特許第6482210号(P6482210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482210建物のスリーブ貫通部施工構造及び施工方法並びにキャップ材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482210
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】建物のスリーブ貫通部施工構造及び施工方法並びにキャップ材
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   F24F13/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-178336(P2014-178336)
(22)【出願日】2014年9月2日
(65)【公開番号】特開2016-53425(P2016-53425A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 拓磨
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−345714(JP,A)
【文献】 特開2014−137154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の貫通穴付き構造体の前記貫通穴に設けられるスリーブと、
前記スリーブの端部の開口に着脱可能に設けられるキャップ材と、
を備え、前記スリーブの外周には径方向外側へ突出して前記貫通穴付き構造体に固定される取付フランジが設けられ、かつ前記スリーブの外周における前記取付フランジよりも前記端部側の部分には径方向外側へ突出する環状の係止部材が設けられており、
前記キャップ材が、前記開口を覆う可撓性のカバー部と、前記カバー部の周縁に設けられた環状かつ伸縮可能な縁紐とを有し、
前記縁紐が、前記係止部材の前記取付フランジ側を向く面又は前記スリーブにおける前記係止部材と前記取付フランジとの間の外周面の全周に弾性的に係止されることを特徴とするスリーブ貫通部施工構造。
【請求項2】
前記スリーブが、外筒体と、前記外筒体の内部に設けられた内筒体と、これら外筒体及び内筒体の間に設けられた環状の断熱層と、を有し、
前記外筒体の屋外側の端部に前記係止部材となる水返しフランジが形成されており、
前記キャップ材のカバー部が、前記内筒体の屋外側の開口を覆うとともに前記断熱層の屋外側の端面に被さり、更に前記カバー部の外周部が、前記水返しフランジを屋外側から屋内側へ包み込み、前記縁紐が、前記水返しフランジの前記取付フランジ側を向く屋内側の面又は前記スリーブにおける前記水返しフランジと前記取付フランジとの間の外周面に弾性的に係止されることを特徴とする請求項1に記載のスリーブ貫通部施工構造。
【請求項3】
施工中の建物の貫通穴付き構造体の前記貫通穴にスリーブを設け、前記スリーブの外周から径方向外側へ突出された取付フランジを前記貫通穴付き構造体に固定するとともに、
可撓性のカバー部と、前記カバー部の周縁に設けられた環状かつ伸縮可能な縁紐とを有するキャップ材を用意し、
前記スリーブの端部の開口を前記カバー部にて覆うとともに、
前記縁紐を前記スリーブの前記取付フランジよりも前記端部側の部分から径方向外側へ突出された環状の係止部材の前記取付フランジ側を向く面又は前記スリーブにおける前記係止部材と前記取付フランジとの間の外周面の全周に弾性的に係止し、
所要の期間後に前記キャップ材を取り外すことを特徴とするスリーブ貫通部施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物のスリーブ貫通部の施工構造及び施工方法、並びに該施工に用いるキャップ材に関し、特に外壁や鉄骨梁等の構造体の施工時にこれを貫通するスリーブ(筒体)を設置した際にスリーブ内への異物侵入を防止するのに適した施工構造及び施工方法、並びにキャップ材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、住居等の木造建物の外壁には、通常、換気等のための貫通穴が設けられている(特許文献1、2等参照)。この貫通穴に換気ダクトの屋外側の端部のスリーブが嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−64378号公報
