(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような光電式の血圧測定装置では、脈波本来のAC成分の他、ホワイトノイズなどの影響や、回路で生成されるAC成分などが加算された状態で、脈波が観測される。したがって、生体の脈波以外の成分がノイズとなってしまう。
【0005】
特に、血圧測定装置として、カフ式ではない腕時計式等の血圧測定装置を用いた場合、測定対象者の動きや外乱などによって血圧測定装置の取り付け状態が変化してしまう。したがって、ノイズが大きくなってしまい、測定精度を向上することが困難になってしまう。さらに、SBP2は、脈波の変化が小さいため、測定することが困難である。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、精度良く血圧を測定することができる血圧測定装置及び血圧測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる血圧測定装置は、生体に光を照射する光源と、前記生体からの光を受光する受光器と、前記受光器からの検出信号に基づいて、血圧を測定する処理装置と、を備えた血圧測定装置であって、前記処理装置は、前記検出信号の第1の区間の移動平均値から、前記第1の区間よりも長い第2の区間の移動平均値を減算する減算値を求め、前記減算値に基づいて、脈波の特徴点を抽出し、前記特徴点に基づいて求められた特徴量を、血圧に換算する、ものである。このようにすることで、ノイズを低減することができるため、血圧を精度よく測定することができる。
【0008】
上記の血圧測定装置において、前記処理装置は、前記減算値に基づいて、脈波の1周期を特定し、前記脈波の周期毎に前記特徴点を抽出することで、前記特徴量を複数求め、複数の前記特徴量から、前記血圧を算出するようにしてもよい。このようにすることで、脈波の周期を適切に特定することができるため、血圧を精度よく測定することができる。
【0009】
上記の血圧測定装置において、前記特徴点が抽出できない周期については、前記血圧の算出から除外することを特徴とするものである。このようにすることで、より測定精度を向上することができる。
【0010】
本発明の一態様にかかる血圧測定装置は、生体に光を照射する光源と、前記生体からの光を受光する受光器と、を備えたセンサユニットと、前記センサユニットからの検出信号に基づいて脈波の特徴点を抽出して、前記特徴点に基づく特徴量を血圧に換算する処理装置と、を備えた血圧測定装置であって、前記センサユニットは、第1の波長帯の光に基づく第1の検出信号と、前記第1の波長帯よりも短い第2の波長帯の光に基づく第2の検出信号と、を出力し、前記処理装置は、1脈波の第1の期間においては前記第1の検出信号に基づいてSBP2に基づく前記特徴点を抽出し、前記第1の期間と異なる第2の期間においては前記第2の検出信号に基づいて前記特徴点を抽出し、前記特徴点に基づいて求められた特徴量を、血圧に換算するものである。このようにすることで、SBP2の特徴点を適切かつ簡便に抽出することができるため、血圧を精度よく測定することができる。
【0011】
上記の血圧測定装置において、前記第2の期間には、1脈波の最大値、及び最小値が含まれていてもよい。このようにすることで、最大値及び最小値を簡便に抽出することができるため、血圧を精度よく測定することができる。
【0012】
上記の血圧測定装置において、前記第1の波長帯の光が赤色光又は赤外光であり、前記第2の波長帯の光が緑色光であることを特徴としてもよい。これにより、脈波の情報を適切に得ることができる。
【0013】
上記の血圧測定装置において、前記第1の波長帯の光と、前記第2の波長帯の光が交互に発光するものである。これにより、簡便に測定を行うことができる。
【0014】
上記の血圧測定装置は、腕時計端末に備えられていてもよい。
【0015】
本発明の一態様にかかる血圧測定方法は、生体に光を照射する光源と、前記生体からの光を受光する受光器と、前記受光器からの検出信号に基づいて、血圧を測定する処理装置と、を備えた血圧測定装置による血圧測定方法であって、前記検出信号の第1の区間の移動平均値から、前記第1の区間よりも長い第2の区間の移動平均値を減算する減算値を求め、前記減算値に基づいて、脈波の特徴点を抽出し、前記特徴点に基づいて求められた特徴量を、血圧に換算する、ものである。このようにすることで、ノイズを低減することができるため、血圧を精度よく測定することができる。
【0016】
