特許第6482212号(P6482212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482212
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】スプリングシート
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20190304BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20190304BHJP
   B60G 11/16 20060101ALI20190304BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   F16F9/32 B
   F16F1/12 N
   B60G11/16
   B60G15/06
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-180617(P2014-180617)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-53408(P2016-53408A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】押江 雄己
(72)【発明者】
【氏名】金子 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】小竹 譲
(72)【発明者】
【氏名】島井 賢一
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/179692(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010028290(DE,A1)
【文献】 実開昭59−003032(JP,U)
【文献】 特開2007−154977(JP,A)
【文献】 特開2013−044335(JP,A)
【文献】 特開2008−025801(JP,A)
【文献】 特開2001−200878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
F16F 1/00− 6/00
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減衰機構を内蔵するシリンダに取り付けられると共に、車体と車輪との間に配置されたスプリングの当該車輪側の端部を支持するスプリングシートであって、
前記スプリングと前記車輪との間に配置される樹脂部材と、
前記樹脂部材の前記車輪側に配置され、前記スプリングの荷重を支持する金属部材と、
前記樹脂部材、前記金属部材、及び前記シリンダの内、少なくとも隣接する2つの部材の位置ずれを抑制する位置ずれ抑制機構と、
を備え、
前記樹脂部材は、前記シリンダの軸方向に直交する方向に外側に向かい前記スプリングの下端部を支持するとともに上面に当該スプリングが当該外側へ移動するのを抑制する抑制部が設けられた受圧部と、当該受圧部よりも外側の部位に設けられて上方に行くに従って径が徐々に拡がるように形成された外側部と、当該外側部の上部から上方に延出するとともに当該樹脂部材のベースの材料よりも高強度の材料にて成形された強化部材が鋳込まれた延出部とを有するスプリングシート。
【請求項2】
前記位置ずれ抑制機構は、前記金属部材及び前記樹脂部材のいずれか一方に設けられた前記シリンダの軸方向に突出する凸部と他方に設けられた当該軸方向に凹んでいる凹部とが嵌り合う構成を備えている請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項3】
前記位置ずれ抑制機構は、前記金属部材と前記樹脂部材のいずれか一方に設けられた第1矩形と他方に当該第1矩形に対向するように設けられた第2矩形とが嵌り合う構成を備えている請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項4】
前記位置ずれ抑制機構は、前記金属部材と前記シリンダのいずれか一方に設けられた第3矩形と他方に当該第3矩形に対向するように設けられた第4矩形とが嵌り合う構成を備えている請求項1に記載のスプリングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置に備えられるスプリングの圧縮荷重を受けるスプリングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、懸架装置(サスペンション)に備えられたコイルスプリングの圧縮荷重を、金属製のスプリングシートにて受ける技術が提案されている。
例えば特許文献1には、以下の事項が記載されている。図18は、特許文献1に記載された懸架装置4の概略構成を示す図である。車両の懸架装置4は、図18に示すように、金属製のコイルスプリング20と、緩衝器12に固定されてコイルスプリング20の圧縮荷重を受ける金属製のスプリングシート18とを備えている。このスプリングシート18は、コイルスプリング20と車輪3との間に配置される部分の半径方向長さは短い。このため、スプリングシート18は、コイルスプリング20が破損した場合に、コイルスプリング20の破片が車輪3の方へ向かうのを抑制できない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−144872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
安全性を担保するためには、スプリングシートが支持するスプリングが破損した場合に、スプリングの破片が車輪へ脱落することを抑制することが望ましい。この対策の一例として、スプリングシートが金属製である場合、スプリングシートに、スプリング破片の脱落を抑制する部位を設けることが挙げられる。しかしながら、スプリングシートは、抑制部位の分重くなってしまうため、スプリングシートの軽量化を図り難い。
