(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76,39/26−39/36,41/38−41/44,43/36−43/42,43/50,45/26−45/44,45/64−45/68,45/73,49/48−49/56,49/70,51/30−51/40,51/44
【背景技術】
【0002】
電子部品の薄型化に伴い、樹脂封止には圧縮成形が多く用いられるようになってきている。圧縮成形では、離型フィルムで被覆した下型のキャビティに、電子部品を封止するための樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等)を供給し、該樹脂材料を加熱溶融して、上型に取り付けた、電子部品を装着した基板を該溶融樹脂に浸漬させた後、下型と上型を型締めすることで該樹脂を圧縮して成形が行われる。
特許文献1に記載の圧縮成形方法を例としてその工程を詳しく述べると以下の通りである(
図9参照)。まず、上型90に、電子部品91を装着した基板92を、その装着面を下方に向けた状態で取り付ける(a)。その前又は後に、離型フィルム93を下型94のキャビティ97上に配置した後(b)、キャビティ97側から吸引して離型フィルム93を下型94上に被覆させる(c)。キャビティ97内の離型フィルム93上に樹脂材料95を均一の厚さとなるように供給した後(d)、樹脂材料95を加熱溶融する(e)。そして、下型94と上型90とを型締めすることにより上型90に取り付けられた基板92の電子部品91を溶融樹脂95に浸漬し、キャビティ底面部材96を押し上げることにより溶融樹脂95を押圧する(f)。溶融樹脂95が硬化するまでの所定時間が経過した後に上型90と下型94を型開きすることにより、電子部品91の樹脂封止成形品が得られる(g)。
【0003】
このような圧縮成形では、離型フィルムにしわがあると、そのしわが電子部品を封止する樹脂に転写されてしまう。また、離型フィルムの端部が折れ曲がって二重になると、上下の金型を型締めする際に両者の間に隙間ができ、樹脂漏れが発生する。そのため、離型フィルムにしわや折れ曲がりが生じないように下型のキャビティに正しく離型フィルムを被覆することが重要となる。
【0004】
特許文献1の金型には、そのキャビティの周囲に、離型フィルムの端部を吸引し収容する溝、又は離型フィルムの端部を挟持する押圧部材が設けられている。離型フィルムの端部をこの溝に吸引・収容することによって、又は押圧部材で上下型間に確実に挟持することによって、離型フィルムの端部が折れ曲がるのを防止し、上下の金型間に隙間が生じないようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体チップの生産性向上のため、半導体基板はますます大型化しつつある。それに伴って、樹脂封止用圧縮成形装置(以下、単に「圧縮成形装置」ともいう。)のキャビティも大型化し、その結果、キャビティ上に配置する離型フィルムも大型化している。一方、製造コストの面から、離型フィルムは、破れが発生しない程度の薄いものが望ましい。上記の通り、圧縮成形装置では、離型フィルムは、しわが生じないように、そして、端部で折り返しが生じないように、キャビティ上及び下型上に配置することが必要となるが、大型の薄い離型フィルムについて、その全面にしわが発生しないように、端部まできれいにキャビティ上及び下型上に配置することは難しい。また、大型の薄い離型フィルムは空気に抗して迅速に移動させることが難しいため、そのように注意深く張設しようとすると、作業効率が大幅に低下する。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、大型の薄い離型フィルムであっても、しわや折り返しが生じることなく、迅速に圧縮成形装置の金型にセットすることができる装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る離型フィルムセット装置は、
a)離型フィルムがロール状に巻かれた離型フィルムロールを回転させて、該離型フィルムが引き出されるように保持するロール保持部と、
b)
前記離型フィル
ムロールから引き出された離型フィルムに張力を付与するテンショナーと、
c)
前記ロール保持部の上方に配置され、平坦な上面と離型フィルムを吸着するため
に前記上面に設けられた吸引孔
とを有するフィルム固定台と、
d)前記ロール保持部から水平方向成分を含む方向に引き出され、前記テンショナーにより張力が付与された離型フィルムを上方に供給するための第1ローラと、