【特許文献2】特開2004−309095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の施工中においては、外壁等に設置したスリーブの開口が外部に露出した状態になる期間がある。この露出期間中に雨水や塵埃等の異物がスリーブの内部に入り込むおそれがあり、これを放置すると換気性能等に影響が出てしまう。そこで一般的には、スリーブの端部の開口を養生テープ(易剥離性粘着テープ)で塞ぐことで、異物の侵入を防いでいる。しかし、通常、養生テープの幅はスリーブの直径より小さいため、複数本の養生テープ片が必要であり、かつ各養生テープ片の両端をスリーブの開口の縁にしっかりと貼り付けなければならず、煩雑で時間がかかる。また、最終的には、これら養生テープ片をスリーブから剥がす必要があるが、養生テープは、易剥離性であるとは言ってもある程度の粘着性を有しているため、剥離には多少の手間がかかる。さらには、一度使った養生テープ片は廃棄せざるを得ず、何度も使い回すことができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、本発明に係るスリーブ貫通部施工構造は、
建物の貫通穴付き構造体の前記貫通穴に設けられるスリーブと、
前記スリーブの端部の開口に着脱可能に設けられるキャップ材と、
を備え、前記キャップ材が、
前記開口を覆う可撓性のカバー部と、
前記カバー部の周縁に設けられた環状かつ伸縮可能な縁紐と
を有し、前記縁紐が、前記スリーブの前記端部の全周に弾性的に係止されることを特徴とする。
これによって、スリーブの端部の開口をキャップ材で簡易に塞ぐことができ、異物がスリーブ内に入り込むのを防止できる。また、前記開口の閉塞が不要になった時は、例えばカバー部を摘まんで引っ張ることによって、キャップ材をスリーブから簡単に引き抜くことができる。これによって、スリーブ貫通部の施工を効率的に行うことができ、工期を短縮できる。更には、取り外したキャップ材を再使用することも可能であり、資材コストを低減できる。
前記縁紐の自然状態(引っ張り力が作用していない状態)における周長が、前記スリーブの端部の周長よりも短いことが好ましい。これによって、縁紐を伸長させてスリーブの端部に確実に弾性的に係止できる。
前記異物は、雨水、雪、塵埃、小動物等の他、被覆材や塗料の飛散体をも含む。
【0006】
前記スリーブが、外筒体と、前記外筒体の内部に設けられた内筒体と、これら外筒体及び内筒体の間に設けられた環状の断熱層と、を有し、前記外筒体の屋外側の端部には、径方向外側へ突出する環状の水返しフランジが形成されていることが好ましい。
前記キャップ材のカバー部が、前記内筒体の屋外側の開口を覆うとともに前記断熱層の屋外側の端面に被さり、更に前記カバー部の外周部が、前記水返しフランジを屋外側から屋内側へ包み込み、前記縁紐が、前記水返しフランジの屋内側の面又は前記スリーブにおける前記水返しフランジよりも屋内側の外周面に弾性的に係止されることが好ましい。
これによって、水返しフランジが縁紐の係止部材となることで、キャップ材をスリーブの端部に一層安定的に配置できる。また、カバー部が内筒体の開口及び断熱層の端面を覆うことで、異物がスリーブの内部空間に入り込むのを防止できるだけでなく、断熱層に雨水が浸み込んだり塵埃が付着したりするのを防止できる。更には、貫通穴付き構造体の内部で生じた結露水を、水返しフランジの裏面(屋内側を向く面)を伝ってスリーブの外周へ案内することで、結露水が断熱層に浸み込んだりスリーブの内部空間に入り込んだりするのを防止できる。
【0007】
本発明に係るキャップ材は、建物の貫通穴付き構造体の施工時に、前記貫通穴に設けられるスリーブの端部の開口に着脱可能に設けられるキャップ材であって、
前記開口を覆う可撓性のカバー部と、
前記カバー部の周縁に設けられた環状かつ伸縮可能な縁紐と
を有し、前記縁紐が、前記スリーブの前記端部の全周に弾性的に係止されることを特徴とする。
このキャップ材によって、スリーブの端部の開口を簡易に塞ぐことができ、異物がスリーブ内に入り込むのを防止できる。また、前記開口の閉塞が不要になった時は、カバー部を摘まんで引くことで、キャップ材をスリーブから簡単に引き抜くことができる。
【0008】
本発明に係るスリーブ貫通部施工方法は、
建物の貫通穴付き構造体の前記貫通穴にスリーブを設けるとともに、
可撓性のカバー部と、前記カバー部の周縁に設けられた環状かつ伸縮可能な縁紐とを有するキャップ材を用意し、
前記スリーブの端部の開口を前記カバー部にて覆うとともに、
前記縁紐を前記スリーブの前記端部の全周に弾性的に係止し、
所要の期間後に前記キャップ材を取り外すことを特徴とする。
