特許第6482306号(P6482306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482306
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】車両用扉の自動開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/611 20150101AFI20190304BHJP
   E05B 79/20 20140101ALI20190304BHJP
   E05B 81/34 20140101ALI20190304BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20190304BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   E05F15/611
   E05B79/20
   E05B81/34
   B60J5/04 C
   B60J5/00 N
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-22323(P2015-22323)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-145465(P2016-145465A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】393020122
【氏名又は名称】トーシンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073287
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 聞一
(72)【発明者】
【氏名】井上 幸司
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−101687(JP,A)
【文献】 特開2004−190413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/611
B60J 5/04
E05B 79/20
E05B 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端がセンターピラーに枢着され、車両用扉のヒンジ側端部より出没自在に設けた扉開閉用ロッドの基端をクランクに枢着し、該クランクを有する従動歯車に正逆回転自在な駆動歯車を歯車列を介して噛合して成り、該駆動歯車を軸着した駆動源は、車両用扉に既設されたドアロック装置のロック解除機構部に連繋して成るロックアウト用ワイヤの端部を連結すると共に、車両用扉のドアロック装置で施錠された閉扉状態における駆動歯車の回転抑止状態でロックアウト用ワイヤを引張していない定位置からロックアウト用ワイヤのドアロック装置を解錠する引張方向へ駆動源自体がこれの駆動軸を中心に揺動する様に設定したことを特徴とする車両用扉の自動開閉装置。
【請求項2】
車両用扉の全開状態において、ドアロック装置の解錠直後に定位置へ揺動復帰した駆動源が、ロックアウト用ワイヤのドアロック装置を解錠する引張方向へ揺動することを阻止する当止めストッパーを駆動源の軌道上に対応する従動歯車の適所に設けたことを特徴とする請求項1記載の車両用扉の自動開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用扉の自動開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動開閉装置は、特許文献1に開示される様に車両用扉に扉開閉用の駆動源として電動モータを内蔵し、この駆動源を、センターピラーに枢着すると共に、車両用扉のヒンジ側端部より出没自在に設けた扉開閉用ロッドに連繋している。
【0003】
又、自動開閉装置は、車両用扉に既設のドアロック装置に組み付けて成るドアロック解除装置にも連繋され、該ドアロック解除装置は、電動モータから成る別設のドアロック解除用の駆動源の作動により、車両用扉の開放時にドアロック装置に組み込まれたラッチによる車体側のストライカーとの係合を解除することによりドアロック装置を解錠するものである。