本発明の一態様にかかる血圧測定方法は、生体に光を照射する光源と、前記生体からの光を受光する受光器と、を備えたセンサユニットと、前記センサユニットからの検出信号に基づいて脈波の特徴点を抽出して、前記特徴点に基づく特徴量を血圧に換算する処理装置と、を備えた血圧測定装置による血圧測定方法であって、第1の波長帯の光に基づく第1の検出信号と、前記第1の波長帯よりも短い第2の波長帯の光に基づく第2の検出信号と、を出力し、前記処理装置は、1脈波の第1の期間においては前記第1の検出信号に基づいてSBP2に基づく前記特徴点を抽出し、前記第1の期間と異なる第2の期間においては前記第2の検出信号に基づいて前記特徴点を抽出し、前記特徴点に基づいて求められた特徴量を、血圧に換算する、ものである。このようにすることで、SBP2の特徴点を適切かつ簡便に抽出することができるため、血圧を精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、高精度に血圧を測定することができる血圧測定装置、腕時計端末、及び血圧測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0020】
実施の形態1
本実施の形態にかかる血圧測定装置の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、血圧測定装置の構成を示すブロック図である。血圧測定装置1は、センサユニット10と、AFE(Analog Front End)20と、処理装置30と、表示部40とを備えている。血圧測定装置1は、例えばウェラブル式端末に設けられた測定装置であり、例えば、腕時計端末のように、ベルトによって測定対象者(人)の手首に装着される。すなわち、腕の周りにバンドを巻き付けることで、血圧測定装置1が血圧を測定可能な状態となる。
【0021】
センサユニット10は光源11と受光器12とを備えている。光源11は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子であり、緑色、赤色光、又は赤外光(IR)などの光を発生する。光源11からの光は、生体に照射される。
【0022】
受光器12は、例えば、フォトダイオード、CCD(Charge Coupled Device)、CMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)などの光検出器であり、光源11と近接して配置されている。受光器12は、生体からの光を受光して、その強度に応じた検出信号をAFE20に出力する。したがって、センサユニット10は、血管の容積変化に応じた容積脈波を検出する光電センサである。
【0023】
具体的には、光源11からの光が生体に照射されると、生体の表皮、真皮、毛細血管、末梢血管、脂肪、動脈などにて光が散乱される。受光器12は、生体の各部位から散乱光を検出する。血管に流れる脈は、一定時間内の周期的な動きを行うことから、脈から得られる散乱光強度(脈波)にも特有の動きが観測される。すなわち、散乱光強度が、脈波を示すことになる。この脈波を解析することにより、血圧や血中酸素濃度、AI(Augmentation index)値等の生体指標を求めることができる。
【0024】
本実施形態では、光源11が、生体の表皮や真皮などを通過しやすい赤色光又は赤外光を発生している。こうすることで、生体の血管で散乱する散乱光強度を高くすることができる。なお、受光器12は、生体を通過した光を受光するように配置されていてもよい。この場合、生体と介して光源11と受光器12を対向配置する。
【0025】
AFE20は、アンプ21、ノイズ除去フィルタ22、及びADC(Analog Digital Converter)23を備えている。アンプ21は、センサユニット10からの検出信号を増幅する。ノイズ除去フィルタ22は、アナログフィルタであり、アナログ処理によってアンプ21で増幅された検出信号のノイズを除去する。例えば、ノイズ除去フィルタ22はローパスフィルタやハイパスフィルタ等のLCフィルタである。ADC23は、ノイズ除去フィルタ22でノイズ除去された検出信号をデジタル信号に変換する。そして、ADC23は、デジタル信号に変換された検出信号を処理装置30に出力する。ADC23は、所定のサンプリング周期でサンプリングされたデジタル値を検出信号として出力する。
【0026】
