後、試料に対する着色水の通液状態(試料から流れ出てくる着色水の流出の程度)を目視で確認してスコア化した。当該スコア(以下、開通性スコア)は、小径部952側から試料内に流入した着色水が大径部953側に全く流れ出ない場合を「スコア0」とし、着色水が大径部953側に少量流れ出てくる場合を「スコア1」とし、着色水が大径部953側に流れ出てくるが流れに若干の抵抗が認められる(スコア1のときに比べて流出の程度が大きい)場合を「スコア2」とし、着色水が大径部953側に問題なく流れ出てくる(抵抗がほとんど認められない)場合を「スコア3」とした。
【0105】
(3)試験結果
実施例及び比較例に係る試料のいずれも、開通性スコアは「スコア3」であった。すなわち、実施例に係る試料の開通性は、比較例に係る試料の場合と同程度であった。このことから、胆のうから十二指腸へ向かう流れに対して、実施例に係る胆管ステントは十分な開通性を備えていることが確認できた。
【0106】
[試験例2]
試験例2は、十二指腸から胆のうへ向かう流れに対する胆管ステントの逆流防止性能を評価するための試験である。胆管ステントの逆流防止性能を評価するにあたっては、
図10(a)及び
図10(b)に示す模擬胆道内に実施例及び比較例に係る試料を留置し、模擬胆道内を流れる液体の通液状態を確認することにより、胆管ステントの逆流防止性能を官能評価した。
【0107】
図10(a)及び
図10(b)は、試験例2として用いた模擬胆道970を説明するために示す図である。
図10(a)は各試料を配置する前の模擬胆道970を示す図であり、
図10(b)は模擬胆道970内に留置した試料Tに対して通液させている様子を模式的に示す図である。
【0108】
(1)試験方法
まず、
図10(a)に示す模擬胆道970を準備した。模擬胆道970は、ポリ塩化ビニル樹脂製の管状部材である。模擬胆道970は、試料が留置される留置部971と、シリンジ982が接続される注入口974と、模擬胆道970内の液体が排出される排出口975とを有する。留置部971は、小径部972と大径部973とを有し、段状に構成されている。小径部972の管径は9mmである。このような構成からなる模擬胆道970に、管内の流体の圧力を測定するためのマノメーター980を配設した。
【0109】
準備した模擬胆道970の留置部971に、実施例又は比較例に係る試料を留置した。このとき、いわゆる乳頭出しを想定して、試料の一部が小径部972から大径部973に突出するようにして試料を留置した。そして、模擬胆道970内をサラダ油で満たした状態で、着色水を充填したシリンジ982を注入口974に接続し、マノメーター980の値が20mmHgとなるまでシリンジ982で圧力をかけながら、着色水を模擬胆道970内に注入した。
【0110】
(2)評価方法
模擬胆道970内に着色水を注入後、試料に対する着色水の通液状態(試料から流れ出てくる着色水の流出の程度)を目視で確認してスコア化した。当該スコア(以下、逆流防止スコア)は、着色水が小径部972側に抵抗無く流れ出てくる場合を「スコア0」とし、若干の抵抗は認められるが着色水が小径部972側に流れ出てくる場合を「スコア1」とし、着色水が小径部972側に少量流れ出てくる(スコア1のときに比べて流出の程度が少ない)場合を「スコア2」とし、大径部973側から試料内に流入した着色水が小径部972側に全く流れ出ない場合を「スコア3」とした。
【0111】
(3)試験結果
比較例に係る試料においては、逆流防止スコアが「スコア0」であったのに対し、実施例に係る試料においては、逆流防止スコアが「スコア3」であった。すなわち、実施例に係る試料の逆流防止性能は、比較例に係る試料の場合を遥かに上回るものであった。このことから、十二指腸から胆のう側への逆流に対して、実施例に係る胆管ステントは十分な逆流防止性能を備えていることが確認できた。
【0112】
[試験例1及び2のまとめ]
試験例1より、胆のうから十二指腸へ向かう流れに対して、実施例に係る胆管ステントは十分な開通性を備えていることが確認できた。また、試験例2より、十二指腸から胆のう側への逆流に対して、実施例に係る胆管ステントは十分な逆流防止性能を備えていることが確認できた。
以上より、実施例に係る胆管ステント(すなわち本発明の胆管ステント)は、十分に優れた弁機能を備えていることが確認できた。
【0113】
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2012年1月30日出願の日本特許出願(特願2012−016681)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。