本発明は、軽量化を図ることができると共に破損したスプリングが車輪へ脱落するのを抑制できるスプリングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、減衰機構を内蔵するシリンダに取り付けられると共に、車体と車輪との間に配置されたスプリングの当該車輪側の端部を支持するスプリングシートであって、前記スプリングと前記車輪との間に配置される樹脂部材と、前記樹脂部材の前記車輪側に配置され、前記スプリングの荷重を支持する金属部材と、前記樹脂部材、前記金属部材、前記シリンダの内、少なくとも隣接する2つの部材の位置ずれを抑制する位置ずれ抑制機構と、を備え、前記樹脂部材は、前記シリンダの軸方向に直交する方向に外側に向かい前記スプリングの下端部を支持するとともに上面に当該スプリングが当該外側へ移動するのを抑制する抑制部が設けられた受圧部と、当該受圧部よりも外側の部位に設けられて上方に行くに従って径が徐々に拡がるように形成された外側部と、当該外側部の上部から上方に延出するとともに当該樹脂部材のベースの材料よりも高強度の材料にて成形された強化部材が鋳込まれた延出部とを有するスプリングシートである。
スプリングシートが金属部材と樹脂部材とを備えることにより、金属部材のみで同じ形状である場合と比較すると、スプリングシートが軽くなる。また、スプリングと車輪との間に樹脂部材が配置されることにより、仮にスプリングが破損したとしても、破損したスプリングが車輪へ脱落することが抑制される。また、樹脂部材、金属部材、シリンダの位置ずれを抑制する位置ずれ抑制機構を備えることにより、スプリングシートが金属部材と樹脂部材との少なくとも2部品を有するとしても簡易な構成で実現できる。
2部品の位置ずれを防止し、スプリングの脱落防止をより長期に渡って、正確に脱落を抑制できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、軽量化を図ることができると共に破損したスプリングが車輪へ脱落するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る懸架装置の概略構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る懸架装置を車輪に取り付けた状態を示す概略図である。
図3】金属シート及び樹脂シートの斜視図である。
図4】下スプリングシートの拡大断面図である。
図5】第1の変形例に係る金属シートと樹脂シートを示す図である。
図6】第1の変形例に係る金属シートと樹脂シートとの他の態様を示す図である。
図7】第2の変形例に係る金属シートと樹脂シートを示す図である。
図8】第3の変形例に係る金属シートと樹脂シートを示す図である。
図9】金属シート及び樹脂シートの斜視図である。
図10】第2の実施形態に係る下スプリングシートの断面図である。
図11】第1の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構及び第2位置ずれ抑制機構を示す図である。
図12】第2の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構及び第2位置ずれ抑制機構を示す図である。
図13】第3の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構及び第2位置ずれ抑制機構を示す図である。
図14】(a)は、図3のXIVa−XIVa部の断面図である。(b)は、図3のXIVb−XIVb部の断面図である。
図15】(a)〜(d)は、強化部材の変形例を示す図であり、図3のXIVa−XIVa部の断面図である。
図16】(a)〜(d)は、強化部材の変形例を示す図であり、図3のXIVb−XIVb部の断面図である。
図17】懸架装置の変形例を示す図である。
図18】特許文献1に記載された懸架装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る懸架装置1の概略構成を示す図である。
図2は、本実施形態に係る懸架装置1を車輪に取り付けた状態を示す概略図である。
懸架装置1は、ストラット式サスペンションであり、図1に示すように、減衰機構(不図示)を内蔵するシリンダ10と、このシリンダ10内に収納されたピストン(不図示)を支持するピストンロッド20と、を備えている。
【0009】
シリンダ10は、円筒状の外シリンダ11を有し、この外シリンダ11内に、円筒状の内シリンダ(不図示)と、この内シリンダ内を往復動するピストンと、減衰力を発生する複数のバルブ装置と、を備えている。
【0010】
ピストンロッド20は、円柱状または円筒状の部材であり、円柱または円筒の中心線方向の一方の端部側にシリンダ10内に収納されるピストン(不図示)が取り付けられ、中心線方向の他方の端部側にナット21が取り付けられている。以下、ピストンロッド20の中心軸20aの方向(円柱または円筒の中心線方向)を、単に「上下方向」と称す場合がある。
【0011】
また、懸架装置1は、シリンダ10の外側に配置されたコイルスプリング30と、シリンダ10の外周に取り付けられてコイルスプリング30の下端部を支持する下スプリングシート31と、を備えている。
【0012】
また、懸架装置1は、上端部側に取り付けられてコイルスプリング30の上端部を支持する上スプリングシート36と、コイルスプリング30と上スプリングシート36との間に介在する上シートラバー37と、を備えている。
【0013】
本実施形態では、コイルスプリング30は、両端部の座巻数が1/2である左巻きに、断面円形の金属線材を屈曲させることによりコイル状に成形された圧縮ばねである。下スプリングシート31については、後で詳述する。
【0014】