処理装置30は、例えば、マイコンであり、CPU(Central Processing Unit)31と、メモリ32と、デジタルフィルタ33と、パワーマネジメントユニット34と、を備えている。メモリ32は、所定のプログラムを格納している。CPU31は、メモリ32に格納されたプログラムを読み出して、実行する。こうすることで、AFE20からの検出信号に基づいて、血圧(SBP、DBP)等を測定することができる。CPU31は、血圧を測定するために、後述するように、特徴点を抽出する処理、及び特徴量を血圧に換算する処理を行う。したがって、CPU31は、
図1に示すように、特徴点を抽出する抽出部51、及び特徴量を血圧に換算する換算部52を備えている。さらには、処理装置30が、血圧以外の健康指標、例えばAI(動脈硬化指数)値を算出するようにしてもよい。
【0027】
パワーマネジメントユニット34は、センサユニット10に供給する電源を制御する。例えば、パワーマネジメントユニット34は、光源11に所定の駆動電流を供給して、光源11を所定の強度で発光させる。さらに、パワーマネジメントユニット34は、光源11に電流を供給するタイミングを制御して、光源11を所定のタイミングで間欠的に発光させるようにしてもよい。
【0028】
図2に、AFE20から出力される検出信号を示す。
図2に示すように、検出信号には、血管の脈動に応じた脈波が繰り返し現れる。さらに、検出信号には、ホワイトノイズや電子回路などで発生する回路ノイズが含まれている。そこで、デジタルフィルタ33は、検出信号からノイズ成分を除去するデジタル処理を行っている。そして、デジタルフィルタ33でノイズが除去された検出信号に基づいて、CPU31が血圧を測定している。
【0029】
デジタルフィルタ33は、検出信号に対して移動平均を取る。なお、ある時間t(n)における移動平均値a(n)とは、ある時間t(n)を中心に前後の期間[t(n−m)−t(n+m)]におけるデータ全てを加算して、その加算値を2m+1で割った数値である。まず、デジタルフィルタ33は、電源の周波数に応じた第1の区間の移動平均値を第1の移動平均値をとして算出する。例えば、商用電源(50Hz又は60Hz)の1周期に対応する区間を第1の期間として、デジタルフィルタ33は、第1の区間に含まれるデジタル値の平均を取る。
【0030】
さらに、デジタルフィルタ33は、第1の区間よりも長い第2の区間の移動平均値を第2の移動平均値として算出する。例えば、第2の区間は脈拍に応じて設定される。例えば、1回の脈よりも長い区間が第2の区間として設定される。ここでは、具体的な一例として、0.47Hzの1周期に対応する区間を第2の区間として設定することができる。すなわち、デジタルフィルタ33は、1/0.47Hzに含まれるデジタル値の平均を取る。第2の区間は、第1の区間よりも長いため、第2の区間に含まれるデータ数は第1の区間のデータ数よりも多くなる。よって、第2の移動平均値は、第1の移動平均値よりも変動が小さくなる。
【0031】
そして、デジタルフィルタ33は、第1の移動平均値から第2の移動平均値を減算した減算値を算出する減算部となる。
図3に第1の移動平均値と第2の移動平均値とから算出した減算値の波形の一例を示す。
図3は、減算値と、減算値から抽出される特徴点の一例を示す図である。
図3では、下側に減算値による脈波を示し、上側に理想的な脈波の一部を拡大して示している。また、
図3の下側では、赤色光又は赤外光によって取得された脈波と、緑色光によって取得された脈波、並びに、それらの差分をそれぞれ示している。なお、ここでは赤色光又は赤外光での取得結果を用いて、以下の演算処理を行っている。
【0032】
処理装置30は、
図3に示すように、減算値が正となる期間から脈波の1周期を特定する。なお、以下の説明において、1周期分の脈波を1脈波とする。処理装置30は、減算値が負から正となるタイミングが1脈波の開始点として設定する。
【0033】
そして、処理装置30の抽出部51が減算値に基づいて、1脈波の特徴点を抽出する。処理装置30は、1脈波毎に、例えば、最大値、最小値、極大値、極小値、変曲点等を特徴点として抽出する。処理装置30は、減算値の波形から特徴点の値、及び時間を算出する。例えば、処理装置30は、脈波を微分して速度脈波を求めたり、2回微分して加速度脈波を求めたりすることで、特徴点を算出する。
図3には、処理装置30が抽出する特徴点の一例を示している。
【0034】