これによって、スリーブの端部の開口をキャップ材で簡易に塞ぐことができ、異物がスリーブ内に入り込むのを防止できる。また、所要の期間の終了後は、キャップ材を簡単に撤去することができる。ここで、所要の期間とは、スリーブの開口の閉塞が不要になる迄の、異物侵入の阻止を要する期間、ないしは異物侵入が起きやすい期間を言い、具体的には、例えばサイディング等の外装材を設置するまでの期間や、スリーブへのベントキャップの装着や換気ダクトの挿通又は接続を開始するまでの期間や、被覆材や塗料の塗布が終了するまでの期間等を言う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スリーブの端部の開口をキャップ材で簡易に塞ぐことができ、雨水や塵埃、被覆材の飛散体等の異物がスリーブ内に入り込むのを防止できる。また、開口の閉塞が不要になった時は、キャップ材を簡単に撤去することができる。これによって、スリーブ貫通部の施工を効率的に行うことができ、工期を短縮できる。更には、撤去したキャップ材を再使用することも可能であり、資材コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る建物のスリーブ貫通部施工構造を示し、詳しくは、施工中の木造家屋の外壁のスリーブ貫通部及びその周辺を、外装材及び内装材等が未施工の状態で示す側面断面図である。
図2図2は、前記貫通部に設けられたスリーブ及びキャップ材の分解斜視図である。
図3図3(a)は、前記施工中の外壁のスリーブ貫通部を、外装材及び内装材等を設置した状態で示す側面断面図である。図3(b)は、施工完了後の前記外壁のスリーブ貫通部を示す側面断面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る建物のスリーブ貫通部施工構造を示し、詳しくは、施工中の鉄骨造建物の鉄骨梁と、これを貫通するスリーブ、及びスリーブの両端に設けられるキャップ材の分解斜視図である。
図5図5は、前記第2実施形態の施工中の鉄骨梁のスリーブ貫通部及びその周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1図3は、本発明の第1実施形態を示したものである。第1実施形態は、木造家屋A(建物)の外壁10(貫通穴付き構造体)における換気ダクト2用のスリーブ貫通部施工構造1及び施工方法に係る。なお、図1及び図3(a)は、施工中の外壁10を示す。図1のニ点鎖線は、未設置の外壁構成要素を示す。図3(b)は、施工完了後の外壁10を示す。以下の外壁10及び換気ダクト2の構造については、特に断らない限り、施工完了後の状態で説明する。
【0012】
図1及び図3(b)に示すように、外壁10は、壁板材11と、外装材12と、内装材13を有している。壁板材11は、例えば構造用合板にて構成され、鉛直に配置されている。壁板材11の屋外側(両図において右側)に、胴縁14を介して、サイディング等の外装材12が設けられている。壁板材11と外装材12との間に通気層15が形成されている。壁板材11の屋内側(両図において左側)に、軸組16を介して、石膏ボード等の内装材13が設けられている。軸組16は、柱16v(間柱、管柱を含む)及び横架材16h等にて構成されている。これら柱16v及び横架材16hにて囲まれた空間内に断熱材17が設けられている。
【0013】
外壁10には貫通穴19が形成されている。貫通穴19は、外壁10を厚さ方向(図3(b)において左右)に屋内側から屋外側へ貫通している。貫通穴19における外装材12の穴部分19bは、壁板材11の穴部分19a及び内装材13の穴部分19cよりも小径である。
【0014】
木造家屋Aには換気ダクト2が配管されている。換気ダクト2は、ダクト本体2aと、スリーブ20とを含む。ダクト本体2aの端部に、連結筒28を介してスリーブ20が接続されている。このスリーブ20が、貫通穴19に嵌め込まれている。
【0015】
図1及び図2に示すように、スリーブ20は、外筒体21と、内筒体22と、断熱層23とを有している。外筒体21は、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、高耐食溶融めっき鋼、アルミニウム等の金属にて構成され、円筒形になっている。外筒体21の外周面が、貫通穴19の内周面と接し、ないしは対面している。外筒体21の軸線方向の中間部には、環状の内リブ21cが形成されている。内リブ21cは、外筒体21の外周面から径方向内側へ凹むとともに、外筒体21の内周面から径方向内側へ突出されている。
【0016】