上シートラバー37は、図1に示すように、コイルスプリング30の上端部と上スプリングシート36との間に介在する円環状の円環状部位371と、円環状部位371の下端部から下方に伸びる蛇腹状のダストカバー372とが連続するように一体成形されている。
【0015】
また、懸架装置1は、ピストンロッド20の上端部側に取り付けられて、この懸架装置1を車両に取り付けるための車体側取付ブラケット40を備えている。また、懸架装置1は、シリンダ10の下端部側に固定されて、この懸架装置1を車輪に取り付けるための車輪側取付ブラケット50を備えている。また、懸架装置1は、シリンダ10における上下方向の中央部に固定されて、スタビライザー(不図示)の端部を連結するためのスタビライザー取付アーム51を備えている。
【0016】
また、懸架装置1は、上スプリングシート36と車体側取付ブラケット40の後述する下マウントベース43との間に配置された円環状のベアリング38を備えている。また、懸架装置1は、上スプリングシート36に溶接され、上スプリングシート36とベアリング38との間に介在する円環状の金属板39を備えている。
【0017】
車体側取付ブラケット40は、上下方向に並べて配置された凹状の部材と凸状の部材から構成されるステー41と、上下方向に並べて配置された上マウントベース42および下マウントベース43とを備えている。また、車体側取付ブラケット40は、ステー41と上マウントベース42との間に設けられたマウントラバー44を備えている。
【0018】
下マウントベース43の下面には、後述するバンプラバー61を保持する凸状のバンプラバー保持部材45が溶接されている。
【0019】
車体側取付ブラケット40は、ステー41がピストンロッド20の上端部に挿入されてナット21で締結されることにより、ピストンロッド20に装着される。
また、車体側取付ブラケット40は、上マウントベース42および下マウントベース43に貫通されたボルト46により車体に取り付けられる。
【0020】
また、懸架装置1は、シリンダ10から飛び出しているピストンロッド20の外周を囲むように配置されたバンプラバー61を備えている。
バンプラバー61は、下端部(車輪側)から上端部(車体側)に向けて外径が段々と大きくなるように形成されている。そして、バンプラバー61の上端部が、車体側取付ブラケット40のバンプラバー保持部材45の内側に嵌め込まれている。
【0021】
以上のように構成された懸架装置1は、図2に示すように、車輪側取付ブラケット50に取り付けたアーム101を介して、車輪110のホイール111に固定されている。また、懸架装置1は、車体側取付ブラケット40を介して車両の車体に取り付けられる。
【0022】
そして、懸架装置1は、車両が路面から受ける衝撃力をコイルスプリング30の弾発力により吸収するように伸縮する。そして、懸架装置1は、その伸縮に伴うピストン(不図示)の往復動時に、シリンダ10に内蔵された減衰機構が発生する減衰力により、伸縮の際に生じる振動を抑制する。
なお、懸架装置1が車両に取り付けられた状態において、車輪110が旋回するのに伴ってシリンダ10とともに下スプリングシート31およびコイルスプリング30が回転する。
【0023】
<第1の実施形態>
次に、第1の実施形態に係る下スプリングシート31について説明する。
図3は、後述する金属シート310及び樹脂シート320の斜視図である。
図4は、下スプリングシート31の断面図である。
第1の実施形態に係る下スプリングシート31は、減衰機構を内蔵するシリンダ10に取り付けられると共に、車体と車輪との間に配置されたコイルスプリング30の車輪側の端部を支持するスプリングシートであって、コイルスプリング30と車輪との間に配置される樹脂部材の一例としての樹脂シート320と、樹脂シート320の車輪側に配置され、コイルスプリング30の荷重を支持する金属部材の一例としての金属シート310と、樹脂シート320、金属シート310、及びシリンダ10の内、少なくとも隣接する2つの部材の位置ずれを抑制する位置ずれ抑制機構400と、を備える。
【0024】
(金属シートの構成)
金属シート310は、上下方向に伸びる円筒状の第1円筒状部311と、第1円筒状部311の下方において第1円筒状部311の内径よりも大きな内径で上下方向に伸びる円筒状の第2円筒状部312と、を有している。また、金属シート310は、第1円筒状部311と第2円筒状部312とを接続するように上下方向に対して傾斜した傾斜部313を有している。また、金属シート310は、第2円筒状部312における下端部から上下方向に直交する方向に外側に向かい、コイルスプリング30の荷重を受止める荷重受部314を有している。
【0025】
ここで、図4に示すように、シリンダ10の外シリンダ11は、シリンダ部11cと、金属シート310の第1円筒状部311が嵌め合わされる嵌合部11aと、シリンダ部11cよりも半径方向外側へ突出して金属シート310の上下方向の位置を定める位置決め部11bと、を有している。
【0026】
嵌合部11aは、シリンダ部11cと略同じ形状の部位である。
位置決め部11bは、嵌合部11aよりも半径方向外側へ突出した凸部11dを有している。
なお、外シリンダ11は、金属製のパイプがプレス加工されることにより成形され、その際、位置決め部11bなどは、バルジ成形にて成形されることを例示することができる。また、シリンダ部11cや嵌合部11aを1つのパイプにて形成すると共に、このパイプに別部材の位置決め部11bを、溶接などにて固定してもよい。
【0027】
そして、金属シート310の第1円筒状部311の内径と外シリンダ11の嵌合部11aの外径とは、第1円筒状部311と嵌合部11aとがしまりばめで嵌め込まれるような寸法関係である。つまり、金属シート310は、第1円筒状部311が外シリンダ11の嵌合部11aに圧入されることで外シリンダ11に固定される。
【0028】
第2円筒状部312の内径は、外シリンダ11の位置決め部11bの外径以上に設定されている。