図3では、1周期における第1のピーク(最大値)がSystolic peak,第2のピーク(極大値)がReflective peakとなる。さらに、第2のピークの後の極小値が収縮期(systolic)と拡張期(Diastolic)との境界を示すノッチとなる。1周期の開始点からsystolic peakまでの時間をS.Timeとする。1周期の開始点からReflective peakをR.Timeとする。1周期の開始点からノッチまでの時間をNotch Timeとする。さらに、処理装置30は1周期の最小値を特徴点として抽出する。このように、処理装置30は、複数の特徴点における値と時間を算出する。また、本実施の形態では、ノッチでの減算値を基に、最大値、最小値等を補正するようにしてもよい。
【0035】
処理装置30は、1脈波に含まれる複数の特徴点の値、及び時間から特徴量を算出する。本明細書において、特徴量とは、血圧(SBP,DBP)を算出するための値であり、1脈波における特徴点の値、及び時間から導き出される値である。特徴量は予め設定された計算式に基づいて算出することが可能である。特徴量は、血圧の変化に応じて変化する値であり、血圧の変化に対して大きく変化する値を用いることで血圧を精度よく測定することができる。また、特徴点における減算値をそのまま特徴量としてもよい。ここでは、SBPとDBPを求めるため、2つの計算式が用意されている。
【0036】
そして、処理装置30の換算部52は、特徴量を血圧に換算する。換算部52は、回帰直線を用いて、特徴量を血圧値に換算する。ここでは、
図6に示すように、SBP(収縮期血圧:BP_MAX)と、DBP(拡張期血圧:BP_MIN)とを算出するため、2つ回帰直線がメモリ32に格納されている。そして、処理装置30は、1脈波に基づいて、SBP用の特徴量とDBP用の特徴量を算出する。そして、処理装置30は、SBP用の回帰直線を用いて、一方の特徴量からSBPを算出する。また、処理装置30は、DBP用の回帰直線を用いて、他方の特徴量からDBPを算出する。このようにして、血圧測定装置が血圧を測定する。なお、抽出する特徴点と、特徴点から特徴量を求めるための計算式は、公知の手法によって最適化されている。すなわち、血圧を精度よく測定できる特徴点、及び計算式が設定されている。
【0037】
なお、回帰直線は、予め取得された複数の測定結果を用いて設定されている。すなわち、複数の測定対象者に対して、本実施形態に係る血圧測定装置で特徴量を求めるとともに、従来のカフ式の血圧計で血圧値を測定する。これにより、特徴量と血圧値を対応付けたデータベースが構築される。そして、データベースに記憶されたデータに対して回帰分析を行って、回帰直線を求める。なお、回帰直線は、性別、及び年代別に設定されていてもよい。例えば、20代男性、20代女性、30代男性、30代女性等のように、性別ごと、年代別に設定されていてもよい。すなわち、年代、性別ごとにデータを取得して、データベースを構築してもよい。また、処理装置30は、回帰直線に限らず、2次以上の多項式などを用いた回帰曲線を用いて特徴量を血圧に換算してもよい。
【0038】
さらに、処理装置30は、複数の脈波に基づいて、血圧を算出するようにしてもよい。例えば、処理装置30は、n個(nは2以上の整数)の脈波のそれぞれについて特徴点を抽出して、特徴量を算出する。これにより、1脈波毎に特徴量が算出されるため、n個の特徴量が算出される。そして、処理装置30が、回帰直線を用いて、n個の特徴量をそれぞれ血圧(SBP又はDBP)に換算する。これにより、n個の血圧値が算出される。そして、n個の血圧値の平均値を血圧とすることができる。このように、複数の脈波に基づいて、特徴量を算出することで、測定精度を向上することができる。
【0039】
さらに、n個の血圧値の一部を除いて血圧を求めるようにしてもよい。例えば、n個の血圧値のうち、最大値と最小値を除いた(n―2)個の血圧値の平均値を血圧してもよい。これにより、より測定精度を向上することができる。さらに、特徴量や特徴点の値が他の脈波と大きく異なる脈波についても、血圧の算出から除外するようにしてもよい。
【0040】
なお、特徴点が抽出できない1脈波(1周期)については、血圧の算出から除外するようにしてもよい。例えば、ノイズなどの影響によって、特徴量の算出に必要な極大値、極小値がノイズに埋もれてしまい、算出することができない場合、その周期については、特徴量を算出できなくなる。したがって、特徴点が抽出できない1脈波(周期)については、血圧を換算しないようにすることが好ましい。こうすることで、血圧の測定精度を向上することができる。
【0041】
