特許第6482170号(P6482170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482170エネルギ・マネジメント・システム、電力システム、エネルギ管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482170
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】エネルギ・マネジメント・システム、電力システム、エネルギ管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20190304BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J7/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-272467(P2013-272467)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-126694(P2015-126694A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2015年12月18日
【審判番号】不服2017-6403(P2017-6403/J1)
【審判請求日】2017年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕
(72)【発明者】
【氏名】大黒 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 恒宏
【合議体】
【審判長】 酒井 朋広
【審判官】 山澤 宏
【審判官】 國分 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−257406(JP,A)
【文献】 特開2005−312138(JP,A)
【文献】 特開2013−188077(JP,A)
【文献】 特開2012−257365(JP,A)
【文献】 特開2003−125537(JP,A)
【文献】 特開2012−247406(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0127664(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00- 5/00
H02J 7/00- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の運用計画を生成する運用計画生成部と、
前記運用計画生成部が生成した運用計画の前記二次電池の充放電の隣り合った切り替わりの間隔によって示される時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定する電力量特定部と、
最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が、前記電力量特定部が特定した電力量より大きい場合に、最大の充電効率に係る電力を充放電電力として特定し、最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が、前記電力量特定部が特定した電力量より小さい場合に、前記時間帯に係る時間で目標電力量を充放電できる電力を充放電電力として特定する充放電電力特定部と、
特定した前記充放電電力で、前記電力量特定部が特定した電力量を前記二次電池に充放電させる充放電計画を生成する充放電計画生成部と、
前記充放電計画生成部が生成した前記充放電計画の電力変動を緩和した充放電計画を生成するフィルタと
を備えるエネルギ・マネジメント・システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギ・マネジメント・システムと、
前記エネルギ・マネジメント・システムが備える充放電計画生成部が生成する充放電計画に基づいて、制御信号を出力する制御装置と、
前記制御装置が出力する制御信号に基づいて、直流電力と交流電力とを双方向に電力変換可能なインバータと、
を備える電力システム。
【請求項3】
二次電池の運用計画を生成し、
生成した運用計画の前記二次電池の充放電の隣り合った切り替わりの間隔によって示される時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定し、
最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が前記特定した電力量より大きい場合に、最大の充電効率に係る電力を充放電電力として特定し、最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が前記特定した電力量より小さい場合に、前記時間帯に係る時間で目標電力量を充放電できる電力を充放電電力として特定し、