【0029】
傾斜部313は、下方に行くに従って径が徐々に拡がるように傾斜している。この傾斜部313が外シリンダ11の位置決め部11bと接触することで、金属シート310の下方への移動が抑制される。付言すれば、金属シート310が外シリンダ11に圧入される際に傾斜部313が位置決め部11bに突き当たるまで圧入されることで両者の上下方向の位置が定まる。
【0030】
荷重受部314は、基本的には円盤状の部位であり、図4に示すように、その外径Doは、コイルスプリング30の下端部における中心径Dcよりも大きい(Do>Dc)。そして、荷重受部314には、周方向に等間隔に複数(本実施形態においては3つ)の、上下方向に貫通した孔である貫通孔315が形成されている。
【0031】
(樹脂シートの構成)
樹脂シート320は、上下方向に伸びる円筒状の第1円筒状部321と、第1円筒状部321の下方において第1円筒状部321の内径よりも大きな内径で上下方向に伸びる円筒状の第2円筒状部322と、を有している。また、樹脂シート320は、第1円筒状部321と第2円筒状部322とを接続するように上下方向に対して傾斜した傾斜部323を有している。
【0032】
また、樹脂シート320は、第2円筒状部322における下端部から上下方向に直交する方向に外側に向かい、コイルスプリング30の下端部を支持する受圧部324を有している。また、樹脂シート320は、受圧部324よりも外側の部位に設けられた外側部325と、外側部325の上部から上方に延出した延出部326とを有している。
【0033】
外側部325は、受圧部324の最外径部から上方に行くに従って径が徐々に拡がるように全周に渡って形成されている。図3に示した延出部326は、約1/4周に渡って、外側部325の上部から上方に延出する。ただし、延出部326は、外側部325の全周に渡って外側部325の上部から上方に延出していてもよい。
【0034】
また、樹脂シート320は、受圧部324におけるコイルスプリング30側の面に、コイルスプリング30の下端部を載せるための載置部327を有している。
また、樹脂シート320は、受圧部324上に、載置部327の内側と外側に配置され、受圧部324から上方に突出し、コイルスプリング30の下端部が半径方向の内側と外側へ移動するのをそれぞれ抑制する内側抑制部328と外側抑制部329とを有している。
【0035】
本実施形態に係るコイルスプリング30の座巻数は1/2であることから、コイルスプリング30の下端部は略180度に亘って載置部327と接触する。内側抑制部328及び外側抑制部329は、略180度に亘ってコイルスプリング30の下端部が移動するのを抑制する。
【0036】
また、樹脂シート320は、内側抑制部328及び外側抑制部329の開始地点に、受圧部324から上方に突出する直方体状の上方突出部330を有している。コイルスプリング30の下端部の先端がこの上方突出部330に突き当たることで、コイルスプリング30の円周方向の回転が抑制される。なお、コイルスプリング30の下端部と載置部327とが接触するのは180度以外でもよい。
【0037】
また、樹脂シート320は、受圧部324における金属シート310側の面に、下方に突出する円柱状の下方突出部331を有している。
【0038】
なお、樹脂シート320の材料としては、ABS、エンジニアリング・プラスチック、ポリカーボネイト、ウレタン、ナイロンであることを例示することができる。
【0039】
より具体的には、樹脂シート320における第1円筒状部321、第2円筒状部322及び傾斜部323の大きさは、金属シート310における第1円筒状部311、第2円筒状部312及び傾斜部313の大きさよりも大きい。また、樹脂シート320と金属シート310とはすきまばめで嵌り合っている。
【0040】
そして、樹脂シート320の受圧部324における金属シート310側の面(下面)と、金属シート310の荷重受部314の樹脂シート320側の面(上面)とが接触するように金属シート310と樹脂シート320とは上下方向に重ねて配置される。これにより、樹脂シート320の下方への移動が抑制される。
【0041】
位置ずれ抑制機構400は、金属シート310及び樹脂シート320のいずれか一方に設けられたシリンダ10の軸方向に突出する凸部と他方に設けられた当該軸方向に凹んでいる凹部とが嵌り合う構成を備えている。
第1の実施形態に係る下スプリングシート31においては、位置ずれ抑制機構400は、樹脂シート320に設けられたシリンダ10の軸方向に突出する凸部の一例としての下方突出部331と金属シート310に設けられた当該軸方向に凹んでいる凹部の一例としての貫通孔315とが嵌り合う構成を備えている。
【0042】
つまり、第1の実施形態に係る下スプリングシート31においては、樹脂シート320の受圧部324における金属シート310側の面に設けられた下方突出部331が、金属シート310の荷重受部314に形成された貫通孔315に嵌合される。これにより、金属シート310に対する樹脂シート320の周方向への移動が抑制される。
【0043】
また、下スプリングシート31は、受圧部324よりも外側の部位に外側部325が設けられると共に、図2に示すように、懸架装置1が車両に取り付けられた状態において、延出部326がタイヤ112の上方に位置するように配置される。それゆえ、たとえコイルスプリング30が破損したとしても、下スプリングシート31の外側部325及び延出部326が、コイルスプリング30の破片がタイヤ112の方へ向かうのを抑制する。その結果、コイルスプリング30の破片がタイヤ112に刺さり、タイヤ112がバーストしてしまうことが抑制される。
【0044】
なお、懸架装置1が車両に取り付けられた状態において、車輪110が旋回するのに伴ってシリンダ10と共に下スプリングシート31およびコイルスプリング30が回転する。そのため、延出部326は、タイヤ112付近に位置する範囲の約1/4周に渡って設けられている。ただし、延出部326は、外側部325の全周に渡って外側部325の上部から上方に延出していてもよい。