e)前記第1ローラにより上方に供給された離型フィルムを、水平方向において前記ロール保持部から離型フィルムが引き出した向きとは逆向きにして前記フィルム固定台に供給するための第2ローラと、
f)前記フィルム固定台の外周に設けられ、該フィルム固定台と面一となる下枠と、該下枠に対応する形状を有し、該下枠との間に離型フィルムを挟み固定する上枠とを有するフィルム保持部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る離型フィルムセット装置では、まず、離型フィルムを、その先端を把持して、離型フィルムのロールからフィルム固定台の上に引き出す。この時、離型フィルムには、テンショナーによって張力が付与されているため、離型フィルムにしわが発生しないようにフィルム固定台の上に配置することができる。その後、吸引孔から空気を吸引することによって、離型フィルムをフィルム固定台に吸着させた後、フィルム固定台とロールの間で離型フィルムを切断し、フィルム固定台上のシート状の離型フィルムをロールから切り離す。その状態で、下枠の上に上枠を載せ、離型フィルムを両枠の間に挟み固定した後、吸引孔からの空気の吸引を止める。なお、上枠を下枠に固定した後、離型フィルムをロールから切り離してもよい。
【0010】
本発明に係る離型フィルムセット装置によると、テンショナーによって離型フィルムに張力をかけてロールから引き出すため、離型フィルムにしわが発生しないようにフィルム固定台の上に配置することができる。また、しわのない状態の1枚の離型フィルムは下枠と上枠の間に張設され保持されているため、これらから成るフィルム保持部を枠ごと圧縮成形装置に持って行き、その金型上に配置すれば、しわのない離型フィルムを金型にセットすることが可能となる。
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る離型フィルムセット方法は、
本発明に係る離型フィルムセット装置を用いて離型フィルムをセットする方法であって、
a)テンショナーによって離型フィルムに張力を付与しつつ、
前記離型フィル
ムロールから
該離型フィルムを引き出して
前記フィルム固定台上に配置する離型フィルム引出工程と、
b)前記フィルム固定台の
前記上面に設けられた
前記吸引孔から空気を吸引することにより前記離型フィルムを前記フィルム固定台の表面に吸着する離型フィルム吸着工程と、
c)前記フィルム固定台の
前記上面に吸着した
前記離型フィルムを
前記離型フィルムロールから切り離す切断工程と、
d)前記フィルム固定台の
前記下枠と
前記上枠との間に前記フィルム固定台上に配置された離型フィルムを挟み固定する離型フィルム保持工程と
を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る離型フィルムセット方法によると、テンショナーによって離型フィルムに張力をかけてロールから引き出すため、離型フィルムにしわが発生しないようにフィルム固定台の上に配置することができる。また、離型フィルム吸着工程又は離型フィルム保持工程の後、離型フィルムを下枠の外側で切断しロールから切り離すことによって、しわのない状態の1枚の離型フィルムを下枠と上枠の間に保持することができる。この固定された上枠と下枠を、両枠ごと圧縮成形装置の金型上に配置すれば、しわのない離型フィルムを金型にセットすることが可能となる。
【0013】
上記離型フィルムセット装置は、さらに、
g)
前記第2ローラを経由した離型フィルムの先端を把持し離型フィルムを前記フィルム固定台上に引き出すグリップと、
h)前記上枠を前記下枠上で昇降させる上枠昇降機構と、
i)前記フィルム固定台上の離型フィルムを
前記離型フィル
ムロールから切り離す切断具と
を備えていてもよい。
【0014】
このような構成を備えることにより、離型フィルムを引き出す工程、離型フィルムを切り離す工程、及び離型フィルムを上枠と下枠で挟んで固定する工程(前記の通り、離型フィルムを切り離す工程は離型フィルムを上枠と下枠で挟んで固定する工程の後でも良い。)が自動化されるため、作業者の手間を省き、作業時間を短縮することができる。
【0015】
以上のような離型フィルムセット装置を樹脂封止用圧縮成形装置に設ければ、大型の薄い離型フィルムを、しわや折り返し無く、迅速に圧縮成形装置の金型にセットすることができるため、圧縮成形に係る作業者の手間や時間が省かれ、圧縮成形作業が容易となる。
【0016】
具体的には、
本発明に係る離型フィルムセット装置を備える樹脂封止用圧縮成形装置
であって、
前記上枠と
前記下枠の間に離型フィルムが張設され保持された
前記フィルム保持部を把持する機構を下部に有するローダと、