【0004】
そして、車両用扉の開放時には、先ずドアロック解除装置の駆動源が作動し、ドアロック装置のラッチによるストライカーとの係合を解除し、その直後に自動開閉装置の駆動源が作動し、扉開閉用ロッドがセンターピラーを押圧して車両用扉が開放される。
又、車両用扉の閉鎖は、自動開閉装置の駆動源の作動により、扉開閉用ロッドを引張して車両用扉を閉鎖方向へ回動させ、該車両用扉が閉鎖されると同時にドアロック装置のラッチがストライカーに係合し、車両用扉が施錠されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−190413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の自動開閉装置では、車両用扉を開放するために、扉開閉用とドアロック解除用の駆動源を必要としている。
したがって、上記二駆動源を車両用扉の内部に設置するスペースを必要としていること、並びに両駆動源の制御が複雑化しているといった課題を有していた。
そこで、本発明では、一駆動源にてドアロック装置の解錠と扉開閉動作を行える様にした車両用扉の自動開閉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明に係る車両用扉の自動開閉装置は、先端がセンターピラーに枢着され、車両用扉のヒンジ側端部より出没自在に設けた扉開閉用ロッドの基端をクランクに枢着し、該クランクを有する従動歯車に正逆回転自在な駆動歯車を歯車列を介して噛合して成り、該駆動歯車を軸着した駆動源は、車両用扉に既設されたドアロック装置のロック解除機構部に連繋して成るロックアウト用ワイヤの端部を連結すると共に、車両用扉のドアロック装置で施錠された閉扉状態における駆動歯車の回転抑止状態でロックアウト用ワイヤを引張していない定位置からロックアウト用ワイヤのドアロック装置を解錠する引張方向へ駆動源自体がこれの駆動軸を中心に揺動する様に設定したことを特徴とする。
又、車両用扉の全開状態において、ドアロック装置の解錠直後に定位置へ揺動復帰した駆動源が、ロックアウト用ワイヤのドアロック装置を解錠する引張方向へ揺動することを阻止する当止めストッパーを駆動源の軌道上に対応する従動歯車の適所に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
要するに本発明は、先端がセンターピラーに枢着され、車両用扉のヒンジ側端部より出没自在に設けた扉開閉用ロッドの基端を枢着したクランクを有する従動歯車に、正逆回転自在な駆動歯車を歯車列を介して噛合した車両用扉の自動開閉装置であって、駆動歯車を軸着した駆動源は、車両用扉に既設されたドアロック装置のロック解除機構部に連繋して成るロックアウト用ワイヤの端部を連結すると共に、車両用扉のドアロック装置で施錠された閉扉状態における駆動歯車の回転抑止状態でロックアウト用ワイヤを引張していない定位置からロックアウト用ワイヤのドアロック装置を解錠する引張方向へ駆動源自体がこれの駆動軸を中心に揺動する様に設定したので、車両用扉の自動開放時において上記駆動源を作動させると、車両用扉がドアロック装置によって施錠状態で駆動歯車は回転抑止状態にあるため、駆動源自体が揺動可能方向、即ちロックアウト用ワイヤのドアロック装置を解錠する引張方向へ揺動することになり、これによりロックアウト用ワイヤが引張されてドアロック装置は解錠され、車両用扉を開放可能状態と成すことができると共に、駆動歯車の回転抑止状態が解除され、駆動歯車は従動歯車を車両用扉の開放方向へ回動させられ、クランクを介して扉開閉用ロッドがセンターピラーを押圧することにより車両用扉を開放できる。
又、ドアロック装置は、その解錠直後に上記の様に回動する駆動歯車によって定位置へ揺動復帰する駆動源により、ロックアウト用ワイヤの引張状態が解除されることで、施錠可能状態に復帰しており、車両用扉の閉鎖は、駆動歯車を上記とは逆に回転させるだけで成し得る。
よって、本発明によれば、一駆動源にてドアロック装置(車両用扉)の解錠と扉開閉動作を行えるので、従来の様に車両用扉の自動開閉のために2つの駆動源を車両用扉の内部に設置する必要がなく、一駆動源のスペースだけを車両用扉内に確保すればよく、その駆動源の正逆回転だけで車両扉の自動開閉動作が可能なため、その制御も簡素化できる。
【0009】