【0045】
上述したように構成された下スプリングシート31においては、コイルスプリング30の荷重を受止める部位には金属シート310を設け、それよりも外側では樹脂シート320のみを設けている。それゆえ、下スプリングシート31全てを金属にて成形するのと比較すると、下スプリングシート31の軽量化を図ることができ、ひいては懸架装置1の軽量化を図ることができる。
【0046】
また、下スプリングシート31の材料として樹脂を採用することで、成形型を用いて任意の形状に成形することができる。それゆえ、たとえ、内側抑制部328、外側抑制部329および上方突出部330などを有する凹凸のある形状であったとしても容易に成形することができる。つまり、下スプリングシート31が全て金属である場合には、例えば板金をプレス加工することで凹凸をつけるため、多数の金型および多数の工程が必要となる。しかしながら、下スプリングシート31の一部の材料として樹脂を用いることで射出成形(インジェクション成形)にて成形することができるので、凹凸を有する複雑な形状であったとしても、金属の場合よりも容易に成形することができる。
【0047】
また、樹脂を用いることで形状の自由度も高まるので、内側抑制部328および外側抑制部329や、載置部327の形状をコイルスプリング30の下端部の形状に精度高く合わせることができる。それゆえ、コイルスプリング30と下スプリングシート31との間に、例えば砂などが入り込むことを抑制することができる。
【0048】
また、下スプリングシート31全てが金属である場合には、金属のコイルスプリング30と直接接触することに起因する音を抑制するなどのためには、下スプリングシート31とコイルスプリング30との間にゴムなどの弾性部材を設ける必要がある。しかしながら、本実施形態では、コイルスプリング30と直接接触する部位には樹脂シート320が存在するので、弾性部材を削減することができる。
【0049】
また、第1の実施形態に係る下スプリングシート31においては、下スプリングシート31が金属シート310と樹脂シート320との2部品を有していたとしても、金属シート310に対する樹脂シート320の回転が抑制される。つまり、第1の実施形態に係る下スプリングシート31は、位置ずれ抑制機構400を有しており、樹脂シート320に設けられた下方突出部331が、金属シート310に形成された貫通孔315に嵌合されることで、回転抑制が実現される。
【0050】
すなわち、第1の実施形態に係る下スプリングシート31によれば、軽量化を図ることができると共に破損したコイルスプリング30が車輪110へ脱落するのを抑制することを簡易な構成で実現できる。また、金属シート310に対して樹脂シート320が相対的に移動することに起因して音が生じることを抑制することができる。
【0051】
<金属シートと樹脂シートとの間の位置ずれ抑制機構の変形例>
図5は、第1の変形例に係る金属シート310と樹脂シート320を示す図である。
第1の変形例に係る金属シート310は、図5に示すように、荷重受部314に、上述した貫通孔315の代わりに、周方向の所定の領域に渡って下方に凹んだ凹部316を、周方向に等間隔に複数(本実施形態においては3つ)有している。他方、第1の変形例に係る樹脂シート320は、図5に示すように、上述した下方突出部331の代わりに、周方向の所定の領域に渡って下方に突出した下方凸部332を有している。下方凸部332は、金属シート310の凹部316の形状に沿うように周方向に等間隔に複数(本実施形態においては3つ)設けられている。
【0052】
そして、第1の変形例に係る金属シート310と第1の変形例に係る樹脂シート320とは、第1の変形例に係る金属シート310の凹部316と第1の変形例に係る樹脂シート320の下方凸部332とが嵌り合うように配置される。そして、第1の変形例に係る樹脂シート320がコイルスプリング30により周方向の荷重を受けた場合、第1の変形例に係る樹脂シート320の下方凸部332における周方向に直交する面332aが第1の変形例に係る金属シート310の凹部316における周方向に直交する面316aに接触する。これにより、第1の変形例に係る金属シート310に対する第1の変形例に係る樹脂シート320の周方向への移動が抑制される。
【0053】
すなわち、第1の変形例に係る位置ずれ抑制機構400は、第1の変形例に係る樹脂シート320の下方凸部332と、第1の変形例に係る金属シート310に形成された凹部316とを有する。
【0054】
図6は、第1の変形例に係る金属シート310と樹脂シート320との他の態様を示す図である。
図6に示すように、金属シート310の凹部316は、径方向視(周方向断面)が略U字状となるように凹んでいてもよい。また、樹脂シート320の下方凸部332は、径方向視(周方向断面)が略U字状に突出していてもよい。
【0055】
図7は、第2の変形例に係る金属シート310と樹脂シート320を示す図である。
第2の変形例に係る金属シート310は、図7に示すように、上述した第2円筒状部312の代わりに、六角筒状の金属側六角筒状部317を有している。他方、第2の変形例に係る樹脂シート320は、図7に示すように、上述した第2円筒状部322の代わりに、六角筒状の樹脂側六角筒状部333を有している。第2の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側六角筒状部333は、第2の変形例に係る金属シート310の金属側六角筒状部317の形状に沿う形状である。
【0056】