このように、処理装置30は、減算値を元に脈波の上昇、下降などの傾向を推定して、最大値、最小値、極大値、極小値、変曲点等を特徴点として推定する。そして、処理装置30が1脈波毎に、複数の特徴点から特徴量を算出している。処理装置30は、データベースによって予め設定されている回帰直線を用いて、特徴量を血圧値に換算する。
【0042】
表示部40は、液晶ディスプレイなどの表示モニタを備えている。処理装置30が求めた血圧や脈波の波形を表示部40が表示する。
【0043】
本実施の形態に係る血圧測定装置では、第1の区間の移動平均値と、第2の区間の移動平均値との減算値を用いている。こうすることで、外乱光、振動、脈以外の散乱ノイズの影響を低減することができる。よって、特徴点を適切に抽出することができ、血圧の測定精度を向上することができる。また、第1の移動平均値の区間として、商用電源の周波数(50Hz又は60Hz)に対応する区間を用いている。こうすることで、電源ノイズを低減することができる。
【0044】
また、デジタルフィルタ33がデジタル処理によって、ノイズを低減している。したがって、アナログフィルタと比べて、容易に開発を行うことができる。例えば、アナログフィルタでノイズを除去する場合、LCフィルタの発振の影響を避ける必要があるため、機種ごとに回路を設計する必要がある。本実施の形態では、コンピュータプログラムによるデジタル信号処理でノイズを除去することができるため、容易に開発することができる。
【0045】
さらに、処理装置30が、減算値を用いて、脈波の1周期(1脈波)を特定している。すなわち、減算値が0になるタイミングで1周期の開始タイミングを特定することができる。このようにすることで、より適切に特徴量を求めることができる。例えば、特徴点までの時間を精度よく求めることができるため、適切に特徴量を求めることが可能になる。また、1つの受光器12の検出信号に基づいて、第1の移動平均値と第2の移動平均値を求めている。こうすることで、適切にノイズレベルを推定することができる。よって、より高い精度で測定することができる。また、移動平均値を随時算出して、減算値を求めることで、ノイズが変動した場合でも、精度よく測定を行うことできるようになる。
【0046】
図5を用いて、本実施の形態にかかる血圧測定方法について説明する。
図5は、血圧測定方法を示すフローチャートである。
【0047】
先ず、測定対象者(生体)は、血圧測定装置1を例えば手首に装着して、生体(手首)からの光を受光器12で受光する(S1)。受光器12は、受光した光の強度を示す信号を光電変換してAFE20に出力する。
【0048】
次に、AFE20は、センサユニット10から入力された検出信号を処理する(S2)。上記のように、AFE20のアンプ21が、検出信号を増幅する。そして、ノイズ除去フィルタ22が検出信号をフィルタリングして、ノイズを除去する。ADC23が検出信号をAD変換する。
【0049】
次に、デジタルフィルタ33が検出信号に対してデジタルフィルタ処理を行う(S3)。すなわち、第1の移動平均値と第2の移動平均値との減算値を求めて、ノイズを除去する。さらに、このステップにおいて、減算値によって周期を特定する。
【0050】
処理装置30が減算値に基づいて、特徴点を抽出する(S4)。例えば、処理装置30が、減算値によって示される脈波を微分したり、2回微分することで、特徴点を抽出する。ここでは、処理装置30が、1脈波毎に特徴点を抽出する。そして、1脈波毎に、処理装置30が特徴点の値及び時間に基づいて、特徴量を算出する(S5)。すなわち、予め設定された計算式を用いて、特徴点の値及び時間を特徴量に換算する。なお、特徴点が抽出できない脈波については、特徴量を算出しない。
【0051】
そして、処理装置30が回帰直線を用いて、特徴量を血圧に換算する(S6)。処理装置30が、SBPとDBPとを算出している。そして、表示部40が求めた血圧を表示する(S7)。このような処理を行うことで、上記した効果を得ることができる。
【0052】
また、血圧以外の生体情報を測定したい場合、測定する生体情報に応じて特徴量を求めるための計算式、及び回帰直線を設定しておけばよい。例えば、血中酸素濃度を測定したい場合、求める特徴点と、特徴点の値等から特徴量を算出するための計算式を設定しておく。さらに、複数の測定対象者に対して血中濃度測定を予め行っておき、データベースを構築しておく。そして、データベースに基づいて、回帰直線を求める。こうすることで、血圧測定装置1によって、血中酸素濃度を測定することも可能となる。
【0053】
実施の形態2.