前記ローダを水平方向及び垂直方向に移動させるローダ移動機構と
を備えると良い。
【0017】
このような樹脂封止用圧縮成形装置では、ローダ移動機構によりまずローダを上型と下型の外にある所定の位置に移動させ、そこで、フィルム保持部をその下部に把持する。そして、ローダ移動機構によりローダを下型の上に移動させ、そこでフィルム保持部を下型の上に置く。
【0018】
上記樹脂封止用圧縮成形装置のローダは、上部に、前記電子部品を装着した基板を把持する機構を有していてもよい。この場合、上型への、電子部品を装着した基板の装着も自動化され、より作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る離型フィルムセット装置及び方法によると、大型の薄い離型フィルムであっても、しわや折り返しが生じることなく、且つ迅速に、圧縮成形装置の金型にセットすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施例)
本発明の一実施例に係る離型フィルムセット装置について、
図1〜
図4を参照しながら説明する。この離型フィルムセット装置10によって取り出される1枚の離型フィルムは、圧縮成形装置の下型の円形キャビティの上に配置するものである。なお、キャビティの平面形状は円形に限定されることはなく、楕円形、正方形、長方形、菱形等であってもよい。
【0022】
図1に示すように、この離型フィルムセット装置10は、略直方体のフレーム11の内部に設けられた離型フィルム供給部20と、上部の台(上部台)30に設けられたフィルム固定部31から成る。さらに、離型フィルムセット装置10は、電子部品への悪影響を防止するために、離型フィルムを除電する機構や、離型フィルムの帯電を防止する機構(アースなど)を備えることが望ましい。
【0023】
離型フィルム供給部20は、
図2に示すように、離型フィルムロールFRを保持するロール保持部21と、離型フィルムロールFRから引き出された離型フィルムFの表裏を清掃しつつ後述の上部台30のスリット32に送るための2本の清掃ローラ26、27とを備える。ロール保持部21は、離型フィルム供給部20の床に所定の間隔を設けて平行に立設された2枚の保持板22a、22bから成り、各保持板22a、22bにはそれぞれ、離型フィルムロールFRの中心孔の方に突出し、離型フィルムロールFRを支える突起23a、23bが設けられている。一方(
図1では手前方向)の保持板22aには、離型フィルムロールFRを他方の保持板22bに押しつけるための押圧板24と、該押圧板24を離型フィルムロールFRの軸方向に移動させるためのテンションハンドル25が設けられている。この押圧板24及びテンションハンドル25が本発明のテンショナーとして機能する。
各清掃ローラ26、27は自由回転するようになっている。また、各清掃ローラ26、27の表面は、引き出された離型フィルムF表面から細かい塵埃を除去するため、弱粘着性を有している。
【0024】
図3に示すように、上部台30の一方の端には前記離型フィルムロールFRから引き出された離型フィルムFを上部台30の方に取り出すためのスリット32が設けられており、フィルム固定部31はこのスリット32のすぐ横に設けられている。以下、フィルム固定部31からスリット32への方向を後方、その反対側の方向を前方と呼ぶ。
【0025】
フィルム固定部31には、その後方から前方にかけて、引き出しローラ36、後方樋37、後方カッター溝41、フィルム固定台33、前方カッター溝42、前方樋38がこの順に設けられている(
図3参照)。後方樋37と前方樋38にはそれぞれ、各樋37、38に収まる太さのローラ39、40が、各樋に向けて軽く付勢されるように設けられている。
【0026】
フィルム固定台33は略正方形となっており、その上面の周縁には多数の吸引孔34が設けられている。これら吸引孔34は、フィルム固定台33の内部に設けられた連通路35を介してエジェクタ(吸気装置)49に接続されている(
図1(a)参照)。
【0027】
フィルム固定台33の周囲には、後述のフィルム保持部50の下枠51を置くための下枠固定部43(
図3の斜線部分)が設けられており、前記後方カッター溝41、前方カッター溝42はこの下枠固定部43(下枠51)の外側に位置するようになっている(
図1(b)、
図3参照)。
【0028】
フィルム保持部50は、
図4に示すように、下枠51と上枠55とから成る。下枠51と上枠55はほぼ同形であり、それらの枠51、55で囲まれる面は、前記フィルム固定台33の外形よりも僅かに大きい形状となっている。下枠51と上枠55の互いに接する面にはゴムシートが貼付されている。下枠51は、前記下枠固定部43に載置されたとき、その上面がフィルム固定台33の上面と面一となるようになっている(