そして、第2の変形例に係る金属シート310の金属側六角筒状部317と第2の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側六角筒状部333とが嵌り合う。そして、第2の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側六角筒状部333における径方向に直交する樹脂側矩形面333aと第2の変形例に係る金属シート310の金属側六角筒状部317における径方向に直交する金属側矩形面317aとが対向する。そして、第2の変形例に係る樹脂シート320がコイルスプリング30により周方向の荷重を受けた場合、これら径方向に対向する樹脂側矩形面333aと金属側矩形面317aとが接触する。これにより、第2の変形例に係る金属シート310に対する第2の変形例に係る樹脂シート320の周方向への移動が抑制される。
【0057】
位置ずれ抑制機構400は、金属シート310と樹脂シート320のいずれか一方に設けられた第1矩形と他方に当該第1矩形に対向するように設けられた第2矩形とが嵌り合う構成を備えている。
【0058】
第2の変形例に係る位置ずれ抑制機構400は、金属シート310に設けられた第1矩形の一例としての金属側矩形面317aと樹脂シート320に金属側矩形面317aに対向するように設けられた第2矩形の一例としての樹脂側矩形面333aとが嵌り合う構成を備えている。また、第2の変形例に係る位置ずれ抑制機構400は、第2の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側六角筒状部333と、第2の変形例に係る金属シート310の金属側六角筒状部317とを有する。
【0059】
図8は、第3の変形例に係る金属シート310と樹脂シート320を示す図である。
第3の変形例に係る金属シート310は、図8に示すように、上述した第2円筒状部312の代わりに、円筒状の一部に矩形の金属側矩形面318aが形成された、所謂D字状で筒状の金属側D字状部318を有している。他方、第3の変形例に係る樹脂シート320は、上述した第2円筒状部322の代わりに、円筒状の一部に矩形の樹脂側矩形面334aが形成された、所謂D字状で筒状の樹脂側D字状部334を有している。
【0060】
そして、第3の変形例に係る金属シート310の金属側D字状部318と第3の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側D字状部334とが嵌り合う。そして、第3の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側D字状部334における径方向に直交する樹脂側矩形面334aと第3の変形例に係る金属シート310の金属側D字状部318における径方向に直交する金属側矩形面318aとが対向する。そして、第3の変形例に係る樹脂シート320がコイルスプリング30により周方向の荷重を受けた場合、これら径方向に対向する樹脂側矩形面334aと金属側矩形面318aとが接触する。これにより、第3の変形例に係る金属シート310に対する第3の変形例に係る樹脂シート320の周方向への移動が抑制される。
【0061】
すなわち、第3の変形例に係る位置ずれ抑制機構400は、金属シート310に設けられた第1矩形の一例としての金属側矩形面318aと樹脂シート320に金属側矩形面318aに対向するように設けられた第2矩形の一例としての樹脂側矩形面334aとが嵌り合う構成を備えている。また、第3の変形例に係る位置ずれ抑制機構400は、第3の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側D字状部334と、第3の変形例に係る金属シート310の金属側D字状部318とを有する。
【0062】
なお、下スプリングシート31は、第2の変形例に係る位置ずれ抑制機構400または第3の変形例に係る位置ずれ抑制機構400を、上述した実施形態の樹脂シート320の下方突出部331と金属シート310の貫通孔315とを有する位置ずれ抑制機構400と共に有してもよい。
また、下スプリングシート31は、第2の変形例に係る位置ずれ抑制機構400または第3の変形例に係る位置ずれ抑制機構400を、第1の変形例に係る位置ずれ抑制機構400と共に設けてもよい。
【0063】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る下スプリングシート34について説明する。
図9は、金属シート340と樹脂シート350の斜視図である。
図10は、第2の実施形態に係る下スプリングシート34の断面図である。
第2の実施形態に係る下スプリングシート34は、シリンダ10に対する相対的な回転が抑制されるようにシリンダ10の周囲に取り付けられてコイルスプリング30の荷重を受ける金属シート340を備える。また、下スプリングシート34は、コイルスプリング30と車輪との間に配置されると共に、金属シート340に対する相対的な回転が抑制されるようにシリンダ10に取り付けられた樹脂シート350を備える。
以下では、第1の実施形態に係る下スプリングシート31と異なる点を中心に説明する。
【0064】
第2の実施形態に係るシリンダ10の外シリンダ11は、第1の実施形態に係るシリンダ10の外シリンダ11とは異なり、上述した嵌合部11aが、図9に示すように、円筒状の一部に矩形のシリンダ側矩形面11aaが形成された、所謂D字状で筒状である。
【0065】
第2の実施形態に係る金属シート340は、第1の実施形態に係る金属シート310とは異なり、上述した第1円筒状部311の代わりに、円筒状の一部に矩形の金属側矩形面341aが形成された、所謂D字状で筒状のD字状部341が設けられている。
【0066】
そして、このD字状部341が、外シリンダ11の嵌合部11aと嵌り合っている。その際、周方向の一部に形成された矩形の面同士である、金属シート340の金属側矩形面341aとシリンダ10のシリンダ側矩形面11aaとが径方向に対向するように配置される。
【0067】