本実施の形態にかかる血圧測定装置について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態にかかる血圧測定装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、収縮期後方血圧(SBP2)に対応する特徴点を抽出している。なお、SBP2は収縮期後方血圧であり、
図3の収縮期の第2のピーク(Reflective Peak)に対応する。SBP2は、1脈波の収縮期血圧(SBP)の後、ノッチの前に存在する特徴点であり、血管の硬さ(AI値)などを導出できるなど生体情報の重要な指標として用いられている。しかしながら、SBP2は、脈波の変化が小さいため、抽出することが困難である。
【0054】
以下、SBP2の特徴点を抽出するための構成について、説明する。本実施の形態では、SBP2の特徴点を抽出するため、センサユニット10に二つの光源11a、11bが設けられている。なお、血圧測定装置の基本的構成、及び処理については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
本実施の形態では、センサユニット10が第1の光源11aと第2の光源11bとを備えている。第1の光源11aは、第1の波長帯の光(例えば、波長600nm以上1100nm以下)を発光する。第2の光源11bは、第1の波長帯よりも短い第2の波長帯の光(例えば、波長480nm以上560nm以下)を発光する。第1の波長帯の光は、例えば、赤色光又は赤外光であり、第2の波長帯の光は、緑色光である。なお、第1の波長帯と第2の波長帯とは、完全にずれているものに限らず、一部重複していてもよい。
【0056】
パワーマネジメントユニット34は、第1の光源11aと第2の光源11bとを異なるタイミングで発光させる。例えば、パワーマネジメントユニット34は、第1の光源11aと第2の光源11bを交互に発光させる。したがって、第1の光源11a、及び第2の光源11bは間欠的に発光し、その発光周期が同じで位相がずれている。
【0057】
第1の光源11a、及び第2の光源11bは近接して配置されている。そして、第1の光源11a、及び第2の光源11bは生体のほぼ同じ部位に向けて光を照射する。受光器12は、光が照射された部位からの散乱光を検出する。受光器12は、第1の波長帯、及び第2の波長帯の光に対して感度を有している。すなわち、光源11aが赤外光を発光する場合、受光器12は赤外光から緑色光まで検出することができればよい。また、光源11aが赤色光を発光する場合、受光器12は赤色光から緑色光までの波長帯の光を検出することができればよい。
【0058】
生体に光を照射する場合、波長に応じて到達深度が異なっているため、得られる生体情報が異なる。例えば、緑色光は、真皮表面付近までの深度で散乱が生じる割合が高い。一方、赤色光又は赤外光は真皮を透過して動脈がある深度で散乱する割合が高い。すなわち、赤外光又は赤色光は生体での吸収が少なく、透過しやすい。赤外光又は赤色光を用いた場合、動脈での散乱光が増加する。赤外光又は赤色光は到達深度が深いため、より多くの情報を得ることができる。しかしながら、動脈以外の表皮、真皮にある末梢血管や脂肪などはわずかではあるがノイズとして影響する。このノイズが散乱光の解析を困難にして、高度な生体情報の取得を阻害している。一方、緑色光は到達深度が浅いため、脂肪等での散乱光によるノイズが小さくなる。
【0059】
そこで、本実施の形態では、緑色光と緑色光よりも長波長の赤色光又は赤外光とを使い分けている。具体的には、1脈波の第1の期間では、第1の波長帯の光(赤色光又は赤外光)を用いており、第2の期間では第2の波長帯の光(緑色光)を用いている。センサユニット10が、第1の波長帯の光と第2の波長帯の光とを交互に発光させている。よって、異なる波長での測定を簡便な構成で行うことができる。
【0060】
第1の光源11aと第2の光源11bとの発光タイミングについて、
図7を用いて説明する。