前記充放電電力で、特定した電力量を前記二次電池に充放電させる充放電計画を生成し、
前記生成した前記充放電計画の電力変動を緩和した充放電計画を生成する
エネルギ管理方法。
【請求項4】
エネルギ・マネジメント・システムのコンピュータを、
二次電池の運用計画を生成する運用計画生成手段と、
前記運用計画生成手段が生成した運用計画の前記二次電池の充放電の隣り合った切り替わりの間隔によって示される時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定する電力量特定手段と、
最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が、前記電力量特定部が特定した電力量より大きい場合に、最大の充電効率に係る電力を充放電電力として特定し、最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が、前記電力量特定部が特定した電力量より小さい場合に、前記時間帯に係る時間で目標電力量を充放電できる電力を充放電電力として特定する充放電電力特定手段と、
前記充放電電力で、前記電力量特定手段が特定した電力量を前記二次電池に充放電させる充放電計画を生成する充放電計画生成手段と、
前記充放電計画生成部が生成した前記充放電計画の電力変動を緩和した充放電計画を生成するフィルタと
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ・マネジメント・システム、電力システム、エネルギ管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置や風力発電装置が発電する電力は天候によって変動する。ビルやタウンに太陽光発電装置や風力発電装置などの分散型電源が大量に導入された場合、分散型電源が出力する電力変動によりビルやタウンの系統に電力変動が発生することが考えられる。
特許文献1には、分散型電源を使用した場合に系統に発生する電力変動を抑制すると共に、蓄電装置の残存容量を管理する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−55671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電システムなどが備える蓄電装置の充電には商用系統からの電力を利用することが多い。そのため、蓄電装置を効率的に、経済的に充電するための技術が求められていた。
【0005】
そこでこの発明は、上記の課題を解決することのできるエネルギ・マネジメント・システム、電力システム、エネルギ管理方法、及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、エネルギ・マネジメント・システムは、二次電池の運用計画を生成する運用計画生成部と、前記運用計画生成部が生成した運用計画の前記二次電池の充放電の隣り合った切り替わりの間隔によって示される時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定する電力量特定部と、最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が、前記電力量特定部が特定した電力量より大きい場合に、最大の充電効率に係る電力を充放電電力として特定し、最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が、前記電力量特定部が特定した電力量より小さい場合に、前記時間帯に係る時間で目標電力量を充放電できる電力を充放電電力として特定する充放電電力特定部と、特定した前記充放電電力で、前記電力量特定部が特定した電力量を前記二次電池に充放電させる充放電計画を生成する充放電計画生成部と、前記充放電計画生成部が生成した前記充放電計画の電力変動を緩和した充放電計画を生成するフィルタとを備える。
【0008】
また本発明の別の態様によれば、エネルギ・マネジメント・システムは、前記充放電計画生成部が生成した前記充放電計画電力変動を緩和した充放電計画を生成するフィルタを備えていてもよい
【0009】
また本発明の別の態様によれば、電力システムは、上記エネルギ・マネジメント・システムと、前記エネルギ・マネジメント・システムが備える充放電計画生成部が生成する充放電計画に基づいて、制御信号を出力する制御装置と、前記制御装置が出力する制御信号に基づいて、直流電力と交流電力とを双方向に電力変換可能なインバータを備える。
【0012】
