(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(医療機器がシースイントロデューサである場合の例)
2.変形例
変形例1(マーカーが、ハンドル本体の回転操作部寄りに配置されている例)
変形例2(マーカーを露出させる開口が、撓み方向・撓み量を示す形状である例)
変形例3(医療機器が電極カテーテルである場合の例1:撓ませる例)
変形例4(医療機器が電極カテーテルである場合の例2:ループ径が変化する例)
3.その他の変形例
【0019】
<実施の形態>
[構成]
図1(A)および
図1(B)はそれぞれ、本発明の一実施の形態に係る医療機器としてのシースイントロデューサ1の概略構成例を、模式的に表したものである。具体的には、
図1(A)は、このシースイントロデューサ1の上面構成例(Z−X上面構成例)を模式的に表しており、
図1(B)は、このシースイントロデューサ1の断面構成例(Y−Z断面構成例)を模式的に表している。なお、
図1(A)では、符号P1で示した部分(円状の破線で囲った部分)の拡大図も併せて図示されている。
【0020】
シースイントロデューサ1は、電極カテーテル等におけるカテーテルチューブ6を患者の体内に挿入する際に、これに先行してシースチューブ2が体内に導入されることで、血管内にカテーテルチューブ6が挿通される通路を確保するための装置である。このシースイントロデューサ1は、シース本体(長尺部分)としてのシースチューブ2(シースシャフト)と、このシースチューブ2の基端側に装着されたハンドル3とを備えている。
【0021】
(A.シースチューブ2)
シースチューブ2は、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている。具体的には、シースチューブ2の軸方向の長さは、ハンドル3の軸方向(Z軸方向)の長さと比べて数倍〜数十倍程度に長くなっている。なお、このシースチューブ2は、その軸方向に向かって同じ特性のチューブで構成されていてもよいが、比較的可撓性に優れた先端部分と、この先端部分に対して軸方向に一体に形成されると共に先端部分よりも比較的に剛性のある基端部分とを有するようにするのが好ましい。
【0022】
シースチューブ2内には、例えば
図1(A)に示したように、カテーテルチューブ6を挿通することができるようになっている。また、シースチューブ2の先端側には、後述する一対の操作用ワイヤ(操作用ワイヤ41a,41b)における各先端が固定されている。そして、これら操作用ワイヤ41a,41bの各基端側は、シースチューブ2内からハンドル3内(後述するスライド機構314上)へ延伸されるようになっている。
【0023】
シースチューブ2は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン等の合成樹脂により構成されている。シースチューブ2の軸方向の長さは、約300〜900mm程度であり、そのうちの先端付近の可撓性部分の長さは、約20〜150mm程度である。また、シースチューブ2の外径(X−Y断面の外径)は、約2.0〜5.0mm程度(好ましくは、約2.6〜4.3mm程度)であり、シースチューブ2の内径(X−Y断面の内径)は、約1.6〜4.3mm程度(好ましくは、約2.0〜2.8mm程度)である。
【0024】
なお、カテーテルチューブ6の先端付近には、例えば
図1(A)に示したように、複数の電極(ここでは、3つのリング状電極61および1つの先端電極62)が所定の間隔をおいて配置されている。具体的には、リング状電極61は、カテーテルチューブ6の外周面上に固定配置される一方、先端電極62は、カテーテルチューブ6の最先端に固定配置されている。
【0025】
(B.ハンドル3)
ハンドル3は、シースイントロデューサ1の使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。このハンドル3は、
図1(A)および
図1(B)に示したように、シースチューブ2の基端側に装着されたハンドル本体31と、回転操作部(摘み,ダイヤル)32とを有している。回転操作部32は、後述するように、シースチューブ2の先端付近を変形させる(この例では、撓ませる,偏向させる)操作である回転操作の際に用いられる部分である。
【0026】
ここで、
図1に加えて
図2および
図3を参照して、このようなハンドル3の詳細構成例について説明する。
図2は、ハンドル3の詳細構成例を、模式的に分解斜視図で表したものである。
図3は、この
図2に示したハンドル3内における操作用ワイヤ41a,41b等の配置例を、模式的に斜視図で表したものである。なお、
図2では、符号P2で示した部分(円状の破線で囲った部分)の拡大図も併せて図示されている。
【0027】
(B−1.回転操作部32)
回転操作部32は、
図1(A),
図1(B)、
図2および
図3に示したように、ハンドル本体31の延在方向(長手方向;Z軸方向)を回転軸として回転自在となるように構成されており、このハンドル本体31の先端側に装着されている。具体的には、
図1(A),
図2中の矢印d1および
図3中の矢印d1a,d1bで示したように、回転操作部32は、この回転軸の周りをX−Y平面内で回転自在となっている。また、この例では回転操作部32は、X−Y平面を双方向に回転(右回転および左回転)できるように構成されている。詳細は後述するが、回転操作部32に対するこのような回転操作が操作者によってなされることで、シースチューブ2の先端付近を(双方向に)撓ませることが可能となっている。
【0028】
なお、このような回転操作部32は、Z軸方向に延伸するリング状の形状を有している。また、回転操作部32は、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリル、ポリオレフィン、ポリオキシメチレン等の合成樹脂により構成されている。
【0029】
(B−2.ハンドル本体31)
ハンドル本体31は、
図1(A),
図1(B)に示したように、操作者が実際に握る部分(把持部)に相当し、この例ではZ軸方向に沿って延在する円筒状となっている。なお、このハンドル本体31の延在方向の長さは、例えば、約100〜200mm程度(好ましくは、約150mm程度)である。
【0030】
このハンドル本体31は、
図1(A),
図1(B)、
図2および
図3に示したように、一対のハンドル部材310a,310bと、1つの開口311と、複数(この例では7個)の目盛312と、マーカー(指標部)313と、スライド機構314と、固定部材315とを有している。なお、このようなハンドル本体31における各部材(ハンドル部材310a,310b、スライド機構314および固定部材315等)は、例えば、前述した回転操作部32と同様の材料(合成樹脂等)により構成されている。