図7は、脈波における発光タイミングを示す図である。1脈波が第1の期間Trと第2の期間Tgとの2つの期間に分けられている。第1の期間Trは赤色光又は赤外光の発光期間である。第1の期間Trにおいて、第1の光源11aが点灯し、第2の光源11bは消灯している。第2の期間Tgは、緑色の発光期間である。第2の期間Tgにおいては、第1の光源11aが消灯し、第2の光源11bが点灯している。そして、第1の期間Trと第2の期間Tgとが繰り返している。そして、第1の波長帯の光と第2の波長帯の光を同じ受光器12で検出している。ADC23が所定のサンプリング周期で、検出信号をデジタル値に変換している。
【0061】
第2の期間Tgは、1脈波の最大値及び最小値を含んでいる。すなわち、第2の期間Tgは、SBPに基づく特徴点(最大値)とDBPに基づく特徴点(最小値)を含む期間である。第2の期間Tgは、最小値よりも前のタイミングを先頭として、最大値よりも後のタイミングを終端としている。第1の期間Trは第2の期間の終端タイミングを先頭タイミングとして、そこから所定の時間だけ続く期間である。第1の期間Trの終端タイミングは、第2の期間Tgの先頭タイミングとなっている。第1の期間Trには、SBP2に基づく特徴点を含む期間である。なお、
図7では、第2の期間Tgが第1の期間Trよりも長くなっているが、第2の期間Tgが第1の期間Trよりも短くなっていてもよい。
【0062】
1脈波の最大値、及び最小値は、抽出が容易である。よって、動脈からの散乱光強度が弱い緑色光を用いた場合でも、SBPとDBPに基づく特徴点を、容易に抽出することができる。一方、SBP2に基づく特徴点は、極小値、極大値、及び変曲点とも言えず、抽出が困難である。したがって、SBP2の特徴点の抽出には、第1の波長帯の光を用いている。すなわち、第1の波長帯の光では、動脈での散乱光強度が高いため、SBP2の特徴点が極大値として表れやすくなる。よって、処理装置30が、比較的容易にSBP2に対応する特徴点を抽出することができる。
【0063】
本実施の形態では、SBP2の特徴点を含む第1の期間Trにおいて、第1の波長帯の光を検出している。すなわち、処理装置30は、第1の波長帯の光に基づいて、SBP2の特徴点を抽出している。換言すると、第2の波長帯を用いずに、SBP2の特徴点が抽出されている。第1の波長帯の光を用いることで、散乱光強度が大きくなるため、SBP2の特徴点を容易に抽出することができる。例えば、SBP2抽出のために、脈波を2階微分したり、その他データ解析したりする必要がなくなる。
【0064】
以下に、SBP2の特徴点を抽出するための処理の一例について説明する。
図3で示す脈波一周期中で前半分のデータを使用し、隣り合うデータを引き算する。次に、算出値の絶対値をとり、0付近が多く算出される期間を抽出する。周期始めから数えて、0付近が多く算出される期間の中で二番目に当たる時間はR.Timeとみなすことが可能で、その時間付近のデータはSBP2と見なすことができる。このようにして、SBP2の特徴量を求める。
【0065】
また、処理装置30は、第2の波長帯の光に基づいて、脈波の最大値、及び最小値を、抽出している。すなわち、SBPに基づく特徴点とDBPに基づく特徴点は第1の波長帯の光を用いずに抽出されている。脈波からの最大値、及び最小値の抽出は容易である。また、緑色光では、ノイズが小さくなる。したがって、動脈からの散乱光強度が小さい緑色光を用いた場合でも、処理装置30が特徴点を精度よく抽出することができる。
【0066】
そして、実施の形態1と同様に、処理装置30は特徴点から血圧を算出する。すなわち、処理装置30は、1脈波から抽出された複数の特徴点から特徴量を求める。そして、処理装置30は、回帰直線を用いて、特徴量を血圧に換算する。回帰曲線は、第1の波長帯の光と第2の波長帯の光を使用した場合のデータベースにより設定すればよい。すなわち、第1及び第2の波長帯の光を交互に照射したとき特徴量と脈拍測定値とを対応付けたデータベースを構築して、このデータベースを用いて回帰直線を求めればよい。
【0067】
さらに、脈波のn周期(nは2以上の整数)に対して、処理装置30は、周期毎に特徴量を算出する。これにより、n個の血圧値が求められる。そして、n個の血圧値に対して、nを母数として平均化する。こうすることで、精度よく血圧測定することができる。