第2の実施形態に係る樹脂シート350は、第1の実施形態に係る樹脂シート320とは異なり、上述した第1円筒状部321の代わりに、円筒状の一部に矩形の樹脂側矩形面351aが形成された、所謂D字状で筒状のD字状部351を有している。樹脂シート350のD字状部351の形状は、金属シート340のD字状部341の形状と同一である。
【0068】
また、第2の実施形態に係る樹脂シート350は、上述した傾斜部323の代わりに、D字状部351における下端部から上下方向に直交する方向に外側に向かい、第2円筒状部322の上端部に接続する接続部323aを有している。
【0069】
そして、図7に示すように、D字状部351が、金属シート340のD字状部341の上方に位置するように外シリンダ11の嵌合部11aと嵌り合っている。その際、周方向の一部に形成された矩形の面同士である、樹脂シート350の樹脂側矩形面351aとシリンダ10のシリンダ側矩形面11aaとが径方向に対向するように配置される。
【0070】
第2の実施形態に係る位置ずれ抑制機構400は、シリンダ10と金属シート340との間の位置ずれを抑制する第1位置ずれ抑制機構410と、シリンダ10と樹脂シート350との間の位置ずれを抑制する第2位置ずれ抑制機構420と、を有する。
位置ずれ抑制機構400は、金属シート340とシリンダ10のいずれか一方に設けられた第3矩形と他方に当該第3矩形に対向するように設けられた第4矩形とが嵌り合う構成を備えている。
【0071】
第2の実施形態に係る第1位置ずれ抑制機構410は、シリンダ10に設けられた第3矩形の一例としてのシリンダ側矩形面11aaと金属シート340にシリンダ側矩形面11aaに対向するように設けられた第4矩形の一例としての金属側矩形面341aとが嵌り合う構成を備えている。第2の実施形態に係る第1位置ずれ抑制機構410は、第2の実施形態に係る金属シート340のD字状部341と、シリンダ10の外シリンダ11の嵌合部11aとを有する。
【0072】
第2の実施形態に係る第2位置ずれ抑制機構420は、シリンダ10に設けられた第3矩形の一例としてのシリンダ側矩形面11aaと樹脂シート350にシリンダ側矩形面11aaに対向するように設けられた第5矩形の一例としての樹脂側矩形面351aとが嵌り合う構成を備えている。第2の実施形態に係る第2位置ずれ抑制機構420は、第2の実施形態に係る樹脂シート350のD字状部351と、シリンダ10の外シリンダ11の嵌合部11aとを有する。
【0073】
第2の実施形態に係る樹脂シート350は、第1の実施形態に係る樹脂シート320とは異なり、第2の実施形態に係る金属シート340との間には位置ずれ抑制機構を有していない。
【0074】
第2の実施形態に係る下スプリングシート34は、第1位置ずれ抑制機構410及び第2位置ずれ抑制機構420を有していることにより、第2の実施形態に係る金属シート340と第2の実施形態に係る樹脂シート350との間の位置ずれが抑制される。
【0075】
<第1位置ずれ抑制機構及び第2位置ずれ抑制機構の変形例>
図11は、第1の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410及び第2位置ずれ抑制機構420を示す図である。
第1の変形例に係るシリンダ10の嵌合部11aは、図11に示すように、円筒状の対向する2つの部位に矩形の面11abが形成された所謂二面カット状で筒状である。
【0076】
第1の変形例に係る金属シート340は、図11に示すように、D字状で筒状のD字状部341に代えて、シリンダ10の嵌合部11aの二面カット状に沿う二面カット状部342を有する。
そして、第1の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410は、第1の変形例に係るシリンダ10の嵌合部11aと第1の変形例に係る金属シート340の二面カット状部342とを有する。
【0077】
第1の変形例に係る樹脂シート350は、第1の変形例に係る金属シート340同様に、D字状部351に代えて、シリンダ10の嵌合部11aの形状に沿う二面カット状部352を有する。
そして、第1の変形例に係る第2位置ずれ抑制機構420は、第1の変形例に係るシリンダ10の嵌合部11aと第1の変形例に係る樹脂シート350の二面カット状部352とを有する。
【0078】
図12は、第2の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410及び第2位置ずれ抑制機構420の変形例を示す図である。
第2の変形例に係るシリンダ10の嵌合部11aは、図12に示すように、六角筒状である。
【0079】
第2の変形例に係る金属シート340は、図12に示すように、D字状で筒状のD字状部341に代えて、シリンダ10の嵌合部11aの六角筒状に沿う六角筒状部343を有する。
そして、第2の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410は、第2の変形例に係るシリンダ10の嵌合部11aと第2の変形例に係る金属シート340の六角筒状部343とを有する。
【0080】
第2の変形例に係る樹脂シート350は、第2の変形例に係る金属シート340同様に、D字状部351に代えて、シリンダ10の嵌合部11aの形状に沿う六角筒状の六角筒状部353を有する。
そして、第2の変形例に係る第2位置ずれ抑制機構420は、第2の変形例に係るシリンダ10の嵌合部11aと第2の変形例に係る樹脂シート350の六角筒状部353とを有する。
【0081】
図13は、第3の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410及び第2位置ずれ抑制機構420の変形例を示す図である。
第3の変形例に係るシリンダ10の嵌合部11aは、図13に示すように、円筒状の外周面の一部に径方向外側に突出する突起11acを上下方向に延びるように有する。
【0082】