【0031】
ハンドル部材310a,310bはそれぞれ、ハンドル本体31の外装部材として機能するものである。具体的には、
図1(B)、
図2および
図3に示したように、ハンドル部材310a,310bの内部に、マーカー313、スライド機構314および固定部材315等が収容されるようになっている。これらのハンドル部材310a,310bはそれぞれ、互いに嵌合する略樋状のものであり、この例ではZ軸の正方向にハンドル部材310aが配置され、Z軸の負方向にハンドル部材310bが配置されている。
【0032】
固定部材315は、例えば
図1(B)に示したように、シースチューブ2の基端をハンドル本体31に固定しておくための部材である。この例では、固定部材315は、ハンドル部材310bにおける基端付近の領域に設けられている。
【0033】
スライド機構314は、
図1(B)、
図2および
図3に示したように、前述した回転操作部32への回転操作(X−Y平面内での回転操作)に連動して、ハンドル本体31内をその延在方向(Z軸方向)に沿ってスライド(移動)するように構成されている。具体的には、
図2および
図3中の矢印d3で示したように、回転操作部32に対する双方向の回転操作(矢印d1参照)に連動して、このスライド機構314もまた、ハンドル本体31の延在方向に沿って双方向にスライド可能となるように構成されている。より具体的には、この例では
図3に示したように、Z軸の正方向に沿って見た状態で、回転操作部32が右回り(時計回り)に回転操作されたときには(矢印d1a参照)、スライド機構314がハンドル本体31内をその先端側にスライドするようになっている(矢印d3a参照)。また、逆に、Z軸の正方向に沿って見た状態で、回転操作部32が左回り(反時計回り)に回転操作されたときには(矢印d1b参照)、スライド機構314がハンドル本体31内をその基端側にスライドするようになっている(矢印d3b参照)。
【0034】
このようなスライド機構314は、この例では
図2に示したように、Z軸方向に沿って延在する螺旋状構造を有している。そして、このスライド機構314における螺旋状構造での溝部(凹部)と、回転操作部32においてその内周部分からハンドル本体31内へ向けて延伸する部分での突状部(凸部)とが、互いに係合(嵌合)するようになっている(
図1(B)参照)。なお、
図1(B)に示したように、スライド機構314の先端と回転操作部32の内部との間には、所定の空間(空きスペース)が確保されている。このようにしてスライド機構314と回転操作部32とがハンドル本体31の内部で係合していることで、上記したように回転操作部32への回転操作に連動したスライド機構314の双方向へのスライド動作が実現されるようになっている。なお、このスライド機構314の延在方向の長さは、例えば、約30〜100mm程度(好ましくは、約50mm程度)である。また、スライド機構314の外径は、例えば、約5〜20mm程度(好ましくは、約10mm程度)である。
【0035】
マーカー313は、
図1(A)および
図2に示したように、スライド機構314の表面(ハンドル部材310a側の表面)に設けられている。具体的には、この例では、スライド機構314の基端側に設けられたハンドル部材310a側への突出部分(マーカー保持部314a)の表面に、マーカー313が保持されるようになっている。マーカー313は、この例では、三角形状の図形を用いて構成されている。ただし、マーカー313の構成(形状等)については、
図1(A)および
図2等に示したものには限られず、他の構成としてもよい。なお、このようなマーカー313の大きさ(一辺の長さ)は、例えば、約3〜10mm程度(好ましくは、約5mm程度)である。
【0036】
ここで、上記したように、スライド機構314が回転操作部32への回転操作に連動するように構成されていることで、このスライド機構314の表面に保持されたマーカー313もまた、そのような回転操作に連動するようになっている。具体的には、
図1(A)および
図2中の矢印P3で示したように、マーカー313は、そのような回転操作に連動して、ハンドル本体31内をその延在方向に沿って双方向にスライド(移動)するようになっている。より具体的には、上記したスライド機構314の場合と同様に、この例では
図3に示したように、Z軸の正方向に沿って見た状態で、回転操作部32が右回りに回転操作されたときには(矢印d1a参照)、マーカー313もハンドル本体31内をその先端側にスライドするようになっている(矢印d3a参照)。また、逆に、Z軸の正方向に沿って見た状態で、回転操作部32が左回りに回転操作されたときには(矢印d1b参照)、マーカー313もハンドル本体31内をその基端側にスライドするようになっている(矢印d3b参照)。
【0037】
また、このようなスライド機構314上には、この例では
図3中に模式的に示したように、一対の留め具42a,42bが設けられている。これらの留め具42a,42bは、前述した一対の操作用ワイヤ41a,41bの各基端を、ねじ止め等により個別に固定するための部材(ワイヤ留め具)である。なお、これらの留め具42a,42bではそれぞれ、操作用ワイヤ41a,41bの各基端を固定する際のその基端付近の引き込み長を、任意に調整することが可能となっている。
【0038】
ここで、具体的には
図3に模式的に示したように、留め具42aは、シースチューブ2内からハンドル本体31内へ延伸された操作用ワイヤ41aの基端を固定している。詳細には、この例では、操作用ワイヤ41aの基端は、シースチューブ2内からハンドル本体31内の基端側(この例では固定部材315の基端側)を通る迂回路Laを経由して、留め具42aに固定されている。一方、留め具42bは、
図3に模式的に示したように、シースチューブ2内からハンドル本体31内へ延伸された操作用ワイヤ41bの基端を固定している。詳細には、この例では、操作用ワイヤ41bの基端は、シースチューブ2内からハンドル本体31内のスライド機構314へ直行する経路(直行経路Lb)によって、留め具42bに固定されている。
【0039】
なお、このような操作用ワイヤ41a,41bはそれぞれ、例えばステンレス鋼(SUS)、ニッケルチタン(NiTi)等の超弾性金属材料により構成されており、それらの径は約100〜500μm程度(例えば200μm)である。ただし、必ずしも金属材料で構成されていなくともよく、例えば高強度の非導電性ワイヤ等で構成されていてもよい。
【0040】
開口311は、