図1及び図2に示すように、外筒体21の中間部における内リブ21cより屋外側の外周には、フランジ部材24が設けられている。フランジ部材24は、嵌合筒部24bと、取付フランジ24fを含み、四角形の板状になっている。フランジ部材24の中央には嵌合穴24cが形成されている。嵌合穴24cの周縁には、嵌合筒部24bが屋外側(図1において右側)へ突設されている。嵌合筒部24bは、外筒体21の大きさに合わせた円形の短筒形状になっている。この嵌合筒部24bが、外筒体21の外周に嵌合されて、外筒体21と一体になっている。
【0017】
フランジ部材24における嵌合筒部24bを除く平板部分が、取付フランジ24fを構成している。取付フランジ24fは、外筒体21の全周から径方向外側へ突出されている。取付フランジ24fの外周形状は、四角形になっているが、これに限られるものではなく、円形になっていてもよい。この取付フランジ24fが、壁板材11の屋外側の面に宛がわれている。更に、取付フランジ24fの四隅がビス25にて壁板材11に連結されている。これによって、スリーブ20が外壁10に固定されている。
【0018】
さらに、外筒体21の屋外側の端部には、水返しフランジ21fが一体に形成されている。水返しフランジ21fは、外筒体21から径方向外側へ突出されるとともに、外筒体21の全周にわたる環状になっている。水返しフランジ21fの外筒体21からの突出高さは、例えば1mm〜50mm程度であり、好ましくは3mm〜20mm程度であり、より好ましくは7mm程度である。水返しフランジ21fは、取付フランジ24fの屋外側(図1において右)に離れて配置されている。かつ、嵌合筒部24bの屋外側の端縁が、水返しフランジ21fに突き当たっている。水返しフランジ21fの面積は、取付フランジ24fよりも十分に小さい。図3(b)に示すように、この水返しフランジ21fが、外装材12の裏面(屋内を向く面)に宛がわれている。
【0019】
図1及び図2に示すように、外筒体21の内部に内筒体22が配置されている。内筒体22は、外筒体21よりも小径で、かつ外筒体21よりも長い円筒形になっている。内筒体22の材質は、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、高耐食溶融めっき鋼、アルミニウム等の金属である。好ましくは、内筒体22は、金属帯板を螺旋状に巻き、重なり部をハゼ嵌合したスパイラル管にて構成されている。内筒体22の屋外側(図1において右側)の端部は、外筒体21よりも屋外側へ突出されている。図3(b)に示すように、この突出量は、外装材12の厚みとほぼ対応している。内筒体22の前記突出端部が、外装材12の貫通穴部分19bに嵌め込まれている。外装材12の外面にはベントキャップ26が設けられている。このベントキャップ26が、貫通穴部分19bを覆うとともに、内筒体22の屋外側の端部の開口29に嵌め込まれている。
【0020】
外筒体21と内筒体22との間に環状の断熱層23が設けられている。断熱層23の材質は、ガラス繊維フェルトにて構成されているが、これに限られず、グラスウール、セラミックウール、ロックウール等であってもよい。内リブ21cが断熱層23に食い込んでいる。これによって、外筒体21と断熱層23との密着度が高められている。断熱層23の屋外側の端面は、外筒体21の屋外側の端面とほぼ面一になっており、外筒体21と内筒体22の間から露出されている。図3(b)に示すように、断熱層23の屋外側の端面が、外装材12の裏面に宛がわれている。
【0021】
図1に示すように、施工中の外壁10すなわちスリーブ貫通部施工構造1には、キャップ材30が設けられる。図1及び図2に示すように、キャップ材30は、カバー部31と、縁紐32を含む。カバー部31は、薄い樹脂フィルムで構成され、可撓性(易変形性)を有している。カバー部31の厚みは、例えば10μm〜300μm程度である。カバー部31の材質は、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)であるが、これに限定されるものではない。カバー部31の縁紐32との接合前の展開形状は、概略円形になっている。
【0022】