【0068】
また、実施の形態1と同様に、特徴点が抽出できない脈波や、特徴量が大きき異なる脈波については、血圧の算出から除外するようにしてもよい。本実施の形態では、第1の波長帯に基づく検出信号によってSBP2の特徴点を抽出している。したがって、SBP2の特徴点を精度よく抽出することができる。SBP2の特徴点が抽出できない脈波や、SBP2の特徴点が他の脈波と大きく異なる脈波を減らすことができる。よって、短時間で精度の高い測定を行うことができる。
【0069】
さらに、SBP2の特徴点を用いてAI値を求めることができる。例えば、手首では以下に示すような計算式でAI値を求めることができる。
AI=SBP2/SBP(脈波の最高点)×100
【0070】
なお、第1の期間Trと第2の期間Tgの設定については、予め複数の脈波を計測した上で適切に設定することができる。例えば、測定対象者の複数の脈波を測定して、処理装置30が脈波の周期を求める。そして、処理装置30が1脈波毎に、最大値と最小値となるタイミングを求めればよい。そして、最大値と最小値を含む期間を第2の期間として設定する。そして、第2の期間以外の期間を第1の期間として設定する。
【0071】
本実施の形態では、1脈波内において異なる波長帯の光を使い分けている。すなわち、1脈波を第1の期間と第2の期間に分けて異なる波長帯の光を照射している。こうすることで、精度よく特徴点を抽出することができる。特に、SBP2の特徴点を容易に抽出することができるようになる。よって、精度よく血圧を測定することができる。
【0072】
さらに、光源11a、11bを交互に発光させているため、共通の受光器12が第1の波長帯に基づく第1の検出信号と、第2の波長帯に基づく第2の検出信号を出力する。すなわち、1つの受光器12が第1の期間Tgにおいては、第1の波長帯に基づく第1の検出信号を出力し、第2の期間においては第2の波長帯に基づく第2の検出信号を出力する。こうすることで、受光器12及びAFE20が1つでよいため、装置構成を簡略化することができる。
【0073】
なお、上記の説明では、発光色の異なる2つの光源11a、11bを設けたが、2つの受光器12を設けてもよい。すなわち、センサユニット10に、第1の波長帯の光を受光する第1の受光器と、第2の波長帯の光を受光する第2の受光器を設けてもよい。換言すると、第2の波長帯に感度を有しない第1の受光器と、第1の波長帯に感度を有しない第2の受光器を設けてもよい。そして、第1及び第2の波長帯の光を発光する1つの光源11を設けて、2つの受光器がそれぞれの波長帯の光を受光する。この場合、光源は白色光源とすることができる。あるいは、光源及び受光器を2つずつ設けてもよい。この場合、第1の波長帯に対応する第1の光源及び第1の受光器と、第2の波長帯に対応する第2の光源及び第2の受光器とを、設けることになる
【0074】
なお、実施の形態2においては、実施の形態1で示したデジタルフィルタ33での処理を行っていてもよく、行っていなくてもよい。すなわち、実施の形態1で示したように2つの移動平均値の減算値に基づいて特徴点を抽出してもよく、あるいは、デジタルフィルタ処理を経ていない検出信号に基づいて特徴点を抽出してもよい。
【0075】
なお、実施形態1、2にかかる血圧測定装置1を腕時計端末などのウェラブル端末に組み込みことも可能である。すなわち、本発明を、血圧測定装置1を備えた腕時計端末と捉えることも可能である。さらには、センサユニット10が腕時計端末に設けられるとともに無線通信部を有しており、その他の構成(例えば、処理装置30、表示部40等)は、スマートフォンに備えられていてもよい。この場合、腕時計端末で取得したアナログデータ又はデジタルデータが無線通信によってスマートフォンに転送される。そして、データを受信したスマートフォンが血圧を測定するための処理の一部又は全部を行ってもよい。
【0076】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。