図1(A)に示したように、ハンドル部材310aに形成されており、スライド機構314上のマーカー313を外部に露出させるための貫通孔として機能するものである。この開口311は、この例では、ハンドル本体31の延在方向(Z軸方向)に沿って延在するスリット状に形成されている。なお、このような開口311の延在方向の長さは、例えば、約15〜50mm程度(好ましくは、約20mm程度)であり、開口311の幅(X軸方向の長さ)は、例えば、約3〜10mm程度(好ましくは、約5mm程度)である。
【0041】
目盛312は、
図1(A)に示したように、ハンドル部材310aの表面(開口311の周辺領域)において、開口311の延在方向に沿って複数(この例では7個)設けられている。具体的には、これら複数の目盛312は、開口311の延在方向に沿って、所定の間隔(例えば、約2〜10mm程度)をおいて並んで配置されている。このような複数の目盛312が並んで配置されていることで、詳細は後述するが、マーカー313と目盛312との相対的な位置関係によって、シースチューブ2の先端付近での撓み状態(撓み方向および撓み量)が規定されるようになっている。なお、本明細書における「撓み状態」、「撓み方向」および「撓み量」はそれぞれ、本発明における「変形状態」、「変形方向」および「変形量」の一具体例に対応し、以下同様である。
【0042】
[作用・効果]
(A.基本動作)
このシースイントロデューサ1では、不整脈等の検査や治療の際に、電極カテーテル等におけるカテーテルチューブ6に先行して、シースチューブ2が血管を通して患者の体内に挿入される。これにより挿入先の血管内に挿通路が確保され、カテーテルチューブ6の挿入が補助される。
【0043】
ここで、シースチューブ2の体内への導入方法(操作者による操作方法)としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0044】
すなわち、まず、シースチューブ2の内孔にダイレータ(図示せず)が挿入され、このダイレータと一体化されたシースチューブ2が患者の血管内に挿入される。そして、操作者による回転操作部32に対する回転操作が行われつつ、予め挿入されているガイドワイヤ(図示せず)に沿って、シースチューブ2が目的部位(患部)に向けて移動される。このとき、回転操作部32への回転操作に応じて、体内に挿入されたシースチューブ2の先端付近の形状が、両方向に変化する。
【0045】
具体的には、操作者がハンドル本体31を掴み、指で回転操作部32を回転操作することにより、例えば、この回転操作部32を
図3中の矢印d1aの方向(Z軸の正方向に沿って見た状態での右回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、
図3に示したように、スライド機構314がハンドル本体31内でその先端側にスライドすることで(矢印d3a参照)、シースチューブ2およびハンドル本体31の内部で、操作用ワイヤ41aがその基端側(留め具42a側)へ引っ張られる(矢印d4a参照)。すると、このシースチューブ2の先端付近が、
図1(A)中の矢印d2aで示した方向に沿って湾曲する(撓む)。
【0046】
また、操作者が回転操作部32を回転操作することにより、例えば、この回転操作部32を
図3中の矢印d1bの方向(Z軸の正方向に沿って見た状態での左回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、
図3に示したように、スライド機構314がハンドル本体31内でその基端側にスライドすることで(矢印d3b参照)、シースチューブ2およびハンドル本体31の内部で、操作用ワイヤ41bがその基端側(留め具42b側)へ引っ張られる(矢印d4b参照)。すると、このシースチューブ2の先端付近が、
図1(A)中の矢印d2bで示した方向に沿って湾曲する。
【0047】
このように、操作者が回転操作部32を回転操作することにより、シースチューブ2の首振り偏向動作を行うことができる。なお、ハンドル本体31を軸回りに(XY平面内で)回転させることで、シースチューブ2が患者の体内に挿入された状態のまま、シースチューブ2の先端付近の湾曲方向の向きを自由に設定することができる。
【0048】
続いて、シースチューブ2の先端開口が目的部位(患部)の近傍に到達した時点で、上記したダイレータおよびガイドワイヤが抜去される。これによりシースチューブ2の先端部分が、患者の体内に留置される。そして、このようにして体内に導入されたシースチューブ2を利用して、カテーテルチューブ6を体内に挿入することができる。
【0049】
なお、カテーテルチューブ6の体内への挿入方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0050】
すなわち、まず、カテーテルチューブ6の先端が、ハンドル3の基端からシースチューブ2の内孔へ挿入される。そして、操作者によるカテーテルの回転操作部(カテーテルチューブ6の基端側に設けられたハンドル内に配置:
図1(A)中に図示せず)に対する回転操作が行われつつ、シースチューブ2の内孔に沿ってカテーテルチューブ6が移動される。これにより例えば
図1(A)に示したように、シースチューブ2の先端開口から、カテーテルチューブ6の先端付近が延び出される。
【0051】
続いて、操作者が上述したカテーテルの回転操作部を回転操作することにより、カテーテルチューブ6の首振り偏向動作を行う。また、必要に応じて、シースイントロデューサ1における回転操作部32を回転操作することにより、シースチューブ2の首振り偏向動作を行う。これにより、カテーテルチューブ6の先端部(例えば、電極カテーテルにおけるリング状電極61および1つの先端電極62等)の位置が調整され、目的部位(患部)に到達することができる。
【0052】
このようにしてカテーテルチューブ6の先端部が位置決めされた後、カテーテルによる手技(検査や治療等)が行われる。そして、カテーテルによる手技の終了後、カテーテルチューブ6が体内から抜去され、次いで、シースチューブ2が体内から抜去される。以上のようにして、シースイントロデューサ1および電極カテーテル等のカテーテルを用いた、不整脈等の検査や治療が行われる。
【0053】
(B.ハンドル3における作用)
続いて、このようなシースイントロデューサ1のハンドル3における作用について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0054】
(B−1.比較例)
図4は、比較例に係るシースイントロデューサ101の構成を、模式的に側面図(Z−X側面図)で表したものである。
【0055】