このカバー部31の周縁に縁紐32が設けられている。縁紐32は、環状かつ伸縮可能なゴム等にて構成されている。好ましくは、縁紐32は、薄肉の平帯状になっている。縁紐32の自然状態における厚みは、例えば10μm〜300μm程度である。縁紐32の自然状態(非伸長時)における周長は、カバー部31における縁紐32との接合前の外周長よりも短く、かつスリーブ20の外筒体21の外周長ひいては水返しフランジ21fの外周縁の周長よりも短い。この縁紐32が、全周にわたってカバー部31の周縁と融着、接着、縫製等の接合手段によって接合されている。接合時には、例えば、縁紐32をカバー部31の外周長に合わせて伸長させておき、接合後に縁紐32を解放して自然状態の長さに戻す。これによって、カバー部31の周縁部がギャザー状に縮められるとともに、この周縁部を含むカバー部31の外周部分が屋内側へ折り返され、ないしはめくられている。カバー部31を膨らませたときのキャップ材30の概略形状は、やや扁平な半球面状になり、かつ屋内側へ開放されている。また、キャップ材30は、折畳・展開自在である。
【0023】
図1に示すように、キャップ材30は、施工中の外壁10におけるスリーブ20の屋外側の端部に装着されている。このキャップ材30のカバー部31が、スリーブ20の開口29を覆うとともに、断熱層23の屋外側の露出端面に被さり、更に水返しフランジ21fの屋内側へ回り込んでいる。そして、縁紐32が、自然状態よりも伸長されて、水返しフランジ21fの屋内側の面又は嵌合筒部24bの外周面の全周にわたって弾性的に係止されている。
【0024】
外壁10の施工方法ひいては貫通部施工方法を、キャップ材30の使用方法を中心に説明する。
図1に示すように、外壁10の壁板材11及び軸組16を構築し、かつ換気ダクト2のスリーブ20を壁板材11の貫通穴19に嵌め込んだ後、スリーブ20の屋外側の端部にキャップ材30を取り付ける。
すなわち、キャップ材30のカバー部31を、内筒体22の屋外側への突出部分及び断熱層23の屋外側への露出端面に被せる。さらに、カバー部31の外周部を水返しフランジ21fに被せるとともに、縁紐32を伸長させながら水返しフランジ21fよりも屋内側に位置させる。これによって、縁紐32が、水返しフランジ21fの屋内側の面又は嵌合筒部24bの外周面(ひいてはスリーブ20の屋外側の端部)の全周にわたって弾性的に係止される。このようにして、キャップ材30をスリーブ20の屋外側の端部に簡単に装着できる。水返しフランジ21fが縁紐32の係止部材となることによって、キャップ材30をスリーブ20の屋外側の端部に安定的に配置できる。
【0025】
スリーブ20の開口20が屋外へ露出されていたとしても、キャップ材30のカバー部31により開口29を覆うことによって、雨、雪、塵埃、小動物等の異物が開口29から内筒体22の内部ひいては換気ダクト2内に入り込むのを防止できる。
また、カバー部31により断熱層23の屋外側への露出端面を覆うことによって、外壁10の施工期間中に雨水が断熱層23に浸み込んだり、断熱層23に塵埃が付着したりするのを防止できる。
【0026】
図3(a)に示すように、キャップ材30をスリーブ20の屋外側の端部に装着した状態で、外壁10の外装材12の設置工程や内装材13の設置工程を行なう。これによって、特に外装材12の設置の際、外装材12から出る塵埃等の異物が開口29から内筒体22内に入り込むのを防止できる。
外装材12の設置によって、カバー部31が外装材12とスリーブ20との間に挟まれる。カバー部31は薄いフィルムであるから、外装材12とスリーブ20との間の間隙内に十分に収まることができ、外装材12の設置の支障にならない。
【0027】
外装材12の設置後(所要の期間の終了後)、キャップ材30を撤去する。図3(a)の矢印にて示すように、撤去の際は、例えばカバー部31の中央部を掴んで屋外方向へ引っ張る。これによって、キャップ材30をスリーブ20から簡単に引き抜くことができる。このとき、縁紐32は水返しフランジ21fを乗り越えて屋外側へ移行する。水返しフランジ21fの突出高さを好ましくは3mm〜10mm程度(より好ましくは7mm程度)とすることによって、縁紐32が水返しフランジ21fを簡単に乗り越えるようにすることができる。また、カバー部31がミクロンオーダーの厚みの薄いフィルムであり、かつ縁紐32がミクロンオーダーの厚みの薄肉平帯状であるため、カバー部31及び縁紐32を外装材12とスリーブ20との間の間隙から簡単に引き抜くことができる。
その後、開口29にベントキャップ26を設置する。
【0028】
キャップ材30は、養生テープと比べて、スリーブ20への装着作業及び撤去作業が極めて容易である。したがって、施工を効率的に行うことができ、工期を短縮できる。
更には、撤去したキャップ材30を再使用することも可能であり、資材コストを低減できる。
また、キャップ材30は折り畳むことでコンパクトになり、薄肉であるから多数のキャップ材30を重ねてもあまり嵩張ることが無い。したがって、持ち運び、収納、保管等を容易に行なうことができる。