又、車両用扉の全開状態において、ドアロック装置の解錠直後に定位置へ揺動復帰した駆動源が、ロックアウト用ワイヤのドアロック装置を解錠する引張方向へ揺動することを阻止する当止めストッパーを駆動源の軌道上に対応する従動歯車の適所に設けたので、車両用扉の全開状態では、駆動歯車の車両用扉開放方向へのそれ以上の回動は抑止されているため、誤操作で車両用扉を開放させる様に駆動源を作動させた場合には、駆動源が再度ロックアウト用ワイヤの引張方向へ駆動源自体が揺動しようとするが、この駆動源の動作が、前記当止めストッパーにより阻止されるため、ドアロック装置の施錠可能状態を保持できる等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自動開閉装置を内装した車両用扉の内部構造を示す簡略図である。
図2】自動開閉装置の分解斜視図である。
図3】車両用扉の閉扉状態における自動開閉装置の一部省略正面図である。
図4】車両用扉の解錠状態における自動開閉装置の一部省略正面図である。
図5】車両用扉の全開状態における自動開閉装置の一部省略正面図である。
図6図5の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
本発明に係る自動開閉装置1は、車両の後部扉D(以下、車両用扉Dと称する。)に内装されている。
車両用扉Dは、車体の図示しないセンターピラーにヒンジ連結されており、該センターピラーに先端が枢着され、基端が自動開閉装置1に連繋された扉開閉用ロッド2を、車両用扉Dのヒンジ側端部D1より出没自在に挿通する様に設けている。
【0012】
自動開閉装置1は、正逆回転自在な電動モータを駆動源3とし、該駆動源3は、車両用扉D内でその内外装面に表裏面を対面させると共に、一方を車両用扉Dの外装面D2に固定した前後で平行な支持板4、5間に所定間隔をもって介装した基板6の裏面に上下揺動自在に取付けている。
尚、図3〜5では、説明の便宜上、前支持板4を省略している。
【0013】
駆動源3は基板6の裏面側から表面側へ貫通突出した駆動軸3aを中心に上下に揺動する様に設定されており、基板6において駆動軸3aを中心とする適宜同心円上に貫設した複数の円弧穴7の夫々に、該円弧穴7の抜止めとしてその幅より大径な鍔8aを有するボルト8を挿通すると共に、該ボルト8を駆動源3に螺着している。
【0014】
基板6の表面側へ貫通突出した駆動源3の駆動軸3aには駆動歯車9が軸着され、該駆動歯車9は歯車列10を介して扉開閉用ロッド2の基端を枢着したクランク11を有する従動歯車12に噛合している。
【0015】
歯車列10は、前支持板4と基板6との間に軸支されると共に、駆動歯車9に直接噛合される大歯車10aと、該大歯車10aと同軸にして、駆動源3が配置された基板6と後支持板5との間に従動歯車12と共に軸支されると共に、該従動歯車12に噛合される小歯車10bとから成る。
尚、大歯車10aと小歯車10bの軸の間には、各軸を断続する様に基板6の裏面に固定されたクラッチ13が介装され、該クラッチ13は自動開閉装置1の開扉スイッチ又は閉扉スイッチがONされた時にのみ大歯車10aと小歯車10bの軸同士を連結する様に設定されている。
【0016】
従動歯車12は、扉開閉用ロッド2が車両用扉Dを開閉させるに充分なストロークを確保できる直径を有する大径な扇状歯車から成り、その一辺にクランク11を突設している。
【0017】
又、駆動源3の適所には、車両用扉Dに既設された従前のドアロック装置(図示せず)のロック解除機構部14に連繋して成るロックアウト用ワイヤ14a(以下、単にワイヤ14aと称する。)の端部を連結しており、このワイヤ14aを引張又は引張解除することにより、車両用扉Dを自動開放可能にドアロック装置が解錠されると共に、車両用扉Dの自動閉鎖時に、ドアロック装置を施錠可能状態と成している。
【0018】
そして、駆動源3は、クラッチ13で大歯車10aと小歯車10bの各軸が連結された状態であって、車両用扉Dのドアロック装置で施錠された閉扉状態における駆動歯車9の回転抑止状態でワイヤ14aを引張していない定位置X(図3又は図5に示す様に、ボルト8が円弧穴7の右回り端部7aに位置すると共に、モータヘッド3bが斜め下向きに指向した状態)からワイヤ14aのドアロック装置を解錠する引張方向Lへ駆動源3自体がそのモータヘッド3bを上方へ揺動する様に設定している。