この比較例のシースイントロデューサ101は、シースイントロデューサ1と同様に、カテーテルチューブ6に先行してシースチューブ2を体内に導入することで、カテーテルチューブ6の挿入を補助する装置である。このシースイントロデューサ101は、
図4に示したように、シースチューブ2と、このシースチューブ2の基端側に装着されたハンドル103とを備えている。すなわち、シースイントロデューサ101は、シースイントロデューサ1において、ハンドル3の代わりにハンドル103を設けたものに対応している。
【0056】
このハンドル103は、
図4に示したように、ハンドル本体102および回転操作部32を有している。すなわち、このハンドル103は、ハンドル3においてハンドル本体31の代わりにハンドル本体102を設けたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0057】
このハンドル本体102は、ハンドル本体31において、開口311、目盛312およびマーカー313をそれぞれ設けないようにした(省いた)ものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0058】
ところで、シースイントロデューサでは一般に、例えば、シースチューブの先端側を患者の体内に挿入している状態で、そのシースチューブの先端付近の撓み状態(湾曲状態)を確認したいケースが生じ得る。
【0059】
ところが、この比較例に係るハンドル103では、そのようなケースにおいて、シースチューブ2の先端付近の撓み状態を、操作者の手元側にて確認(把握)できず、その結果、シースイントロデューサ101を使用する際の利便性が損なわれるおそれがある。
【0060】
(B−2.本実施の形態)
これに対して、本実施の形態のシースイントロデューサ1におけるハンドル3は、
図1(A),
図1(B)、
図2および
図3に示したように、以下の構成となっている。すなわち、このハンドル3では、回転操作部32に対する回転操作(シースチューブ2の先端付近を撓ませるための操作)に連動するマーカー313が、ハンドル本体31に設けられている。
【0061】
これによりハンドル3では、上記比較例のハンドル103とは異なり、例えば、シースチューブ2の先端側が患者の体内に挿入されている状態であっても、このシースチューブ2の先端付近の撓み状態が、操作者の手元側(ハンドル本体31)にて確認(把握)できるようになる。その結果、シースイントロデューサ1を使用する際の利便性が向上することになる。
【0062】
具体的には、まず、例えば
図5(A)に示したように、操作者によって回転操作部32が矢印d1aの方向(Z軸の正方向に沿って見た状態での右回り)に回転操作された場合、以下のようになる。すなわち、この場合、前述した
図3に示したように、スライド機構314が、ハンドル本体31内でその先端側にスライドする(
図3中の矢印d3a参照)。そして、これに伴い、このスライド機構314上に保持されたマーカー313もまた、ハンドル本体31の先端側に移動することになる(
図5(A)中の矢印P3a参照)。このような回転操作に連動したマーカー313の動作(スライド動作)は、開口311を介して操作者によって視認できることから、シースチューブ2の先端付近の撓み状態(
図5(A)中の矢印d2a参照)が、ハンドル本体31にて確認できることになる。
【0063】
一方、例えば
図5(B)に示したように、操作者によって回転操作部32が矢印d1bの方向(Z軸の正方向に沿って見た状態での左回り)に回転操作された場合、以下のようになる。すなわち、この場合、前述した
図3に示したように、スライド機構314が、ハンドル本体31内でその基端側にスライドする(
図3中の矢印d3b参照)。そして、これに伴い、このスライド機構314上に保持されたマーカー313もまた、ハンドル本体31の基端側に移動することになる(
図5(A)中の矢印P3b参照)。したがって、この場合も上記した
図5(A)の場合と同様に、シースチューブ2の先端付近の撓み状態(
図5(B)中の矢印d2b参照)が、ハンドル本体31にて確認できることになる。
【0064】
このようにして、回転操作部32への回転操作に連動してマーカー313がハンドル本体31の延在方向に沿って移動するため、シースチューブ2の先端付近の撓み状態が直感的に把握し易くなり、利便性の更なる向上が図られる。
【0065】
また、このハンドル3では、前述した構成のスライド機構314および開口311が、ハンドル本体31に設けられていることにより、シースチューブ2の先端付近の撓み状態が、簡易な構造にて確認できるようになる(撓み状態の確認機能が簡易に実現可能となる)。したがって、ハンドル3(シースイントロデューサ1)における製造コストの低減や、信頼性の向上が可能となる。
【0066】
更に、シースチューブ2の先端付近での撓み状態(撓み方向および撓み量)を規定する目盛312が開口311の周辺に設けられていることにより、この目盛312を利用して、このような撓み方向や撓み量が容易に確認できるようになる。したがって、利便性の更なる向上が図られる。
【0067】
加えて、一対の操作用ワイヤ41a,41bのうち、操作用ワイヤ41bの基端は、シースチューブ2内からスライド機構314へ直行する経路(直行経路Lb)によって、このスライド機構314(留め具42b)に固定されている。そして、操作用ワイヤ41aの基端は、シースチューブ2内からハンドル本体31内の基端側を通る迂回路Laを経由して、スライド機構314(留め具42a)に固定されている。一対の操作用ワイヤ41a,41bの各基端がこのような各経路によってスライド機構314に固定されていることにより、シースチューブ2の先端付近を双方向に撓ませる機構が簡易な構造で実現でき、ハンドル3(シースイントロデューサ1)における製造コストの低減や、信頼性の向上が可能となる。
【0068】
以上のように本実施の形態では、回転操作部32に対する回転操作に連動するマーカー313をハンドル本体31に設けるようにしたので、シースチューブ2の先端付近の撓み状態を、操作者の手元側(ハンドル本体31)にて確認することができる。よって、シースイントロデューサ1を使用する際の利便性を向上させることが可能となる。
【0069】
なお、本実施の形態では、目盛312によって、シースチューブ2の先端付近の撓み方向および撓み量の双方が規定される場合を例に挙げて説明したが、これには限られず、例えば、撓み方向および撓み量のうちの一方のみが目盛312によって規定されるようにしてもよい。
【0070】
<変形例>