図1(b)参照)。上枠55の後方桟には左右に突出するように回動軸56a、56bが設けられており、上枠55の前方桟の左右端には上枠55を下枠51に固定するためのネジ穴58a、58b及びネジ59が設けられている。また、上枠55の前方桟の中央には、ハンドル60を固定するための固定穴57が設けられている。下枠51の後方桟の左右には、前記上枠55の回動軸56a、56bを嵌め込み保持するためのフック52a、52bが設けられており、また、下枠51の前方桟には、上枠55のネジ穴58a、58bに対応する箇所にネジ穴53a、53bが設けられている。
【0029】
本実施例の離型フィルムセット装置10を用いて離型フィルムFを圧縮成形装置70の下型72上にセットし、半導体基板封止樹脂の圧縮成形を行う手順を、
図5のフローチャート及び
図6を参照しながら以下に説明する。
【0030】
まず、準備工程として、離型フィルムFを離型フィルム供給部20にセットする(
図5(a))。具体的には、離型フィルムロールFRをロール保持部21に保持させる(ステップS11)。この時点では離型フィルムロールFRはフリーに回転できるようにしておく。離型フィルムロールFRから離型フィルムFを引き出し、2本の清掃ローラ26、27に掛け渡した後、スリット32から上部台30側に引き出す(ステップS12)。そして、テンションハンドル25を回転することにより押圧板24を離型フィルムロールFRの端面に軽く押し付ける。その後、スリット32から出した離型フィルムFを更に引き出しつつ、その張力が適正であるか否かを判断し、弱すぎるようであるとテンションハンドル25を更に回転することにより離型フィルムFの張力を高める。張力が強すぎるようであるとテンションハンドル25を緩める。こうして、離型フィルムFを引き出す際の離型フィルムFの張力を適正な値に調整しておく(ステップS13)。適正な張力の設定が完了したところで準備工程を終える。
【0031】
準備工程が終わったら、離型フィルムFをフィルム保持部50に保持するための工程(保持工程)に移る(
図5(b))。まず、フィルム固定部31の下枠固定部43に下枠51を、フック52a、52bが後方側にくるように収納する(ステップS21)。この時、下枠51の上面はフィルム固定台33の表面と面一となる。スリット32から出されている離型フィルムFの先端を、引き出しローラ36を介してフィルム固定台33及び前方樋38を超えるまでゆっくり引き出す(ステップS22)。この時、離型フィルムFには、テンションハンドル25によって適正な張力が付加されているため、離型フィルムFにはしわが寄ることなく、きれいな状態でフィルム固定台33を覆うことができる。こうしてフィルム固定台33の表面を離型フィルムFで覆った後、後方樋37及び前方樋38にそれぞれローラ39、40を下ろす(ステップS23)。なお、後方樋37及び前方樋38のローラ39、40は、最初から各樋37、38に下ろしておき、離型フィルムを引き出す際にはそれらの下をくぐるようにして行っても良い。これにより、フィルム固定台33の表面が離型フィルムFによって覆われた状態となる。その後、エジェクタ49をONにする(ステップS24)。これにより、フィルム固定台33表面の周縁に設けられた吸引孔34から空気が吸引され、離型フィルムFはフィルム固定台33の表面に吸着される。この時、もし離型フィルムFにしわがあれば手でしわを伸ばす。離型フィルムFをしわ無くフィルム固定台33の表面に吸着させた後、後方及び前方のカッター溝41、42において離型フィルムFをカッターで切断する(ステップS25)。
【0032】
それから、固定穴57を介して上枠55に取り付けたハンドル60により上枠55を持ち、上枠55を下枠51に対して開いた状態で、上枠55の後方桟の左右の回動軸56a、56bを下枠51の左右のフック52a、52bにそれぞれ嵌め込み(
図1(b)参照)、該回動軸56a、56bを中心に上枠55を回動して下枠51の上に重ねる。そして、手前桟においてネジ59を締めて上枠55を下枠51に固定する(ステップS26)。これにより、1枚のしわのない離型フィルムFが、上枠55と下枠51から形成される枠の間に(すなわちフィルム保持部50内に)張設され保持された状態となる。
【0033】
その後、エジェクタ49をOFFにして離型フィルムFのフィルム固定台33表面への吸着を解除し(ステップS27)、ハンドル60を持ってフィルム保持部50を圧縮成形装置70の下型72のキャビティ73の上に配置した後、ハンドル60を上枠55から取り外す(ステップS28、