また本発明の別の態様によれば、エネルギ管理方法は、二次電池の運用計画を生成し、生成した運用計画の前記二次電池の充放電の隣り合った切り替わりの間隔によって示される時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定し、最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が前記特定した電力量より大きい場合に、最大の充電効率に係る電力を充放電電力として特定し、最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が前記特定した電力量より小さい場合に、前記時間帯に係る時間で目標電力量を充放電できる電力を充放電電力として特定し、前記充放電電力で、特定した電力量を前記二次電池に充放電させる充放電計画を生成し、前記生成した前記充放電計画の電力変動を緩和した充放電計画を生成する。
【0013】
また本発明の別の態様によれば、プログラムは、エネルギ・マネジメント・システムのコンピュータを、二次電池の運用計画を生成する運用計画生成手段と、前記運用計画生成手段が生成した運用計画の前記二次電池の充放電の隣り合った切り替わりの間隔によって示される時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定する電力量特定手段と、最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が、前記電力量特定部が特定した電力量より大きい場合に、最大の充電効率に係る電力を充放電電力として特定し、最大の充電効率の電力で前記時間帯に係る時間の間充放電したときの電力量が、前記電力量特定部が特定した電力量より小さい場合に、前記時間帯に係る時間で目標電力量を充放電できる電力を充放電電力として特定する充放電電力特定手段と、前記充放電電力で、前記電力量特定手段が特定した電力量を前記二次電池に充放電させる充放電計画を生成する充放電計画生成手段と、前記充放電計画生成部が生成した前記充放電計画の電力変動を緩和した充放電計画を生成するフィルタと、として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によるエネルギ・マネジメント・システムによれば、蓄電装置を効率的に、経済的に充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の実施形態によるエネルギ・マネジメント・システム10を備える電力システム1の構成の一例を示す図である。
図2】第一の実施形態による運用計画生成部102が生成する二次電池203の運用計画の一例を示す図である。
図3】第一の実施形態による電力量特定部103が特定する二次電池203を時間帯ごとに充放電すべき電力量の一例を示す図である。
図4】第一の実施形態による充放電電力特定部104が二次電池203を充放電する際の充放電効率の一例を示す図である。
図5フィルタ106が充放電計画における電力の変化を緩和する一例を示す図である
図6第二の実施形態による電力量特定部103が特定する目標電力量の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一の実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態によるエネルギ・マネジメント・システム10を備える電力システム1の構成の一例を示す図である。
図1で示す第一の実施形態による電力システム1は、ビルやタウンで使用される例を示している。図1には、電力システム1と共に、系統2と、通信網3と、電力検出部30と、発電設備40と、負荷設備50と、通信装置311と、通信装置411と、通信装置511が示されている。
【0017】
図1で示すように、第一の実施形態による電力システム1は、エネルギ・マネジメント・システム10と、蓄電システム20とを備える。
エネルギ・マネジメント・システム10は、情報取得部101と、運用計画生成部102と、電力量特定部103と、充放電電力特定部104と、充放電計画生成部105と、フィルタ106と、記憶部107と、通信装置111とを備える。
蓄電システム20は、制御装置201と、インバータ202と、二次電池203と、通信装置211とを備える。
【0018】
エネルギ・マネジメント・システム10が備える情報取得部101は、外部から情報を取得する。情報取得部101は、外部の入力装置または通信装置111を介して、気象情報、発電設備40が発電する発電電力情報、負荷設備50が消費する消費電力情報、二次電池203の充電率の情報など、電力システム1に用いる情報を取得する。情報取得部101は、取得した情報を記憶部107に記録する。情報取得部101は、取得した情報を運用計画生成部102に出力する。
【0019】
運用計画生成部102は、二次電池203の運用計画を生成する。運用計画生成部102は、情報取得部101から入力した情報、過去の発電電力情報や消費電力情報などの実績情報、時間帯ごとの電気料金情報などに基づいて、二次電池203の運用計画を生成する。運用計画生成部102は、生成した運用計画を電力量特定部103に出力する。
【0020】