続いて、本発明の変形例(変形例1〜3)について説明する。なお、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0071】
[変形例1]
図6は、変形例1に係る医療機器としてのシースイントロデューサ1Aの概略構成例を模式的に表したものである。具体的には、この
図6は、シースイントロデューサ1Aの上面構成例(Z−X上面構成例)を模式的に表している。
【0072】
この変形例1のシースイントロデューサ1Aは、実施の形態のシースイントロデューサ1と同様に、カテーテルチューブ6に先行してシースチューブ2を体内に導入することで、カテーテルチューブ6の挿入を補助する装置である。このシースイントロデューサ1Aは、
図6に示したように、シースチューブ2と、このシースチューブ2の基端側に装着されたハンドル3Aとを備えている。すなわち、シースイントロデューサ1Aは、シースイントロデューサ1において、ハンドル3の代わりにハンドル3Aを設けたものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0073】
ハンドル3Aは、
図6に示したように、ハンドル本体31Aおよび回転操作部32を有している。すなわち、このハンドル3Aは、ハンドル3においてハンドル本体31の代わりにハンドル本体31Aを設けたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0074】
このハンドル本体31Aでは、
図6に示したように、マーカー313、開口311および複数の目盛312がいずれも、ハンドル本体31Aにおける回転操作部32寄りの領域(近傍領域)に配置されている。換言すると、マーカー313、開口311および複数の目盛312がいずれも、ハンドル本体31Aにおいて、操作者の把持領域を避けて(把持領域よりも先端側に)配置されるようになっている。
【0075】
また、
図6中には図示されていないが、このようなマーカー313等の配置変更に伴い、このマーカー313を保持するスライド機構314の配置(形状)もまた、上記実施の形態から変更されている。具体的には、例えば、スライド機構314の延在長(Z軸方向に沿った長さ)が、実施の形態での延在長よりも短くなるように変更されている。
【0076】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0077】
また、特に本変形例では、上記したように、マーカー313をハンドル本体31Aにおける回転操作部32寄りの領域に配置するようにしたので、ハンドル本体31Aにおいて、操作者が握る部分(把持部)を避けてマーカー313が配置されることになる。これにより、操作者がハンドル本体31Aを握っているときに、手によってマーカー313が隠れてしまうおそれが回避される(把持部のための余裕領域が確保されるようになる)。よって、この把持部を握りながらシースチューブ2の撓み状態を確認できるようになり、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0078】
なお、このようなマーカー313、開口311および複数の目盛312等の配置領域については、実施の形態および本変形例で説明したものには限られず、他の配置領域となるように設定してもよい。
【0079】
[変形例2]
図7は、変形例2に係る医療機器としてのシースイントロデューサ1Bの概略構成例を模式的に表したものである。具体的には、この
図7は、シースイントロデューサ1Bの上面構成例(Z−X上面構成例)を模式的に表している。
【0080】
この変形例2のシースイントロデューサ1Bは、実施の形態のシースイントロデューサ1と同様に、カテーテルチューブ6に先行してシースチューブ2を体内に導入することで、カテーテルチューブ6の挿入を補助する装置である。このシースイントロデューサ1Bは、
図7に示したように、シースチューブ2と、このシースチューブ2の基端側に装着されたハンドル3Bとを備えている。すなわち、シースイントロデューサ1Bは、シースイントロデューサ1において、ハンドル3の代わりにハンドル3Bを設けたものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0081】
ハンドル3Bは、
図7に示したように、ハンドル本体31Bおよび回転操作部32を有している。すなわち、このハンドル3Bは、ハンドル3においてハンドル本体31の代わりにハンドル本体31Bを設けたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0082】
このハンドル本体31Bでは、ハンドル部材310aの表面に、実施の形態で説明した開口311および複数の目盛312の代わりに、以下説明する開口311Bが設けられている。この開口311Bは、ハンドル本体31Bの延在方向(Z軸方向)に沿って所定の間隔をおいて並んで配置された、複数(この例では5個)の開口311s,311a1,311a2,311b1,311b2からなる。具体的には、ハンドル本体31Bの先端側から基端側に向けて、開口311a2,311a1,311s,311b1,311b2の順序で配置されている。
【0083】
ここで、これらの開口311s,311a1,311a2,311b1,311b2はそれぞれ、シースチューブ2の先端付近での撓み状態(撓み方向および撓み量)を示す形状となっている。具体的には、開口311sは、(撓み量=0,撓み方向:無し)を示す形状(直線状)となっている。また、開口311a1は、(撓み量:小,撓み方向:右方向(矢印d2aの方向))を示す形状となっており、開口311a2は、(撓み量:大,撓み方向:右方向)を示す形状となっている。同様に、開口311b1は、(撓み量:小,撓み方向:左方向(矢印d2bの方向))を示す形状となっており、開口311b2は、(撓み量:大,撓み方向:左方向)を示す形状となっている。
【0084】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることが可能である。
【0085】
また、特に本変形例では、開口部311B(開口311s,311a1,311a2,311b1,311b2)が、シースチューブ2の先端付近での撓み状態(撓み方向および撓み量)を示す形状となっているようにしたので、以下の効果も得られる。すなわち、各開口311s,311a1,311a2,311b1,311b2の形状を利用して(マーカー313との相対的な位置関係によって)、シースチューブ2の先端付近での撓み状態(撓み方向や撓み量)が、直感的に把握できるようになる。よって本変形例では、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0086】