【0019】
又、駆動原3と基板6の適所に各端部を掛止した引張コイルバネ15により、駆動源3は定位置Xを保持する様に付勢されている。
【0020】
更に、車両用扉Dの全開状態において、ドアロック装置の解錠直後に定位置Xへ揺動復帰した駆動源3が、ワイヤ14aのドアロック装置を解錠する引張方向Lへ再び揺動することを阻止する当止めストッパー16を、駆動源3の軌道上に対応する従動歯車12の支軸12aまわり近傍適所に該支軸12aと平行に突設している。
この当止めストッパー16は、所定径の円柱状の芯材に管状の緩衝ゴムを外嵌することにより構成している。
【0021】
上記の様に構成された自動開閉装置1にあっては、車両用扉Dの閉扉状態では車両用扉Dがドアロック装置で施錠、即ちドアロック装置のラッチが車体側のストライカに係合し、図3に示す様に駆動源3はモータヘッド3bが斜め下向きに指向し、駆動源3を支持するボルト8が円弧穴7の右回り端部7aに位置した定位置Xを保持し、引張コイルバネ15は収縮して駆動源3の定位置Xでの状態を助勢している。
【0022】
そして、車両用扉Dの自動開放時には、自動開閉装置1の開扉スイッチをONして駆動源3を作動させる。
すると、車両用扉Dがドアロック装置によって施錠状態で駆動歯車10は回転抑止状態にあるため、駆動源3自体が揺動可能方向、即ちワイヤ14aのドアロック装置を解錠する引張方向Lへ引張コイルバネ15の付勢力に抗してモータヘッド3bを上方へ揺動することとなる。
【0023】
かかる駆動源3の上方揺動によってボルト8は円弧穴7の左回り端部7bに位置し、モータヘッド3bは略水平となって制止状態の従動歯車12に設けた当止めストッパー16に近接し、ワイヤ14aを上記引張方向Lへ引張する(図4参照)。
このワイヤ14aの引張により、ドアロック装置が解錠、即ちドアロック装置のラッチによるストライカとの係合が解除され、車両用扉Dを開放可能状態と成すと共に、駆動歯車9の回転抑止状態が解除され、駆動歯車9は従動歯車12を車両用扉Dの開放方向へ回動させられ、クランク11を介して扉開閉用ロッド2がセンターピラーを押圧することにより車両用扉Dを開放する。
【0024】
又、ドアロック装置の解錠直後に上記の様に回動する駆動歯車9によって駆動源3は当止めストッパー16より離間する様にして定位置Xへ揺動復帰し、この時に引張コイルバネ15によって駆動源3の揺動復帰が助勢される。
そして、駆動源3が定位置Xへ揺動復帰すると、ワイヤ14aの引張状態が解除されるため、ドアロック装置は施錠可能状態に復帰する。
【0025】
従動歯車12が車両用扉Dの開放方向への回動を完了した車両用扉Dの全開状態では、ドアロック装置の解錠直後に定位置Xへ揺動復帰した駆動源3のモータヘッド3bに当止めストッパー16が近接し、該当止めストッパー16は駆動源3(モータヘッド3b)が揺動する軌道上に位置対応しているので、ワイヤ14aのドアロック装置を解錠する引張方向Lへ再び揺動することを阻止している。
【0026】
即ち、車両用扉Dの全開状態において、駆動歯車9の車両用扉開放方向へのそれ以上の回動は、上記の通り従動歯車12が車両用扉Dの開放方向への回動を完了することで抑止されているため、この時に誤って開扉スイッチをONして駆動源3を作動させた場合、駆動源3が再度ワイヤ14aの引張方向Lへ揺動しようとするが、この駆動源3の動作は当止めストッパー16により阻止され、ドアロック装置の施錠可能状態は保持されることとなる。
【0027】
車両用扉Dの自動閉鎖にあっては、閉扉スイッチをONすることにより、駆動歯車9を上記とは逆に回転させる様に駆動源3を作動させ、歯車列10、従動歯車12(クランク11)を介して扉開閉用ロッド2を引張し、該扉開閉用ロッド2を車両用扉D内に没入させることで、車両用扉Dを閉鎖方向へ回動させ、ドアロック装置のラッチを車体側のストライカに係合させて施錠することで成し得る。
【符号の説明】
【0028】
2 扉開閉用ロッド
3 駆動源
3a 駆動軸
9 駆動歯車
11 クランク
12 従動歯車
14 ロック解除機構部
14aロックアウト用ワイヤ
16 当止めストッパー
D 車両用扉
D1 ヒンジ側端部
L 引張方向
X 定位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6