電力量特定部103は、二次電池203の運用計画の時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定する。電力量特定部103は、運用計画生成部102から入力した運用計画に基づいて、二次電池203の運用計画の時間帯で充放電すべき電力量を特定する。電力量特定部103は、特定した電力量を充放電電力特定部104に出力する。
【0021】
充放電電力特定部104は、電力量特定部103が特定した電力量を、二次電池203の運用計画の時間帯内で充放電するときに、充放電効率が最も高くなる充放電電力を特定する。充放電電力特定部104は、電力量特定部103から入力した電力量特定部103が特定した電力量、充放電時の電力と効率の関係に基づいて、充放電効率が最も高くなる充放電電力を特定する。充放電電力特定部104は、特定した充放電効率が最も高くなる充放電電力を充放電計画生成部105に出力する。
【0022】
充放電計画生成部105は、電力量特定部103が特定した電力量を二次電池203に充放電させる充放電計画を生成する。充放電計画生成部105は、充放電電力特定部104から入力した充放電効率が最も高くなる充放電電力に基づいて、電力量特定部103が特定した電力量を二次電池203に充放電させる充放電計画を生成する。充放電計画生成部105は、生成した充放電計画をフィルタ106に出力する。
【0023】
フィルタ106は、充放電計画生成部105が生成した充放電計画における電力計画の変化を緩和する。フィルタ106は、電力計画の変化を緩和した充放電計画を通信装置111を介して通信装置211に送信する。
記憶部107は、電力システム1に必要な情報を記憶する。
通信装置111は、通信網3を介して、通信装置211、311、411、511と通信する。
【0024】
蓄電システム20が備える制御装置201は、インバータ202を制御する。制御装置201は、通信装置211を介して入力したフィルタ106が電力計画の変化を緩和した充放電計画や、電力検出部30の電力検出結果に基づいて、インバータ202にインバータ制御信号を出力する。
【0025】
インバータ202は、双方向インバータである。インバータ202は、二次電池203が出力する直流電力を交流電力に変換する。インバータ202は、変換した交流電力を系統2に出力、すなわち放電する。インバータ202は、系統2の交流電力を直流電力に変換する。インバータ202は、変換した直流電力を二次電池203に出力、すなわち充電する。インバータ202は、制御装置201から入力したインバータ制御信号に基づいて、二次電池203を充放電する。
二次電池203は、インバータ202を介して系統2との間で電力を充放電する。
通信装置211は、通信網3を介して、通信装置111、311、411、511と通信する。
【0026】
電力検出部30は、系統2における電力を検出する。電力検出部30は、検出した電力を通信装置311を介して、通信装置211に送信する。電力検出部30が検出する系統2における電力は、系統2の商用電力と、蓄電システム20が充放電する電力と、発電設備40が発電する電力と、負荷設備50が消費する電力の総和で示される電力である。
通信装置311は、通信網3を介して、通信装置111、211、411、511と通信する。
【0027】
発電設備40は、電力を発電する。発電設備40は、発電した電力の発電電力情報を通信装置411を介して、通信装置111に送信する。発電設備40は、例えば本実施形態では太陽光発電装置や風力発電装置などの再生可能エネルギ発電を行う装置である。本発明の実施形態では、ビルやタウンが発電設備40を備えるものとする。
通信装置411は、通信網3を介して、通信装置111、211、311、511と通信する。
【0028】
負荷設備50は、電力を消費する。負荷設備50は、消費した電力の消費電力情報を通信装置511を介して、通信装置111に送信する。負荷設備50は、照明、エレベータ、エスカレータなどの電力を消費するビルやタウンが備える設備である。
通信装置511は、通信網3を介して、通信装置111、211、311、411と通信する。
系統2は、交流電力を送受電する。具体的には、系統2は、蓄電システム20と交流電力を送受電する。系統2は、発電設備40から電力を受電する。系統2は、負荷設備50に電力を送電する。
通信網3は、通信装置111、211,311,411,511間で行う通信の通信情報を伝送する。
【0029】
次に、電力システム1が備えるエネルギ・マネジメント・システム10が蓄電システム20に出力する充放電計画がどのように生成されるかを説明する。
記憶部107は、情報取得部101が過去に、外部の入力装置または通信装置111を介して取得した、気象情報、発電設備40が発電する発電電力情報、負荷設備50が消費する消費電力情報、二次電池203の充電率など、電力システム1に必要な情報を記憶しているものとする。