【0029】
外壁10において、外装材12の裏面に付いた結露水は、水返しフランジ21fの裏面(屋内側を向く面)を伝って下方へ流れる。これによって、結露水が、断熱層23内に浸み込んだり内筒体22の内部に入り込んだりするのを防止できる。
【0030】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を簡略化する。
図4及び図5は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態は、オフィスビル等の鉄骨ビルB(建物)の鉄骨梁40(貫通穴付き構造体)のスリーブ貫通部施工構造4及び施工方法に係る。鉄骨梁40のウエブ41には、円形の貫通穴49が形成されている。この貫通穴49にスリーブ50が挿通されている。スリーブ50は、図5において二点鎖線にて示す換気ダクト5を支持するためのものであり、円筒形状になっている。このスリーブ50が鉄骨梁40を貫通し、その中央部が貫通穴49内に位置されるとともに、両端部がウエブ41の両側へ突出されている。図示は省略するが、スリーブ50の外周部には支持手段が設けられており、この支持手段を介してスリーブ50が鉄骨梁40に支持されている。
【0031】
図5に示すように、鉄骨梁40の外表面には、耐火被覆材45が塗布される。この塗布に先立ち、スリーブ50の両端部にそれぞれキャップ材30を装着する。すなわち、一対のキャップ材30のカバー部31をスリーブ50の両端部の開口59にそれぞれ被せるとともに、各キャップ材30の縁紐32をスリーブ50の端部の外周に被せる。これによって、キャップ材30をスリーブ50に簡単に装着できる。縁紐32の自然状態における周長は、スリーブ50の外周長よりも短い。したがって、縁紐32がスリーブ50の外周面に弾性的に係止される。これによって、キャップ材30をスリーブ50の端部に安定的に配置することができる。
【0032】
このキャップ材30のカバー部31によって、スリーブ50の端部の開口59を塞ぐことができる。したがって、耐火被覆材45の塗布施工時に、耐火被覆材45の飛散体(異物)がスリーブ50の内部に入り込むのを防止できる。
【0033】
耐火被覆材45の塗布後(所要の期間の終了後)、キャップ材30を取り外す。取り外しに際しては、カバー部31の中央部を掴んでウエブ41側とは反対側へ引っ張ることによって、キャップ材30をスリーブ50から簡単に引き抜くことができる。
【0034】
その後、換気ダクト5をスリーブ50内に挿通する。スリーブ50の内部に耐火被覆材45が付着していないため、換気ダクト5の挿通作業を簡単に行なうことができる。
【0035】
本発明は、前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、キャップ材30のスリーブ20,50への装着時期及び取り外し時期は、適宜変更してもよい。第1実施形態において、外装材12を設置する前に、キャップ材30をスリーブ20から取り外してもよい。
スリーブ20,50の形状は、円筒形に限られず、四角筒などの角筒形であってもよい。その場合でも、縁紐32が弾性によってスリーブ20,50の外周面の全周に係止されるようにすることができる。
第1実施形態において、ダクト本体2aを接続する前のスリーブ20の屋内側(図1において左側)の端部にも、キャップ材30を装着することにしてもよい。
本発明は、スリーブ貫通部が有る建物であれば、木造家屋Aや鉄骨ビルBに限られず、鉄筋コンクリート構造の建物等にも適用できる。スリーブ貫通部は、換気ダクト用に限られず、ガス管や水道管を通すものであってもよく、電気線や通信回線を通すものであってもよい。
水返しフランジ21fは、キャップ材30を用いないで設置施工するスリーブ20にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、木造住居や鉄骨構造物等の建物のダクト貫通部の施工に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
A 木造家屋(建物)
B 鉄骨ビル(建物)
1 スリーブ貫通部施工構造
10 外壁(貫通穴付き構造体)
19 貫通穴
20 スリーブ
21 外筒体
21f 水返しフランジ
22 内筒体
23 断熱層
29 開口(スリーブの端部の開口、屋外側の開口)
30 キャップ材
31 カバー部
32 縁紐
4 スリーブ貫通部施工構造
40 鉄骨梁(貫通穴付き構造体)
49 貫通穴
50 スリーブ
59 開口
図1
図2
図3
図4
図5