図6(b))。このとき、下型72は、成形できる温度(例えば、約100℃〜約200℃)まで既に加熱されている。なお、フィルム保持部50をこのようにキャビティ73の上に配置する前に、圧縮成形装置70の上型71に、電子部品86を装着した基板87を取り付けておく(
図6(a))。この状態でキャビティ73側から吸引を行うと、離型フィルムFは、下型72の熱によって伸びながらキャビティ73内に引き込まれ、キャビティ73の形状に沿ってキャビティ73の内面を覆う(
図6(c))。その後、離型フィルムFで覆われた下型72のキャビティ73内に、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料85を均一の厚さとなるように供給し、樹脂材料85を加熱溶融する(
図6(d))。樹脂材料85が溶融した後、以下のように下型72と上型71とを型締めする。すなわち、下型72のベースプレート77を上昇させ、電子部品86を溶融した樹脂材料85に浸漬させる。下型72のキャビティ側面部材75の上面が、上型71に取り付けられた基板87に接した後も、さらにベースプレート77を上昇させ、下型72の弾性部材76を縮小させてキャビティ底面部材74を押し上げて、溶融した樹脂材料85を押圧する(
図6(e))。型締め後、所定時間が経過し、溶融した樹脂材料85が硬化した後に上型71と下型72を型開きすることにより、電子部品86の樹脂封止成形品が得られる(
図6(f))。型開きするとき、それまで行っていたキャビティ73側からの空気の吸引を止め、逆に、キャビティ73側へ空気を噴射させてもよい。これにより、硬化した樹脂材料85から離型フィルムFをより良く離型させることが可能になる。なお、樹脂材料85としては、顆粒状樹脂が扱い易く好ましいが、粉末状、ペースト状、液状、シート状(フィルム状)のものも使用可能である。
【0034】
その後、上枠55の固定穴57にハンドル60を取り付けて、ハンドル60を持ってフィルム保持部50を圧縮成形装置70から取り出し、フィルム固定部31の下枠固定部43に下枠51を載置してから、ネジ59を取り外し、ハンドル60により上枠55を下枠51上から取り除いて、使用済みの離型フィルムFを回収する。
なお、圧縮成形装置70の金型(上型71、下型72)に、ハンドル60を収容できる逃げ溝を設けて、ハンドル60を上枠55に取り付けたまま成形してもよい。
【0035】
このように、本実施例の離型フィルムセット装置10を用いると、離型フィルムFが薄く、大型であっても、離型フィルムFはフィルム保持部50によりしわの無い状態で張設され、確実に保持されるため、キャビティ73の上にしわが無く、端部の折り返しも無い状態で確実にセットすることができる。また、離型フィルムFはフィルム保持部50の上枠55と下枠51の間に確実に固定されているため、運搬及びキャビティ73上へのセットも迅速に行うことができ、作業効率が向上する。
【0036】
(第2実施例)
図7は、本発明の別の実施例に係る離型フィルムセット装置88を用いた自動保持工程の手順を簡単に示した概略工程図である。この離型フィルムセット装置88では、上記実施例の各部に加えて、フィルム固定部31にグリップ44が設けられおり、さらに、後方カッター溝41に沿って移動するカッターなどの切断具45が設けられている。また、上枠55を水平状態にしたまま下枠51の真上を昇降する上枠昇降機構(図示せず)が設けられている。後方樋37及び前方樋38への各ローラの昇降も自動となっており、上枠55と下枠51の固定は、ネジではなく、楔や、ボタンロッククランパーなどのワンタッチボルト、磁石等の着脱が容易な固定具によることが望ましい。そして、これらグリップ44や切断具45、上枠昇降機構、樋37、38へのローラ39、40の昇降及び吸引用のエジェクタ49等を制御するための制御部(図示せず)が備えられている。
【0037】
以下では、自動化された部分のみを説明し、上記実施例と同じ部分は簡潔に述べるのみとする。前記準備工程の後、作業者がフィルム固定部31の下枠固定部43に下枠51をセットする。そして起動ボタンを押すと、制御部は以下のような一連の工程を行うことにより自動的に離型フィルムFをフィルム保持部50に保持する。まず、グリップ44を駆動し、離型フィルムFの先端を把持して離型フィルムFを引き出す(
図7(a))。離型フィルムFの先端が前方樋38を超えたところでグリップ44を停止し、後方樋37及び前方樋38にそれぞれローラ39、40を下ろす。そしてエジェクタ49をONにすることにより、離型フィルムFをフィルム固定台33上に吸引・固定する。その後、フィルム固定台33と後方樋37の間に設けられたカッターで離型フィルムFを切断する(