第3の変形例に係る金属シート340は、図13に示すように、D字状部341に代えて円筒状部344であると共に、円筒状部344の内周面の一部に、シリンダ10の嵌合部11aの突起11acに沿う上下方向に延びる溝345が形成されている。
そして、第3の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410は、第3の変形例に係るシリンダ10の嵌合部11aの突起11acと第3の変形例に係る金属シート340の円筒状部344の溝345とを有する。
【0083】
第3の変形例に係る樹脂シート350は、第3の変形例に係る金属シート340同様に、D字状部351に代えて、円筒状部354を有すると共に円筒状部354の内周面の一部に、シリンダ10の嵌合部11aの突起11acに沿う上下方向に延びる溝355が形成されている。
そして、第3の変形例に係る第2位置ずれ抑制機構420は、第3の変形例に係るシリンダ10の嵌合部11aの突起11acと第3の変形例に係る樹脂シート350の円筒状部354の溝355とを有する。
【0084】
上述した第1〜第3の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410及び第2位置ずれ抑制機構420においても、金属シート340及び樹脂シート350をシリンダ10に対して回転しないようにすることができる。その結果、金属シート340に対する樹脂シート350の相対移動も抑制することができ、金属シート340に対して樹脂シート350が相対的に移動することに起因して音が生じることを抑制することができる。
【0085】
なお、敢えて図示しないが、図9及び図10に示した第2の実施の形態に係る第1位置ずれ抑制機構410及び第2位置ずれ抑制機構420と、図13に示した第3の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410及び第2位置ずれ抑制機構420とを組み合わせてもよい。また、第3の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410及び第2位置ずれ抑制機構420と、第1又は第2の変形例に係る第1位置ずれ抑制機構410及び第2位置ずれ抑制機構420とを組み合わせてもよい。
【0086】
<樹脂シートの変形例>
次に、樹脂シートの変形例について説明する。
図14(a)は、図3のXIVa−XIVa部の断面図である。図14(b)は、図3のXIVb−XIVb部の断面図である。
図14(a)及び図14(b)に示すように、第1の実施形態に係る樹脂シート320及び第2の実施形態に係る樹脂シート350の延出部326に、樹脂シート320,350のベースの材料よりも高強度の材料にて成形された強化部材339を鋳込んでもよい。例えば、延出部326に、強化部材339をインサート成形してもよい。強化部材339の材質としては、例えば、金属、グラファイト、樹脂シート320,350のベースの樹脂材よりも高強度の樹脂であることを例示することができる。図14(a)及び図14(b)に示した強化部材339は、金属製の線材であり、周方向に伸びるように配置された強化部材339が上下方向に複数(図14(a)及び図14(b)においては3つ)、等間隔に並べて配置されている。
【0087】
強化部材339を有する樹脂シート320,350を備えた下スプリングシート31,34においては、たとえコイルスプリング30が破損してその破片がタイヤ112の方へ勢いよく向かったとしても、樹脂シート320,350自体が破損することが、より確実に抑制される。樹脂シート320,350が、高強度の材料にて成形された強化部材339を内部に含む延出部326を有するためである。それゆえ、コイルスプリング30の破片がタイヤ112に刺さり、タイヤ112がバーストしてしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0088】
<強化部材の変形例>
図15(a)〜図15(d)は、強化部材339の変形例を示す図であり、図3のXIVa−XIVa部の断面図である。
図16(a)〜図16(d)は、強化部材339の変形例を示す図であり、図3のXIVb−XIVb部の断面図である。
強化部材339の形状、位置および個数は特に限定されない。図15(a)、図15(b)および図16(a)に示すように、強化部材339は、直方体状であってもよい。また、図15(c)、図16(b)および図16(c)に示すように、強化部材339は、メッシュ状(網状)や格子状に織り込んでもよい。また、図16(d)に示すように、線材である強化部材339を、周方向だけでなく、上下方向に伸びるように配置した強化部材339を周方向に複数、等間隔に並べて配置してもよい。また、強化部材339を配置する位置は、図15(a)に示したような、延出部326の中央に限定されず、図15(b)に示すような延出部326における内側の部位や、延出部326における外側の部位であってもよい。また、図15(d)に示すように、強化部材339を配置する位置は、延出部326内部のみに限らず、外側部325に設けてもよい。さらに、強化部材339を、受圧部324に設けてもよい。
【0089】
図17は、懸架装置1の変形例を示す図である。
上述した懸架装置1は、下スプリングシート31,34における樹脂シート320,350がコイルスプリング30と直接接触する構成である。しかしながら、懸架装置1は、図17に示すように、樹脂シート320,350とコイルスプリング30との間にゴムなどの弾性部材60を有してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…懸架装置、10…シリンダ、20…ピストンロッド、30…コイルスプリング、31,34…下スプリングシート、310,340…金属シート、320,350…樹脂シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18