なお、本変形例では、開口311Bが、シースチューブ2の先端付近の撓み方向および撓み量の双方を示す形状となっている場合を例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、例えば、開口311Bが、撓み方向および撓み量のうちの一方のみを示す形状となっているようにしてもよい。また、各開口311s,311a1,311a2,311b1,311b2等の形状や個数についても、本変形例で挙げた例には限られず、他の形状や個数としてもよい。
【0087】
更に、本変形例においても変形例1と同様に、マーカー313、開口311Bおよびスライド機構314等を、ハンドル本体31Bにおける回転操作部32寄りの領域に配置するようにしてもよい。
【0088】
[変形例3]
(構成)
図8は、変形例3に係る医療機器としての電極カテーテル5の概略構成例を模式的に表したものである。具体的には、この
図8は、電極カテーテル5の上面構成例(Z−X上面構成例)を模式的に表している。
【0089】
電極カテーテル5は、血管を通して体内(例えば心臓の内部)に挿入され、不整脈の検査や治療等に用いられるものである。この電極カテーテル5は、カテーテル本体(長尺部分)としてのカテーテルチューブ6(カテーテルシャフト)と、このカテーテルチューブ6の基端側に装着されたハンドル3とを備えている。なお、ハンドル3の構成は、基本的は実施の形態で説明したハンドル3と同様のものとなっている。
【0090】
カテーテルチューブ6は、シースチューブ2と同様に、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている。また、カテーテルチューブ6の先端側には、シースチューブ2の場合と同様に、前述した一対の操作用ワイヤ41a,41bにおける各先端が固定されている。そして、これら操作用ワイヤ41a,41bの各基端側も、シースチューブ2の場合と同様に、カテーテルチューブ6内からハンドル3内(スライド機構314における留め具42a,42b)へ延伸されるようになっている。なお、このようなカテーテルチューブ6は、例えばシースチューブ2と同様の材料(合成樹脂等)により構成されている。
【0091】
カテーテルチューブ6はまた、自身の軸方向に沿って延在するように内部に1つのルーメン(細孔,貫通孔)が形成されたいわゆるシングルルーメン構造、あるいは複数(例えば4つ)のルーメンが形成されたいわゆるマルチルーメン構造を有している。なお、カテーテルチューブ6の内部において、シングルルーメン構造からなる領域とマルチルーメン構造からなる領域との双方が設けられていてもよい。このようなカテーテルチューブ6におけるルーメンには、各種の細線(上記した一対の操作用ワイヤ41a,41bや、図示しない導線等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されている。
【0092】
また、カテーテルチューブ6の先端付近には、複数の電極(ここでは、3つのリング状電極61および1つの先端電極62)が所定の間隔をおいて配置されている。具体的には、リング状電極61は、カテーテルチューブ6の外周面上に固定配置される一方、先端電極62は、カテーテルチューブ6の最先端に固定配置されている。これらの電極は、前述したカテーテルチューブ6のルーメン内に挿通された複数の導線(図示せず)を介して、ハンドル3の内部と電気的に接続されるようになっている。なお、このような導線は、例えば銅等の金属材料により構成されていると共に絶縁性の樹脂で被覆されており、その径は約50〜200μm程度(例えば100μm)である。
【0093】
これらのリング状電極61および先端電極62はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、SUS、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料により構成されている。なお、電極カテーテル5の使用時におけるX線に対する造影性を良好にするためには、白金またはその合金により構成されていることが好ましい。また、これらのリング状電極61および先端電極62の外径は、特には限定されないが、上記したカテーテルチューブ6の外径と同程度であることが望ましい。
【0094】
(作用・効果)
この電極カテーテル5では、不整脈等の検査や治療の際に、カテーテルチューブ6が血管を通して患者の体内に挿入される。このとき、操作者による回転操作部32に対する回転操作に応じて、体内に挿入されたカテーテルチューブ6の先端付近の形状が、両方向に変化する。
【0095】
具体的には、操作者がハンドル本体31を掴み、指で回転操作部32を回転操作することにより、例えば、この回転操作部32を
図3中の矢印d1aの方向(Z軸の正方向に沿って見た状態での右回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、
図3に示したように、スライド機構314がハンドル本体31内でその先端側にスライドすることで(矢印d3a参照)、カテーテルチューブ6およびハンドル本体31の内部で、操作用ワイヤ41aがその基端側(留め具42a側)へ引っ張られる(矢印d4a参照)。すると、このカテーテルチューブ6の先端付近が、
図8中の矢印d2aで示した方向に沿って湾曲する(撓む)。
【0096】
また、操作者が回転操作部32を回転操作することにより、例えば、この回転操作部32を
図3中の矢印d1bの方向(Z軸の正方向に沿って見た状態での左回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、
図3に示したように、スライド機構314がハンドル本体31内でその基端側にスライドすることで(矢印d3b参照)、カテーテルチューブ6およびハンドル本体31の内部で、操作用ワイヤ41bがその基端側(留め具42b側)へ引っ張られる(矢印d4b参照)。すると、このカテーテルチューブ6の先端付近が、
図8中の矢印d2bで示した方向に沿って湾曲する。
【0097】
このように、操作者が回転操作部32を回転操作することにより、カテーテルチューブ6の首振り偏向動作を行うことができる。なお、ハンドル本体31を軸回りに(XY平面内で)回転させることで、カテーテルチューブ6が患者の体内に挿入された状態のまま、カテーテルチューブ6の先端付近の湾曲方向の向きを自由に設定することができる。
【0098】
ここで、例えば不整脈等の検査に用いられる場合、患者の体内に挿入されたカテーテルチューブ6の電極(先端電極62やリング状電極61)を用いて、心電位が測定される。そして、この心電位の情報を基に、検査部位における不整脈等の有無や程度に関する検査が行われる。