図7(b))。その後、上枠昇降機構によって上枠55を降ろして下枠51に重ね、エジェクタ49をOFFにして離型フィルムFのフィルム固定台33への吸着を解除する。これにより、上枠55と下枠51が固定具により固定され、離型フィルムFが両枠51、55内に張設されたフィルム保持部50が完成する(
図7(c))。こうして完成したフィルム保持部50は、その後、作業者により上枠55に固定されたハンドル60、又は自動制御されたロボットアーム機構等によって、圧縮成形装置70の下型72のキャビティ73の上に配置すればよい。
なお、フィルム固定部31の下枠固定部43に下枠51をセットする工程から自動化してもよい。
【0038】
(第3実施例)
次に本発明の第3実施例として、上記のように作製されたフィルム保持部50を下型の上に自動的にセットする機構を備えた圧縮成形装置について説明する。
図8は、第1実施例又は第2実施例の離型フィルムセット装置10、88によって作製された離型フィルムFをそのような圧縮成形装置89の下型72にセットする際の操作の手順を示した概略工程図である。この圧縮成形装置89には、開いた上型71と下型72の間に、側方からローダ83が介挿される機構が設けられている。このローダ83の下方には、離型フィルムFを保持したフィルム保持部50を把持する機構が設けられ、上方には、電子部品86が装着された基板87を、その装着面を下方に向けた状態で把持する機構が設けられている。このローダ83を含め、圧縮成形装置89全体を制御する制御部は、次のような処理を行うことにより、電子部品86の樹脂封止を自動的に行う。
【0039】
まず、第1の所定位置において、電子部品86を装着した基板87を、基板搬送手段(図示せず)によって、その装着面を下方に向けた状態でローダ83に把持させた後、第2の所定位置に移動させる。そこでローダ83を降ろし、第2の所定位置の下方に置かれたフィルム保持部50をローダ83に把持させる。上方に基板87を、下方にフィルム保持部50を保持したローダ83を持ち上げ、さらに側方に移動させて下型72と上型71の間の空間に挿入する(
図8(a))。下型72の真上の位置でローダ83の側方移動を停止し、ローダ83を少し降下させて、フィルム保持部50の把持を解除する。これによりフィルム保持部50が下型72の上にセットされ、離型フィルムFが下型72のキャビティ73の上に配置される。次にその位置でローダ83を持ち上げ、上型71の下面に、電子部品86が装着された基板87をセットする。基板87の把持を解除し、ローダ83を少し降ろした後、水平方向に移動して下型72の側方に待避させる。こうして、上型71に基板87が、下型72に離型フィルムFがセットされた状態となる。
【0040】
その後、自動化された樹脂材料供給装置(顆粒状樹脂供給装置80であってもよいし(
図8(b-1))、液状樹脂供給装置(ディスペンサー)81であってもよい(
図8(b-2))によってキャビティ内に樹脂材料85を均一の厚さで供給し、樹脂材料85を加熱した後(樹脂材料85が顆粒状樹脂などの液状でない樹脂の場合は加熱溶融した後)、電子部品86を樹脂材料85内に浸漬すると共に、キャビティ底面部材74により樹脂材料85を押圧する(
図8(c))。樹脂材料85が硬化したら上型71と下型72を型開きし(
図8(d))、前記と逆の手順により、ローダ83で電子部品86の樹脂封止成形品、フィルム保持部50をそれぞれ、上型71、下型72から取り外す(
図8(e))。
【0041】
取り外されたフィルム保持部50の下枠51が、ローダ83によってフィルム固定部31の下枠固定部43に載置された後、アーム等の自動機構によって固定具が取り外され上枠55と下枠51の固定が解除され、上枠昇降機構によって上枠55が下枠51上から取り除かれた後、グリップ44によって使用済みの離型フィルムFが回収される。
【0042】
上記実施例はいずれも本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜に変形や修正、追加が許容される。例えば、キャビティの平面形状に合わせて上枠と下枠も円形であってもよい。また、上記実施例では、フィルム保持部に保持された離型フィルムをキャビティに吸着させた後、樹脂材料を供給しているが、フィルム保持部に保持された離型フィルム上にキャビティと同形のフレーム枠を置き、該フレーム枠内に樹脂材料を均一の厚さで供給した後、該フィルム保持部をキャビティ上に配置し、離型フィルムをその上の樹脂材料ごとキャビティ内に引き込んでもよい。