情報取得部101は、外部の入力装置または通信装置111を介して、電力システム1を運用日の気象情報を取得する。情報取得部101は、電力システム1の現在(運用日)の二次電池203の充電率を取得する。情報取得部101は、電力システム1を運用日の時間帯ごとの電気料金情報を取得する。情報取得部101は、取得した気象情報と、二次電池203の充電率の情報と、電気料金情報とを運用計画生成部102に出力する。
運用計画生成部102は、情報取得部101から気象情報と、二次電池203の充電率の情報と、電気料金情報とを入力すると、過去の気象情報と発電設備40の発電電力の関係を示す実績情報を記憶部107から読み出す。運用計画生成部102は、過去の気象情報と負荷設備50の消費電力の関係を示す実績情報を記憶部107から読み出す。運用計画生成部102は、気象情報と、二次電池203の充電率の情報と、電気料金情報と、過去の気象情報と発電設備40の発電電力の関係を示す実績情報と、過去の気象情報と負荷設備50の消費電力の関係を示す実績情報とに基づいて、二次電池203の運用計画を生成する。
【0030】
図2は、第一の実施形態による運用計画生成部102が生成する二次電池203の運用計画の一例を示す図である。
この図で示す運用計画の縦軸は残存容量計画である。また、この図で示す運用計画の横軸は時間[分]である。
例えば、記憶部107に過去の気象情報と発電設備40の発電電力と負荷設備50の消費電力の関係を示す実績情報がデータベースとして記録されているとする。運用計画生成部102は、そのデータベースを読み出す。運用計画生成部102は、電力システム1を運用日が10月10日であり気象情報として晴れ情報である場合、そのデータベースから過去の10月10日前後の日付で晴れの気象情報が最も近い気象情報を特定する。運用計画生成部102は、データベースの特定した気象情報に関連付けられている発電電力と消費電力のそれぞれを電力発電設備40の発電電力と、負荷設備50の消費電力とみなす。運用計画生成部102は、これらの電力からどの時間帯にどの程度の電力要求があるかを特定する。
また、運用計画生成部102は、最新の電気料金情報から電気料金が比較的安い時間帯と比較的高い時間帯を特定する。そして、運用計画生成部102は、電気料金が安い時間帯に二次電池203を充電し、電気料金が高い時間帯に二次電池203を放電することにより、ダイナミックプライシングを実現するように計画する。また、運用計画生成部102は、系統2側からの消費電力の低減要求であるデマンドレスポンスやピーク電力の低減要求であるピークカットなどにも対応できるように計画する。
このように、運用計画生成部102は、図2で示すような二次電池203の運用計画を生成する。そして、運用計画生成部102は、生成した運用計画を電力量特定部103に出力する。
【0031】
電力量特定部103は、運用計画生成部102から運用計画を入力すると、二次電池203の運用計画の時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定する。電力量特定部103が入力する運用計画は、二次電池203の残存容量計画、すなわち二次電池203が蓄える電力量をどのように変化させるかの計画である。従って、電力量特定部103は、図2で示した残存容量計画の変化量を求め、その変化量となるような電力で二次電池203を充放電する。
【0032】
図3は、第一の実施形態による電力量特定部103が特定する二次電池203を時間帯ごとに充放電すべき電力量の一例を示す図である。
この図で示す二次電池203を時間帯ごとに充放電すべき電力量(以下、目標電力量)の縦軸は電力量計画である。また、この図で示す目標電力量の横軸は時間[分]である。
例えば、電力量特定部103は、運用計画生成部102から入力した運用計画を時間微分する。これにより、電力量特定部103は、残存容量計画の変化量を演算し求める。そして、電力量特定部103は、所定の時間帯ごと、例えば30分ごとに残存容量計画の変化量を特定する。ここで電力量特定部103が所定の時間帯ごとに特定した残存容量計画が、目標電力量である。
このように、電力量特定部103は、図3で示すような目標電力量を特定する。そして、電力量特定部103は、特定した目標電力量を充放電電力特定部104に出力する。
【0033】
充放電電力特定部104は、電力量特定部103から目標電力量を入力すると、目標電力量を時間帯内で充放電するときに、充放電効率が最も高くなる充放電電力を特定する。
ところで、二次電池203を充電する場合、(交流端充電電力量[キロワット時])=(残存容量計画[キロワット時])÷(充電効率)÷(放電効率)で求められる効率を求めることが望ましい。二次電池203を充電する場合に抵抗によって熱となる損失が発生する。そのため、二次電池203に10[キロワット時]の電力量を充電するには損失として失われる電力を差し引いて10[キロワット時]になるように充電する必要がある。
なお、目標電力量は放電効率を含んだ電力量である。そのため、二次電池203の充電時には放電効率で除算する必要がある。また、二次電池203の放電時には放電効率で乗算する必要がない。
【0034】