【0099】
一方、例えば不整脈等の治療に用いられる場合、患者の体表に装着された対極板(図示せず)と、患者の体内に挿入された電極カテーテル5の電極との間で、高周波(RF;Radio Frequency)通電がなされる。このような高周波通電によって、治療対象の部位(血管等)が選択的に焼灼(アブレーション)され、不整脈等の経皮的治療がなされる。
【0100】
本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることが可能である。具体的には、本変形例の電極カテーテル5においても、上記実施の形態と同様の構成のハンドル3を設けるようにしたので、カテーテルチューブ6の先端付近の撓み状態を、操作者の手元側(ハンドル本体31)にて確認することができる。よって、電極カテーテル5を使用する際の利便性を向上させることが可能となる。
【0101】
なお、本変形例の電極カテーテル5においても、実施の形態のハンドル3の代わりに、変形例1,2で説明したハンドル3A,3Bを適用するようにしてもよい。
【0102】
[変形例4]
(構成)
図9は、変形例4に係る医療機器としての電極カテーテル5Aの概略構成例を模式的に表したものである。具体的には、この
図9は、電極カテーテル5Aの斜視構成例を模式的に表している。
【0103】
電極カテーテル5Aは、血管を通して体内(例えば心臓の内部)に挿入され、不整脈の検査や治療等に用いられるものである。この電極カテーテル5Aは、カテーテルチューブ6Aと、このカテーテルチューブ6Aの基端側に装着されたハンドル3とを備えている。なお、ハンドル3の構成は、基本的は実施の形態で説明したハンドル3と同様のものとなっている。
【0104】
カテーテルチューブ6Aは、
図9に示したように、長尺状のカテーテル本体60aと、このカテーテル本体60aの先端側に接続されたカテーテル先端部60bとを有している。
【0105】
カテーテル本体60aは、基本的には、変形例3で説明したカテーテルチューブ6と同様の構成を有している。すなわち、カテーテル本体60aは、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている。ただし、リング状電極61および先端電極62はいずれも、以下説明するカテーテル先端部60bに設けられている。
【0106】
カテーテル先端部60bは、上記したようにカテーテル本体60aの先端側に接続されており、
図9に示したように、略円形状をなすように形成されたループ状部分を有している。また、このカテーテル先端部60bは、カテーテル本体60aにおける1または複数のルーメンに連通したルーメンを有する、可撓性の管状構造からなる。
【0107】
図9に示したように、このカテーテル先端部60bは、カテーテル本体60aの延在方向(軸方向:この例ではZ軸方向)と非平行なループ面(仮想面)を形成するループ状部分を有している。具体的には、この例では、ループ面がカテーテル本体60aの延在方向と略直交している(例えば直交している)。
【0108】
このループ状部分は、この例では、所定のループ径を有する略円形状(実質的な円形状)となっている。具体的には、このループ状部分は、この例では
図9に示したように、Z軸の正方向に沿って見たときに反時計回り(左回り)となるよう、逆に言うと、Z軸の負方向に沿って見たときに時計回り(右回り)となるように、巻回されている。
【0109】
ただし、このループ状部分は、厳密に言うと平坦な円形状の閉じたループでなく、例えば
図9に示したように、後述する先端電極62を最先端とする、若干の螺旋形状のループとなっている。すなわち、本明細書において、「円形状」や「楕円形状」と言うときは、厳密には螺旋形状であるものを包含しているものとする。
【0110】
このようなカテーテル先端部60bは、前述した可撓性の管状構造としての絶縁性チューブにより構成されている。このような絶縁性チューブは、例えばポリウレタンまたはPEBAX(ポリエーテルブロックアミド)のような生体許容性の樹脂材料により構成されている。また、カテーテル先端部60bの外径は、約0.6〜2.0mm程度(例えば1.3mm)であり、上記したループ径は、約10〜35mm程度(例えば20mm)である。
【0111】
また、カテーテル先端部60bには、
図9に示したように、複数の電極(この例では、6個のリング状電極61および1個の先端電極62)が所定の間隔をおいて配置されている。具体的には、リング状電極62は、カテーテル先端部60bの外周面上に固定配置される一方、先端電極62は、カテーテル先端部60bの最先端に固定配置されている。なお、本変形例におけるリング状電極61の数としては、この例で挙げたもの(6個)に限定されるわけではない。
【0112】
このようなカテーテル先端部60b内には、形状記憶特性を有するコアワイヤ(図示せず)が挿通されている。詳細には、カテーテル本体60a内の先端付近からカテーテル先端部60b内に亘って、ループ状部分の形状(ループ形状)を記憶しているコアワイヤ(ループコア)が挿通されている。このような形状記憶特性を有するコアワイヤは、外部から力が加えられることによって容易に変形(例えば直線状に変形)するが、その力が取り除かれると元の形状(ループ形状)に戻るようになっている。なお、このコアワイヤは、例えば、Ni−Ti合金等の形状記憶合金により構成されている。
【0113】
また、このカテーテル先端部60b内には、図示しない操作用ワイヤ(収縮ワイヤ)が更に挿通されている。この操作用ワイヤは、カテーテル先端部60bにおけるループ状部分のループ径を変化(例えば縮小)させる操作(回転操作部32への回転操作)の際に用いられるものであり、カテーテル先端部60b内からカテーテル本体60a内を経由してハンドル3内へと挿通されている。また、操作用ワイヤの先端は、カテーテル先端部60bにおける先端付近に固定されている一方、操作用ワイヤの基端は、カテーテル本体60a内からハンドル3内へと延伸され、ハンドル3内(前述したスライド機構314上)で固定されている。なお、このような操作用ワイヤは、例えば、ステンレス、ニッケル合金、鉄合金、カーボンファイバー等の材料により構成されている。また、この操作用ワイヤの外径は、約0.1〜0.3mm程度(例えば0.2mm)である。
【0114】
(作用・効果)
本変形例の電極カテーテル5Aでは、不整脈等の検査や治療の際に、カテーテルチューブ6A(カテーテル本体60aおよびカテーテル先端部60b)が、血管を通して患者の体内に挿入される。このとき、操作者による回転操作部32に対する回転操作に応じて、体内に挿入されたカテーテルチューブ6Aの先端付近の形状が変化する。