図4は、第一の実施形態による充放電電力特定部104が二次電池203を充放電する際の充放電効率の一例を示す図である。
この図で示す二次電池203の充放電効率の縦軸は効率[パーセント]である。また、この図で示す二次電池203の充放電効率の横軸は充放電する電力[キロワット]である。
例えば、充放電電力特定部104は、図4における最大の充電効率の電力で時間帯を示す時間充電した場合の、放電効率を含む残存容量の増加量を(残存容量増加量[キロワット時])=(充電電力[キロワット])×(充電効率)×(放電効率)×(時間[時])と算出する。そして、充放電電力特定部104は、算出した(残存容量増加量[キロワット時])と、目標電力量とを比較する。
【0035】
残存容量増加量が目標電力量よりも大きい場合、目標電力量を所定の時間帯内に充電できることがわかる。そのため、充放電電力特定部104は、最大の効率となる電力Aで充電し、時間帯に充放電すべき電力量に達した場合に充電を終了するように充放電計画を生成する。
【0036】
残存容量増加量が目標電力量よりも小さい場合、最大の充電効率に対応する電力Aで二次電池203を充電しても所定の時間帯内に充電が完了しないことを示している。
この場合、充放電電力特定部104は、充電電力を電力Aよりも大きくして再計算する。そして、充放電電力特定部104は、目標電力量を所定の時間内で充電できる電力になるまで大きくする。
【0037】
また、充放電電力特定部104は、図4における最大の放電効率の電力に時間帯を示す時間を乗算した電力量と、目標電力量とを比較する。そして、充電の場合と同様に、最大の放電効率の電力に時間帯を乗算した電力量が目標電力量よりも大きい場合、充放電電力特定部104は、最大の効率となる電力Bで放電し、目標電力量に達した場合に放電を終了するように充放電計画を生成する。
【0038】
最大の放電効率の電力に時間帯を乗算した電力量が目標電力量よりも小さい場合、最大の放電効率に対応する電力Bで二次電池203を放電しても所定の時間帯内に放電が完了しないことを示している。
この場合、充放電電力特定部104は、放電電力を電力Bよりも大きくして再計算する。そして、充放電電力特定部104は、目標電力量を所定の時間内で放電できる電力になるまで大きくする。
このようにすることで、充放電電力特定部104は、所定の時間帯内の充放電効率が最も高くなる充放電電力を特定することができる。充放電電力特定部104は、各時間帯に対して充放電効率が最も高くなる充放電電力を特定する度に、特定した充放電電力における充放電時間を算出する。そして、充放電電力特定部104は、特定した充放電電力と充放電時間とを算出する度に充放電計画生成部105に出力する。
【0039】
充放電計画生成部105は、充放電電力特定部104から充放電電力と充放電時間とを入力する度に、入力した充放電電力と充電時間とを1つのデータテーブルに追加して充放電効率が最も高くなる充放電電力で二次電池203に充放電させる充放電計画を生成する。
【0040】
放電計画生成部105が生成する充放電計画は、充放電効率のよい充放電電力で時間帯の一部の時間だけ充放電させる計画である。
充放電計画生成部105は、生成した充放電計画をフィルタ106に出力する。
【0041】
フィルタ106は、充放電計画生成部105から充放電計画を入力すると、入力した充放電計画における電力の変化を緩やかにする。
【0042】
図5は、フィルタ106が充放電計画における電力の変化を緩和する一例を示す図である。
この図で示す充放電計画における電力の変化の緩和の縦軸は電力計画[キロワット]である。また、この図で示す充放電計画における電力の変化の緩和の横軸は時間[分]である。
の図で示す破線は充放電計画生成部105が出力した充放電計画であり、実線はフィルタ106が出力した充放電計画である。
破線で示す充放電計画生成部105が出力する充放電計画がフィルタ106を通過せずに通信装置211に出力された場合、充放電計画を受信する制御装置201は、インバータ202に対して二次電池203の充電電力を急激に増大させる制御を行う。その場合、系統2の電力が急激に変動する。電力検出部30は系統2の電力変動を検出して、通信装置311を介して通信装置211に送信する。制御装置201は、電力検出部30が検出した系統2の電力変動を抑制するようにインバータ202を制御し二次電池203を放電する。このように、系統2の電力変動を検出した電力検出部30が直接検出結果を通信装置211に出力する。しかしながら、制御装置201が電力検出部30の検出結果を受信し、インバータ202を直ちに制御を開始しても、実際に電力変動が抑制されるまでにはタイムラグが生じてしまう。
【0043】
それに対して、破線で示す充放電計画生成部105が出力する充放電計画がフィルタ106を通過して通信装置211に出力された場合、充放電計画を受信する制御装置201は、インバータ202に対して二次電池203の充電電力を徐々に増大させる制御を行う。その場合、系統2の電力が徐々に変動する。電力検出部30は系統2の電力変動を検出して、通信装置311を介して通信装置211に送信する。制御装置201は、電力検出部30が検出した系統2の電力変動を抑制するようにインバータ202を制御し二次電池203を放電する。このように、系統2の電力変動を検出した電力検出部30が直接検出結果を通信装置211に出力する。制御装置201が電力検出部30の検出結果を受信し、インバータ202を直ちに制御し、二次電池203を放電させる。フィルタ106を用いる場合、二次電池203の充放電はゆっくり行われるので、制御装置201を備える蓄電システム20は、系統2における電力変動を抑制することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態によるエネルギ・マネジメント・システム10と蓄電システム20を備える電力システム1について説明した。
本発明の実施形態によるエネルギ・マネジメント・システム10は、運用計画生成部102と、電力量特定部103と、充放電電力特定部104と、充放電計画生成部105とを備える。運用計画生成部102は、二次電池203の運用計画(時刻と二次電池203の残存容量との関係を示す)を生成する。電力量特定部103は、運用計画生成部102が生成した運用計画の時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定する。充放電電力特定部104は、電力量特定部103が特定した電力量を、時間帯内で充放電するときに、充放電効率が最も高くなる充放電電力を特定する。充放電計画生成部105は、充放電電力で、電力量特定部103が特定した電力量を二次電池203に充放電させる充放電計画を生成する。
このようにすれば、電力システム1は蓄電装置を効率的に、経済的に充電できる。
【0045】
<第二の実施形態>
本発明の第二の実施形態によるエネルギ・マネジメント・システム10と蓄電システム20を備える電力システム1について説明する。
第二の実施形態によるエネルギ・マネジメント・システム10の電力量特定部103、充放電電力特定部104と、充放電計画生成部105は、時間帯が二次電池203の充放電の隣り合った切り替わりの間隔であるものとして演算する。
【0046】
図6は、第二の実施形態による電力量特定部103が特定する目標電力量の一例を示す図である。
この図で示す目標電力量の縦軸は電力量計画である。第二の実施形態による電力量特定部103は、時間帯が二次電池203の充放電の隣り合った切り替わりの間隔であるものとしている。従って、図6で示すように、時間帯の長さは様々である。
【0047】
放電計画生成部105が生成する充放電計画は、第一の実施形態による充放電計画生成部105が生成する充放電計画とは異なり、時間帯は二次電池203の充放電の隣り合った切り替わりの間隔である。
【0048】
以上、本発明の実施形態によるエネルギ・マネジメント・システム10と蓄電システム20を備える電力システム1について説明した。
本発明の実施形態によるエネルギ・マネジメント・システム10は、運用計画生成部102と、電力量特定部103と、充放電電力特定部104と、充放電計画生成部105とを備える。運用計画生成部102は、二次電池203の運用計画(時刻と二次電池203の容量との関係を示す)を生成する。電力量特定部103は、運用計画生成部102が生成した運用計画の時間帯ごとに、当該時間帯で充放電すべき電力量を特定する。充放電電力特定部104は、電力量特定部103が特定した電力量を、時間帯内で充放電するときに、充放電効率が最も高くなる充放電電力を特定する。充放電計画生成部105は、充放電効率が最も高くなる充放電電力で、電力量特定部103が特定した電力量を二次電池203に充放電させる充放電計画を生成する。
このようにすれば、電力システム1は蓄電装置を効率的に、経済的に充電できる。
【0049】
なお本発明の実施形態について説明したが、上述のエネルギ・マネジメント・システム10、蓄電システム20は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0050】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0052】
1・・・電力システム
2・・・系統
3・・・通信網
10・・・エネルギ・マネジメント・システム
20・・・蓄電システム
30・・・電力検出部
40・・・発電設備
50・・・負荷設備
101・・・情報取得部
102・・・運用計画生成部
103・・・電力量特定部
104・・・充放電電力特定部
105・・・充放電計画生成部
106・・・フィルタ
107・・・記憶部
108・・・効率演算補正部
111、211、311、411、511・・・通信装置
201・・・制御装置
202・・・インバータ
203・・・二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6