【0115】
具体的には、この電極カテーテル5Aでは、例えば回転操作部32に対して回転操作を行うことで(
図9中の矢印d1参照)、前述した操作用ワイヤ(収縮ワイヤ)を利用して、カテーテル先端部60bにおけるループ状部分のループ径を変化させる操作(収縮操作)が可能となる(
図9中の矢印d5参照)。詳細には、例えば回転操作部32を回転させると、この操作用ワイヤが基端側に引っ張られることにより、上記したループ径が縮小する方向に変化する。また、その後に回転操作部32を元の位置(初期位置)に戻す(逆方向に回転させる)ことで、操作用ワイヤに対する引張り動作も解除され、このループ径が拡大する方向に変化して初期値に戻ることになる。
【0116】
このように、操作者が回転操作部32を回転操作することにより、カテーテル先端部60bにおけるループ状部分のループ径を変化させる動作を行うことができる。なお、本変形例においても、ハンドル本体31を軸回りに(XY平面内で)回転させることで、カテーテルチューブ6Aが患者の体内に挿入された状態のまま、カテーテル先端部60bにおけるループ状部分の向きを自由に設定することができる。
【0117】
ここで、例えば不整脈等の治療に用いられる場合、患者の体表に装着された対極板(図示せず)と、患者の体内に挿入された電極カテーテル5Aの電極との間で、高周波通電がなされる。このような高周波通電によって、治療対象の部位(血管等)が選択的に焼灼され、不整脈等の経皮的治療がなされる。
【0118】
一方、例えば不整脈等の検査に用いられる場合、患者の体内に挿入されたカテーテルチューブ6Aの電極(先端電極62やリング状電極61)を用いて、心電位が測定される。そして、この心電位の情報を基に、検査部位における不整脈等の有無や程度に関する検査が行われる。このとき、本変形例の電極カテーテル5Aでは、複数のリング状電極61および先端電極62を有するカテーテル先端部60bがループ状に形成されていることにより、例えば血管の内周部分において、周方向に沿った複数個所の電位を一括して(同時に)測定することが可能となる。また、特にこのカテーテル先端部60bでは、上記したように、そのループ状部分におけるループ径が変更可能に構成されているため、例えば、血管(肺静脈等)の内径における患者間のばらつき(個人差)や、測定部位に応じた血管の内径変化等にも、適切に対応することが可能となる。
【0119】
本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることが可能である。具体的には、本変形例の電極カテーテル5Aでは、上記実施の形態と同様の構成のハンドル3を設けるようにしたので、カテーテルチューブ6Aの先端付近の変形状態(カテーテル先端部60bにおけるループ状部分のループ径の変化状態)を、操作者の手元側(ハンドル本体31)にて確認することができる。よって、電極カテーテル5Aを使用する際の利便性を向上させることが可能となる。
【0120】
なお、本変形例の電極カテーテル5Aにおいても、実施の形態のハンドル3の代わりに、変形例1,2で説明したハンドル3A,3Bを適用するようにしてもよい。
【0121】
<その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0122】
例えば、上記実施の形態等において説明した各部材の構成(形状や配置位置、材料等)は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、材料等としてもよい。具体的には、例えば、ハンドル本体や回転操作部、マーカー、開口、目盛およびスライド機構等の構成(形状や配置位置、材料等)は、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の構成としてもよい。
【0123】
また、上記実施の形態では、チューブ状部材(シースチューブ2およびカテーテルチューブ6,6A)の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えばカテーテルチューブ6,6Aの内部に、首振り部材として、撓み方向に変形可能な板バネが設けられているようにしてもよい。また、カテーテルチューブ6,6Aにおける電極の構成(リング状電極61および先端電極62の配置や形状、個数等)は、上記実施の形態等で挙げたものには限られない。更に、例えば、カテーテルチューブ6Aのカテーテル先端部60bにおけるループ状部分により形成されるループ面が、カテーテル本体60aの延在方向に対して直交以外の非平行となっているようにしてもよい。また、例えば、このループ状部分の形状(ループ形状)が、変形例4で説明した略円形状ではなく、略楕円形状となっていてもよい。
【0124】
更に、上記実施の形態等では、ハンドル3(ハンドル本体31および回転操作部32)の構成についても具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えば、場合によっては目盛312を設けないようにしてもよい。
【0125】
加えて、チューブ状部材(シースチューブ2またはカテーテルチューブ6)における先端付近の形状の態様は、上記実施の形態等で説明したものには限られない。具体的には、上記実施の形態等では、チューブ状部材における先端付近の形状が回転操作部32への回転操作に応じて両方向に変化するタイプ(バイディレクションタイプ)の医療機器を例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、本発明は、例えば、チューブ状部材における先端付近の形状が回転操作部32への回転操作に応じて片方向に変化するタイプ(シングルディレクションタイプ)の医療機器にも適用することが可能である。この場合、操作用ワイヤおよび留め具をそれぞれ、1本(1つ)だけ設けることとなる。
【0126】
また、本発明に係る医療機器の一具体例としての電極カテーテルは、不整脈等の検査用の電極カテーテル(いわゆるEPカテーテル)、および不整脈等の治療用の電極カテーテル(いわゆるアブレーションカテーテル)のいずれにも適用することが可能である。
【0127】
更に、上記実施の形態等では、本発明に係る医療機器の一具体例として、シースイントロデューサおよび電極カテーテルを挙げて説明したが、これらには限られない。すなわち、本発明に係る医療機器用ハンドルは、例えば、ガイドカテーテル(ガイディングカテーテル)、血管造影用カテーテルおよびマイクロカテーテル等の他の医療機器にも適用することが可能である。